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資料4‐2 大学のグローバル化に関する現状について (PDF
エラスムス計画 1.エラスムス計画(The European Community Action Scheme for the Mobility of University Students : ERASMUS)は、各種の人材養成計画、科 学・技術分野における EU(計画当初は EC)加盟国間の人物交流協力計画の 一 つ で あ り 、 大 学 間 交 流 協 定 等 に よ る 共 同 教 育 プ ロ グ ラ ム ( ICPs : Inter-University Co-operation Programmes)を積み重ねることによって、 「ヨ ーロッパ大学間ネットワーク」(European University Network)を構築し、 EU 加盟国間の学生流動を高めようという計画である。 2.エラスムス計画の提案は、1985 年 12 月、当時の EC 委員会より閣僚理事 会に提出された計画書に始まり、約 1 年半に及ぶ閣僚理事会での協議を経て、 1987 年 6 月 15 日に正式決定され、パイロットプログラムが開始された。 2007 年に 20 周年を迎えた。参加する学生の 80%が初めての留学体験であ り、1987 年には 3,244 名だった参加者は、2005 年には 15 万人を超えた。 3.計画の目的 EU の経済力の強化と加盟国間の結合の促進という、極めて明確で具体的な 目標をもって実施されている。 (1)EU 全体として人的資源を養成・確保すること (2)世界市場で EU の競争力を向上させること (3)加盟国の大学間の協力関係を強化すること (4)EU 市民という意識を育てること (5)域内での協力事業への参加経験を学卒者に与えること 4.計画の推移 ○第 1 期(1987-1995 年) ・開始当初は、年間約 3,000 人の学生交流(参加 12 カ国、300 校程度)、約 1,000 人の教官交流 ・ 1989 年 に 「 ヨ ー ロ ッ パ 単 位 互 換 制 度 ( European Credit Transfer System :ECTS)」の導入 ○第 2 期(1996-2000 年):ソクラテス計画に含まれる ・9 つの事業(①学生交流、②教官短期交流、③教官長期交流、④事前交渉、 ⑤欧州研究モジュール、⑥学部学生対象のカリキュラム開発、⑦大学院学 生対象のカリキュラム開発、⑧総合語学教育科目、⑨集中講座)から成る。 52 ○第 3 期(2001-2006 年):ソクラテスⅡ計画に含まれる ・ソクラテスⅡ計画の 7 年間の予算は、約 18 億 5 千万ユーロ(このうち約 50%がエラスムス計画)。 ・8 つの事業(①学生交流、②教官短期交流、③事前交渉、④欧州研究モジュ ール、⑤学部学生対象のカリキュラム開発、⑥大学院学生対象のカリキュ ラム開発、⑦総合語学教育科目、⑧集中講座)から成る。 ○第 4 期(2007-2013 年):生涯学習行動計画に含まれる ・2012 年までに 1987 年からの累計 300 万人の交流達成との数値目標のほか、 学位の透明性・適合性の向上などが盛り込まれている。 ・生涯学習行動計画の 7 年間の予算は、約 70 億ユーロ(このうち約 40%が エラスムス計画。エラスムス計画予算のうち 80%以上は流動性の向上)。 5.予算の内訳(2005 年度) 2005 年度のエラスムス計画予算は約 2 億 100 万ユーロ(前年度比 19.6%増) で、1 国・機関あたり平均約 628 万ユーロ、最大助成受給国はドイツで約 2,339 万ユーロ。 (1)学生流動化:約 1 億 6,125 万ユーロ、154,421 人(前年度比 7.2%増)。 往復旅費、語学学習費、滞在費(自国と相手国の生活費の差額)など の助成。 (2)教官流動化:約 1,551 万ユーロ、23,449 人(前年度比 12.3%増)。 (3)機関交流:約 2,313 万ユーロ。 (4)語学課程:約 107 万ユーロ。 6.計画の課題 (1)需要増加に見合う予算の不足(助成金のための予算、事務運営のため の予算等) (2)言語の違いによる学生流動の不均衡(英仏語圏優位) (3)学生の不安(助成金の低さ、他国での勉学、単位認定・資格取得への 不安等 (4)自由流動学生の相対的不利 (5)学生宿舎の絶対的不足 53 参考 エラスムス・ムンデュス 本プログラムは、欧州と欧州以外の他の地域との高等教育機関における学生交 流を通して、欧州の大学間の連携を強化し、欧州の高等教育の質と競争力を改 善することを目的とした高等教育計画(「ムンデュス」は、ラテン語で「世界」 の意)。 ○第 1 期(2004-2008 年) ・5 年間の予算は、約 2 億 3,000 万ユーロ(計画当初額)。 ・4 つの事業。 ① 「エラスムス・ムンデュス修士課程」:2006 年末までに 80 課程(プログ ラム終了時の予測は 105 課程)。 ② 欧州以外の地域からの学生及び研究者のための「エラスムス・ムンデュス 奨学金」:2006 年末までに 2,325 人に支給(プログラム終了時の予測は 6,000 人)。 ③ 欧州からの学生及び研究者への奨学金のある欧州以外の地域の高等教育機 関との連携:2006 年末までに 19 件(プログラム終了時の予測は 50 件)。 ④ 欧州高等教育の世界的な魅力を高める取組:2006 年末までに 23 件(プロ グラム終了時の予測は 50 件)。 ○第 2 期(2009-2013 年) ・5 年間の予算は、約 4 億 9,369 万ユーロ(計画当初額)。 ・3 つの事業。 ① 奨学金を含む「エラスムス・ムンデュス修士課程」と「エラスムス・ムン デュス博士課程」 ② 奨学金を含む欧州以外の地域の高等教育機関との連携 ③ 欧州高等教育機関の魅力の充実 54 「留学生30万人計画」について 1.我が国の留学生交流の現状 我が国への留学生の受け入れについては、平成15年に「留学生受入れ10万人 計画」を達成し、平成17年には過去最高の約12万2千人となったものの、近年 その伸びは停滞しており、平成19年5月では約11万8千人となっている。この うち中国・韓国・台湾といった東アジアからの留学生が全体の8割を占め、教育段 階別の割合は、学部生が約50%、大学院生が約27%、専門学校が約19%であ る。また、今後、留学生を受入れを進める上で、量のみならず質の確保が重要な課 題となっている。 一方、我が国からの留学生派遣については、平成16年には約8万3千人(10 年前に比して2万8千人増)であり、うち半数は米国に留学している。真に国際的 に通用するリーダーとなる人材育成のためにも、より多くの日本人学生が海外留学 を経験することは重要である。 2.「留学生30万人計画」について ◆ 福田総理大臣施政方針演説 平成20年1月18日の施政方針演説において、新たに、日本を世界により開か れた国とし、アジア、世界とのヒト・モノ・カネ・情報の流れを拡大するグローバ ル戦略の一環として、「新たに日本への『留学生30万人計画』を策定し、実施に 移す」との方向性が示された。 ◆ 中央教育審議会大学分科会留学生特別委員会 施政方針演説を受けて、留学生特別委員会(座長:木村孟大学評価・学位授与機 構長)において「留学生30万人計画」の具体化に向けた検討を行っており、4月 25日に同特別委員会にて「「『留学生30万人計画』の骨子」取りまとめの考え方」 をとりまとめ、それを踏まえ、30万人の留学生を受け入れるために必要となる具 体的方策の検討を進め、7月8日の中央教育審議会大学分科会で報告した。 ◆ 自由民主党留学生等特別委員会 自由民主党留学生等特別委員会(委員長:下村博文衆議院議員)においては、昨 年11月以来、関係省庁や大学関係者からのヒアリングを実施するなど、今後の留 学生政策の方向について審議を行い、6月5日に「国家戦略としての留学生30万 人を目指して~『留学生30万人計画』実現に向けて~」をとりまとめ、自由民主 党政務調査会長、財務大臣及び文部科学大臣に申し入れを行った。 ◆ 「経済財政改革の基本方針2008」、「教育振興基本計画」 6月27日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2008」においても、 55 教育の国際化の観点から、『留学生30万人計画』が盛り込まれ、同じく7月1日 に閣議決定された「教育振興基本計画」においても、大学等の国際化を推進する観 点から盛り込まれた。 ◆ 「留学生30万人計画」骨子の策定について(平成20年7月29日) 文部科学省ほか関係省庁(外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通 省)により、「留学生30万人計画」の骨子を策定し、閣議後閣僚懇談会において 報告した。 骨子では、日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界の間のヒト・モノ・ カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、2020 年を目途に30万人の留学生受入れを目指すこととし、その際、国別・地域別に優 秀な留学生を戦略的に獲得することとしている。 このため、日本留学への関心を呼び起こす動機づけや情報提供から、入試・入学 ・入国の入り口の改善、大学等の教育機関や社会における受入れ体制の整備、卒業 ・修了後の就職支援等に至るまで、体系的な方策を実施し、関係省庁・機関等が総 合的・有機的に連携して計画を推進することとしている。 今後、関係省庁は、本計画の実現に向け十分に連携しつつ、施策の具体化を図る こととしている。 <方策の項目> (1)日本留学への誘い ~日本留学の動機づけとワンストップサービスの展開 (2)入試・入学・入国の入り口の改善 ~日本留学の円滑化~ (3)大学等のグローバル化の推進 ~魅力ある大学づくり~ (4)受入れ環境づくり ~安心して勉学に専念できる環境への取組~ (5)卒業・修了後の社会の受入れの推進 ~社会のグローバル化~ 56 「留学生30万人計画」骨子の概要 ポイント ☆ 「グローバル戦略」展開の一環として2020年を目途に留学生 受入れ30万人を目指す。 ☆ 大学等の教育研究の国際競争力を高め、優れた留学生を 戦略的に獲得。 ☆ 関係省庁・機関等が総合的・有機的に連携して計画を推進。 1.日本留学への誘い ~日本留学への動機づけ とワンストップサービスの展開~ 2.入試・入学・入国の入り口の改善 ~日本留学の円滑化~ 母国であらゆる 留学情報の入手 を可能に! ○積極的留学情報発信 ○留学相談強化 ○海外での日本語教育の充実 など 大 学 等 海外拠点 連携 在外公館 連携 母国で入学 ○大学の情報発信強化 手続きを ○渡日前入学許可の推進 可能に! ○各種手続きの渡日前決定促進 ○大学の在籍管理徹底と 入国審査等の簡素化 など 独立行政法人 海外事務所 情報発信 留学 3.大学等のグローバル化の推進 4.受入れ環境づくり ~魅力ある大学づくり~ ~安心して勉学に専念できる環境への取組み~ 国際色豊かな ○国際化拠点大学(30)の キャンパスに ○渡日1年以内は宿舎提供を可能に ○国費留学生制度等の改善・活用 重点的育成 ○英語のみによるコースの拡大 ○地域・企業等との交流支援・推進 ○ダブルディグリー、短期留学等の推進 ○国内の日本語教育の充実 ○大学等の専門的な組織体制の強化 ○留学生等への生活支援 など など 連携 支援 宿 舎 奨学金 交流支援 宿舎 日本語 生活支援 外務省 企業 連携 経済産業省 法務省 文部科学省 総合的 有機的 連 携 国土交通省 連携 厚生労働省 連携 就職 5.卒業・修了後の社会の受入れの推進 ~日本の社会のグローバル化~ ○産学官が連携した就職支援や起業支援 帰国 留学生の 雇用の促進 ○在留資格の明確化、在留期間の見直しの検討等 ○帰国後のフォローアップの充実 など 57 地域 我が国の外国人留学生の受入の状況 各年5月1日現在 140,000 留学生総数 私費外国人留学生数 国費外国人留学生数 外国政府派遣留学生数 中国人留学生数 120,000 121,812 117,302 109,508 118,498 117,927 106,297 100,000 95,550 78,812 80,000 64,011 留学生総数 60,000 40,000 20,000 71,277 51,298 私費留学生数(内数) 中国人留学生数(内数) 10,428 7,483 0 55,755 国費留学生数(内数) 10,020 2,082 2,181 863 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 出身国・地域別留学生数 (文部科学省及び日本学生支援機構調べ) 国・地域名 国・地域名 留学生数(うち短期留学生) 平成19年5月1日現在 留学生数(うち短期留学生) 中 国 71,277(2,070) 米 国 1,805( 1,252) 韓 国 17,274(1,764) インドネシア 1,596( 109) 台 湾 4,686( 529) バングラデシュ 1,508( 16) ベトナム 2,582( 80) ネパール 1,309( 13) マレーシア 2,146( 25) その他 12,225(2,309) タ イ 2,090( 201) 合 計 118,498(8,368) ○アジア 109,495人 うち 東アジア 94,347人 アセアン、南西アジア 15,148人 ○ヨーロッパ 3,547人 うち中央アジア ○中近東 ○アフリカ 58 279人 797人 989人 ○北 米 2,112人 ○中南米 1,024人 ○大洋州 534人 【在学段階別】 平成19年5月1日現在 学部 大学院 国立 9,767 19,516 公立 1,284 1,337 私立 48,459 10,739 計 59,510 31,592 専修 学校 高専 短大 22,399人 3 準備教育 課 程 計 460 0 0 29,746 1 10 0 2,638 2,101 78 22,389 2,348 86,114 2,110 539 22,399 2,348 118,498 6 31,592人 【専攻分野別】 〔全留学生〕 2,857人 1,586人 農学 2.4% 理学 1.3% 保健 2.3% 工学 15.2% 2,692人 〔うち国費留学生〕 18,059人 その他 8,853人 7.5% 人文科学 1,436人 14.3% 507人 社会科学 14.8% 1,482人 理学 5.1% 人文科学 23.4% 27,763人 18,059人 工学 32.6% 3,273人 社会科学 47,611人 40.2% 1,001人 農学 10.0% 保健 8.1% 811人 その他 8.8% 教育 4.5% 888人 447人 2,514人 家政 2.1% 芸術 2.9% 3,439人 教育 2.6% 芸術 1.4% 3, 124人 家政 0.4% 136人 39人 【宿舎の状況】 ○公的宿舎入居留学生数 27,193人(前年度比 574人減) ① 学校が設置する留学生宿舎 15,543人 ①13.1% 22.9% ②5.4% 国立大学等 84校 6,344人 公立大学 18校 251人 290校 8,948人 私立大学等 ③学校が設置する一般学生寮 5,238人 ③4.4% 留学生総数 118,498人 (100.0%) 77.1% 民間宿舎・アパート等 91,305人(77.1%) 国立大学等 109校 2,723人 公立大学等 18校 176人 私立大学等 222校 2,339人 ②公益法人等が設置する留学生宿舎 6,412人 日本学生支援機構設置留学生宿舎 公益法人設置留学生宿舎 1,936人 785人 地方公共団体設置留学生宿舎 1,259人 公営住宅等 1,883人 民間企業の社員寮 59 549人 大学間ネットワークの取組事例 名称 設立の趣旨 主な活動 IAU (International Association of Universities) 大学相互の連携を強化し、高等教育に 関わる共通の課題に取組むための各種 国際大学協会 支援を行うことを目的としてユネスコの 下に設立。 ・LEADHER(Leadership Development for Higher Education Reform)プログラムの実施 ・高等教育の国際化に関する調査の実施 ・高等教育の展望等をテーマにした会議の開催 IAUP (International University of University Presidents) 各国の大学長レベルによる会議で、グ 世界大学学長 ローバルな高等教育の在り方、学術交 会議 流・協力の推進、教育を通した世界平和 と国際理解の推進等を目的として設立。 ・高等教育の抱える課題および展望をテーマとした地 域会議の開催 ・持続可能な発展、質保証、アクレディテーションに関 する学長レベルのワーキンググループの開催 G8大学サミット EUA (European University Association) ー G8諸国等の大学間で地球規模での持 続可能性実現のために大学が果たすべ き責務とそれらを達成するための具体的 取組みについて議論し、学術界から国 際的な努力を促進し、またそれに対して 貢献することを目指すことを目的に設 立。 ・第1回は「グローバル・サステイナビリティと大学の 役割」をテーマとし、国内の14大学からなるG8大学 サミット運営会議が実施主体となり札幌で開催。G8 諸国及び非G8主要国の大学並びに国連大学の計 14カ国、35大学の総長・学長等約140名が参加。気候 変動問題等に対する科学的で適正な政策の実施を 求める「札幌サステイナビリティ宣言」を採択。 本部所在 参加 地(都市 大学 名、国名) 数 60 参加大 学の所 設立年 属国数 パリ 東京大学、京都大学、東京工業大 約 学、ケンブリッジ大学ペンシルベニ 600 ア大学、南海大学、ヘルシンキ大 学、ハイデルベルク大学等 124 1950 ー 国際基督教大学、関西大学、東京 理科大学、金沢工業大学、バージ 600 ニア大学、テキサス大学、ジョージ タウン大学、ウェストミュンスター大 学等 129 1964 ー ブリティシュ・コロンビア大学、アル バータ大学、フランス エコール・ポ リテクニーク、パリ第4=パリソルボ ンヌ大学、ミュンヘン大学 学長、 アーヘン工科大学、トリノ工科大 学、フィレンツェ大学、同志社大 学、一橋大学、北海道大学、慶應 義塾大学、京都大学、九州大学、 名古屋大学、大阪大学、立命館大 35 学、東北大学、東京工業大学、首 都大学東京、早稲田大学、極東国 立総合大学、インペリアル・カレッ ジ・ロンドン、ケンブリッジ大学、カリ フォルニア大学ロサンゼルス校、 イェール大学、オーストラリア国立 大学、サンパウロ大学、北京大学、 清華大学、インド工科大学カンプー ル校、ソウル国立大学、ヨハネスブ ルグ大学、国連大学 14 2008 ブリュッ セル オックスフォード大学、ケンブリッジ 約 大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロ 800 ンドン、ヘルシンキ大学、ザグレブ 大学、エアフルト大学等 46 2001 ・今後もサステイナビリティに向けての取組みを他大 学に広げる努力をするとともに、政策レベルでの対応 の促進を図っていくこととしており、次回はイタリアで 開催することに合意。 欧州各国の高等教育機関を代表し、協 力のための固有の話し合いの場や高等 ・OECDやUNESCOの国際会議への出席 欧州大学協会 教育・研究方針にかかわる近年の動向 ・域内の大学改革に関する研究・協議 について情報提供することを目的として 設立。 主な参加大学 ACE (American Council on Education) ・米国の高等教育機関の代表としての活動 米国内の高等教育機関の連携強化や 米国教育協議 ・大学の国際化の評価に関する調査研究や国際化戦 ワシント パートナーシップの構築を推進すること 1,828 米国内のほぼ全大学 会 略に関する自己点検評価のガイドライン及び評価指 ン を目的として設立。 標の開発 T.I.M.E (Top Industrial Managers for Europe) 欧州における 理工系大学・ 高等教育機関 のネットワーク APRU (Association of Pacific Rim Universities) AC21 Universitas21 (The Network for International Higher Education) 欧州及び世界各国の高等教育機関の優 れた理工系の課程を修了し、最終的に2 つの機関における修士号の取得を通じ ・相互協定に基づくダブル・ディグリーの積極的推進 (ダブル・ディグリー)、世界に通用する ・ジョイント・プログラムの実施 技術者を育成することを目的として設 立。 パリ ウィーン工科大学、サンパウロ大 学、エコールセントラル、ミュンヘン 51 工科大学、パドバ大学、慶應義塾 大学、東北大学、クイーンズ大学 等 環太平洋地域を代表する大学の学長で 構成され、各国の高等教育の相互協力 関係を強め、環太平洋地域社会にとって 重要な諸問題(経済発展、都市化、技術 シンガ ・博士課程学生のリーダーシップによる会議の開催 環太平洋大学 移転、大気汚染、資源枯渇等)に対し、 ポール国 42 ・教員によるリサーチシンポジウムやセミナーの開催 協会 教育・研究の分野から協力・貢献するこ 立大学 とを目的として設立。 高等教育の発展のためにグローバルな レベルでの相互協力を一層促進するとと 国際学術コン もに、国際社会および地域社会に貢献 AC21国際フォーラムや学生世界フォーラムの開催 ソーシアム するため、産業界とも連携し、国際的な 学術ネットワーク構築を目的として設 立。 ー 名古屋 大学 オーストラリア国立大学、シドニー大学、 メルボルン大学、ブリティッシュコロンビ ア大学、チリ大学、復旦大学、北京大 学、清華大学、中国科学技術大学、浙 江大学、南京大学、香港科学技術大 学、香港大学、国立台湾大学、インドネ シア大学、京都大学、大阪大学、東京 大学、早稲田大学、慶応義塾大学、東 北大学、ソウル大学校、高麗大学校、マ ラヤ大学、メキシコ大学、モンテレー工 科大学 、オークランド大学 、フィリピン 大学、極東国立総合大学、国立シンガ ポール大学、チュラロンコン大学、カリ フォルニア工科大学、スタンフォード大 学、カリフォルニア大学バークレー校、 カリフォルニア大学デイヴィス校、カリ フォルニア大学アーバイン校、カリフォ ルニア大学ロサンゼルス校、カリフォル ニア大学サンディエゴ校、カリフォルニア 大学サンタバーバラ校、オレゴン大学、 南カリフォルニア大学、ワシントン大学 ノースカロライナ州立大学、チュラ ロンコン大学、南京大学、復旦大 20 学、上海交通大学、北京大学、中 国科学技術大学、フライブルク大 学、名古屋大学等 早稲田大学、復旦大学、高麗大学 校、シンガポール国立大学、上海 交通大学、香港大学、デリー大学、 ルンド大学、ユニバーシティ・カレッ ジ・ダブリン、バーミンガム大学、エ 研究型大学の一層の連携を図るため、 ・ワークショップ、シンポジウム、サマースクールの開 バーミン ディンバラ大学、グラスゴー大学、 従来の2国間の大学間交流の枠組では 催等を通じた教職員や学生の交流 ガム大学 21 ノッティンガム大学、マギル大学、 実現困難な規模の連携・協力の機会を ・加盟大学における共同研究やジョイントベンチャー (英国) モンテレー工科大学、ブリティッ への支援 促進することを目的として設立。 シュ・コロンビア大学、ヴァージニア 大学、オークランド大学、クイーン ズランド大学、メルボルン大学、 ニューサウスウェールズ大学 61 ー 1918 20 1989 16 1997 10 2002 13 1997 オーストラリア国立大学 シンガポール国立大学 北京大学 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 カリフォルニア大学バークレー校 10 ケンブリッジ大学 コペンハーゲン大学 オックスフォード大学 東京大学 イェール大学 8 2006 広島大学、九州大学、名古屋大 学、大阪大学、東北大学、東京工 アジア太平洋地域内の高等教育機関間 業大学、筑波大学、神戸大学、立 の協力を推進するとともに、学生と教職 UMAP 命館大学、早稲田大学、中央大 加盟各国との連携・協力の下、UMAP単位互換方式 (University Mobility アジア太平洋 員の交流を増やし、高等教育の質を高 (UCTS)に基づく単位互換普及等により、地域内の学 バンコク 331 学、慶應義塾大学、チュラロンコン in Asia and the 大学交流機構 めることにより、域内諸国・諸地域の文 大学、台湾国立大学、コリマ大学、 生交流を促進。 化・経済・社会制度の理解を深めること Pacific) マラヤ大学、モナシュ大学、メルボ を目的に設立。 ルン大学、香港大学、ベトナム国 立大学ハノイ校、延世大学等 34 1991 ブルネイ工科大学、ブルネイダル サラム大学、カンボジア工科大学、 ガジャマダ大学、バンドン工科大 学、ラオス国立大学、マレーシア科 学大学、マラヤ大学、ヤンゴン大 学、ヤンゴン工科大学、デラサール 19 大学、フィリピン大学、ナンヤン工 科大学、シンガポール国立大学、 ブラパ大学、チュラロンコン大学、 モンクット王工科大学ラカバン、ハ ノイ工科大学、ホーチミン市工科大 学 10 2001 復旦大学 、香港科技大学、南京大 学、北京大学 、清華大学 、中国科 学技術大学、国立台湾大学、清華 17 大学、京都大学、大阪大学、東北 大学、東京工業大学、東京大学、 筑波大学、韓国科学技術院、浦項 工科大学、ソウル国立大学 4 1996 13 2007 IARU (International Alliance of Research Universities) SEED-NET (Southeast Asia Engineering Education Development Network) 将来の世界的リーダーの養成が可能な トップクラスの研究型大学連合を目指 し、教員や学生の交流、共同研究等を通 国際研究型大 じ、多岐にわたる連携を行うために設 学連合 立。 日本・アセアンの首脳のイニシアティブ アセアン工学 により、アセアン大学連合(AUN)のサブ 系高等教育 ネットワークとして、アセアン地域の工学 ネットワーク 系高等教育人材の育成を目的として設 立。 ・加盟大学の学長による定期的な学長会議の開催 ・「人間の移動」、「加齢と健康」、「エネルギー・資源・ オースト ラリア国 環境」、「安全保障」の4分野における共同研究 ・「大学と女性」、「学部教育」、「大学院教育」の分野 立大学 における実態調査の実施 チュラロ ・各分野ごとに拠点校を定める修士課程留学プログラ ンコン大 ムや教員派遣プログラムの実施 学(バン ・東南アジア地域が共通に抱える課題に関する共同 コク、タ 研究プログラムや修了生研究支援プログラムの実施 イ) 東アジアの地域の主要な研究型大学を 集結するフォーラムとして、教員並びに AEARU 学生の交流、共通カリキュラムの開発と ・分子生物学・生物工学やウェブ技術分野における (The Association of 東アジア研究 ワークショップの開催 単位互換、施設・情報・資料の共同利 East Asian 中心大学連合 用、研究における協力、直面する課題に ・学生キャンプの開催 Research 関する討議等の国際会議の共同開催す Universities) ることを目的として設立。 各大学の得意分野を生かし、寒冷圏科 IAI 学分野における大学院教育を充実させ (International 国際南極大学 寒冷圏科学に関する講座や共同研究等の実施 ると同時に、海外の学生との交流を促進 Antarctic Institute) することを目的に設立。 62 ー 北海道大学、東京海洋大学、タス タスマニ マニア大学、ケンブリッジ大学、ブ ア大学 レーメン大学、マレーシア大学、ハ 18 (オースト ミルトン大学、カンタベリー大学、パ ラリア) ラナ代学等 我が国が主導しているアジアにおける知の拠点形成事例 ○アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED) 「橋本イニシアティブ」・「小渕プラン」に基づき、2003年よりアセアン域 内19大学と日本の11大学がネットワークを形成。 ホストとなるアセアン域内の大学に対し、日本の大学が指導し域内修士・博 士プログラム及び域内共同研究プログラムを創設、これにアセアン域内大学が 参加。また、参加大学より日本の大学に博士等留学。 これまで2008年までに444名が学位取得(修士:311名、博士13 3名)、共同プロジェクト222件が発足。 ○アジア諸国との交流(日本学術振興会) アジアに欧米と並ぶ科学技術コミュニティを形成することを目指して、我が国 と相手国の大学等学術研究機関の協力により共同研究等を行う事業を実施して いる。1977年から「拠点大学交流事業」を開始し、2008年までの間に 多国間交流については4件、二国間交流については53件を支援(1件当たり、 10年間にわたり毎年2000~4000万円)した。 なお、より対等な交流形態とするため、相手国の負担能力に応じてマッチン グファンドを求めるなど、相手国の多様な状況にあわせた事業への転換を図り、 上記事業は2010年度末をもって終了することとし、2005年度より、「ア ジア研究教育拠点事業」(1件当たり、最大5年間にわたり毎年1200万円、 2005年~2008年の間に16件支援)、「アジア・アフリカ学術基盤形成 事業」(1件当たり、最大3年間にわたり毎年500万円、2005年~200 8年の間に31件支援)、「日中韓フォーサイト事業」(1件当たり、最大5年間 にわたり毎年1000万円、2005年~2008年の間に7件支援)を実施 している。 63 「平成17年度私費外国人留学生生活実態調査」結果の概要 1.アンケート回答状況 私費外国人留学生の中から無作為抽出により、5,500 人に対してアンケートを送付し、4,155 人から有 効回答を得た。回答率は 75.5%であった。 2.日本留学前の状況 (1)日本を留学先として選んだ理由は、 「日本語・日本文化を勉強したかった」 (49.9%)が最も多い回答 であった。 (2)留学するまで特に苦労したことは「日本語学習」 (56.7%)が最も多い回答であった。 (3)留学情報の入手方法では「インターネットを利用して学校や日本学生支援機構(JASSO)のホームペ ージを検索して」(30.9%)が最も多い回答であった。 3.在日・在学年数及び入学前の活動 在日年数が4年未満の者は 2,891 人と全体の約 7 割(69.6%)を占めている。また、来日後、現在在籍 している大学等へ直接入学した者は 799 人で、全体の 19.3%である。なお、現在の学校に直接入学しなか った者(3,256 人)のうち、現在在籍する学校の直前に日本語学校に在学していたと回答した者が約6割 の 1,863 人(57.2%)である。 4.留学後の日本への印象等 (1)日本に対する印象が「良くなった」の回答が 62.8%であった。 (2)日本人に対する印象が「良くなった」の回答が 58.9%であった。 (3)日年へ留学して、全体として「良かった」の回答が 84.6%であった。 (4)日本に留学して苦労したことは「物価が高い」(74.8%)が最も多い回答であった。 5.収入 (1)収入の平均月額は、136,000 円である。 (2)収入は、主に「アルバイト」及び「親・兄弟、又は親戚からの仕送り」となっている。 (3)居住地域別の収入の平均月額は、東京(154,000 円)を中心とした関東地方が 150,000 円と全国で最 も多く、四国、九州地方が 110,000 円と最も少ない。 6.奨学金 (1)全体の約4割(44.7%)の者が何らかの奨学金を受けている。 (2)在籍段階別の奨学金受給率は、高い順に「大学院博士課程」 、 「大学院修士課程」 、 「短期大学正規課 程」 、 「学部正規課程」となっている。 (3)学習奨励費の給付に対する要望は「支給期間を1年間から延ばしてほしい」(59.1%)が最も多い。 (4)学習奨励費を受けて良かったことは「日常生活に不安がなくなり、勉強に集中できた」(89.3%)が最 も多い回答であった。 7.支出 (1)支出の平均月額は、136,000 円である。 (2)支出のうち「学習研究費」が一番多く、次いで「住居費」 、 「食費」の順になっている。 (3)最も支出が高いのは民間のアパートやマンションに住む専修学校生であり、平均月額は 153,000 円 である。最も低いのは、国立大学に通い大学の寮で生活をする学生で、平均月額は 93,000 円である。 8.アルバイト (1)全体の 8 割(84.4%)が何らかのアルバイトに従事している。 (2)職種は、軽労働の「飲食業」が 1,929 人で全体の半数以上(55.0%)を占めている。 (3)従事時間は週平均「20 時間~25 時間未満」が 1,120 人(31.9%)と一番多く、次いで「15~20 時間 未満」が 839 人(23.9%)となっている。 1 64 9.授業時間を除く学習・研究時間 (1)在籍段階別にみると、 「大学院博士課程」では、186 人(57.1%)が週当たり 35 時間以上勉強してい ると回答しているが、 「学部正規課程」 、 「短期大学正規課程」 、 「専修学校専門課程」在籍者の8割は 学習時間が週 28 時間未満であり、週7時間以上 21 時間未満に集中している。 (2) 「農学」分野の学生の5割以上(54.5%) 、 「医・歯学」の学生の7割以上(74.6%)は、週当たり28 時間以上を学習時間にあてている一方で、 「人文科学」 、 「社会科学」 、 「教育」などの分野で最も回答 が多かったのは、 「週7時間から 14 時間未満」であった。 10.宿舎 (1)住居の形態は、 「民間アパート・マンション等」に居住する者が、3,082 人(74.2%)と最も多い。 (2)一人当たりの専有面積では、10㎡(約6畳)未満の者が全体の約7割(68.0%)を占める。また、 7割以上の者が、個別のキッチン、バス・シャワー、トイレ付きの部屋に居住している。 (3)単身、同居別では、単身(51.1%)の方が多かった。また、同居のうち「3 人で生活」は 853 人(42.2%) 、 「2人で生活」は 839 人(41.6%)である。同居人の種類では、 「外国人留学生」が 1,120 人(55.5%) と最も多い回答であった。 (4)住居費の全国平均月額は 31,000 円で、関東地方が 36,000 円で最も高い。 (5)宿舎の保証人がいると回答した者は、約7割(71.6%)の 2,974 人となっている。また、保証人は、 「日本人の知人」が 1,148 人(38.6%)と最も多い回答であった。 11.授業料等の保証人 授業料等の保証人を「求められた」と回答した者は約6割(61.9%)の 2,571 人となっている。また、 保証人は、 「親族」が 1,270 人(49.4%)と最も多い回答であった。 12.健康 (1)健康保険に加入している者は全体の約 9 割(93.3%)の 3,876 人となっている。 (2)健康保険加入者の中では、日本の国民健康保険に加入している者は 3,697 人(95.4%)になる。 (3)健康保険未加入者 262 人のうち、未加入理由は「保険料が高すぎる」と回答した者が 140 人(53.4 %)で最も多い。 13.卒業後の進路希望等 (1)卒業後の予定は、「日本において就職する」ことを希望した者が 2,338 人(56.3%)で最も多く、次い で「日本において進学」が 2,242 人(54.0%)となっている。 (2) 「日本において就職希望」と回答した者の就職希望分野は、 「海外業務」が 1,170 人(50.0%)で最も 多く、次いで、 「貿易業務」1,116 人(47.7%) 、 「翻訳・通訳業務」892 人(38.2%)となっている。 (3)就職活動時の要望は「留学生を対象とした就職に関する情報の充実」が 1,657 人(70.9%)で、最も 多く、次いで、 「企業においてもっと留学生を対象とした就職説明会を開催してほしい」が 1,087 人 (46.5%)となっている。 2 65 真正な学位と紛らわしい呼称等への適切な対応について ○背景 正規の大学等として認められていないにも関わらず、学位授与を標榜し、真正な 学位と紛らわしい呼称を供与する業者の活動が我が国にも及んでいるとの指摘がな されている。 ○対応状況 ・各大学に対し、真正な学位と紛らわしい呼称等についての、我が国の大学におけ る実態調査を実施した。その結果、複数の大学で、教員の採用・昇進に係る審査 書類に、これらの呼称の記載があったことの報告があった。 ・これを踏まえ、文部科学省より、昨年12月27日付で通知を発出し、大学に対 し、本問題について、より一層の教職員の自覚を促すとともに、教員の採用・昇 進に際し、学位の真正性に留意し、広報媒体においてこうした呼称が表示される ことのないよう、注意喚起を行っている。 ・また、ユネスコのホームページ上にて「ディグリーミル」等から学生を保護する ことを目的に、各国政府により正当と認められた高等教育機関のリスト等を掲載。 現在、13ヶ国の情報のみが試行的に掲載されており、今後、対象国の拡大が予 定されている。 (参考)http://www.unesco.org/education/portal/hed-institutions ・さらに、主要国において、正当と認められた高等教育機関のリストが整備されて いる。 <参考となるウェブサイト> ○米国 -USDE(アメリカ教育省)データベース http://ope.ed.gov/accreditation/Search.asp -CHEA(Council for Higher Education Accreditation)データベース http://www.chea.org/search/search.asp ○中国 -中華人民共和国教育部 英語 http://www.moe.edu.cn/english/list.htm 中国語 http://www.moe.gov.cn/edoas/website18/info11211.htm ○イギリス - Department for Education and Skills http://www.dfes.gov.uk/recognisedukdegrees/index.cfm?fuseaction=content.view&categoryID=8 ○オーストラリア - Australian Qualifications Framework (AQF) Register http://www.aqf.edu.au/register.htm#university ○フランス - Ministere de l`education nationale, de l`enseignement superieur et de la recherche http://www.education.gouv.fr/pid305/adresses-utiles.html 66 真正な学位と紛らわしい呼称等についての 大学における状況に係る実態調査の実施について 1.調査対象 全ての国公私立大学(短期大学を含む)1,195校 (調査開始時点(平成19年7月17日現在)で存在する大学) 2.調査項目の概要 米国、中国、英国、オーストラリアのいずれかに所在地を設定し ているが、これら4カ国の認定リストにない機関が供与した呼称が、 ① 採用・昇進にあたっての審査書類に記載された事例 ② 採用・昇進の審査開始条件となった事例 ③ 採用・昇進にあたって、重要な判断要素となった事例 ④ 大学が発行した冊子やホームページに表示されていた事例 について調査。 3.調査結果の扱い 本調査は、我が国の大学における全体状況を把握し、今後の政 策検討に資することを目的とするため、各大学からの個別の回答 結果は公表しないこととしている。 67 平成 20 年 4 月 8 日報道発表 真正な学位と紛らわしい呼称等についての大学における 状況に係る実態調査について 集計結果 調査実施期間:平成 19 年 7 月 17 日~ 9 月 18 日 調査対象機関:全国公私立大学(短期大学含む)1,195 校 回 答 率:100 % ※カッコ内は該当者の延べ人数 ※波線下線部が追加部分 [採用・昇進(平成16年度~18年度の間に採用及び昇進した教員が対象)] ○「認定リストに掲載のない機関が供与した呼称」が、採用・昇進にあたって の審査書類に記載されていた事例 国立…大学 公立…大学 私立…大学 - 9 校(10 名) - 3 校( 4 名) - 27 校(29 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) 短期大学 - 8 校( 9 名) 合計(短期大学含む)- 47 校(52 名) [採用・昇進(平成16年度~18年度の間に採用及び昇進した教員が対象)] ○「認定リストに掲載のない機関が供与した呼称」を有していることを以って、 採用・昇進の審査開始条件となった事例 国立…大学 公立…大学 私立…大学 - - - 1 校( 1 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) 短期大学 - 3 校( 3 名) 短期大学 - 合計(短期大学含む)- 0 校( 0 校( 1 校( 5 校( 0 名) 0 名) 1 名) 5 名) [採用・昇進(平成16年度~18年度の間に採用及び昇進した教員が対象)] ○「認定リストに掲載のない機関が供与した呼称」を有していることが、採用 ・昇進にあたって、重要な判断要素となった事例 国立…大学 公立…大学 私立…大学 - 1 校( 1 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) - 0 校( 0 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) - 3 校( 3 名) 短期大学 - 1 校( 1 名) 合計(短期大学含む)- 5 校( 5 名) [対外広報(平成18年度発行・開設対象、平成19年3月31日時点の所属教員)] ○「認定リストに掲載のない機関が供与した呼称」が、大学が発行した冊子や ホームページに表示されていた事例 国立…大学 公立…大学 私立…大学 - 10 校(10 名) - 4 校( 4 名) - 30 校(33 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) 短期大学 - 0 校( 0 名) 短期大学 - 5 校( 6 名) 合計(短期大学含む)- 68 49 校(53 名) 高等教育の国際的な質保証を巡る世界の動向 大きな変革期にある大学を取り巻く国際情勢 大きな変革期にある大学を取り巻く国際情勢 ヨーロッパにおける取組例 ヨーロッパにおける取組例 国際機関等における検討 国際機関等における検討 2010年までに「欧州高等教育圏」の 建設を目指して 国際的な大学間の競争と協働が発展 (分校、提携、eラーニングなど) 学位等の国際通用性の確保 英独仏の高等教育の特徴 * 実質的に、ほぼすべてが国立(州立) * 新規の大学設置は、ほとんどない ディグリー・ミル等からの学習者等の保護の観点 米国・豪州等を発端に、世界各国においても「ディグリー・ミル (真正な学位と紛らわしい称号を供与する者)」による学習者 被害の問題が顕在化 ボローニャ宣言(1999年) ボローニャ宣言(1999年) 欧州29カ国の教育大臣が署名 (2007年5月には46ヶ国に拡大) 高等教育の質保証を国際的な観点から 検討することが世界的な重要課題に ・3段階構成の学修課程の導入 ・3段階構成の学修課程の導入 学士(3年)、修士(2年)、博士(3年) 学士(3年)、修士(2年)、博士(3年) ・ ・ ECTS(ヨーロッパ単位互換システム)を ECTS(ヨーロッパ単位互換システム)を 更に普及 更に普及 ユネスコ決議(2003.11): ・ ・ 学位の学修内容を示す共通様式(「ディプ 学位の学修内容を示す共通様式(「ディプ ロマ・サプリメント」)の2005年以降の本格的導入 ロマ・サプリメント」)の2005年以降の本格的導入 各国に高等教育の質保証体制の充実を要請 ・ ・ 質の保証の共通システムの構築; 質の保証の共通システムの構築; ①ユネスコ/OECD ①ユネスコ/OECD ①ユネスコ/OECD 国境を越えて提供される高等教育の質保証に関 国境を越えて提供される高等教育の質保証に 国境を越えて提供される高等教育の質保証に関 するガイドライン するガイドライン 関するガイドライン 質の高い教育を提供する枠組みの構築、学生等 質の高い教育を提供する枠組みの構築、学生等 の保護のために「政府」、「高等教育機関」等 の保護のために「政府」、「高等教育機関」等 が取り組むべき事項を指針として提唱。200 が取り組むべき事項を指針として提唱。200 4年4月以降3回の策定会合を経て、ガイドラ 4年4月以降3回の策定会合を経て、ガイドラ インを採択。 インを採択。 ユネスコ(2005年10月)、OECD(2 ユネスコ(2005年10月)、OECD(2 005年12月) 005年12月) *各国の質保証システムの中で、 *各国の質保証システムの中で、 ①機関の内部評価および外部評価の実施、 ①機関の内部評価および外部評価の実施、 ②アクレディテーションを含む質の保証システムを構築 ②アクレディテーションを含む質の保証システムを構築 *欧州質保証ネットワーク(ENQA)において、 *欧州質保証ネットワーク(ENQA)において、 欧州における質の保証におけるスタンダード、手続き、 欧州における質の保証におけるスタンダード、手続き、 指針の開発、適切なピア・レビューの方策検討 指針の開発、適切なピア・レビューの方策検討 ②ユネスコ ②ユネスコ 高等教育機関に関する情報ポータル 高等教育機関に関する情報ポータル 高等教育機関に関するポータルサイト作成のた 高等教育機関に関するポータルサイト作成のた め、18カ国程度が参加するパイロット・プロ め、18カ国程度が参加するパイロット・プロ ジェクトを実施。日本も参加 ジェクトを実施。日本も参加。 。 各国の事前関与と相まって、高等教育の 各国の事前関与と相まって、高等教育の 質保証と制度の共通化を目指す 質保証と制度の共通化を目指す 69 UNESCO/OECD 国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン(概要) ガイドラインの目的 本ガイドラインは、グローバル化の進展に伴う海外分校の設置や e ラーニングといった新た な形態を含む国境を越えた高等教育の提供の進展に対応し、国境を越えて提供される高等教 育の質保証に関する国際的な枠組み1の提供を目的としている。この枠組みを通じて質の高い 高等教育が国境を越えて展開されることを促し、高等教育の国際化の恩恵を最大限に高める 一方で、質の低い教育や不当な提供者から学生等の関係者を保護することを意図している。 ガイドラインの内容 「政府」、「高等教育機関・提供者」、「学生団体」、「質保証・適格認定機関」、「学位・学修認証 機関」、「職能団体」の6者が取り組むべき事項を指針として提唱。その内容は大きく4つに分け られる。(括弧内は提唱がなされている関係者) ① 高等教育の受入国・提供国の協力等による国境を越えた高等教育の質保証体制の整備 (政府、高等教育機関・提供者、学生団体、質保証・適格認定機関) ② 学位等や職業資格の認証の過程の円滑化及び公正さの確保(政府、高等教育機関・提 供者、学位・学修認証機関、職能団体) ③ 国内外での関係者同士あるいは関係者間のネットワーク構築、協力・連携の強化(全関 係者) ④ 国境を越えて提供される高等教育の質等に関する正確でわかりやすい情報提供等(全 関係者) このほか、適当と考えられる場合には、ユネスコ・欧州評議会の「国境を越えた教育提供に おけるグッド・プラクティス規約」や「海外の学位等の評価の基準及び手続きに関する提言」な どの関連文書を活用することも提唱されている。 ① 高等教育の受入国・提供国の協力等による国境を越えた高等教育の質保証体制の整備 • 政府による国内で活動する外国の機関・提供者の登録・認可制度の整備 • 政府による国内外の質保証・適格認定機関との協議 • 政府や質保証・適格認定機関による国境を越えた高等教育に対応した質保証制度の整備 • 高等教育機関・提供者による自らの質に対する責任 ¾ 海外で提供する教育が国内で提供するものと同等の質であることの保証 ¾ 受入国の質保証・適格認定機関との協議、受入国の制度の尊重 ¾ 教員の質や教育研究環境への配慮、内部の質管理制度の構築、維持 • 学生団体による国境を越えて提供される高等教育の質の向上に向けた積極的な関与 • 質保証制度の多様性を尊重した協調の促進のため、提供国・受入国の質保証・適格認定機 1 本ガイドラインの趣旨は、国際的な高等教育の質保証のための統一的基準や共通のルールを定めるも のではなく、各国がそれぞれの高等教育制度に照らして、自国の責任において高等教育の質を確保する ことを前提としつつ、各国間の信頼と高等教育制度の多様性の尊重に基づく質保証に関する国際的な協 力を促進していくものである。 70 関間の協力強化や質保証・適格認定機関による相互理解に基づく協定の締結、国際的な共 同プロジェクトへの着手 • 質保証制度自体の質の向上のため、質保証・適格認定機関による内部の質管理制度の確 立や外部評価の導入 ② 学位等や職業資格の認証の過程の円滑化及び公正さの確保 • 政府によるユネスコ地域条約の締結及びそれに基づく全国情報センターの設立あるいは学 位等の認証に関する二国間又は多国間合意の締結・促進 • 高等教育機関・提供者によるパートナーシップ等を通じた学位等の同等性又は互換可能性 の承認 • 学位・学修認証機関による認証までのプロセスが公正かつ一貫したものであることの確認、 学位等の認証に関する手続きの信頼性の向上 • 学位・学修認証機関による質保証・適格認定機関をはじめとする関係者との協力・連携 • 職能団体による職業資格の前提となる教育プログラムや学位等の比較のための評価の基 準や手続きの確立 • 職能団体による学位・学修認証機関、高等教育機関・提供者、質保証・適格認定機関との協 力・連携 ③ 国内外での関係者同士あるいは関係者間のネットワーク構築、協力・連携の強化 各関係者に対して国内外でのネットワークの形成・参加や協力・連携が提唱されている。 • グッド・プラクティスその他の情報の共有のための各関係者同士のネットワーク • 国境を越えた高等教育の質保証、海外の学位等の認証の円滑化につながるよう、相互理解 を深めるための各関係者同士の国際的な協力・連携(特に質保証・適格認定機関について は受入国・提供国間の連携強化や協定の締結が提唱されている。) • 国境を越えた高等教育の質保証、海外の学位等の認証の円滑化につながるよう、相互理解 を深めるための関係者間の国内的・国際的な協力・連携(特に質保証・適格認定機関と学 位・学修認証機関間、学位・学修認証機関と職能団体間、また職能団体と他の高等教育分 野の関係機関間の協力・連携強化は重要。) ④ 国境を越えて提供される高等教育の質等に関する正確でわかりやすい情報の提供等 各関係者に対して関連の情報を正確かつ入手しやすい形でわかりやすく提供することが提 唱されている。また、学生団体には質の低い教育や不当な提供者などのリスクに関する学生 の問題意識の向上、学生や入学希望者の適切な情報収集への支援が求められている。 • 政府による登録・認可制度、質保証制度や正当な高等教育機関・提供者に関する情報提供 • 高等教育機関・提供者による自らの質、提供する学位等及び財務状況に関する情報提供 • 質保証・適格認定機関による評価結果も含めた質保証制度に関する情報提供 • 学位・学修認証機関による海外の学位等も含めた認証の基準についての情報提供 • 職能団体による国際レベルにおける職業資格としての相互認証合意を含む職業資格の認 証に関する情報提供 71 附属文書 ユネスコ/OECD 『国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン1 』 (仮 訳) Ⅰ.はじめに ガイドラインの目的 本ガイドラインは、国境を越えて提供される高等教育2 における、国際協力を支援・奨励し、 その質を保証することの重要性について理解を高めることを目的としている。また本ガイド ラインは、学生やその他関係者を、質の低い教育や不当な提供者3 から保護し、人材、社会、 経済及び文化面の要請に応えた、質の高い高等教育が国境を越えて展開されることを促すこ とを目的としている。 ガイドラインの根拠 1980 年代以降、学生、教員、教育プログラムや教育機関、専門職業人材の移動により、国 境を越えて提供される高等教育が大きく進展してきた。それに伴い、海外分校や情報通信技 術を利用した高等教育の配信、営利目的の教育提供者など、新しい提供形態や提供者も登場 してきている。このような、新しい形の国境を越えた高等教育の提供は、受入国における人 材、社会、経済及び文化の発展に寄与することが目的とされている場合には、個々の学生の 技能や能力を伸ばす機会を拡大するとともに、国全体の高等教育制度の質の向上に資するも のである。 国境を越えて提供される高等教育も視野に入れて、質保証や適格認定、学位等や職業資格 の認証に関する国内的枠組みが整備されている国もあるが、多くの国は未だに、国境を越え て提供される高等教育に積極的に向き合う準備ができているとはいえない状況にある。 また、 質保証や適格認定に関する制度が国により異なる上、国際レベルで取組の調和をはかる総合 的な枠組みがないことから、国境を越えて提供される高等教育の質保証制度に空白が生じて おり、中には質保証や適格認定に関するいかなる枠組みの対象にもならないまま国境を越え た高等教育が提供される場合さえある。これでは学生やその他関係者が、国境を越えて提供 1本ガイドラインに法的拘束力はないが、加盟国においては、それぞれの国内状況に即して適切に本指針 を実施することが望まれる。 2本ガイドラインでいう国境を越えて提供される高等教育には、教員、学生、プログラム、教育機関・提 供者、又は教材が国境を超えた状況で行われる高等教育が含まれる。公的機関運営か民間運営か、営利 目的か非営利目的かは問わない。方法としては、 (学生の海外留学や海外分校など様々な形で行われる) 対面教育から、 (eラーニングなど様々なテクノロジーを利用した)遠隔教育まで、多様な形態が採用さ れている。 3 本文脈でいう「不当な提供者」とは、いわゆるディグリー・ミルやアクレディテーション・ミルを指す。 1 72 された質の低い教育や不当な提供者4 による被害を受ける可能性が高い。このことから、高等 教育の国際化の恩恵を最大限に高めつつ、被りうる不利益を最小限に留めるために、 (国内の 教育提供者やプログラムに加えて)国外の教育提供者やプログラムを対象とした適切な手続 きや制度をいかに構築するかが、現行の質保証や適格認定に関する制度が直面する課題とな っている。同時に、学生や教員、研究者、専門職業人材の各国間での流動性の高まりに伴い 学位等や職業資格をいかに認証するかが国際協力の上で重要な問題となっている。 そのためには、国としてのさらなる取組の実施や、国際的な協力・ネットワークの強化と ともに、質保証・適格認定、学位等や職業資格の認証の手続きや制度に係る情報の透明性を 高めることが必要である。そうした取組は地球規模で行われるとともに、確固たる自国の高 等教育制度を確立するという発展途上国のニーズに対する支援を強化するものでなければな らない。国によっては質保証・適格認定、学位等や職業資格の認証に関する包括的な枠組み が整備されていないところもあることを考慮して、国家的・国際的イニシアチブの強化や調 整に当たっては、各国の制度開発を重視すべきである。このような観点から、ユネスコと OECD は緊密に協力して、 『国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライ ン(以下「ガイドライン」という。 ) 』を策定した。本ガイドラインの実施は、その制度開発 過程の第一歩となるものである。 一国の高等教育部門の質とその評価・モニタリング制度は、その国の社会的、経済的好況 の鍵を握るだけでなく、その国の高等教育制度の国際的な評価を左右する決定的な要因とも なる。このため、質保証のための制度を確立することは、国内で提供される高等教育の質の チェックに必要なだけではなく、高等教育を国際的に提供しようとする際にも必要となって きている。そのため、この 20 年間、高等教育の質保証や適格認定を行う機関の数が大幅に 増加してきている。しかしながら、現行の各国における質保証の制度は、その対象を、国内 機関によって国内で提供される教育に限定している場合が多い。 学生、教員、専門職業人材、教育プログラム及び教育提供者の国境を越えた流動性の向上 に伴い、現行の各国における質保証や適格認定に関する枠組みや機関だけでなく、海外の学 位等の認証に関する制度についても、新たな課題が生まれてきている。具体的には、 (1)質保証や適格認定に関する国内制度が、国境を越えて提供される高等教育まで含め て置かれていることが少ない。そのため、学生が、誤ったガイダンスや情報、不当な提 供者や質保証・適格認定機関、質の低い教育の被害を受ける危険性は高く、取得した学 位等の有効性も限られたものとなることもある。 (2)学位等や職業資格の認証に関する国内制度や機関において、国境を越えて提供され る高等教育に関する知識や経験が不足している場合がある。 国境を越えて高等教育を提 供する機関が、自国内で提供している学位等と同等でない学位等を提供した場合、問題 はより複雑なものになる。 (3)海外の学位等を国内で認証する必要性が増していることも、学位等や職業資格の認 証を行う国内機関に対する課題を提起している。その結果、時には、関係する各個人が 行政・法律上の問題に直面することもある。 (4)専門職業では、信頼のおける質の高い職業資格が基盤となる。雇用者も含めて、そ 4 脚注 3 を参照。 2 73 うした職業サービスを利用する者にとって、 職業資格を取得した専門職業人の能力は全 面的に信頼できるものでなければならない。 質の低い職業資格を取得してしまう可能性 が高くなれば、その職業自体に悪影響を与えるだけでなく、長期的には職業資格に対す る信頼も低下させることになるだろう。 ガイドラインの範囲 本ガイドラインは、上に述べた課題に対応した、国境を越えて提供される高等教育の質保 証に関する国際的な枠組みの提供を目的としている。 本ガイドラインは、国家間の相互信頼及び相互尊重の原則に基づくとともに、高等教育に おける国際協力の重要性という認識に基づいている。さらに本ガイドラインは、国家の権限 と高等教育制度の多様性の重要性という認識にも基づいている。各国にとって高等教育に関 する国家の主権は非常に重要なものである。それは高等教育が、その国の言語や文化の多様 性を表現するのに不可欠な手段であり、経済成長と社会統合を促進するためにも欠かせない ものであるからだ。従って、高等教育に関する政策決定が国家の優先事項を反映したもので あることは当然である。また、国によっては高等教育の所轄当局が複数存在することも当然 である。 本ガイドラインの有効性は、各国における高等教育の質保証に関する制度を強化できるか どうかにかかっている。ユネスコ地域条約の締結・実施、現在行われているユネスコや多国 間・二国間援助機関主導の各国の制度開発に対するさらなる支援などが、ガイドラインを支 え、補完するものとなるだろう。このような取組は、地域レベル、国レベルの強力なパート ナーシップによって支えられるべきものである。 また本ガイドラインは、国境を越えて提供される高等教育の質保証のための国際協力の強 化において、高等教育団体、学生団体、教員団体、質保証・適格認定機関、学位・学修認証 機関、その他職能団体のネットワークなどの非政府組織が重要な役割を果たすことにも配慮 している。ガイドラインを通じて様々な組織の間の対話や協力を拡大することで、現行取組 の強化・連携が促進されることを期待している。 (e 国境を越えた高等教育は、 (学生の海外留学、海外分校など様々な形の)対面教育から、 ラーニングなど様々なテクノロジーを利用した) 遠隔教育まで、 多様な方法で行われている。 本ガイドラインを実施するに当たっては、このような教育の提供方法の多様性を考慮し、そ れぞれに適した質保証のあり方を考えるべきである。 3 74 Ⅱ.高等教育関係者のためのガイドライン 各国における固有の責任体制のあり方を十分に尊重しつつ、本ガイドラインは、政府、高 等教育機関及び教員を含む教育提供者、学生団体、質保証・適格認定機関、学位・学修認証機 関5 、職能団体の6者6に対する指針を示している。 政府のためのガイドライン 政府は、適切な質保証や適格認定、学位等や職業資格の認証の促進に関し、責任を負う立 場になくとも、影響力を行使できる立場にある。高等教育制度の中で、中央政府が政策調整 の役割を担っている国は多い。一方で本ガイドラインは、国によっては、質保証の監督権限 が下位政府組織や非政府組織に与えられている場合があることも認識している。 そうした状況を考慮した上で、政府に対しては次の提言を行う。 (1)国内での活動を希望する、国境を越えて高等教育を提供する者に対して、包括的で公 正な透明性の高い登録・認可制度を確立、又は確立を奨励すること。 (2)国境を越えて提供される高等教育の質保証・適格認定においては提供国と受入国の双 方が関わっていることを前提として、国境を越えて提供される高等教育の信頼できる質 保証・適格認定のための、包括的な制度を確立、又は確立を奨励すること。 (3)国内外の多種多様な正当な質保証・適格認定機関と協議・調整すること。 (4)国境を越えて提供される高等教育に関する登録・認可、質保証・適格認定の基準、ま た登録の有無等が学生や機関、プログラムへの資金配分に応用される場合の影響、さら に登録等が義務的なものであるか否かについて、正確で信頼できる情報を容易に入手で きる形で提供すること。 (5)学位等の認証に関するユネスコ地域条約の締結を検討し、その立案ないし更新に貢献 するとともに、同条約に基づいて全国情報センターを設立する。 (6)必要に応じて、認証に関する二国間又は多国間合意を締結・促進し、各国がその合意 の基準や手順に基づいて、学位等の相互認証や互換を促進する。 (7)正当な高等教育機関・提供者に関する最新かつ的確で、総合的な情報を、国際レベル で容易に入手できるようにすべく協力する。 高等教育機関・提供者のためのガイドライン 高等教育機関・提供者のすべてが、質に責任を持つことが大変重要7 である。そのためには、 教員による積極的かつ建設的な関与が不可欠である。高等教育機関は、どこで、どのような 5学位・学修認証機関には、学位等の認証を行う機関のほか、資格評価機関や(学位等の認証に関する) 助言・情報センターが含まれる。 6本ガイドラインでは、関係者の分類はその機能に基づいているが、異なる機能が必ずしも別個の機関に 委ねられているのではないことは認識している。 この点に関連する重要な活動として、国際大学協会、カナダ大学協会、全米教育評議会、高等教育認 定協議会が、全世界の高等教育機関のために発表した「質の高い国境を越えた高等教育の共有」という 声明が挙げられる。 7 4 75 方法で教育を提供するにせよ、教育の質だけでなく、教育の社会的、文化的及び言語的妥当 性や、その機関の名において付与される学位等の水準に対しても責任を負うものである。 そうした状況を考慮した上で、国境を越えて高等教育を提供する機関・提供者に対して次 の提言を行う。 (1)海外で提供する教育プログラムと国内で提供するそれとが、同等の質を持つものであ ることを保証するとともに、受入国における文化意識、言語意識にも配慮すること。この 点に関する機関・提供者の決意について公表することが望ましい。 (2)質の高い教育、研究は、質の高い教員と、自由に重要な真理の追究を行える教育研究 環境によって初めて可能となることを認識すること。すべての高等教育機関や提供者は、 ユネスコ「高等教育教員の地位に関する勧告8 」や、その他関連の文書を参考にして、優 れた教育研究環境と雇用条件、協調的ガバナンス、学問の自由を支援すること。 (3)教員、職員、大学生、大学院生など関係者の能力を最大限活用し、自国でも海外でも 同水準の学位等を提供することに最大限の責任を負うために内部の質管理制度を構築、 維 持又は再検証すること。さらに、留学斡旋業者を通じて将来の学生に対するプログラムの 宣伝を行う場合は、 留学斡旋業者が提供する情報やガイダンスが正確で信頼できるもので あり、容易に入手できる形であることを保証する義務も負わなければならない。 (4)遠隔教育も含めて、国境を越えて高等教育を提供する場合には、受入国の適切な質保 証・適格認定機関と協議するとともに、受入国の質保証・適格認定制度を尊重すること。 (5)国内外の関係団体や機関間のネットワークに参加し、グッド・プラクティスを共有す ること。 (6)ネットワークやパートナーシップを設立・維持し、お互いの学位等を同等又は互換可 能と承認することで、認証するプロセスを促進すること。 (7)ユネスコ・欧州評議会の「国境を越えた教育提供におけるグッド・プラクティス規約9」 等のグッド・プラクティス規約や、欧州評議会・ユネスコの「海外の学位等の評価の基準 及び手続きに関する提言10 」などの関連規約を適宜利用すること。 (8)質に関する内部、外部の評価や提供する学位等の認証に関する基準、手続きについて、 正確で信頼できる情報を入手しやすい形で提供するとともに、可能であれば、学生が習得 すべき知識、知性、スキルの説明も付記して、提供するプログラムや学位等に関する詳細 な説明も提供すること。高等教育機関・提供者は、特に質保証・適格認定機関や学生団体 と協力して、これらの情報の普及を図ること。 (9)教育機関や、提供される教育プログラムの財務状況の透明性を確立すること。 学生団体のためのガイドライン 8以下のサイトに記載。 http://portal.unesco.org/en/ev.php-URL_ID=13144&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.ht ml 9以下のサイトに記載。 http://www.coe.int/T/DG4/HigherEducation/Recognition/Code%20of%20good%20practice_EN.asp# TopOfPage 10以下のサイトに記載。 http://www.coe.int/T/DG4/HigherEducation/Recognition/Criteria%20and%20procedures_EN.asp#To pOfPage 5 76 国境を越えて提供される高等教育を直接享受する人々の代表として、また、高等教育に関 わるコミュニティの一員として、学生団体は、学生や将来の学生が、入手可能な情報を慎重 に精査するのを助け、意志決定に際して十分に考慮できるようにする責任を負う。 そうした状況を考慮した上で、地域的、全国的及び国際的な学生団体が自主的に組織され ることを望むとともに、学生団体に対して次の提言を行う。 (1)国境を越えて提供される高等教育の質のチェック、維持、向上において、国際的、全 国的及び組織レベルのパートナーとして積極的に関与し、 この目的達成のために必要な手 順を踏むこと。 (2)誤ったガイダンスや情報、有効性の限られた学位等しか取得できない質の低い教育、 質の高い教育の提供に積 不当な提供者などのリスクに関する学生の意識を高めることで、 極的に参加すること。また、国境を越えて提供される高等教育に関する、正確で信頼でき る情報源を学生に知らせることも必要である。 これらは本ガイドラインの実施に積極的に 関わるだけでなく、その周知を図ることでも達成される。 (3)学生や将来の学生に対し、国境を越えて提供される高等教育プログラムを受けようと する際に、適切な質問をするよう促す。可能ならば留学生を含んだ学生団体が高等教育機 関、質保証・適格認定機関、学位・学修認証機関等とも協力して、チェックリストを作る のも選択肢の一つである。そのようなリストに載せるべき質問として、 「海外の教育機関・ 提供者が信頼できる機関によって認められているかどうか」 、 「海外の教育機関・提供者が 出す学位等が学生の母国で進学要件又は就業要件として認められているかどうか」 などが 考えられる。 質保証・適格認定機関のためのガイドライン 教育機関・提供者の内部の質管理に加え、外部の質保証・適格認定制度を採用している国 は 60 カ国以上ある。質保証・適格認定機関には、提供される高等教育の質について評価す る責任がある。現行の質保証・適格認定制度は国ごとに異なることが多く、時に、国内でも 異なる場合がある。質保証・適格認定を政府機関が行う国もあれば、非政府組織が行う国も ある。また、使用される用語や、 「質」という語の定義、学生、教育機関又はプログラムへの 資金配分との関連も含めた質保証・適格認定制度の目的や機能、質保証・適格認定の実施方 法、実施機関の役割や機能、参加が義務付けられているかどうかなどの点で相違が見受けら れる。こうした多様性は尊重した上で、地域・世界規模で、提供国と受入国双方における質 保証・適格認定機関が協力し、国境を越えて提供される高等教育、特に新しい形で提供され る高等教育の進展に伴う課題に対処する必要がある。11 そうした状況を考慮した上で、質保証・適格認定機関に対して次の提言を行う。 (1)質保証・適格認定が様々な形で国境を越えて提供される教育も含めて行われるよう整 備を図ること。これは、例えば評価のガイドラインの中で国境を越えて提供される高等 教育へ配慮すること、国内の高等教育制度の枠組みや範囲、国境を越えて提供される教 11脚注2参照。 6 77 育の変化や進展への適応性を考慮した上で透明で一貫性のある評価の基準や手続きを適 切に定めることを保証することを意味するものである。 (2)関係機関による、既存の地域ネットワークや国際ネットワークを維持・強化する、あ るいは、まだそのようなネットワークが整備されていない地域では、地域ネットワーク を創設すること。 こうしたネットワークは機関職員や評価者の専門性の向上だけでなく、 情報やグッド・プラクティスの共有、知識の伝播、国際的な展開と課題に関する理解の 増進のための基盤となる。また、このようなネットワークは、不当な提供者や質保証・ 適格認定機関についての注意喚起や、そうした機関の割り出しにつながる監視・報告制 度の開発にも有効である。 (3)教育の提供国と受入国における機関間の協力を強化し、質保証・適格認定制度の相違 についての相互理解を増進すべく、関係を構築すること。これにより、受入国における 質保証・適格認定制度を尊重しつつ、国境を越えて提供されるプログラムや国境を越え て教育を提供する機関の質保証を促進することができるだろう。 (4)評価の結果だけでなく、評価の基準や方法、さらに、質保証の制度が学生、機関又は プログラムに対する資金配分に応用される場合の影響について正確な情報を入手しやす い形で提供すること。質保証・適格認定機関は、その他の関係者、特に高等教育機関・ 提供者、教員、学生団体、学位・学修認証機関等と協力し、こうした情報の伝播を促進 すること。 (5)ユネスコ・欧州評議会の「国境を越えた教育提供におけるグッド・プラクティス規約12」 など、国境を越えて提供される高等教育に関する現行の国際的文書に示されている原則 を適用すること。 (6)他機関との間で、お互いの取組に対する相互理解と信頼に基づく協定を締結し、高等 教育関係者の知識を最大限活用しながら内部の質管理制度を確立し、定期的に外部評価 を受ける。可能であれば、国際的な評価やピア・レビュー評価の試行についても検討す ること。 (7)ピア・レビュー評価者の人員構成を決めるための国際的手法、評価基準や評価手続き の国際的なベンチマークの導入を検討し、異なる質保証・適格認定機関の評価活動の互 換性を高めるため、共同評価プロジェクトに取り掛かること。 学位・学修認証機関のためのガイドライン 学位等の認証に関するユネスコ地域条約は、学生や専門職業人材の国境を越えた移動や国 境を越えて高等教育が提供されたことにより生じる海外の学位等の審査も含めた、高等教育 における学位等の公正な認証を促進する重要な文書である。 制度の透明化を図り、互換性を高めることを通じて、学位等の公正な認証プロセスを促進 するため、現行の取組みに加えて、新たな国際的取組みを講じることが必要である。 そうした状況を考慮した上で、学位・学修認証機関に対して次の提言を行う。 12以下のサイトに記載。 http://www.coe.int/T/DG4/HigherEducation/Recognition/Code%20of%20good%20practice_EN.asp#To pOfPage 7 78 (1)情報及びグッド・プラクティスの交換、知識の伝播、国際的な展開と課題に関する理 解の増進、機関職員の専門性の向上のための基盤となるような地域ネットワークや国際 ネットワークを創設・維持すること。 (2)質保証・適格認定機関との協力の強化を通じ、学位等が基本的な水準の質を有してい るかを判断するプロセスを円滑化するとともに、質保証・適格認定機関との国境を越え た協力、ネットワーク形成に取り組む。この協力は、地域内レベルと地域間レベルの双 方で行うべきである。 (3)あらゆる関係者と連携して情報を共有し、学位等の認証方法と職業資格の認証方法と の関連性を向上させること。 (4) 必要に応じて、 労働市場における学位等の職業資格としての認証についても目を向け、 海外の学位等の保有者と雇用者の双方に対して、職業資格としての認証に関する必要な 情報を提供すること。国際労働市場の規模の拡大や専門職業人材の流動性の向上を考慮 すると、この面における職能団体との協力・調整が望まれる。 (5)欧州評議会・ユネスコにおける「海外の学位等の評価の基準及び手続きに関する提言13」 や、その他の関連する規程を利用し、認証手続きについての一般的信頼性を高め、関係 者に対しては、認証までのプロセスが公正かつ一貫した方法で進められていることを再 確認する。 (6)国境を越えて提供された教育に伴い授与された学位等も含めた、学位等の認証の基準 について、明確で正確な情報を入手しやすい形で提供する。 職能団体14 のためのガイドライン 職業資格の認証制度は、国によっても職業によっても異なる。例えば、専門職業に従事す るのに、特定の学位等のみで足りる場合もあれば、学位等に加えてさらなる条件がその保有 者に課せられる場合もある。国際労働市場の規模の拡大や専門職業人材の流動性の向上を考 えると、雇用者や職能団体だけでなく、学位等の保有者も多くの課題に直面していると言え る。例えば情報の入手しやすさや質の向上など、透明性の向上が公正な認証プロセスにとっ て不可欠である。 そうした状況を考慮した上で、職能団体に対して次の提言を行う。 (1)学位等が職業資格としての認証を受けるのを支援するため、学位等の国内外の保有者 に対し、また、海外の学位等の職業資格としての認証に関する助言を求めている雇用者 に対して、入手しやすい形で情報を提供する方法を確立する。情報は、学生と将来の学 生の双方に対しても、簡単に入手できる方法で提供するべきである。 (2)教育の提供国と受入国双方について、学位・学修認証機関だけでなく、職能団体、高 13以下のサイトに記載。 http://www.coe.int/T/DG4/HigherEducation/Recognition/Criteria%20and%20procedures_EN.asp#To pOfPage 14 ここで論じるのは、専門職業の就業要件の決定や職業資格の認証に関し、法的権限を有する機関であ る。国によっては、こうした機関が専門職業人団体の場合もあれば、政府省庁など他の権限機関によっ て果たされている場合もある。 8 79 等教育機関・提供者、質保証・適格認定機関間の関係を構築・維持し、職業資格の認証 方法を向上させること。 (3)教育プログラムや学位等の比較のための評価の基準や手続きを確立し、実施する。そ の際は、職業資格の認証の円滑化に配慮するとともに、投入財とプロセスに関する条件 に加えて、 文化面から見て適切な学習成果と能力にも配慮した基準・手続きとすること。 (4)国際レベルにおける職業資格としての相互認証合意に関する最新の、正確かつ総合的 な情報の入手を容易にし、新たな合意に向けての動きを奨励すること。 9 80 国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン 用語解説 海外の学位等の評価の基準及び手続きに関する提言 学位等の認証に関するリスボン協定( 「欧州地域における高等教育の学業、卒業証 書及び学位の認証に関する地域条約」の改訂版)の枠組みの中で採択された法的拘束 力を有しない文書。外国の学位等の認証に関する過程の一貫性、公正性、透明性を確 保することを目的とするもの。 学位・学修認証機関 学位・学修認証機関とは、学位等の認証を行う機関のほか、学位等の認証を円滑化 するための情報提供を行う機関等を指す。 学位等の認証 ある機関が授与した学位その他の高等教育に関する称号が別の機関への進学要件 を充たすかどうかについての判断。 学位等の認証に関するユネスコ地域条約(仮称) 世界の6つの地域(南米及びカリブ、アラブ諸国、欧州、アフリカ、アジア太平洋、 地中海)ごとに策定されている学位等の認証に関する条約(批准した国については法 的拘束力を有する) 。これらの条約は、高等教育における国際協力を推進し、締約国 間の学位の相互認証により教員や学生の流動性確保の障害を取り除くことを目的と している。アジアについては「アジア太平洋地域における高等教育の学業、卒業証書 及び学位の認証に関する地域条約」 (1983年採択、1985年発効)があるが、 日本は未批准。現在20カ国1 が批准している。 国境を越えた教育提供におけるグッド・プラクティス規約 関係者が国境を越えた高等教育の提供を行う場合や外国の学位等の認証を行う場 合等に参照することができるような原則を掲げている法的拘束力を有しない文書で ある。例えば国境を越えて高等教育を提供する機関・提供者の質について各国が責任 を負い、正確な情報を提供する必要性が述べられている。 1 アゼルバイジャン、アルメニア、インド、オーストラリア、カザフスタン、韓国、北朝鮮、キ ルギス、スリランカ、タジキスタン、中華人民共和国、トルクメニスタン、トルコ、ネパール、 フィリピン、法王聖座、モルディブ、モンゴル、ラオス、ロシア 81 国境を越えて提供される高等教育 「国境を越えて提供される高等教育」には多種多様な形態での高等教育の提供が含 まれる。例えば人が国境を越える場合として留学や教員の交流、カリキュラムが国境 を越える場合として e ラーニングやフランチャイズ、機関(設備)が国境を越える場 合として大学の海外分校等が挙げられる。国立、公立、私立、営利、非営利等の提供 主体の区別はなく、また提供手段も対面教育から遠隔教育まで全て含まれる。 国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン ガイドラインとは、法的拘束力を有しない指針。実施するかどうかについては各国 の自主性に委ねられており、ガイドラインを遵守しなかったことに対する制裁措置は ない。ただし、国際的な場での合意に基づいて策定されていることから、その実施に ついて一定の期待が持たれている。なお、その実施の方法については、各国がそれぞ れの国内状況に即して判断することとされている。 また、本ガイドラインは、国際的な質保証のための統一的基準や共通のルールを定 めるものではなく、各国がそれぞれの高等教育制度に照らして、自国の責任において 高等教育の質を確保することを前提としつつ、各国間の信頼と高等教育制度の多様性 の尊重に基づく質保証に関する国際的な協力を促進していくものである。 質保証・適格認定 質保証とは、高等教育機関・提供者が提供する教育の質を維持・向上させることを 指すが、具体的なシステムは各国の歴史や実情によって異なっており、質保証の際の 評価にも自己点検・評価と第三者評価の両方がある。また、適格認定とは高等教育機 関・提供者の評価において、一定の基準を満たすかどうかをチェックし、それを満た す場合には認定を与える行為を指す。実施主体は国によって様々で、政府機関が行う 場合もあれば、非政府機関が行う場合もある。日本は、事前評価としての行政による 設置認可と事後評価としての第三者評価である認証評価を両輪とした大学の質保証 を行っている。 職業資格の認証 職業資格の認証とは国家資格等について、特定の専門職業の就業要件を充たす職業 資格であると認証すること。職業資格の内容は国あるいは職業により多種多様であり、 例えば学位等がそのまま認められる場合もあれば、学位等に加えて試験等が課される 場合もある。 職能団体 専門職業の就業要件の決定や職業資格の認証に関し、法的権限を有する機関。政府 機関がこの機能を有している場合もある。日本においては、例えば弁護士については 法務省がこれに該当する。 82 全国情報センター ユネスコ地域条約において設置が義務づけられている「国内団体」を指す。 「国内 団体」は、条約の目的を達成するため、諸措置を実施するものであり、政府機関、大 学、学位・学修認証機関等の関係者間の協力・協調を促進し、条約の実施に係る諸問 題の研究を行い、また、学位等の認証に関する情報の収集・提供を行うこととされて いる。 登録・認可制度 国内で活動をしている高等教育機関・提供者の存在について把握するための制度。 具体的な制度については各国の状況により異なると考えられるが、日本においては、 大学等の設置認可制度及び外国大学日本分校に関する文部科学大臣の指定制度がこ れに該当する。 不当な提供者 不当な提供者とは、インターネット等を通じて、教育の実態を伴わずに「学位」を 販売するいわゆるディグリー・ミルや、正当な評価を行わずに、高等教育機関・提供 者に対して適格認定を行うアクレディテーション・ミルを指す。 83 ユネスコ高等教育情報ポータルについて (1)概要 ユネスコ・OECDによる「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガ イドライン」の策定を踏まえ、国際的なレベルで各国政府により認定された高等教育機 関についての正確な情報へのアクセスの向上を図ることにより、学生の進学機関の決定 を容易にするとともに、質の低い教育やディグリー・ミル等から学生を保護することを 目的に、ユネスコホームページ上にポータルサイトを設置。 ※ホームページアドレス:http://www.unesco.org/education/portal/hed-institutions (2)内容 ・各国政府により認定された全高等教育機関のリスト ・留学生向けの情報 ・各国の高等教育システム、質保証制度の概要 等 (全高等教育機関のリストの掲載は各国必須。それ以外の情報については、各国の 判断で掲載) (3)ポータルサイトの現状 ・2006年より我が国を含む14カ国によるパイロット事業が行われ、2008年 4月より公開 ・現在、我が国及びアルゼンチン、エジプト、カナダ、ケニア、ジャマイカ、中国、 ナイジェリア、ノルウェー、マレーシア、クロアチア、リトアニア、ベルギー、英 国、米国の15カ国が登録しており、ユネスコにおいて、参加国の拡大に取り組ん でいる 84 ユネスコ アジア・太平洋地域における 高等教育の学業・卒業証書及び 学位の認定に関する地域条約について 1.条約の内容 ○アジア・太平洋地域内における学生や研究者の流動性を高める観点から、単位や 学位の認定や、その他高等教育への入学・進学条件の互換性に関する原則を定め ることを目的として、1985年に発効。 ○締約国においては、権限ある当局が認定し得るとみなす限り、他の加盟国におけ る単位や学位を認定するための全ての可能な措置をとるものとする(職業の遂行 のための認定も含む)。 ○2008年9月現在で21カ国が加盟。 ※締約国:中国、オーストラリア、スリランカ、トルコ、北朝鮮、韓国、ネパー ル、モルジブ、ロシア、モンゴル、タジキスタン、アルメニア、アゼ ルバイジャン、バチカン、キルギスタン、トルクメニスタン、カザフ スタン、インド、ラオス、フィリピン、インドネシア 2.本条約の改正に向けた検討状況 ○本条約については、近年の高等教育をめぐる状況の変化を踏まえ、改正について 検討を開始することが平成19年5月の締約国会合(韓国・ソウル)において提 案。 ○改正内容として、ユネスコ/OECDガイドラインの遵守に関する条項の追加 や、より多くの国が批准できるよう、一部条文について規範性を弱めること等に ついて、ユネスコ・バンコク事務所において検討中。 ○ユネスコ側としては、来年以降において、ユネスコ執行委員会を経てユネスコ総 会での採択を目指すこととしている。 ※他地域における条約の締結状況: ラテンアメリカ及びカリブ海地域: 1975年発効 アラブ地域: 1978年発効 ヨーロッパ地域: 1979年発効 アフリカ地域: 1981年発効 地中海条約(ヨーロッパ及びアラブ地域):1976年発効 (ヨーロッパ地域については、1997年よりECとユネスコの連名によるリス ボン条約に移行し、現在はボローニャ宣言に基づくヨーロッパ高等教育圏に実質 的に移行) 85 「外国大学日本校」指定制度について 「外国大学日本校」に関する制度の概要 平成16年12月より、外国の大学等の日本校のうち、当該外国の大学等の課程と当該外国 の学校教育制度において位置付けられた教育施設であって、文部科学大臣が指定するものにつ いて、当該外国大学等に準じて以下のように取り扱うこととしている。 ① これらの教育施設の課程を修了した者に、個々の課程の種別に応じて、大学院への入学資格、 大学・短期大学・高等専門学校の専攻科への入学資格をそれぞれ認めること。 ② これらの教育施設のうち短期大学の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において 位置付けられたものを修了した者は大学へ編入学することができること。 ③ これらの教育施設の課程に在学した者は、個々の課程の種別に応じて、我が国の大学、大学院、 短期大学に転学することができること。 ④ これらの教育施設の課程における授業科目を履修して修得した単位について、個々の課程の種 別に応じて、我が国の大学、大学院、短期大学との単位互換ができること。 指定された「外国大学日本校」一覧(平成20年12月現在) 名 称 テンプル大学ジャパン(米) 専修学校ロシア極東大函館校(露) 天津中医薬大学中薬学院日本校(中) カーネギーメロン大学日本校(米) コロンビア大学ティーチャーズカレッジ 日本校(米) レイクランド大学ジャパン・キャンパス (米) 課程の名称 【外国の大学の課程を有する教育施設】 ○教養学部 ○コミュニケーション・シアター学部 ○芸術学部 ○観光ビジネス学部 【外国の大学院の課程を有する教育施設】 ○教育学英語教授法修士課程 ○教育学英語教授法博士課程 ○ロースクール ○MBAプログラム 【外国の短期大学の課程を有する教育施設】 ○準学士課程 【外国の大学の課程を有する教育施設】 ○ロシア地域学科 【外国の短期大学の課程を有する教育施設】 ○ロシア語科 【外国の大学の課程を有する教育施設】 ○中薬課程 【外国の大学院の課程を有する教育施設】 ○情報セキュリティ研究科修士課程 【外国の大学院の課程を有する教育施設】 ○教育学英語教授法修士課程 【外国の短期大学の課程を有する教育施設】 ○準学士号課程 86 我が国の大学による海外校の設置について 1.これまでも可能であった教育研究活動 (1)外国の学校教育制度に基づく大学の設置(現地法人が設置者) (2)我が国の学校教育制度に基づく教育の提供 ① 外国において授業科目の一部を開設し、単位認定をすること ② 我が国において開設した授業科目の一部を外国において履修させ、 単位認定すること (3)その他 ① 外国の大学との共同研究 ② 学生・教職員の海外研修 ③ 外国における情報収集・リクルート活動等の拠点(事務所)の設置 2.制度創設により可能となる教育研究活動 →我が国の大学の学部、研究科、学科等の教育研究組織(海外校)を外国 に設置すること ① 外国に設置した学部等において、教育課程の全てを実施すること (海外校のみで我が国の大学の卒業と学位の取得が可能) ② 外国に設置した学部等において、教育課程の一部を実施すること (国内校の教育課程の履修と合わせて我が国の大学の卒業と学位の取 得が可能) ※ 海外校の学生の国籍は問わない。主として外国人を対象とした海外校 を設置することが可能 87 ○学位に付与する専攻分野の名称について 学士課程教育の構築に向けて(答申)案 (平成20年10月29日大学分科会了承) 第2章 学士課程教育における方針の明確化 第1節 学位授与の方針について ~幅広い学び等を保証し,21世紀型市民に ふさわしい学習成果の達成を~ (2) 我が国の課題 (カ) これまで大学設置の規制を緩和したり,機能別の分化を促進したりす ることで,個々の大学の個性化・特色化を積極的に進めてきた結果,大 学全体の多様化は大いに進んだ。 しかしながら,学士課程あるいは各分野の教育における最低限の共通性 があるべきでないかという課題は必ずしも重視されなかった。 例えば,学位に付記する専攻分野の名称は年々多様化し,その種類は, 平成17年度時点で約580に達する。また,その名称の約6割は,専ら当該 大学のみで用いられている。このように過度に細分化された状態が,真に 学問の進展に即したものなのか,学生の学習成果を表現するものとして適 切なのか,能力の証明としての学位の国際的通用性を阻害するおそれはな いのか,懸念を持たざるを得ない状況である。 こうした状態は,今後進めていこうとする留学生交流についても,隘路 となってしまうおそれがある。 (3) 改革の方向 (ア) 学位授与の方針に関し,以上のような国際的な動向や我が国の実情を踏ま えると,今後,学生による学習の成果を重視する観点から,各大学では,学位 授与の方針や教育研究上の目的を明確化し,その実行と達成に向けて教育活 動を展開していくことが必要となる。 88 中央教育審議会大学分科会(第71回)配付資料 「設置基準と設置認可の現状と課題について」(抜粋) II.設置認可及び設置審査の審査基準となる設置基準の改善等 設置認可及び設置審査野基準となる設置基準の改善については、以下のとおり、大学分科会と 大学設置・学校法人審議会において、それぞれの所掌事項に関し、必要な検討を行うことが適当 と考えられる。 1.設置基準に係る課題 (3)設置基準に係るその他の課題 ②学位に付記する専攻名等の限定 【現状の課題】 現在、学位に付記する専攻名称についての基準はない。専攻名称の数は、年々増加する一方であ り、学位の国際通用性の観点から疑問視する意見がある。学部・学科名についても同様であり、設 置審査においても、名称と教育課程との不一致や日本語名と英語名の不一致などについて意見が 付される例が多い。届出設置については、設置審として意見を付す機会が確保されない。 (参考) ○学位規則 (専攻分野の名称) 第十条 大学及び独立行政法人大学評価・学位授与機構は、学位を授与するに当たっては、適切な専攻分野の名称を 付記するものとする。 学位に付記する専攻分野の名称の数の推移 700 600 500 400 300 200 100 0 382 444 277 310 188 216 H11 H12 学士 451 523 486 411 362 324 240 288 260 H13 H14 修士 H15 博士 556 580 440 467 296 320 22 30 H16 H17 専門職学位 ※(独)大学評価・学位授与機構の調査結果を基に、文部科学省が作成 ※専門職学位のデータは、平成16年から 【検討の方向性(例)】 学位に付記する専攻名称等の在り方について、日本学術会議における検討を踏まえ、検討する。 89 学位の種類及び分野の変更等に関する基準(抄) 別表第一 学位の種類 学位の分野 学士、修士及び 博士 文学関係、教育学・保育学関係、法学関係、経済学関係、 社会学・社会福祉学関係、理学関係、工学関係、農学関 係、獣医学関係、医学関係、歯学関係、薬学関係、家政 関係、美術関係、音楽関係、体育関係、保健衛生学関係 専門職学位(法 務博士(専門 職)及び教育修 士(専門職)を 除く。) 文学関係、教育学・保育学関係、法学関係、経済学関係、 社会学・社会福祉学関係、理学関係、工学関係、農学関 係、獣医学関係、医学関係、歯学関係、薬学関係、家政 関係、美術関係、音楽関係、体育関係、保健衛生学関係 専門職学位のう ち法務博士(専 門職) 法曹養成関係 専門職学位のう ち教職修士(専 門職) 教員養成関係 短期大学士 文学関係、教育学・保育学関係、法学関係、経済学関係、 社会学・社会福祉学関係、理学関係、工学関係、農学関 係、家政関係、美術関係、音楽関係、体育関係、保健衛 生学関係 備考 学際領域等右記の区分により難い学位の分野の判定に当たっては、 設置等又は開設に係る学部等の教員数(大学設置基準(昭和三十一年文部省 令第二十八号)その他の法令の規定に基づき必要とされる教員数をいう。以 下同じ。)の半数以上が既設の学部等に所属していた教員で占められる場合 に限り、第一条第一項第二号又は第二項第二号の規定に該当するものとし て取り扱う。 90