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TS30 White Paper - Leica Geosystems
Leica TS30 White Paper March 2009 Hans-Martin Zogg, Werner Lienhart, Daniel Nindl Leica Geosystems AG Heerbrugg, Switzerland 2 最高精度と性能を実現する技術 要約 この白書は、世界で最も進化したトータルステー ション-Leica TS30を解説します。TS30は優れ ライカジオシステムズの最高精度トータルステー ションの最新機種が、測量機としての一つの頂点を 極めた-TS30です。精度、性能、System1200と の完全な互換性による柔軟性と拡張性がこの新し いトータルステーションTS30の主要なアドバンテ ージです。 た精度と品質を兼ね備えています。最高の精度、 品質、および性能を実現するには最新の技術が必 要とされ、広範囲な開発がライカジオシステムズ 社によって行われました。高速角度測定システム、 ピエゾ技術に基づくダイレクト・ドライブ、およ び電子工学距離測定器を組み合わせたTS30のメ カニズムは、最新のトータルステーションである という極めて印象的な精度と性能を実現していま す。 はじめに 非常に正確かつ精密な測量は、いつも世界中の困 難な土木プロジェクトにおける重要な一面です。 全ての困難なプロジェクトの成功のためには、最 適化された観測網の設定と測量士による測量機の 適切な操作とともに、測量機器自体が非常に重要 なファクターとなります。19世紀初頭より、ライ カジオシステムズは常に最新かつ革新的な、そし て最も正確な技術と解決策を技術者へ提供し続け ています。 図1- ライカジオシステムズの 0.5″トータルステーション より正確で、より精密で、より信頼性が高く、そし てより効率的な測量機の需要に終わりはありませ ん。測量土木プロジェクトは、時間、コスト、およ び品質に関してより大きく困難なものになってい 75年以上前、0.5″精度のセオドライトWILD T3 を世に出しました。WILD T3はその高精度測定に きます。これらの課題は、より高精度で精密なトー より、測量業界で大きな関心を集めました。1970 年代、電子工学と自動化技術が測量機に進化をも ょう。また、これは信頼性、堅牢性、自動化、およ たらします。ライカジオシステムズは1980年代初 の連続使用、短い整備機関、およびメンテナンス・ 頭に、高精度と自動化技術による高い測定品質を コストの削減は効率的なプロジェクト遂行にとっ 組み合わせた初めてのトータルステーション- て大切な要件です。 タルステーションの需要を高めることになるでし び効率的な作業をも含んでいます。さらに、長期間 TC2000を発売しました。TC2000はライカジオ システムズによって開発された、最初の高精度電 子角度測定システムを備えていました。ライカジ オシステムズは最も優れた測量機を提供し続ける ため、1990年代中頃新たなトータルステーション TCA2003を発売しました。TCA2003は次世代 世界で最も精密、高精度、高信頼 性、堅牢、かつ高速なトータルス テーション - Leica TS30 0.5″トータルステーションとして、電子光学距離 測定機能(EDM)を完全にシステムへ統合してい 増大する精度と効率化への要求に対するライカジ ました。加えて自動視準機能(ATR)による自動 ョンLeica TS30です。TS30は0.5″の角度精度 化された測定プロセスは、測量作業の効率を明ら (ISO 17123-3による試験)を提供します。ライカ かに向上させました。 プリズムへのピンポイントEDMによる距離測定精 オシステムズの答えは、独創的なトータルステーシ 3 度は0.6mm+1+ppm(ISO 17123-4による試験) の角度精度を提供します。本体の構造設計のみなら です。大気条件とターゲットの反射率によります ず、そのマテリアルの均質性も極めて主要な要件で が、距離測定は12,000mまで可能です。ノンプリ す。そのため、TS30の本体は低圧鋳造技術によっ ズム測定には、TS30はライカジオシステムズの距 離測定システムアナライザー技術を備え、1000m て製作されています。マテリアルは自重以外の加圧 以上離れた自然な計測面まで測定可能です。 す。その結果、トータルステーションの製作に広く TS30は極めて迅速に、高精度かつ精密な測定を可 能にし、それは手動および自動による計測方法の どちらでも最高の測定品質を得られるよう設計さ れています。 ピエゾ技術を採用した新開発のダイレクト・ドラ イブは、非常に迅速で効率的な自動測定を可能に します。アリダードと望遠鏡の回転速度は1秒間に 180°です。TS30は従来のモータードライブのト ータルステーションと比較し、4倍以上のスピード で動作しますから、このダイレクト・ドライブだ けでも単位時間当たりの自動測定数を明らかに増 大させます。さらに、ダイレクト・ドライブはワ ンマン測量と動的トラッキング計測に対して最適 な性能を提供します。加えて、自動視準機能(ATR, 1000mまで)、パワーサーチ(PS)、およびガイ ドライト(EGL)が効率的で自動化された測量作業 をサポートします。 TS30はライカジオシステムズのX-Functionへ完 全に統合されています。このことは、System1200 の全てのコンポーネントとの互換性による制限の 無い拡張性・柔軟性を意味しています。トータル ステーション、GNSSスマート・アンテナ、および オンボード・ソフトウエアSmartWorxは完全な相 互運用性とモジュール設計に基づいています。 この白書はTS30の新しい開発と技術に焦点を合 わせます。特に機械構造、角度測定システム、ピ エゾ技術に基づくダイレクト・ドライブ、および 電子光学距離測定技術に関して詳しく解説しま す。 機械構造 最高の精度と精密さを高速性能と両立させたトー タルステーションの設計および製作には、従来の トータルステーションとは異なる新たな解決策が 必要でした。TS30は極めて安定した本体構造(お よびアリダード)により、変化し過酷な環境(気 温変化、風、雨、など)に対しても堅牢でかつ0.5″ 4 がかからないよう、ゆっくりと鋳型に流し込まれま 使用されている加圧ダイキャスト方式と比較し、マ テリアルの内部応力が非常に低くなります。低圧鋳 造技術は本体の強度向上に寄与するのです。さら に、TS30の強度と安定性を最大限に向上させるた め、典型的な1″精度のトータルステーションと比 較し、本体とアリダードのサイズを拡大していま す。 図2 はTS30の断面図です。この図面では特に水平 および鉛直のガラス円盤の位置と大きさが分かり 易く描かれています。コードが刻まれたガラス円盤 は、水平および鉛直角の測定システムの主要パーツ です。これらの円盤の大きさは、角度測定における 精度と解像度へ重要な影響をもたらします。と言う のも、円盤の長径が大きいほど角度精度と解像度が 向上するからです。そのため、TS30のガラス円盤 のサイズは典型的な1″精度のトータルステーショ ンと比較しおよそ15%拡大されています。本体とア リダードの設計は、拡大されたガラス円盤のサイズ を考慮して決定されています。 TS30の効率的な操作を拡張するため、3つ目の微動 ねじとユーザーが機能を割り当てることができる 「スマート・キー」が追加されています。追加され た3つ目の微動ねじは鉛直方向に働き、水平の微動 ねじの近くに設置された(図2 参照)ことにより容 易に片手での操作が行えます。片手操作は非常に効 率的な測量を可能にし、またもう片方の手で他の電 子機器や図面などを持って作業することもできま す。 ユーザー設定の可能なスマート・キーは TS30 本体 の横側、回転軸の延長上で、水平微動ねじと 3 つ目 の鉛直微動ねじの中間に位置しています(図 2 参 照)。トリガー・キーを押しても TS30 のアリダー ドへは接線方向の加重が一切かからない構造です から、常に静止した測定が行われます。ユーザーは スマート・キーの機能を決定することができます。 これにより、TS30 を使用する用途に応じて操作方 法を簡単にカスタマイズすることが可能になりま す。 自動視準装置(ATR) 受光部 ガイドライト(EGL) エミッタ パワーサーチ 受光部 エミッタ 角度測定装置(V) エミッタ エンコーダ 距離測定装置(EDM) 受光部 エミッタ 自動視準装置(ATR) エミッタ チルトセンサー エミッタ オイル表面 角度測定装置(Hz) 受光部 エミッタ エンコーダ レーザー求心装置 ダイレクト・ドライブ ピエゾドライブユニット セラミックシリンダリング エミッタ 図 2- ライカ トータルステーション TS30 の断面図 5 角度測定 角度測定システム 出システムは、コードの刻まれたガラス円盤の実位 - 水平角および鉛直角 - はTS30にとって非常に重要な部分です。と言うの も、ダイレクト・ドライブによる高速旋回性能の 元で高精度かつ精密な角度測定を保証しなければ ならないからです。角度測定システムは主にガラ ス円盤と4つのエンコーダ - 4重角度読み取り 装置から構成されます。エンコーダは主に光源 (LED)、反射鏡、およびCCDアレイによって構成 されます。ガラス円盤上のコードは放射状に整列 したラインで、かつ絶対値を持った連続的なもの です。測定前にいかなる初期化も必要ありません。 図3 には一つのエンコーダとガラス円盤からなる 角度測定システムが示されています。 置を測定します。角度の高い検出頻度は、角度測定 システムのエンコーダによるダイレクトかつ極め て正確な制御を可能にします。少しの修正も無く、 指定された方向へ器械を正確に動作させます。従来 のトータルステーションでは角度測定頻度がほん の数ヘルツ(毎秒数回)であるため、モーター制御 のため別のエンコーダがモーター軸上に搭載され ています。モーターのエンコーダ自体は速いのです が不正確で、定期的に角度測定システムとの同期を 必要とします。しかしながら、モーターのエンコー ダと角度測定システムの間に誤差が生じ、アリダー ドの不正確な位置決めが起こる可能性があります。 位置決めを細かく繰り返すのはそのためです。 TS30の非常に精密で正確な角度測定において、コ ードが刻まれたガラス円盤の実位置の検出は4つの 角度読み取りシステムによってなされます。アドバ ンテージは明らかです。系統的かつ定量的な誤差は 除去されることで測定精度が向上し、加えて角度測 定の信頼性が高まります。角度測定に2つのエンコ ーダを使用することで、トータルステーションの器 械軸との相対的なガラス円盤の偏心による定量的 な誤差を消去します。別な2つのエンコーダがシス テムで決定される更に小さいπ周期誤差を消去し ます。 図 3- 角度測定システムの、LED、CCD アレイとコードが刻まれ たガラス円盤によって構成される一つのエンコーダ 4つのエンコーダは2つのエンコーダに比較し、分散 伝播式(1)によって精度が0.7の因数で向上します。 さらに、角度測定の回数を増やすことによっても信 エンコーダのユニットでは、LEDから照射された光 がコードの刻まれたガラス円盤を通してCCDアレ 頼性を向上できます。 イへ投影されます。最終的にCCDアレイで受光し た画像は解読され相対的な角度情報へ変換されま す。最初の段階ではコードラインの判読による 0.3″精度の粗い角度が検出されます。精密な角度 測定はコードラインの図心の位置に基づいていま す。その計算はライカジオシステムズが開発した アルゴリズムによって行われます。位置決定には、 少なくとも10個のコードラインがCCDアレイによ ってキャプチャされなければなりません。正しい 位置の内挿精度を向上させるためには、1つの計算 処理に対して最低30個のコードライン・データが 使用されます。 TS30の角度計測における重要な特性およびアド バンテージは、毎秒5000回までという高い測定周 期と、4重の角度検出システムです。4つの角度検 6 TS30 の角度測定精度は、ライカジオシステムズ社 の TPM-2 によって立証され、公認されています。 このセオドライト試験機(Lippuner and Scherrer, 2005 参照)は、ライカジオシステムズ社の距離・ 角度の較正研究所の一部です。この研究所はスイス 連邦政府の経済省(DEA)に帰属するスイス資格認 定サービス( SAS )によって信任されています。 TPM-2 による角度測定の標準偏差(1σ)は水平角 が 0.058″、鉛直角が 0.091″です。TS30 の角度 測定精度の試験では、水平と鉛直の角度測定値を TPM-2 の測定値と比較します。 標準偏差はISO 17123-3に従って計算されます。 効率性のアドバンテージとして、HZ-視準誤差、傾 TS30の角度測定精度は0.5″(0.15mgon)です。 TS30とTPM-2の試験サンプルを図4及び図5に示 斜軸エラー、および鉛直係数を、ユーザーが標準現 します。図中の数字は水平角と鉛直角の測定にお ョンへ登録することができます。 場手順に従って定期的に決定し、トータルステーシ けるTPM-2とTS30の差を表しています。 光源(LED) ライン・パターン CCD アレイ オイル表面 図 6- 二軸傾斜センサーの原理 図 4- TPM による水平角の結果: 標準偏差 ISO 17123-3 (n = 36): 0.45” (0.14mgon) 二軸の傾斜センサーはトータルステーションの水 平性を監視します。理想的な場合、器械の水平は鉛 直線に対して直角です。傾斜センサーは垂直の実際 の偏差を検出します。図6は、TS30内部での二軸の 傾斜センサーの動作原理を示しています。 傾きのパターン 1: CCD アレイ 傾きのパターン 2: 図 5- TPM による鉛直角の結果: 標準偏差 ISO 17123-3 (n = 36): 0.42” (0.13mgon) 角度測定の最終段階は、検出された生の角度を次 前後軸の傾きのインジケータ の4つのパラメータ(ライカジオシステムズの4重 角度補正)で補正することです: 傾斜センサーによるトータルステーションの 水平角測定における実際の前後軸・左右軸の傾 き(l, t) 鉛直係数(i, 本体の軸に起因する) 左右軸の傾きのインジケータ 図7- 一次元のCCDアレイによる前後軸・左右軸の傾き測定のためのラ イン・パターン。ライン・パターンはCCDアレイに沿って横切るように 動きます。前後軸・左右軸の傾き検出には、ライン・パターンの図心の 検出は必須です。 HZ-視準誤差(c, 視準エラー) 傾斜軸エラー(a) 7 傾斜センサーは主にケースに入った油膜とプリズ ム、ミラー、ライン・パターンのあるプリズム、 一次元CCDアレイ、および光源から成ります。ラ イン・パターンは油膜を通り、その表面で2回屈折 してからCCDアレイに映し出されます。特定の三 角形のライン・パターンは一次元受信機(図7 参 照)によって二軸の傾きを検出させます。前後軸 の傾きは異なって並んだラインの間隔の違いによ ります。左右軸の傾きはライン・パターン全体の 中心がCCDアレイに沿ってシフトすることにより ます。二軸の傾斜センサーの実際の目的は、非常 に小さいサイズの補正機構(コンペンセイター) を可能にすることです。これにより、角度補正機 構をトータルステーション本体の中心軸に設置す ることが可能となります。したがって、液面はそ の水平位置によりアリダードが回転しても変位を 最小限に保ちます。これは油面の設定時間を最小 にし、回転後の即時測定を可能にします。 図 8- TS30 トータルステーションのダイレクト・ドライブ TS30のダイレクト・ドライブにおいて、正対して マウントされた1対のピエゾ・セラミックは、水平 と垂直の回転軸に取り付けられたセラミック・シリ ンダー・リング(ローター)を加速させ、正確に動 かすために使用されます(図8 参照)。マウントさ れたセラミックは2つの加振電極 電極とパッシブ電極 駆動装置 - - アクティブ に分極され、特定の電極 の動作を変えることもできます(図9 参照)。そう TS30の駆動装置は電力を機械的な動きへと直接 的に変換するピエゾ原理に基づくダイレクト・ド ライブを使用しています。最高の速度と加速度の 能力を微小なステップ・サイズで実現したことが、 TS30ダイレクト・ドライブの主な特性です。最高 精密測定には微小なステップ・サイズによる制御 が必須だからです。TS30は、そのアリダードと望 遠鏡の水平・鉛直方向の動きにピエゾ原理に基づ くダイレクト・ドライブを採用する唯一のトータ して、2つの電極の上に位置する突起(動く鼻)が、 ピエゾ・セラミックの運動をセラミック・リングへ 伝達します。マウントされたピエゾ・セラミックと 動く鼻は、典型的には楕円運動を行います。これら の動きを発生するため、ピエゾ・セラミックは正弦 波の交流電気により励起されます。加えて、楕円運 動の方向と速度はマウントされたセラミックのア クティブなセグメントの特性と入力される交流電 気の強さにより定義されます。 ルステーションです。 ピエゾ効果(圧電効果)は1880年代に発見されま した。この効果は、ある結晶性鉱物(例えば水晶 フリー Sin (ωt) など)に機械的ストレスを与えることで、電荷(分 極)を生じるというものでした。この効果の逆 逆圧電効果‐ ‐ リング は、電位に結晶性鉱物をさらすこ とにより、それらを伸縮させることです。鉱物の 変形(サイズと方向)は、結晶性鉱物の極性と電 場の強さによります。交流電場は結晶性鉱物の周 期的変動を生じさせます。周期変動は制御作動装 置に使用できます。結晶性鉱物の代わりに、圧電 性材料としてセラミックを人工的に生産できま す。これによりピエゾ効果の多様な用途での使用 を可能にします(Uchino and Giniewicz, 2005 参 照)。 動く「鼻」 Sin (ωt) フリー セラミック 図9- ピエゾ技術によるダイレクト・ドライブの作動原理 8 ピエゾ技術に基づくダイレクト・ドライブは、高 で示され、TS30 のダイレクト・ドライブの最高速 速回転と高加速性能を微小のステップ・サイズと 度が従来のモータードライブと比較し、少なくとも 低消費電力と共に実現しています。ステップ・サ 4 倍速いことが分かります。結果として、位置決め に要する時間は短縮できます。 イズはナノ・メートル単位に達しています。ダイ レクト・ドライブの優れた耐久性と長時間を実現 したメンテナンス期間は、トランスミッション可 動部を除去したことで達成されました。可動部に ギヤは一切使用されていません。その上、TS30の ダイレクト・ドライブは磁場を発生せず、磁場の 影響も受けません。例えば発電所などのように磁 場が発生する環境においても、ダイレクト・ドラ イブの完全な動作を保証します。 一般的なモーター駆動と比較し、TS30のダイレク ト・ドライブの主要な利点は次のとおりです: 高速回転速度(最高180°/秒) 高加速度(最高360°/秒2) 長耐久性および堅牢性 無騒音 コンパクト設計 停止時の電力消費なし バッテリー駆動時におけるトータルステーション のダイレクト・ドライブの電力消費量は、器械の稼 働時間を決める重大な要素です。低電力消費、特に 停止時において電力消費が小さいことは、明らかに 稼働時間を伸ばすことになります。TS30のダイレ クト・ドライブの利点の一つは動いているときのみ 電力を消費するということで、停止時は一切電力を 消費しません。このダイレクト・ドライブはアリダ ードと望遠鏡の水平・垂直位置を、一切の電力なし で保持することができます。このことは、電力を節 約し、熱の発生を起こさず、他のドライブ方式と比 較し長時間の測定作業を可能にします。器械内部の 発熱制御は、最も高い測定精度を達成するための重 大な要素です。その上、TS30のアリダードと望遠 鏡の水平・垂直位置は非常に安定した状態で保持さ れます。これによりターゲットを視準し測定する 間、少しの振動も発生もなく望遠鏡が安定した位置 に保たれます。表1ではTS30のダイレクト・ドライ ブ、従来のモータードライブ、およびマグネティッ ク・ドライブの質的比較を示します。 TS30 ダイレク 一般的なモータ マグネティッ ト・ドライブ ードライブ ク・ドライブ 回転速度 ++ - + 加速度 ++ - + 解像度 ++ + + + + - ++ ++ - 停止時の 電力消費 望遠鏡の 安定性 表1- トータルステーション用の異なるドライブ形式の比較(++ 非常に 図10- TS30と一般的なモータードライブの速度および回転時間比較 TS30トータルステーションのダイレクト・ドライ ブは、アリダードと望遠鏡の位置決め時間を大き く短縮します。図10では、ピエゾ技術に基づくダ イレクト・ドライブと一般的なモータードライブ の、望遠鏡正反の反転における180°の回転所要 時間を示しています。速度と角度は時間との相関 優れている、+ 優れている、- 劣っている) ピエゾ技術に基づくダイレクト・ドライブは、従来 のモータードライブと比較しとても長いライフを 特徴とします。ダイレクト・ドライブは一切のギヤ、 ベアリングを使用しないため、ほとんど磨耗が発生 せずドライブのライフを引き伸ばしています。加え て、メンテナンス時間を極めて短縮することができ ます。 9 電子光学距離測定装置(EDM) プリズム、反射テープ、または自然なターゲット への電子光学距離測定(以下EDM)は、視準軸と 同軸な可視レーザー光線で、ライカジオシステム TS30 の距離測定精度は、ライカジオシステムズ社 の公認測定実験室において干渉計によって決定さ れた基準距離との比較によって確認されています。 試験サンプルの結果を図 11 に示します。 ズのピンポイントEDMシステムから射出されま す。反射光は高感度フォト・レシーバーによって 検出され、電気信号へと変換されます。信号のデ ジタル化、蓄積、および解析によって対象物との 距離を決定します。100Hzもの変調頻度は高精度 距離測定のための時間基準です。 ライカジオシステムズのノンプリPinPoint R1000 EDMは、1000m以上の範囲の自然なターゲットを 測定します。プリズムや反射テープなしでこれら の長距離測定を可能とするため、ライカジオシス テムズ社の検証したシステムアナライザーを搭載 しています。この方式は距離決定のために全ての 図11- 干渉計とTS30の距離計測における差異 信号情報を評価し、搬送波と経過時間(time of flight)の個々の弱点を持たずに双方の利点を結合 することを可能にします(Bayoud, 2006)。加え 距離計測の電子および信号分析の改良と共に、レー て、システムアナライザーの特性はEDMレーザ れにより最適化されたレーザー・ビームのプロファ ー・ビームとターゲットの品質の双方に関して、 および個々の測定毎に定義されます。最終的に、 距離は最大尤度の原理に基づく最新の信号処理方 式によって計算されます。この新しいEDMシステ ムは主にノンプリズム測定範囲を拡大させる感度 向上をもたらします。 TS30トータルステーション用として、ライカの PinPoint EDMは更なる精度向上を達成すべく改良 ザー・ビームの形状も大きな改良を受けました。こ イルとフット・プリントを実現しています。レーザ ー・ビームの周囲の不均質な光は測定用のレーザ ー・ビームから除去されます。周囲の光は対象物で 乱反射し、距離測定を妨げることがあります。更に、 レーザー・ビームはアナモルフィック・レンズによ って形状変更を受けます(図12 参照)。この新た に形状変更されたレーザー・ビームは、特にプリズ ムに対しての距離測定性能の強化をもたらします。 されました。この新しいPinPoint EDMはライカの 円形プリズム(GPH1P)に対して0.6mm+1ppm の距離測定精度(ISO 17123-4 による試験)を可 能にしました。このEDMシステムは測定環境条件 によって測定する周波数を自動的に選択します。 改良されたEDMは追加された異なる周波数を使用 し、器械とターゲットの間で発生する多重反射に よる影響を除去します。その上、測定プロセスに おける測定数を増加させ、距離測定の精度向上と 信頼性の拡張を実現しています。 このPinPoint EDMはTS30トータルステーション の距離測定に対して多くのアドバンテージをもた らします。非常に高い測定品質と信頼性と共に、 PinPoint EDMはほこり、煙、霧、雨、降雪などと いった不利な大気条件の下での測定をも可能にし ています。 10 図12- レーザー・ビームの形状を最適化するアナモルフィック・レンズ とビームの経路 まとめ - TS30の利点 TS30は最高の精度と性能が必要とされる複雑な 測量と土木プロジェクトを完成させるための、精 度、精密さ、性能、および高効率を兼ね備えてい ます。TS30トータルステーションによる利益は非 常に大きなものです。最新の技術の導入により、 フィールド作業における測定効率は明らかに向上 します。TS30はプリズムおよびノンプリズム測定 の双方において、今まで実現不可能であった精密 さと精度を実現しています。さらに、TS30はライ カジオシステムズのX-Functioへ完全に統合され えば、GNSS、ラジオ・ハンドル、アクセサリーな ど)とライカジオシステムズのデータ管理の下、 TS30 は SmartWorx によって操作されます。した がって、全てのライカ・アプリケーション・プログ ラムが既に広く知られ、確立されたグラフィック・ インターフェイスで利用することができます。 TS30 のライカジオシステムズの X-Function への 統合は、System1200 製品との完全な互換性を通 じてシステムの無限のフレキシビリティとスケー ラビリティを提供します。 ています。 参考文献 高い精密さと精度 TS30の特殊なメカニズムと優れた4重の角度測定 システムは、0.5″精度での角度測定を可能にしま す。最高の精度と最良の性能の実現には、測定環 境の影響を最小限に抑える特殊な機械設計を必要 としました。加えて、3つ目の微動ねじはTS30に 片手による人間工学的な操作環境を提供します。 ユーザー定義の可能なSmartKeyは、アリダードの 回転方向へ一切の応力を発生することなく測定開 始ボタンとして機能できます。 Bayoud, F. (2006): Leica’s PinPoint EDM Technology with Modified Signal Processing and Novel Optomechanical Features. In: Proceedings of XXIII FIG Congress, Munich, 2006. Lippuner, H. and Scherrer, R. (2005): Die neue Theodolit-Prufmaschine TPM-2 von Leica Geosystems. Allgemeine Vermessungsnachrichten AVN, 05/2005. Uchino, K. and Giniewicz, J. (2005): Micromechatronics. Publisher: Marcel Dekker Inc., New York, Basel. 速く信頼性の高い性能 品質、信頼性、および効率性はいかなる測量や土 木プロジェクトの成功にとって非常に重要な要素 です。TS30トータルステーションはそれらの全て を備えています。TS30の測定効率と高性能は、 様々なセンサーの最適な組み合わせの結果です。 速く精密な角度測定システム(最大毎秒5000測 定)、PinPoint EDMシステム、ピエゾ技術に基づ くダイレクト・ドライブによるTS30の駆動方式 は、今まで可能であったどの器械より、より速く、 より正確な位置測定を可能にしました。長いライ フと長期化したメンテナンス間隔はTS30の信頼 性を更に高めています。 X-Function TS30はライカジオシステムズのX-Functionへ完 全に統合されています。ハードウエアの互換性(例 11 高層ビルやトンネルの測量であれ、火山活動や建設現場の構造物の変位観測であ れ、信頼性の高いデータは不可欠です。ライカジオシステムズは、かつてない精 度、品質、および性能を備えた革新的な精密測量ソリューションの豊富なライン ナップを提供します。ライカジオシステムズの製品を用いれば、どんな作業も不 可能ではありません。プロとしての想像力を活用して成功を掴むチャンスです。 ライカジオシステムズは、世界中のあらゆる地域においてサービスとサポートを ご提供します。信頼を寄せてくださるお客様が我々に期待する水準のサポートと 協力を、真のパートナーシップを通じて提供し続けることをライカジオシステム ズはお約束します。 When it has to be right. イラストレーション、解説、および技術データは変更される可能性があります。 Printed in Switzerland – Copyright Leica Geosystems AG, Heerbrugg, Switzerland, 2009. 766425jp – III.09 -INT ライカ ジオシステムズ株式会社 www.leica-geosystems.co.jp 12