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ナイジェリア - 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所

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ナイジェリア - 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
IEEJ:2004 年 6 月掲載
ナイジェリア∗
総合エネルギー動向分析室
研究員
杉野
綾子
1.概要(マクロ経済・社会指標等)
正式国名:ナイジェリア連邦共和国
人口:1億 1693 万人
国土面積:92.4 万 km2
首都:アブジャ
民族:ハウサ族とフラニ族(27%)、イボ族(17%)、ヨルバ族(16%)、その他
宗教:イスラム教(47%)、キリスト教(35%)など
国家元首:オルシェグン・オバサンジョ(Olusegun Obasanjo)大統領(1999 年 2 月∼)
GDP 総額:328 億 8000 万ドル(2001 年、下表(1)参照)
一人当り GDP:281 ドル(2001 年、下表(1)参照)
GDP 成長率:3.3%(2001 年、下表(2)参照)
(1)GDP 総額、人口、一人当り GDP の推移
1998
1999
2000
2001
GDP 総額
億ドル(95 年価格)
303.9
306.5
319.6
328.8
人口
百万人
107.9
110.8
113.9
116.9
281.7
276.5
280.7
281.2
一人当り GDP ドル(95 年価格)
(出所) アフリカ開発銀行
(2)実質 GDP 成長率の推移
1998
(単位:%)
1999
2000
2001
2002
GDP 成長率
2.3
2.8
3.9
4.2
3.3
石油部門
-4.9
-7.5
11.2
-4.0
-16.5
3.7
4.2
3.0
4.9
5.5
非石油部門
(出所) Central Bank of Nigeria “Annual Report 2002”
∗
本報告は、平成 15 年に経済産業省資源エネルギー庁より受託して実施した受託研究の一部である。この
度、経済産業省の許可を得て公表できることとなった。経済産業省関係者のご理解・ご協力に謝意を表す
ものである。
1
IEEJ:2004 年 6 月掲載
●
ナイジェリア経済は最近 5 年間、実質 GDP 成長率でみると安定的に成長している。し
かし、年率約 2.7%の人口増加により、一人あたり GDP は過去 5 年間増加していない。
また、GDP を部門別にみると、非石油部門が堅調に拡大しているのに対し、石油部門は
大幅な好不況の波を経験している。
●
2002 年についていえば、実質 GDP 成長率は 3.3%であった。成長に寄与したのは農業、
建設・製造業、通信、サービスなどの非石油産業であり、石油部門はマイナス 16.5%の落
ち込みを記録した。これは、OPEC 減産政策に従い原油生産が 7.8%減少したことに起
因している。また、石油輸出量は 11.2%の減少であった。
(3)産業別 GDP 構成
(単位:億 Naira)
1998
1999
2000
2001
2002
GDP
1,129.5
1,161.4
1,206.4
1,257.2
1,298.3
農業
452.5
476.0
489.9
508.5
535.3
製造・建設業
228.9
222.3
239.9
253.5
242.4
石油産業
134.8
124.7
138.7
145.9
126.0
448.1
463.1
476.6
495.2
520.6
11.9
10.7
11.5
11.6
9.7
流通・サービス業
石油産業比率(%)
* 1 ナイラ=0.87 円、1 米ドル=131.5 ナイラ(2003.9.22 現在)
(出所) Central Bank of Nigeria “Annual Report 2002”
(4)対外収支
(単位:億米ドル)
1998
1999
2000
2001
2002
-43.15
5.02
70.15
21.71
19.33
貿易収支
-2.40
42.88
104.20
68.54
60.31
輸出
89.71
128.76
191.41
178.84
155.63
85.65
126.65
188.97
176.34
147.77
92.11
85.88
87.21
110.30
95.32
21.00
22.92
19.55
19.26
19.85
95.5
98.4
98.7
98.6
94.9
10.51
10.05
11.41
11.84
18.68
経常収支
石油・ガス
輸入
石油・ガス
石油輸出/輸出総額(%)
直接投資受入額
(出所) Central Bank of Nigeria “Annual Report 2002”
2
IEEJ:2004 年 6 月掲載
(単位:億 Naira)
(5)連邦政府の歳入・歳出
1998
歳入
Federation Account*
1999
2000
2001
2002
3,537.2
6,625.9
5,972.8
7,969.8
7,167.5
1,245.7
2,188.7
5,022.9
5,306.6
6,606.4
4,871.1
9,476.9
7,010.6
10,180.3
10,181.6
経常支出
1,781.0
4,496.6
4,616.1
5,793.3
6,967.8
資本支出
3,090.2
4,980.3
2,394.5
4,387.0
3,213.8
-1,333.9
-2,851.0
-1,037.8
-2,210.5
-3,014.0
歳出
財政収支
* Federation Account から連邦政府、州政府、各地方自治体へ移転される
Federation Account
1998
1999
2000
2001
2002
3,056.3
5,609.0
11,720.7
14,274.3
16,061.2
石油収入(net)
1,663.3
3,361.3
8,575.8
9,034.6
11,051.3
原油輸出
1,006.8
5,140.4
9,471.6
9,342.8
4,963.1
ロイヤリティ
679.9
1,642.7
5,250.7
6,392.3
3,922.1
国内原油売上
565.8
461.1
964.3
1,215.4
3,042.4
その他
990.6
0
230.1
125.0
380.9
1,393.0
2,247.7
3,144.8
5,239.7
5,009.9
0
143.8
254.7
302.4
0
支出
4,046.9
5,768.0
12,624.7
16,781.1
18,994.9
収支
-990.6
-159.0
-904.0
-2,506.8
-2,933.7
収入(net)
非石油収入*
石油製品課税
* 法人税、関税、物品税、民営化による売却益などが含まれる
(出所) Central Bank of Nigeria “Annual Report 2002”
● ナイジェリア経済は、GDP の約 1 割を石油産業に依存している。特に原油は重要な輸
出商品であり、既述の通り石油輸出の振るわなかった 2002 年ですら、石油・ガスは輸出
総額の 94.9%を占めていた。連邦政府の財政にとっても石油は主要な歳入源である。連
邦政府の歳入は、政府職員から徴収した所得税を除き全て Federation Account と呼ばれ
る特別会計に組み込まれる。Federation Account の使途は、大統領が財政委員会等の助
言をうけて連邦政府、州政府、地方政府への分配案を作成し、議会に諮られる。上記表に
みられる通り、原油価格高騰により 2000 年以降 Federation Account の収入増が著しい
が、収支は赤字が続いている。財政赤字の一因として対外債務返済が挙げられる。例え
ば、2000 年の連邦政府歳出の約 15%を対外債務返済が占めた。
3
IEEJ:2004 年 6 月掲載
2.エネルギー需給の概要
(1)一次エネルギー消費
1997
1998
1999
2000
2001
総消費
伸び率 GDP 成長率 GDP 弾性値 一人当り消費 GDP 原単位*
(石油換算千トン) (%)
(%)
(石油換算トン)
85,217
0.6
3.2
0.19
0.81
28.5
85,829
0.7
2.3
0.30
0.80
28.2
87,593
2.1
2.8
0.75
0.79
28.6
91,072
4.0
3.9
1.03
0.80
28.4
95,444
4.8
4.2
1.14
0.82
29.0
* エネルギー総消費(石油換算千トン)/GDP(百万ドル・95 年)
(出所)エネルギー消費は Ministry of Solid Mineral Development、GDP 等は前出 OECD 統計より作成
● ナイジェリアの一次エネルギー消費量は一貫して増加傾向にあるが、伸び率は 1998 年
の 0.7%から 1999 年には 2.1%、2000 年には 4.0%と近年加速している。しかし一人当
りエネルギー消費はそれほど変化せず、GDP に占める製造業比率も上昇していないこ
とから、このエネルギー消費の増大には人口増加が大きく寄与していると考えられる。
(2)一次エネルギー需給バランス(2001 年、石油換算千トン)
石油
113,541
7,849
-108,559
-107
12,250
国内生産
輸入
輸出
在庫変動
一次供給
ガス
10,556
―
-4,583
―
5,973
石炭
原子力
―
―
―
―
―
38
―
―
―
38
その他
72,811
―
―
―
72,811
合計
196,946
7,849
-113,142
-107
91,072
(出所) IEA “Energy Balances of Non-OECD Countries, 2000-2001” ,2003 Edition
● ナイジェリアは石油、ガスの純輸出国である。2002 年の石油生産量は世界の生産の
2.8%を占め、世界第 13 位の供給国である。ガスは世界の生産量の 0.7%を供給している。
● 石炭については、国内消費の全量を生産しており、輸出入とも行っていない模様である。
● 水力発電や薪炭などの再生可能エネルギー消費量が一次エネルギーの 79.9%を占めて
いる。
(3)エネルギー源別消費動向(石油換算
1997
1998
1999
2000
2001
(出所)
石油
10,487
9,775
9,549
10,346
11,423
ガス
784
841
885
1,005
1,119
石炭
6
6
6
6
6
千トン)
原子力
―
―
―
―
―
その他
67,826
69,629
69,606
71,152
72,943
合計
79,104
80,251
80,046
82,509
85,491
IEA “Energy Balances of Non-OECD Countries, 2000-2001”, 2003 edition
4
IEEJ:2004 年 6 月掲載
● ナイジェリアのエネルギー消費量は、1999 年には前年比 0.3%の減少を記録したが、
2000 年、2001 年には各 3.1%、3.6%の増加となった。特に最近の天然ガスの消費拡大は
めざましく、2000 年、2001 年にはそれぞれ前年比 13.6%、11.3%増加した。この背景に
は、政府の天然ガス国内消費拡大政策(後述)が影響しているものと考えられる。
(4)エネルギー資源(2002 年末)
石油 (億バレル)
ガス (兆立米)
石炭 (億トン)
(出所)
確認埋蔵量 世界シェア(%)
240
2.3
3.51
2.3
n.a.
n.a.
可採年数
32.8
>100
n.a.
BP Statistical Review of World Energy 2003
● ナイジェリアは世界第 10 位の規模の石油埋蔵量を保有しており、世界の確認埋蔵量に
占めるシェアは 2.3%である。天然ガス埋蔵量では世界第 8 位につけており、こちらもシ
ェアは 2.3%となっている。
(5)エネルギー源別生産動向(石油換算百万トン)
1998
1999
2000
2001
2002
(出所)
石油
105.9
99.2
103.3
107.8
98.6
ガス
4.6
5.4
11.3
16.6
16.0
石炭
原子力
n.a.
―
n.a.
―
n.a.
―
n.a.
―
n.a.
―
その他
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
合計
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
BP Statistical Review of World Energy 2003
● ナイジェリアの石油生産量は 1998,1999 年には前年比 6%の減少が続いたが、2000 年、
2001 年には同 4%あまりの増加となった。これは、1998 年の国際石油価格低迷による
OPEC 減産政策と、1999∼2000 年の石油価格高騰に伴う増産を反映している。2002 年
の生産量は、年初からの OPEC 減産決定をうけて、8.5%減少した。
● 一方ガス生産量は、1999 年から 2000 年にかけて倍増した後伸びが鈍化し、2002 年には
4.6%の減少となった。
(6)エネルギー輸出入動向
原油(千 B/D)
輸入
1998
1999
2000
2001
―
―
―
―
輸出
1,833
1,705
1,986
2,089
石油製品(千 B/D)
輸入
輸出
3.8
14.1
17.3
45.7
―
―
―
―
5
ガス (mcm)
輸入
―
―
―
―
輸出
―
740
5,730
7,830
石炭(千トン)
輸入
―
―
―
―
輸出
―
―
―
―
IEEJ:2004 年 6 月掲載
(出所) OPEC、Annual Statistical Bulletin, 2001
● 原油輸出量は、1999 年には前年比 7%減少したが、その後は増加傾向にある。概ね OPEC
生産割当てに従った原油生産量の推移に沿って増減している。
● 石油製品輸出は 1999 年以降増加傾向にあり、特に 2001 年には前年比 264%と大幅に増
加した。ガス輸出も同様に増加している。
● 石炭については、記述の通り輸出入とも行われていないもようである。
(7)石油需給バランス(千 B/D)
1998
1999
2000
2001
生産
1,939
1,782
2,053
2,018
原油
輸入
輸出
―
1,833
―
1,705
―
1,986
―
2,089
国内処理
―
―
―
―
生産
113.6
131.1
88.6
227.8
石油製品
輸入
輸出
―
3.8
―
14.1
―
17.3
―
45.7
消費
198.6
184.3
206.7
242.4
(出所) OPEC、Annual Statistical Bulletin, 2001
● ナイジェリアの原油生産、輸出動向については既述の通りである。石油製品については、
生産は増加傾向にあるが、2000 年の生産量は前年比 32%と大幅に落ち込んだ。国営石
油会社 NNPC によれば、この要因としては、設備の破壊や治安などの問題によるところ
が大きい。
● 石油製品消費量も増加している。ナイジェリアでは基本的に石油製品の国内生産量が消
費を下回っており、輸入が必要である。輸入量はデータ出生によりばらつきがあるが、
2001 年時点で石油換算 480.2 万トンであった(=9.6 万 B/D、IEA “Energy Balances of
Non-OECD Countries,2000-2001)。
6
IEEJ:2004 年 6 月掲載
(8)月別石油生産量(単位
万 B/D)
240
230
生産割当
220
210
生産量
200
190
180
170
Ja
n9
Ap 8
r9
Ju 8
l9
Oc 8
t9
Ja 8
n9
Ap 9
r99
Ju
l9
O 9
ct
-9
Ja 9
n0
Ap 0
r00
Ju
l0
O 0
ct
-0
Ja 0
n0
Ap 1
r01
Ju
l0
Oc 1
t0
Ja 1
n0
Ap 2
r0
Ju 2
l0
O 2
ct
-0
Ja 2
n0
Ap 3
r0
Ju 3
l03
160
(出所)IEA ”Oil Market Report”
● ナイジェリアの石油生産量については既述のとおりであるが、これを OPEC 生産割当て
と比較すると、2001 年 8 月以降大幅な超過生産が行われている。2003 年 3 月以降は生
産量は割当てを下回る、あるいは小幅な超過にとどまっているが、これは 3 月に主要生
産地域であるニジェールデルタの民族紛争の拡大により生産が激減したことによる。
(8)石油在庫動向
● ナイジェリアの石油在庫については、データの入手は不可能である。
3.エネルギー政策の概要
(1) 政策担当機関・部門・主要VIP
● ナイジェリアのエネルギー政策担当機関としては、Federal Ministry of Petroleum
Resources(石油・ガス)と Solid Minerals Development(石炭)、Power & Steel(電力)が挙
げられる。
● このうち、石油・ガスについては、従来、大統領顧問として前 OPEC 事務局長のルクマン
(Rilwanu Lukman)氏が重要な役割を果たしてきたが、2003 年 10 月にその職を離れて
7
IEEJ:2004 年 6 月掲載
い る 1 。 政 府 に よ る 規 制 監 督 機 能 は 、 石 油 資 源 省 内 の Department of Petroleum
Resources が担っている。また、国営石油会社 NNPC は国内の石油・ガス開発や精製、販
売部門における外国との合弁プロジェクトの契約主体として、産業の監督機能の一翼を
担っている。現在の NNPC 総裁は Gaius-Obaseki 氏、石油資源相は空席で大統領直轄
となっている。
(2) 基本政策
● 全般
オバサンジョ大統領は、6年にわたる軍政に代わって選出された。総選挙に際して訴え
たのは、軍政下ではびこった汚職、腐敗の追放であった。また、オバサンジョ政権は経済
の基本政策として、就任直前の 1999 年 1 月に IMF との間で合意が成立しつつも形骸化
していた構造改革・民営化の維持推進を掲げている。自由主義経済への移行と同時に、
貧困の軽減も重大な目標である。
こうした経済政策を反映して、エネルギー基本政策としては、民営化の推進、腐敗の除去
と透明性確保、石油・ガス開発促進と輸出拡大により短・中期的経済発展の牽引役とす
ることが挙げられる。
● エネルギー生産拡大目標
現政権は、2003 年までに確認原油埋蔵量を 300 億バレルに、原油生産能力を 300 万 B/D
に引き上げることを目標としている(現在は 250 万 B/D)。目標達成にはさらなる外国
資本の導入が必要であり、既述のルクマン氏の起用は、ナイジェリアの石油産業に対す
る国際的な信認の回復に寄与した。
また、環境保護と輸出商品の多角化を目的として、2008 年を目途に随伴ガスの利用促進
のための大規模プロジェクトが進行中である。
● 民営化
ナイジェリアは石油収入を担保にした野心的な開発計画の失敗と急速な都市化と農業
の衰退、不安定な石油価格と歴代政権の腐敗、浪費により 80 年代には債務危機に陥り、
以後、石油価格高騰に伴う一時的なブームを除いては基本的に経済は悪化の一途をたど
った。債務危機への対応としてナイジェリアは 1986 年に世界銀行による構造調整計画
を受け入れ、95 社の国営企業の民営化も含まれたが、実施されたのはうち 73 社にとどま
り、国営電力会社(NEPA)および国営石油会社(NNPC)の民営化は未了であった。
オバサンジョ大統領は就任後直ちに、産業の透明性を高めて外国資本の導入を促進する
1 ルクマン石油顧問辞任の経緯については、2003 年 6 月に政府が石油鉱区の開発・監督権限を石油相から
NNPC に移したことを不服としたもの、との説がある。また、石油輸出収入の分配をめぐっても NNPC と
の間に確執があったもようである。辞任劇は石油製品価格の引き上げをめぐる政府と労働組合の対立の最
中に起きており、石油下流部門の自由化の後退を懸念する向きもある(Petroleum Argus 2003-10-13)。
8
IEEJ:2004 年 6 月掲載
ため、2003 年までに民営化を完了させる方針を明らかにした。しかし、国営製油所の民
営化の場合、2003 年 10 月に入札が発表され、12 月現在で落札が発表されるには至って
おらず、民営化の予定は遅れている。
(3) 環境政策
● 環境政策の策定には、環境省があたっている。
● ナイジェリアの直面する主な環境問題は森林減少と砂漠化である。地方や都市の貧困家
庭では依然として薪炭を利用しており、森林資源の持続可能な利用とともに、バイオガ
スや太陽エネルギー、ブリケット(練炭)等の利用促進プロジェクトが実施されている。
● ナイジェリアは京都議定書を 1992 年 6 月に署名、1994 年 8 月に批准しているが、途上
国であり温室効果ガスの削減義務を負ってはいない。
(4) 対外関係
● 主要輸出入先:ナイジェリアは 2001 年時点で 11.4 万 B/D の石油製品輸入を行ってい
る。主な輸入先は欧州であるが、米州、アフリカ、アジアからも輸入している(Blackwell
“World Oil Trade, 2002)。一方、輸出先は原油輸出の 40.3%、製品輸出に至っては 84.4%
を米国が占めている。米国に続き輸出量が多いのは、インド、スペイン、フランス、韓国な
どである(Central Bank of Nigeria)。
ナイジェリアにとって米国はこのように重要な貿易相手国であり、また二国間援助、多
国間援助の面からも、対米関係は非常に重要である。一方米国も、最近の不安定な中東情
勢と 2002 年 12 月に発生したベネズエラからの石油供給途絶を背景に、アフリカ産油国
との関係強化を志向している。2003 年春のブッシュ大統領のアフリカ歴訪をはじめ、
数々のミッションがナイジェリアに派遣されている。
● 対 OPEC 関係:ナイジェリアは 1971 年 7 月以降、OPEC 加盟国である。2003 年 11 月
1 日以降のナイジェリアの生産割当量は 201.8 万 B/D である。これは、現在の生産能力
250 万 B/D を大幅に下回っており、2-(8)の月別生産量のグラフに示す通り、2001 年 8 月
以降割当て超過が常態となっていた。既述のとおり政府は生産能力 300 万 B/D を目標
としているが、OPEC 生産枠が外資導入への制約となっていると主張しており、またナ
イジェリア国民の生活水準引上げのために、2002 年 8 月には生産割当ての引上を正式に
要請した。
● 領有権紛争:ナイジェリアはカメルーンとの間で国境紛争を抱えている。ナイジェリア
-カメルーン間では原油を大規模に埋蔵しているといわれる Bakassi 半島の領有権が争
われている。1994 年に両当事国が国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、1998 年に審理が開始
された。2002 年 10 月に ICJ は同半島がカメルーン領であるとの判断を下したが、オバ
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IEEJ:2004 年 6 月掲載
サンジョ大統領はこれを受け入れない姿勢を表明し、協議が続いている。石油資源に関
連した国境紛争としては他に、2000 年 9 月に赤道ギニアとの間での Zafiro 油井の帰属
をめぐる争いが解決し、サントメプリンシペとの間では 2001 年に、紛争海域での石油開
発を共同で進める旨の協定を成立させている。
4.エネルギー産業の概要
(1) 石油産業
● 国営石油会社 Nigerian National Petroleum Corporation(NNPC)は 1977 年に、石油資
源省の一部と旧 Nigerian National Oil Company を統合して設立された。NNPC の機
能は外国石油企業と協力して国内の石油探鉱・生産にあたると同時に、製油所、パイプラ
インを所有し、製品の販売、輸出までをカバーしている。1988 年には NNPC の組織再編
が行われた。現在の NNPC の構成は下図の通りである。
● ナイジェリアの原油生産の 99%は、NNPC と合弁契約を結んだ国際石油企業によって
担われている。主な進出企業は RD/Shell と Exxon Mobil、Chevron Texaco、Statoil 等
である。石油・ガス生産拡大計画に必要な投資を確保すべく、政府は、新規プラントや新
たな生産開始に対する 5 年間の免税措置などの優遇措置(内資、外資ともに対象)を提供
している。
● ナイジェリアの石油下流部門は、NNPC が所有する 4 ヵ所の製油所と、うち 2 箇所に併
設された石油化学プラント、及び NNPC が敷設したパイプライン網から成る。精製能力
は合計 44.5 万 B/D であり、政府は製品輸出により輸出の多角化を目指したい考えだが、
必要なメンテナンスがなされていないため、実際の処理量は 23 万 B/D 程度にとどまり、
国内製品需要にすら対応できない状況である。このため、政府は 2003 年 10 月、石油産
業改革の一環として国内製品価格規制の緩和と国営製油所への原油供給の削減、および
3 製油所の民営化に着手した。11 月時点で、外資 11 社を含む 28 社が製油所の獲得に関
心を示している2。
2
PIW2003.11.24
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IEEJ:2004 年 6 月掲載
NNPC 機構図
Managing Director’s Office
Refineries & Petrochemicals
Exploration & Production
Commercial & Investments
Finance & Accounts
Engineering & Technology
Corporate Services
Wholly-owned subsidiary companies
Duke Oil Ltd.
Nigerian Gas Company
Eleme Petrochemicals Co,
Ltd.
Nigerian Petroleum
Development Co, Ltd.
Integrated Data Services
Ltd.
Pipelines and Products
Marketing Co, Ltd.
Kaduna Refining and
Petrochemicals Co, Ltd.
Port Harcourt Refining and
Petrochemicals Co, Ltd.
National Engineering and
Technical Co.
Warri Refining and
Petrochemicals Co, Ltd.
Partly-owned subsidiary
companies
Calson(Bermuda) Ltd.
Hydro-Carbon Services of
Nigeria Ltd.
Other associated companies
(出所)NNPC Web より作成
(2) ガス産業
● ナイジェリアはガス確認埋蔵量では世界第 8 位につけ、アフリカのガス埋蔵量の約 30%
がナイジェリアに分布している。この多くは随伴ガスであり、国内のガス利用インフラ
も未整備であったため、現在は約 75%がフレアーとして燃焼されている。経済の多様化
のため、及び環境保護の見地からフレアガス削減の圧力をうけて、ナイジェリアでは随
伴ガスを LNG および NGL として活用するプロジェクトが進展、あるいは計画中である。
● 最大のプロジェクトは、NNPC と Shell、Total、Agip によるナイジェリア LNG(NLNG)
計画である。1999 年 10 月から商業生産が開始され、現在の生産能力は 3 トレーンによ
る年間 900 万トンである。主な輸出先はイタリアの Enel、スペインの Gas Natural、フ
ランスの Gaz de France などである。さらに 2 トレーンが建設中、1 トレーンが計画中
であり、完成すると年間 LNG2,100 万トン、NGL400 万トンの生産が可能になる。なお、
NLNG は 2003 年 10 月、BG 子会社の BG LNG サービス(BGLS)との間で、第 4、第 5 ト
レーンから米ルイジアナ州レイク・チャールズ受入基地向けの LNG 供給契約を締結し
た。契約期間は 2005 もしくは 06 年から 20 年間、250 万トン/年の LNG を供給するこ
ととされた。
● 他に、Chevron Texaco と NNPC は、Chevron Texaco が操業している沖合油田において、
Escravos Gas Project(EGP)を行っている。第 1 フェーズは 1997 年 9 月、第 2 フェーズ
は 2000 年に LPG 輸出を開始しており、現在は 200mcf/d の随伴ガスを処理している。
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IEEJ:2004 年 6 月掲載
2001 年 8 月に Chevron Texaco と NNPC は EGP の第 3 フェーズ及び GTL プロジェク
トの基本設計(FEED)を行うことで合意し、現在その実施段階にある。また、Exxon
Mobil は 1992 年に NNPC との間で Oso NGL を立ち上げ、4.5 万 B/D の NGL を生産し
ている3。
● 一方、ガス需要の創出の面では、1998 年に Shell の子会社の Shell Nigeria Gas が設立さ
れ、国内需要喚起のためのプロジェクトを進めている。また、ベニン、トーゴ、ガーナでの
電力需要向けに Trans West African Pipeline が計画されている。
(3) 電力産業
● ナイジェリアの発送配電は国営電力公社 National Electric Power Authority(NEPA)が
担っている。NEPA は 1972 年に、旧電力公社とダム管理局が合併して設立された。ま
た、電力産業の監督機能は Ministry of Power and Steel が管轄している。
● NEPA 統計によれば、2001 年 7 月時点の総発電能力は 5,922 メガワット(MW)であった
(うち火力発電所 8 基、水力発電 3 箇所、地熱発電 5 箇所)であった。しかし、発電所の老
朽化、破損などにより可能出力は 2,537MW であった。また、2 箇所の緊急用発電所(EPP)
と IPP の発電電力量が 60.5MW であり、電力供給量は 2,597MW であった。
● このように設備の老朽化が進んだ状況に対応して、NEPA は既存発電所のリハビリテー
ションと新規の建設を進めている。新規の発電所は、ガス火力および水力が中心となる。
なお、電力鉄鋼省によれば 2001 年 12 月の発電所 8 箇所の稼動開始などをうけて、2003
年 10 月現在の発電能力は 6,4422MW、可能出力は 4,902MW にまで拡大した。年間平均
電力供給量は 3,479MW に達した。
5.わが国とのエネルギー分野での関わり
● 2001 年の日本のナイジェリアからの輸出総額は 2 億 7687 万ドル、輸入総額は 4 億 4400
万ドルであった。輸出は自動車、バイクと鉄鋼やガスタービン、ボイラー部品等機械類が
中心であり、輸入は原油、プロパン、ブタンなど燃料が 88.5%を占めた。
● 日本からナイジェリア向けには 1996 年以降新規の投資実績はない。
以上
お問い合わせ:[email protected]
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Oso プラントは 2003 年 1 月に火災により操業が停止され、コンデンセート生産はそのまま打ち切られた
が、NGL 生産は続ける方針とのことであった。現在の状況は確認できていない。
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