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事例7(中学校)
● 実施方式と指導体制
● 少人数指導での指導形態の工夫
● 少人数指導における「評価」の工夫と留意点
基礎データ
○第7次加配教員
○外部指導者
2名
○サポート教員
なし
○少人数指導に活用できる教室数
取組の現状
サポート教員の配
置
A期…クラス別TT
B期・C期…
習熟度別指導
2クラスを3コー
スに
サポート教員は
発展コースを担当
1名
3室
○学級数
12学級
1 取組の概要
本校では、平成14年度から実施されている〈少人数サポート教員の配置〉
に応募し、英語サポート教員が1名配置されることになった。導入に際して
は、目標に準拠した評価の実施により、複数の教員での評価がしやすくなっ
たこと、少人数指導に活用できる教室があり少人数に分けた授業がハード面
でも可能であることなどの状況があった。初年度は、すべてが初めてのこと
であり、手探りの状態であったが、
「少しでも生徒にとって効果のある指導が
できれば」ということで英語科全員で協力して研修や実践を積み重ね、現在
に至っている。
(1)実施方式と指導体制
①本校の教育課程に合わせ、年間をA・B・Cの3期に分けて実施
②英語科教員は、各学年に1名ずつの3名と少人数サポート教員の計4名
A期 《ティームティーチング(以下TT)方式》(4月∼7月)
・3学年とも共通でTTの形態で実施
*1年と2年は、週3時間のうちの2時間
*3年は、週3時間のうちの1時間
B期とC期 《習熟度別指導方式》(9月∼3月)
・教員の配置は、各学年担当+サポート教員のTTで実施
・学年全体や各クラスの現状、雰囲気などを把握するために重要な時期
・各学年とも習熟度に応じた3つのコースを設置
【1コース】・・・基礎的な学習を中心としたコース
【2コース】・・・基礎と応用・発展を学ぶコース
【3コース】・・・応用・発展を多く取り入れるコース
・コース設置の状況
隣り合う2クラスを時間割の同じ時限に組み、2クラスの生徒を3つ
のコースに分け、3教室・3人の教員で授業を行う。
・教員の配置およびローテーションの状況
1 年
2 年
3 年
1コース
2コース
3コース
1年主担当教員
2年主担当教員
3年主担当教員
3年主担当教員
1年主担当教員
2年主担当教員
サポート教員
サポート教員
サポート教員
−68−
学年会議室の活用
コース決定方法
コースごとの人数
コース変更
ALTとのTT
生徒アンケートの
結果
・授業実施教室
該当クラス2教室+各学年の「学年会議室」 計3教室
・生徒のコース決定までの手順
1学期末に希望アンケートを実施し、生徒の希望と習熟の程度を考慮
し、コース選択が適切かどうか英語科全員で話し合う。適切でないと
判断された生徒に対しては、生徒の希望を尊重しながら、学年主担当
教員が助言をし決定する。大部分の生徒が希望どおりのコースになっ
ている。ちなみに今年度、助言によりコース変更した生徒は2∼3名
である。いずれも下のコースから上のコースへの変更であった。
・コースごとの人数配分の例(1クラスの生徒数が35名の場合)
【1コース】…16名程度
【2コース】
26∼28名程度
【3コース】
この数字は、「1コースは個別指導が可能な人数に、なおかつ2・3コ
ースも元クラスより少人数に」の方針で、教科会で検討し決定した。
・コースの入れ替え
2学期期末テスト終了時と学年末テスト終了時に必要に応じて行う。
・ALTの授業との調整
ALTとのTTの時には、もとのクラスで、1クラスは主担当教員と
ALTでTT授業を行う。もう1クラスは2人のJTEによるTT授
業を行う。教材は、計画的に用意しておく。(会話の単元や文法のポ
イント、ゲームなど)
(2)コース別授業に対する生徒アンケートの結果から
(昨年度終了時、1年生対象)
《質問1》「コース別授業はあなたにとってどうでしたか」
《回答》 「よかった」86名 「よくなかった」33名
よかった
33
86
よくなかった
0%
20%
40%
60%
80%
100%
《質問2》「その理由はなぜですか。」
《回答例》「よかった」理由
・自分に合った進み方で、分からないところを聞きながら学習
できたから。
・人数が少なかったので、自由に発表できた。
・他のクラスの人といっしょに勉強できてよかった。
「よくなかった」理由
・他のコースと進み方が違うので、心配だった。
・途中でコースが変わったので、最初ついていくのが大変だった。
・同じことを何回もやるので、もっと先の勉強がやりたかった。
・クラスでの授業の方がやりやすかった。
−69−
2 少人数指導での指導形態の工夫
コース別の授業の
(1)基本的な授業の流れ(例)
1コース(基礎)
流れ
2コース(基礎・応用) 3コース(応用・発展)
Greetings(あいさつ)
導 This Month's Song(今月の歌)
入 Spelling Quiz(月ごとのスペリングクイズの練習)
Q&A Drills(ペアでの会話練習)
復 基本文の復習
基本文の復習
単語テスト
習 教科書の音読
教科書の音読
教科書の音読・Q&A
導入の後はそれぞ
れのレベルに応じ
①新出単語の確認意味 ①基本文の説明と書き ①予習の確認ノート点
本
・発音などをカードで
て
確認練習
取り
②基本文のドリル
時 ②基本文の説明と書き ③基本文を使った練習
取り
書きかえ問題など
の ③基本文のドリル
②基本文の説明と書き
取り
③基本文のドリル
④ 新 出 単 語 の 確 認 カ ー ④基本文を使った練習
④基本文を使ったコミ
学
検・発表など
ュニケーション
ドによる練習
⑤ 本 文 の 内 容 確 認 TF,
Q&Aなど
⑤本文の読み練習
⑤ 本 文 の 内 容 確 認 TF,
Q&Aなど
⑥作文などの練習問題
習 ⑥ 内 容 の 確 認 TF,Q&A ノ ⑥ノートの点検・ワーク ⑦ リ ス ニ ン グ の 練 習 問
での練習問題など
ートの点検・読みの確
題など
認をする。
ま 本時のまとめと家庭学 本時のまとめと家庭学 本時のまとめと家庭学
と 習 の 指 示 及 び 次 時 の 予 習 の 指 示 及 び 次 時 の 予 習・宿題の提示
め 定
授業の導入は共通
のプリントで
生徒がファイルし
ている3枚のプリ
ント
定
次時の授業の予習指示
教科書の内容に関しては、各コースの生徒の理解の程度に応じて、基本を
繰り返し復習したり、教科書から離れた読み、書き、話し、聞くなどの活動
を取り入れたりなどする。1コースでは、単語の練習の時間を多めにとり、
読みや書き取りの練習などに時間をかけるようにしている。3コースでは、
予習をしてくることが前提で授業を進められるので、プリントなどでの練習
問題やリスニング練習などに取り組む時間が設定できる。
《導入部分で毎時間実施している共通の内容》
①英語の歌(月ごとに1∼2曲)※資料1
最初に聞かせる時は、
「穴埋め」の形で既習語を中心に書き取りをする。
英語の発 音、 リズ ムを身 につけ る効果 的 な方法 と考え られる 。 生徒の 興
味・関心も高い。
②Spelling Quiz(月初めにリストを配布、月末にテストを実施)※資料2
教科書の単語・基本文を文章の形で覚えさせることを目標に、毎時間読
みの練習を行い読む力を付け、月末に書き取りテストを行うことにより、
書く力を付けることをねらいとしている。
③Q&A Drills(ペアで会話の練習を行う)※資料3
コミュニケーション能力の育成を目標に、身近な生活の中で交わされる
会話を中心に、毎時間パートナーを交替しながら練習を行っている。
−70−
※資料1
授業の導入に使う
英語の歌
英語の歌リスト
4月
5月
6月
7月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
毎時間音読と
月例書き取りテス
1年(例)
Hello, Goodbye (The Beatles)
Sing (Carpenters)
Sunday,Monday,Tuesday
Row,Row,Row Your Boat
Bingo
Muffin Man
Do-Re-Mi
Hey Jude (The Beatles)
Ebony & Ivory (Paul McCartney & Stevie Wonder)
Imagine (John Lennon)
Melody Fair (The Bee Gees)
You Are The Sunshine of My Life (Stevie Wonder)
We Wish You a Merry Christmas
Sailing (Rod Stewart)
Are You Sleeping
We Can Work It Out (The Beatles)
Yesterday (The Beatles)
※資料2
Spelling Quiz
トのプリント
ペアで行う会話練
習プリント
※資料3
Q&A Drills
Q&A Drills に
取り組む生徒
−71−
評価について
3
少人数指導における「評価」の工夫と留意点
(1)評価についての考えかた
少人数指導を行うに当たり、学年全体を通して、一貫性のある評価をどの
ようにするのか、が大きな課題である。コース別に授業を行っているとはい
え、同じ教科書、同じ範囲を学習するので、定期テストも全員共通の問題と
なる。また、それぞれの観点にかかわる学習活動をどのように評価するのか、
その判断基準をしっかりと教師どうしが確認しておく必要もある。本校では、
以下のような評価についての役割分担表を作成し、年度当初に共通理解をし
て、評価の妥当性を高めるように努めている。
評価に関しての
共通理解
コミュニケーションへの関 コース担当教員の評価を中心とする。
心・意欲・態度
授業中の観察、プリント 、ノート、自己チェ
ック表などを基に評価する。
表現の能力
「話すこと」「書くこと」
4
つ
の
観 理解の能力
点
学年主担当教員が中心と なり、共通の課題を
作成し、学年主担当教員が全生徒分を採点・評
価する。
(例:スピーチ、暗唱テスト、英作文など)
スペリングクイズ、小テスト、単元ごとのリス
ニングテスト、定期テストでのリスニング問
題、読み取りの問題などを総合して、学年主担
当教員が中心となって評価する。
言語や文化についての
知識・理解
暗唱テスト
そ
の ノートについて
他
→ 資料編P78参照
の
資 定期テスト以外の
料 客観的な評価材料
言語や文化に関する単元 のまとめとして感想
を書かせたり、定期テストに知識や理解につ
いての問題を出題し、学年主担当教員とコー
ス担当教員で評価する。
もとのクラスに戻し、主 担当教員が採点・評
価をし、もう一方のクラ スは、別の課題で、
JTEどうしのTTとする。
ノートの使い方を学年で 統一し、学年主担当
教員が全生徒分を点検する。
普段の授業などや小テス トなどで蓄積してお
く。
(例:週1回、帰りの会 前に行う5分間テス
ト月1回のスペリングク イズ、夏休み明け冬
休み明けスペリングテストなど)
※表を基に評価することを原則とするが、教科会や普段の情報交換の中で評
価規準等について話し合い、担当教員によって大きなばらつきが出ないよう
に配慮する。
評価についての課
題
(2)評価に関する課題
指導形態がいろいろなパターンになる場合があり、指導案の作成やプリン
トの作成・印刷など、事前の準備に追われているというのが現状である。2
学年分の必修、選択教科の準備や授業後のプリントの点検など、やるべきこ
とは数多くある。クラス担任であれば、さらに他の仕事を抱えており、そう
いった現状の中で、どのように評価のための資料を蓄積していくのかが、課
題になっている。
生徒がより伸びていくための、そして、よりよい授業をするための評価で
あることを忘れずに、教科担当全員で、指導方法の改善を含めて検討を重ね
ていきたい。
−72−
4
研究の成果
TTにおいて
習熟度指導におい
て
今後の課題
進度差
定期テストの範囲
差別感の排除
打合せの時間
評価規準
等質少人数指導
「学び合い」
シラバス
教材の共有化
研究のまとめ
(1)研究の成果
【TTにおいて】
・2名の教師による会話が可能なので、導入でのスキットや本文のDialog
において、自然な状況の下で授業が進められる。
・発表やノートの点検など、半分ずつ担当を決めることにより、短時間
で行うことができる。
・学級を2つに分けた指導ができるので、読みや書くことの指導、その
他様々な課題に対する指導が細かくでき、意欲的な態度で取り組む生
徒が多くなった。
・授業内容を理解するのに時間のかかる生徒に対して、個々にかかわり
をもつ時間ができた。
【習熟度別指導において】
・生徒の人数が少ない分、一人一人に目が届きやすい。
・各生徒の発言の機会が増え、授業に参加しているという主体的意識が
高まった。
・授業の焦点が絞りやすくなり、1コースの生徒は基礎・基本を繰り返
すことで、次第に大きな声で読んだり、自由に発言したりする生徒が
増えてきた。また、3コースでは応用を取り入れた内容を楽しみにし
ながら、英語の世界を広げていく生徒がでてきた。
・あきらめずに粘り強く英語学習に取り組もうという生徒が増えた。
(2)今後の課題
【これまでの授業について】
・コース別により、授業の焦点化ができる反面、進度に差がつき、教科
書の内容の進め方や定期テストの範囲設定が課題である。
・基礎コースの生徒に対しては、特に差別感を抱くことのないよう、日
頃からの声掛けや自信をもたせるための指導の工夫など、様々な配慮
が必要と考えられる。
・個に応じたきめ細かな指導の充実のためには、十分な打合せが必要で
あり、その時間の確保が課題となっている。
【これからの授業について】
・指導に生かす評価と評価規準に基づいた評価の工夫をさらに進める必
要がある。
・コース別授業だけにこだわらずに、定期的にもとのクラス別授業に戻
し、授業のねらいや目的に合わせてTTを実施するなど、具体的な工
夫を重ねていきたい。
・効果が期待できるのであれば、習熟度別だけにこだわらずに、等質少
人数指導も視野に入れて、指導法の検討を重ねていきたい。
・教え込むことばかりではなく、生徒たちがお互いに「学び合い」ので
きる雰囲気づくりや授業の構成を考えていきたい。
・中学校3年間で系統だてた指導をしていくために、教科会で指導方法
や指導内容などについて、十分に検討を重ね、シラバスを作成して、
教材やプリントなどの共有化を図っていくことが必要である。
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