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粉体塗料向けフュームドシリカAEROSIL® とフュームドア ルミナ AEROXIDE® Technical Information TI 1340 エボニック. 創造する力 目次 ページ 1 はじめに 4 2 粉体塗料における AEROSIL® とAEROXIDE® の効果 4 3 粉体塗料におけるAEROSIL® と AEROXIDE® の研究 6 4 評価方法 7 4.1 流動性 7 4.1.1 安息角 7 4.1.2 体積膨張 7 4.2 塗着効率 7 4.3 ファラデーケージ効果 7 4.4 グロス 8 4.5 ゲル化時間 8 5 ポリエステル系粉体塗料におけるAEROSIL® とAEROXIDE® (コロナ放電塗装) 8 5.1 流動性評価試験結果 8 5.1.1 安息角試験 8 5.1.2 体積膨張試験 9 5.2 塗着効率 10 5.3 ファラデーケージ効果 10 5.4 グロス 11 5.5 ゲル化時間 11 6 ポリエステル系粉体塗料におけるAEROXIDE® (トリボ帯電塗装) 11 6.1 塗着効率 11 6.2 ファラデーケージ効果 12 7 AEROSIL® とAEROXIDE®の物理化学データ及び登録状況 13 8 まとめ 14 3 1 はじめに 2 粉体塗料におけるAEROSIL® と AEROXIDE® Alu C の効果 従来の溶剤型塗料からより環境に優しい塗料系への移行 が進行しています。例えば粉体塗料の世界市場は液体系塗 料よりも速いペースで拡大するものと期待されており、今 後数年の成長率は5~6%程度と予測されます。北米や西ヨ ーロッパにおける成長は緩やかですが、東南アジア、中国、 インド、東ヨーロッパにおける粉体塗料の生産と消費は平 均(5~6%)以上に拡大すると期待されています。 AEROSIL®は一次粒径が極めて小さい非晶質の二酸化ケイ素 です。酸素水素火炎中におけるクロロシラン類の加水分解 によって、ふわふわとした高純度の白色の粉体が得られま す。一次粒径が7~40 nmの範囲の製品を有しており、それ に対応する比表面積は380~50 ㎡/gです。 またAEROSIL®と同様のプロセスを用いてアルミナ、二酸化 チタン、酸化ジルコニウムといったフュームド無機酸化物( 商標はAEROXIDE®)が得られます。 競争力を維持するために粉体塗料メーカーは、優れた成果 をもたらす革新的な解決策とシステムを開発することが求 められています。競合他社との差別化は、流動性、塗着効 率、エッジカバリングといった特性を発揮させることによっ て達成でます。フュームドシリカAEROSIL®とフュームドアルミ ナAEROXIDE® Alu C は粉体塗料の製造、品質、外観等、性能 の全てを向上させ最適化することで知られています。 AEROSIL® とAEROXIDE® Alu C 添加により期待される効果 • 流動性の向上 • 帯電安定性の向上 • 吸湿性の低減 • エッジカバリングの改善 The University of Western Ontario(カナダ)との近年の共同 • トリボ帯電塗料の正帯電性の向上(AEROXIDE® Alu C) 研究により、従来のAEROSIL®及びAEROXIDE® Alu C と比較し 流動性を大きく向上させるには重量比(総量に対して)で て新開発の無機酸化物の特性が明らかになりました。評 0.1~0.3%のAEROSIL®を粉体塗料に加えます。最終的な粉 価はすべてポリエステル系の微細な粉体塗料と粗い粉体 体化の前にAEROSIL®を添加すると均質な分布結果を得るこ 塗料について行いました。 とができます。 もう一つの添加方法として粉体化プロセスの最後に(分級 後に)乾式配合によってAEROSIL®を加えることもできます。 この方法を用いると大きめの集塊粒子が残る可能性があ ります。 トリボ型、コロナ型に関わらず、AEROSIL®の添加が粉体塗料 の静電荷に悪影響を及ぼすことはありません。疎水性グレ ードのAEROSIL®®を使用すればその防湿性により長期間安定 した帯電性が確保できます。またAEROSIL®は強い増粘効果 がありますが紛体塗料への添加量は一般に0.5%以下と非 常に少ないため、乾燥中における塗膜のレベリング性への 影響はありません。 AEROSIL®と同じプロセスで製造されるAEROXIDE® Alu Cは流 動性の改善と正帯電性の増加の二つの効果を与えることが できます。負に帯電する傾向の強いAEROSIL®製品とは異な り、AEROXIDE® Alu Cは正に帯電する傾向を強く持っていま す。このためトリボ型粉体塗料の正電荷を増大させて被塗 装物への塗着効率を増進すると共に、体積流動性に不利 に影響する可能性のある最終粉体塗料の静電荷蓄積を低 減するという両方の目的で使用されています。 4 AEROSIL® 200とAEROSIL® 380は親水性のフュームドシリカで す。総量に対する重量比で0.1~0.3%のAEROSIL®を添加する ことにより粉体の周りに均一に付着し、再凝集が緩和され ます。押出成形機にスムーズな供給が可能となり、より均質 な乾燥混合物が得られます。工程中における流動性が向上 するので押出成形機における処理量が速くなり詰まりによ る問題点が少なくなります。表1に各粉体塗料系に使用さ れるAEROSIL®およびAEROXIDE® と効果を示しました。 AEROSIL® R972は疎水性のフュームドシリカです。総量に対 する重量比で0.1~0.3%のAEROSIL®をホッパーに添加する ことにより混合効率が改善され、より均質な分散が可能に なります。ホッパー内で粉状になった原料に静電荷が過度 に蓄積すると粒径の微小な成分が壁面に付着し、均質な 混合や押出成形機への材料の供給を妨げる原因となりま す。AEROSIL® R972を添加し一緒に粉砕することにより粉体 の静電荷を低減することができ、最終製品の流動性を改善 することができます。またAEROSIL® R972は粉体に軽度の疎 水性を与え、貯蔵中におけるホッパーへの付着の原因とな る水分の吸湿を防ぎます。分級装置による分離のために予 めAEROSIL®を添加することができない場合には、粉砕処理 工程の後で乾式混合することが可能です。AEROSIL® の添加 量は粉体化処理の前に加えても後に加えても同じ程度で すが、粉砕処理の前の方がより最適な結果が得られます。 表1 AEROSIL® R812とAEROSIL® R8200はHMDS(ヘキサメチルジシ ラザン)処理したフュームドシリカで、疎水性の強いことが 特徴です。その強い疎水性により優れた防湿性とより高い帯 電性が付与できます。 AEROXIDE® Alu Cは正電荷を持つフュームドアルミナで、あら ゆるタイプの粉体塗料において使用することができます。そ の正電荷によりAEROXIDE® Alu Cは静電塗装に適しており、 非帯電性の粉体を帯電性にする場合もあります。AEROXIDE® Alu Cの添加により粉体の流動を低減させる正電荷を減ら し、塗布中の粉体の密着性を向上させます。推奨する添加 量は総量に対する重量比で0.1~0.3%です。AEROXIDE® Alu Cの利点は当社の製造プロセスによる平均一次粒子径が 13nmという微小な粒子径と狭い粒度分布、そして粒子自体 の表面電荷です。 AEROXIDE® Alu C805はAEROXIDE® Alu Cをオクチルシラン処 理した疎水性フュームドアルミナです。総量に対する重量 比で0.1~0.3%を添加することにより、あらゆるタイプの粉 体塗料の流動性を高めます。その疎水性故にAEROXIDE® Alu C805は吸湿を低減し、貯蔵安定性が向上します。 粉体塗料におけるAEROSIL®とAEROXIDE®の使用概要 粉体塗料系 製品 添加濃度 (重量 %) 熱硬化性粉体塗料 ・低分子量エポキシ ・TGICポリエステル ・エポキシポリエステル混成物 ・ポリウレタン ・アクリル AEROSIL® 200 AEROSIL® 380 AEROSIL® R 972 AEROSIL® R 812 AEROSIL® R 8200 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 AEROXIDE® Alu C AEROXIDE® Alu C 805 0.1 - 0.3 熱可塑性粉体塗料 ・ビニル ・ナイロン ・ポリオレフィン ・フッ化炭素系 AEROSIL® R 972 AEROSIL® R 812 AEROSIL® R 8200 0.1 - 0.3 0.1 - 0.3 0.1 - 0.3 AEROXIDE® Alu C AEROXIDE® Alu C 805 0.1 - 0.3 正帯電粉体塗料 • エポキシポリエステル混合物 • エポキシアクリル混成物 AEROXIDE® Alu C AEROXIDE® Alu 130 0.1 - 0.3 - 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 効果 - 流動性改善 - アンチケーキング (吸湿の防止) - 流動性改善 - アンチケーキング (吸湿の防止) - 流動性改善 - 正電荷(トリボ)の 増大 5 3 粉体塗料におけるAEROSIL® と AEROXIDE® に関する新たな研究 この技術情報カタログは粉体塗料におけるフュームドシリ カまたはフュームドアルミナによる粉体の流動性改善とい った特性について、最近の研究情報を示したものです。粉 体塗料は環境への配慮が高まると同時にコストや外観、薄 膜化などの開発傾向が強くなってきています。これらは粒 径がより小さい粉体塗料やそれに適した添加剤を使用する ことで達成することができます。 粉体塗料の現在及び今後の要望を満たすため大小2種類 の粉体塗料の粒径を対象とし、いくつかの評価を行いまし た。充分な流動性・吹付け特性が必要な課題とされている ため、特に微細な粉体塗料に注目したデータならびに情報 となっております。 粉体塗料業界では親水性及び疎水性 グレードのフュームドシリカ(AEROSIL®) 並びに親水性アルミナ(AEROXIDE®Alu C)の使用はよく知られていますが、 Evonik Degussa社は粉体の特性を増進 する新しいフュームド酸化物を開発し ました。The University of Western Ontario (カナダ)の協力を得て、これら の新しい粒子を、Evonik Degussa社が 長年供給してきた従来の製品と対比し ながら試験を行いました。この技術情 報カタログはポリエステル系の粉体塗 料における粗い粉体と微細粉体の両 方の場合を含むフュームド酸化物の特 性を示します。この評価試験の対象と した製品物性値を表2に示しました。 表2 フュームドシリカと酸化アルミニウムの物性値 製品 特性 [m²/g] 比重 (Tapped Density) [g/l] BET法比表面積 表面電荷 AEROSIL® 200 親水性シリカ 200 ± 25 50 負 AEROSIL® R 812 疎水性シリカ 260 ± 30 60 負 AEROSIL R 972 疎水性シリカ 110 ± 20 50 負 ® AEROXIDE Alu C 親水性アルミナ 100 ± 15 50 正 AEROXIDE® Alu C 805 疎水性アルミナ 100 ± 15 50 やや正 AEROXIDE® Alu 130 親水性アルミナ 130 ± 20 50 正 ® フュームドシリカAEROSIL® は粉体の流動性を向上させる。 右: AEROSIL®を含まない粉体塗料 左: AEROSIL® R 972 を含む粉体塗料 6 試験の主目的は、粉体塗料に対する様々なフュームドシリ カ及びフュームドアルミナの有効性を評価することです。試 験は全て黒色ポリエステル系の粉体塗料を用いて行いまし た。粒径の異なる粉体塗料における特性について評価を行 うために、2種類の粒径を選択しました(微粉体:d50 = 21.5 µm / 粗粉体:d50 = 31.0 µm)。添加量は総量に対する重量 比で微粉体塗料では0.5 %、粗粉体塗料では0.3%に設定し ております。微粉体、粗粉体共に添加剤はACM粉砕装置で 粉体塗料中に混合したものです。一般的に粉体塗料の粒径 が小さくなるほど、粉体を十分に覆う為に必要な添加剤の 量は多くなります。 以下の試験をポリエステル系粉体塗料で行いました。 ・安息角(流動性) ・体積膨張(流動性) ・塗着効率 ・ファラデーケージ効果 ・グロス ・ゲル化時間 4 試験方法 4.1 流動性 4.1.1 安息角 した。各粉体サンプルともそれぞれ3 gの粉体質量で3回試 験を行い、これら3つの結果(E1 、E2 及びE3)から平均塗着 効率(E)を求めたものです。 m1 m2 m3 + + 安息角は粉体の流動性を測定する際に一般に用いられる E1+ E2 + E3 3.0 3.0 3.0 = 試験方法のひとつです。これは平面とパイル(平面への粉 塗着効率 E = 3 3 体の落下によって形成される山)の表面との間の角度とし て定義されます。安息角が小さいほど流動性は良いと言え 但しm1、m2及びm3は塗装板に塗着した粉体質量を示しま ます。 す。 4.1.2 体積膨張 体積膨張は粉体の流動性を測定する際に使われるもうひ とつのパラメータです。体積膨張はアクリル柱にAEROSIL®を 充填し、このときの高さをH0とします。アクリル柱下部より エアーを流し流動化させ、このときの流動化後の高さをHと し膨張率が20%となるよう、エアーの流量を調整します。こ のときの気流速度Uの値が低いほど粉体の流動性が良い と言えます。 4.2 塗着効率 4.3 ファラデーケージ効果 ファラデーケージ効果試験は下の写真に示す通り、中央に 深さ1インチ、幅1インチの溝のある特別に設計された7イ ンチ×6インチのアルミニウムパネルを使って行ったもので す。 まず、吹付けに先立ち3枚のアルミニウムシート(1インチ×6 インチ)をそれらの対応する位置にクリップで取り付けます (2枚を溝の外側、1枚を溝の内側)。 塗着効率試験はGEMA手動スプレーガンを用い、ガンから 20 cm離した直径30 cmのアルミニウム板に塗装を実施しま 体積膨張試験に用いられるアクリル柱 ファラデーケージ効果 試験のために設計さ れたアルミニウムパネ ルと3枚のアルミニウム シート アルミニウムシート 吹付け後のアルミニウム パネルと固定されたアル ミニウムシート 7 5. ポリエステル系粉体塗料におけるAEROSIL® とAEROXIDE® (コロナ放電塗装) 次にパネル全体をアースしスプレーブース内に吊り下げ、3 本のシートのそれぞれを各吹付けの前後に秤量し、付着し た粉体の質量を求めます。溝の内側のシートの粉体質量を minternal、溝の外側の2枚のシートの平均粉体質量をmouterと しふたつの重量を比較します。 mouter = mouter (oben) + mouter (unten) 2 . フュームドシリカとフュームドアルミナの評価試験結果は下 記に示したとおりです。 5.1 流動性評価試験結果 5.1.1 安息角試験 これらminternalとmouterの質量の比率としてファラデーケージ 粗いポリエステル系粉体塗料においても微細なものにお 効果を評価することができます。 いても、AEROXIDE® Alu C 805は最も高い流動性を示しまし た。ついでAEROXIDE® Alu 130が効果を示しました。 (グラフ1 minternal 及びグラフ2参照) R= mouter R = 1はファラデーケージ効果が無いこと、R = 0はファラデ ーケージ効果が最大で内面に粉体が全く塗着されていな いことを示します。 4.4 グロス グラフ1 粗いポリエステル系粉体塗料にアルミナを添加した 場合の安息角試験結果 安息角 Rohpoint Instrumentation Ltd. 社製のNovo-Gloss光沢計を 使い、粗いポリエステル粉体と微細なポリエステル粉体の 様々なサンプルについてグロス値を評価しました。試験の 実施には20° と60°の入射角度を選択した。これらの値はグ ロス測定の標準として業界で広く使われているものです。 各パネルを様々な点で6回測定し、平均グロス値を計算しま した。 リファレンス 4.5 ゲル化時間 この試験には熱硬化性粉体塗料のゲル化時間に関する ASTM標準試験方法(D 4217-02)を用いました。この試験方 法は熱硬化性粉体塗料が指定温度において金属表面上で ゲル化するのに必要な時間を確定します。同じ質量の各サ ンプルを200 °C ±2 °Cに加熱した表面に置き、加熱開始と 硬化開始との間の時間がゲル化時間と定義しています。 グラフ 2 微細なポリエステル系粉体塗料にアルミナを添加し た場合の安息角試験結果 安息角 リファレンス * 安息角が小さいほど流動性は改善されていることになります 8 次にフュームドシリカの結果はグラフ3及び4に示してい ます。粗い粉体塗料の場合ではAEROSIL® R 812 、AEROSIL® 200 、AEROSIL® R972の順に、微細な粉体塗料の場合では AEROSIL® R 812、AEROSIL® 200が最も流動性の改善がみられ ます。 全体的には全ての評価サンプルが安息角試験において流 動性を改善していると言うことができます。粗いポリエステ ル系粉体塗料においても微細なものにおいても、AEROSIL® R 812 、AEROSIL® 200 及びAEROXIDE® Alu C 805が優れた流動 特性をもたらします。 (グラフ3およびグラフ4参照) グラフ 3 粗い粉体塗料におけるシリカの安息角 安息角 リファレンス 5.1.2 体積膨張試験 粉体塗料の流動性を評価するとき、体積膨張試験は安息 角試験と比べてより直接的な試験方法といえます。グラフ5 と6にフュームドシリカとフュームドアルミナの結果を示して います。これらのグラフは20 %の体積膨張を得るために必 要な気流速度U [cm/s]を示しています。フュームドシリカま たはフュームドアルミナを含まない粉体塗料の気流速度は 常に> 1 cm/sでした。フュームドシリカ及びフュームドアルミ ナの添加により、体積膨張試験においてポリエステル系粉 体塗料の流動性が明らかに向上しているのが分ります。 微細なポリエステル粉体についてはAEROXIDE® Alu C 805 や AEROXIDE® Alu Cなどのフュームドアルミナがフュームドシリ カと比べてより効果的であるといえます。フュームドシリカ の中では疎水性のAEROSIL® R 812が最も良い結果が得られ ました。 粗い粉体塗料においてはフュームドシリカの方が流動化剤 としてやや優れていることが確認されました。但しAEROXIDE® Alu C 805とAEROXIDE® Alu 130の結果は非常に近接し た結果となりました。 グラフ5 微細な粉体塗料におけるシリカとアルミナによる体 積膨張試験 気流速度 グラフ 4 微細な粉体塗料におけるシリカの安息角 悪い 安息角 良い リファレンス グラフ 6 粗い粉体塗料におけるシリカとアルミナによる体積 膨張試験 気流速度 * 安息角が小さければ流動性は改善されていることになります 悪い 良い 9 結果全体をまとめると、粗いポリエステル粉体塗料につい ても微細なものについても流動化に対して最も効率が良 い製品はAEROXIDE® Alu C 805とAEROSIL® R 812であるとい えます。その疎水性によりこれら製品は共に流動性を改善 し、貯蔵及び塗装中の粉体塗料の吸湿を防ぎます。 ここで流動性を改善するための最良の添加剤の選択は常 に粉体塗料に依存するということがいえます。よくあるこ とですが、或る粉体塗料において最良に働くものが全ての 粉体塗料において最適な結果をもたらすとは限りません。 5.2 塗着効率 コロナ放電プロセスによる塗着効率の評価方法を以下に 示します。直径30 cmの標的パネルとGEMAスプレーガン との距離が20 cmとなるよう設置します。3 gの粉体塗料を パネルに吹き付け、吹付け後のパネルの被覆率が高けれ ば高いほど塗着効率が高いことを示します。乾燥時間は 200 °C、10分で行いました。 5.3 ファラデーケージ効果 ファラデーケージ効果を確認するためにGEMAスプレーガ ンを使って粉体塗料をパネルに塗付しました。塗装均一性 の最終評価は4.3項に従いました。ファラデーケージ効果 が最大のときは塗装の均一性が悪く、これは「R」値が低い ことに対応しています。R = 1はファラデーケージ効果が皆 無であり下地全体にわたって塗装が均一であることを表し ています。 微細な粉体塗料においてはフュームドシリカを添加するこ とにより、ファラデーケージ効果を緩和してより塗装が均 一になることが確認されています(グラフ7)。AEROSIL® R 812が最も高い効果を示しました。 微細な粉体塗料におけるファラデーケージ効果に 対するフュームドシリカの影響。R = 1はファラデー ケージ効果が全く無いこと(均一な塗装)、R = 0は ファラデーケージ効果が最大であること(不均一な 塗装)を示す グラフ 7 R 製品 AEROSIL R 812 AEROXIDE Alu C リファレンス 塗着効率 [%] 77 72 71 66 表4 製品 塗着効率[%] 10 ® Contro l 0,63 ® 0,66 0,60 AEROSIL 200 ® 0,69 AE RO SIL ® R 972 微細な粉体塗料における塗着効率の結果 良い 0,72 AE RO SIL ® 200 表3 0,75 AER O SIL R 812 塗着効率の結果は粉体塗料の粒径に非常に大きく依存 していると言えます。微細な粉体について塗着効率が増 進したサンプルは、粗い粉体塗料では塗着効率を低下さ せる傾向が見られました。微細な粉体ではAEROSIL® 200が 最良の結果を示しました(表3)。一方で、粗い粉体では AEROXIDE® Alu 130とAEROXIDE® Alu Cが良好な結果を示し ました(表4)。 悪い ® 粗い粉体塗料における塗着効率の結果 AEROXIDE® Alu 130 AEROXIDE® Alu C AEROXIDE® Alu C 805 リファレンス 80 78 75 65 粗い粉体塗料においてはAEROXIDE® Alu C 805だけが被覆 率をやや向上させる結果となりました。今回テストした他の サンプルは、全てファラデーケージ効果について目立った プラス効果は見られませんでした。 6 ポリエステル系粉体塗料におけるAEROXIDE®製 品(トリボ帯電塗装) これら試験結果により一般にフュームドシリカがグロス に与える影響はアルミナよりも大きいことを示していま す。AEROXIDE® Alu C 805は粉体塗料パネルのグロスへの 影響はありませんでした。 5.5 ゲル化時間 粗い粉体塗料のゲル化時間についてはAEROXIDE® Alu 130及び AEROXIDE® Alu C 805ではほとんど影響が認め られなかったのに対し、AEROSIL® R 812 及び AEROSIL® 200ではゲル化時間を延ばす傾向が見られました。同じ 傾向は微細なポリエステル系粉末塗料について見られ ましたが、粒径が小さいことにより、硬化の開始は粗い 粉体塗料と比べてやや早い結果となりました。 6.1 塗着効率 塗着効率は4.2項に従い実施しました。アルミナの試験につ いては、手動スプレーガン(Nordson Tribomatic 631 302C) による静電塗装を用いました。 試験を行ったフュームドアルミナは全てポリエステル系粉 体塗料の塗着効率を向上させました。コロナ放電塗装につ いては塗着効率が粉体塗料の粒径に非常に大きく依存す るのに対し(5.2項参照)、AEROXIDE® Alu C 805は、粉体塗 料の粒径に関わり無く、静電塗装において塗着効率を大 いに向上さる結果となりました。 (グラフ8及びグラフ9参 照) 粗いポリエステル系粉体塗料におけるフュームドア ルミナの塗着効率 グラフ8 塗着効率 リファレンス 20°及び60°のどちらの入射角についても、また粗い粉 体及び微細な粉体のどちらについても、フュームドシリ カを添加することによってグロスの低減が見られまし た。AEROSIL® R 972は今回テストした中では他のフューム ドシリカと比べてグロスに対する影響が少ない結果と なりました。 流動性の改善に加えフュームドアルミナは、トリボ塗装向 けの粉体の帯電性を向上させるためにも使用されます。次 に、塗着効率及びファラデーケージ効果に対する様々なア ルミナの影響を評価し、その結果は下記に示します。 グラフ9 微細なポリエステル系粉体塗料におけるフュームド アルミナの塗着効率 塗着効率 リファレンス 5.4 グロス 11 6.2 ファラデーケージ効果 ファラデーケージ効果試験を4.3項で記述した方法で行い ました。吹付けには手動スプレーガンNordson Tribomatic 631 302Cを使用しました。ファラデーケージ効果が最大の ときは被覆率が悪く、すなわち「R」値は低くなります。R = 1はファラデーケージ効果が皆無で、 下地全体にわたって 被覆が一貫していることを表しています。 粗い粉体塗料においては、試験した全てのフュームドアル ミナによって、凹部のアルミニウムシートの被覆向上が見 られました。とくにAEROXIDE® Alu C 805とAEROXIDE® Alu 130は粉体塗料のまわり込み性を大変良く向上させる結果 となりました(グラフ10参照)。 グラフ10 静電塗装による粗い粉体塗料のファラデーケージ 効果 リファレンス 良い 悪い 微細な粉体塗料においては、ファラデーケージ効果を克服 し、凹部のアルミニウムシートにおける塗着性を増進する にはAEROXIDE® Alu 130が最も効果がありました。 12 7 AEROSIL®とAEROXIDE®の物理化学データ及び登録 表5 AEROSIL®とAEROXIDE®の物理化学データ及び各国の登録状況 AEROSIL® 比表面積(BET法) 見掛比重*(工場出荷時の概算 値) AEROXIDE® 単位 200 380 R 972 R 812 R 8200 Alu 130 Alu C Alu C 805 2 m /g 200 ± 25 380 ± 30 110 ± 20 260 ± 30 160 ± 25 130 ± 20 110 ± 15 90 ± 15 g/L 50 50 50 60 140 50 50 50 % ≤ 1.5 ≤ 2.0 ≤ 0.5 ≤ 0.5 ≤ 0.5 ≤ 5.0 ≤ 5.0 ≤ 2.0 3.7 - 4.7 3.7 - 4.7 3.6 - 4.4* 5.5 - 7.5 ≥ 5.0 4.4 – 5.4 4.5 – 5.5 3.0 – 4.5 DIN EN ISO 787/11, Aug. 1983による 水分量 (工場出荷時))105 °Cで2時間加熱 pH値 4 % 水分散液中 炭素含有量 % – – 0.6 – 1.2 2.0 – 3.0 2.0 – 4.0 – – 3.5 – 4.5 SiO2含有量 % ≥ 99.9 ≥ 99.9 ≥ 99.9 ≥ 99.9 ≥ 99.9 ≤ 0.10 ≤ 0.10 ≤ 0.10 Al2O3含有量 % ≤ 0.05 ≤ 0.05 ≤ 0.05 ≤ 0.05 ≤ 0.05 ≥ 99.8 ≥ 99.8 ≥ 95.0 灼熱した材料に基づく 灼熱した材料に基づく * Tapped Density EINECS (ヨーロッパ) TSCA (米国) AICS (オーストラリア) DSL (カナダ) PICCS(フィリピン) MITI KECI IECS NZloC (日本) (韓国) (中国) (ニュージーランド) AEROSIL® 200 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROSIL® 380 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROSIL R 972 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROSIL R 812 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 ® AEROSIL R 8200 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROXIDE® Alu C 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROXIDE® Alu C 805 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 AEROXIDE Alu 130 登録済 登録済 登録済 登録済 登録済 ® ® ® 登録済 データはすべて代表値 13 8 まとめ 今回行ったポリエステル系粉体塗料における研究に より、フュームドシリカとフュームドアルミナの粉体塗 料にもたらすプラス効果が再確認されました。 AEROXIDE® Alu C、AEROSIL® 200、AEROSIL® R 812は、粉 体塗料の添加剤としてよく知られていますが、本研究 によりAEROXIDE® Alu C 805 や AEROXIDE® Alu 130につ いても、今日試験した項目において付加的なプラス効 果をもたらすことが明らかになりました。 特に疎水性グレードのフュームドアルミナAEROXIDE® Alu C 805を添加した粉体塗料において一貫した改善 が実証されたことにより、微細な粉体塗料のみならず 粗い粉体塗料においても流動性を改善するために非 常に効率的な添加剤であることが判明しました。 静電塗装の場合でもAEROXIDE® Alu C 805の塗着効 率は微細な粉体、粗い粉体いずれも優れた結果を示 しましたが、ファラデーケージ効果の改善は特に粗い 粉体において見られました。 全体的にみるとAEROXIDE® Alu C 805及びAEROSIL® R 812が最良の効果を示し、粗い粒径の粉体と微細な粒 径の粉体の両方について最も好適な添加剤と考える ことができます。 当社の最近の製品開発は、拡大する粉体塗料市場に おける競争力を維持するため、粉体塗料の特性を一 層向上させることができます。今回の研究報告によっ て、貴社の粉体塗料に最も適した製品の選択に力添 えができれば幸いです。 14 日本アエロジル株式会社 東京本社 〒163-0913 東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス13階 tel 03-3342-1789 fax 03-3342-1761 email [email protected] 免責事項 この文書に記した当社の情報、技術等は、現在の当社の知識・ 経験に基づくものです。当社はこれらの情報、技術等による第 三者の知的財産権侵害問題などについて、いかなる保証責任 及び賠償責任も負いません。 また、当社は事前事後の通告なし に、いかなる場合でも、 これらの情報、技術等を変更する権利を 有します。当社の提供するこれらの情報、技術等の記載は当社 の製品・サービス内容を記述したものであり、いかなる保証責 任も意味するものではありません。 また、当社製品のユーザー は、適切な資格を持つエキスパートによって製品の機能・適応 性を検査する義務、および第三者に対する責任を負担します。 こ の文書内の他社名・他社の商品名の引用は、他社の利益・損失 を目的としたものではありません。 四日市工場 アプライドテクノロジーグループ 〒510-0841 三重県四日市市三田町3番地 tel 059-345-5270 fax 059-346-4657 大阪営業所 〒556-0017 大阪府大阪市浪速区湊町1-4-38 近鉄新難波ビル12階 tel 06-6645-6461 fax 06-6645-9151 TI 1340 - 0 - MAR09 www.aerosil.jp