...

第1 本件住民監査請求の趣旨 本件住民監査請求については

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

第1 本件住民監査請求の趣旨 本件住民監査請求については
第1
本件住民監査請求の趣旨
本件住民監査請求については、請求人らから提出された平成21年3月1
1日付けの措置請求書及び事実証明書、同年4月6日に提出された陳述の要
旨を記載した住民監査請求陳述資料及び新たな証拠の提出並びに同月7日の
陳述の要旨を記載した住民監査請求陳述資料及び請求人らが行った陳述等を
総合して、次のとおりの主張と解した。
1 (株)長久手温泉の経営内容
(株)長久手温泉は、長久手町が60%出資の資本金1億円の第3セクタ
ー会社(平成14年4月26日設立。所在地、愛知郡長久手町大字前熊字下
田170)で、社長は町長である。
(株)長久手温泉は、町が建設し平成14年12月にオープンした「福祉
の家」内の、温泉交流施設(ござらっせ)の管理運営委託業務を受託、平成
18年度からは指定管理者として管理している。また、福祉の家のレストラ
ン、売店および、温泉交流施設内のマッサージ室、美容室、さつき亭の5カ
所を行政財産の目的外使用許可をとり、これらの経営を行ってきた。さらに
平成19年4月にオープンした田園バレー交流施設(あぐりん村)の、指定
管理者となっている。
同温泉施設の年間利用者は約51万人、売上高は5億円以上であり、温浴
施設として、東京都下の3施設(東京ドーム天然温泉ほか)に次ぐ全国で第
4番目の高い利用状況になっている。
2 「福祉の家」建設費等費用について
「福祉の家」は町が、土地代4億6千万円、建物等27億円余り、合計約
32億円かけて建設したものである。このほか温泉掘削に約2億円かけてい
る。
また建物の周囲にある約2万㎡の駐車場(500台余り分)は、そのほと
んどを開館時に、一部はその後に町が整備したものである(当初は借地で)。
用地の購入に11億2500万円、駐車場整備等に約4億円、合計約15億
円を費やしている。
「福祉の家」は町が町民の税金を使い、総額約50億円近くかけてつくっ
たものである。
3 駐車場の無償使用の状況
(株)長久手温泉は「福祉の家」の大規模な駐車場を、年間51万人の温
泉利用者やあぐりん村来場者の駐車場として使用している。町は行政財産で
ある福祉の家駐車場の使用について、それを認める法的根拠なく、無償で使
用させている。
(株)長久手温泉の経営において大規模駐車場は不可欠であり、
(株)長久手温泉はそのパンフレットに「無料大駐車場完備」と明記してい
る。そこに係る経費として(株)長久手温泉は駐車場の費用は計上せず、町
に対し使用料の支払いは一切行われていない。
4 建物施設の無償使用の状況
町は、
(株)長久手温泉との当初の管理委託契約の中に使用料の規定を定め
ず、平成18年度からの「指定管理者による管理に関する協定」の中にも施
設の使用料を定めないまま、建物施設を無償で使用させてきた。
(株)長久手
温泉は当初から連続6期黒字の経営である。にもかかわらず、町は(株)長
久手温泉に対して、温泉施設の使用料を経費として計上し、町に支払わせる
ことをしていない。
なお、
「福祉の家」建物全面積7869.63㎡のうち(株)長久手温泉の
指定管理部分の面積は議会答弁によれば2870.69㎡である。
5 「福祉の家」施設利用者の状況
「福祉の家」には「温泉交流施設」
(長久手温泉)部分以外に、社会福祉協
議会の事務所やデイサービス施設、歩行浴施設、その他福祉施設、集会室な
どがあるが、利用者数を比べると平成19年度で、歩行浴室約1万2000
人、高齢者生涯学習と長生学園で約2800人であり、その他を含めても、
長久手温泉の利用者51万5900人には遠く及ばない。また長久手温泉利
用者のうち町民の割合は13%程度であり、これは1日平均約187人とな
り町民全体の0、4%に過ぎない。利用者の9割近くが町外の人で、長久手
温泉が広く町民の福祉に供されているとはいえない。
6 温泉施設の料金設定
(株)長久手温泉の料金は、長久手町福祉の家条例(第14条)に定めら
れた範囲内で定めるものとされている。
おとな1回の料金は、町外者は550円(入湯税込みで700円)、町内在住
者は400円(入湯税込みで550円)である。本町周辺の民間のスーパー
銭湯(一部温泉)の料金は、390円から600円ほどの間であり、長久手
温泉が特に低料金であるとはいえない。
7 決算状況
(株)長久手温泉の決算状況は、毎年黒字であり、平成19年度の会社の
利益剰余金は8330万円に上る。売上高は18年度5億464万円、あぐ
りん村の経営を開始した19年度は8億2275万円(温泉部門は5億13
0万円)である。
温泉の利用料等の収入はすべて会社の収入とし、人件費、光熱水費等経費
はそこからまかなわれている。株式配当は、16、17、18年度に各30
0万円が町に支払われた。19年度はなく、20年度は180万円である。
なお温泉入場料には、おとな一人150円の入湯税が含まれており、これ
については、(株)長久手温泉が預かり毎月まとめて町に納入されている。
8 修繕費の負担と「修繕引当金」の額
(株)長久手温泉決算の貸借対照表には「修繕引当金」の項目があり1億
2000万円が計上されている。
修繕費の負担について、当初町と(株)長久手温泉との契約では、施設の
増改築及び大規模な修繕に要する経費は町の負担とし、会社は施設の維持管
理及び応急的修理に要する費用を町と協議し負担するものとされていた。ま
た平成18年度以降の「指定管理者による管理に関する協定」においても、
会社は「温泉交流施設の管理に係る財産の修繕費用のうち事業活動に帰すべ
き修繕の費用を負担する」とあり、具体的には風呂の滑り止めマットの取り
付けやロッカー、天井の修理などである。会社の負担によるものは軽微また
は小規模な修繕である。
にもかかわらず、2期目の平成15年度以降、「修繕引当金」が計上され、
年々増額され、平成19年度決算においては1億2000万円と多額である。
実際に修理、保守関係として毎年かかった費用は会社の維持管理経費として
あげられている。
上記のような町との負担取り決めにも関わらず、計上された1億2000
万円もの修繕引当金は利益剰余金とみなされて当然である。
9 怠る事実と違法性
(1) 法令の規定
本件怠る事実の違法性の根拠として該当する法令は下記のようである。
◆地方自治法
<第二条>
14 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増
進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければ
ならない。
16 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。
(行政財産の管理及び処分)<第二百三十八条の四>
行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸し付
け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又は
これに私権を設定することができない。
6 第一項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許
可することができる。
9 第七項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若
しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する
行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許
可を取り消すことができる。
(使用料)<第二百二十五条>
普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受け
てする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収すること
ができる。
◆地方財政法
(予算の執行等)<第四条2>
地方公共団体の収入は、適実且つ厳正に、これを確保しなければならない。
(2) 駐車場の使用料について
ア 怠る事実
町は、用地購入と整備費で15億円以上かけ広大な駐車場をつくり、
そのかなりの部分を(株)長久手温泉に適切な処置なしに使用させてい
る。
(株)長久手温泉の温泉およびあぐりん村の経営にはこの駐車場が不
可欠であり、また広大な駐車場があることで(株)長久手温泉は大きな
利益をあげている。しかし駐車場は、指定管理指定を受けている「温泉
交流施設」外であり、行政財産である駐車場の使用許可もなく、一法人
である(株)長久手温泉に使用させている。使用させる根拠を明確にし、
(株)長久手温泉から駐車場使用料を徴収すべきところ、これを怠って
おり、財産の管理を怠る事実および公金の賦課、徴収を怠る事実に該当
する。
イ 違法性
上記怠る事実として、
(株)長久手温泉に根拠なく使用させていること
は、職員に許された裁量を著しく逸脱しており、地方自治法第二百三十
八条の四に反するものである。また、
(株)長久手温泉から駐車場使用料
を徴収せず無償で使用させ続けている点においても職員に許された裁量
を著しく逸脱しており、地方自治法第二条第14項及び第16項、第二
百二十五条、および地方財政法第4条2に反するものである。
(3) 施設の使用料について
ア 怠る事実
町は、町が多大な費用をかけて建設した「福祉の家」内の「温泉交流
施設」での温泉経営により、
(株)長久手温泉に大きな利益をあげさせな
がら、
「指定管理者による管理に関する協定」の中に施設の使用料を盛り
込まず、行政財産を無償で会社に使用させ続けていることは、著しく町
民の利益を損なうものであり、これは財産の管理を怠る事実および公金
の賦課、徴収を怠る事実に該当する。
イ
違法性
上記怠る事実として、多大な費用をかけて建設した町施設を、
(株)長
久手温泉に大きな利益をあげさせながらも無償で使用させ続けているこ
とは、職員に許された裁量を著しく逸脱しており、地方自治法第二条第
14項及び第16項、第二百二十五条、および地方財政法第4条2に反
するものである。
10 町の損害
(1) 駐車場の使用料について
「福祉の家」来場者と比べ(株)長久手温泉の営業部分の利用者数は圧
倒的に多く、駐車場面積を案分して少なくとも2/3は(株)長久手温泉
の駐車場使用分である。用地購入前の平成16年に町が地権者に支払った
賃借料をもとにその使用料を算定すると、年間697万円である。財産の
管理を怠る事実を原因として、運営開始から全期間6年4ヶ月分の使用料
4414万円の不徴収が町の損害である。
(2) 施設の使用料について
(株)長久手温泉が温泉管理業務を行う指定管理部分の総面積は287
0.69㎡である。現在本町で目的外使用の建物使用料(使用料及び手数
料条例第3条)は、420円/㎡・月であり、最低限この単価で算定する
と年1446万円となる。財産の管理を怠る事実を原因として、運営開始
から全期間6年4ヶ月分の使用料9162万円の不徴収が、町の損害であ
る。
(3) 損害総額
以上合計、1億3576万円が町の損害である。
11 監査委員に求める措置
よって請求人は、監査委員が町長に対して、次の措置を取ることを請求す
る。
(1) 町が、
(株)長久手温泉に行政財産の無償使用をさせることは、町の財産
の管理を怠る違法および公金の賦課、徴収を怠る違法があり、当該違法を
改めるよう勧告すること。
(2) 施設の使用料9162万円、駐車場の使用料4414万円、合計1憶3
576万円の町の損害につき、不当利得をしている(株)長久手温泉が年
5%の金利をつけて町に支払う、あるいは町長や関係職員が町に同額を損
害賠償するよう勧告すること。
第2 要件審査
監査の実施に当たり、本件住民監査請求が地方自治法(以下「法」という。)
第242条の要件に適合していると判断したので、次のとおり監査を実施し
た。
1 監査対象事項
長久手町(以下「町」という。)が株式会社長久手温泉(以下「㈱温泉」と
いう。)に行政財産の無償使用をさせることは町の財産の管理を怠る事実及び
公金の徴収を怠る事実であって法第2条第14項及び第16項、法第225
条、法第238条の4第6項、第7項及び第9項並びに地方財政法第4条第
2項に反しているのかどうかを監査対象とした。
2 監査対象部課
保健福祉部福祉課
第3 監査の結果
1 事実の確認
(1) ㈱温泉は、平成14年4月26日に資本金1億円で第3セクターの会社
として設立しており、町がその60%を出資している。社長は、長久手町
長である。
平成14年12月から平成17年度まで長久手町福祉の家(以下「福祉
の家」という。)の温泉交流施設(以下「温泉施設」という。)の管理運営
委託業務を受託しており、平成18年度からは、法第244条の2第3項
の規定に基づき福祉の家温泉施設の指定管理者となっている。また、福祉
の家内にあるレストラン、売店、さつき亭、マッサージ室及び美容室の5
か所を行政財産の目的外使用許可を受けて経営してきた。平成21年度か
らは、さつき亭、マッサージ室及び美容室は指定管理区域となっている。
平成19年4月にオープンした田園バレー交流施設(あぐりん村)の指
定管理者にもなっている。
(2) 福祉の家は、総額50億円近くをかけて建設している。
(3) 入湯税について、地方税法第701条において、「鉱泉浴場所在の市町
村は、環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設及び消防施設その他消防活動
に必要な施設の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む。)に要す
る費用に充てるため、鉱泉浴場における入場者に対し、入場客に入湯税を
課するものとする。」と規定している。
(4) 福祉の家駐車場は、年間約51万人の温泉施設利用者やあぐりん村来場
者も駐車場として利用している。
㈱温泉のパンフレットに「無料大駐車場」と記載されている。㈱温泉が、
駐車場の経費を計上して町に支払いをしたことはない。
(5) 福祉の家総面積7869.63㎡のうち2870.69㎡を㈱温泉は指
定管理者としての指定を受けている。
管理委託契約及び指定管理者による管理に関する協定において使用料
の規定を設けていない。
(6) 福祉の家には、温泉施設のほかにデイサービスセンター等がある。その
利用者として、平成19年度において、歩行浴室の利用者は、約1万20
00人、高齢者生涯学習及び長生学園の利用者は、約2800人である。
温泉施設利用者のうち町民の割合は約13%である。
(7) 温泉施設の利用について、長久手町福祉の家条例(平成14年長久手町
条例第24号。以下「条例」という。)第14条第1項から第3項までに
おいて規定されており、おとな1回の料金として町外者550円、町内在
住者400円とされている。
(8) ㈱温泉の決算状況として、平成19年度の利益剰余金として約8330
万円である。売上高として、平成18年度は約5億464万円、平成19
年度は約8億2275万円(温泉部門は約5億130万円)である。
温泉施設の利用料収入は条例第14条第3項の規定により㈱温泉の収
入となっている。人件費等については、その中からまかなわれている。
また、入湯税としておとな1人当たり150円が課せられているが、こ
れについては、毎月㈱温泉がまとめて町に対して納入している。
(9) ㈱温泉の平成20年3月31日現在の貸借対照表において、修繕引当金
の項目があり、1億2000万円が計上されている。
修繕に要する費用として、長久手町福祉の家温泉交流施設管理委託契約
書第5条第1項において、町は「施設の増改築及び大規模な修繕に要する
費用のうち長久手町が必要と認める金額を負担するもの」としており、同
条第2項において、㈱温泉は「施設の維持管理及び応急的修理に要する経
費を協議して定め、負担するものとする」としている。また、長久手町福
祉の家温泉交流施設の管理に関する協定(以下「協定」という。)第5条
第3項において、㈱温泉は「温泉交流施設の管理に係る財産の修繕費用の
うち、事業活動に帰すべき修繕にかかる費用を負担するものとする。」と
されている。
平成15年度以降において修繕引当金が計上されている。
2 判断
以上認定した事実に基づき、請求人らの主張を踏まえ判断する。
(1) 請求人らは、福祉の家駐車場使用について、町が15億円以上をかけて
整備した福祉の家の駐車場のかなりの部分を㈱温泉に適切な処置なしに
使用させており、当該行為は、職員に許された裁量を著しく逸脱しており、
法第238条の4に反するものであり、財産の管理を怠る事実及び公金の
賦課、徴収を怠る事実に該当する。また、現在において無償使用させ続け
ている点においても職員に許された裁量を著しく逸脱しており、法第2条
第14項及び第16項、法第225条並びに地方財政法第4条第2項に反
するものであり、無償使用をやめさせるよう勧告し、その損害相応額につ
いて賠償するよう勧告するよう主張している。
そこで、上記の違法性について判断することとする。
福祉の家は、法第244条第1項に規定する公の施設であり、法第24
4条の2第1項の規定によりその設置及び管理に関する事項につき条例
を定めている。
また、条例第2条において、「町民の福祉の向上並びに健康の維持及び
増進を図るとともに、町内外の広域的な交流を促進するため、福祉の家を
設置する。」と規定されており、町内に温泉施設があることで、町民はい
つでも気軽に温泉を楽しみ、温泉を通じた交流、健康増進などに貢献して
いる。福祉の家の駐車場は、町内の他の公の施設(長久手町文化の家、長
久手町中央図書館等)の駐車場と同様に、福祉の家の施設利用者が公の施
設の一部として無料で利用している。よって、福祉の家の駐車場は、法及
び条例に規定する公の施設であると解される。このため、㈱温泉には、駐
車場に対する直接的な利用権限があるものではなく、請求人らが主張する
ように㈱温泉がこれにより利益を得ていたとしてもそれは反射的な利益
であると言える。
請求人らは、㈱温泉が福祉の家の駐車場を無償で使用しているのは、法
第225条に違反していると主張しているが、同条は、「法第238条の
4第7項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の
利用について使用料を徴収できる。」と規定しているものである。そして、
町は、福祉の家駐車場を直接管理し利用に供しており、㈱温泉に法第23
8条の4第7項による使用の許可をしている事実はなく、また㈱温泉に同
駐車場を利用させていることもないので、請求人らの主張は理由がない。
(2) 請求人らは、町が多大な費用をかけて建設した福祉の家内の温泉施設で
の温泉経営により、㈱温泉に大きな利益をあげさせながら、協定の中に施
設の使用料を盛り込まず、行政財産を無償で㈱温泉に使用させ続けている
ことは、著しく町民の利益を損なうものであり、財産の管理を怠る事実及
び公金の賦課、徴収を怠る事実に該当する。また、現在において無償使用
させ続けている点においても職員に許された裁量を著しく逸脱しており、
法第2条第14項及び第16項、法第225条並びに地方財政法第4条第
2項に反するものであり、無償使用をやめさせるよう勧告し、その損害相
応額について賠償するよう勧告するよう主張している。
そこで、上記の違法性について判断することとする。
使用料は、行政財産の目的外使用又は公の施設の利用に対し、その反対
給付として徴収される負担である。そして、法第225条によれば、使用
料を徴収することができるのは、行政財産の用途又は目的を妨げない限度
において使用を許可した場合と公の施設を利用させる場合とである。
ところで、町は、温泉施設につき、㈱温泉に対し、平成14年12月か
ら平成17年度までは管理委託契約により、平成18年度からは法第24
4条の2第3項の規定に基づく指定管理者に指定することにより、その管
理を行わせているものであって、㈱温泉に対して温泉施設の使用許可を与
えたり、これを利用させたりしている事実はない。よって、町が㈱温泉か
ら使用料を徴収する法的根拠は存しない。
この点において、請求人らの「行政財産を無償で㈱温泉に使用させ続け
ている」との主張は事実に反し、かつ、使用料を徴収するべきとの主張も
法的根拠を欠く主張といわざるを得ない。
なお、町は㈱温泉に温泉施設の利用料金を㈱温泉の収入として収受させ
ているが、これは法第244条の2第8項に基づくものであり、この規定
は、公の施設の管理運営にあたっている指定管理者の自立的な経営努力を
発揮しやすく、また地方公共団体及び指定管理者の会計事務の効率化を図
るために導入されたものであり、かつ、指定管理者による経費の縮減を促
進するインセンティブ効果が働き、もって住民サービスの向上が期待でき
るものである。このような法第244条の2第8項の趣旨に鑑みて、温泉
施設の利用料金を㈱温泉に収益として収受させることにしたことは、町長
の裁量を著しく逸脱したものではなく、さらにこの町長の判断は、長久手
町福祉の家条例第14条第3項として議会の議決を得ているものである。
そして、現に㈱温泉は、専門的なノウハウを活かして温泉施設を管理運
営し、より一層向上したサービスを住民が享受することを可能にしており、
また、さまざまな事業展開により、町外からも多くの利用者を集めている。
よって、請求人らの主張は理由がない。
3 結論
以上述べてきたことから、本件住民監査請求に係る請求人らの主張には理
由がないものと認められるので、本件住民監査請求は棄却する。
Fly UP