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ホリミネラロジー標本解説リスト161号

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ホリミネラロジー標本解説リスト161号
ホリミネラロジー標本解説リスト161号
(2015年 第2号)
【 フランクリンの稀産鉱物・特集 】
アメリカ・ニュージャージー州のフランクリン鉱山(Franklin Mine)と隣接する
スターリング・ヒル鉱山(Sterling Hill Mine)にはフランクリン鉄鉱、珪亜鉛鉱、
紅亜鉛鉱の層状鉱床がある。世界に類を見ない特殊な鉱床で、様々な希産鉱物や
色鮮やかな蛍光鉱物が産出して鉱物産地として名高い。この地域の鉱業史は16
50年頃にオランダの植民者によってスターリング・ヒルの露頭部にある異極鉱
が採掘されたことに始まる。しかし、未風化の黒色や赤色の「重たい石」について
は永く正しい理解がなされなかった。1810年、ブルース石にその名を残すア
メリカの鉱物学者ブルース(Archibald Bruce)は、「赤い鉱石」が亜鉛の酸化物で
あることを初めて報告した。その後、フランスの化学者そして鉱物学者でもあっ
たベルチェ(Pierre Berthier ベルチェ鉱にその名を残す)は、ヨーロッパに送
られた標本を分析し、この地にもっとも多く存在する黒色の結晶が特殊な鉄、亜
鉛、マンガンの酸化鉱物であることを発見し、産地にちなんでフランクリン鉄鉱
Franklinite と名付けた。これらの鉱物に亜鉛が豊富に含まれることから亜鉛鉱石
としての価値が注目され、19世紀中頃から亜鉛鉱山として大規模な採掘が開始
された。フランクリン鉱山は1954年に閉山し、スターリング・ヒル鉱山も1
987年に採掘が休止されたが、今でもスターリング・ヒル鉱山の鉱山施設と坑
内の一部は保存され鉱山博物館として見学できる。鉱床はフランクリン大理石
(Franklin Marble)と呼ばれる高度に変成作用を受けた大理石層中に含まれ、鉱
床も同じ変成作用を受けている。変成作用を受ける前の鉱層は炭酸塩鉱物ととも
に海底に堆積した層状鉱床だということで意見の一致をみている。フランクリン
鉄鉱などは、先カンブリア時代(およそ10億年前)に地下深くにおいて非常に
高い温度で出来た変成鉱物である考えられている。亜鉛を目的に採掘された鉱山
であるが、鉱床には鉄、マンガンが多く含まれ、亜鉛によく伴われる鉛は少ない。
砒素も少量含まれる。これらの元素も酸化鉱物や珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩鉱物と
して産出する。1988年末の時点の集計として、長年この地の鉱物を研究した
スミソニアン博物館の P.Dunn 博士によって、66種類の新鉱物(当時、その半分
はこの地でのみでしか見いだされていなかった)を含む330種類の産出鉱物リ
ストが公表されている。しかし、鉱石に含まれる亜鉛を含む鉱物は、フランクリ
ン鉄鉱、珪亜鉛鉱、そして少量の紅亜鉛鉱で、これら3つの鉱物の合計は約7
0%となる。これに約25%含まれる方解石を合わせると、全体の95%にもな
る。従って、ここの標本というと、これら4つの鉱物のいずれかの組み合わせに
なったものが大多数で、この4種類以外の鉱物の標本は貴重。また、ここから発
見されている多数の新鉱物は、非常に限られた場所にしか産出しない。普通の光
源下では、この地の鉱物は肉眼的には目立った特徴のある鉱物は少ない。しかし、
短波長のミネラライトで非常に良く蛍光するものが多く、肉眼鑑定の強力な手助
けとなる。特に、緑色に蛍光する珪亜鉛鉱と赤色に蛍光する含マンガン方解石は
非常に目立つ。蛍光の強弱の他、蛍光性が無いことが逆に肉眼鑑定の手掛かりと
なることもある。また、ニューヨークの中心部から自動車道で80キロの行程で
容易に訪れることができる鉱物産地として非常に人気が高く、訪れる採集者は絶
えない。蛍光鉱物はミネラライトで容易に見分けがつくため、広い範囲に残る昔
のズリ石にはあまり良いものは残っていないという。フランクリン鉱山かスター
リング鉱山か判断できない場合は、単に地域名として「フランクリン」を使用する
ことにした。
1.クリノヘドライト Clinohedrite
CaZn(SiO4) ・H2O 単斜晶系
アメリカ New Jersey, Sussex Co., フランクリン鉱山, Parker shaft 産。クリ
ノヘドライトは亜鉛とカルシウムの珪酸塩鉱物で、H2O も含む。フランクリン鉱山
が原産地。非常に稀な鉱物で、世界的に数か所から産出の報告があるものの、他
では痕跡程度にしかない。フランクリンでも希にしか産出しない。パーカー竪坑
産のハージストン石やバスタム石を含むスカルン中にクリノヘドライトの薄い脈
が入っていることがある。鉱物通常光下では肉眼的にはまったく目立たない鉱物
で、いったいどこについているのか普通では皆目見当がつかない。しかし、短波
長のミネラライトで黄色を帯びたオレンジ色に鮮やかに蛍光し、さらに長波長の
ミネラライトで弱いながらオレンジ色に蛍光するのが鑑定のポイント。各1点の
み。以下、写真は同じ方向から撮影した、短波長のミネラライト下で撮影した写
真(左側)と通常光(LED ランプ)下で撮影した写真(右側)を並べている。
A
クリノヘドライト、バスタム石、ハージストン石
全体はバスタム石の塊。クリノヘドライト(蛍光・黄オレンジ)の薄脈に沿っ
て割れて、クリノヘドライトが大きく表面に出たもの。特に鮮やかに蛍光する部
分には無色透明の微細なクリノヘドライトの薄板状結晶が付いていて、ルーペで
見るとキラキラ輝いている。クリノヘドライトの結晶は極めて希。ハージストン
石(蛍光・青紫)を伴う。16x9x3cm \75,000。
B
クリノヘドライト、ハージストン石、灰鉄ざくろ石、フランクリン鉄鉱
クリノヘドライト(蛍光・黄オレンジ)の薄脈に沿って割れて、クリノヘドラ
イトが大きく表面に出たもの。ハージストン石(蛍光・青紫)と灰鉄ざくろ石
(蛍光性無し、通常光下で茶色)、フランクリン鉄鉱(黒)、薄脈状の珪亜鉛鉱
(蛍光・緑)。7x5x5cm \25,000。
C
クリノヘドライト、ハージストン石、珪亜鉛鉱、灰鉄ざくろ石
全体はハージストン石(蛍光・青紫)と灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、通常光下
で茶色)。珪亜鉛鉱(蛍光・緑)は薄い脈状。オレンジ色に蛍光する薄脈はクリ
ノヘドライト。11x10x7cm \35,000。
D
クリノヘドライト、ハージストン石、灰鉄ざくろ石、珪亜鉛鉱
全体は、リッチなハージストン石(蛍光・青紫)。灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、
通常光下で茶色)、フランクリン鉄鉱(黒)を伴う。写真左の珪亜鉛鉱(蛍光・
緑)は薄い脈の一面。オレンジに蛍光する部分がクリノヘドライト。14x8x5cm
\45,000。
2.ハージストン石 Hardystonite
Ca2Zn(Si2O7) 正方晶系
アメリカ New Jersey, Sussex Co., フランクリン鉱山, Parker shaft 産。ハー
ジストン石はカルシウムと亜鉛の珪酸塩鉱物で、メリライト・グループの鉱物。
短波のミネラライトで紫を帯びた青色に蛍光するのが特徴。非常に稀産な鉱物で、
フランクリン鉱山が原産地であり、かつほぼ世界で唯一の産地と言って良い。ス
ターリング鉱山からは見つかっていない。フランクリン鉱山中でも、Parker
shaft(パーカー竪坑)から一時期良いものが産出した。ハージストン石は不純物
として常に微量の鉛を含む。鉛はここの鉱石を精錬したときに亜鉛の中に不純物
として入ってしまうため、ハージストン石は亜鉛の鉱物でありながら、手選鉱場
で短波の紫外線を当てて選別され、ズリ(廃石)として取り除かれた。脂肪光沢
があり明瞭な劈開があることが特徴であるが、紫外線の蛍光色によらないとなか
なか見分けることができないかもしれない。ハージストン石に伴う鉱物として、
茶色~黄褐色で透明感があり劈開のない灰鉄ざくろ石、茶色で劈開完全な透輝石
(マンガン、亜鉛をかなり含むもので、シェッフェル石 Schefferite という亜種
名が付いている)。ハージストン石が多いものは重たく、手に持つと見た目より
重量感がある。A 5cm 前後 \5,000。 以下は大型品で各1点のみ。
B1
ハージストン石、灰鉄ざくろ石、珪亜鉛鉱、フランクリン鉄鉱
ハージストン石(蛍光・青紫)と灰鉄ざ
くろ石(蛍光性無し、通常光下で茶色)。
写真に写っている以外の部分で珪亜鉛鉱
(蛍光・緑)、フランクリン鉄鉱(黒)も
多く含まれる。 7x8x6cm \10,000
B2 ハージストン石、珪亜鉛鉱、灰鉄ざくろ石、フランクリン鉄鉱、紅亜鉛鉱
ハージストン石(蛍光・青紫)、珪
亜鉛鉱(蛍光・緑)、フランクリン鉄
鉱(黒)。写真の面とは別の面に見え
るフランクリン鉄鉱に伴うオレンジ色
(蛍光性無し・通常光下)は紅亜鉛鉱。
8x6x5cm \10,000
B3
ハージストン石、灰鉄ざくろ石、珪亜鉛鉱
ハージストン石(蛍光・青紫)、
灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、通常
光下で茶色)、珪亜鉛鉱(蛍光・
緑)。蛍光オレンジは方解石か。
11x4x4cm \10,000
B4
ハージストン石、珪亜鉛鉱、フランクリン鉄鉱、透輝石、方解石
ハージストン石(蛍光・青紫)、
透輝石(蛍光性無し、通常光下で茶
色。劈開有)、珪亜鉛鉱(蛍光・
緑)、フランクリン鉄鉱(黒)。下
部は方解石(蛍光・オレンジ)。
9x6x5cm \15,000
B5 方解石、珪亜鉛鉱、フランクリン鉄鉱、透輝石、ハージストン石
方解石(蛍光・オレンジ)中
に珪亜鉛鉱(蛍光・緑)、透輝
石(蛍光性無し、通常光下で濃
い茶色。劈開有)、フランクリ
ン鉄鉱(黒)、少量のハージス
トン石(蛍光・青紫)、少量の
灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、通
常光下で茶色、劈開無し)。10x8x6cm \15,000
B6
ハージストン石、珪亜鉛鉱、灰鉄ざくろ石、透輝石
ハージストン石(蛍光・青紫)と灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、通常光下で茶
色)、透輝石(蛍光性無し、通常光下で灰鉄ざくろ石より濃い茶色。劈開有)。
珪亜鉛鉱(蛍光・緑)。オレンジに蛍光する部分はクリノヘドライトかもしれな
い。13x11x7cm \15,000
B7 ハージストン石、方解石、珪亜鉛鉱、フランクリン鉄鉱、透輝石
ハージストン石(蛍光・青
紫)、方解石(蛍光・オレン
ジ)、透輝石(蛍光性無し、
通常光下で濃い茶色。劈開
有)。珪亜鉛鉱(蛍光・緑)、
フランクリン鉄鉱(黒)、灰
鉄ざくろ石(蛍光性無し、通常光下で茶色、劈開無し)。10x6x6cm \15,000
B8
ハージストン石、珪亜鉛鉱、方解石、灰鉄ざくろ石
フランクリン鉱山, Parker shaft 産。ハージストン石(蛍光・青紫)と珪亜鉛
鉱(蛍光・緑)、方解石(蛍光・オレンジ)。灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、通常
光下で茶色)。7x6x4cm \20,000
B9 ハージストン石、珪亜鉛鉱、灰鉄ざくろ石
非常にリッチなハージ
ストン石(蛍光・青紫)。
灰鉄ざくろ石(蛍光性無
し、通常光下で茶色)を
含む。写真右上の珪亜鉛
鉱(蛍光・緑)は薄脈が
割れた面。オレンジに蛍
光する部分はクリノヘド
ライトかもしれない。
8x6x5cm \20,000
B10
ハージストン石、珪亜鉛鉱、灰鉄ざくろ石、フランクリン鉄鉱
全体は非常にリッチなハージ
ストン石(蛍光・青紫)。珪亜
鉛鉱(蛍光・緑)の薄脈を多く
含む。灰鉄ざくろ石(蛍光性無
し、通常光下で茶色)、フラン
クリン鉄鉱(黒)を含む。
9x8x5cm \20,000
B11
ハージストン石、灰鉄ざくろ石、透輝石、珪亜鉛鉱
全体は、リッチなハージストン石(蛍光・青紫)。灰鉄ざくろ石(蛍光性無し、
通常光下で茶色)、透輝石(蛍光性無し、通常光下で濃い茶色。劈開有)。オレ
ンジに蛍光する鉱物はクリノヘドライトであろう。12x7x4cm \20,000
B12 ハージストン石、フランクリン鉄鉱、珪亜鉛鉱、方解石
非常にリッチなハージストン
石(蛍光・青紫)。フランクリ
ン鉄鉱(黒色)、珪亜鉛鉱(蛍
光・緑)、方解石(蛍光・オレ
ンジ) 10x9x7cm \25,000
B13
ハージストン石、フランクリン鉄鉱、珪亜鉛鉱、方解石、灰鉄ざくろ石
非常にリッチなハージスト
ン石(蛍光・青紫)とフラン
クリン鉄鉱(黒)の塊。珪亜
鉛鉱(蛍光・緑)灰鉄ざくろ
石(蛍光性無し、通常光下で
茶色)。方解石(蛍光・オレ
ンジ)。
13x7x7cm \25,000
3.バスタム石 Bustamite
CaMn2+Si2O6 三斜晶系
アメリカ New Jersey, Sussex Co., フランクリン鉱山, Parker shaft 産。化学
組成が似ていることからフランクリン産のカルシウムとマンガンの珪酸塩鉱物に
対してバスタム石 Bustamite という名前が使われたのは、メキシコ産のオリジナ
ルのバスタム石に名前が付けられた1826年からおよそ100年後の1922
年のことであった。しかしオリジナルのバスタム石はバラ輝石とヨハンセン輝石
の混合物であることが判明したため、現在ではフランクリン産のものが原産地と
して扱われている。もちろんフランクリン産のバスタム石は独立した鉱物種とし
て認められている。薄いピンク色で長く伸びていて劈開が良く発達している。大
きな塊状の集合体で非常に堅くハンマーでたたいてもなかなか割れない。ハージ
ストン石や灰鉄ざくろ石などを伴うことがある。
A 大きな標本を小割りにしたもの。5cm 前後
\2,000
B
バスタム石、ハージストン石、珪亜鉛鉱
全体はバスタム石の塊。珪亜鉛鉱(蛍光・緑)と少量のハージストン石(蛍
光・青紫)を伴う 13x11x7cm \15,000 1点のみ。
C
バスタム石、ハージストン石、珪亜鉛鉱、方解石
全体はバスタム石。バスタム石の中に、ハージストン石(蛍光・青紫)、珪亜
鉛鉱(蛍光・緑)、方解石(蛍光・オレンジ)が含まれる。14x10x8cm
\20,000
1 点のみ。
4.フランクリン鉄鉱 Franklinite ZnFe O 等軸晶系
珪亜鉛鉱 Willemite Zn SiO 六方晶系 楽しい鉱物図鑑①132p
方解石 Calcite CaCO 三方晶系 楽しい鉱物図鑑①86p
3+
2 4
2
楽しい鉱物図鑑①61p
4
3
フランクリン産。この三者はフランクリン鉱山やスターリング鉱山から同じよう
なものが産出するため、産地は単にフランクリンとする。フランクリン鉄鉱はこ
こで、もっとも多く産出する鉱物でもちろんここが原産地。スピネル・グループ
の鉱物で、磁鉄鉱の2価の鉄を亜鉛で置き換えたものに当たる。見た目も磁鉄鉱
に大変に似ている。ベルチェによって亜鉛が含まれていることが発見される前に
はフランクリン鉄鉱は磁鉄鉱であると誤認されていた。フランクリン鉄鉱は非常
に強い磁性のある磁鉄鉱に比べて、磁性が弱いのが特徴。フランクリン鉄鉱は組
成の変化が大きく、マンガンや鉄をかなり含むことがあり、その場合はヤコブス
鉱や磁鉄鉱に近いものにあたる。フランクリン鉄鉱はフランクリンの鉱石中に普
遍的に含まれている。ミネラライトで蛍光しないが黒色で目につきやすく分かり
安い。珪亜鉛鉱はフランクリンの蛍光鉱物の筆頭に挙げられる鉱物。短波長のミ
ネラライトで緑色に強く蛍光する。小さいものであれば、ここの鉱石には必ず含
まれていると言って過言でない。方解石は白色であるが、短波長のミネラライト
で鮮やかな赤味を帯びたオレンジ色に蛍光するが、長波長のミネラライトでは蛍
光しない。劈開完全で硬度が低い。
A 5cm 前後 \3,000
B1点のみ。写真の標本。フランクリン産。方解石(蛍光・オレンジ)とフラン
クリン鉄鉱(黒)、珪亜鉛鉱(蛍光・緑)。14x8x7cm \10,000
5.テフロ石 Tephroite
Mn2+2SiO4 斜方晶系
楽しい鉱物図鑑②138p
フランクリン産。テフロ石は最も普通のマンガン鉱
物の一つであるが、肉眼的に分かりやすいものは少な
い。テフロ石の原産地はスターリング・ヒル産で18
23年に Breithaupt により命名された。ギリシャ語
の「灰色」を意味する言葉に由来するが、フランクリン
鉄鉱に伴うものはわずかに小豆色を帯びているので、
テフロ石にしては分かりやすいかもしれない。小さい
粒状のものは珪亜鉛鉱に似ていることがあるが、テフロ石はミネラライトでまっ
たく蛍光しないので、常に蛍光する珪亜鉛鉱と区別が付く。2cm 前後、\3,000
6.クトナホラ石 Kutnahorite
CaMn2+(CO3)2 三方晶系
フランクリン産。全体は、ピンクのクトナホラ石の劈開集合体。クトナホラ石
はドロマイトのマグネシウムをマンガンで置き換えた鉱物で、ピンクに色づいた
方解石のように見えるが、クトナホラ石はミネラライトで蛍光しない。また、方
解石よりかなり硬い。
A 写真のようなものを小割りにしたもの。2cm 前後の小さい劈開片。珪亜鉛鉱は
入っていないことが多い。 \1,500
B 写真の品。中央にある珪亜鉛鉱(蛍光・緑)の脈は燐光性もあり、ミネララ
イトを消した後しばらく光っているが、燐光性は真っ暗な部屋でないと見ること
ができない。フランクリン鉄鉱(黒)を伴う。11x6x6cm \35,000 1点のみ。
7.スヴァブ石 Svabite
Ca5(AsO4)3F
六方晶系
フランクリン産。フランクリン産のアパタイ
ト(燐灰石)グループの鉱物はミネラライトで
弱く彩度の低いオレンジ色に蛍光する。この蛍
光性があるため肉眼的には目立たないがフラン
クリンでは割とポピュラーな存在らしい。ハイ
アロフェン(含バリウム・正長石)と褐色の灰
鉄ざくろ石に伴って、淡く緑を帯びた灰色のア
パタイトの不定形の塊が入っている。ハイアロ
フェンは劈開で平に大きく割れている。アパタイトは塊状で割れ方も不規則な感
じに見える。蛍光 X 線分析法による分析では、カルシウムが多く含まれ鉛はごく
微量で塩素も検出されていないのでアパタイトの中のヘディフェン Hedyphane グ
ループではない。燐より砒素が少し多いがその差は少ない。燐が砒素より多くな
ると弗素燐灰石となるが、わずかに砒素が多いのでこのアパタイトはスヴァブ石
と判断した。OH の定量は蛍光 X 線分析法ではできないので、スヴァブ石の弗素を
OH で置き換えたジョンバウム石 Johnbaumite(フランクリン鉱山が原産地)の可
能性はあるが、この鉱物は非常に稀で、今回の標本がジョンバウム石である可能
性は低い。3cm 前後 \3,000
8.ヘンドリックス雲母 Hendricksite
KZn3(AlSi3O10)(OH)2 単斜晶系
フランクリン産。ヘンドリックス雲母は金雲
母のマグネシウムを亜鉛で置き換えた鉱物でフ
ランクリンが原産地。上の化学式は亜鉛のみ含
まれる理想式。1つの劈開片を蛍光 X 線分析法
で調べると、亜鉛が一番たくさん入っているも
のの、マンガン、マグネシウムも同じくらい入
っている。亜鉛端成分のヘンドリックス雲母が
一番多く、マンガン単成分の白水雲母
(Shirozulite 愛知県田口鉱山が原産地)、マ
グネシウム単成分の金雲の成分がかなり含まれるヘンドリックス雲母だと言える。
長石や灰鉄ざくろ石を伴うことがある。大きな劈開片であるが、雲母の性質から
形は一定にすることができない。4cm \3,000
9.緑れん石-(Pb)(ハンコック石) Epidote-(Pb)(Hancockite)
CaPb(Al2Fe3+)[Si2O7][SiO4]O(OH)
単斜晶系
アメリカ New Jersey, Sussex Co., フランクリ
ン鉱山産。緑れん石(エピドート)グループの鉱物
の原子の並び(結晶構造)には、A1、A2 と呼ばれる
大きなイオン半径の元素が入る異なる2つの位置
(サイト)がある。例えば、緑れん石では、この2
つのサイト A1,A2 は両方ともカルシウムが入ってい
る。A2 には、カルシウムのかわりに選択的に希土類
元素、ストロンチウム、そして鉛が入ることが可能。
しかし鉛を含むエピドート・グループの鉱物は非常に稀で、19世紀末にフラン
クリン鉱山でこの緑れん石-(Pb)が見つかって以来、これしか知られていなかった
が、ようやく2012年になって紅れん石-(Pb)という新鉱物の記載論文が公表さ
れた。緑れん石-(Pb)の原産地はフランクリン鉱山で以前はハンコック石 Hancockite という名前が使われていたが、エピドート・グループの鉱物命名規則が変
更となり、緑れん石-(Pb)という少々味気ない名前になってしまった。原産地の緑
れん石-(Pb)は、ストロンチウムとマンガンを含むことも特徴的で、第二の産地ス
ウェーデン Jakobsberg 産の緑れん石-(Pb)はこれらの元素をほとんど含まない。
今回の標本でも、蛍光 X 線分析法による分析でこれらの元素が検出されている。
緑れん石-(Pb)は赤褐色・塊状集合体で黄褐色の鉱物は灰鉄ざくろ石、黒色の鉱物
はフランクリン鉄鉱。フランクリン鉱山 Parker shaft からかなり産出し、今回の
標本もここから産出したものと思われる。1cm 前後 \3,000
【
ご注文に関するご案内
】
ご注文方法
FAX(FAX:03-3993-1381)、郵便の場合はご注文用紙をご利用ください。
メールの場合は「標本番号・標本名・数量・条件・氏名・コード番号・住所」をご記入下さい。
電話(TEL:03-3993-1418)でのご注文も承ります。
ご注文は8月6日より集計を始め8月10日頃の発送を予定しております。
なお、ご注文が多く在庫が不足した場合は抽選とさせていただきます。
☆ 鉱物標本は自然の産物ですので1点1点形状が違い写真は一つの参考例です。
☆ 価格は全体のバランスで評価しており大きさとは必ずしも比例しません。
送料について
宅配便は東京 610 円、東北・関東・信越・北陸・東海 710 円、近畿 810 円、
中国・四国 930 円、北海道、九州 1130 円。商品合計が1万円未満で郵便の方が安価な場合は
定形外郵便(120~600 円)で発送します。商品合計額が2万円以上で送料サービス。
お支払いについて
お振込の場合は品物お届け後7日以内にお振り込みをお願い致します。
なお、ご注文の合計金額が高額の場合は先振込でお願いする場合があります。
ゆうちょ銀行 振替口座 00140-8-49389 ホリミネラロジー(カ
三井住友銀行 練馬支店 普通 0943552 ホリミネラロジー(カ
代金引換(郵便)をご希望の場合は注文書の□に×を入れて下さい。
手数料が 350 円かかります。
クレジット決済(PayPal)をご希望の場合は注文書の□に×を入れて下さい。
[email protected] 宛にお手続きをお願い致します。ご請求が必要な場合はお知らせ下さい。
返品について
標本をご覧いただいてお気に召さなかった場合は7日以内に返送をお願い致します。
次号 162 号(2015 年度第3号)は10月に発行予定です。
ホリミネラロジー株式会社
〒176-0013 東京都練馬区豊玉中 4-13-18
Tel: 03-3993-1418 ・ Fax: 03-3993-1381
Mail: [email protected]
リスト161号 注文用紙
番号
1
2
3
4
名
前
希望品(備考)
大きさ
値段
クリノヘドライト
A
16×9×3cm
\75,000
クリノヘドライト
B
7×5×5cm
\25,000
クリノヘドライト
C
11×10×7cm
\35,000
クリノヘドライト
D
14×8×5cm
\45,000
ハージストン石
A
5cm前後
\5,000
ハージストン石
B1
7×8×6cm
\10,000
ハージストン石
B2
8×6×5cm
\10,000
ハージストン石
B3
11×4×4cm
\10,000
ハージストン石
B4
9×6×5cm
\15,000
ハージストン石
B5
10×8×6cm
\15,000
ハージストン石
B6
13×11×7cm
\15,000
ハージストン石
B7
10×6×6cm
\15,000
ハージストン石
B8
7×6×4cm
\20,000
ハージストン石
B9
8×6×5cm
\20,000
ハージストン石
B10
9×8×5cm
\20,000
ハージストン石
B11
12×7×4cm
\20,000
ハージストン石
B12
10×9×7cm
\25,000
ハージストン石
B13
13×7×7cm
\25,000
バスタム石
A
5cm前後
\2,000
バスタム石
B
13×11×7cm
\15,000
バスタム石
C
14×10×8cm
\20,000
フランクリン鉄鉱
珪亜鉛鉱
A
5cm前後
\3,000
フランクリン鉄鉱
珪亜鉛鉱
B
14×8×7cm
\10,000
2cm前後
\3,000
5
テフロ石
6
クトナホラ石
A
2cm
\1,500
クトナホラ石
B
11×6×6cm
\35,000
7
スヴァブ石
3cm前後
\3,000
8
ヘンドリックス雲母
4cm前後
\3,000
9
緑れん石-(Pb)
1cm前後
\3,000
代引き希望はチェック
→
□
ペイパル希望はチェック
氏名
Tel
住所〒
→
□
コード(宛名右下の番号)
E-Mail
.
.
.
Fly UP