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地盤環境学 ∼第8週目 3. 地盤の環境災害・公害 (1)

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地盤環境学 ∼第8週目 3. 地盤の環境災害・公害 (1)
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
地盤環境学
∼第8週目 3. 地盤の環境災害・公害 (1)∼
佐賀大学低平地沿岸海域研究センター 日野剛徳
1
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (1)
■地盤にまつわる災害・公害は、古くは首都圏や大阪の地盤沈下、足尾鉱毒
事件による土の汚染から、各地で繰り返される地すべり、圧気シールド全盛期
の酸欠事故、地下工事におけるメタンガス爆発、最近の廃棄物問題など、時期
や地域により形態は異なるがかなりの頻度に及ぶ。
■これらの災害や公害の予知あるいは防止は地盤環境学に課せられる最も
重要な課題といえる。
■多岐にわたるこれらの課題に答えるためには、その問題発生のメカニズム
の科学的解明が不可欠であり、同時に社会的側面にも踏み込んだ究明が
必要である。
■したがって、問題解決には、他分野の専門家と共同してこれらの災害・公害
の予知、予防対策を実施することが不可欠であるが、地盤工学側の技術者に
も従来の土質工学の分野のみならず地盤環境学的な知識、素養が必要とされ
る。
2
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (2)
■シールド(工法)...
シールドトンネル (shielded tunnel)
は、シールド工法によって掘削された
円形の断面を持つトンネルである。
歴史的には手作業でも掘られたが、
現代ではシールドマシンで掘られる。
参考資料 シールドトンネル
(ウィキペディアフリー百科事典)
3
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (3)
■トンネル本体が分割されたブロック
(セグメント)を組み上げることによって
構築される。
軟弱地盤でも掘り進むことができ、
またセグメントを工場で大量製作する
ことによりコスト削減が図れ、技術も
進歩してきているため、最近の地下鉄、
道路(主に都市内)、共同溝、下水道、
地下水路、地下河川などのトンネル
工事ではシールドトンネルが多く採用
されている。
参考資料 シールドトンネル
(ウィキペディアフリー百科事典)
4
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (4)
■推進工法(小口径管推進工法)...
小口径管推進工法とは、地下に
トンネル状に掘削した穴に管を通して
開削せずに管路を繋げる非開削工法
である。
管の直径700 mm以下のものを特に
「小口径管推進工法」と呼び、主に
下水道推進事業にて使用される。
参考資料 推進工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
5
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (5)
■掘削予定の管路に対し、垂直方向に
複数の4m以上の深さの立坑(たてこう、
発進立坑)を掘削し、立坑を直線で結ぶ
形で推進掘削して立坑に細切れにした
管路を搬入し掘削した穴へ挿入、接続
することで開削せずに管路を設置する
ことが可能となる。
参考資料 推進工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
6
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (6)
■利点
開削しないので開削工法に比べて
騒音・振動・交通渋滞などの諸問題を
解消出来る他、作業現場の占有地を
狭く出来、また幅広い土質に対応
出来る。
■難点
精密な測量計測が求められる。
参考資料 推進工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
7
平成22年度前学期 地盤環境学
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0. 地盤の環境災害・公害 (7)
■新オーストリアトンネル工法...
New Austrian Tunnelling Method,
NATM(ナトム))は、主に山岳部に
おけるトンネル工法のひとつ。
掘削した部分を素早く吹き付け
コンクリートで固め、ロックボルト
(岩盤とコンクリートとを固定する特殊な
ボルト)を岩盤奥深くにまで打ち込む
ことにより、地山自体の保持力を利用
してトンネルを保持する理論および
実際の工法である。
参考資料 NATM工法(http://www.hokume.co.jp/03/
03/natm.htm)
新オーストリアトンネル工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
8
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
0. 地盤の環境災害・公害 (8)
■NATMは長大山岳トンネルが多数
建設されているオーストリアにおいて、
1960年代に同国のトンネル技術者で
ある、ラディスラウス・フォン・
ラブセビッツ、レオポルド・ミュラー、
フランツ・パッヒャーの3人により提唱
された。
参考資料 NATM工法(http://www.hokume.co.jp/03/
03/natm.htm)
新オーストリアトンネル工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
9
平成22年度前学期 地盤環境学
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0. 地盤の環境災害・公害 (9)
■日本では準大手ゼネコンの一つ、
熊谷組によって導入され1970年代より
施工されるようになった。
当初は固い岩盤を持つ山岳での
トンネル施工にもっぱら用いられていた
が、現在では多種の関連工法と併せて
軟弱地盤や都市部においても用い
られるようになっている。
参考資料 NATM工法(http://www.hokume.co.jp/03/
03/natm.htm)
新オーストリアトンネル工法
(ウィキペディアフリー百科事典)
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平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
■地盤沈下は要因により:
①建設工事など地盤を直接改変することによるもの;
②地下水汲上げや交通荷重など外力作用によるもの;
③廃棄物埋立など地盤を構成する物質(例えばごみ)自体の収縮による
もの、
の三つに分類できる。
■地盤沈下は地盤災害の古典的な例の一つであり、これらの沈下を予測し
被害を最小限にとどめることは地盤工学者の債務である。
■地盤の環境災害・公害では、それらの地盤沈下の特徴と実例を学んでいく。
11
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (1)
((1)地盤の変形 (1))
図−2.5 建設工事による周辺地盤の変形の傾向(教科書72ページ)
12
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (2)
((1)地盤の変形 (2))
■建設工事は地盤に対し応力変化を
与えるのが常である。
■盛土のように応力増加の場合もあれ
ば、掘削のように応力減少もある。
■地盤要素として圧縮応力(体積を変え
る)とせん断応力(形を変える)の変化が、
結果として図−2.6のように沈下と水平
変位を生じさせる。
【Note!】また、図(d)のように地下水位を低下させた場合も有効応力増の作用
となり沈下を生じさせる。
13
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (3)
((1)地盤の変形 (3))
■前述のような変形の予測は調査・設
計の段階で極力精確を期す努力がなさ
れるが、地盤は複雑なものであるため
実状と相違することも多い。
■上記の相違の度合いを施工中の計
測で判断し、場合によっては施工法を
変更するなど対策を講じる上にも変形
の予測は大切なものである。
14
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (4)
((1)地盤の変形 (4))
図−2.6 変状発生の限界(教科書72ページ)
15
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (5)
((2)地盤変形の計測 (1))
表−2.6 沈下の測定法(教科書73ページ)
16
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (6)
((2)地盤変形の計測 (2))
表−2.7 水平変位の測定法(教科書74ページ)
17
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (7)
((2)地盤変形の計測 (3))
図−2.7 沈下計および変位計(教科書74ページ)
18
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (8)
((2)地盤変形の計測 (4))
図−2. 8 二重管式基準鉄管の構造(教科書75ページ)
19
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (9)
((2)地盤変形の計測 (5))
■図−2.8は広域的な地盤沈下の測定
に用いられるもので、非常に深いものも
存在する(新潟の例で約1200m)。
■中心の基準管は深部の堅固な層に
貫入され、外管は摩擦を遮断するため
のもので、セントライザーは座屈変形に
対処する構造である。
■水位も測ることができる。
20
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (10)
((2)地盤変形の計測 (6))
21
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (11)
((2)地盤変形の計測 (7))
22
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (12)
((2)地盤変形の計測 (8))
23
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (13)
((2)地盤変形の計測 (9))
24
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (14)
図−3.1 盛土の沈下形状と側方への影響(教科書102ページ)
25
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (15)
■盛土工の場合、道路盛土の沈下
形状と側方への影響を経験的にま
とめたものとして、図−3.1のような
結果が示されている。
■図−3.1より、盛土周辺での沈下や
水平変位の傾向をほぼ予測できる。
26
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (16)
図−3.2 掘削次数・沈下・水平変位(教科書103ページ)
27
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (17)
■図−3.2は掘削工に伴う地盤沈下の
例である。
■この現場ではSMW (Soil Mixing Wall)
土留め杭が用いられ、面積73m×48m、
深さ13.5mの掘削が行われた。
■沈下量Sと土留め変位量δがともに
進んでいくのがよくわかる。
28
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (18)
図−3.3 各シールド工法による地表面最大沈下量(教科書103ページ)
29
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.1 建設工事に伴う地盤変形 (19)
■図−3.3はシールド工における地表面
沈下の測定結果をまとめたもので、深さ
と径の比(Z/D)と地表面沈下量との関係
が示されている。
■Z/Dが2前後のときに地表面の沈下量
が大きい傾向がみられ、特にオープン型
シールドでは20cm以上にも及ぶ著しい
地表面の沈下が生じている例もある。
■建設工事を行う際には、このような
地盤の改変による影響を考慮しつつ
計画・設計・施工がなされ、対策が
講じられなければならない。
30
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (1)
31
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (2)
福富町役場
基礎の抜け上がりのためにでき
た空間を駐車場、資料室等に使
用している。
もともと地下に埋まっていたところ
白石町・有明町
地盤沈下により橋の橋脚が傾い
たため、欄干との間に大きな隙間
ができている。
32
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (3)
有明町の道路
地盤沈下により道路の一部が抜
けあがり、舗装面に約10cmの段
差ができた。
段差のために、人や自転車は通行できない
白石町北明水源地
揚水管が抜け上がったため、管
の接続部分が破断した。
今後の抜け上がり対策としてフレ
キシブル管で接続している。
33
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (4)
・佐賀・白石平野は有明海の満潮時よりも低い土地になってしまう。
・佐賀・白石平野の正式名称は「筑紫平野」。
本庄キャンパス
鍋島キャンパス
34
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (5)
・普通でも水が流れにくい土地が、さらに下がったことによる結果。
平成2年度(1990年)の佐賀市中
心部での浸水状況
平成7年度の白石町の浸水状況
水田、道路等が冠水している。
35
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (6)
図−3.4 我が国における代表的累積地盤沈下曲線(教科書104ページ)
36
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (7)
■地下水過剰汲上げに伴う広域的な
地盤沈下は世界の各地でみられるが、
我が国でも関東平野や大阪平野など
で一時期激しい沈下が生じた。
■各地域の沈下曲線と地下水汲上げ
の規制時期をあわせて示したのが
図−3.4である。都市水没・ゼロメートル
地帯もみられた。
37
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (8)
図−3.5 観測井における地下水位と地盤高変動記録(佐賀県白石町)(教科書105ページ)
38
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (9)
■地下水位が周期的に変動する場合、
いわゆる繰返し圧密現象として沈下を
促進することが知られている。
■図−3.5はその一例であり、有明海に
面した佐賀県白石での計測データで
ある。
39
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (10)
図−3.6 水平変位量経時変化(教科書105ページ)
40
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.2 地下水汲上げなどによる地盤沈下 (11)
■図−3.6に示すように、同様の繰返し
圧密現象として工事用車両の振動
繰返しが著しい変形を生じさせた例
もある。
41
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (1)
42
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (2)
43
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (3)
44
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (4)
45
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (5)
46
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (6)
47
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (7)
48
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (8)
図−3.7 大阪市北港でのごみ層の沈下状況(教科書106ページ)
49
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (9)
■廃棄物埋立地盤の沈下傾向の例と
して、図−3.7に大阪市北港での計測
データを示す。
■図−3.7の例では、沈下を原因に
よって区別し、廃棄物の腐食・分解に
よるものが最大であることを示している。
50
平成22年度前学期 地盤環境学
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1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (10)
図−3.8 ごみ層沈下量とごみ層内平均地中温度(教科書107ページ)
51
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
1. 地盤沈下
1.3 廃棄物埋立地盤の沈下 (11)
■沈下速度と地中温度との関係は
図−3.8のような例がある。
■図−3.8は東京湾の廃棄物処分地の
もので、ごみの分解による発熱が大きい
時期は沈下速度も大きく、分解発熱によ
る温度上昇の有無が安定化の目安の
一つとなることが示されている。
52
平成22年度前学期 地盤環境学
Institute of Lowland and Marine Research, Saga University, JAPAN
2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (1)
■地すべり、がけ崩れ、土石流などの災害をまとめて土砂災害と呼ぶ。
■我が国の地理・地形的条件や気象条件は土砂災害を引き起こしやすい
要因を多数持っており、毎年数多くの被害が発生している。
53
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (2)
図−3.9 自然災害による原因別死別者、行方不明者数(昭和42∼61年)(教科書108ページ)
54
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (3)
■図−3.9は、自然災害による原因別
死者・行方不明者数を示したものである。
■土砂災害によるものの割合は
全体の約6割にも達している。
55
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (4)
図−3.10 土砂災害対策実施状況(教科書108ページ)
56
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (5)
■図−3.10は土砂災害の危険箇所数を
示したもので、近年著しく増加してきた
住宅およびリゾート開発などに伴い危険
箇所も増える傾向にあり、現在では全国
に約16万箇所にも及んでいる。
■図−3.10のうち、すでに整備が済ん
だ箇所は2割程度で、大部分は未整備
状態である(2003年、当教科書第8冊
発行現在)。
■図−3.10の結果に該当する危険箇所
では、今後の大雨や地震によって災害が
発生する可能性が非常に大きいと言わ
ざるを得ない。
57
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (6)
■シラス(白砂、白州)は、九州南部
一帯に厚い地層として分布する細粒
の軽石や火山灰である。
鮮新世から更新世にかけての火山
活動による噴出物であるが、地質学
においてはこのうち特に入戸火砕流
による堆積物を指す。
参考資料 シラス(地質)
(ウィキペディアフリー百科事典)
58
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (7)
参考資料 シラス(地質)
(ウィキペディアフリー百科事典)
■主成分はケイ酸や酸化アルミニウム
などからなる火山ガラスであり、斜長石
や石英なども含まれる。
50-58パーセントの空隙を含み、
有機物はほとんど含まれていない。
比重は1.3程度と軽く、粒子内部にも
多数の微小な気泡が含まれており、
粒子比重も2.30-2.50と軽い。
引っ張り強度は小さく、複雑な粒子
形状を呈しているためインター
ロッキング効果による特殊なせん断
特性を示す。
白色を呈するものが多いが、灰白色、
黄褐色、灰黒色、淡紫色、淡紅色の
ものも見られる。
59
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (8)
■自然の状態では20∼25%の水分を
含み、水分量が増えると著しく強度が
低下する。
比重が低いことと分散性が高いこと
から水に流されやすく、樹木などが
剥がされて地層が露出すると急速に
侵食される傾向があり、急傾斜の深い
谷を形成するガリ侵食を受けやすい。
地下水流に侵食されて地下空洞を
形成することがあり、これが崩落すると
シラスドリーネと呼ばれる穴や窪地が
形成される。
参考資料 シラス(地質)
(ウィキペディアフリー百科事典)
60
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (9)
■シラスからなる急傾斜地は大雨など
によってしばしば崩壊し土石流を
引き起こしていたが、1952年
(昭和27年)に「特殊土壌地帯災害
防除ならびに振興臨時措置法」
(特土法)の対象となり、斜面の崩壊
防止対策が進められるようになった。
参考資料 シラス(地質)
(ウィキペディアフリー百科事典)
61
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (1)土砂災害の現状 (10)
【Note!】地すべり...地すべりとは山地または丘陵の斜面が主として地質
構造上存在する弱い面に沿って運動し滑落する現象で、一般に斜面勾配は
緩く(30°未満)、その規模はおおむね厚さ5m以上、幅40∼50m以上、長さ
50m以上に及び、その発生に最も関与する因子は地下水の増加、斜面の
バランスの悪化、地震などである。
【Note!】がけ崩れ...傾斜角30°以上の急な斜面に起こる表層付近の崩れ
であって、おおむね深さは0.5∼2.5m、土量は1000m3以下が普通である。
崩壊物質は主として表層土と岩よりなり、岩は風化が著しいか、亀裂に富む
ものが多い。
62
平成22年度前学期 地盤環境学
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (1)
■地すべり、がけ崩れの定義からも明らかなように、土砂災害の原因は地形、
地質、降雨、地下水、地震といった自然現象的な要因から各種工事に伴う
人為的な要因まで非常に幅広い。
■上記の中で、特に地質的要因は地すべりときわめて関係が深く、ある
特定の地質にのみ地すべりが発生するとして、地すべりを:
①第三紀層地すべり;
②破砕帯地すべり;
③温泉地すべり、
の三つに分類することもある。
■分類の意味は、第三紀層、破砕帯および温泉の地質が地すべりを起こし
やすい特性を持っているからにほかならないが、この特性には力学的な性質
ばかりでなく化学的な性質が深く関わりあっている。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (2)
図−3.11 吸収膨張による斜面崩壊(教科書110ページ)
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (3)
■化学的な性質の影響に関する
代表的な現象として、膨張性岩石による
強度低下がある。
■例えば図−3.11のような地層構成を
もつ地山で切土工事をした場合、掘削
による応力解放と雨水の浸入などに
よって岩が吸水膨張し、強度が極端に
低下することによって地すべりが発生
する現象である。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (4)
■膨張性岩石の代表的なものに膨張性泥岩(頁岩)、風化蛇紋岩、緑色凝灰
岩、温泉余土などがある。
■上記の各岩は一般には軟岩と呼ばれ、鉱物粒子間の結合力が比較的弱く、
しかも鉱物自体にモンモリロナイト、膨潤性緑泥岩(クロライト)などのいわゆる
膨潤性粘土鉱物を多く含んでいる(水分が加わることによって体積が膨張する
現象を吸水膨張、もしくは膨潤と呼ぶ)。
■ほとんどの粘土鉱物はいくつかの層格子を積み重ねた層構造を有する
結晶である。大部分の粘土鉱物は層間の結合力が弱く、容易に水が入り込む
ことができるため、結晶そのものが膨張する。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (5)
図−3.12 膨潤前後の粘土鉱物の結晶(教科書110ページ)
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (6)
■膨潤性粘土鉱物の中でその性質が
最も著しいナトリウムモンモリロナイト
は、自由膨張の場合には原体積の8∼
10倍になるともいわれている。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (7)
■トンネル支保工などの構造物で膨張圧に対抗しようとすると土圧が発生
することになるが、地すべりや切土斜面の場合には吸水膨張によって地山
の強度が著しく低下することがより大きな問題となる。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (8)
スレーキング現象(第3週目講義ノート参照)
■軟岩のように割れ目が顕著でない岩盤、特に粘土が固まった泥岩系統の
岩盤では水はほとんど流れないが、水に触れると劣化・崩壊するというスレ
ーキング現象を起こす。
■スレーキングは、乾燥した岩塊を水に浸すと、水分が岩塊に浸入して間隙
の空気を圧縮し、これが内部に引張り力を生じることと、水分が吸収されるこ
とで粒子間隔が広がり粒子間結合力が低下することに起因するとされている。
■乾燥状態の後で降雨があると、斜面やトンネルが軟化して不安定な状態
に陥るので注意が必要である。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (9)
写真−3.1 泥岩のスレーキング状態(教科書112ページ)
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (10)
■泥岩におけるスレーキング現象の例
を写真−3.1に示す。
■この例でも明らかなように、初期に
大きな強度を持つ岩塊でもスレーキング
によってばらばらとなり強度を失うという
ことが実際の現場でもよくみられる。
■スレーキングは特に切土斜面の風化
に対する安定性を検討する上で非常に
重要である。
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2. 土砂災害・侵食
2.1 土砂災害 (2)土砂災害と粘土鉱物 (11)
■当初の掘削時にはきわめて安定して
いた岩がその後の日照や降雨による
乾湿繰返しによって泥土化し、すべりを
発生することもしばしばある。
■このようなことが起こるのも岩を構成
する鉱物の中に膨潤性粘土鉱物が多く
含まれているからである。
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (1)
■人類の文明は古代より食糧生産に不可欠な豊かな土とともに発展して
きた。メソポタミア文明しかり、ギリシア文明もまたしかりである。
■ところが、文明の発達による急激な人口の増加が土の持つ生産能力を
超えると、豊かな牧草地や畑地も荒れ地となってしまう。
■植被を失った土はカラカラに乾き、また植物による防風効果もなくなるため
風による侵食を受けやすくなるとともに、降雨時の水による侵食も加速される。
■このようにして豊かな土が失われ、結果として人間生活などの減退が生じて
いく過程を砂漠化と呼ぶ。
■前述の古代文明が衰退していった理由の一つがこの砂漠化であるといわ
れている。
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (2)
【Note!】世界の山地の表土侵食面積は500m3/km2/年(0.5mm/年)で、山地を
含まない陸地の平均侵食速度は50m3/km2/年であるといわれている。しかし、
人間の力が加わるとこの侵食速度は急増する。
【Note!】例えば、我が国の場合には、畑で50∼500m3/km2/年、裸地(農地)で
1500∼2000m3/km2/年と見積もられている。
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (3)
図−3.14 乾燥地域と湿潤地域の水収支(教科書114ページ)
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (4)
■砂漠化を引き起こす表土劣化のもう
一つの機構に塩類集積がある。
■乾燥地域でも排水の悪い粘土質地盤
では、土中の塩類が十分に洗い流され
ず、しかも蒸発量が降水量よりも極めて
多いため、水分の蒸発によって取り残さ
れた塩類が地表に集積し、植物の生育
を妨げる塩類土が生成される。
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (5)
■粘土質地盤では毛細管現象が発達
するため、雨水や地下水の移動に伴い
塩類を溶かし込んだ地下水が地下水面
より数メートルも上方に上げられ、その
位置で水分のみが蒸発するからである。
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (6)
図−3.15 世界の土の劣化図(教科書115ページ)
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2. 土砂災害・侵食
2.2 砂漠化と表土浸食 (7)
■図−3.15はUNEP(国連環境計画)と
ISRIC(国際土壌情報センター)が共同
でまとめた世界表土劣化図である。
■この図によれば、世界の表土劣化が
どの地域でどの程度進行しているかが
一目瞭然であり、今後その防止を行う
うえで貴重な資料となる。
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