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富裕層ビジネス最前線> 不動産を活用したタックスマネジメント 沖 有人 氏

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富裕層ビジネス最前線> 不動産を活用したタックスマネジメント 沖 有人 氏
<富裕層ビジネス最前線>
不動産を活用したタックスマネジメント
沖 有人 氏
スタイルアクト株式会社 代表取締役
当社は、1998 年の創業以来、首都圏の中古マンションなどの不動産ビッグデータの収集・
分析により、大手デベロッパー等の法人へのコンサルティング事業を手掛けてきました。さ
らに、2 年ほど前に、相続対策に適した中古マンションをビッグデータ分析から抽出して紹
介する富裕層向けの不動産仲介ビジネスに参入。折しも、2015 年からの相続増税をきっか
けに節税目的の不動産購入が活発化しており、節税効果の高い「タワーマンション節税」の
手法が注目を集めています。
当初は資産 1 億~2 億円クラスのクライアントが中心でしたが、
いまや数 10 億円から 100
億円クラスの資産家のクライアントが増加。最近は、データ分析と相続対策から派生し、富
裕層が必要とする不動産投資のメニューを拡充しつつあります。
●資産額によって異なる相続税対策
相続税対策といっても、具体的な手法は様々です。私たちは基本的に、クライアントの資
産額によって提案する手法を最適化しています。
(1)資産 1 億円以下の場合
資産が 1 億円以下の場合、年間 110 万円の暦年贈与をはじめ、住宅資金(1,000 万円、
「良質な住宅家屋」の場合は 1,500 万円)や教育資金(1,500 万円)といった非課税での
生前贈与を上手に活用すればよく、当社では無理にマンションなどの不動産購入は勧めま
せん。
(2)資産 1 億円超の場合
しかし、資産が 1 億円超になると、生前贈与だけでは難しくなります。そこで生前贈与
に加え、金融資産の一部を使ってマンションを購入したり、保有不動産のうち収益性の低
いものを処分してマンションに組み替えたりすることを提案しています。
例えば、1 億円の現金をマンションに替えれば、相続税評価額は 4,000 万円程度に下が
ります。これを人に貸して賃貸不動産とすれば、土地・建物のさらなる評価減が得られ、
評価額は 2,000 万円程度になります。1 億円の現金を賃貸不動産に替えることで、資産評
価額が約 2 割(※1)にまで減るのです。
なお、評価額が 8 割減るといっても、適用される相続税率が高くないと効果は限られま
す。例えば、課税資産が 7 億円の場合、6 億円を超える 1 億円分は最高税率 55%が適用さ
れます。そこで、1 億円分の金融資産をマンションに替えて賃貸すれば、55%×80%=
44%、つまり 4,400 万円の節税となります。
しかし、税率が 10%であれば、10%×80%=8%となり、金融資産 1 億円をマンション
に替えても節税額は 800 万円に過ぎません。不動産は取引するだけで 8%程度のコストが
必要になりますので(※2)
、8%のコストをかけて 8%の節税を行っても意味はありませ
ん。
なお、マンションの購入にあたって、資産 3 億円まではローンの利用はあまり勧めませ
ん。そのほうが将来のリスクを減らし、状況変化に柔軟に対応できるからです。
例えば、3 億円の金融資産のある人が 7,000 万円のタワーマンションを 4 戸購入する
と、合計 2 億 8,000 万円の不動産に替わり、残りの金融資産は 2,000 万円です。こういう
場合、当社では 5,000 万円のローンを組んでもう 1 戸購入しましょうというようなアドバ
イスはしません。もう 1 戸購入するのであれば、4 戸から生まれるキャッシュフローがた
まるのを待ってからで十分です。
※1 約 2 割にまで減る(8 割減)という評価減割合は、当社が調べた首都圏の分譲マンションの平均値(平均 79%減)。
※2 購入時に 3%程度の仲介手数料と 2%程度の登録免許税・不動産取得税、売却時にはさらに 3%の仲介手数料。
(3)資産 3 億円超の場合
ローンを組むことにはリスクが伴いますが、それでもローンを組むメリットがあるのは
資産額が 3 億円を超える場合です。資産 3 億円超なのに何の対策も取らない状態で相続が
発生すると適用税率も高く、相続人にとっては重い負担となります。
例えば、金融資産が 5 億円ある場合、すべてマンションに替えても相続税の資産評価額は
せいぜい 7 割減の 1.5 億円程度にまでしか圧縮できません(※3)
。相続税をさらに下げる
には、ローンを組み合わせるしかありません。
5 億円分を自己資金で買えば相続税評価額は 1.5 億円ですが、ローンを 3 億円借りて 8 億
円分のマンションを買えばマンションの評価額は 3 割の 2.4 億円となり、ローンの 3 億円
がマイナス資産としてあるので、全体の相続税評価額がマイナス 6,000 万円、相続税はゼロ
になるわけです。なお、このような場合には、区分所有のマンションだけではなく、一棟物
の収益物件の購入も提案しています。
※3 このレベルの資産額になると土地の相続税評価における「小規模宅地の特例」が適用されない場合が多いので、8
割減ではなく 7 割減とみる。
(4)法人化を活用した資産移転
資産額が 3 億円以上の方には、法人化という方法を提案することも考えられます。出資や
貸付けの形で資産保有法人を設立し、その法人が賃貸用のマンションを購入するのです。
例えば、法人が 10 億円の物件を 5 億円の現金と 5 億円のローンで購入した場合、資産の
相続税評価額は 3 割程度に落ちるので、3 億円(法人には「小規模宅地の特例」が適用され
ないので 2 割までは落ちませんが、3 割程度に圧縮できる物件はあります)
。一方、負債は
5 億円なので純資産はマイナスとなり、株式評価額はゼロです。この法人の株式を贈与や相
続すれば、無税で資産移転できるわけです。
ただし、この方法には注意点がひとつあります。それは物件を取得してから 3 年間は購入
価格で評価されること。3 年以上保有していないと、相続税評価額で評価されないので注意
が必要です。比較的若い方の資産移転に適した方法と言えます。
●所得税対策では減価償却を活用
相続対策でマンションを購入した場合、賃貸による家賃収入が発生します。もともと事業
所得や給与所得が高い人であればトータルの課税所得がアップし、累進税率によって税負
担が重くなります。
当社はそこで、相続税対策と同時に減価償却を使った所得税対策についても提案してい
ます。具体的には、米国などの海外不動産を賃貸用に取得するのです。
海外不動産は一般に取得価額に占める建物分の割合が高く、また日本とは違って築年数
が経っても建物分の割合(建物価格)があまり下がりません。
例えば、木造で築 22 年を超える物件であれば、4 年で減価償却が可能です。4 年間は減価
償却によって課税所得を圧縮し、5 年経過後に購入時と同額で売却すれば、所得税(住民税
を含む)と長期譲渡所得税(分離課税)との税率の差だけキャッシュフローが改善します。
節税額と賃料収入で、手取年収が 2 倍以上になる方もいます。
●専門家同士がチームを組む必要性
日本では個人の金融資産が 1,600 兆円ありますが、高齢者がその 6 割を保有していると
いわれ、さらにその多くは一部の富裕層に集中しているとみられます。相続対策のニーズは
今後、数十年にわたって継続的に発生する大きなビジネスチャンスです。
しかし、富裕層のニーズに適切に対応するには、資産額や資産構成をはじめとするクライ
アントの個別の事情を的確に把握し、複数の商品とサービスを組み合わせ、最適なソリュー
ションを提案することが不可欠です。そのためには異業種、異分野の専門家同士がチームを
組む必要性がますます高まっていくでしょう。上で述べたような、相続対策や所得税対策に
相応しい物件の数は、決して多くありません。物件取得後に価値が下落したり、空室率が高
まったり、というようなリスクを富裕層が負う必要はないと考えます。したがって、私たち
は、単に物件をお勧めするのではなく、その前のコンサルテーションに重きを置いています。
当社では不動産を節税ツールとして活用する独自のノウハウと経験を一般のクライアン
トだけでなく、富裕層ビジネスに携わる専門家の方々にもお伝えしており、5 月 14 日(木)
には、日本証券アナリスト協会で『富裕層に響く、不動産投資手法 -成功の鍵はタックス
マネジメント-』と題したセミナーを開催する予定です。
不動産にタックスマネジメントを組み合わせた各種投資手法について、具体的ケースを
交えながらリスクやデメリット、その対応策等も踏まえて解説する予定ですので、参考にし
ていただければ幸いです。
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