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白血球の自律神経支配の法則 - TOP

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白血球の自律神経支配の法則 - TOP
がん発症のメカニズム、白血球の自律神経支配で明らかに
世界的免疫学者が解き明かす疾病予防・治癒に至る道
04/2 月記事
2 月 11 日(水)、科学技術館サイエンスホール(東京都千代田区)でシンポジウム「自
然治癒力の時代へ」が開催された。この中で、
「免疫革命」の著者としても知られる新潟大
学大学院医歯学総合研究科教授の安保徹氏が「自然治癒力はすべて生き方にかかっている」
と題して講演を行った。
副交感神経を優位にして免疫力を高める
人はいかにして、病気になるのか・・・。
「何か遺伝子に異常があってということではなく、あまりに無理な適応を超えた生き方を
したため、破綻をきたし、病気になったのではないか」
冒頭、安保氏は疾病の成り立ちについてそう指摘した。
「無理な生き方からくるストレス」
が、疾病発症の大きな誘因になっているという。そのため、がんをはじめとするさまざま
な疾病に罹患している人々はまず「生き方を見直すべき」と安保氏はいう。それが免疫の
仕組みによる疾病予防・治癒に至る道であると説く。さまざまな疾病の中で、現代医学の
粋を結集しても未だ死亡率の上昇が止まらない、がん。がんへの対処について、がんと診
断された際に実施すべき4ケ条を安保氏は次のように挙げる。
1)生活パターンを見直す
2)がんの恐怖から逃れる
3)消耗する治療は受けない、続けない
4)副交感神経を優位にして免疫力を高める
この4ケ条は、
「がん罹患後」のみならず、免疫学的な観点からの「がん予防」のための
心得ともいえる。このうち三つは、心の領域に関わるものである。
「ストレス」を緩和し、
副交感神経優位型に心身をコントロールする。そうした、心安らかな状態においては免疫
力が高まり、さまざまな疾病を遠ざけ、健康な身体を維持することができるという。
人は生きていくうえで、とかく交感神経優位型になりやすい。しかしながら、
「私たちは
いろんな組織障害の病気を起こす。そのナゾは実は交感神経緊張状態にあった。その極限
にがんがある」と安保氏は指摘する。
安保理論とはいかなるものか・・・。その前に、我々の身体調節を司る「自律神経」に
ついてよく理解しておく必要がある。外部から浸入するさまざまな細菌やウイルスを駆逐
する白血球が、
「自律神経の支配下にある」というのが安保理論の骨格となっているからだ。
交感神経優位で顆粒球、副交感神経優位でリンパ球増やし防衛体制整える
自律神経は交感神経と副交感神経との拮抗により調節されている。1日のうちで、活発
に動いたり、興奮したりする昼間は交感神経が優位に働き、ゆったりとリラックスする夕
方から夜は副交感神経が優位に働く。季節でいうと、冬は交感神経が、夏が副交感神経が
優位に働く。我々を細菌やウイルスから守る白血球は、こうした「自律神経の支配下」に
あると安保氏は説く。以下、概要は次のようなことだ。
白血球は、基本細胞であるマクロファージ、マクロファージから生まれた貪食能の強い
顆粒球、免疫を高めるリンパ球の3種類がある。血液中においては、それらが、5:60:
35 の比率で存在する。顆粒球はさまざまな分解酵素を持ち、大量の活性酸素で体内に侵入
した異物を処理する。また新陳代謝も高める。しかし、顆粒球は増え過ぎると、常在菌を
1
さらに攻撃し、化膿性の炎症を発現させるようになる。顆粒球は短期間で死滅するが、そ
の際に活性酸素を出し、周囲の組織を酸化・破壊させる。
リンパ球は、細菌が浸入した際に、すぐに臨戦体制をとる顆粒球と違い、ふだんは休ん
でいて、マクロファージからのサイトカインという物質の情報により、抗原の侵入に気づ
いてはじめて活発な分裂を繰り返し準備態勢を整える。マクロファージは、リンパ球に指
令を与え、後にリンパ球と抗原との戦いの処理を行うという重要な役割を担う。
こうした白血球は自律神経の支配下にあり、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副
交感神経が優位に働くとリンパ球が増えるというメカニズムで我々の身体を効率良く守る。
白血球の自律神経支配の法則を 8 年ほど前に発見
生物の進化の過程で、白血球は自律神経の支配下に入り、顆粒球が交感神経に、リンパ
球が副交感神経にと、それぞれの役割を分担し、防御効率をより高めるようになっていっ
た。このことを安保氏らは8年ほど前に発見する。
「顆粒球は交感神経支配に入りましたが、私達生物が興奮するのはどういう時か。仕事、
スポーツ、悩むとか、いろんなことがありますが、基本的に野生生物が興奮するのは、空
腹が続いてエサを取るという行動を起こす時です。この野生の感覚は私達人間にもまだ残
っていて、生きていくうえですごく大切ですが、エサ取りの行動を起こす時というのは生
物の手足が傷付いて細菌が侵入してきます。そのため化膿性の炎症を起こして治癒すると
いう細菌処理に優れた顆粒球を増やしておく必要があったわけです」
顆粒球は防衛機能の6割を占め、細菌の侵入を炎症という形で処理する。こうした防衛
系においては、リンパ球による免疫機能は介在していない。リンパ球はというと、
「私達は
今でも小腸の周りを中心に厚いリンパ球の層でおおわれています。免疫は基本的には、食
べ物と一緒に入ってくる小さな異物、ウイルスとか花粉、ダニの死骸、ほこりとかを効率
よく処理するために消化管とともに働きます。消化管は副交感神経支配ですから、リンパ
球も消化管とともに副交感神経の支配下に入りました」
顆粒球とリンパ球のアンバランスは特有の疾病招く
ところで、こうした顆粒球とリンパ球の防衛機能は 60:35 というバランスを保ってい
る間はいいが、どちらかが過剰になると特有の疾病を誘発するようになる。イライラや悩
みといった精神不安を抱え、交感神経の緊張状態が続くと、顆粒球の増加を招く。
「顆粒球は骨髄で作られ、血中に出て常在菌の存在する粘膜で一生を終えますが、これが
多くなると顆粒球の放出する活性酸素で粘膜が破壊される病気になります。具体的には、
歯槽膿漏とか痔とか胃潰瘍とか潰瘍性大腸炎で、顆粒球の炎症です。胃がやられる時も悩
みを抱えた時です」
一方、副交感神経が過剰に優位になるとどうなるか。
「リンパ球過剰の病気になります。典型的なのはアレルギー疾患です。今、日本の子供達
はアトピー性皮膚炎とか気管支喘息とか通年性鼻アレルギーになる子供が増えています。
楽をして大事に育てられた子供達はリンパ球が過剰になっていて、ちょっとした常在する
抗原に反応してアレルギーを発症してしまいます」
交感神経優位では顆粒球が増え、副交感神経優位ではリンパ球が増える。どちらもそれ
ぞれ特有の疾患を誘発する。
「健康な人は顆粒球とリンパ球が 6:4 くらいの比率です。もっ
と正確にいうと私達のリンパ球の正常値は 35~41%です。この範囲に入っていると健康で、
免疫力十分な世界です。ですが、リンパ球が 35%を割ると顔色がすぐれない、30%を割る
と早期のがんとか組織障害の病気に入ります。20%近くになると進行がんの世界に入りま
す。逆にリンパ球が 45%を超えるとじんましんが出るとか、身体がかゆいとか過敏反応が
出てきます。40%を超えると確実にアレルギーの世界に入ります」
2
顆粒球とリンパ球の防衛機能は絶妙なメカニズムで成立しているが、ヒトはこうした自
らを癒すプログラムを進化の過程で獲得した。顆粒球とリンパ球による修復機能は、いわ
ゆる「自然治癒力」と呼ぶに値するものであろう。しかしながら、こうしたヒトが本来備
えている「自然治癒力」を抑制させるようなことが現代医療の世界でおきている。
一体、どのようなことか・・・。
不快な反応は治癒へ至る道、無理に抑え込まない
現代人は熱や痛み、かゆみ、下痢とさまざまな不快な症状が出ると、どうしても薬に頼
ることになる。誰しも、早くそうした症状から逃れたい。患者の苦痛を一刻も早く取り除
きたいとの思いから薬剤が研究・開発されてきた。しかしながら、免疫学的な観点からい
うと、決して好ましい対処法ではないという。不快な症状の発現は副交感神経の修復に向
かう反射で、免疫機能の発動であり、治癒に至る道であると安保氏はいう。悩みや苦しみ
といった日々のストレスが続き、交感神経の緊張状態が続くと、顆粒球が過剰に増え、さ
まざまな病気を呼び込むようになる。
「顆粒球増多による病気は、病気のほとんどを占めるほどありふれた病気です。歯槽膿漏、
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、膵炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、痔、こうした病気が無理した
り、苦悩したりして起こります。私達は正常な健康な組織が無理して壊された時に、必ず
エネルギー代謝を高めて修復しようとします。その修復反射が実は副交感神経反射でした。
治るための反射です。こういう副交感神経反射を目一杯使って血流を増やし、代謝を上げ
て組織を修復します。痛みを作る。熱を持つ。血流を回復する。下痢をする。こういう反
応はプロスタグランディンの作用が中心です。プロスタグランディンは発熱物質であり、
痛み物質であり、炎症物質ですから、私達にとっては不快です。ですが、組織を修復する
ためにこの過程は必要なのです。例えば私達は霜焼けになっても治る前に腫れ上がって治
ります。太陽に当たりすぎても、火傷をしても腫れあがって治ります。組織が破壊された
時は、必ずこうした修復過程を経て治ります。こういう概念がないと、熱が出たり、痛ん
だりすると大変ということで、止めにかかります。そして消炎鎮痛剤とかステロイドを使
います。こうしたものはみな血流を止めます。血流を止め、組織反応を起こせなくすると、
炎症反応は止まります。ですがこれは治ることと逆行することです。不快な反応は治癒反
応であるということを私達は理解すべきです」
事故による負傷や急性疾患、あるいは感染症といった緊急の対応に薬剤が有効性を発揮
することは誰もが認めるところではある。近年抗生物質が感染症に果たした役割は大きく、
国民の健康管理にどれほど貢献してきたか計り知れない。しかしながら、一方で、対処療
法的に薬を長期使用することで、逆に疾病を慢性・難治化している状況も生じている。
がんはいかに発症するのか
では、がんはどのようなメカニズムで発症するのか・・・。交感神経優位で顆粒球が増
え、副交感神経優位でリンパ球が増える。どちらかが過剰に増えると、それぞれ特有の疾
患を誘発する。疾病のほとんどが、交感神経優位の顆粒球過剰から引き起こされる。がん
も例外ではない。
「早期胃がんも進行胃がんも進行大腸がんも激しい顆粒球増多によるもの
です。がんと診断される1、2年前何か大変じゃなかったですかと聞くと、みんな激しい
ストレスを抱えています。嫌々つらい仕事を長時間やる、それから悩み、また消炎鎮痛剤
を長期に飲むというようなことが関わっています」
がん発症の背景には、免疫力を徹底して抑えるようなストレスがあり、交感神経の緊張
状態が続き、顆粒球が過剰になるような状況があるという。身体の中でがんが発生しやす
いのは、細胞の再生・分裂が頻繁に行われる場所で、顆粒球の放出する活性酸素により増
殖遺伝子が損傷し、発がんへと向かうという。
3
「がん遺伝子がはじめからあるわけではなく、正常な細胞が増殖に使っている増殖関連遺
伝子が調節障害を起こしたのががん遺伝子」という。毎日 100 万個のがん細胞が生まれて
いるが、とりわけ生命力が強いというわけではなく、リンパ球で抑えられているという。
がん患者のほとんどはリンパ球が 30%以下の免疫抑制状態にあり、リンパ球が 30%を超
えるとがんの自然退縮がはじまると安保氏はいう。
がんにどのように対処すればいいのか
具体的にがんにどう対処すればいいのか。がんと診断された場合、前述の4ケ条を実行
することを安保氏は薦める。これは、「がん予防」のための4ケ条でもある。
「がんとわかったらまず生き方自体を変える。これをやらないで内視鏡で早期胃がんが取
れたとか部分切除でがんが取れたとかといってもまた今までと同じような生き方をしては
再発します」
また、がんへの恐怖心がリンパ球を下げ、免疫力を低下させるという。
「2番目は、がんの恐怖から逃れることです。抗がん剤や放射線を使うと患者さんはすご
く消耗します。がんの恐怖感から発がんしたときよりももっとリンパ球が減るということ
が私達の研究でわかっています。いくら発がんするといっても 25%くらいのリンパ球の比
率は保って発がんしています。脅かされて絶望になった人はリンパ球の割合が 20%割りま
す。これはがんが暴れ出す極限までいっているということです」
また、抗がん剤治療の問題点も指摘している。
「3番目は消耗する治療は受けないことです。あるいは延々と続けないことです。食べる
ことができるとか歩けるとかそういう基本的な体力がないことにはがんには勝てません」
さらに、免疫力を司る副交感神経を優位に保つ生活習慣を身につけることが大切という。
「4番目は積極的に副交感神経を優位にして免疫力を高めることです。私達の免疫系とい
うのは副交感神経支配で循環器系や消化器系とつながっています。ですから、血行がいい、
便秘がない、腐敗臭がないという状態にもっていかなければいけない」
軽い運動や笑うこと、また入浴は副交感神経を刺激し、免疫強化に役立つという。
真の治癒を得るために生じる反応
こうした4ケ条を実践していく途上で、がんの自然退縮がはじまるというが、留意すべ
きことがある。副交感神経が優位になると、プロスタグランジン、アセチルコリン、ヒス
タミン、セロトニンといった発熱や痛みに関連する物質が放出されるようになるため、1
週間ほど熱や痛み症状(傍腫瘍症候群)が生じ、その後、リンパ球が増え、がんが退縮を
おこすようになるという。こうした段階で熱や痛みの不快症状を鎮痛剤や消炎剤、解熱剤、
ステロイド剤などで抑えようとすると、治癒反応を止めることになり、真の治癒から遠ざ
かるという。
「4ケ条を実践していくと、次第にリンパ球が上がっていき、22%だった人が、28%とか
30%に近づくと患者さんの半分近くが微熱が出たり、高熱が出たりし始めます。この現象
は昔から知られていて傍腫瘍症候群といいます。これは免疫抑制から逃れ、発熱してリン
パ球の上昇が起こる反応です。あまり抗がん剤とか放射線をやっていると、リンパ球が上
がらなくなります。こうした反応については今の現代医学には出てきませんが、昭和 40
年代頃はこうした発熱現象でがんは自然退縮するという論文がたくさん出ていました」
この傍腫瘍症候群については、現代医療の世界では、50 年ほど前から抗がん剤の使用と
ともにいわれなくなったという。抗がん剤の使用により免疫が抑え込まれ、傍腫瘍症候群
も出なくなってしまったためだ。
「抗がん剤と一緒に治験をやると、抗がん剤の免疫抑制に
負けてしまい、中々リンパ球が上がってきません。しかし、リンパ球を減らす治療をしな
いでやれば今でも発熱して、傍腫瘍症候群が出ます」
4
薬剤偏重の現代医学の中で、精神領域がもたらす免疫作用は非科学的と放逐され、埋没
していったのか。安保氏は言う。
「自分の持てる免疫の力でも十分傍腫瘍症候群が起きるわ
けですから、やはり4ケ条を実践して自分の力で発熱を起こすくらいの気持ちが大切です。
風邪を引いてもウイルスと戦うためにリンパ球が増え、必ず発熱を伴います。発熱は副交
感神経の極限で起こりますから、必ずだるくなり、横になりたいという体調になります。
こういう現象を理解して風邪でも解熱剤は使わない。がんでリンパ球が増えて発熱したな
ら、解熱剤は使わないでがんを自然退縮に持っていくべきだと思う」
ヒトの持つ深遠な自然治癒プログラム
「ストレス」を緩和し、副交感神経優位型に心身をコントロールする。心の平穏な状態は
リンパ球が活発化し、免疫力が発動し、さまざまな疾病が治癒へと向かう。
プラセボ(偽薬)による暗示にしろ、宗教にしろ、心をポジティブにすることで、身体機
能にプラス効果がもたらされ、実際に疾病が癒されるといった症例はこれまでも多く報告
されている。そうした深遠な自然治癒プログラムが人間の身体に内在しているにもかかわ
らず、その発動を抑えていたのは、精神領域の作用を軽視した、現代西洋医学の処方に他
ならなかったというのは言い過ぎであろうか。
精神領域からのアプローチを重視する、いわゆる代替医療と称されるさまざまな療法は、
総じて副交感神経を優位にし、リンパ球の活性化を促し、自己治癒力を発動させるもので
はなかったか。代替医療で、患者が快方に向かう症例がどれほど報告されようとも、治癒
に至るエビデンス(根拠)が希薄である、未解明な領域であるとされ、正当派西洋医療か
らとかく一蹴されてきた。なぜそうしたものが、疾病を快方へと向かわせるか、安保理論
は免疫学的なアプローチから明確に解き明かしている。
-------------------------------------------------------------------------------安保 徹(あぼ とおる)
<略歴>
昭和 22 年 10 月 9 日生まれ。東北大学医学部卒。昭和 47 年に青森県立中央病院に内科研
修、昭和 49 年に東北大学歯学部微生物学の助手となる。昭和 54 年に米国アラバマ大学に
5年間留学。平成3年、新潟大学医学部の教授となる。現在、新潟大学大学院 免疫学・
医動物学分野 教授。
<業績>
1980 年:ヒト NK 細胞抗原 CD57 に対するモノクローナル抗体(Leu-7)の作製
1990 年:胸腺外分化 T 細胞の発見
1996 年:白血球の自律神経支配の発見
2000 年:マラリア感染の防御は胸腺外分化丁細胞によって行われる
5
予防医学
~病気にならないために~
安保 徹氏 × 山田 英生 対談
めざましい発展を続ける現代医療。その陰で原因や治療法の分からない難病は依然減って
いません。最近は飽食や、ストレスなどに伴う生活習慣病や心の病も急増しています。し
かし、あいかわらず病気になってからの病院頼み、医師任せの人が多いようです。病気を
予防し、治すには、病気発症のメカニズムを知ることが欠かせません。山田養蜂場代表、山
田英生(50)による対談シリーズ「予防医学」
。今回は、
「白血球の自律神経支配の法則」の発
見などで世界的に注目される新潟大学大学院教授、安保徹さん(59)をお迎えしました。テー
マは「免疫で病気を治す」
。何かとストレスの多い現代人へ、
「新しい免疫学」からの警鐘です。
安保
徹(あぼ・とおる)
1947 年、青森県生まれ。東北大学医学部卒。1980 年に「ヒトNK細胞抗原
CD57 に対するモノクローナル抗体」を作製。89 年に胸腺外分化T細胞を発
見、96 年には、白血球の自律神経支配のメカニズムを初めて解明するなど
世界的な免疫学者として知られる。現在は、新潟大学大学院医歯学総合研究
科教授。「免疫革命」
「医療が病いをつくる」など著書多数。
第一回「病気のメカニズム」
時代とともに病気も変わる
山田
私は普段、健康食品をお客さまにお届けしていて感じるのは、現代人の体がどんど
ん弱くなって、免疫力が落ちているような気がしてなりません。これからは、生命
力そのものを強める医療が重要になってくると思っていたところ、先生の「免疫革
命」をお読みし、これからの時代は、まさに予防医学の時代との思いを強く抱きま
した。先生は、
「免疫力を高めれば、あらゆる病気は予防できるし、治すことも可能」
と語っておられますが、日本人の病気も、最近の食生活や生活スタイルの変化で、
ずいぶん変わってきたような気がしますが・・・。
安保 やはり病気の内容も原因も、時代とともに変わりますね。終戦直後の昭和 20 年代や、
その後の 30 年代になぜ、私たちが病気になったかといえば、重労働や寒さ、ひもじ
さ、といった生きるうえでの辛さがありました。例えば、コメづくりにしても、す
べて手作業で水田の雑草取りもお年寄りが腰を 90 度に曲げて草を抜いていました。
住む家だってすき間風がビュービュー入り込み、食べるものも満足になく、子ども
たちはいつもお腹を空かせていたでしょう。こうした過酷な生き方が体に負担をか
け、病気を招いていたのです。
山田 考えてみると、当時の生活は本当に大変なものだったのですね。
安保 今は農作業も家事もすべて機械がやってくれるし、スーパーに行けば、ごちそうの
山だしね。寒さだって暖かい家や暖房器具の普及で克服できたでしょう。
山田 生活が楽になって病気の症状もだいぶ軽くなりました。例えば、脳卒中にしても以前
なら命を落とすケースも多かったのに、今は回復も早く、重度の後遺症も少なくなり
ました。
1
延びる勤務時間新たなストレス
安保
山田
安保
山田
安保
山田
安保
山田
たしかに、重労働、空腹、寒さという生存ストレスは、減りました。だからといっ
て、病気を起こす体の負担がすべて消えたかといえば、そうではありません。安い
労働力で、いろんな製品を生産する中国や東南アジアとの競争が激しくなって今、
日本のサラリーマンは以前にも増して長時間労働を余儀なくされています。公務員
だってそうですよ。こうした長時間労働は、形を変えた重労働であり、その働きぶ
りは、明らかに行き過ぎですね。過酷な労働は、やがて体力を消耗させ、病気を引
き起こす原因になるんです。
最近のインターネットや携帯電話などの普及により、私たちの暮らしは大変便利に
なりました。便利になると、病気は減るように思いがちですが、文明病というか、
時代に即した新たな病気が出てくるんですね。例えば、花粉症とかアトピーですね。
その通りです。私たちがこれまでに克服した生存ストレスとは別の、まったく予期
しなかった辛さが押し寄せ、病気の新たな原因になっているわけです。人間、豊か
になると穏やかに生きられる反面、いろんなストレスに負けるんですね。例えば、
過保護なくらい大事に育てられた子どもたちに蔓延しているのが、アトピー性皮膚
炎や気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患です。何不自由なく育てられた子どもた
ちは、リンパ球過剰になって、ちょっとした気候の変化でも風邪を引きやすく、ハ
ウスダストにも過敏に反応し、虫に刺されただけで赤く腫れあがる。心の病気だっ
て増えているでしょう。外部のストレスに過敏に反応してしまうんですね。
私たちは、ともすれば遺伝子の異常が病気の原因のように思いがちですが、先生の
提唱される「新しい免疫学」では、人間の病気は、どうして起きるのでしょうか。
今の医学は、人間の遺伝子とか、遺伝子から作られる分子などの分析研究ばかりに
目が向きがちです。確かに細胞の働く仕組み自体は実に精妙にできていて、興味深
い。しかし、こうした流れの中に病気の謎があると考えるのは方向性が間違ってい
ると思いますね。生命体は 38 億年もかけて進化してきたし、これからも進化し続け
るわけです。そうした生命体が遺伝子異常を繰り返し、生きている途中に破綻してし
まう、という考え方は、ちょっと行き過ぎじゃないかと思いますね。むしろ、人間は
本来、生まれたら、生きられるような仕組みにできているんですが、生き方の無理や
環境の苛酷さ、人間社会のつくり出した複雑な要因によって心と体に過剰な負担がか
かり、能力の限界を越えたときに、病気になるわけです。こうした考えを持たないと、
いつまでたっても病気の謎にはたどりつけません。
意外とわかりやすい考え方ですね。
そう思うでしょう。あまりにも簡単なので、なぜこの理論に気づかなかったのか不
思議なくらいです。私の言う生き方の無理とは、
「働きすぎ」、
「心の悩み」、
「薬の飲
みすぎ」などを指すのですが、こうしたストレスが病気をつくるという考え方に立
てば、病気はもっと治せるし、病気の予防も可能なんです。
それでは、ストレスがかかり過ぎると、なぜ病気を招くのですか。
怒るのは交感神経が緊張
安保
そのカギは、自律神経にあります。私たちの体は約 60 兆個の細胞から成り、その細
胞を無意識のうちに調整しているのが自律神経なんです。しかし、大切な役割を果
たしている割には仕組みは単純で、交感神経と副交感神経の2つの神経が、私たち
の心と体のすべての行動を支配しているんですね。交感神経は主に昼間の活動時に
働いて体調を興奮させ、一方、副交感神経は休息時や食事の時に優位に働いて心身
をリラックスした体調に整えてくれます。例えば一番、交感神経が緊張するのは、
頭にきて、怒った時ですね。血圧は上がるし、脈拍も増える、呼吸だって荒くなる。
2
山田
安保
山田
安保
山田
安保
よく体をワナワナ震わせながら、ものすごい勢いで怒っている人を見かけるでしょ
う。あれは血圧が 200 を超えて、脈拍に合わせて体が揺られているんです。
無意識のうちに、震えているんですね。
そうです。怒りぐせのある人が、怒っている時は、別に相手が悪いことをしたから
怒っているんではないんですよ。自分の気持ちに余裕がなく、感情を抑えられない
から怒っているんです。
なるほど、そんな気がしますね。それにしても、人間の体は、実にうまくできてい
ますね。
そう思いますね。私たちは交感神経、副交感神経がバランスよく働いているときは、
体調もよいのですが、長時間労働や悩みすぎなど生き方の無理が続くと、交感神経
が緊張して自律神経が乱れ、免疫力が低下して病気になるんです。特に日本人は、
山田さんのようにまじめで、頑張り屋さんで、責任感の強い人が多い。だから、
「会
社のため」
「家族のため」などと言って、つい働きすぎてしまう。山田さんも短期間
で業績を伸ばされ、会社を大きくされたわけですから、これまで働きすぎや無理の
し過ぎもあったと思いますが・・・。
先生の言われる言葉が、胸にズキンと突き刺さりますね。別にミツバチを飼ってい
るからではありませんが、たしかに若いころは、
「働き蜂」のように働いていました。
仕事熱心な父の遺伝子を受け継いだこともあるでしょう。その父が 1988 年 10 月、
脳溢血で倒れ、その 2 日後には自宅を全焼するという災難に遭いました。私が 31
歳の時で、予期せぬ不幸でしたが、私はこの二重の災難を大きな試練と捉え、死に
物狂いで働きました。以後 10 年間くらい、無茶苦茶、働きましたね。結局、この時
の経験が思いもよらなかった事業の発展につながったわけですが、今、振り返ってみ
ると、自分でも「無理したなぁ」と思いますね。幸いにも、若かったせいか、これと
いった病気にはかかりませんでしたが、それでもストレスはずいぶんたまりました。
本当に日本人は働くことを美徳と思っているんですね。日本では公共職業安定所の
ことを「ハローワーク」というでしょう。あれは、
「仕事(ワーク)にハロー」と読
めるくらい、日本人は仕事が好きなんですね。その点、欧米では仕事のことを「レ
ーバー(labor=労働)」と呼んでいます。仕事は大事だけど、家族を支えるために
働く、という考え方です。だから、最低限の仕事はするけど、時間がきたら家にサ
ッサと帰って家族とともに団欒を楽しむわけですね。まじめに頑張る日本人の国民
性は、すばらしいけど、危険が我が身に迫るまで働くのは、ちょっと行き過ぎですね。
リンパ球減れば免疫力も落ちる
山田
耳が痛い言葉ですね。たしかに、稲作農耕の長い歴史を持っていた日本人は、集団
や社会に対する帰属、貢献の文化を持っているように思います。では働き過ぎたり、
悩みすぎたり、過度のストレスを受けると、私たちの心と体はどう反応するのですか。
安保 免疫力の中心的な役割を担っているのは、血液の中の白血球なんです。私たちが働
き過ぎなどで過度なストレスを受けると交感神経が緊張し、白血球の中の顆粒球が
過剰に増え、その分リンパ球が減って免疫力が落ちるんです。顆粒球が増え過ぎる
と、体内の常在菌を攻撃して化膿性の炎症を起こし、活性酸素を出して組織を破壊
します。また、血管が収縮して血行障害になり、高血圧や糖尿病、心臓病、胃潰瘍
などいろいろな病気を発症する流れに入るわけです。
山田 ストレスは怖いですね。
安保 逆に、リンパ球が多すぎても体によくありません。例えば、たくさん食べて運動し
ないとか、楽をし過ぎると、副交感神経優位でリンパ球が増え、免疫過剰となって
健康が破綻することだってあります。その代表がアレルギー疾患です。
3
山田
それでは、病気にならないためには、どうしたらよいのですか。
今や国民病ともいわれる花粉症。副交感神経優位でリンパ球が増え、免
疫過剰となって起きるアレルギー疾患のひとつといわれる。
安保
まず、働き過ぎや悩みすぎなどの無理な生き方をやめることです。特に、男性は仕
事上のストレス、それも働き過ぎで病気になるケースが断然多い。仕事が大事なの
はよくわかりますが、ガンや脳卒中などで倒れては元も子もないでしょう。元々、
私たちの体は急に大病するわけではありません。大病になる前に、
「もう体が大変だ」
と悲鳴をあげるようになる。例えば、肩が凝る、腰が痛い、翌日まで疲れが残るといっ
た症状は、悲鳴のサインなんですね。こうした体の悲鳴を聞いたら、
「自分は今、無理
をし過ぎた生き方をしている。このままでは破綻するかもしれない」と危険を察知する
のが大切なんですね。察知したら、まず 30 分間仕事を早く切り上げ、その分、30 分間、
睡眠時間を増やす。いきなり 1 時間も減らすのは難しいでしょう。それで慣れてきたら、
仕事の量を徐々に減らす。こうした生き方の改善を、まず心がけてほしいですね。
山田 実はこのような仕事のリズムの改善は、私も実際に試してみました。日ごろから、
ストレスのせいか、視力が落ちたり、肩凝りなどがしました。ところが、ある時期
から肩凝りがあまりにもひどく、耳鳴りや、眠れない、といった症状が悪化し始め
たのです。先生のおっしゃる"体の悲鳴"が聞こえた気がしました。
「これではいかん」
と思い、それまで夜 12 時前後まで働いていたのを、午後 10 時に変え、さらに 8 時、
6 時といった具合に仕事時間を減らしていきました。今は、午後 4 時半に仕事を終え
る目標を立てていますが、残っていた仕事を片付けていたりすると、結局、午後 5 時、
6 時になってしまいます。それでも、ひところと比べたらだいぶ楽になり、自分の時
間も確保できるようにはなりましたね。
安保 それはよかったですね。でも、山田さんのような頑張り屋さんには、ちょっと無理
かもしれませんが、本当は仕事も人生も「7割主義」をモットーにするのがいい、
と私はいろんな人に勧めています。完璧主義でやるから時間がどんどん削り取られ、
夜も心が休まらず、眠れなくなるわけです。時には手を抜くことも必要ですよ。
人生楽しむ術知る今の若者
山田
ありがとうございます。なるほど先生のお話を聞きますと、ストレスと健康の関係
が非常によく分かる気がいたします。しかし、最近、当社の若い人たちを見ている
と、ストレスをストレスと感じていないところがありますね。あいかわらず仕事に
打ち込む人もいますが、割と人生を楽しむことを知っていて、仕事だけにのめりこ
む人は減ってきたような気がします。さてストレスといえば、職場や学校などでの
人間関係も悩みの種ですね。
安保 人間関係が、うまくいかなくても、あまりくよくよ悩まず、軽く受け流せばいいん
です。でも本気で対立した時などは解決の方法を探らなければなりません。例えば、
職場で折り合いの悪い上司がいて、職場で解決できなければ、もっと別のところへ
持ち込むとか、どうしても解決できなければ、会社を休むとか、最悪の場合は仕事
を変えてもらうことも考えた方がいいですね。ずっと悩み続けることは、長時間労
働に匹敵するくらい危険だということをぜひ知ってほしいですね。
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第二回「免疫力でガンに挑む」
免疫力多ければガン細胞を撃退
山田
安保
山田
安保
山田
安保
現在、ガンが死亡原因の約 30%を占め、心筋梗塞、脳卒中を抜いて三大死因のトッ
プになりました。なぜガンはこんなに増えているのでしょうか。
やはり国が豊かになり、日本人の衣食住が満たされたのに加え、重労働からも解放
されて、長生きできるようになったことが背景にあるのでしょう。ガンになる確率
は年齢とともに高くなりますが、日本人が長生きするようになって、50 代以上のガ
ン年齢に達する人が増えてきたことが大きな要因ですね。
一般的にはガンはまだ怖い病気で、治りにくいと見られています。先生の免疫学の
立場からは、ガンはどんな病気で、なぜ発症するのでしょうか。
ガンは無理を重ねたり、悩んだり、極限まで体に負担をかけすぎて起こる病気とい
えます。その証拠に多くの人が働き盛りでガンで倒れているでしょう。皆さん、ま
じめで責任感が強く、頑張り屋さんばかり。女性では心の悩みや苦しみで抑圧され
た人が多い。例えば、仕事を持っている女性は、勤務が終わって帰宅すれば家事が
待ち受けていますよね。しかも、親が病気で倒れれば、自分の親だけでなく、夫の
親も介護しなければなりません。日常生活の中に重労働の危険が常に待ち構えてい
るんです。このように、ガンは強いストレスが引き金になって起きる病気なんです。
実際、ガンの患者さんに聞いても、「これまでずっと働きづめの生活を続けてきた」
「姑の介護などで大変つらい目にあった」などと答えています。
ガンは、タバコや食品添加物、排気ガスなどの外的な要因の影響よりも心の悩みな
ど内的な要因の影響の方が大きいわけですね。
そう思いますね。私たちの体内では、毎日たくさんのガン細胞が生まれていますが、
免疫力が十分あれば、白血球の中のリンパ球がガン細胞を攻撃し、その芽をこまめ
に摘み取ってくれるからガンにはなりません。ところが、働きすぎや心の悩みを抱
えたり、薬を長期間服用したりすると、交感神経が緊張し、顆粒球が増え、その分
リンパ球が減って免疫力が低下し、発ガンするわけです。しかし、自律神経のバラ
ンスを整えて、免疫力を高めていけば、ガンはけして不治の病ではなく、自分の力で
治せる病気です。今、ガンを克服してきた元患者さんたちでつくる「患者の会」が全
国に広がっていますが、この中には進行ガンや再発ガンを自ら治した人、中には末期
ガンからよみがえった人も参加しています。こうした人たちが自分たちの闘病経験を
もとに、ガンと闘っている人たちを励まし、支えているんですね。その一方で、新た
に開発された新タイプの抗ガン剤に依存し、薬の力で治癒を目指す流れもあります。
まず生き方の無理に気づく
山田 もし不幸にしてガンになってしまったら、どうしたらよいですか。
安保 まず、これまで自分が歩んできた人生を振り返り、生き方の無理に気づくことです
ね。気づけば、「これからは生き方を変えよう」、「体にいいことをしよう」、という
方向に向かいます。例えば、仕事の時間を減らし、睡眠時間を増やす、毎晩じっく
り入浴するなど、できることから生活習慣を変えていけばよいのではないでしょう
か。一方、生き方の無理に気づかない人は、なぜガンになったか原因がわからず、
医師に勧められた通りに手術、放射線治療、抗ガン剤投与の三大療法の流れに入っ
ていくんですね。
山田 確かに免疫力に基づいた自然治癒力でガンが治ればよいのですが、その一方で「ガ
ンは怖い、再発したらどうしよう」などと考える人もいます。依然、三大療法に頼
る人も多いですよね。なぜ三大療法は問題なのでしょうか。
安保 辛い目にあった人が三大療法を受けることによって、もっと辛い目にあうことにな
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山田
安保
山田
安保
山田
安保
山田
ると思います。その結果、生きる力が失われ、免疫力が低下するなど、あまりよい
ことはありませんね。どの治療も交感神経を緊張させ体力を消耗させて、ガンと闘
うリンパ球を奪ってしまう恐れがあります。
ガンを治すために受けたはずの治療なのに、それでは意味がないのではありませんか?
中でも放射線照射と抗ガン剤の投与は、ガン細胞だけでなく正常な細胞にもダメー
ジを与え、免疫力を低下させてしまう心配もあります。特に放射線治療は、治療を
途中で止めないと免疫力は回復せず、体調の不調がずっと続く恐れもあります。そ
の点、抗ガン剤は、投与した際は髪が抜けたり、食欲が落ちるなどの副作用はあり
ますが、放射線ほどの害はなく、途中で止めればまた元気は回復してきます。手術
は、三大療法の中ではもっとも影響は少ないのですが、お年寄りの大手術は、でき
れば避けたほうがよいと思いますね。体力が落ちているうえに手術によって生きる
力自体が奪われてしまいますから。
なるほど。考えさせられますね。
いずれにせよ、健康な人に比べ心身の弱っているガン患者さんに三大療法は、あま
り勧められませんね。それよりも、体を温めるとか、食事の偏りを改善するとか、
血流を増やすとか、サプリメントや健康食品を摂取するとか体にいいことを積極的
にやったほうがよいと思いますね。
ガンにならないようにするには日ごろ、どんな点に注意したらよいですか。
ひとことで言えば「無理せず、楽せず」という生き方を勧めたいですね。無理をす
れば、交感神経が緊張し、血管が収縮して血流障害や体温の低下を招きます。逆に
楽をすれば副交感神経優位の状態となり、筋肉を使わないから体温は下がり、血管
も広がりすぎて血流も悪くなる。結局、どちらに偏っても体は破綻しかねません。
つまり「中庸」が一番ということですね。健康を保つには自律神経を整えることが
大事ということがよく分かりました。要は活動と休息のバランス。私も今日から「無
理せず楽せず」の生き方を実行していきたいと思います。
(笑)
「病気」は江戸中期以降の言葉
安保
山田
ぜひ、やってください。ところで、東洋医学では「冷えは万病のもと」というでし
ょう。「無理しても血管収縮による低体温」、「楽しても代謝抑制による低体温」、だ
から「冷えは万病のもと」になるわけなんですね。この言葉は(私たちの唱える新
しい免疫学の考え方を)ズバリ捉えています。つまり、東洋医学では、低体温は、
病気と健康の境目である「未病」の状態であると見抜いていたんですね。東洋医学
では冷えると、病気になり、体を温めると病気は治る、という考え方に基づいて治
療しています。日本や中国などアジアの国では分析的研究はあまり発展しませんで
したが、こうした体全体を捉える医学や思想は、発達したんですね。日本では江戸
時代中期までは病気のことを「病気」とは言わず「病(やまい)」と言っていました。
それ以前、特に奈良や平安時代のころは、病は、いろいろな憑き物や怨霊が取り付
いているためで、それを祈祷して取り払えば病は回復すると考えていたんです。
そういえば、その時代の歴史に加持祈祷はつきものですね。
医師の外見をも変えた後藤艮山
安保
その通りです。江戸中期になって、医家の後藤艮山(ごとうこんざん)がそれまで
の医学に疑問を抱き、病気は憑き物が原因ではなく、生き方が偏っていたり、
「気」
が停滞した時、初めて病になるとして「病気」という言葉を使ったんです。また彼
は、それまでの医師が剃髪し、袈裟をまとっていたのを自ら髪を長髪に束ね、服装
も平服に改めたことで知られています。医業を宗教から独立させただけでなく、外
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見からも医師の姿を変えていったんですね。
山田 それはすごい。中医学でも気の流れという概念がありますが、非常によく似ていま
すね。「気」というのは、血流とかエネルギーのことですか。
安保 そうです。顔色が悪くなったり、元気がなくなるのは気が停滞したためと考えたわ
けですね。よく、「病は気から」というでしょう。これも、「気を通さないと病気は
治らない」という江戸時代の医家の考え方に基づいた言葉なんです。このように当
時の医家が病気の概念をつくりあげたのに、明治維新になって西洋医学が入ってき
て、
「気の流れ」という病気の概念が臓器別医療などの分析科学に取って代わられた
ために、体全体を統括するような思想が失われてしまったわけです。
改めたい薬依存の生き方
山田
安保
残念ですね。話は変わりますが、私は自然豊かな岡山県の田舎で生まれ、ミツバチ
と一緒に育ちました。野原や山、川が遊び場で、物心がついたころには家族と一緒
に早朝、巣箱に向かい、父の養蜂を手伝いながら仕事が終われば山菜を採って帰っ
たのをよく覚えています。自然とともに生きる生活でした。ミツバチも、自然環境
がよくないと生きてはいけません。養蜂はまさに自然を相手にした農業でした。父
は 40 年以上前からミツバチを飼育する傍ら有機無農薬でコメや野菜を作っていま
した。
「農薬は必ず副作用がある」と言っては、頑なまでに無農薬にこだわっていま
したね。また、体の弱かった妹や私は、健康づくりのためにローヤルゼリーやハチ
ミツジュースをよく飲ませられました。そんな父を間近に見ていたせいか、私も薬
を飲んで一時的に症状を軽くするのは根本的には健康のためによくない、とずっと
思っていました。だから、先生がよく言われる「薬はむやみに飲まない」という考
え方には、たいへん共感を覚えます。
薬はね、急性疾患などで熱が出たり、痛くてどうしてもがまんできないような時は、
使ってもいいと思いますよ。でも使っていいのは、せいぜい2、3日、長くても1
週間以内ですね。薬はつらい症状を抑える対症療法だから短期間、使うのはよいと
しても、長期間使えば体に負担をかけるし、かえって病気を治りにくくさせてしま
う。元々、私たちの体は破綻してもそのまま、つぶれてしまうわけではありません。
例えば、歯周病にしても痔にしても、あるいは潰瘍性大腸炎などでも、腫れたり、
発熱したり、痛みが出ても、それは破壊された組織を修復にかかる治癒反応なんで
す。それを長期にわたって薬で無理やり押さえ込もうとすれば、治る病気も治らな
くなってしまいます。
病気の改善へ免疫力高める
山田
確かに私たちが風邪を引けば、医師から当たり前のように解熱剤が出ますよね。そ
れを当然のように飲んで熱が下がれば、すっかり治ったように思いがちです。でも、
熱を薬で強引に下げることによって、風邪がいつまでも長引き、逆に完治を遅らせて
いることに、多くの人は気づいていません。解熱剤で熱を下げるのはまったく逆効果
だったんですね。
安保 その通りです。元々、ストレスで交感神経が緊張した結果、病気になっているのに、
さらに交感神経を緊張させる薬を使用するわけですから病気が難治化するのは当た
り前です。
山田 先生は、著書の中などで消炎鎮痛剤とステロイド剤は使ってほしくない薬の一つに
あげておられますが、なぜでしょうか。
安保 前述の通り、薬には交感神経を緊張させて、血流障害を招き、体を冷やす作用があ
ります。消炎鎮痛剤とステロイドは、その作用が強く、顆粒球増加による組織破壊
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につながりやすいんです。こうした薬に頼ると、新たな病気を呼び込んでしまう恐
れがあります。例えば消炎鎮痛剤は頭痛でも、生理痛でも、腰痛の時もよく使われ
ますよね。特に腰痛や筋肉痛に襲われた時に、私たちは湿布薬を患部に貼りますが、
湿布薬も形を変えた消炎鎮痛剤で、貼れば血流を止める世界に入るわけです。半年
も1年も、使い続けていたら体の方がまいってしまう。しかし、これまではこうし
た考えには医師も患者も思い至らなかったわけですが、最近は、
「対症療法中心の今
の医療は、変だ」と感じ始める人が増えてきたような気がしますね。サプリメント
や健康食品への関心が高まり、実際飛ぶように売れていることからも、今の医療に
疑問を持ち始めている人が確実に増えてきた何よりの証拠だと思います。
山田 薬の長期使用に問題があるとすれば、病気にどう立ち向かったらよいのでしょうか。
安保 薬を山ほど飲んだら、病気が治る、という考え方をまず変えた方がよいですね。薬
に頼っていては体調も、病気もよくならないことに早く気づいてほしい。薬だけに頼
らず、体によい生活習慣を身につけ、免疫力を高める方が病気は改善に向かいます。
第三回「人に優しい医療へ」
無理を重ねれば低体温で便秘も
山田
安保
山田
安保
山田
安保先生は、
「白血球の自律神経支配の法則」の発見(臨床医・福田稔先生との共同
研究)によって自律神経の乱れが免疫力の低下を招き、病気を発生させる原因であ
ることを解明されました。病気を予防するにも、病気を治すにも免疫力を高めるこ
とが非常に重要であることがよく分かりました。実は当社にもこの免疫について専
門的な研究をする会社として「免疫分析研究センター」を所有していますが、自分
の免疫が高いか低いかは、外見を見ても分かりますか。
わかりますね。例えば、無理している人は、血管の収縮がどんどん進んで、血流障
害が起き、全体的にやつれ、顔色も黒ずんで、表情がさえません。反対にいかにも
キビキビして仕事ができそうな「やり手」の印象を与える人が、どこの会社にもい
ますよね。こうした人は交感神経優位で活動的、脈拍も多く、血圧も血糖値も高めで、
あるところまではハツラツとした感じがします。しかし、こういう人でも深夜まで働
くなど無理がたたると、今度は血管の収縮で心臓血管系に負担がかかり、やつれて病
気になるケースも結構あります。よく狭心症になったり、不整脈が出たり、くも膜下
出血で倒れるモーレツサラリーマンがいますよね。あの人たちがこのタイプなんです。
確かに、そういう人たちを時々見かけますね。元気で人一倍精力的に仕事をこなしてき
た人が、ある時から急にやつれが目立ってきたら、その時は、危ないサインなんですね。
そうです。もっとわかりやすいのが、体温です。私たちの体温はワキの下で測って
普通、36・5 度。病気の人の場合は、36 度以下の低体温になりがちです。体温が低
いのは、普段から血流障害がある証拠。どこかで無理な生き方をして、病気になっ
たのでしょうね。それと便をチェックするのも一つの方法。消化管活動は副交感神
経支配なので、無理をした人たちは、便秘がちになります。便秘にならなくても、
食べたものは腸の中で腐敗してくるため便は黒くなって、ニオイもきつくなります。
自分でも免疫の状態がチェックできるんですね。それでは低下した免疫力を高める
には、どんな方法がありますか。
自律神経の乱れ正常に戻す
安保
その前に、なぜ病気になるのかその仕組みを知ることが大事です。それが分かれば
病気を治す方法も自ずと分かってきます。働き過ぎや、心の悩み、薬の長期服用な
どによって乱れた自律神経を正常な働きに戻せばいいんです。けして難しいことで
はありません。まず「働き過ぎていないか」、「深刻な悩みを抱えていないか」など
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山田
安保
山田
安保
山田
安保
山田
ストレスの元を探し、環境を変えることが大切です。例えば、折り合いが悪く、い
つも喧嘩ばかりしている夫婦なら、
「いがみ合っていたら、いつかは大病する」と考
えれば、悩み過ぎにブレーキがかかるでしょう。
かかりますね。
それに、薬を常用している人は、まず量を減らし、できればやめることを勧めたい
ですね。特に、お年寄りは、病院に行くと何種類もの薬を山のように渡されますが、
70 歳を過ぎた体力の衰えたお年寄りの体にとって負担をかけない薬は、ほとんどな
いと私は思っています。
そうでしょうね。当社のお客様の中にも比較的年配の方がたくさんおられます。皆
さん、病弱の方ばかりかといえば、そうではありません。むしろ、健康な方のほう
が多いくらいで、
「これからの老後を元気に過ごしていきたい」と考えてローヤルゼ
リーやプロポリスなどの健康食品をお買い求めになっておられるようです。
その人たちも人一倍、健康に気を遣っているのでしょう。今、日本では平均寿命が
延びて、長生きされる方が格段に増えていますが、こういう人はどちらかといえば、
あまり医療機関にかかっていない人が多く、反対に医療に頼り過ぎている人のほう
が途中で破綻し、病気を悪化させているケースが多いような気がしますね。やはり
薬だけに頼らず、生き方を変えたり、免疫力を高める生活習慣を続けるほうがずっ
といいと思いますね。
病気を治すには食事も大切な要素になるわけですね。
言うまでもなく大切です。口から肛門にいたる消化管は、副交感神経の支配下にあ
るため、食べ物を摂取して消化管を動かせば、最も手っ取り早く副交感神経を刺激
することができます。中でも食物繊維の豊富な食べ物を積極的に取るよう心がけて
ほしいですね。なぜかと言えば食物繊維は腸をよく刺激し、腸のまわりのリンパ球
を増やして免疫力を高めてくれるのです。また、食物繊維をたっぷり取れば、腸内
の細菌が繁殖できる環境が整うので、乳酸菌やビフィズス菌が増えて腸内を酸性に
保ってくれます。そうすると、腸の中で腐敗が起こらず、いい便が出るようになり、
便通は一段とよくなりますよ。
具体的には、どんな物を食べたらよいですか。
食事はゆっくり水分もたっぷり
安保
主食なら未精白の玄米ですね。食物繊維が多いだけでなく、すべての栄養素が入っ
ているため、過不足なく栄養が補給できます。でも玄米は、硬くて消化しにくいの
で腸の弱い人には、ちょっときついかもしれません。そういう人は、白米に五穀米
など未精白の穀物を混ぜてもよいと思います。あとは、野菜、海藻、小魚、キノコ
などを積極的に取ることですね。タンパク質の中では、肉は腐敗しやすく、腸内環
境を壊しやすいので、本当は大豆や魚でタンパク質を取ったほうがよいでしょう。
しかし、寒冷地に住むヨーロッパの人たちがあの寒さの中で生き延びることができ
たのも肉の力だったかもしれません。だから毎日、肉を食べるのはどうかと思います
が、週に1、2回くらいなら構いません。私も今、可能な限り玄米や野菜を中心に時々
肉もいただく食生活を心がけていますが、お陰さまで体調はすごくいいですよ。
山田 私も最近は、年齢のせいでしょうか、洋食よりも和食の方が口に合うようになって
きました。納豆などの発酵食品やモズクなどの海藻をできるだけ取り、ヨーグルト
にハチミツをかけて食べています。肉は以前と比べ食べたいと思わなくなりました。
安保 それは健康的ですね。味噌、納豆などの発酵食品は、免疫力を高めるのには最適だ
し、いずれにせよ、バランスのとれた食事をぜひ心がけてほしいですね。また水分
もたっぷり取ってください。それと、食事はゆっくり味わって食べるようにしたいで
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すね。よく噛んで食べることは、副交感神経を刺激し、免疫力を高めることにつなが
ります。早食いをやめてゆっくり食べれば、少量でお腹がいっぱいになるし、肥満を
防ぐ点からも意味があります。
通勤時間使って運動量を確保
山田
私も、以前はどちらかといえば急いで食事をし、終わればまた、すぐ仕事に取り掛
かるタイプでした。体によくありませんね。また、スポーツや散歩など体を動かす
ことが免疫力を高めるのによいと言われていますが。
生活革命で免疫力アップ
バランスよい食事、適度な運動、じっくり入浴。
安保
そうですね。人間の体は筋肉を使うと発熱し、体温が上がって血流も代謝もよくな
るんです。逆に使わなければ発熱は起こらず、低体温になって血流障害を招き、病
気にもなりやすい。だから病気を治したいのであれば、毎日少しずつでも運動する
習慣を身につけるのも一つの方法です。それも、体がポカポカして汗ばむ程度の軽
い運動で十分です。手軽だし、副交感神経を刺激して血流をよくしてくれます。例
えば、朝、ちょっと早起きして散歩したり、ラジオ体操をするのもいいでしょう。
山田 昔は、一家の大黒柱の男性にとって田畑での農作業や山林での仕事などは大変な重
労働でした。女性にしても夫の農作業を手伝いながら育児、炊事、洗濯などの家事
で、いつもこまめに動いていました。私の父も朝早くから晩まで、養蜂や田畑の仕
事に明け暮れていたし、母も父の養蜂を手伝う傍ら忙しく家事をこなしていたのを
子ども心に覚えています。だから昔の人たちには運動不足なんてありませんでした
ね。しかし、今は農作業はすべて機械がやってくれるし、家事も最新の電化製品が
そろって大変楽になりました。会社や役所でもIT化が進み、その分パソコン相手
のデスク ワークの仕事が増えました。当然、筋肉も使わなくなり、運動不足に陥る
人が多いですよね。
安保 実際に運動は必要ですが、仕事に追われ、毎晩遅くまで長時間労働をしている人が働
き過ぎの状態をそのままにして運動してもかえって体にはよくありません。だから運
動をするにしても、まず自分の健康状態と相談し、体調に合わせた適度な運動をする
ことが大切です。忙しい人は、まず休養して少しずつ運動を始めるといいでしょう。
山田 そう思いますね。しかし、現代人は多忙です。子どもは週に何日もお稽古ごとや塾
に通い、サラリーマンは夜遅くまで働いて運動する時間がありません。運動不足を
解消するよい方法はありませんか。
安保 そうですね。忙しいサラリーマンがまとまった運動の時間を確保をするのは難しい
かもしれません。でも、ちょっと工夫すれば、日常生活の中で体を動かすことは可
能ですよ。例えば、通勤時間を利用するのも一つの手です。 ちょっと早起きして、
一つ先の駅まで歩いたり、一つ手前の駅で降りて歩く。 また駅の階段ではエスカレ
ーターを使わずに必ず階段を利用し、できるだけ速足で歩くように心がける。これ
だけでも運動量は確実に増えますね。
山田 要は、工夫しだいですね。
温泉での湯治生活の知恵
安保
それと、入浴も効果があります。
「無理する、楽する」生き方で陥るのが低体温でし
ょう。だからお風呂にじっくり浸かって、体を温め、血の流れをよくすれば免疫力
も高まります。特に病気や低体温の人、お年寄りは、38~39 度くらいの、ややぬる
めのお湯にみぞおちから下をつける半身浴を 40 分以上、続ければ体も温まります。
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山田
安保
山田
安保
山田
安保
山田
働き盛りの人や健康な人は半身浴よりも全身浴の方が向いていますね。40~41 度く
らいのお湯に 10 分以上、じっくり浸かれば、疲労感も消えて、リラックスできます。
シャワーだけだと、入浴効果は期待できませんね。日本では昔から冬になると収穫
を終えた農家の人たちが湯治場に行って、温泉に浸かる習慣があったでしょう。温
泉にはいろいろな成分が含まれていて、お湯に浸かることで溜まった疲れを癒し病
気を予防していたんですね。
長い経験に基づく生活の知恵だったんですね。話は変わりますが、先生も 30 代、
40 代の頃は、研究に明け暮れ、かなり無理をされた、と伺っていますが・・・。
そういう時期もありましたね。でも、私の場合は、自分で言うのも変ですが、頑張
り屋である一方、のんびりした性格も併せ持っていました。だから、極限までくる
と、
「もう、やってられん」と開き直ることもできました。でも、働き過ぎの生活を
完全に変えたのは、やはり「白血球の自律神経支配の法則」によって病気の成り立
ちがわかってからですね。それと、病気の原因や治す方法を世の中の人たちに説い
ている本人が病気になったら、かっこ悪いでしょう。だから健康には人一倍気をつ
けるようになりました。まず夜遅くまで働いていたのを、早く切り上げ、休みもき
ちんと取るようにし、それまでの働き過ぎの生き方をがらっと変えたのです。
何歳の時でしたか。
54 歳の時でした。誰でも 50 代を迎えたら、それまでの人生を振り返ることも必要
かも知れませんね。山田さんは今年 50 歳を迎えられたそうですが、ここまで会社の
業績を伸ばされ、社会貢献活動などでも多くの成果を上げてこられたのは、立派で
す。しかし、このまま 30 代、40 代のころと同じように突っ走っては、体が持ちませ
んよ。ちょっと体調がおかしいと思ったら、早めに仕事を切り上げるなど自分の体を
いたわることも大事です。
なるほど、ありがとうございます。私もこれからは先生のおっしゃるように、仕事
も人生も「7割主義」をモットーにしていきます。ところで、最後に今年から団塊
世代の定年退職が始まりました。これまで働き詰め、会社一筋に生きてきた人たち
が会社を離れ、仕事から解放されるわけですが、健康な老後を送るためには、どん
な点に留意したら良いかアドバイスをお願いします。
定年によって完全に仕事から解放される人も、仕事の量が半分になる人も、体はラ
クになるから健康になれる願ってもないチャンスです。せっかく長生きしても、ぼ
けたり、寝たきりになっては意味がありません。人間の体も脳の働きも使わないと
衰えてきます。散歩したり、運動して体の機能を維持するとともに、何事にも好奇
心を持って脳の働きを維持するよう努めてほしいですね。それと定年退職を機に、
ぜひ薬に頼らない生き方に挑戦してみてください。そうすれば、日本には必ず世界
の模範となるような健康長寿の社会がやってくると思います。
よくわかりました。今回のお話、大変にありがとうございました。
白血球の自律神経支配の法則
自律神経は白血球の数や働きと密接に関連し、自律神経のうち交感神経が緊張すれば、顆
粒球が増加し、副交感神経が優位になればリンパ球が増えるというメカニズムを 1996 年、
安保さんが臨床医の福田稔さんとの共同研究で発見した。福田・安保理論とも呼ばれる。
この理論によって、自律神経の乱れが免疫力の低下を招き、病気の原因であることを解明
した。つまり白血球の中で、顆粒球の割合が 54~60%、リンパ球が 35~41%の範囲に保
たれている時は自律神経はバランスよく働き、病気も免疫力で十分、撃退できる。しかし、
働きすぎ、心の悩み、薬の長期使用などのストレスが加わると、交感神経が緊張し、顆粒
球が増え、リンパ球が減って免疫力が低下し、いろんな病気が発症するという。
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