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No.39 - 近畿レインズ

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No.39 - 近畿レインズ
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ズームイン
団地再生と不動産流通
ニュータウンのオールドタウン化が指摘されて久しい。2000 年代に入りニュータウンの高齢化
が急速に進んでいるが、一方で団地再生に向けた取り組みも目立っている。今回は、居住人口の
回復に向けた再整備の動きや行政の施策とともに、不動産流通分野での動きについて紹介する。
1.ニュータウンにおける人口構成の変化
●千里ニュータウンの人口は 2005 年には 9 万人まで縮小し、高齢化率は 26.1%に上昇(図表1)
。
●ニュータウンでは開発当初世代の定住意向が強いが、子供世代は就職や結婚を機に転出するため
新たな若年・ファミリー層の流入が少なく、高齢化の最大の原因となっている。
●一方、成熟した街のイメージを持つ千里の人気は高く新築マンション価格は他エリアを上回る。
建て替えを前提とした試算では、新規住民の流入で 2030 年の高齢化率が現状と同程度に収まる。
2.ニュータウン再生に向けた取り組み
●2000 年代に入りニュータウンでは、住環境保全に向けた規制・誘導から、住宅地の多機能化や敷
地規模の緩和、駅周辺や幹線道路沿いの高度利用化などに土地利用の考え方が変化している。
●千里中央地区では再整備ビジョンに基づき、高層マンションなど各種施設の整備が進むが、建て
替えによる新たな住宅ストックの形成は、今後の中古流通市場の拡大にも寄与する。
●泉北ニュータウンでも公的賃貸住宅の建て替えに加え、持家戸建の借り上げ制度活用といった取
り組み方針が出され、新婚や子育て世帯向けの家賃補助制度なども動き出している。
3.不動産流通における取り組み
●ニュータウンの居住世帯は基本的に定住意向が強いが、泉北ニュータウンの調査では住宅の老朽
化や交通の便の悪さなどを理由に、全体の 15%程度が地区内外での住み替え意向を持つ。
●郊外団地に特化した形で不動産仲介を展開する事業者では、物件や顧客ニーズに合わせて段階的
なリフォームを実施し、オープンハウス形式で地域密着型の営業を行っている。団地に特化した
業態は、ニュータウン内の転居ニーズを的確に捉えた例として挙げられる。
図表1 千里ニュータウンにおける人口構成の変化
(千人、千世帯)
180
160
120
3.19
3.61
140
人口・世帯の推移
3.55
129
123
3.06
116
109
(人/世帯)
3.50
2.89
109
3.00
2.69
2.50
104
96
100
2.37
90
1.50
60
40
30
39
36
38
38
39
38
38
0.50
0
0.00
1975
1980
人口
1985
1990
世帯数
1995
2000
世帯人員
2005年
25
20.1
20
18.5
15
10
12.0
9.7
7.1
1.00
20
1970
26.1
65歳以上人口率の推移
2.50
2.00
80
(%)
5
0
8.3
5.2
2.8
1970
1975
1980
1985
千里ニュータウン
1990
1995
2000 2005年
大阪府
全国
資料:国勢調査
2010/11 No.39
■1
ズームイン/団地再生と不動産流通
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
1.ニュータウンにおける人口構成の変化
新住宅市街地開発法に基づく我が国最初のニュータウンとして知
高齢化の要因は
られる千里ニュータウンは、
「まちびらき」から既に 50 年近くが経過
新規住民の流入低迷
しているが、その人口動態をみると近郊ベットタウンとしての盛衰が
示されている。
千里ニュータウンの人口は 1975 年の 12.9 万人でピークアウトし
たあと一貫して減少し、2005 年には 9 万人まで縮小。その間も、小
世帯化により世帯数は 3.8 万世帯前後と横ばいで推移したが、95 年
以降は減少に転じ、住宅の余剰感は強まっている。世帯人員は 70 年
の 3.61 人から 05 年は 2.37 人まで縮小する一方、65 歳以上人口の高
齢化率は 95 年頃から急速に上昇し、05 年には 26.1%と全国平均を
大きく上回っている(P1・図表1)。開発当初の入居世代が一斉に高
齢化の時期を迎えており、千里ニュータウンはかつてのファミリー中
心から高齢単身・夫婦世帯の街へと変貌している。
近畿圏の他のニュータウンをみると、その開発時期によって高齢化
の進展の違いがわかる。千里ニュータウンに続いて 60 年代に開発が
始まった泉北ニュータウンや須磨ニュータウンは千里に次ぐ高い高
齢化率を示すが、最も新しいトリヴェール和泉では 10%に満たない。ニュ
ータウン地区では開発当初の流入世代の定住意向が強いが、その子供
世代は就職や結婚などを機に転出するケースが多く、新たな若年・フ
ァミリー層の流入が少ない点が高齢化の最大の原因となっている(図
表2)。
図表2
近畿圏の代表的なニュータウンの人口構成
(%) 0
5
10
15
25
30
■泉北ニュータウン区域の転出入(2004~08年計)
19.1
千里(1962年)
27.8
11.2
泉北(1966年)
17.7
14.5
須磨(1967年)
21.4
8.8
平城(1972年)
12.8
9.8
洛西(1976年)
14.8
6.9
三田(1981年)
9.8
65歳以上人口率
9.2
西神(1982年)
トリヴェール和泉(1992年)
20
12.8
4.3
6.6
60歳以上人口率
( 年):まちびらき年
資料:2000年国勢調査
※「全部」:世帯全部の移動、 「一部」:世帯の一部の移動
※転出入には、区間の移動数を含む
資料:堺市転出入人口データ
2010/11 No.39
■2
ズームイン/団地再生と不動産流通
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表3
千里ニュータウンが位置する豊中市・吹田市の新築マンション発売動向
(戸)
(万円)
発売戸数
4,000
発売価格
5,000
吹田市
3,500
豊中市
4,500
豊中市
3,000
2,500
2,492
2,000
1,500
阪神間
903
1,316
3,500
1,646
1,039
781
1,000
500
吹田市
4,000
972
778
1,043
1,039
京都市
609
1,784
1,396
799
784
2005
2006
393
大阪府他
神戸市
大阪市
3,000
634
858
2008
2009年
2,500
0
2001
2002
2003
2004
2007
60
65
70
75
80
(㎡)
資料:㈱不動産経済研究所
■住んでみたい街(関西圏)
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
芦屋
西宮
神戸
夙川
岡本
千里中央
梅田
茨木
京都
三宮
宝塚
御影
高槻
箕面
天王寺
難波
吹田
豊中
苦楽園
元町
2010年(回答 851人)
1位
1位
獲得ポイント
選択数(人) 選択率(%)
346
81
9.5
231
36
4.2
202
41
4.8
174
37
4.3
124
18
2.1
123
28
3.3
114
23
2.7
111
23
2.7
108
23
2.7
102
20
2.4
85
10
1.2
73
16
1.9
68
11
1.3
65
11
1.3
62
13
1.5
62
11
1.3
54
8
0.9
51
4
0.5
50
11
1.3
46
10
1.2
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
14
16
16
18
19
19
2009年(回答 980人)
1位
1位
獲得ポイント
選択数(人) 選択率(%)
芦屋
470
108
11.0
西宮
318
57
5.8
夙川
232
41
4.2
神戸
208
34
3.5
岡本
146
21
2.1
京都
136
27
2.8
梅田
127
24
2.4
御影
95
11
1.1
三宮
92
19
1.9
千里中央
85
18
1.8
宝塚
84
10
1.0
苦楽園
82
14
1.4
高槻
73
18
1.8
茨木
69
8
0.8
豊中
69
10
1.0
住吉(兵庫県)
64
8
0.8
六甲
56
9
0.9
吹田
52
4
0.4
箕面
50
7
0.7
大阪
50
7
0.7
*ポイント:第1位=3P 第2位=2P 第3位=1P
出典:「住んでみたい街アンケート」 MAJOR 7ホームページ
期待される建て替えに
よるマンション供給
こうした動きがある一方、千里ニュータウンに対しては成熟した街
のイメージができつつあり、住宅地としての関西での人気は相対的に
高い。ニュータウン内の土地利用方針の転換により新築マンション供
給が進んだこともあり、住んでみたい街のランキングでは近年、千里
中央地区の順位が上昇している。販売される新築マンションの価格や
住戸規模は他のエリアを上回っており、このエリア周辺の人気の高さ
を裏付けている(図表3)
。
高齢化・小世帯化といった課題に対しては、行政を中心に既にニュ
ータウンの再生に向けた方向性が示されており、千里ニュータウンで
も再生方針の中で建て替えを想定したシミュレーションが検討され
ている。それによると、エリア内の公共賃貸住宅や旧公団等の分譲団
地の建て替えと、それに伴う余剰地での民間分譲マンションの建設を
2010/11 No.39
■3
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ズームイン/団地再生と不動産流通
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表4
千里ニュータウンの再生による将来人口・供給住宅の変化(試算推計)
将来推計人口の推移
(千人)
将来の65歳以上人口率の推移
118.6
120
117.5
(%)
40
37.5
36.5
36.9
35.6
110
112.0
100
110.4
31.7
30
90
80
35
88.7
82.6
76.5
70
25.7
25
60
25.7
20
70.6
64.7
59.3
50
24.1
24.8
2025
2030年
15
10
40
2005
2010
ケース1
2015
ケース2
2020
2025
ケース3
2005
2030年
ケース1
ケース2
建替えを行わないと想定
専用面積を75 ㎡/戸と想定
ケース3
専用面積を85 ㎡/戸と想定
ケース4
専用面積を95 ㎡/戸と想定
2015
2020
ケース1
将来住宅戸数の推移
(千戸)
2010
ケース4
ケース3
供給住宅の種別構成の推移(ケース3)
56
53.4
54.0
0%
20%
40%
60%
80%
54
2005年
52
14.4
7.6
18.0
58.8
1.1
50
51.0
51.7
2010年
10.3
13.8
5.3
17.2
53.4
1.5
48
2015年
46
2020年
44
16.3
13.1
19.3
33.6
2025年
38.2
2030年
39.7
49.8
11.2
12.3
11.6
42.9
10.5
39.6
9.6
39.2
42
40
42.0
2005
42.0
2010
ケース1
2015
ケース2
2020
2025
ケース3
2030年
ケース4
新規分譲マンション
公的分譲住宅
公共賃貸住宅
11.5
戸建て住宅
社宅・民間集合住宅など
出典:「千里ニュータウンの現状」 第2回千里ニュータウン再生のあり方検討委員会資料 2006年10月
前提に、住戸規模に応じた住宅戸数と人口の拡大を見込んでいる。建
て替えを行わない場合、現在 8.3 万人の人口が 2030 年には 6 万人弱
まで減少するのに対し、住戸規模を最も抑えた建て替えケース2(75
㎡/戸)では 2030 年に 12 万人弱まで人口が増加する。ケース3(85
㎡/戸)では今後 20 年間で約 2 万戸、年間約 1 千戸の分譲マンション
供給が想定されており、2030 年には分譲マンションと公共賃貸住宅
のストック数がほぼ同数になると見込まれている。この結果、千里ニ
ュータウンの高齢化率は 2030 年でも 25%弱に抑えられ、建て替えを
行わないケースに比べて 10 ポイント以上低下し、分譲マンションの
供給による新規住民の受け皿づくりの重要性が理解できる(図表4)
。
2010/11 No.39
■4
100%
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ズームイン/団地再生と不動産流通
2.ニュータウン再生に向けた取り組み
地域活性化に向けた
新たな土地利用へ
従来、各ニュータウンでは住環境の保全に向けたルールが設けられ、
千里ニュータウンでは新住宅市街地開発法に基づく 10 年間の買戻し
特約の期限後、敷地分割や集合住宅への建て替え等を防ぐため、吹田
市域での建築協定や地区計画のほか、豊中市域での住環境保全の基本
方針などにより、住環境を規制・誘導してきた。
こうしたガイドラインは対象エリアの住環境保全に一定の役割を
果たしてきたが、前述のような人口減少と急速な少子高齢化の進展に
より、地域の活性化に向けた新たな整備方針が必要とされるようにな
っている。豊中市では、良好な住環境保全を基本としつつ、住宅地へ
の多様な機能・施設の導入や敷地最低規模の柔軟な設定、駅周辺や幹
線道路沿いでの高度利用化などに向けた新たな土地利用の考え方を
提示している(図表5)。
特に千里中央地区では近年、大阪府企業局や千里センター、民間企
業による土地・建物の売却が進み、新たな商業・業務施設とともに、
分譲マンションや医療・福祉施設等の建設が進んでいる。従来、同地
区で住宅を排除する指導が行われてきたが、商業・業務機能の需要拡
大が見込めないことから、事業者からもマンション立地に対する要望
が強まっていた。今後は、各地区の課題に対応できるよう、行政だけ
図表5
豊中市の「住環境保全基本指針」から「土地利用の考え方」への変化と背景
地区
戸建住宅地区
変化の内容
・住宅地への多様な機能の導入
(戸建専用を基本→戸建専用住宅以外の
用途の検討)
・敷地最低規模の柔軟な設定
(230 ㎡以上→敷地現況・相続による土地
背景
・戸建住宅地等への多様な高齢者向け住宅
や交流施設等の導入
・相続に伴う問題の解決(相続税の負担、
売買困難など)
・若年層の居住促進による地域の活性化
処分動向・関係者の意向を踏まえて設定)
中高層住宅地区
・住宅地への多様な機能の導入
(住宅・公益的施設等に限定→法定程度の
用途導入)
・立地特性に合わせた土地の利用
(容積率 150%を基本→駅周辺や幹線道路
・高齢者介護や子育て支援、多世代交流な
ど施設の充実
・賑わいのある、歩いて楽しいまちづくり
・民活による公的住宅建て替え促進等のた
めの土地の高度・複合利用
沿いは高度利用)
千里中央地区
・住宅の立地制限の緩和
(住宅立地の場合の低層階は商業・業務施設)
・業務施設用地の転売に伴うマンション
立地の要請、これに対応した住商混在の
良好な環境の形成
出典:
「ニュータウン再生-住環境マネジメントの課題と展望」山本茂著
2010/11 No.39
■5
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ズームイン/団地再生と不動産流通
でなく地区の実情やニーズに詳しい住民や事業者が話し合うことで、
住環境の保全ルールを形成していく姿勢が求められている。
既に始まっている
再生事業
千里中央地区については 2003 年に再整備ビジョンが策定され、そ
の後、事業コンペ等を経て各種施設の整備が進んでいる。既に超高層
棟を含む分譲マンションの供給が始まっており、大型商業施設や医療
福祉施設、文化施設等も立地し、多様な都市機能が集積しつつある(図
表6)。
センター地区の土地利用転換がニュータウン全体に与えるインパ
クトは大きく、ニュータウン外からの居住者の吸引にもつながる。同
地区の分譲マンション販売は好調に推移しており、こうした動きは今
後の良質な住宅ストック形成の糸口となろう。先に見たシミュレーシ
ョンのように、建て替えの進展は若年ファミリー層を中心とする新規
住民の流入を促すが、同時に将来的な中古流通市場の拡大にも寄与す
ることになる。もともと良好な住環境と膨大な住宅ストックを抱えて
いるニュータウン地区が、こうした再生事業を通じて新たな市場に生
まれ変わりつつある点に注目すべきだろう。
図表6
千里ニュータウン(千里中央地区)における再生事業計画
■土地利用図
千里中央地区
出典:『千里ニュータウンの再生について』 豊中市ホームページ
「千里中央地区再整備事業コンペ <住友商事グループ提案概要> 2005年8月 」
2010/11 No.39
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既存ストックの活用
目指す泉北ニュータウン
ズームイン/団地再生と不動産流通
泉北ニュータウンでも再生に向けた新たな取り組みが始まってい
る。ここでも過去に供給された公共賃貸住宅や分譲団地が老朽化に伴
い今の居住ニーズに対応できなくなっており、その改修・建て替えや
不足している社会福祉施設・生活利便施設の整備が求められている。
堺市では、地域の高齢化と空き家の増加による活力の低下を防ぐため、
老朽住宅の建て替えと余剰地における民間事業者による分譲マンシ
ョンや高齢者向け施設の整備などにより、多様な世帯がバランスよく
居住できる街を目指している(図表7)
。
また、既存の住宅ストックの活用では、戸建住宅に対する移住・住
み替え支援機構によるマイホーム借り上げ制度の活用などを挙げて
図表7
泉北ニュータウンにおける取り組み
■泉北ニュータウンの再生指針 (住宅ストックを活用した安心住空間の創出)
○公的賃貸住宅を活用した安心住空間創出イメージ
○移住・住みかえ支援機構によるマイホーム借上げ制度のイメージ
出典: 「泉北ニュータウン再生指針 2010年5月」 堺市ホームページ
2010/11 No.39
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(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ズームイン/団地再生と不動産流通
■泉北ニュータウン子育て世帯等住まいアシスト補助制度(堺市)
・新婚・若年・子育て世帯の民間賃貸住宅の入居時(2010年9月以降)に、最大月額20,000円
最長5年間の家賃補助
・家賃の引き下げを行う賃貸人に、本来の家賃との差額を上限2万円まで市が補助
○賃貸人の主な条件
→賃貸人がアシスト家賃(5万円以上)を設定し、賃貸借契約書に本来の家賃と併記
→泉北ニュータウン内に立地、戸建75㎡以上、共同建55㎡以上
→昭和56年6月の新耐震基準に適合、本来の家賃は5万円超
→不動産業者等に賃貸の代理又は媒介を依頼し、本来の家賃が決定されていること
○賃借人の主な条件
→新婚世帯:婚姻から1年以内か婚姻予定、申込者本人と配偶(予定)者の年齢和が80歳以下
→若年世帯:婚姻しており、申込者本人と配偶者の満年齢の和が80歳以下
→子育て世帯:義務教育修了以前の子を扶養し、現に同居する世帯
資料:堺市建築都市局ホームページ
いる。同制度は、戸建住宅の維持管理の負担を避けたい高齢者世帯と
庭付き一戸建を求めるファミリー世帯を結びつけ定期借家制度で貸
し出すもので、住み替えの促進により居住世帯の若返りを目指す。
民間の賃貸住宅に対しても、新婚・子育て世帯や若年婚姻世帯の入
居時に、最大 2 万円/月まで最長 5 年間まで賃貸人への家賃補助制度
を設けている。このように、持家取得だけでなく民間賃貸住宅への入
居促進についても対応を図り、多様な住み替え・転入策を展開しよう
としている。
3.不動産流通における取り組み
ニュータウン居住者の
住替え意向は 2 割前後
ニュータウンの居住世帯は基本的に定住意向が強く、泉北ニュータ
ウンの調査では約 7 割がニュータウン内に住み続けたいと回答して
いる。住まいに対して保守的な高齢者世帯が多数を占めることが、こ
うした結果につながっているとみられ、千里など他のニュータウンで
2010/11 No.39
■8
ズームイン/団地再生と不動産流通
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表8
泉北ニュータウン居住者の住み替え意向
今後の居住意向(N=1,397)
まだ分からな
い 15.4%
その他 1.5%
無回答 6.1%
その他の地域
に住み替えた
い 3.3%
回答A.
泉北ニュータウン
内に住み続け
たい
泉北ニュータウン
内で住み替え
たい 69.2%
大阪府内に住
み替えたい
2.9%
泉北ニュータウン
外の堺市内に
住み替えたい
1.6%
今後の居住意向
左の回答A.の内訳(N=967)
泉北ニュータウン
内に住み替え
たい 6.9%
同じ学区・地
域内に住み替
えたい 3.4%
建て替えて住
み続けたい
4.1%
今のまま住み
続けたい
75.1%
リフォームしな
がら住み続け
たい 10.5%
資料:「泉北ニュータウンの再生に向けたアンケート調査 2009年7月」 堺市建設都市局
も同様の調査結果がみられる。一方、ニュータウン外への転出意向は
7.8%にとどまるが、ニュータウン内での転居意向も含めると全体の
約 15%は地区内外での住み替え意向を持っている(図表8)。千里ニ
ュータウンの調査でも同様の回答は 2 割程度を占め、一定の住み替え
需要が存在することがわかる。
不動産流通の視点からみると、ニュータウンの再整備に伴う地区外
からの転入とともに、ニュータウン内居住者の転居ニーズを的確に捉
えることが重要となろう。住み替えを検討する理由として住宅の老朽
化と交通の便の悪さへの指摘が多く、住宅設備の充実や家族の増減を
挙げる回答も多い(図表9)。老朽化や設備面の改善は現住居のリフ
図表9
泉北ニュータウンでの住み替えを検討する理由・対象住宅
住み替えを検討する理由
(%) 0
10
20
30
移り住む場合の住宅の種類
40
50
41.1
住宅の老朽化
38.3
交通の便が悪い
23.9
住宅設備の充実
20.1
家族の増減
(%) 0
10
20
37.8
分譲マンション
高齢者向け住宅
16.7
公社・UR賃貸住宅
16.3
民間賃貸住宅
福祉・医療が心配
13.9
エコ対応住宅
9.6
地価や家賃が高い
13.4
公営住宅
9.1
子育て・教育の心配
その他
※複数回答
(N=209)
6.7
20.1
12
5.3
戸建借家
老人ホーム
その他
50
42.1
13.9
11.0
40
戸建持家
通勤・通学の事情
近所づきあいが面倒
30
1.9
※複数回答
(N=209)
3.4
資料:「泉北ニュータウンの再生に向けたアンケート調査 2009年7月」 堺市建設都市局
2010/11 No.39
■9
ズームイン/団地再生と不動産流通
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ォームでも対応可能だが、交通の利便性や家族の増減(特に子世帯の
独立や高齢世帯の転居)への対応は、ニュータウン内外の鉄道駅周辺
や都心への住み替え需要となって現れる。
本来はニュータウン内の交通機関の整備や多様な世帯向けの住宅
供給で対応することが理想だが、短期的な整備が望めない中ではニュ
ータウン内外での多様な住み替え支援が求められる。転居時に希望さ
れる住宅の多くは戸建持家や分譲マンションであり、その物件探索を
担うのはやはり不動産流通業である。今後は他社・他店とも連携しつ
つ、こうしたニュータウンエリアに広がる潜在需要の掘り起こしが期
待されるところだ。
図表 8 でも見たように、ニュータウン内での定住意向を持つ住民で
郊外団地に特化した
も、その約 1 割はニュータウン内での住み替えを考えている。こうし
仲介業も
た住み慣れた地域での転居需要は一定程度存在し、不動産流通業でも
郊外団地に特化した形で事業を展開する例がみられる(図表 10)。首
都圏 1 都 3 県で店舗展開する仲介会社では、郊外の旧公団・公社物件
図表 10 郊外団地のリニューアルによる仲介物件の例 (首都圏/多摩ニュータウン周辺)
沿線
最寄駅
物件名
所在地
価格
物件種別
間取りタイプ
専有面積
藤の台団地
東京都町田市本町田
650.0万円
中古公団
2LDK
48.65m2
1971年4 月
5階/地上 5階
京王 相模原線 (京王多摩センター駅 ) 鹿島団地
徒 歩15分
東京都八王子市鹿島
950.0万円
中古公社
2LDK
52.58m2
1976年1 月
1階/地上 5階
多摩 都市モノレール (松が谷駅)
徒 歩8分
松が谷団地17
東京都八王子市松が谷
1,150万円
中古公社
2LDK
52m2
1976年1 月
3階/地上 5階
京王 相模原線 (京王永山駅)
バス 9分 徒歩3分
ピアシティ多摩永山パークサイド
東京都多摩市永山6丁目
1,250万円
中古マン
3DK
55m2
1994年3 月
2階/地上 4階
小田 急小田原線 (町田駅)
バス 15分 徒歩4分
■藤の台団地
価格
650.0万円
間取り
2LDK
専有面積
48.65m2
物件種別
中古公団
構造
RC
物件画像
階建/階数
地上5階 /5階
築年月
所在階/階建
築年月
1971年4月
出典:東日本住宅㈱ ホームページ
2010/11 No.39
■10
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ズームイン/団地再生と不動産流通
を専門的に扱っている。物件の状態や周辺顧客のニーズに合わせて現
況有姿、水廻り等の部分リフォーム、新築並みの完全リフォームとい
った段階別に改装を施し、周辺へのポスティングとオープンハウス形
式で営業展開を行っている。
首都圏中古マンションの平均成約価格は 2,566 万円(10 年 7~9 月
期/東日本レインズ調べ)だが、ここで扱う物件はリフォーム済でも
数百万円から 1 千万円台のものが多い。こうした物件は高度成長期か
らバブル期以前に建設された郊外団地が中心となっており、バス便や
1970 年代築も珍しくない。いわゆる階段室型の 4~5 階建の建物が多
いが、住み慣れた団地内でリフォーム済の物件を求める顧客からの問
い合わせが多いようだ。同社では自社ホームページに情報掲載し広範
囲の集客を図るほか、比較的築浅の民間分譲マンションに対するリノ
ベーションも行っているが、団地内住戸のリフォームによる再生物件
では圧倒的な安さをアピールしている。
そのままでは市場競争力に欠ける団地物件も、標準的な設備仕様の
リフォームにより一般の中古マンション並みの相場水準を確保して
おり、リノベーション住戸では一般物件をさらに上回る流通価格を実
現している。団地に特化した業態はニッチ的なビジネスモデルだが、
一定の住み替え需要が存在するニュータウン内の転居ニーズを的確
に捉えた例と言えよう。
ニュータウンの再生には時間がかかるため、短期的にはこうした改
修物件の仲介が、郊外エリアで一定のマーケットを占めるとみられる。
中長期的な建て替えと余剰地等への新築マンション供給が進めば、中
古市場への物件供給源として新たな住宅ストックが加わる。近年、都
心の築浅中古マンションが活況を呈しているが、今後は郊外の経年物
件にもビジネスチャンスが拡大しそうだ。
2010/11 No.39
■11
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集
住宅ストックと流通特性
近年、築浅物件の取引が拡大する一方で、景況感の悪化から割安感のある経年物件にも需要が
集まっている。流通物件の属性は地域の住宅ストックにも左右されるが、そもそも住宅ストック
はどのような構成になっているのか。現状の流通特性との違いから市場深耕の可能性を探る。
1.府県別の住宅ストック状況
●住宅・土地統計調査からみた中古での持家取得比率は大阪・京都・兵庫で高いが、滋賀県は 1 割に
とどまる。中古持家の建築時期をみると、経年物件に対する選好性は比較的高い(図表1)。
●持家ストックの多くは木造戸建だが、非木造の借家戸建は少なくニッチ市場を捉えた物件の供給
が必要。近畿 2 府 4 県の空家は着実に増えており、全体の空家率は 14.0%。なかでも戸建の空家
が多く、リモデルによる利活用が重要に。
●持家のバリアフリー化は進むが、省エネルギー化や耐震化工事の実施率は低い。
2.府県別の世帯特性
●民営借家マンションでは単独世帯がほぼ半数以上を占めるのに対し、持家・借家戸建ではファミリ
ーが中心。高齢者世帯の住み替えは多様化し、アクティブシニアの増加で転居率が高まることも。
3.レインズデータとの比較
●持家戸建ストックと成約物件の建築時期を比べると 80~90 年代がボリュームゾーンで、中古マン
ションでは 90~2000 年代の築浅物件の比率が高い。
●市場での経年物件の取り扱いに消極的になると、今後の物件供給が細る可能性がある。古い物件
に対してはリモデル等で住宅性能の向上を図り、市場に乗せていく取り組みが重要。
●持家戸建ストックと成約物件の建物面積を比較すると 70~149 ㎡がボリュームゾーンで、持家マ
ンションでストックの構成比を上回るのは 50~69 ㎡の面積帯である。
●間取りの変更や部屋数減少のニーズは高まっており、予算が折り合えばより広い住戸を求める潜
在需要は大きい。今後は安価な経年物件における広さの訴求で、需要の開拓が期待される。
●中古マンション市場は京都府や奈良県で 5~7 階建が中心だが、大阪府や滋賀県では高層物件が主
力。全般的にストックに対する成約物件の高層階比率は高く、中古需要の選好性は高い。
図表1 府県別の中古で購入した持家ストック数 (2008 年)
■持家の取得形態別比率
0%
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
■中古で取得した持家の建築時期別比率
20%
40%
80%
23.9
34.4
17.1
10.4
60%
25.9
28.5
17.5
奈良県
15.7
24.9
和歌山県
15.7
24.9
中古住宅を購入
建て替え
13.2
18.0
34.8
24.4
17.1
21.3
26.5
20.8
29.6
29.6
新築の住宅を購入
相続・贈与で取得
17.0
100%
0%
20%
40%
11.0
3.2
滋賀県
9.6
4.7
京都府
19.7
31.0
5.5
4.1
大阪府
18.1
34.3
7.8
3.4
兵庫県
16.3
9.7
3.8
奈良県
16.3
9.7
3.8
和歌山県
新築(建て替え除く)
その他
~1970年
24.9
1971~1980年
21.5
19.7
22.2
27.0
1981~1990年
1991~2000年
資料:平成 20 年住宅・土地統計調査
2010/11 No.39
5.9
14.1
28.7
21.2
4.5
16.2
27.3
34.5
30.3
10.6
100%
25.8
29.8
30.2
13.3
80%
30.3
27.2
12.2
60%
■1
4.8
5.2
4.9
4.8
2001年~
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
1.府県別の住宅ストック状況
ストックの状況示す
中古住宅流通の母体となるのは、地域に存在する住宅ストックであ
住宅・土地統計調査
るが、その属性を捉えることで埋もれている市場のシーズを見出すこ
とができる。今回は、住宅ストックの状況を示す国の代表的な統計で
ある住宅・土地統計調査結果を利用し、近畿圏における住宅ストック
の実態を明らかにするとともに、住宅の流通フローを示すレインズデ
ータとの比較を通して、各地域における市場深耕に向けたサインを捉
えることにする。なお、この調査は総務省が 5 年置きに実施するサン
プル調査で最新時点は 2008 年 10 月だが、比較するレインズデータ
も 2008 年度の数値を用いている。なお、各図表は特に記述がない限
り、この住宅・土地統計調査に基づき作成している。
住宅・土地統計調査には様々な設問項目があるが、住宅の取得形態
持家の中古取得比率
についても聞いており、中古として購入した持家の比率が把握できる。
高い京阪神
持家の取得形態を府県別にみると、中古での取得比率は大阪府が最も
高く、次いで京都府、兵庫県の順となっており、京阪神では中古住宅
の選択率が高いことが改めてわかる(P1・図表1)
。
一方、近畿圏で人口の流入が続いている滋賀県は新築住宅の比率が
高く、建て替えを加えると全体の 75.4%が新築住宅を取得している
が、中古住宅の取得率は 10.4%にとどまる。滋賀県では過去に市場
図表2 戸建住宅の構造別・建築時期別ストック数 (2008 年)
■持家戸建(木造)
■民営借家戸建(木造)
0%
20%
滋賀県
60%
21.5
21.1
18.8
京都府
40%
19.1
20.0
23.5
大阪府
18.9
22.3
19.5
兵庫県
19.8
20.8
19.9
奈良県
19.3
22.3
和歌山県
27.9
80%
16.0
滋賀県
20.9
16.5
京都府
23.4
16.1
兵庫県
14.8
奈良県
13.4
和歌山県
19.3
20.2
18.8
14.3
9.7
13.0
大阪府
9.2
13.2
兵庫県
7.5
奈良県
8.0
和歌山県
40%
20.2
18.3
16.2
15.3
~1970年
60%
22.6
京都府
40%
60%
43.1
11.3
6.4
11.0
16.5
22.9
8.9
13.9
16.8
24.8
35.6
9.9
15.3
18.7
22.5
32.1
7.8
12.5
15.1
20.9
41.6
9.0
10.1
15.9
18.7
47.6
100%
13.5
21.3
27.0
29.2
80%
■民営借家戸建(非木造)
20%
滋賀県 4.8
20%
大阪府
18.7
20.6
■持家戸建(非木造)
0%
0%
22.6
24.4
19.8
100%
17.4
22.1
1971~1980年
100%
0%
20%
34.7
23.6
滋賀県
32.6
24.5
京都府
25.0
24.0
32.7
26.6
大阪府
33.3
25.7
兵庫県
25.8
22.6
80%
26.3
21.5
1981~1990年
24.0
1991~2000年
17.8
奈良県
16.7
和歌山県
2001年~
8.3
40%
60%
41.7
20.7
16.7
25.0
18.0
24.1
33.3
14.3
~1970年
80%
16.7
25.0
16.0
17.2
1971~1980年
14.3
1981~1990年
16.7
16.7
22.0
8.3
20.0
17.2
33.3
28.6
100%
20.7
33.3
28.6
14.3
1991~2000年
2010/11 No.39
■2
2001年~
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
で供給されてきた比較的新しい住宅ストックが、今後中古市場で流通
していくことが期待される。中古で取得した持家の建築時期をみると、
大阪府や京都府では 1980 年までの古い住宅ストックが過半数を占め、
和歌山県でも 70 年以前の住宅が約 4 分の 1 にのぼるなど、経年物件
に対する選好性は比較的高い。
2008 年現在の近畿 2 府 4 県の持家住宅ストックは 481.0 万戸で、
注目すべき借家戸建
うち戸建は 365.3 万戸で 75.9%を占める。大多数は戸建だがその 9
ストックの不足
割は木造で、特に和歌山県や京都府では 70 年築以前の古い持家スト
ックも多い。一方、2000 年築以降は比較的安価な建売販売が続く大
阪府や一貫して人口が増加してきた滋賀県、阪神淡路大震災後の再築
が 90 年代に集中した兵庫県などで、ストックの築年構成が新しくな
っている。非木造の持家戸建の築年数は新しいが、奈良県や和歌山県
を除く 4 府県では 91 年以降(築 20 年まで)の住宅が概ね 6 割を占
める(図表2)。
一方、近畿圏の民営借家ストックは 216.0 万戸で、うち戸建は 21.9
万戸と約 1 割に過ぎず、多くは 80 年以前の古い木造戸建の借家であ
る。非木造の民営借家戸建は 1.1 万戸と少ないが、大阪府や兵庫県な
どでは築浅の借家戸建が多く、2000 年以降の比率は 2 割にのぼる。
賃貸ファミリー層における近隣との騒音・振動問題で借家戸建に対す
る潜在需要は大きいとみられるが、現状のストックは不足しており、
今後はこうしたニッチ市場を捉えた物件の供給拡大が見込まれる。
近畿圏の持家マンション
近畿圏の持家マンションストックは 102.0 万戸で全国
(465.8 万戸)
ストックは 101 万戸
の 21.9%を占めるが、その半数の 51.7 万戸は大阪府に立地する。こ
れに次ぐ兵庫県は 32.8 万戸、京都府は 9.7 万戸で、近畿圏の 9 割以
図表3
マンションの建築時期別ストック数 (2008 年)
■民営借家マンション・アパート
■持家マンション
0%
滋賀県
20%
6.3
40%
60%
100%
0%
滋賀県
31.0
49.1
13.6
80%
20%
5.3
40%
60%
80%
33.1
44.5
14.9
100%
2.2
京都府
21.1
22.0
26.2
京都府
28.6
2.1
9.7
29.0
24.1
33.3
3.9
大阪府
21.1
24.1
26.0
大阪府
7.2
21.4
兵庫県
6.2
21.5
奈良県
26.0
13.1
21.0
31.8
27.0
2.7
兵庫県
17.7
20.9
37.3
10.7
22.8
20.3
40.0
2.7
奈良県
14.8
22.0
40.9
0.7
和歌山県
8.9
26.8
37.6
23.7
3.1
1.4
27.8
13.9
54.2
2.8
~1970年
1971~1980年
1981~1990年
1991~2000年
2001年~
和歌山県
9.2
~1970年
12.2
21.6
1971~1980年
21.4
35.6
1981~1990年
1991~2000年
2010/11 No.39
■3
2001年~
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
上のマンションストックがこの 3 府県に集中する。大阪府や京都府、
兵庫県では古くから分譲マンション供給が進んできたため、90 年以
前が 4 割以上にのぼる。一方、滋賀県は 91 年以降のマンションが約
8 割に達し、2001 年以降も 3 割を超えるなど今後とも築浅物件の流
通が主力を占めるとみられる。
民営借家のほとんどは共同建のマンション・アパートだが、その戸
数は近畿圏で 165.6 万戸にのぼる。大阪府は 88.8 万戸でやはり半数
以上を占め、兵庫県(38.8 万戸)、京都府(21.0 万戸)を合わせて約
9 割が 3 府県に立地する。築年構成は、各府県とも 91 年以降が 5 割
以上を占めるが、滋賀県は持家マンションと同様に築浅のストックが
8 割近い(図表3)。
近畿圏において所有関係が明確でない空家を含めた住宅総数は
14%にのぼる
976.5 万戸にのぼり、2003 年からの 5 年間で 52.7 万戸、1998 年か
近畿圏の空家率
らの 10 年間で 117.2 万戸が増加した。この間、増加のペースは鈍っ
ているものの、住宅ストックの拡大は続いている。このうち居住世帯
がいない空家数は 137.2 万戸で着実に増えており、近畿圏全体の空家
率は 14.0%となった。大阪府を除く各府県とも空家率は上昇してお
り、特に奈良県や和歌山県での拡大が目立つ(図表4-1)。
空家の内訳をみると、大阪府や兵庫県、京都府では賃貸用の空家が
多くを占め、売却用の一時的な空家の比率は少ない。和歌山県では、
別荘等の比率が相対的に高い点が特徴となっている。各府県に共通し
(%)
種類別の空家率の推移
20
その他の空家 (転勤・入院等で長期不在の住宅、建替等で取り壊す予定の住宅など)
売却用の空家
18
賃貸用の空家
16
別荘等
14
3.1
12
2.8
5.1
4.8
5.2
5.1
4.9
6.2
5.0
0.6
1998年
1998年
7.2
7.1
6.4
6.5
6.8
0.6
0.4
0.7
0.8
0.6
0.7
0.9
0.6
2
1.4
1998年
0
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
6.7
6.8
2.0
2.7
2003年
2008年
2008年
7.7
2008年
0.6
0.9
6.3
9.0
2003年
0.9
1.3
9.9
1998年
1.0
1.6
9.7
2008年
6.3
2003年
6.3
5.0
1.0
1998年
7.0
5.5
0.6
1.0
2008年
0.8
0.4
0.8
2003年
0.7
2003年
0.8
9.1
6.2
5.1
0.9
0.5
4.6
4.4
1.0
4.9
6
4
4.3
2003年
8
6.2
1998年
10
7.6
4.1
1.4
2008年
図表4-1
和歌山県
*1998年は賃貸用・売却用空家の合計
2010/11 No.39
■4
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
図表4-2 その他の空家の建て方状況 (2008 年)
(千戸)
0
20
滋賀県
23
40
60
80
100
120
140
160
180
10
2
京都府
4
45
大阪府
17
76
兵庫県
73
奈良県
25
26
9
74
42
8
3
和歌山県
31
4 7
一戸建
長屋建
共同建
*その他の空家:転勤・入院等で長期不在の住宅、建替等で取り壊す予定の住宅など
ているのは「その他の空家」の増加である。これは転勤や入院等で長
期不在の住宅や、建替等で取り壊す予定の空家などを示すが、中には
高齢世帯の転居や相続後に処分されず空家のまま放置されている住
宅も含まれているとみられる。
「その他の空家」の建て方状況をみると一戸建が多く、共同建や長
屋建も多い大阪府を除くと、各府県とも戸建の空家が中心となってい
る(図表4-2)。近畿圏では今後 5 年程度で世帯数がピークアウト
し、本格的な住宅余剰の時代が到来する。現状でも郊外の分譲団地を
中心に空家の増加が問題視されており、共同建ではマンションスラム
化の恐れもある。防犯面などの住環境や資産価値を毀損する空家の増
加に対しては、既存ストックを活用したリモデルなどを進め、長期不
在の空家を流通用の一時的な空家に転換していく取り組みが求めら
れよう。
借家にバリアフリー化
の余地
次に、住宅ストックの設備状況をみると、バリアフリー化では各府
県とも持家での対応が進んでいることがわかる。戸建・マンションと
も概ね 6 割以上の持家で、高齢者のための設備が設けられている。一
方、借家のバリアフリー化は戸建・マンションとも 3 割前後にとどま
り、高齢世帯向けの賃貸需要が高まる中で今後の改善の余地を残して
いる(図表5)。
省エネルギー設備では持家で二重サッシや複層ガラス窓の設置率
が比較的高いものの、借家では 1 割を下回る。近年話題の太陽光発電
機は持家戸建でも 2%前後の設置にとどまっており、住宅エコポイン
トなどの政策誘導による今後の普及が期待される。持家戸建の耐震化
工事も、震災を経験した兵庫県で実施率がやや高いものの、他府県で
は概ね 5%を下回り、行政による支援策の一層の拡充が求められる。
2010/11 No.39
■5
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
図表5 住宅ストックの設備状況-1 (2008 年)
■バリアフリー化率
(%)
80
70.5
70 67.2
66.9 68.6
65.1 67.0
62.4 62.9
63.8 63.0
60.0
51.4
60
50
36.3
40
30
39.4
34.3
35.2
38.136.2
34.5
31.8
34.3
28.3
25.2
23.8
20
10
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
0
和歌山県
*バリアフリー化率:高齢者等のための設備(手すり、またぎやすい高さの浴槽、車いす通行可能な廊下、
段差のない屋内、道路から玄関まで車いすで通行可能)のいずれかのある住宅率
■省エネルギー設備率
(%)
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
(%)
6
太陽熱温水器
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
持家戸建
持家マンション
借家戸建
借家マンション
太陽光発電機
1 0.3
3.4
0.2
6.0
0.3
1.2
0.3
4.2
0.7
1.2
0.4
7.4
0.5
1.6
0.5
8.9
0.5
2.3
0.4
1 2.9
1.4
4.1
0.5
2.8
0.3
0.7
0.2
1.4
0.7
0.2
0.1
1.6
0.1
0.2
0.1
2.2
0.3
0.2
0.2
2.2
0.0
0.6
0.5
1.8
0.0
0.2
■耐震化工事実施率(持家戸建住宅)
5.5
5.8
5.1
4.2
4
5.5
4.6
5
4.6
5.0
4.1 4.1
3.4
3.3
二重サッシ・
複層ガラス窓
26 .8
26 .7
8.2
7.0
22 .5
18 .1
8.9
5.4
18 .8
11 .4
8.1
5.5
22 .8
12 .5
8.6
6.0
21 .2
11 .5
7.3
4.4
15 .2
9.7
4.1
4.7
3.9
3.7
3.3
3.5
3.8
2.8
3
2
1
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
非木造
防火木造
木造
非木造
木造
防火木造
非木造
防火木造
木造
非木造
木造
防火木造
非木造
木造
防火木造
非木造
木造
防火木造
0
和歌山県
*耐震化工事実施率:壁の新設・補強、筋かいの設置、基礎の補強、金具による補強などいずれかの工事
を実施した住宅率
2010/11 No.39
■6
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
図表6 住宅ストックの設備状況-2 (2008 年)
(%)
70 66.7
■オートロック式のマンション比率
60
53.3
53.5
50.9
51.3
47.2
50
39.0
40
33.8
27.6
30
25.0
19.4
20
9.2
10
滋賀県
大阪府
兵庫県
奈良県
民営借家
持家
民営借家
持家
民営借家
持家
民営借家
持家
京都府
和歌山県
■自動火災感知設備設置率
69.2
67.0
31.4
26.7
27.0
20.3
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
25.6
57.2
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
30.7
69.5
65.7
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
29.9
88.9
84.7
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
35.5
84.8
79.9
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
25.0
15.9
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
81.9
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
(%)
94.4
100
90
80
62.1
70
60
50
40 29.5
30
20.2
20
10
0
民営借家
持家
民営借家
持家
0
和歌山県
オートロック式のマンション比率をみると、持家では各府県ともほ
ぼ半数以上に達し、築浅マンションが多い滋賀県では 3 分の 2 を占め
る。一方、民営借家は京都府や大阪府で 3 分の 1 を超えるが依然とし
て設置率は低く、防犯意識の高い女性などの居住者ニーズに対応しき
れていない可能性がある。また、自動火災感知設備は持家マンション
でほぼ 8 割以上、民営借家マンションでも 6 割程度の設置率だが、消
防法の改正強化に伴い既存住宅でも 2011 年までに各市町村条例で設
置が義務化されるため、今後この比率は大幅に上昇するものとみられ
る(図表6)
。
2.府県別の世帯特性
持家戸建でやはり中心
的なファミリー世帯
ここで、住宅に居住する世帯の内訳をみておくと、各府県とも民営
借家マンションでは単独世帯の比率がほぼ半数以上を占めるのに対
し、持家や民営借家の戸建では夫婦と子からなるファミリー世帯が
2010/11 No.39
■7
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
3 分の 1 前後を占める。持家戸建では 3 世代などのその他親族世帯も
2 割前後を占め、ライフステージの進展に伴い借家から持家マンショ
ン・持家戸建へと転居するいわゆる「住宅すごろく」的な動きが、依
然として主流であることをうかがわせる。ただ、逆に言えば、魅力的
な設備やゆとりある賃貸マンションが少なく持家を購入するといっ
た消極的な選択も行われている可能性があり、既存の居住形態に飽き
足らないニーズへの対応が一層求められていくものと考えられる(図
表7)。
今後の住み替え需要の増加が見込まれる高齢者世帯に関して、65
多様な高齢者世帯の
歳以上がいる世帯の転居実態をみると、持家への移動では持家からの
転居行動
買い替えが主体となっている。持家同士の住み替えは各府県ともほぼ
半数に達するぼか、借家から持家を購入するケースも 2 割以上を占め
る。一方、借家への転居では民営借家からの転居率が高く、各府県と
も 4~5 割にのぼるが、高齢居住者の多い公的借家からの転居も 2 割
弱を占める。また、持家を売却して借家に移るケースも 2 割前後を占
図表7 持家・借家居住世帯の家族構成の内訳 (2008 年)
滋賀県
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
京都府
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
大阪府
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
兵庫県
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
奈良県
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
和歌山県
0%
持家戸建
持家マンション
民営借家戸建
民営借家マンション
単独世帯
20%
10.0
40%
22.1
14.0
13.6
6.1
20.4
23.0
62.2
43.7
31.9
12.8
25.9
36.9
31.1
28.4
22.0
23.6
75.4
24.7
25.2
26.0
35.3
27.1
40.7
22.8
19.5
63.3
39.6
31.0
11.9
25.8
36.0
22.9
23.2
25.2
22.0
33.9
14.8
25.9
23.0
21.5
36.0
20.0
20.0
45.5
35.4
16.5
47.8
16.7
27.0
34.8
31.5
夫婦のみ世帯
31.0
17.4
21.7
51.4
夫婦と子世帯
100%
24.0
7.4
2.1
9.7
5.2
1.3
7.5
14.6
7.7 3.3
12.3
7.4
8.7
9.1 4.5
1.3
7.7
12.9
8.3 3.5
14.8
7.9
14.1
7.0
2.0
11.5
17.4
7.1
40.6
56.9
12.1
80%
37.8
26.1
23.0
15.0
60%
17.4
7.7 3.2
12.1
7.7
17.8
7.1
2.0
6.7
19.2
2.5
8.8
13.1
9.2
24.1
8.5
1.9
6.9
18.2
7.2 4.3
12.6
6.3
20.8
10.0
1.6
その他親族世帯
非親族世帯
36.2
27.3
14.6
ひとり親と子世帯
2010/11 No.39
■8
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特集/住宅ストックと流通特性
図表8 高齢世帯の転居動向(2004~2008 年の転居世帯)
■65歳以上の世帯員のいる世帯
20%
40%
滋賀県
京都府
持家
大阪府
持家
兵庫県
持家
5.8
借家
5.5
持家
7.2
借家
5.5
借家
17.4
親族の家
48.6
58.0
7.2
持ち家
公的借家
23.2
4.6
1.4
民営借家
2.9
5.5
24.5
3.8
3.8
54.0
8.0
28.0
1.2
41.8
5.7
50.9
5.1 1.4
24.1
7.8
20.0
2.1
3.7
0.9 6.1
17.1
27.3
11.3
借家 4.0
28.7
53.5
55.8
2.4
4.0
22.4
1.0 5.9
10.1
17.3
23.1
5.6
51.0
49.5
6.0
持家
4.0
3.2
4.8
44.4
13.7
23.5
100%
22.6
4.8
57.6
9.6
借家 4.8
80%
13.9
22.2
13.9
借家 4.9
60%
54.8
9.7
持家
和歌山県 奈良県
転居後の住宅
0%
6.0
給与住宅(社宅等)
その他
転居前の住宅
*高齢世帯:65歳以上の世帯員のいる世帯
め、従前と同じ住宅形態への転居を主体としつつ、多様な住み替えも
行われている点が注目される(図表8)。04~08 年の 5 年間の高齢者
世帯の転居率は住宅ストック全体に対して 3%程度だが、今後は団塊
世代に代表されるアクティブシニアの増加に伴い、転居率が高まるこ
とも予想される。現在保有する住宅を売却せずにセカンドハウスを購
入する二地域居住も次第に広がりを見せており、住まいに対して保守
的とされる高齢者世帯の居住像が次第に変化していくことが考えら
れる。ちなみに、高齢者だけの単身世帯や夫婦世帯でもこうした傾向
は同様である。
3.レインズデータとの比較
80~90 年代の物件が
ボリュームゾーン
ここで、レインズデータと住宅ストックの状況を比較し、市場で
流通する物件の特徴を明らかにしたい。まず、持家戸建ストックと戸
建成約物件の建築時期を比べると、各府県地域とも 70 年築以前の古
い物件の中古取引比率が低く、2001 年以降の築浅物件も比率は低い。
これは、古い住宅ストックが中古市場で取引対象になりづらいことや、
2010/11 No.39
■9
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
新築取得から一定年数を経て市場に出される中古物件の築浅比率は
低いことが挙げられる。中古取引の比率が高いのは 80~90 年代の物
件で、ほとんどの地域で過半数を占め、中古戸建市場でのボリューム
ゾーンとなっている(図表9)。
また、持家マンションではストックと中古成約物件の築年構成はと
もに新しく、ボリュームゾーンも 90 年代築が中心となる地域が多い。
千里や泉北ニュータウンを抱える大阪府内では、70 年代築の物件が
ストックと同じ 2 割程度で取引されているが、震災を経験した兵庫県
内では 70 年代築の成約比率がストック比率より低い。ほとんどの地
域で 2000 年代以降も新築マンション供給が進んだため、同築年帯の
比率は成約物件・ストックとも概ね 2~3 割台にのぼる(図表 10)
。
今後は、中長期的にみて 80 年代以降の住宅ストックの経年劣化が
進む一方、世帯数の減少に伴い新築着工数は減少していくと予想され
る。経年物件の取り扱いに消極的になると、市場での物件供給量が
図表9
持家戸建ストックと中古成約物件の建築時期 (2008 年)
和歌山県 奈良県 神戸市 兵庫県
堺市
大阪市 大阪府 京都市 京都府 滋賀県
0%
20%
戸建ストック 戸建成約物件 戸建ストック 戸建成約物件 戸建ストック 戸建成約物件 戸建ストック 戸建成約物件 戸建ストック 戸建成約物件 4.5
戸建ストック 32.3
戸建成約物件 3.9
戸建ストック 戸建成約物件 24.3
17.0
26.5
17.5
16.9
29.1
12.0
19.8
24.5
26.2
35.4
20.1
20.6
19.1
42.3
25.5
1971~1980年
13.0
37.1
38.0
25.7
~1970年
19.7
22.2
18.4
戸建ストック 17.4
29.7
17.1
戸建成約物件 3.4
22.9
21.1
19.1
13.8
21.2
22.9
25.6
20.3
3.2
戸建成約物件 戸建ストック 20.3
18.6
20.6
18.9
19.8
25.5
14.6
20.0
30.8
20.9
18.5
9.2
16.9
23.2
16.8
15.8
19.7
26.8
23.7
24.2
14.3
22.1
19.4
25.2
7.3
17.8
29.3
22.6
21.2
17.7
14.1
22.5
17.2
22.6
17.0
29.7
18.2
11.2
12.8
21.7
24.8
24.2
16.8
23.9
19.2
23.0
100%
31.8
19.6
22.6
8.4
80%
32.0
20.7
戸建ストック 60%
21.6
20.4
17.3
2.7
戸建成約物件 40%
1981~1990年
15.1
9.3
13.8
9.9
1991~2000年
2001年~
2010/11 No.39
■10
*レインズ成約物件は2008年度データ
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表 10
特集/住宅ストックと流通特性
持家マンションストックと中古成約物件の建築時期(2008 年)
和歌山県 奈良県 神戸市 兵庫県
堺市
大阪市 大阪府 京都市 京都府 滋賀県
0%
マンションストック 20%
40%
マンション成約物件 5.3
マンション成約物件 1.0
24.4
21.1
マンション成約物件 0.4
21.1
24.1
マンション成約物件 1.7
21.9
25.2
マンションストック 2.2
19.5
26.7
マンション成約物件 1.1
19.9
28.0
マンションストック 6.7
17.6
マンション成約物件 5.5
18.9
2.8
マンション成約物件 20.9
24.5
14.3
マンションストック 3.1
マンションストック 0.7
14.8
マンション成約物件 0.8
14.5
1.4
1.8
~1970年
22.0
31.1
20.4
24.9
26.0
25.4
37.8
38.6
20.9
37.3
21.4
37.5
20.8
35.9
19.7
34.2
20.4
21.5
40.9
40.7
17.0
13.9
54.2
62.2
29.7
1971~1980年
22.3
29.0
27.0
27.8
26.0
26.0
27.8
14.2
18.8
31.8
22.6
18.6
マンション成約物件 3.5
マンション成約物件 16.1
17.7
マンションストック 2.7
マンションストック 2.8
12.6
18.5
28.3
25.0
29.3
19.8
2.7
マンションストック 28.6
33.5
27.9
19.1
マンションストック 1.2
23.0
26.2
22.0
21.1
100%
31.0
53.4
18.3
マンションストック 2.1
80%
49.1
13.6
6.3
60%
1981~1990年
1991~2000年
6.3
2001年~
*レインズ成約物件は2008年度データ
細る可能性もあり、今後はこうした古い物件に対してリモデル等によ
り住宅性能の向上を図ることで、市場に乗せていく取り組みが重要と
なろう。
市場で選好される
狭い物件
また、持家戸建の建物面積別の構成を比較すると、各府県地域とも
150 ㎡以上の成約比率が住宅ストックより大幅に低く、京都府内では
100~149 ㎡でも成約物件の比率は低い。中古物件は 70~99 ㎡の比
率が高く、70~149 ㎡は各地域とも 3 分の 2 以上を占め、同面積帯が
中古戸建におけるボリュームゾーンとなっている(図表 11)。
持家マンションの専有面積では 50~99 ㎡が各地域で 9 割前後を占
め、中心的な面積帯であることは明らかだが、成約物件の比率がスト
ックを上回るのは 50~69 ㎡の面積帯である。一方、70 ㎡以上では成
約物件の比率がストックを下回り、市場で流通する物件は比較的小さ
なものが住宅ストックの中から選好される傾向にある(図表 12)。
2010/11 No.39
■11
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表 11
特集/住宅ストックと流通特性
持家戸建のストックと中古成約物件の建物面積 (2008 年)
和歌山県 奈良県 神戸市 兵庫県
堺市
大阪市 大阪府 京都市 京都府 滋賀県
0%
戸建ストック 0.7
2.6
戸建成約物件 20%
戸建ストック 5.2
16.1
戸建ストック 3.3
戸建ストック 1.7 6.9
戸建成約物件 2.2
戸建ストック 2.4
戸建成約物件 2.1
戸建ストック 0.8 4.9
3.0
戸建ストック 2.3
9.1
戸建成約物件 2.8
17.0
44.2
26.4
11.3
45.1
32.4
30.5
41.4
25.4
38.5
24.7
8.9
33.3
44.3
50~69㎡
11.2
51.0
34.5
10.6
49㎡以下
10.8
43.4
34.0
22.5
戸建成約物件 0.4
28.1
40.1
23.2
7.4
34.6
39.7
9.2
18.5
36.6
32.1
10.0
8.7
30.3
40.7
9.6
16.1
30.0
28.9
14.7
7.2
33.9
43.0
10.9
戸建成約物件 3.7
17.7
34.9
31.0
11.6
7.1
20.0
44.7
18.3
8.9
17.1
30.1
31.5
戸建成約物件 5.0 10.8
6.9
26.1
46.4
13.0
6.7
21.4
34.0
17.4
10.7
9.2
49.8
29.7
11.6
13.2
戸建ストック 1.9
100%
38.4
32.4
6.0
7.4
戸建成約物件 80%
42.0
15.8
戸建成約物件 戸建ストック 60%
3.2
戸建ストック 3.3
戸建成約物件 40%
70~99㎡
100~149㎡
150㎡以上
*レインズ成約物件は2008年度データ
住戸規模があまりに大きな物件は総額が上がり市場で流通しづら
いことに加え、ゆとりある住宅の居住者は転居や売却意向が低いこと
も、こうした理由の背景にあるとみられる。単身世帯や夫婦のみ世帯
の増加に伴い小世帯化が一層進むため、一定規模以上の住宅に対する
ニーズは低下していく。ただ、間取りを変更し部屋数を減少させて 1
室の面積を広げる傾向は強まっており、購入予算と折り合えばより広
い住戸を求める潜在需要は大きい。今後は安価な経年物件を活用し住
戸規模のゆとりを訴求することで、豊富に存在する住宅ストックを市
場に供給し、新たな需要の開拓につなげていくことが期待される。
市場で一般的な大阪市
の高層マンション
最後に、近年タワーマンションの供給が拡大していることから、持
家マンションにおける階層別の構成比を比較する。高層のマンション
ストックが最も多い大阪市では、15 階以上が成約物件・ストックと
も約 3 割と同程度を占め、流通対象として一般化していることがわか
る。11 階以上も加えた構成比は中古成約物件・ストックとも 7 割を
2010/11 No.39
■12
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
図表 12 持家マンションのストックと中古成約物件の専有面積 (2008 年)
和歌山県 奈良県 神戸市 兵庫県
堺市
大阪市 大阪府 京都市 京都府 滋賀県
0%
マンションストック 0.3
20%
2.8
マンション成約物件 1.9
マンションストック 2.0
マンション成約物件 マンションストック 2.2
マンション成約物件 40%
26.4
2.9
60%
80%
6.3
64.2
30.7
2.7
61.7
7.1
47.6
6.9
8.8
マンションストック 1.2 4.9
51.4
39.0
4.6
50.4
3.0
47.1
マンションストック 1.7 6.2
44.7
43.1
8.5
マンションストック 1.6 4.4
マンション成約物件 1.8 5.4
3.8
マンションストック 0.6
マンション成約物件 2.3 4.4
マンションストック 0.8 4.6
マンション成約物件 3.8
47.2
32.9
マンションストック 0.2 2.2
マンション成約物件 0.0 1.5
29㎡以下
2.4
35.3
3.7
3.0
53.4
35.4
6.2
54.0
37.7
37.6
36.4
50.4
5.3
51.3
5.6
4.8
57.4
43.4
5.6
36.1
74.1
30~49㎡
2.3
52.8
51.4
0.9
6.1
47.4
35.4
マンションストック 0.0 6.9
マンション成約物件 2.7
4.2
57.2
36.3
6.2
1.4
28.7
41.1
6.6
3.1
36.6
マンション成約物件 3.1 5.6
マンション成約物件 1.4
31.6
50.3
7.8
3.8
39.5
51.4
7.7
10.6
100%
50~69㎡
21.4
70~99㎡
0.9
100㎡以上
*レインズ成約物件は2008年度データ
超え、大阪市内の中古マンション市場では高層マンションが取引の主
体となっており、マンションストックの中でもよく選好されているこ
とがわかる。マンション供給が比較的新しい滋賀県でも高層マンショ
ンの比率は高く、11 階以上では成約物件の過半数、ストックの 6 割
以上を占める。
一方、新景観政策などにより高さ制限の厳しい京都市内では 6~7
階の比率が最も高く、ストック・成約物件とも 4 割前後を占める点が
特徴となっており、奈良県ではより低い 5 階建が市場の中心である。
ただ、神戸市や和歌山県、京都市なども含め全体的に中古成約物件に
おける高層階の比率はマンションストックの比率より高く、高層マン
ションに対するニーズは高いと言えよう(図表 13)。
2010/11 No.39
■13
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
特集/住宅ストックと流通特性
図表 13 持家マンションのストックと中古成約物件の建物階数(2008 年)
和歌山県 奈良県 神戸市 兵庫県
堺市
大阪市 大阪府 京都市 京都府 滋賀県
0%
20%
マンションストック 3.1 4.9
マンション成約物件 5.6
マンションストック 2.0
9.5
40.7
12.7
27.4
2.5
31.4
1.5
マンションストック 9.0
マンションストック 7.9
マンション成約物件 5.9
マンションストック 30.9
24.0
27.1
33.3
14.6
5階建
6~7階建
16.5
25.2
8~10階建
10.0
20.3
22.2
21.4
9.3
24.7
19.5
39.5
7.1
12.3
23.8
20.4
36.7
9.8
22.7
22.1
14.4
17.1
21.6
14.0
19.5
23.9
27.8
26.0
18.3
15.4
マンション成約物件 5.2 6.3
4階建以下
31.1
23.7
19.6
15.3
10.0
19.9
18.5
8.9
12.8
12.1
34.4
42.8
17.7
16.3
8.3
19.1
39.7
16.0
18.8
10.0
マンション成約物件 22.3
12.1
5.1
34.0
21.0
11.5
8.2
2.3
6.1
16.8
35.0
マンション成約物件 4.3 12.0
マンション成約物件 3.3
26.6
マンションストック 3.3 3.7 6.2
マンションストック 22.6
14.1
マンションストック 5.1 9.4
マンションストック 11.3
38.6
マンション成約物件 4.5 10.8
マンション成約物件 1.2
22.6
31.6
13.2
7.2
マンション成約物件 3.1
100%
29.6
41.0
14.5
80%
32.1
13.0
22.0
7.3
60%
10.1
20.2
マンション成約物件 4.0 6.8
マンションストック 40%
23.4
10.0
25.7
8.6
13.5
27.1
11~14階建
15階建以上
*レインズ成約物件は2008年度データ
2010/11 No.39
■14
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
市況トレンド
2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
2010 年 7~9 月期の近畿圏の中古住宅市場は、中古マンション取引が引き続き堅調さを維持。中
古戸建では安価な物件取引が拡大した。景気の先行き不透明感が再び増す一方、売り出し価格の
調整が続く中古物件の値頃感は強く、市場がこの先急速に腰折れることは考えにくい。
1.中古マンション市場の動き
●10 年 7~9 月期の中古マンション成約件数は 3,094 件で、前年比 4.3%増と 6 期連続の増加。新規
登録件数は 0.6%減とほぼ横ばいに(図表1)。成約件数はほとんどのエリアで増加した。
●成約価格は 1,662 万円でプラス 0.7%と 3 期続けて緩やかに上昇し、下げ止まりの傾向が続く。新
規登録価格はマイナス 2.4%と売り出し価格の調整圧力が強まった。
2.中古戸建住宅市場の動き
●成約件数は 2,209 件で前年比プラス 7.5%と増加に転じた。新規登録件数もマイナスが続くが、減
少率は 1.5%まで縮小している(図表2)。
●成約価格は 1,912 万円でマイナス 3.1%と再び下落に転じ、
低価格帯を中心とする取引が拡大した。
新規登録価格は引き続き軟調で、価格の安価な物件取引が増加するエリアが目立つ。
3.近畿圏市場の方向
●10 年 7~9 月期は中古マンションが 3 期連続で増勢局面を維持し、新築マンションも増勢局面に
一層近づいた。戸建は中古・新築とも価格が下落する中で取引がやや回復した。
4.関連不動産市場の動き
●近畿圏全体の賃料単価は 7 期連続で下落し、京阪神の賃料単価も前年同期比でいずれもマイナス
と、賃貸市場に弱含み傾向に変化はない。
●10 年 7~9 月期の新築マンション戸数は前年比 51.2%の大幅増で、9 月の契約率は 7 割弱と比較
的好調。発売価格は前年比マイナスに抑えられており、販売回復の動きが本格化してきた。
図表1 中古マンションの成約・新規登録件数
(件)
4,000
図表2 中古戸建住宅の成約・新規登録件数
(%)
25
成 約
20
3,094 15
10
3,500
3,000
4.3
(件)
2,750
0
-5
1,500
1,500
-10
1,000
14,000
25
20
10,636 15
10
5
0
-0.6 -5
-10
-15
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
'08/ 10-12 '09/
7-9
1-3
4-6
件数
7-9 10-12 '10/
1-3
4-6
前年同期比
7-9
年/月
0
2,000
2,000
(%)
10
5
2,250
1,750
新規登録
7.5
2,500
5
2,500
成 約
2,209
-5
-10
1,250
-15
新規登録
16,000
10
14,000
-1.5
12,000
5
0
-5
10,000
12,016 -10
8,000
-15
-20
6,000
-25
'08/ 10-12 '09/
7-9
1-3
4-6
件数
7-9 10-12 '10/
1-3
4-6
7-9
年/月
前年同期比
2010/11 No.39
■1
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
1.中古マンション市場の動き
2010 年 7~9 月期の成約件数は、
3,094 件で前年同期比プラス 4.3%
堅調さ続く一方で
と 6 四半期連続の増加となった。7~9 月期の件数としては過去最高
売り出し価格の調整も
の水準であり、堅調な中古マンション市況は維持されたが増加傾向は
やや鈍化している。
一方、新規登録件数は 10,636 件で 0.6%減と 6 四半期続いてマイ
ナスとなったが、減少には歯止めがかかっており 08 年以降続く 1 万
件超のボリュームを確保している(P1・図表1)。成約件数に対す
る新規登録件数の水準は 4~6 月期の 3.0 倍から 3.4 倍に拡大したが、
取引量の減少で 4 倍を超えた 08 年後半~09 年 1~3 月期を除くと、
過去 10 年間の中では平均的な水準に収まっている。売り物件の確保
が困難な状況は一時に比べ緩和されたとみられるが、本格的な増加に
は至っておらず市場での物件供給の足踏みが懸念される。
平均成約価格は 10 年に入ってから緩やかなプラス基調にあり、7
~9 月期も 1,662 万円で前年比 0.7%の上昇となった。ただ、前期比
ベースでは過去半年間で徐々に下落しつつあり、新規登録価格も 7~
9 月期は 1,801 万円で 2.4%マイナスとなるなど、売り出し価格の調
整圧力が強まっている可能性がある(図表3)。
図表3 中古マンションの成約・新規登録価格
(万円)
1,900
図表4 中古マンション件数の府県地域別増減率
(%)
4
成 約
1,800
2
0.7
1,700
0
1,600
1,662 -2
1,500
-4
(%) -20
-10
0
10
大阪市
20
30
40
50
5.0
大阪府他
2010年
7-9月期の
前年同期比
2.9
神戸市
-1.6
兵庫県他
3.2
3.7
京都市
京都府他
16.5
滋賀県
1,400
-6
新規登録
2,000
1,900
1,801
1,800
和歌山県
2
近畿圏
-2
1,600
-2.4 -4
1,500
-6
10-12 '09/
1-3
4-6
価格
7-9
10-12
'10/
1-3
前年同期比
4-6
-13.6
29.2
55.3
4.2
0
1,700
'08/
7-9
奈良県
4
7-9
年/月
図表5 中古マンション価格の府県地域別変動率
(%) -10
-5
0
5
10
15
20
25
大阪市
-3.7
大阪府他
神戸市
兵庫県他
2010年
7-9月期の
前年同期比
0.4
1.4
2.3
京都市
7.6
京都府他
22.4
滋賀県
奈良県
和歌山県
近畿圏
-8.1
1.5
2.0
0.7
2010/11 No.39
■2
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
ほとんどのエリアで
取引増続く
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
7~9 月期の成約件数の動きをエリア別にみると、神戸市や滋賀県
を除くエリアで前年比増となり、09 年後半以降、近畿圏のほとんど
のエリアで増加が続いている。ただ、5%以上の伸びを示すエリアは
4~6 月期の 6 地域から 4 地域に減っており、増加の勢いがやや鈍っ
てきた(図表4)。近畿圏全体に占めるエリア別の取引シェアは、大
阪府他(26.1%)及び兵庫県他(18.9%)がやや拡大し、大阪市も
20.2%と 20%台を維持している。
成約価格も大阪市や滋賀県を除くエリアで前年比プラスとなり、4
~6 月期と比べて下げ止まりの傾向が広がっており、堅調さが維持さ
れている(図表5)。件数に価格を乗じた取扱高をみると、前年比で
拡大したのは 9 エリア中 7 エリアであった。近畿圏全体の伸びは 4.9%
増で、これを上回るのは兵庫県他、京都市、京都府他、奈良県、和歌
山県だが、7~9 月期の取扱高としてはいずれも過去最高水準に達し
ている。大阪市の成約価格は 4 期連続で下落しているが、成約件数の
増加が目立ち、取扱高はプラスで推移。低価格帯の物件に需要がシフ
トするなか、取引量で売上げを確保する動きが続いている。
2.中古戸建住宅市場の動き
取引増加するも
低価格帯にシフト
中古戸建住宅の 10 年 7~9 月期の成約件数は 2,209 件で前年比
7.5%増と、4~6 月期から再び増加に転じた。7~9 月期としては過去
最高の水準となり、中古マンションとともに比較的堅調な状況を維持
している。新規登録件数も前年比 1.5%減とマイナス幅が縮小してお
り、売り物件の減少に歯止めがかかりつつある(P1・図表2)。
一方、成約価格は 1,912 万円で前年比マイナス 3.1%となり、7~9
月期の取引の増加は低価格帯の物件が中心だったことがわかる(図表
6)。この点は中古マンション市場と異なり、取引の拡大は価格の低
下を伴ったものであり、中古戸建に対する相対的な需要の弱さを示し
ている。新規登録価格も 2,372 万円でマイナス 3.4%と、下落率は縮
小しているものの依然として売り出し価格の調整圧力は強い。
取引増・価格下落の
エリア拡大
エリア別にみても 7~9 月期の取引増・価格下落の動きは多くの地
域でみられる。前年比で成約件数が増加したのは大阪市、大阪府他、
神戸市のほか滋賀県、奈良県で近畿圏全体の 6 割以上を占め、これら
の地域が取引増加のけん引役となった(図表7)。成約価格は神戸市
と兵庫県他を除きいずれもマイナスで、取引が増えた大阪市や大阪府
他、滋賀県、奈良県はいずれも価格が下落、京都府内は件数・価格と
2010/11 No.39
■3
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表6 中古戸建住宅の成約・新規登録価格
(万円)
2,200
図表7 中古戸建住宅件数の府県地域別増減率
(%)
2
成 約
0
2,100
2,000
1,900
-3.1 -4
兵庫県他
-8
1,700
-10
0
新規登録
2,600
-3.4 -2
2,500
-4
2,400
2,372 -6
2,300
-8
2,200
-10
'08/ 10-12 '09/
7-9
1-3
4-6
7-9
価格
10-12 '10/
1-3
4-6
7-9
年/月
前年同期比
0
5
大阪市
神戸市
1,800
-5
10
15
20
京都市
京都府他
25
30
5.4
大阪府他
-2
1,912 -6
2,700
(%) -10
17.6
12.2
-4.0
-1.4
-2.1
27.1
滋賀県
奈良県
和歌山県
7.0
2010年
7-9月期の
前年同期比
-4.6
近畿圏
7.5
図表8 中古戸建住宅価格の府県地域別変動率
(%) -20
-15
-10
大阪市
-5
0
5
-4.4
大阪府他
-1.7
神戸市
4.4
兵庫県他
京都市
6.9
-14.3
京都府他
-4.6
滋賀県
奈良県
和歌山県
近畿圏
10
-8.0
-12.8
-5.1
-3.1
2010年
7-9月期の
前年同期比
もマイナスとなった。大阪府内や神戸市など主要なエリアで取引量が
拡大し、売り物件の供給減少は収まる兆候がみられるが、成約価格を
みると依然として中古戸建市場の軟調さが目立つ(図表8)。
3.近畿圏市場の方向
中古マンション市場は
増勢局面を維持
成約件数と成約価格の前年同期比の変動率から市況の方向性を捉
えると、中古マンション市場の 10 年 7~9 月期は 1~3 月期以来 3 期
連続で件数・価格ともプラスの増勢局面を維持し、市場の堅調さが改
めてわかる。新築マンション市場も 10 年 7~9 月期は発売戸数が大
幅増となり、価格も横ばいの水準に一層近づいた(図表9)。
中古戸建件数は増加に転じたが、低価格帯への需要シフトで価格が
弱含み、中古マンションのような増勢局面には至らず、価格下落が続
く中での取引回復といえる。一方、新築戸建は件数が増加に転じたも
のの、価格は 8 期続けてマイナスとなり、販売価格の上昇が伴わない
市況に変化はない。
内閣府が 10 年 10 月に発表した 8 月の景気動向指数をみると、5
月から低下し始めた先行指数が 7~8 月も低迷し、踊り場を迎えつつ
2010/11 No.39
■4
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表9 近畿圏の四半期別成約件数・価格変動率(前年同期比)
価格 %
[マンション]
'08年7-9月
価格 %
10
[戸建住宅]
10
8
8
6
6
4
4
'10年7-9月
'08年7-9月
'10年7-9月
2
2
'08年7-9月
0
0
-2
-2
'08年7-9月
-4
-4
-6
-6
'10年7-9月
件数 51.2%
価格 -1.1%
-8
-8
中古戸建住宅
-10
中古マンション
-12
新築マンション
-14
'10年7-9月
-10
新築戸建住宅
-12
新築戸建:
レインズ会員による成約報告物件
-14
-16
-16
-35 -30 -25
-20 -15
-10
-5
0
5
10
15
-35
20
-30
-25
-20
-15 -10 -5
件数 %
件数 %
0
5
10
15
20
ある(図表 10)。過去の傾向からみて先行指数の動きは半年程度遅れ
て遅行指数に波及する可能性があるため、11 年明け以降は完全失業
率や家計消費支出などで構成される遅行指数が低水準のまま下振れ
ることも考えられる。9 月の日銀短観でも円高や政策効果の一巡など
により、関西経済を牽引するような輸出関連の大企業製造業も業績の
先行き懸念が指摘されており、景気の不透明感が再び増してきた。
ただ、今後の不動産に対する消費者の購入マインドは依然として高
く(図表 11)
、所得の伸び悩みやデフレ基調が続く現状では値頃感を
備えた中古物件に対するニーズは根強いとみられる。新規登録価格の
下落が示すように中古価格の調整圧力はなお強く、こうした動きが続
く限り中古市場が大きく腰折れることは考えにくい。
図表 10 景気動向指数
(指数)
110
図表 11 不動産購買態度指数(近畿)
↑良い
先行指数
一致指数
遅行指数
(2005年=100)
105
※今後1年間、不動産が買い時かどうかを
聞いたもの。「買い時」「買い時でない」
双 方 が 均 衡 す る 点 が 100
130
125
103.3
120
115
100
99.5
95
110
105
100
95
90
90
85
87.4
85
80
80
75
70
75
65
60
70
'08 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12'09 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 '10 2 3 4 5 6 7 8
/1
/1
/1
資料:「景気動向指数 2010年10月」内閣府
年/月
↓悪い '06/4 6 8 10 12 '07/4 6 8 10 12 '08/4 6 8 10 12 '09/4 6 8 10 12 '10/4 6 8
2
2
2
2
2
年/月
資料:(社)日本リサーチ総合研究所
*先行指数:新規求人数、新設住宅着工床面積、東証株価指数など 12指標に基づく合成指標
*一致指数:鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、商業販売額など 11指標に基づく合成指標
*遅行指数:家計消費支出、法人税収入、完全失業率など 6指標に基づく合成指標
2010/11 No.39
■5
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
4.関連不動産市場の動き
賃料マンション市場
賃貸市場について近畿圏の四半期別の動きを見ると、賃貸マンショ
ンの成約賃料㎡単価は 10 年 7~9 月期も下落が続き、京阪神の各都
軟調さに変化なし
市でも前年同期比でいずれもマイナスとなった。近畿圏全体の平均㎡
単価は 1,775 円で前年比マイナス 1.2%となったほか、大阪市は 1.986
円で同 1.8%、神戸市が 1,846 円で同 2.4%、京都市は 1,924 円で同
1.9%となった。近畿圏全体の賃料単価は 7 期連続で下落し、軟調な
賃貸市場に変化はみられない(図表 12)
。
近畿圏の 7~9 月期の新築マンション発売戸数は 5,703 戸で、大き
新築マンションの
く落込んだ前年同期の反動もあり 51.2%の大幅な増加率を示した。
発売戸数大幅増
特に、今年の 5 月以降は毎月 20~60%もの 2 ケタ増が続き、戸数自
体は一昨年同期の水準を超え、08 年以降調整が続いてきた発売戸数
は以前の状態に戻りつつある。9 月の契約率は 69.2%と好不調の目安
となる 7 割をやや下回ったが、春先以降の契約率は軒並み 7 割を超え
販売は好調さを取り戻している(図表 13)。
即日完売物件も、大阪市内をはじめ西宮市や宇治市、奈良市などに
図表 12 京阪神の賃貸マンション成約単価
(円/㎡)
2,100
2,050
2,000
1,950
1,900
1,850
1,800
1,750
1,700
1,650
1,600
図表 13 新築マンションの販売状況
(%)
80
75
70
65
60
55
近畿圏
京都市
大阪市
神戸市
'07/ 10- '08/ 4-6 7-9 10- '09/ 4-6 7-9 10- '10/ 4-6 7-9
年/月 7-9 12 1-3
12 1-3
12 1-3
■四半期別の前年同期比(%)
近畿圏
京都市
-3.8
6.6
'07年7-9月
10-12
9.1
3.4
'08年1-3月
2.5
0.7
4-6
1.3
0.1
3.6
6.2
7-9
0.0
3.8
10-12
-1.5
'09年1-3月
1.0
-1.7
-4.0
4-6
-3.3
-3.3
7-9
-2.3
-4.4
10-12
'10年1-3月
-0.8
0.6
4-6
-3.1
-0.6
-1.2
-1.9
7-9
大阪市
10.1
12.2
3.7
2.3
3.0
-0.3
-3.1
-1.1
-3.2
-2.9
-0.3
-4.3
-1.8
神戸市
3.2
5.9
-0.0
0.8
3.4
-0.7
0.4
-2.3
-2.1
-3.7
-4.1
-2.2
-2.4
(件)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
(万円)
3,750
契約率 (各年3・6・9・12月時点)
69.2
51.2 (%)
発売戸数
5,703
価格
販売価格
前年度比
3,497
3,500
(%)
10
5
0
3,250
-1.1 -5
3,000
-10
2,750
-15
2,500
'08/ 10-12 '09/
7-9
1-3
資料:㈱不動産経済研究所
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-20
4-6
7-9
10-12 '10/
1-3
4-6
2010/11 No.39
7-9
年/月
■6
市況トレンド/2010 年 7~9 月期の近畿圏市場
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
広がり、7~9 月期の発売戸数に占める割合は 12.3%に。9 月末の在
庫戸数は 3,893 戸と前年比で 1,200 戸以上減少した。発売価格は引き
続き前年比マイナスに抑えられており、民間住宅ローンやフラット
35 の大幅な金利優遇や住宅ローン減税、住宅ローン資金贈与非課税
枠の拡大のほか住宅エコポイントの後押しなどもあり、低価格帯だけ
でなく中高価格帯の取得環境が整ってきた影響が現れている。利便性
や設備面に対するニーズはますます厳しくなっているが、新築マンシ
ョン販売の回復の動きは本格化してきた。
京阪神ビジネス地区の 10 年 9 月のオフィス空室率は、大阪・梅田
大阪市内のオフィス
地区で 11.12%と 6 月と同等の高い水準で推移した。淀屋橋・本町も
空室率横ばいに
11.26%で、神戸市は 14.06%、京都市は 12.09%と神戸市や京都市で
上昇が続いている。大阪市内では経費節減などによる借り換え移転の
動きが増え、新築や値頃感のある好条件の既存ビルなどを中心に入居
が進み、空室率の上昇に歯止めがかった。ただ、満室や高稼働のビル
は少なく、厳しいテナントの誘致競争は続いている。9 月の坪当たり
募集賃料は梅田が 15,226 円、淀屋橋・本町は 11,883 円、神戸市は
11,557 円、京都市は 12,183 円と、依然として下落傾向に歯止めがか
かっていない(図表 14)。
図表 14 オフィス空室率と募集賃料
大阪・梅田
大阪・淀屋橋本町
(%)
14.0
神戸市
京都市
空室率
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
'04
年/月
'05
'06 '07
'08
/3
6
9
12
'09
/3
大阪・梅田
大阪・淀屋橋本町
(円/坪)
16000
15500
15000
14500
14000
13500
13000
12500
12000
11500
11000
6
9
12
'10
/3
6
9
神戸市
京都市
募集賃料
'04 '05 '06 '07 '08
/3
※'04~'07年は各年12月の数字
6
9
12
'09
/3
6
9
12
'10
/3
6
9
資料:三鬼商事㈱
2010/11 No.39
■7
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
地域不動産事情
京都府・滋賀県
今回は京都府と滋賀県の不動産流通市場を取り上げる。京都府内を中心に中古マンション取引
は比較的堅調だが、中古戸建は全般に価格の弱含みが続き、取引量も一進一退の状況にある。取
引の拡大エリアでは築浅物件とともに、より安価な経年物件も支持を集めている。
1.取引物件の動向
●直近 1 年(2009 年 10 月~10 年 9 月)の中古マンション成約件数の増加率上位 10 都市中、京都
市 6 区と京都府他が 7 都市を占め、中古戸建では滋賀県と京都府他で 6 都市を占めた(図表1)。
●4 エリア別にみると、京都市 6 区や京都府他では 1 年以上にわたり成約件数が増加。京都府他は
成約価格の上昇もみられ、同エリアは堅調に推移。中古戸建は全般に弱含みで、各エリアとも前
年同期比で増加・減少を繰り返すまだら模様の展開が続く。
●取扱高でも京都市 6 区や京都府他は成約件数の伸びが大きく寄与し、09 年 10~12 月期から 4 期
連続で市場が拡大。一方、中古戸建は成約価格の下落が影響し、回復の力強さに欠ける。
●中古マンションの沿線駅別上位 10 駅は、滋賀県内の主力エリアの一部で低調だったが、京都市都
心各駅で取引の拡大が目立った。中古戸建では上位 7 位までは前年と変化はなかった。
2.地域別の市場動向
●京都市南区・伏見区・山科区ではマンションストックの築年構成は分散するが、直近では 2000 年
以降の築浅物件のシェアが拡大している。
●大津市・草津市・栗東市の持家ストックの築年構成は比較的新しく、中古戸建の取引物件も 90 年
代以降が過半数に達する。2000 年代は 2,100~2,500 万円台で 90 年代と大差なく、多少狭くても
設備条件の良い値頃感のある物件に人気がある。
図表1 都市別の成約件数増加率TOP10(2009 年 10 月~2010 年 9 月)
■中古マンション
順
位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
地域
京都市6区
京都市6区
京都府他
京都市6区
滋賀県
滋賀県
京都府他
京都市中心5区
京都市6区
京都府他
市区町村
東山区
山科区
木津川市
南区
彦根市
栗東市
向日市
中京区
伏見区
宇治市
成約件数
(件)
33
106
30
102
19
27
20
186
202
93
件数前年比 成約価格
(%)
(万円)
135.7
73.8
50.0
45.7
18.8
17.4
11.1
9.4
7.4
6.9
2,677
1,265
1,326
1,142
1,054
1,763
1,799
2,751
1,408
1,342
価格前年比
㎡単価
㎡単価
(%)
(万円/㎡) 前年比(%)
28.6
20.4
2.0
-4.2
5.0
-4.3
-0.8
15.7
-4.6
2.0
34.8
18.3
16.6
18.3
15.0
22.5
24.6
41.7
20.5
19.4
8.1
11.3
-0.5
-5.6
-2.1
-4.3
-6.4
7.8
-4.4
4.3
専有面積
(㎡)
70.5
66.3
80.3
62.7
69.0
77.9
72.3
63.6
67.5
68.8
専有面積
前年比(%)
1万世帯
当たり
成約件数
築後年数
(年)
26.6
6.7
2.7
5.4
7.3
0.0
3.3
8.8
0.8
-1.8
18.1
21.1
14.4
24.8
14.5
9.5
17.2
14.7
18.5
15.7
16.0
17.9
12.4
22.4
4.3
11.9
9.2
34.1
16.4
12.6
■中古戸建住宅
順
位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
地域
京都市中心5区
滋賀県
京都府他
滋賀県
京都府他
滋賀県
京都市6区
京都府他
京都市6区
京都市中心5区
市区町村
北区
甲賀市
八幡市
栗東市
精華町
草津市
右京区
宇治市
東山区
中京区
成約件数
(件)
115
26
55
32
32
65
103
201
19
38
件数前年比 成約価格
(%)
(万円)
40.2
36.8
34.1
33.3
33.3
32.7
19.8
18.2
11.8
5.6
2,862
1,305
1,817
1,925
2,479
2,040
1,940
1,853
2,122
2,004
価格前年比 土地面積
(%)
(㎡)
9.5
-5.0
-9.6
-8.3
-3.4
3.5
-6.0
-7.6
-19.3
-34.6
112.3
267.1
146.5
168.8
184.0
160.9
91.2
120.3
129.5
55.8
土地面積
前年比(%)
14.0
20.7
8.5
3.2
-8.4
-2.7
9.5
-1.4
43.5
-31.9
建物面積
(㎡)
102.8
125.1
106.4
105.9
112.5
108.9
83.5
96.4
85.0
71.1
建物面積
前年比(%)
1万世帯
当たり
成約件数
築後年数
(年)
6.1
-3.9
4.8
-3.1
-9.2
1.9
1.1
-2.5
-3.5
-27.6
22.3
18.7
21.7
19.1
17.9
18.8
23.3
23.9
41.0
23.8
20.4
8.2
19.1
14.1
25.6
11.5
11.4
27.3
9.2
7.0
注)年間成約件数10件以上の都市を対象
2010/11 No.39
■1
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
1.取引物件の動向
ここでは京都府と滋賀県の不動産流通市場の特性を考慮し、京都市
京都市内の中古マンシ
内中心 5 区とその他の 6 区、京都府下、滋賀県の 4 エリアに分けて
ョン取引活発に
その特徴を捉える。
2009 年 10 月~10 年 9 月の直近 1 年間で、成約件数の前年比の増
加率上位 10 都市をみると、中古マンションでは京都市東山区が最も
高く、次いで山科区、木津川市、南区、彦根市の順となった。今回は
京都市 6 区エリアが 4 区と最も多く、京都府他も 3 市がランクイン
した。前年(2008 年 10 月~09 年 9 月)は、京都府他が 6 市を占め
たが、今回は中京区も含め京都市内の中古マンション取引の伸びが目
立った。これらの各区は、従来から取引水準(世帯あたり成約件数)
が高いが、直近 1 年では東山区や山科区、中京区では成約㎡単価も上
昇するなど中古マンション取引が活発であった。取引物件の専有面積
も宇治市を除く 9 都市で拡大もしくは横ばいとなり、多少高額でも住
戸規模にゆとりのある物件を求める動きが広がった(P1・図表1)
。
中古戸建市場では、京都市北区、甲賀市、八幡市、栗東市、精華町
の順で取引の増加がみられ、上位 10 都市のうち滋賀県や京都府他の
6 都市が占めた。前年同様に郊外エリアが中心となったが、前回と同
じ都市は京都市北区だけで、取引が伸びたエリアは変化した。ただ、
図表2 中古マンションのエリア別成約件数・成約価格
(万円)
■四半期別の前年同期比(%)
成約価格
2,500
年/月
2,000
1,000
京都市中心5区
京都府他
成
約
価
格
京都市6区
滋賀県
500
200
成約件数
150
100
成
約
件
数
50
0
(件)
'08/
7-9
10-12
'09/
1-3
4-6
7-9
10-12 '10/13
4-6
7-9
年/月
京都市
6区
-4.9
2.4
-10.9
5.4
-0.1
7-9
10-12
3.3
-5.0
1.4
'10/1-3
9.9
4-6
7-9
'08/7-9
10-12
'09/1-3
3.7
6.7
33.3
-5.1
-11.1
4-6
7-9
10-12
'10/1-3
'08/7-9
10-12
1,500
京都市
中心5区
京都府他
滋賀県
10.6
-4.5
2.5
4.6
-1.5
-1.6
4.3
-5.1
2.7
-0.6
-10.6
0.2
-3.2
-23.1
-0.4
-4.3
-3.7
2.7
-10.8
5.4
22.4
-33.3
-16.4
-19.2
4.7
-9.0
52.9
-25.0
-1.8
-1.9
-5.5
14.2
15.8
-32.4
0.7
-0.7
9.9
-15.8
0.0
36.6
-8.3
47.0
18.8
8.2
-12.0
20.4
4.2
-9.9
15.0
9.5
6.3
4-6
15.9
2.6
7-9
-9.7
18.2
1.8
8.5
-11.1
'09/1-3
4-6
2010/11 No.39
■2
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
成約価格は上位 10 都市中 8 都市で下落し、取引が伸びた都市でも価
格の弱含み傾向は目立っている。
中古マンションのエリア別成約状況をみると、京都市 6 区や京都府
京都市 6 区・京都府他で
他での取引量の回復が認められる(図表2)。
中古マンション取引増
京都市 6 区では 09 年 10~12 月期以降、京都府他では 09 年 4~6
月期から 1 年以上にわたり成約件数の前年比増が続いた。京都市中心
5 区や滋賀県は 09 年から 10 年にかけて一時増加したが、直近では減
少に転じている。京都市中心 5 区の成約価格は 4 期連続で上昇し、取
引が伸び悩むなかで高価格帯に需要がシフトした様子がうかがえる。
一方、京都府他では 3 期連続で成約価格が上昇し、京都市 6 区も 10
年 7~9 月期に上昇に転じるなど、比較的堅調な動きを示している。
10 年 7~9 月期の京都市中心 5 区の平均成約価格は 2,145 万円で 2
千万円台を維持し、京都市 6 区は 1,602 万円、京都府他は 1,402 万円
と前年同期比で 200~300 万円程度、取引価格が上昇したが、滋賀県
は 1,327 万円と 100 万円以上下落した。
下落が目立つ
上位 10 都市でもみたように、中古戸建市場は全般に弱含みの傾向
中古戸建価格
がみられる(図表3)。成約件数は各エリアとも前年同期比で増加・
減少を繰り返すまだら模様の展開が続いているが、成約価格は京都市
中心 5 区で 3 期連続、京都市 6 区で 4 期、滋賀県では 5 期続けて
図表3 中古戸建住宅のエリア別成約件数・成約価格
(万円)
■四半期別の前年同期比(%)
成約価格
3,500
年/月
3,000
2,500
2,000
成
約
価
格
1,500
京都市中心5区
京都府他
1,000
京都市6区
滋賀県
500
250
成約件数
200
150
100
成
約
件
数
50
0
(件)
'08/
7-9
10-12 '09/13
4-6
7-9
10-12 '10/13
4-6
7-9
年/月
京都市
中心5区
'08/7-9
10-12
-3.4
4.6
'09/1-3
4-6
7-9
10-12
京都市
6区
京都府他
滋賀県
-0.9
-7.9
4.1
-4.3
-0.8
-9.1
-5.4
0.6
-3.7
-7.4
-7.5
-13.5
-6.6
5.1
2.6
7.7
3.9
-3.0
-12.7
-1.8
-0.8
-1.4
'10/1-3
-15.9
-2.1
5.1
-0.1
4-6
7-9
'08/7-9
-2.9
-23.3
8.1
-1.5
-11.4
30.0
-14.0
-4.6
8.8
-7.7
-8.0
44.4
10-12
'09/1-3
-1.4
-25.0
-11.7
-14.4
-5.2
16.7
-2.5
-26.8
4-6
4.1
5.1
-16.1
2.4
7-9
10-12
-4.5
1.4
2.8
-2.5
-16.8
10.4
-23.7
1.9
'10/1-3
1.7
8.4
-14.3
10.7
4-6
-2.6
3.5
10.3
-16.7
7-9
28.1
-14.3
-2.1
27.1
2010/11 No.39
■3
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
下落基調にあり、より安価な物件を求める動きが顕著となっている。
10 年 7~9 月期の京都市中心 5 区の平均成約価格は 2,307 万円で、
前年比で 700 万円程度下落したほか、京都市 6 区は 1,890 万円、京
都府他は 1,874 万円、滋賀県は 1,546 万円で、それぞれ 100~200 万
円程度下落し、直近 1 年間の中古戸建市場は軟調に推移した。
成約件数に価格を乗じた取扱高をみると、09 年度は京都市内の中
京都市 6 区・京都府他で
古マンション市場で拡大したが、直近 1 年間では京都市 6 区ならびに
マンション取扱高拡大
京都府他の伸びが大きい。双方とも成約件数の伸びが大きく寄与し、
09 年 10~12 月期から 4 期連続で市場は拡大基調にある。一方、京都
市中心 5 区は 10 年 4~6 月期から、滋賀県も 10 年 7~9 月期は縮小
を示し、市況の回復には地域差がみられる(図表4)
。
一方、中古戸建市場の取扱高は京都市中心 5 区と京都府他で 3 期連
続の縮小となったほか、京都市 6 区でも 10 年 7~9 月期に、滋賀県
も 10 年 4~6 月期は前年比減となった。成約価格の下落も続いてお
り、中古マンションより市場の力強さに欠ける。
図表4 エリア別の取扱高
京都市
中心5区
(億円) 0
50
07年度
109
08年度
114
09年度
京都府
他
77
75
77
112
08年度
75
110
10年4-9月
47
07年度
41
08年度
34
09年度
35
53
135
148
56
107
64
08年度
74
09年度
69
34
106
103
48
中古マンション
京都市内の各駅
取引量の順位上昇
'08/7-9
10-12
中
古 '09/1-3
4-6
マ
ン
7-9
シ 10-12
ョ
'10/1-3
ン
4-6
7-9
'08/7-9
128
19
07年度
10年4-9月
110
83
■四半期別の前年同期比(%)
年/月
40
55
09年度
200
73
07年度
10年4-9月
滋賀県
150
128
10年4-9月
京都市
6区
100
中古戸建住宅
10-12
中 '09/1-3
古
4-6
戸
7-9
建
10-12
住
宅 '10/1-3
京都市
中心5区
京都市
6区
京都府他
滋賀県
26.8
-2.8
22.0
-32.5
-26.3
-20.2
56.8
-21.5
-20.8
1.3
-0.8
3.5
-20.5
-1.8
-1.6
-18.5
-5.0
-13.0
-8.7
-15.8
38.5
14.4
51.0
14.3
7.8
12.4
15.9
-5.2
-6.6
9.5
8.1
13.7
-3.6
4.4
34.9
28.9
24.5
13.2
-19.1
43.2
3.1
-18.7
-9.3
-11.4
-29.0
-3.7
-13.9
-9.1
12.3
-21.7
-32.2
7.7
-2.0
6.8
-27.4
-24.3
9.3
-14.5
-5.4
6.1
8.4
-9.9
0.5
10.5
4-6
-5.5
1.9
-5.2
-23.1
7-9
-1.7
-24.1
-6.6
17.0
中古住宅市場の動きを、直近 1 年間の鉄道沿線・最寄駅別の成約件
数の上位 10 駅からより詳しくみると、中古マンションでは JR 東海
道本線の草津駅周辺が前年(2008 年 10 月~2009 年 9 月)同様 1 位
を維持したがその成約件数は減少し、同じ沿線の守山駅も前年の 4
2010/11 No.39
■4
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
地域不動産事情/京都府・滋賀県
図表5 沿線駅別の成約件数TOP10(2009 年 10 月~10 年 9 月)
■中古マンション
順
位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
沿線
JR東海道本線
JR東海道本線
京都市営烏丸線
京都市営烏丸線
京都市営烏丸線
JR湖西線
京都市営東西線
JR東海道本線
阪急電鉄京都線
京都市営烏丸線
駅
草津
西大路
烏丸御池
今出川
四条
大津京
東野
守山
西院
五条
成約件数 件数前年比 成約価格 価格前年比
㎡単価
単価前年比 専有面積
専有面積
築後年数
(件)
(%)
(万円)
(%)
(万円/㎡)
(%)
(㎡)
前年比(%)
(年)
-6.3
-3.2
-0.9
-2.7
75
1,725
23.0
74.6
12.9
55
52.8
1,354
2.5
20.7
0.5
65.6
7.2
21.5
55
12.2
3,074
12.2
46.2
9.0
65.0
3.8
12.8
-7.4
50
1,998
5.3
32.6
5.5
58.4
0.8
15.5
48
41.2
2,861
24.6
44.7
11.0
63.0
15.3
13.1
-1.4
48
33.3
2,082
7.2
25.5
79.5
7.3
9.3
43
126.3
1,087
34.1
16.3
14.2
64.1
12.2
25.1
-7.1
-14.4
-10.9
-2.8
39
986
14.9
64.4
19.5
38
8.6
1,644
7.2
27.2
0.7
58.0
10.2
17.5
-15.8
-8.5
-10.7
37
15.6
1,791
33.2
51.4
15.2
■中古戸建住宅
順
位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
沿線
阪急電鉄京都線
JR東海道本線
阪急電鉄京都線
JR東海道本線
近鉄京都線
JR東海道本線
JR東海道本線
JR東海道本線
JR湖西線
京都市営烏丸線
駅
桂
石山
長岡天神
南草津
大久保
近江八幡
草津
瀬田
おごと温泉
北大路
成約件数 件数前年比 成約価格 価格前年比 土地面積
土地面積
建物面積
建物面積
築後年数
(件)
(%)
(万円)
(%)
(㎡)
前年比(%)
(㎡)
前年比(%)
(年)
71
2.9
3,004
2.7
140.7
9.4
110.5
4.7
18.5
-1.9
-6.3
-6.0
52
1,423
164.4
2.6
103.3
21.0
-15.6
-11.2
-1.7
38
2,569
117.8
95.6
1.0
23.9
-5.5
-20.7
-2.1
37
8.8
2,388
167.9
113.4
17.1
-11.1
-8.1
-5.7
37
12.1
2,146
143.8
111.7
23.4
-20.5
-5.8
-1.7
35
1,451
7.1
187.5
107.0
20.1
35
12.9
1,884
7.9
155.6
23.0
104.2
1.8
20.1
-1.4
-3.0
34
30.8
2,017
141.4
7.2
104.7
15.8
-13.7
-19.7
-8.8
34
126.7
1,898
187.6
119.9
15.7
33
43.5
3,165
8.9
119.2
35.5
106.8
20.8
20.5
位から 8 位に順位を下げた。JR 湖西線の大津京駅周辺は増加したも
のの、滋賀県内の主力エリアの一部では低調な動きがみられた。一方、
順位を上げたのが JR 東海道本線の西大路で前年の 8 位から 2 位とな
ったほか、京都市営烏丸線の四条、五条、京都市営東西線の東野駅、
阪急京都線西院駅周辺はランク外から上位 10 位入りし、京都市内で
の中古マンション取引の拡大が目立った。
一方、中古戸建では阪急京都線の桂、JR 東海道本線石山、阪急京
都線長岡天神の各駅周辺は前年と同じ上位 3 位を占め、JR 東海道本
線草津駅の 7 位までは前年と変わらず上位駅商圏に入っている。中古
戸建では滋賀県内の各駅が目立ち、JR 東海道本線南草津、近江八幡、
草津、瀬田、JR 湖西線のおごと温泉など 6 駅がランクインした。
中古戸建の上位 10 駅のうち 6 駅は成約価格が下落し、上位駅商圏
でも中古マンション市場に比べて軟調さがみられる。土地・建物面積
とも縮小する駅も多く、住戸規模を犠牲にしてもより安価な物件を求
める傾向が強いことをうかがわせる(図表5)。
新築マンション供給
上位都市も件数ダウン
新築マンション発売戸数の上位都市をみると、09 年は大津市、伏
見区、下京区、守山市、草津市の順となっている。例年通り大津市の
1 位は変わらないが、上位の伏見区や下京区も発売戸数が大きく減少
した。戸数を伸ばしたのは守山市のみで、上位 10 都市の発売戸数は
1,881 戸と 08 年比で 38.2%の大幅減となり、京都府・滋賀県全体で
2010/11 No.39
■5
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表6 新築マンションの発売動向(発売戸数TOP10)
1位
05年
06年
07年
08年
09年
区市名
発売戸数
平均価格
区市名
発売戸数
平均価格
区市名
発売戸数
平均価格
区市名
発売戸数
平均価格
区市名
発売戸数
平均価格
大津市
638 戸
2,884 万円
大津市
1,037 戸
2,925 万円
大津市
664 戸
2,962 万円
大津市
1,026 戸
3,359 万円
大津市
620 戸
3,258 万円
2位
3位
4位
5位
京都市中京区 京都市右京区 京都市伏見区 京都市下京区
541 戸
535 戸
500 戸
362 戸
3,199 万円
2,841 万円
2,843 万円
2,394 万円
京都市右京区 京都市中京区 京都市下京区
草津市
451 戸
353 戸
288 戸
271 戸
3,217 万円
3,721 万円
3,047 万円
2,861 万円
京都市伏見区 京都市中京区
草津市
京都市南区
536 戸
432 戸
404 戸
329 戸
3,357 万円
4,401 万円
3,246 万円
2,874 万円
京都市 下京区
宇治市
京都市 伏見区 京都市 山科区
369 戸
284 戸
253 戸
251 戸
3,309 万円
2,962 万円
3,286 万円
3,093 万円
京都市 伏見区 京都市 下京区
守山市
草津市
212 戸
202 戸
185 戸
145 戸
3,462 万円
3,268 万円
2,834 万円
3,389 万円
6位
7位
8位
9位
10位
草津市
京田辺市
宇治市
京都市左京区 京都市南区
147 戸
140 戸
130 戸
129 戸
119 戸
2,468 万円
3,189 万円
2,715 万円
4,501 万円
1,767 万円
長浜市
城陽市
京都市伏見区
宇治市
京都市左京区
216 戸
191 戸
170 戸
146 戸
131 戸
3,188 万円
2,752 万円
4,182 万円
2,571 万円
2,504 万円
京都市上京区 京都市下京区
京都市山科区 京都市右京区
長岡京市
305 戸
274 戸
246 戸
242 戸
232 戸
2,952 万円
3,336 万円
3,682 万円
2,986 万円
4,452 万円
八幡市
京都市 上京区 京都市 中京区 相楽郡精華町
草津市
189 戸
184 戸
170 戸
168 戸
150 戸
3,148 万円
3,625 万円
5,466 万円
2,896 万円
2,757 万円
宇治市
京都市 右京区
八幡市
京都市 南区 京都市 左京区
129 戸
128 戸
97 戸
86 戸
77 戸
2,736 万円
3,462 万円
2,971 万円
2,636 万円
3,274 万円
資料:㈱不動産経済研究所
も 3,690 戸と前年比マイナス 21.4%の 2 ケタ減であった。例年上位
に入る中京区・上京区も 09 年は 30~40 戸台と低迷し、09 年はラン
ク外となるなど、上位都市でも供給の減少が続いた(図表6)。
2.地域別の市場動向
築浅取引広がる京都市
直近 1 年間の京滋エリアの動きをみると、中古マンションでは京都
南区・伏見区・山科区
市の都心周辺区で、中古戸建では大津市内の各駅や草津市・栗東市の
各地域で堅調な取引がみられた。そこで今回は、中古マンション取引
の増加率上位に位置づけられた京都市南区・伏見区・山科区、及び中
古戸建取引の伸びが大きかった大津市・草津市・栗東市を取り上げ、
双方のエリアにおける物件の売れ筋を探ることにする。
まず、京都市南区・伏見区・山科区の中古マンション販売状況をみ
ると、過去の新築マンションの発売状況からこのエリアのマンション
ストックの築年構成は比較的分散していることがわかる。70 年代か
らマンション供給がみられたことから、同築年帯の中古マンション取
引も 2 割以上を占め、80 年代以前の物件は全体の約半数に達する。
ただ、近年は築浅物件の取引が拡大しており、特に 2000 年以降の物
件は 4 年前の 10.0%から直近 1 年で 19.2%まで増加した(図表7)。
2000 年以降の物件価格は平均 2,100~2,300 万円台、㎡単価は 30
万円前後と、50 万円/㎡前後での供給が多い新築マンションと比べ
て割安感があり需要を集めている。また、3 割以上のシェアを占める
90 年代の物件は 1,100~1,500 万円台と価格水準が低く、足元の景況
感が厳しくなるなか、安価な同築年帯の取引が再び伸びた。価格帯別
の成約シェアをみると、直近 1 年間では 1,500 万円未満の比率が 7
割近くに達しており、主なボリュームゾーンを形成している。
2010/11 No.39
■6
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表7 京都市南区・伏見区・山科区の中古マンション販売状況
(戸)
A.新築マンションの年次別発売戸数
1,600
C.中古マンションの価格帯別成約件数の比率
1,400
[成約年月]
'06年10月~
'07年9月
'07年10月~
'08年9月
'08年10月~
'09年9月
'09年10月~
'10年9月
1,200
1,000
800
600
400
200
0
[成約年月]
'06年10月~
'07年9月
'07年10月~
'08年9月
0%
'08年10月~
'09年9月
'09年10月~
'10年9月
~'79年
'00年~
20%
21.5
40%
(㎡、万円/㎡)
15.1
26.4
14.7
14.2 11.6
24.9
13.2
23.0
14.9
'80年~
'05年~
15.1
60%
80%
100%
16.0
22.8
8.7 1.3
14.2
11.0
11.6 11.4
'85年~
20.8
18.6
19.7
'90年~
9.4
11.7
3.5
5.4
11.4 7.8
'95年~
20%
40%
60%
35.8
80%
31.2
41.4
23.2
42.2
100%
15.6 6.3 4.1 1.9
35.6
36.6
~999万円
2000万円~
'73 '75 '77 '79 '81 '83 '85 '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 '01 '03 '05 '07 '09年
B.中古マンションの築年帯別成約件数の比率
0%
8.8 3.0 1.5
19.7
11.0
4.4
2.5
13.2 11.0
4.9
1.7
17.6
27.1
1000万円~
2500万円~
1500万円~
3000万円~
(万円)
2,500
D.築年帯別中古マンション成約状況
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2,000
1,500
1,000
500
0
~'79年 '80年~ '85年~ '90年~ '95年~ '00年~ '05年~
専有面積
㎡単価
成約価格
※'09年10月~'10年10月の成約物件
90 年代以降半数占める
次に、大津市、草津市、栗東市の状況をみると、同エリアでは継続
大津・草津・栗東エリア
的な人口流入に伴い住宅供給が進んできたことから、持家ストックの
築年構成は比較的新しい。90 年代以降だけで持家全体の約半数を占
めるため、中古戸建の取引物件も 90 年代以降が過半数に達する。こ
こでも 2000 年以降の築浅物件のシェアは拡大傾向にあり、直近 1 年
間では 21.5%と 4 年前の 14.0%から着実に広がっている。
2000 年代の物件の平均価格は 2,100~2,500 万円台で、2,100 万円
前後の 90 年代と大差なく、住戸規模は多少狭くなるものの相対的に
設備条件の良い物件が同程度の価格で購入可能なことから、値頃感が
強く購入者の支持を集めている。ただ、より安価な 80 年代後半の物
件なども一定のシェアを確保しており、価格帯別構成をみると 1,500
万円未満の物件が増加している。京都市南区・伏見区・山科区の中古
マンション市場と同様に、2000 万円台の築浅物件とともにより安い
経年物件に対するニーズも高まっており、景気の先行き不透明感が強
まる現状では、このエリアでも値頃感のある物件を求める傾向は当面
続くと考えられる(図表8)。
2010/11 No.39
■7
地域不動産事情/京都府・滋賀県
(社)近畿圏不動産流通機構 市況レポート
図表8 大津市・草津市・栗東市の中古戸建販売状況
C.中古マンションの価格帯別成約件数の比率
A.持家の建築時期別ストック戸数の比率
0%
20%
40%
28.9
'08年10月
'~80年
60%
21.6
'81年~
'91年~
80%
11.5
17.7
'96年~
100%
13.9 6.5
'01年~
'05年~
[成約年月]
'06年10月~
'07年9月
'07年10月~
'08年9月
'08年10月~
'09年9月
'09年10月~
'10年9月
(㎡)
B.中古戸建住宅の築年帯別成約件数の比率
0%
'06年10月~
'07年9月
20%
18.3
40%
60%
14.7
17.4
17.1
18.3
13.5
20.1
14.8
15.1
'07年10月~
'08年9月
19.5
'08年10月~
'09年9月
18.8
11.4
'09年10月~
'10年9月
18.7
9.6
~'79年
'00年~
'80年~
'05年~
17.5
18.1
20%
11.6
19.1
11.6
18.9
15.5
11.5
18.5
28.4
~999万円
2000万円~
資料:平成20年住宅・土地統計調査
[成約年月]
0%
16.0
14.6
'85年~
80%
16.6
17.5
'90年~
100%
11.9
11.5
2.1
5.5
12.3 7.4
12.5 9.0
'95年~
220
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
40%
60%
32.2
27.0
80%
17.0
10.6 9.4
14.6 10.6
17.4
26.4
25.5
1000万円~
2500万円~
100%
18.5
11.5 9.7
16.6
10.0 8.0
1500万円~
3000万円~
D.築年帯別中古戸建住宅成約状況
(万円)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
~'79年 '80年~'85年~ '90年~ '95年~'00年~ '05年~
土地面積
建物面積
成約価格
※'09年10月~'10年10月の成約物件
2010/11 No.39
■8
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