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室温強磁性酸化物半導体

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室温強磁性酸化物半導体
The Murata Science Foundation
室温強磁性酸化物半導体
Room Temperature Ferromagnetic Oxide Semiconductor
H26海自43
派遣先 国際会議第13回国際セラミックス会議
(イタリア・モンテカティーニ テルメ)
期 間 平成26年6月11日~平成26年6月15日(5日間)
申請者 東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻 准教授 福 村 知 昭
る筆者の研究の進捗状況について招待講演を
海外における研究活動状況
幾度も行ってきた。この招待講演は、日本発
研究目的
信の我々の研究が半導体スピントロニクスや酸
幅広い分野を網羅したセラミックス分野の
化物エレクトロニクス分野で大きな貢献をして
大きな国際学会である、国際セラミックス会議
いることを国際学会でデモンストレーションす
に参加して、室温強磁性酸化物半導体に関す
るとともに、本研究分野の方向性を世界の研究
る招待講演を行い、これまでの研究成果につ
グループに提示するものである。そして、本研
いて世界に情報発信を行う。また、学会に参
究分野のさらなる発展にも資することができる。
加して、世界第一線の研究成果の情報を得て、
3.発表内容
他国の研究者とも交流を図る。
近年、電荷を制御する半導体エレクトロニク
海外における研究活動報告
スに電子の持つスピンという自由度を加えるこ
1.研究目的
とにより、次世代エレクトロニクスの開発を目
国際会議CIMTEC 2014に含まれる13th Inter-
指すスピントロニクスという研究分野が発展し
national Ceramics Congressにおいて、招待講演
ている。そのなかでも革新的な次世代エレクト
を発表する。講演タイトルは「Room Tempera-
ロニクス技術と期待されているのは半導体スピ
ture Ferromagnetic Oxide Semiconductor」である。
ントロニクスで、その鍵となる材料は強磁性を
示す半導体(強磁性半導体)である。この材料
2.発表の意義
は、半導体に1∼10%の磁性原子をドープした
本国際会議では、セラミックスの様々な分
材料で、従来材料では室温で強磁性が消失し
野の招待講演が催される。この会議で招待講
てしまうため室温動作デバイスの実現は不可能
演を行うことは、当該分野がセラミックスの一
であった。申請者らは、ワイドギャップを持つ
分野として認知されていることを示すため、招
透明酸化物半導体において、遍歴キャリアと
待講演に呼ばれることは重要である。筆者は、
局在スピンの間に働く強いsp-d交換相互作用
2006年からこの国際会議で、酸化物を用いた
による高温強磁性が実現しうることに着目し、
半導体スピントロニクスという研究分野に関す
酸化物ベースの磁性半導体を世界に先駆けて
─ 965 ─
Annual Report No.28 2014
提唱し、実際に室温でも強磁性を示すCoドー
てきた磁性酸化物半導体の物質開発およびデ
プTiO2の開発に成功した。
バイス実証について述べた。くわえて、最近開
その後、多くのグループから室温強磁性酸
発した、過度な還元状態にある異常原子価を
化物半導体が報告されてきたが、強磁性半導
もつ物質をエピタキシャル薄膜化する新しい薄
体の特長である電界効果で室温強磁性を制
膜作製法についても述べた。
御するという現象がなかなか観測されなかっ
この派遣の研究成果等を発表した
た。しかしながら、申請者は世界で初めて室
著書、論文、報告書の書名・講演題目
温強磁性を電界効果で制御することに成功し、 [著書]
2011年にScience誌に発表して大きなインパク “ M a g n e t i c o x i d e s e m i c o n d u c t o r s : o n t h e h i g h
トを与えることができた。この結果により、強
磁性半導体を用いた半導体スピントロニクスの
室温動作への道を開くことができた。一方で、
化学ドーピングにより、より広くキャリア濃度
をふった試料の強磁性を調べると、試料の磁
性はキャリア濃度が増すにつれ、常磁性絶縁
相、相分離状態を含む強磁性絶縁相、そして
強磁性金属相へと変化することがわかった。こ
れまでの報告では、試料の磁性に関して意見
temperature ferromagnetism in TiO 2- and ZnO- based
compounds”
T. Fukumura, M. Kawasaki
“Functional Metal Oxides: New Science and Novel
Applications”ed. by S. Ogale, M. Blamire, T. Venkatesan,
ISBN 978-3-527-33179-6, Wiley-VCH, Weinheim
(2013), p91-131.
[論文]
1) “Electron carrier-mediated room temperature
ferromagnetism in anatase(Ti,Co)O2”
T. Fukumura, Y. Yamada, K. Ueno, H. T. Yuan,
の一致が見られなかったが、この理由は各グ
H. Shimotani, Y. Iwasa, L. Gu, S. Tsukimoto, Y.
ループで試料のキャリア濃度がまちまちである
Ikuhara, M. Kawasaki
ことに起因することが明らかになった。すなわ
ち、試料の磁性に関して、ようやく統一的な
Spin 2, 1230005-1-10(2012).
2) “Control of ferromagnetism at room temperature
見解を得ることができた。
in(Ti,Co)O 2−δ via chemical doping of electron
申請者らは強磁性酸化物半導体の提唱と試
carriers”
Y. Yamada, T. Fukumura, K. Ueno, M. Kawasaki
料の品質の向上、強磁性の評価法の提案、デ
バイス開発を世界に先んじて行ってきて、10
年以上にわたりこの分野を牽引してきた。そ
Appl. Phys. Lett. 99, 242502-1-3(2011).
3) “Electrically-induced ferromagnetism at room
の結果、有数の理科学系書籍の出版社である
Wiley社の酸化物エレクトロニクスに関する専
門書「Functional Metal Oxides」の1章として磁
性酸化物半導体の章を執筆をした。講演では、
以上の内容をもとに、申請者らがこれまで行っ
─ 966 ─
temperature in cobalt-doped titanium dioxide”
Y. Yamada, K. Ueno, T. Fukumura, H. T. Yuan,
H. Shimotani, Y. Iwasa, L. Gu, S. Tsukimoto, Y.
Ikuhara, M. Kawasaki
Science 332, 1065-1067(2011).
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