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2008年度~2009年度の経済見通し

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2008年度~2009年度の経済見通し
News Release
2008 年度∼2009 年度の経済見通し
『岐路に立つ日本経済』
2007 年度実質 GDP 成長率:+1.6%(前回 2007 年 11 月 16 日:+1.6%)
2008 年度実質 GDP 成長率:+1.7%(前回 2007 年 11 月 16 日:+2.3%)
2009 年度実質 GDP 成長率:+2.2%
2008 年 2 月 19 日
野村證券株式会社
金融経済研究所 経済調査部・アジア調査部
2008.2.19
日本経済の予測要約表
[2008年2月19日時点]
国
内
総
生
産
生
産
・
物
価
対
外
収
支
[前回:2007年11月16日時点]
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度
(予)
(予)
(予)
+2.4
+1.6
+1.7
+2.2
実質国内総支出
<内需寄与度>
<+1.6>
<+0.4>
<+1.3>
<+1.9>
<民間内需>
<+2.0>
<+0.4>
<+1.2>
<+1.8>
<公的内需>
<-0.4>
<+0.1>
<+0.1>
<+0.1>
<外需寄与度>
<+0.8>
<+1.1>
<+0.4>
<+0.4>
民間最終消費支出
+1.7
+1.2
+1.1
+1.8
民間住宅投資
+0.2
-12.5
+6.6
+1.5
民間企業設備投資
+5.7
+1.6
+4.2
+4.2
民間在庫品増減<寄与度>
<+0.2>
<-0.1>
<-0.2>
<+0.1>
政府消費
+0.1
+0.9
+0.9
+0.9
公的固定資本形成
-9.1
-2.6
-1.6
-2.5
財貨・サービス輸出
+8.4
+8.8
+4.9
+6.8
財貨・サービス輸入
+3.1
+1.7
+3.7
+6.8
<+1.4>
<+1.7>
<+1.6>
<+1.8>
名目純輸出(対名目GDP比、%)
+1.6
+0.8
+1.7
+2.3
名目国内総支出
GDPデフレーター
-0.8
-0.7
-0.0
+0.1
+4.8
+3.0
+2.6
+4.4
鉱工業生産
+2.1
+2.0
+1.2
+0.7
国内企業物価
+0.3
+0.3
+0.6
+0.3
消費者物価
除く生鮮食品
+0.1
+0.3
+0.6
+0.2
完全失業率(%)
4.1
3.8
3.7
3.4
9.0
10.6
9.4
11.4
通関出超額 (兆円)
10.5
12.2
11.2
13.3
貿易収支 (兆円)
8.2
9.9
9.7
10.7
貿易・サービス収支 (兆円)
21.2
24.9
24.0
25.9
経常収支 (兆円)
同上(億ドル)
1804.2
2165.7
2182.0
2352.6
<対名目GDP比、%>
<+4.1>
<+4.8>
<+4.6>
<+4.8>
2007年度 2008年度
(予)
(予)
+1.6
+2.3
<+0.6>
<+2.3>
<+0.7>
<+2.2>
<-0.1>
<+0.0>
<+0.9>
<+0.1>
+1.6
+2.3
-10.8
+4.3
+1.3
+5.4
<-0.0>
<-0.0>
+0.9
+0.8
-6.3
-3.3
+7.5
+5.3
+2.0
+6.9
<+2.0>
<+1.5>
+1.5
+2.5
-0.1
+0.2
+3.2
+4.4
+2.9
+1.3
+0.2
+0.5
+0.1
+0.4
3.8
3.5
12.0
9.5
13.6
11.4
11.4
9.4
26.4
24.4
2256.8
2120.8
<+5.1>
<+4.6>
(注)ことわりがない限り、前年度比%。
(出所)野村證券金融経済研究所
経済見通し前提表
2007年度
ドル円相場(年度平均)
無担保コール・オーバーナイト(期末値、%)
消費税率(期末値、%)
原油入着価格(年度平均、ドル/バレル)
2008年度 2009年度
115.2
110.0
110.0
0.50
0.75
1.25
5.0
5.0
5.0
76.8
88.0
88.0
(出所)野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されている情報
は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、
作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。従って、当該結果は前
提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
1
2008.2.19
四半期実質国内総支出・鉱工業生産・物価予測表
民間最終消費支出
(前期比)
(前年同期比)
民間住宅投資
(前期比)
(前年同期比)
民間企業設備投資
(前期比)
(前年同期比)
民間在庫投資
(前期比寄与度)
政府最終消費支出
(前期比)
(前年同期比)
公的固定資本投資
(前期比)
(前年同期比)
公的在庫投資
(前期比寄与度)
純輸出
(前期比寄与度)
(前期比)
(前年同期比)
輸出
(前期比)
(前年同期比)
輸入
(前期比)
(前年同期比)
実質国内総生産
(前期比)
(前期比年率)
(前年同期比)
GDPデフレーター
(前年同期比)
鉱工業生産 (2000年=100)
(前期比)
(前年同期比)
国内企業物価(2005年=100)
(前期比)
(前年同期比)
消費者物価指数(総合)
(2005年=100) (前期比)
(前年同期比)
消費者物価指数(除く生鮮食品)
(2005年=100) (前期比)
(前年同期比)
失業率
(単位:2000年連鎖価格10億円)
07年
08年
09年
4-6
7-9
10-12
1-3(予)
4-6(予)
7-9(予) 10-12(予) 1-3(予)
4-6(予)
7-9(予)
311,236.5 311,647.2 312,288.4 312,413.3 312,913.2 314,290.0 315,861.4 317,630.3 319,027.8 320,431.6
0.2
0.1
0.2
0.0
0.2
0.4
0.5
0.6
0.4
0.4
1.1
1.7
1.3
0.5
0.5
0.8
1.1
1.7
2.0
2.0
17,712.4 16,242.3 14,760.4 16,010.7 16,894.6 17,308.3 17,464.7 17,262.0 17,295.8 17,333.6
-4.4
-8.3
-9.1
8.5
5.5
2.4
0.9
-1.2
0.2
0.2
-2.8
-11.5
-21.5
-13.6
-4.6
6.6
18.3
7.8
2.4
0.1
87,520.5 88,480.9 91,053.7 91,509.0 92,241.0 92,886.7 93,815.6 94,847.6 95,701.2 96,753.9
-1.5
1.1
2.9
0.5
0.8
0.7
1.0
1.1
0.9
1.1
0.3
0.5
2.4
2.9
5.4
5.0
3.0
3.6
3.8
4.2
2,377.7
1,981.2
2,313.2
1,000.0
500.0
800.0
900.0
1,000.0
1,200.0
1,100.0
(-0.1)
(-0.1)
(0.1)
(-0.2)
(-0.1)
(0.1)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(-0.0)
95,068.5 95,183.8 95,938.5 96,034.4 96,130.5 96,322.7 96,515.4 96,708.4 96,901.8 97,095.6
0.3
0.1
0.8
0.1
0.1
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.5
0.4
1.4
1.3
1.1
1.2
0.6
0.7
0.8
0.8
20,817.8 20,412.9 20,279.3 20,526.5 20,382.8 20,260.5 20,118.7 19,998.0 19,878.0 19,758.7
-4.2
-1.9
-0.7
1.2
-0.7
-0.6
-0.7
-0.6
-0.6
-0.6
-2.3
0.0
-1.7
-5.5
-2.1
-0.7
-0.8
-2.6
-2.5
-2.5
291.2
190.2
263.9
261.0
261.0
261.0
261.0
261.0
261.0
261.0
(0.0)
(-0.0)
(0.0)
(-0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
24,681.0 27,263.8 29,550.2 29,680.3 29,600.4 29,989.0 29,879.2 30,172.3 30,984.6 31,859.3
(0.1)
(0.5)
(0.4)
(0.0)
(-0.0)
(0.1)
(-0.0)
(0.1)
(0.1)
(0.2)
2.6
10.5
8.4
0.4
-0.3
1.3
-0.4
1.0
2.7
2.8
27.9
28.7
35.2
23.9
20.1
9.9
1.2
1.6
4.7
6.2
86,062.1 88,562.3 91,133.5 91,862.6 92,138.2 92,967.4 94,361.9 95,683.0 97,309.6 99,158.5
1.1
2.9
2.9
0.8
0.3
0.9
1.5
1.4
1.7
1.9
7.8
8.6
10.9
7.9
7.1
5.0
3.5
4.2
5.6
6.7
61,381.1 61,298.5 61,583.3 62,182.3 62,537.7 62,978.4 64,482.7 65,510.7 66,325.0 67,299.1
0.5
-0.1
0.5
1.0
0.6
0.7
2.4
1.6
1.2
1.5
1.5
1.5
1.8
1.9
1.9
2.7
4.7
5.4
6.1
6.9
559,224.8 561,004.1 566,090.2 566,992.0 568,489.9 571,705.2 574,420.3 577,503.6 580,896.0 584,261.1
-0.4
0.3
0.9
0.2
0.3
0.6
0.5
0.5
0.6
0.6
-1.4
1.3
3.7
0.6
1.1
2.3
1.9
2.2
2.4
2.3
1.7
1.7
2.0
1.0
1.7
1.9
1.5
1.9
2.2
2.2
92.0
91.8
91.2
91.3
91.8
91.7
91.3
91.3
91.8
91.6
-0.5
-0.6
-1.3
-0.9
-0.3
-0.1
0.0
0.0
0.0
-0.1
107.7
110.1
111.5
111.4
111.8
112.4
113.4
114.7
115.9
117.3
0.2
2.2
1.3
-0.1
0.4
0.6
0.8
1.2
1.0
1.2
2.4
2.7
2.8
3.6
3.8
2.1
1.7
3.0
3.7
4.3
103.7
104.6
105.1
105.0
105.1
105.9
106.1
106.2
106.3
106.4
1.1
0.9
0.5
-0.1
0.1
0.8
0.2
0.1
0.1
0.1
1.7
1.6
2.3
2.3
1.3
1.2
0.9
1.2
1.2
0.5
100.2
100.3
100.7
101.1
101.2
101.1
101.3
101.4
101.5
101.4
0.1
0.1
0.4
0.4
0.1
-0.1
0.2
0.1
0.1
-0.1
-0.1
-0.2
0.5
1.1
1.0
0.7
0.5
0.3
0.3
0.3
100.0
100.0
100.5
100.8
100.9
100.9
100.9
101.0
101.1
101.1
0.0
0.0
0.5
0.3
0.1
0.0
0.0
0.1
0.1
0.0
-0.1
-0.1
0.5
1.0
0.9
0.7
0.4
0.3
0.2
0.2
3.8
3.8
3.9
3.8
3.8
3.8
3.7
3.6
3.5
3.4
(注)1.ことわりがない限り、10 億円単位。比率は%。
2.2007 年 10-12 月期までは実績、それ以降は野村證券金融経済研究所予測。
3.四半期の額、指数、失業率は季節調整値(国内企業物価指数は除く)。
(出所) 内閣府、経済産業省、総務省、野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されている情報
は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動向の表示等は、
作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。従って、当該結果は前
提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
2
日本経済
2008.2.19
1. 2007 年 10-12 月期の実質 GDP 成長率
(1次速報)は、
前期比年率+3.7%(前期は同+1.3%)と事前予想を大
幅に上回る成長率を記録し、同期の日本経済が予想外
に堅調を維持したことが示唆された。
岐路に立つ日本経済
2. しかし、今後の国内経済は楽観を許さない状況にあ
り、向こう半年間は日本経済にとって一種の正念場と
なろう。この間、軽い景気後退に陥る可能性も完全に
は排除できない。米国景気減速の程度とそれに対する
日本経済の抵抗力、中小企業を中心とする本格的な雇
用調整発生の有無と消費下振れの程度が、当面の日本
経済の行方を大きく規定しよう。
3. 米国経済は足下で減速傾向を強めており、その悪影
響が今後、日本の輸出に及ぶことは避けられない。た
だし、近年、日本の輸出は米国依存度を着実に低下さ
せており、日本経済は米国経済の減速に対する抵抗力
を強めている可能性が高い。2007 年 10-12 月期分の対
米輸出数量指数は前年同期比-7.4%の大幅減少となっ
たが、同時期の全地域向け輸出数量指数は同+11.5%と
2桁の増加率を維持しており、日本の輸出の米国離れ
を示唆している。
経済見通し要約表
国
内
総
生
産
生
産
・
物
価
対
外
収
支
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度
(予)
(予)
(予)
+2.4
+1.6
+1.7
+2.2
実質国内総支出
<内需寄与度>
<+1.6>
<+0.4>
<+1.3>
<+1.9>
<民間内需>
<+2.0>
<+0.4>
<+1.2>
<+1.8>
<公的内需>
<-0.4>
<+0.1>
<+0.1>
<+0.1>
<外需寄与度>
<+0.8>
<+1.1>
<+0.4>
<+0.4>
民間最終消費支出
+1.7
+1.2
+1.1
+1.8
民間住宅投資
+0.2
-12.5
+6.6
+1.5
民間企業設備投資
+5.7
+1.6
+4.2
+4.2
民間在庫品増減<寄与度>
<+0.2>
<-0.1>
<-0.2>
<+0.1>
政府消費
+0.1
+0.9
+0.9
+0.9
公的固定資本形成
-9.1
-2.6
-1.6
-2.5
財貨・サービス輸出
+8.4
+8.8
+4.9
+6.8
財貨・サービス輸入
+3.1
+1.7
+3.7
+6.8
<+1.4>
<+1.7>
<+1.6>
<+1.8>
名目純輸出(対名目GDP比、%)
+1.6
+0.8
+1.7
+2.3
名目国内総支出
-0.8
-0.7
-0.0
+0.1
GDPデフレーター
鉱工業生産
+4.8
+3.0
+2.6
+4.4
+2.1
+2.0
+1.2
+0.7
国内企業物価
+0.3
+0.3
+0.6
+0.3
消費者物価
除く生鮮食品
+0.1
+0.3
+0.6
+0.2
4.1
3.8
3.7
3.4
完全失業率(%)
通関出超額 (兆円)
9.0
10.6
9.4
11.4
10.5
12.2
11.2
13.3
貿易収支 (兆円)
貿易・サービス収支 (兆円)
8.2
9.9
9.7
10.7
21.2
24.9
24.0
25.9
経常収支 (兆円)
同上(億ドル)
1804.2
2165.7
2182.0
2352.6
<対名目GDP比、%>
<+4.1>
<+4.8>
<+4.6>
<+4.8>
4. 株価下落、ガソリン・食品などの物価上昇懸念、建
築基準法改正に伴う住宅建設の低迷、冬のボーナス減
少などの悪材料が重なる 2008 年年初の個人消費は、低
迷が避けられない。足下での新規求人の急減が本格的
な雇用調整にまで発展すれば、個人消費の下振れリス
クはさらに増幅されよう。しかし、恒常的に人手不足
感が強い中、企業は非正規雇用を抑制しても正規雇用
は維持すると見られ、深刻な雇用調整は回避されよう。
5. 輸出環境と消費動向は先行き不透明要素を抱えては
いるものの、日本の景気拡大を途絶えさせる可能性が
非常に高まっているとまでは言えないのが現状であろ
う。日本経済は景気後退を辛うじて免れ、米国経済の
緩やかな回復と共に、2008 年 7-9 月期以降、成長率は
徐々に持ち直すことをメインシナリオに位置づけてお
きたい。
(注)ことわりがない限り、前年度比%。
(出所) 野村證券金融経済研究所
6. やや中期的な日本経済を展望する観点からは、企業
の価格転嫁を背景にした足下での物価上昇に注目した
い。これは価格正常化のプロセス、あるいは内需回復
へのプロセスの初期段階に当たり、物価上昇懸念が個
人消費にもたらす悪影響は、長い目で見れば一種の「産
みの苦しみ」の側面があると捉えておきたい。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
3
2008.2.19
2007 年 10-12 月期は予想外の高成長
実質 GDP の内訳
2006年
7-9月期
実質GDP[年率]
実質GDP
実質GDP[前年同期比]
2007年
10-12月期
1-3月期
4-6月期
7-9月期
2007 年 10-12 月期の実質 GDP 成長率(1次速報)は、
前期比年率+3.7%と事前予想を大幅に上回る成長率を
記録した。
成長率は 2007 年 4-6 月期の前期比年率-1.4%、
7-9 月期の同+1.3%を上回り、同期の日本経済が予想外
に堅調を維持したことが示唆された。
10-12 月期は実質設備投資、実質輸出が共に前期比
+2.9%と高い増加率を記録する一方、実質個人消費は前
期比+0.2%と低調、実質住宅投資も建築基準法改正の影
響で前期比-9.1%と大幅に悪化するなど、家計部門に比
して企業部門の堅調が際立った。
10-12月期
0.2
0.0
1.9
4.2
1.0
2.3
3.9
1.0
3.0
-1.4
-0.4
1.7
1.3
0.3
1.7
3.7
0.9
2.0
内需寄与度
うち民間需要
うち公的需要
外需寄与度
-0.3
-0.2
-0.1
0.4
0.9
0.9
0.0
0.1
0.5
0.3
0.2
0.4
-0.5
-0.4
-0.1
0.1
-0.2
-0.1
-0.1
0.5
0.5
0.3
0.1
0.4
個人消費
住宅投資
設備投資
民間在庫[寄与度]
政府消費
公共投資
公的在庫[寄与度]
輸出
輸入
-0.8
0.4
0.7
0.1
0.4
-4.8
0.0
2.2
-0.2
1.0
2.3
1.5
0.0
-0.3
2.2
0.0
0.8
0.1
0.6
-1.3
-0.3
0.0
0.2
5.2
0.0
3.5
1.0
0.2
-4.4
-1.5
-0.1
0.3
-4.2
0.0
1.1
0.5
0.1
-8.3
1.1
-0.1
0.1
-1.9
-0.0
2.9
-0.1
0.2
-9.1
2.9
0.1
0.8
-0.7
0.0
2.9
0.5
名目GDP[年率]
名目GDP
名目GDP[前年同期比]
デフレータ[前年同期比]
0.0
0.0
1.1
-0.8
4.3
1.1
1.7
-0.6
2.8
0.7
2.5
-0.5
-2.0
-0.5
1.2
-0.5
0.3
0.1
1.1
-0.6
1.2
0.3
0.7
-1.3
日本経済は向こう半年が正念場
(注)ことわりがない限り前期比%。
(出所)内閣府、野村證券金融経済研究所
しかし、2008 年 1-3 月期以降の国内経済は、決して
楽観を許さない状況にある。特に、輸出と個人消費の下
振れリスクが高まる向こう半年間は、日本経済にとって
一種の正念場となろう。
従来の景気回復軌道の変調を示唆する経済指標も既
に幾つか確認されている。景気動向を敏感に反映する鉱
工業生産指数は、
2007 年 7-9 月期に前期比+2.2%、
10-12
月期に同+1.3%と堅調に推移してきたが、予測調査によ
れば、2008 年 1-3 月期には前期比で1年ぶりにマイナ
スとなる可能性がある。これは、先行きの輸出減速見通
しを反映している側面もあろう。
他方、消費者心理を反映する消費者態度指数は 2008
年1月時点で 37.5 と、2003 年6月の 36.9 以来の低水
準に達しており、景気の谷に近い 2002 年3月の 36.2 に
接近している。さらに過去の経験則では、景気の山・谷
に合わせて増減する傾向が強い新規求人数は、2006 年
末から下落基調に転じており、最新 2007 年 12 月時点で
は前年同月比-15.1%と急減している。
鉱工業生産の業種別寄与度内訳
(前期比:%)
5
素材
輸送機械
鉱工業
4
IT・デジタル
一般機械
3
2
1.3
1
0
-1
-2
-2.2
(年)
-3
03
04
05
06
07
08
(注)1.IT・デ ジタル=電気機械+情報通信機械+電子部品・デバイス
2.素材=鉄鋼+非鉄金属+化学
3.2008年1-3月期は生産予測指数に基づく試算値。過去3ヵ月間の実現率、
修正率を考慮している。
4.内訳は主要な業種(鉱工業生産の62%)の寄与度のみを示しており、その合計と
鉱工業生産全体の伸び率とは一致しない。
(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成
輸出環境と個人消費をチェック
新規求人数の推移
(千人/月)
一時的に脆弱性を抱えつつも日本経済がこの正念場
を乗り越え、戦後最長の景気拡大はなお続く可能性を最
も高く見ておきたいが、軽い景気後退に陥る可能性も完
全には排除できない状況である。米国景気減速の程度と
それに対する日本経済の抵抗力、中小企業を中心とする
本格的な雇用調整発生の有無と消費下振れの程度が、当
面の日本経済の行方を大きく規定することとなろう。そ
こで以下では、国内景気の下振れリスク、景気後退入り
の可能性を探る観点から、輸出動向と個人消費に焦点を
合わせて検討を加えてみたい。
900
800
700
600
500
(年)
400
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
(注)網掛け部分は内閣府景気基準日付に基づく景気後退期を示す。
(出所)厚生労働省より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
4
2008.2.19
輸出数量の推移
(前年同期比、%)
米国離れを進める日本の輸出
a) 輸出数量(全体)
15.0
足下の輸出環境はなお堅調を維持している。2007 年
7-9 月期の実質輸出(野村證券金融経済研究所試算)は
前期比+4.8%、10-12 月期は同+3.4%と高い増加率を記
録した。しかし、昨年末から米国経済は減速の度合いを
強めており、今後、その悪影響が日本の輸出に及ぶこと
は避けられないだろう。ただし、近年、日本の輸出は米
国依存度を着実に低下させてきており、日本経済は米国
経済の減速に対する抵抗力を強めている可能性が高い。
足下の輸出動向は、こうした米国離れの進展を窺わせる
ものとなっている点に注目したい。
2007 年 10-12 月期分の対米輸出数量指数は、前年同
期比-7.4%の大幅減少となった。これに対して、同時期
の全地域向け輸出数量指数は同+11.5%と、2桁の増加
率を示している。両者の乖離 18.9%ポイントは、同統
計が入手可能な 1991 年以降で最大である。これは米国
向け輸出の大きな落ち込みが他地域向け輸出の拡大で
相殺され、全体としては堅調な輸出環境が維持されてい
ることを裏付けていよう。
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
b) 輸出数量(対米)
-15.0
-20.0
91
(%)
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07 (年)
05
06
07 (年)
25.0
20.0
a) - b)
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
(出所)財務省
OECD 景気先行指数
(6ヶ月前比、%)
(6ヶ月前比、%)
8.0
18.0
16.0
6.0
OECD加盟国(左軸)
14.0
新興地域経済も米国景気減速への抵抗力を高める
4.0
12.0
2.0
10.0
0.0
8.0
主要新興国(右軸)
-2.0
6.0
-4.0
4.0
2.0
-6.0
00
01
02
03
04
05
06
07
(年)
(注)主要新興国は、中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア、南アフリカの6ヶ国。
(出所)OECD(経済協力開発機構)
日本、米国、アジア・新興国間の貿易関係
(前年比)
日本の輸出がこのように米国離れを進めている背景
には、輸出先が中国、中東、ロシアなど新興地域向けに
急速に分散されていることが挙げられる。こうした新興
地域の経済は内需主導色を強めており、米国経済への依
存度を総じて低下させていると考えられる。加えて、日
本が当該国に部品・材料を輸出し、現地で生産した完成
品を米国に輸出するいわゆる「迂回輸出」の傾向も、中
国を中心にやや弱まっている可能性が考えられる。こう
した構造変化が、日本経済の米国経済依存度を総合的に
低下させているのである。
(前年比)
30
30
米国製造業の活動に注目
日本からアジア・新興国向け輸出(右軸)
25
米国の輸入動向は、米国製造業の生産活動との連動性
が強い。2006 年から 2007 年にかけて、米国製造業は本
格的な在庫調整を経験し、それに連動して日本や新興地
域の対米輸出は顕著に減速した。それにもかかわらず、
同時期に日本や新興地域の景気拡大基調が崩れなかっ
たことは、同地域の米国離れ傾向を既にある程度実証し
たと言えるのではないか。
日本について言えば、2007 年 1-3 月期の対米輸出数
量は、前年同期比-11.5%と2桁の下落率を記録した。
1991 年以降、対米輸出数量が前年同期比で 10%以上下
落した 1991 年、1995・1996 年、2001 年の3つの時期に
は、日本はいずれも同時、あるいは直後に景気後退に陥
っている。2007 年のみが例外である。
20
20
15
10
10
5
0
0
-10
-5
-10
-20
-15
アジア・新興国の対米輸出(左軸)
-20
-30
95
97
99
01
03
05
07
(年)
(注)1.後方4ヶ月移動平均。
2.アジア・新興国はASEAN4、NIES、中国、ブラジル、ロシア、インド。
(出所)財務省、米国商務省資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
5
2008.2.19
ところで、現在の米国経済の不振は、金融・住宅部門
を中心とする内需型非製造業が中心と言えよう。製造業
では既に在庫調整が一巡しており、追加的な生産・在庫
調整の余地は大きくない。その結果、輸入の減少を通じ
た米国景気減速の世界経済への悪影響は、米国製造業の
大幅調整を伴う過去の典型的な景気調整時と比較して、
小さくなりやすいと考えられる。
消費者心理と消費活動
(%)
60
(前年同月比、%)
4
家計動向関連DI(左軸)
3
55
2
50
1
0
45
-1
消費者心理と消費活動との乖離
40
-2
-3
35
-4
30
実質消費支出(3ヶ月移動平均値、右軸)
-5
(年)
25
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
-6
2008
(注)家計動向関連DIは「景気ウォッチャー調査」、実質消費支出は「家計調査統計」による。
(出所)内閣府、総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
消費者態度指数の変動要因
(前期差ポイント)
4
3
予測
2
1
既に指摘したように、消費者態度指数や景気ウォッチ
ャー調査(家計動向関連 DI)など日本の消費者心理を
表す指標は、足下で急速な悪化を示している。他方、実
際の消費活動は比較的安定した推移を辿っており、両者
が大きく乖離した状況にある。
消費者心理指標は個人消費の先行指標と見なされが
ちだが、両者の乖離が既に相当期間に及んでいることを
考えれば、少なくとも現状ではこの議論は当てはまらな
いだろう。
消費者心理指標(消費者態度指数)は2四半期前の成
長率との相関が強いことから、逆に景気の遅行指標の性
格も帯びていることに留意したい。この点から、消費者
心理の急速な悪化が日本の景気後退入りを強く示唆す
るものとの判断は妥当でないだろう。
0
年初に個人消費の悪材料が集中
-1
-2
-3
実質GDP
TOPIX
-4
推計値
-5
実績値
-6
05
06
07
08 (年)
(注)推計式は以下の通り。消費者態度指数=40.7+0.1×TOPIX+4.3×実質GDP(-2)、
自由度修正済み決定係数=0.69、推計期間1985年1-3月期から2007年10-12月期、
TOPIX、実質GDPは前期比の2四半期後方移動平均値
(出所)内閣府、東京証券取引所資料より野村證券金融経済研究所作成
住宅着工戸数と消費(2四半期遅行)の時差相関
家具・家事用品
家庭用耐久財
家事用耐久財
冷暖房用器具
一般家具
室内装備・装飾品
寝具類
家事雑貨
家事用消耗品
家事サービス
0.19
0.23
-0.21
0.33
0.34
0.05
-0.19
0.32
-0.15
-0.05
(注)1.家具家事用品消費と住宅着工戸数の時差相関係数。
2.2001年1-3月期∼2007年4-6月期のデータから計算。
(出所)野村證券金融経済研究所
ただし、消費者心理を悪化させている要因としては、
過去の成長率以外にも多く挙げられる。株価下落、ガソ
リン・食品などの物価上昇懸念、建築基準法改正に伴う
住宅建設の低迷、冬のボーナスの下振れなどである。
これら諸要因がもたらす消費抑制効果は、今年年初に
集中的に表れやすいと考えられる。年初に株価が急速に
調整した点、消費者物価(総合)の上昇率は、2007 年
7-9 月期の前期比+0.1%から 10-12 月期に同+0.4%に加
速し、2008 年 1-3 月期も同程度の高水準を維持する見
込みである点、昨年 7-9 月期に急減速した住宅着工が個
人消費に与える悪影響は、2四半期後に最大になると見
込まれる点、冬のボーナスの下振れの影響は年明け直後
に最大になりやすい点、などを踏まえれば、2008 年 1-3
月期の実質個人消費は一時的に前期比で減少する可能
性も否定できない。
他方、これら諸要因の悪影響が徐々に剥落することに
加えて、春闘での賃金上昇率が多少なりとも高まること
が期待される点、2008 年度政府予算が個人の可処分所
得増加に寄与すると見込まれる点を考慮すれば、2008
年 4-6 月期以降の実質個人消費は緩やかに持ち直し、個
人消費の持続的な悪化は回避されると見ておきたい。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
6
2008.2.19
最大の懸念は雇用情勢
新規求人数と雇用者数
(前年比%)
(前年比%)
新規求人数(左軸)
30
雇用者数(右軸)
他方、個人消費を取り巻く最大の懸念材料は、今後の
雇用情勢である。本格的な雇用調整が発生すれば、個人
消費が想定以上に下振れるリスクが高まるだろう。
雇用者数は、2007 年 7-9 月期に前期比-0.3%と、2002
年 10-12 月期以来最大の下落幅を記録した後、10-12 月
期には同+0.4%と再び増勢を取り戻している。しかし、
既に指摘したように、新規求人数は急減傾向を続けてお
り、先行きの雇用情勢には不安が残る。新規求人数の減
少は、人材派遣業の水増し求人を抑制する当局の規制強
化によって生じている側面もあるが、新規求人数の減少
が広範囲な業種に広がっていることを踏まえれば、この
特殊要因だけでは説明ができない。
円高・原油高の進行などを背景とした企業収益環境の
悪化は、既にボーナス支払いの抑制を通じて個人消費に
悪影響を与えつつあるが、今後、雇用の本格調整という
第2波にまで及べば、その影響はより深刻になろう。
2.5
25
2.0
20
1.5
15
1.0
10
0.5
5
0
0.0
-5
-0.5
-10
-1.0
-15
-1.5
(年)
-20
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
(出所)総務省、厚生労働省資料より野村證券金融経済研究所作成
雇用者数の内訳
(前年比寄与度%ポイント)
3.0
正規雇用者
臨時・日雇
2.5
パートタイム
雇用者数
新規求人と雇用の乖離に注目
2.0
新規求人数が雇用者数の動きに先行するという安定
した関係が、過去数年間はやや崩れている点に注目した
い。それは、企業の新規求人削減が非正規社員中心であ
る点に主に根差していよう。企業は短期的な経営・収益
環境の悪化を映して、限界的な労働力である非正規社員
の新規雇用を抑制しているものの、正規社員の新規雇用
については積極姿勢を維持しているためである。その背
景には深刻な人手不足問題があろう。長期景気拡大の結
果として人手不足感が強まっているため、大幅な雇用調
整は容易に生じ難い環境にあると考えておきたい。
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
92
94
96
98
00
02
04
06
(年)
(出所)総務省、厚生労働省資料より野村證券金融経済研究所作成
個人消費支出の世帯別寄与
(前年同期比%)
3.0
2.5
2.0
人口動態変化が消費の安定化要因に
その他
無職60歳以上(世帯数)
無職60歳以上(世帯平均支出)
勤労者世帯
全世帯
ところで、昨年後半の個人消費動向を世帯主別に見る
と、60 歳以上無職者世帯の消費支出が全体の消費押し
上げに大きく貢献したことが確認できる。これは、団塊
世代の退職を反映した側面が強いだろう。
勤労者世帯と比べて、
60 歳以上無職者世帯の消費は、
消費者心理指数との相関が低いことが検証される。これ
らの世帯は、ボーナスや雇用情勢といった勤労者世帯の
消費を強く左右する経済環境の変化の影響を相対的に
受けにくい。団塊世代の退職が進む中、景気循環の影響
を受けにくい高齢者世帯の構成比上昇が、個人消費全体
の安定化に寄与している点にも留意しておきたい。
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
-3.0
-3.5
(年)
2003
2004
2005
2006
2007
(注)1.グラフは『家計調査』(総務省)において、1世帯あたりの消費支出額(名目値)に世帯
数を掛け合わせたマクロ消費の伸び率と、それに対する世帯種類別の寄与度を示す。
2.世帯主が60歳以上で無職の世帯のみ、1世帯あたりの支出額と世帯数に分けて寄与
度を示した。
(出所)総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
7
2008.2.19
国内景気は 2008 年 7-9 月期から緩やかに持ち直しへ
勤労者世帯と退職世帯の消費特性
世帯
説明変数
勤労者世帯
60歳以上の
無職世帯
◎
○
○
◎
◎
×
◎
○
収入総額
消費者マインド
消費者物価
石油製品価格
以上では、国内景気下振れのリスクとして輸出環境と
雇用情勢に注目し検討を加えてきた。共に先行き不透明
要素を抱えてはいるものの、日本の景気拡大を途絶えさ
せる可能性が高いとまでは言えないのが現状であろう。
日本経済は、向こう半年程度は下振れリスクが比較的
高い、厳しい状況が避けられまいが、景気後退は辛うじ
て免れ、米国経済の緩やかな回復と共に、2008 年 7-9
月期以降、成長率は徐々に持ち直すことをメインシナリ
オに位置づけておきたい。
(注)1.『家計調査』(総務省)を基に、世帯主が勤労者の世帯と、60歳以上で
無職の世帯に関して、消費関数を推計した。
2.◎印は説明変数が1%有意水準、○印は5%有意水準を満たし、×印は
統計上有意な結果が得られなかったことを示す。
(出所)総務省、内閣府資料より野村證券金融経済研究所作成
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の推移
(前年同月比%)
1.2
基調部分
米類
コアCPI
1.0
足下での物価上昇に注目
予測値
他方、やや中期的な日本経済を展望する観点からは、
足下で特徴的な動きを示している物価動向に注目して
おきたい。2007 年 12 月の全国消費者物価(生鮮食品を
除く総合)は前年同月比+0.8%と、1997 年4月の消費
税率引き上げの影響を除けば、1994 年6月以来の高水
準に達している。2008 年3月には同+1.1%まで高まる
見込みである。
この大幅上昇のうち、相当部分は原油価格上昇の影響
によるものだ。しかし、消費者物価指数から、変動が激
しい生鮮食品、石油製品、米類、公共料金(電気・ガス
代、携帯通話料金など)の4項目を除いた基調部分(野
村證券金融経済研究所試算)も、2007 年 12 月には前年
同月比+0.3%と 1998 年4月以来の水準に達しており、
物価の基調変化を裏付けるものとなっている。これは、
原材料・エネルギー価格、食材価格、賃金などの上昇分
を、企業が消費関連財及びサービスに転嫁する動きを進
めているために生じていると考えられる。
公共料金
石油製品
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
-0.8
2005年
2006年
2007年
2008年
(注)1.コアCPIは全国の生鮮食品除く消費者物価指数。公共料金には移動電話通信料を
含む。基調部分はコアCPIから公共料金、石油製品、米類を除いたもの。
2.2007年12月までは実績、以降は当社推計値。予測の前提は、2008年1月以降、
WTIが92.0ドル/バレル、円ドルレートが110.0円/ドルで先行き一定を仮定。
(出所)総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
国内品交易条件が改善
消費者物価押し上げ上位品目
寄与度
中分類品目
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
自動車等関係費
他の光熱
教養娯楽サービス
家賃
教養娯楽用耐久財
穀類
電気代
ガス代
菓子類
理美容用品
他の諸雑費
外食
教養娯楽用品(除く切り花)
交通
家庭用耐久財
設備修繕・維持
肉類(除く生鮮肉)
通信
シャツ・セーター・下着類
理美容サービス
6月
12月
%ポイント %ポイント
0.049
0.438
-0.008
0.163
0.006
0.061
-0.055
0.000
-0.182 -0.135
-0.016
0.030
0.006
0.043
0.021
0.053
0.002
0.034
-0.011
0.013
0.002
0.020
0.023
0.040
-0.045 -0.029
0.008
0.023
-0.068 -0.059
-0.003
0.006
0.014
0.022
-0.087 -0.080
0.006
0.010
-0.004
0.000
寄与度の
変化幅
6月→12月
%ポイント
0.389
0.171
0.055
0.055
0.047
0.046
0.037
0.032
0.032
0.024
0.018
0.017
0.016
0.016
0.009
0.009
0.008
0.008
0.004
0.004
企業の価格転嫁進展を裏付けているのが交易条件の
改善傾向である。国内品の産出価格を投入価格で除した
国内品交易条件は昨年春に底打ちし、年末にかけて急速
に改善した。投入価格上昇を産出価格、即ち製品価格に
転嫁する動きが広まってきたことは、企業の価格支配力
の回復を示唆するものであり、また価格面からの採算性、
収益性が改善していることを裏付けるものであろう。
寄与度の変化が大きい品目
ガソリン
灯油
外国パック旅行
持家の帰属家賃(木造中住宅)
テレビ(薄型)
食パン
電気代
プロパンガス
ケーキ
シャンプー
傷害保険料
ハンバーガー
テレビゲーム
タクシー代
温風ヒーター
浴槽
ソーセージ
移動電話通信料
婦人Tシャツ(長袖)
温泉・銭湯入浴料
国内最終財価格は 16 年ぶりの上昇率
2002 年以降の今次景気回復では、川上の素原材料・
中間財の価格上昇幅が非常に大きい中で、川下の最終財
の価格は前年比で下落を続けてきたことが特徴的であ
った。しかし、昨年末に最終財(国内品)の価格は急速
に上昇に転じ、最新 2008 年1月時点で最終財(国内品)
(注)1.寄与度はコアCPIの前年同月比に対す るもの。
2.寄与度の変化が大きい品目は、中分類品目の寄与度の変化と同方向に、寄与度が
比較的大きく変化した品目を取り上げた。
(出所)総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
8
2008.2.19
の価格は前年同月比+0.7%と、1992 年2月以来、実に
16 年振りの高い上昇率を示した。
川上に位置する中間財の足下の価格上昇率が、2004
年や 2006 年の水準にまで達していないことを踏まえれ
ば、最終財(国内品)の価格が 16 年振りに高い上昇率
を記録した理由を、川上の価格上昇のみに求めるのは妥
当ではないだろう。2002 年以降の景気回復過程で進展
した需給関係の改善が、価格転嫁を後押ししていると考
えるのが自然ではないか。
国内交易条件と実質賃金
(2000年=1.00)
1.02
(2000年=1.00)
1.10
製造業実質賃金
(所定内給与÷国内品産出価格)(右軸)
1.01
1.05
1.00
1.00
0.99
0.95
0.98
0.90
0.85
0.97
製造業産出価格÷投入価格
(国内品)(左軸)
0.96
「悪い物価上昇」はいずれ「良い物価上昇」へ
0.80
経済全体の需給関係を表す需給ギャップ、労働需給を
反映する傾向が強い所定内賃金上昇率、そしてこの最終
財(国内品)価格上昇率の3者が、90 年代初頭以来、
初めてほぼ同時にプラスとなったことは、まさに経済の
正常化と共に企業の価格支配力、あるいは労働者の賃金
交渉力が高まり、賃金・物価といった価格体系の正常化
が生じ始めた証左といえるのではないか。
非耐久消費財を中心とする国内企業の価格転嫁は、既
に議論したように、現時点では物価上昇懸念から個人消
費を抑制し、海外景気減速、円高、株安、原油高と並ん
で国内景気を悪化させている点は否定できない。この点
から、現時点での物価上昇は「悪い物価上昇」と表現で
きるだろう。しかし、今後、価格上昇分が賃金に上乗せ
されていくとの期待が高まれば個人消費にプラス要因
となり、
「悪い物価上昇」は徐々に「良い物価上昇」に
転じることが期待される。
0.75
0.95
0.70
0.94
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07 (年)
(出所)日本銀行、厚生労働省
段階別企業物価の推移
(前年同月比、%)
10.0
素原材料(国内品)
8.0
6.0
4.0
中間財(国内品)
2.0
0.0
-2.0
最終財(国内品)
-4.0
注目される物価から賃金への波及
(年)
-6.0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
原材料価格急騰を映した継続的な企業の交易条件悪
化が今次景気回復の一つの特徴であったが、企業は人件
費を抑制することで、原材料価格急騰のコストを家計に
転嫁してきた側面があると考えられる。しかし、今後交
易条件が改善していけば、企業はその面からは人件費抑
制のインセンティブを低下させていこう。価格体系正常
化が進めば、交易条件の改善が実質賃金の改善へと繋が
っていくことも期待される。
日本経団連が春闘での賃上げ容認を打ち出し、従来の
戦略を大きく転換させた背景には、こうした経済環境の
変化も影響したのかもしれない。当面の景気情勢の厳し
さを踏まえれば、今年の春闘で大幅な賃上げが妥結され
る可能性は低いだろう。しかし、向こう数ヶ月間で消費
者物価が前年比で加速することが、賃上げを求める労働
者側の支援材料となる点を踏まえれば、中期的な賃金上
昇率高まりの端緒を今年の春闘に垣間見ることはでき
るのかもしれない。
(出所)日本銀行
(前年同期比、%)
6.0
需給ギャップと賃金・物価動向
(%)
6.0
4.0
4.0
2.0
所定内賃金
(左軸)
2.0
0.0
0.0
-2.0
-2.0
最終財(国内品)価格
(左軸)
-4.0
-4.0
需給ギ ャップ
(右軸)
-6.0
-6.0
1985
1990
1995
2000
2005
(年)
(注)1.需給ギャップ=(現実の実質GDP−潜在実質GDP)÷潜在実質GDP
2.需給ギャップの最新値は2007年4Q、所定内賃金の最新値は2007年12月、
最終財(国内品)価格の最新値は2008年1月。
(出所)日本銀行、厚生労働省、野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
9
2008.2.19
景気情勢改善後に価格正常化の動きは顕著に?
所定内賃金
(前年比寄与度%ポイント)
0.8
当面厳しい経済環境が続く中、こうした価格正常化の
動きが一時的に停滞することは十分に想定されるとこ
ろである。しかし、2008 年度の実質 GDP 成長率は一般
に 1.5%∼2.0%と見込まれる潜在成長率並みの水準と
なることが予想され、その場合、賃金・価格動向に強い
影響を与え得る需給ギャップは、ゼロ近辺でほぼ横這う
ことが予想される。その結果、賃金・価格の上昇率が再
び大きく低下する事態は生じがたく、経済環境の好転と
共に、賃金・価格の上昇傾向は再度明確になることが見
込まれる。
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
年齢別一人あたり平均賃金要因
雇用者の年齢構成要因
所定内給与
-1.2
-1.4
03
04
05
06
(年)
07
(注)1.一人あたり賃金=Σ(Wi*EEi)、Wi:i階級の一人あたり賃金、EEi:i階級の雇用者割合
(全雇用者数に占めるある年齢の雇用者数の割合)、添え字iはある年齢階級を示す。
年齢階級別一人あたり賃金要因は、Wiの変化。
2.雇用者は、「労働力調査」の常用雇用者と臨時雇用者の合計。臨時雇用者は、1ヶ月
以上1年以内の期間で雇われている者で、「毎月勤労統計」の常用雇用者に該当する。
(出所)厚生労働省、総務省資料より野村證券金融経済研究所作成
政策金利
(%)
1.4
1.2
実質政策金利
1.0
0.8
産みの苦しみ?
価格正常化が将来もたらす帰結は、内需主導型景気拡
大への転換ではないか。これは景気拡大の成熟局面では、
典型的に見られる現象でもある。現在はこうした価格体
系正常化のプロセス、あるいは内需回復へのプロセスの
初期段階に当り、そこで生じる物価上昇の個人消費抑制
効果は、長い目で見れば一種の「産みの苦しみ」の側面
があると捉えておきたい。
政策金利
(無担保コールレート・翌日物)
0.6
2つの意味で「岐路に立つ日本」
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
(年)
-0.8
00
01
02
03
04
05
06
07
08
(注)1.無担保コールレート・翌日物は2006年7月まで月中平均値、それ以降は誘導目標値。
2.実質政策金利=無担保コールレート・翌日物−消費者物価(除く生鮮食品)の前年同月比(%)
3.2008年の数値は予測値。
(出所)日本銀行、総務省
四半期実質 GDP 成長率見通し
(前期比年率、%)
4.5
予測値
4.0
3.5
コンセンサス
日本経済は、過去6年にわたる戦後最長の拡大が途切
れかねない厳しい局面に入りつつある。他方、今までの
長期景気拡大の結果として、価格体系正常化の動きが見
られ始めている。これは、いずれ内需主導型経済への転
換へと発展していく萌芽と捉えることも可能である。こ
の2つの意味で、現在の日本経済は大きな岐路に立って
いると言えるのではないか。
このような複雑な経済環境の下、金融市場は当面、変
動幅が大きくなりやすい一方、金融政策運営も困難を極
めよう。政策金利は当面現状水準が維持された後、2009
年 1-3 月期に引上げが再開されると見ておきたい。
2007 年度∼2009 年度の経済見通し
3.0
野村證券金融経済研究所は、2007 年度の実質 GDP 成
長率を+1.6%、2008 年度を+1.7%と予想した。2007 年
11 月時点での見通しと比較すると、2007 年度成長率は
同水準、2008 年度は+2.3%から比較的大きな下方修正
となった。これは、2008 年の米国成長率見通しを 0.5%
ポイント下方修正した点、為替想定を円高方向に修正し
た点、2008 年度成長率の押し上げ要因(駆け込み購入)
となる 2009 年度消費税率引き上げの想定を排除した点
などによる。また、2009 年度の実質 GDP 成長率見通し
は+2.2%と、2%台を回復すると予想した。
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
野村證券金融経済研究所見通し
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
1-3
2006年
7-9
1-3
2007年
7-9
1-3(予)
2008年
7-9(予)
1-3(予)
2009年
7-9(予)
(注)コンセンサスは、ESPフォーキャスト調査(2008年2月)による。
(出所)内閣府、野村證券金融経済研究所
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
10
米国経済
2008.2.19
1. 2007 年 10-12 月期の実質 GDP 成長率は前期比年率
+0.6%と急減速した。エネルギー価格上昇から個人消
費が減速したが、それ以上に、企業の在庫調整が前倒
しで行われたことが、住宅投資の減少とともに経済成
長を下押しする結果となった。2008 年 1-3 月期も需要
の低迷が見込まれる。
政策依存度の高い形での景気回復に
2. こうした情勢下、財政・金融の両面から政策対応が
大掛かりなものになってきた。2008 年年初にブッシュ
大統領が示した 1500 億ドルの所得税・法人税減税が、
ほぼ原案に近い形で議会を通過、2月に成立した。
3. 中でも、1000 億ドル超の所得税の戻し減税が、納税
者への小切手の郵送を通じ、5月から8月にかけて実
施される。<1>2001 年の 380 億ドル、2003 年の 140 億
ドルという、最近の所得税戻し減税の規模に比べて巨
額であり、<2>消費性向の高い、年収 7.5 万ドル以下の
低中所得者に対象を限定している点で、個人消費を中
心とした相応の景気の押し上げ効果が見込まれる。成
長率は 4-6 月期、7-9 月期には、潜在成長率付近に達す
るだろう。
実質GDP
国内最終需要(寄与度)
個人消費
住宅投資
設備投資
在庫増減(寄与度)
純輸出(寄与度)
輸出
輸入
政府消費及び総投資
名目GDP
経常収支(年率、10億ドル)
名目GDP比(%)
失業率(%)
消費者物価
2007年
(推)
2.2
2.1
2.9
-16.9
4.8
-0.3
0.6
7.9
2.0
2.1
4.9
-745.8
-5.4
4.6
2.9
(前年比、%)
2008年
2009年
(予)
(予)
2.3
2.8
2.3
3.1
2.7
3.0
-18.5
-6.3
6.8
7.7
-0.1
0.2
0.2
-0.6
5.7
5.1
2.9
7.0
1.7
1.3
5.1
6.1
-816.2
-1058.8
-5.6
-6.8
4.8
4.5
2.8
2.8
(注)失業率は暦年平均値。
(出所)米国野村證券
4. 米連邦準備制度理事会(FRB)は、2007 年9月から
12 月までの間に合計 1.0%ポイントの利下げを行った
が、2008 年1月には、緊急利下げも含め合計 1.25%ポ
イントの追加利下げを行っている。さらに、所得税減
税実施までの間、追加利下げが行われると見られる。
これらの金融政策が景気に与える波及効果のタイムラ
グを勘案すると、2008 年後半から 2009 年前半に景気を
押し上げる可能性が高い。
5. ただし、サブプライム住宅ローン関連の損失などか
ら金融機関のバランスシートが痛んでおり、証券化を
通じた資金調達が困難な状況が続いていることを踏ま
えると、金利感応度は従来より下がっており、自律的
な景気の回復力は限られよう。政策効果が薄れる 2009
年後半には、徐々に景気減速に向かうと見られる。
6. もっとも、2009 年は、新大統領が財政政策を担う。
民主・共和両党の各有力候補者とも、揃って低中所得
者向けの減税を主張している。減税の手法、規模、実
施のタイミングなど不確定であり、予想には 2009 年の
減税を織り込んでいないが、景気押し上げ効果が上積
みされる可能性がある。
7. ただし、減税の継続は景気浮揚と引き換えに、財政
赤字拡大に伴う双子の赤字リスクを高める点には注意
したい。インフレ・リスク、長期金利の上ぶれなどを
招く可能性が出てくる。FRB も、インフレ圧力の再燃か
ら早期に金融緩和解除に向かうことになるだろう。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
11
欧州経済
2008.2.19
視野に入った欧州中央銀行の利下げ
ユーロ圏経済見通し要約表
(前年比、%)
実質GDP
域内需要(寄与度)
2007年
(推)
2008年
(予)
2009年
(予)
2.9
1.6
1.9
2.6
1.5
1.9
個人消費
1.7
1.1
1.5
政府消費
2.3
1.6
1.2
総固定資本形成
5.2
2.3
2.1
在庫増減(寄与度)
0.0
0.1
0.3
純輸出(寄与度)
0.3
0.1
0.0
輸出
7.0
5.3
4.2
輸入
6.3
5.2
4.3
消費者物価指数(CPI)
2.1
2.1
1.9
失業率(%)
7.4
7.3
7.2
経常収支(10億ドル)
31.7
34.2
11.8
2. 従来、中東欧諸国の高成長を背景に、米国経済の減
速にもかかわらず欧州経済の減速が顕在化しないとす
るデカップリング論もみられた。しかし、<1>対内直接
投資を背景とした設備投資、<2>そこで生み出された雇
用・所得の増大に伴う消費拡大、に支えられた中東欧
諸国の内需主導の景気拡大は、先進国側の景気動向に
左右されるものであり、自律的な成長ではない。中東
欧諸国の高成長を予見とする欧州中央銀行(ECB)の成
長見通し(予想レンジの中心で 2008 年成長率前年比
2.0%)は、やや楽観的と判断される。
(注)消費者物価指数は統一基準ベース(HICP 基準)。失業率は国際労働機関(ILO)基準。
(出所)欧州統計局資料より英国野村證券作成
英国経済見通し要約表
(前年比、%)
実質GDP
2007年
(推)
2008年
(予)
2009年
(予)
3.1
1.7
2.2
個人消費
3.0
2.1
1.9
政府消費
1.7
2.3
2.2
総固定資本形成
7.0
4.0
2.8
在庫増減(寄与度)
0.3
-0.3
-0.1
純輸出(寄与度)
-0.5
0.4
0.0
消費者物価指数(CPI)
2.0
2.1
2.0
失業率(%)
経常収支(10億ポンド)
2.0
2.1
2.0
-68.5
-48.3
-45.9
1. ユーロ圏経済の実質成長率は、2007 年 7-9 月期に前
年比 2.7%と堅調を維持している。しかし今後、<1>こ
れまでの累積 1.75%ポイントにおよぶ利上げの効果、
<2>2006 年以来の米国経済減速による影響顕在化など
を受け、減速が鮮明化するとみられる。実際、PMI 総合
指数でみれば、これまでの 2%台半ばの成長軌道が、先
行きで 1%台半ばに下方シフトすることが示唆されて
いる。
(注)消費者物価指数は統一基準ベース(HICP 基準)。失業率は国際労働機関(ILO)基準。
(出所)英国政府統計局、予測は英国野村證券
3. 一方、ユーロ圏最大の輸出先である英国では、これ
までの利上げの効果により住宅ローン承認件数、住宅
価格上昇率の低下がみられ、消費を中心とした国内需
要の減速が明らかになりつつあり、金融政策も 2007 年
12 月以来金融緩和に転じている。さらに年内2回程度
の追加利下げが見込まれる。
4. 景気のリード役である米国、英国での減速などを受
け、ユーロ圏の経済成長率を 2008 年前年比 1.6%に下
方修正、政策金利見通しについても年内2回程度の利
下げを予想する。ECB は2月の政策理事会声明文におい
て、景気リスクが下ぶれ方向にあることを確認したと
している。また、二次的な効果や中期的な物価安定に
対するリスクが顕在化しないよう「予防的に行動する
準備がある」としていた表現が、「引き続き関与する」
と弱められており、金融緩和に向けた地ならしが一歩
進んだことを示唆している。利下げ時期は最も早くて、
特殊要因剥落によって消費者物価上昇率のピークアウ
トが確認される4月とみられる。
5.ただし、<1>概ね大陸欧州における住宅価格上昇に伴
う資産効果が相対的に小さいとみられること、<2>景気
のリード役でありユーロ圏最大の輸出先である英国は
金利感応度が高く、2007 年末から行われた利下げの効
果が年後半の景気持ち直しに寄与するとみられること
から、景気が減速から後退に至る可能性は限定的とみ
られる。2009 年のユーロ圏経済成長率は前年比 1.9%
と予想する。
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
12
アジア経済
2008.2.19
1. 予想される米景気の減速はアジア景気にも悪影響を
及ぼす可能性が大きい。外部環境の悪化と原油価格高
止まりの影響を考慮し、アジア経済の成長率見通しを
下方修正した。アジア NIEs(香港、台湾、韓国、シン
ガポール)と ASEAN4カ国(マレーシア、タイ、インド
ネシア、フィリピン)の実質 GDP 成長率について、2008
年予想を従来(3ヶ月前、以下同様)の+5.5%から
+5.1%へ引き下げ、2009 年予想を+5.1%とした。しか
し、アジア経済が比較的高い成長率を維持できるとの
見方に変わりがない。それは、(1)内需の好調により足
下までアジア景気が好調を維持していること、(2) 多
くの国・経済で積極財政政策が採用されていること、
による。
実体経済は緩やかな加速局面へ
アジア経済予測表
2008 年 2 月 13 日現在
実質GDP成長率(%)
(年)
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(参考)
NIEs+ASEAN4
インド
2007(推)
5.5
4.9
5.9
6.1
7.5
5.9
6.3
6.1
7.3
4.5
11.4
8.4
2008(予)
4.9
4.9
4.0
5.5
6.6
5.5
6.2
5.4
5.3
4.8
10.1
7.5
2009(予)
5.0
5.0
4.9
4.8
5.2
5.4
5.5
5.2
5.6
5.0
8.7
6.8
5.7
9.0
5.1
8.9
5.1
9.3
(年)
2007(推)
2.2
2.5
1.8
2.0
2.1
4.0
6.4
2.0
2.8
2.2
4.8
3.7
2008(予)
3.4
3.6
1.8
4.5
5.1
4.8
6.4
3.5
4.1
3.5
4.5
4.2
2009(予)
2.9
3.0
2.0
4.1
3.1
4.3
6.2
2.7
3.7
2.6
3.6
3.5
2.8
4.2
3.9
4.9
3.3
5.0
2. 中国では、2007 年 10-12 月期の実質 GDP 成長率が前
年比+11.2%を記録するなど足下の景気はなお過熱感
がある。しかし、今後は金融引き締め政策の影響やイ
ンフレ圧力の上昇が景気に減速圧力をもたらす可能性
が大きい。特に、<1>賃金の上昇、<2>新労働契約法の
導入、<3>借入れコストの上昇、などを背景に食品以外
の価格が上昇する情勢であり、国内のインフレ圧力が
さらに強まる公算が大きい。米国景気の減速を考慮し、
2008 年、2009 年の成長率予想については、+10.1%、
+8.7%に減速するとの見直しを据え置く。人民元につ
いては、2008 年末について 6.80 人民元/米ドルを見込
む。人民元の上昇と中国における物価上昇は、他のア
ジア諸国・経済の物価や成長率にも悪影響を及ぼそう。
消費者物価上昇率(%)
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(参考)
NIEs+ASEAN4
インド
3. アジア景気に対するリスク要因としては、米国経済
の行方が最重要であろう。アジア経済は、貿易や投資
の自由化を梃子に高い成長率を達成してきたため、主
要な輸出先である米国の景気が急速に落ち込むような
ことがあれば、相当な悪影響を受ける可能性が高い。
輸出が減速するにとどまらず、在庫調整や設備投資の
減速が生じる。株価が下落すれば、負の資産効果を通
じた民間消費への影響も懸念される。
経常収支(億米ドル)
(年)
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(参考)
NIEs+ASEAN4
インド
2007(推)
1,075
60
311
265
439
610
112
289
60
149
3,307
4,992
2008(予)
1,040
-88
255
280
593
591
165
333
55
38
3,744
5,375
2009(予)
1,195
-99
280
342
672
686
200
375
71
40
4,136
6,016
1,685
-214
1,631
-405
1,880
-468
4. 米国経済が後退局面に陥るような場合、アジア諸
国・経済のなかでは、シンガポールやマレーシア、台
湾など輸出への依存度が高い経済に比較的強い減速効
果が及ぶ可能性が出てこよう。一方、中国とインドに
ついては、米国景気がマイルドな景気後退に陥った場
合でも 8%以上の比較的高い成長率を維持し、アジア経
済を支える役割を果たすと見込んでいる。これは、潜
在成長率の水準がもともと高いことに加え、一人当た
りの所得の水準が他の多くのアジア諸国・地域と比べ
て未だ低く、消費のなかで生活必需品に向けられる割
合が高いためである。
(注)1.実質GDP成長率、消費者物価上昇率の各国・地域のウェイトは2004年の
GDPの米ドル換算値を基に算出。
2.インドは年度(4月∼翌年3月)。物価は、卸売物価。
(出所)公式統計及び野村国際(香港)、野村シンガポール、野村證券金融
経済研究所の予測
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
このレポートは、作成日現在におけるマクロ経済全般についての情報提供を唯一の目的としており、有価証券等の勧誘を目的としているものではありません。なお、このレポートに記載されてい
る情報は、当社が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、当社が正確かつ完全であることを保証するものではありません。このレポートに記載された経済全般の実績、評価又は将来動
向の表示等は、作成日時点におけるものであり、予告なく変わる場合があります。このレポートにあるシミュレーション結果は、特定の前提条件の下に特定の手法により導き出されたものです。
従って、当該結果は前提条件の異なるもの、別の手法によるもの等とは異なる結果になることがあります。また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
13
国際資本移動と為替レート
2008.2.19
1. 米国でのサブプライムローン問題に端を発した国際
金融市場の混乱が長期化する中、08 年年明けのドル円
相場は一時1ドル 104 円 95 銭を記録する等、円高・ド
ル安傾向で始まった。米国景気の先行き不安を主因に、
更なる円高を見込む向きも多いが、以下4つの理由か
ら更なる円高余地は限定的であると予想される。
追加的円高進行余地は限定的
先進国経済成長率と世界株価前年比
(前年比:%)
(前年比:%)
6.0
80
MSCI世界株価指数前年比(左軸)
70
株価上昇
5.5
先進国景気拡大
5.0
60
先進国 GDP 成長率(右軸)
50
4.5
40
4.0
30
3.5
20
3.0
10
2.5
0
2.0
-10
①
2. 第1に、米国景気の先行き悲観論は、既に相当程度
織り込まれたと見られる。先物市場では年央までに
2.25%程度への米政策金利引き下げを見込むなど、米
国での追加利下げ観測は依然根強い。ただし、市場見
通しを上回る利下げが実施される可能性は限られよう。
むしろ、積極的な金融緩和と財政刺激策に加え、歴史
的なドル安に伴う効果が年後半には米国景気の再加速
を促し、ドル相場の安定感回復に繋がる可能性がある。
1.5
1.0
-20
②
0.5
-30
0.0
-40
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
(年)
(注)1.MSCI の 08 年の試算は、ケース<1>が世界株価が1月末から横這い、
ケース<2>が世界株価が昨年8月以降の月間平均と同じペースで下落
する、場合の前年比騰落率。
2.先進国 GDP 成長率は IMF 算出、07 年、08 年は同予測。
(出所)国際通貨基金(IMF)、トムソン・データストリームより野村證券金融経済
研究所作成
3. 第2に、円高を伴って進展してきた世界的な株安は、
先進国景気の前年比+1.5%割れを想定した動きとなっ
ており、やや悲観的過ぎの感が強い。今後は行き過ぎ
た先進国景気悲観論を修正する動きが高まり、その過
程で世界的な株安が円高をもたらす環境にも変化が生
じることが予想される。
製造業採算ドル円レートと実績値
(円/ドル)
150
実績値(B)
140
07年
1 0 6 .6
130
4. 第3に、足下の円高水準は日本景気及び企業収益に
対する先行き不安を喚起し易い水準に接近していると
みられる。足下の円高により、<1>本邦企業の減益懸念、
<2>当局による政策対応への思惑、が喚起されれば、本
邦景況感の悪化と関係なく進展してきた円高ドル安に
も、自ずと歯止めが掛かろう。
120
110
採算レー ト(A)
100
(円/ドル)
35
90
30
25
80
20
乖離幅 (B-A)
15
10
5
5. 第4に、投機筋の為替持ち高は既に大幅な円買い超
過に傾斜しているが、過去のドル円通貨持ち高と日米
政策金利差の観点からは、既に円が買われ過ぎている
可能性が高い。更なる円高余地は限定的だろう。今後、
米国及び世界経済を覆う行き過ぎと思われる悲観論が
後退すれば、ドル円相場は反発に向かおう。
0
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
(年) -5
07 08
06
(注)採算レートは年1回発表のものを線形補間により月次に変換。
(出所)内閣府、トムソン・データストリームより野村證券金融経済研究所作成
米日政策金利差と投機筋の持ち高
(万枚)
(%ポイント)
20
13
18
12
11
16
14
12
シカゴ通貨先物市場ドル円持ち高(左軸)
同 12ヶ月移動平均(左軸)
10
米日政策金利差(右軸)
8
10
7
8
6
6
5
4
4
2
3
0
2
-2
1
-4
-6
0
ドル買い持ち超過拡大
-8
-10
6. 総じて、米国景気の先行き不安が払拭されるまでは、
折に触れて円高ドル安圧力が高まり易い状況が続く可
能性はあるが、上述の4点に鑑みると、1ドル=105
円を大幅に割り込む円高余地は限定的だろう。経済予
測の前提となるドル円相場に関しては、景気見通しに
対する中立性維持の観点から主観的な方向感を明示せ
ず、予想期間にわたって1ドル=110 円で横ばいとした。
前提となるドル円相場の水準は、直近2ヶ月間の平均
値に2円 50 銭刻みで最も近い値を用いている。
9
-1
-2
ドル売り持ち超過拡大
-3
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08
(年)
(注)シカゴ通貨先物市場ドル円持ち高は非商業と非報告部門の持ち高合計。
(出所)トムソン・データストリーム、ブルームバーグより野村證券金融経済研究所
作成
野村證券株式会社 金融経済研究所 〒100-8130 東京都千代田区大手町 2-2-2 アーバンネット大手町ビル
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14
2008.2.19
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)の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および
信託報酬等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれが
あります。商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論
見書、等をよくお読みください。
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号
加入協会/ 日本証券業協会、
(社)投資信託協会、
(社)日本証券投資顧問業協会、
(社)金融先物取引業協会
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