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形状記憶合金素線をセンサーとした三次元変位システムの開発

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形状記憶合金素線をセンサーとした三次元変位システムの開発
形状記憶合金素線をセンサーとした三次元変位システムの開発
1. 目的
埋立地の地中変動,地中層での地すべり,大型施設
下の地下変動,軟弱地区での埋設管の変形などは一般
的には外部から発見することは困難である.これらの
変位,変動はそれぞれ固有の方法で対応しているが,
いずれも小変位量しか測定できず,変形量がある程度
大きくなると対応できなくなる.たとえば,地すべり
の場合,現在の測定方法は地中にガイドパイプを鉛直
に挿入しておき,この中に傾斜計装置を吊り下げて測
定する.この方法では機構的に変形量の測定範囲が狭
く,6゜程度の傾斜で測定不能になる.再度その周辺
に新しくガイドパイプを設置して計測を繰り返してい
る.このように地下変動の計測は現在のところ小変形
にしか対応できないのが現状であり,一回の設置で大
変位まで測定できる装置の開発が切望されている.
そこで,変位センサー本体,加熱装置,形状呼び戻
し及びその変形状態計測装置により構成される三次元
変位測定システムの開発を試みた.変位センサー本体
に Ti-Ni 形状記憶合金(以後素線)を用い,埋設管等
の測定対象物に挿入し形状を記憶させ,計測室でその
記憶形状の復元を行い評価する.
本研究開発は平成 13 年度即効型地域新生コンソー
シアム事業であり,大学,企業との協力体制で取組み
課題を分担し,変位計測システムの開発に向け研究を
行った.当センターでは変位センサーとなる素線の形
状記憶特性,加工特性について検討した.
2. 実験方法
2-1 形状記憶合金素線の形状復元特性について
変位センサーとなる素線は一辺 3mm 角の Ti-Ni 系
を採用し,形状記憶は 400∼500℃の温度範囲で所定
の形に拘束し,数分間熱処理を行った.また,復元温
度(Af 点)は約 80℃である.素線は冷間加工により
素線内に析出物が生じ,熱処理を施すことで転位が並
び析出物を保持することにより形状記憶が行われる.
一般的には記憶処理は一度とされているが,開発する
素線センサーとしては,最初に直線記憶処理を施した
後,所定の形状を記憶するため,熱処理を 2 回以上行
うことになる.また,素線はひずみ量により記憶特性
が変化する.そこで,素線を図 1 に示す金型に拘束保
持し,熱処理状態の変化による記憶特性について検討
した.拘束用金型には曲率半径 50mm の 1/4 円溝を設
けており,素線に与えるひずみは外周部で 3%となる.
図 1 素線形状拘束用金型
2-2 形状記憶合金素線の加工特性について
素線の温度上昇は電流を流し,抵抗加熱させる方式
を採用した.素線端の結線方法を検討するために加工
特性について検討した.
3. 実験結果
3-1 形状記憶合金素線の形状復元特性について
図 2 に 400℃
の処理温度で記
憶させ,マルテ
ンサイト変態後
形状を復元させ
た場合の状態を
示す.2 辺の角
θ
度は 91°であ
った.なお,処
理温度が 430℃,
図 2 形状復元状態(400℃)
460℃の場合で
は,ほぼ 90°に復元できることが明らかとなった.
3-2 形状記憶合金素線の加工特性について
図 3 は素線に切削加工(ハイスドリル)と放電加工
(ワイヤ)を行った後の状態である.素線は高硬度で
あり,切削加工は困難であったが,放電加工では安定
して加工が進んだ.また,TIG 溶接も可能であり,作
業の効率性から素線の結線には TIG 溶接を採用した.
図 3 素線の機械加工の状態
電子機械課
○小川
仁,野々村
俊夫,香川
敏昌
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