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仕組みと対策が分かれば「高速」「安全」になる

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仕組みと対策が分かれば「高速」「安全」になる
特集1
仕組みと対策が分かれば「高速」
「安全」になる
無線LAN
設定の最適解
華麗かつ優美に咲き乱れる桜は、日本が世界に誇れる春の風物
詩だ。七分咲きでもそれなりにいいが、やっぱり満開になった
タイミングでこそ美しさが最大化する。無線 LAN だって同じこ
と。買ってつないだだけでもそこそこ便利に感じられるものの、
本当の実力を味わったことにはならない。
“七分咲き”の無線
LAN 環境を、
“満開”に咲かせるにはどうすべきか。そのための
ヒントをたっぷりと紹介しよう。
(高田 学也、中村 稔)
PHOTO:ⓒ MIXA CO.LTD. /amanaimages
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日経パソコン 2010.3.22
日経パソコン 2010.3.22
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特集1
アンテナ編
効果絶大! 電波の受信状況を改善
●簡単につながるイマドキの無線LAN、電波をのぞいてみると……
まず、図 1 と図 2 をご覧いただき
無線LAN 設定の最適解
●アンテナの構造を知り、受信しやすい環境を整えよう
ノートパソコン
アンテナ
たい。ある集合住宅で、無線 LAN
無線LANカード
無線LANルーター
天地
アンテナ
アンテナ
の電波が行き交う様子を“のぞき見”
したものである。自分の無線 LAN
ルーター以外にも多くの無線 LAN
自分の無線 LAN ルーター
天地
天地
が存在し、電波を奪い合うように使
っていることが分かる。共有の財産
である電波は、無線 LAN 利用者が
増えるほど共有度合いは増す。結果、
図 4 電波を発するのも受け取るのもアンテナの役割。パソコンや無線 LAN ルーターのアンテナは、製品によって配置場所が異なっている。一例を挙げた
のが本写真。左はパナソニック「Let's note S8」
、中央はロジテック「LAN-WN11/U2」
、右はアライドテレシス(コレガ)
「CG-WLBARAGNL」
。アンテ
ナの性能や位置で、受信の強度は変わってくる
スピードは落ち、盗み見など安全性
図1 フリーソフト「inSSIDer」
(51ページ参照)を使うと、簡単に無線 LAN ルーターの電波の利用状
況が分かる。ある集合住宅で調べた結果が左図。縦軸が電波の強さで、横軸が周波数。無線 LAN の電波
が山の形で表される。自分が使う無線 LAN 以外に、多くの無線 LAN が電波を発していることが分かる
自分の無線 LAN ルーター
図 2 「Wi-Spy」と呼ぶ市販
の解析ツールを用い、より詳
しく電波を調べたのが左図。
真ん中のグラフが、一定時間
電波をモニターした結果。密
度が濃い部分が暖色で表され
る。 別の無線 LAN ル ー タ ー
も、 自分の無線 LAN ル ー タ
ーが使う周波数を使って頻繁
に電波を発している
●まず、電波は少しでも強く受信しないと損することを知る
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日経パソコン 2010.3.22
規格
設定される伝送速度
(単位:M ビット/秒)
11b
11 → 5.5 → 2 → 1
11g
54 → 48 → 36 → 24 →
18 → 12 → 9 → 6
11a
54 → 48 → 36 → 24 →
18 → 12 → 9 → 6
も脅かされてしまう。
の場合、液晶パネルの上部、パーム
そこで本特集では、単につないだ
レストの手前、キーボードの左右な
だけの“素”の無線 LANを、
「スピー
ど、内蔵する場所がモデルによって
ド」と「安全性」に配慮した快適な
異なる(図 4)
。形については、細い
環境に変身させる。電波の仕組みを
銅板をフィルムで貼り合わせるか、
知り、設定のツボを押さえれば、あ
金属板を折り曲げた薄型タイプが一
っさり実現できてしまう。
般的。一部無線 LAN ルーターは外
アンテナが苦手なモノ
付けアンテナを備えるが、これはス
リーブ型と呼ぶ棒状のアンテナだ。
前半の目標は高速化だ。まずは、
アンテナは形によらず、ほとんど
無線 LAN ル ー タ ー やパソコンを、
が無指向と呼ぶ特性を持ち、アンテ
電波の特性に合わせて適切に配置す
ナ素子の周囲をぐるりとドーナツ状
るワザ。いきなりアナログな話なの
に取り巻くように電波を出す。同じ
だが、アンテナの位置や高さは、想
く受信時にも全方位から電波を受け
像以上にスピードに影響するのだ。
取る(図 5)
。
無線 LAN ルーターとパソコンを
ところが、これらアンテナは素子
つなぐ電波の強弱によって、回線速
の上下方向が苦手。スリーブ型アン
度が変動することは知られていない。
テナなら、棒の先の方向に電波が飛
電波が弱いとき、無線 LAN ルータ
びにくい。垂直方向の角度が狭いの
ーは「低速な回線しか設けられない」
だ。フィルム状アンテナなども同様
300 → 270 → 243 →
216 → 162 → 108 →
11n
(40MHz) 81 → 54 → 40.5 → 27
→ 13.5
と判断し、自動で速度を落とす(図
で、図 4 の例では矢印の天地方向に
3)
。パイプが細くなるイメージだ。
電波が飛びづらい。 つまり、 無線
図 3 無線 LAN ルーターのすぐそば(上)と、
離れた場所(下)で、パソコンが受信する電波
(IEEE 802.11b/g)の強弱を調べた。離れた
場所では、わずか 1M ビット/秒の回線だと
表示される理由は、無線 LAN は電波の強さに
応じて回線速度を変更するため。少しでも電
波を強く受信する工夫をしないと、表のよう
に段階的に遅い回線速度に設定されてしまう
こんなときは受信状態を改善し、
LAN ルーターのアンテナとパソコン
1 〜 2 段階速い回線を設ける可能性
のアンテナは、素子が並列になり、
を模索しよう。無線 LAN のアンテ
かつ同じ高さに配置するのが理想形。
ナは、取り付け場所が機器によって
机の上でパソコンを使う場合は、無
まちまちである。例えば、パナソニ
線 LAN ルーターの位置を机に近い
ックのノートパソコン「Let's note」
高さにして、テレビなどの裏に隠れ
●無線LANルーターの電波はどのように飛んでくるのか?
図 5 多くは、アンテナをきょう体に内蔵するか、棒状のスリーブアンテナを外付けする。アンテナ
が発する電波は、水平方向は四方八方へ飛ぶが、垂直方向は角度が限られる。そのため受け側は、そ
の角度内に置くのが理想的。上は、バッファローの外付けアンテナ「WLE-HG-NDR」の電波特性を表
す図(Web サイトより引用)
。パソコンやほかの無線 LAN ルーターもほぼ同様の特性を備える
●実際には、壁に反射して回り込んでくる
図 6 現実には、 直進した電波と壁
に反射しながら届く電波が合成されて、
パソコン側のアンテナに届く。 特に
距離が離れるほど反射波ばかりになる。
このため、 アンテナの角度を両者で
合わせても、 ベストな強度で受信で
きるとは限らない
無線 LAN ルーター
●王道はなし!それぞれの場所で試行錯誤するしかない
上下と水平に飛ばす
上下に飛ばす
水平に飛ばす
図 7 戸建て住宅で、1 階に
無線 LAN ルーター、2 階のほ
ぼ真上にパソコンを置いた。
無線 LAN ル ー タ ー のアンテ
ナの角度を変え、電波強度(縦
軸 )がどう変わるか調べた。
水平方向にだけ飛ばすと、階
段などを通じて反射波として
届きやすかった。実験は、サ
ポートサービスを提供するキ
ューアンドエーが都内に持つ
住宅を利用した
アンテナを取り外し
日経パソコン 2010.3.22
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