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- 86 - 2.3.4 チリ チリについては、ミッション派遣を実施して現地において

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- 86 - 2.3.4 チリ チリについては、ミッション派遣を実施して現地において
農業生産環境対策事業
2.3.4 チリ
チリについては、ミッション派遣を実施して現地において詳細な情報収集を実施し
ているため、ここでは基礎情報の整理を実施し、詳細については次項で示す。
(1)基本情報
チリの位置を以下に示す。東はアンデス山脈を挟んでアルゼンチンに、北はボリビ
アとペルーに、西は大西洋に、それぞれ接している。
(出典)米国 CIA
図 2.3-23
チリの位置
- 86 -
輸入原料安定確保調査等事業
チリの概況を表 2.3-2 に示す。南北に細長い形状をしているため、気候は北部の砂
漠気候から南部の温帯気候まで多彩である。首都サンティアゴは中部に位置しており、
人口 675 万人(国民の約 4 割が居住)を誇る大都市である。
表 2.3-2 チリの概況
項目
説明
国名
Republic of Chile
面積
756,629 km²
人口
※2010 年推計
1,680 万人
首都
Santiago(人口 675 万人(08 年推定))
民族
スペイン系 75%、その他の欧州系 20%、先住民系 5%
公用語
スペイン語
宗教
カトリック(全人口の 88%)
独立
1818 年
気候
北部:砂漠気候、中部:地中海性気候、南部:西岸海洋性気候
通貨
Peso (CLP)
(出典)各種資料を元に作成
チリの政治体制を表 2.3-3 に、歴史を表 2.3-4 に示す。立憲共和制を布いており、
現在の大統領は 2010 年に就任したピニェラ氏である。
表 2.3-3 チリの政治体制
項目
説明
政体
立憲共和制
大統領
Sebastian Piñera Echenique
首相
該当職位無
議会
上下両院制(上院 38 名、下院 120 名)
(出典)各種資料を元に作成
表 2.3-4 チリの歴史
年号
イベント
1818
事実上の独立
1973
クーデターにより、ピノチェット軍事政権誕生
1990
エイルウィン政権成立(民政移管)
2010
ピニェラ政権成立
(出典)各種資料を元に作成
- 87 -
農業生産環境対策事業
チリの経済データを表 2.3-5 と図 2.3-24 に示す。1 人当り GNI は 9,000US ドル程
度に達しており、中進国に分類される。2010 年に、南米から初めて経済協力開発機
構(OECD)に加盟した。
表 2.3-5 チリの経済
2007
1,643
2008
1,708
2009
1,633
4.6
3.7
-1.5
8,755
9,404
8,690
農業
1.7
2.1
ー
工業
1.0
0.8
ー
サービス業
6.7
4.6
ー
経常収支(対 GDP 比%)
4.4
-2.0
ー
インフレ率(%)
4.4
8.7
ー
指標
GDP(億 US ドル)
実質 GDP 成長率(%)
1 人当たり GNI(US ドル)
産業別成長率(%)
(出典)各種資料を元に作成
180
160
名目GDP(10億米ドル)
140
120
100
80
60
40
20
(出典)各種資料を元に作成
図 2.3-24
名目 GDP の推移
- 88 -
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
0
輸入原料安定確保調査等事業
チリの人口の推移を図 2.3-25 に示す。2010 年で約 1,700 万人である。
18
16
14
(
人 12
口
10
)
百
万
人
8
6
4
2
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
0
西暦(年)
(出典)FAO を元に作成
図 2.3-25
人口の推移
チリは、15 の州に区分される。州名を表 2.3-6 に示す。州の位置を(出典)米国 CIA
図 2.3-26 に示す。首都サンティアゴが属する州は、首都州(Region Metropolitana)
と呼ばれる。
表 2.3-6 州名
州名
アリカ・イ・パリナコータ州
タラパカ州
アントファガスタ州
アタカマ州
コキンボ州
バルパライソ州
首都州
オイギンス州
マウレ州
ビオビオ州
ラ・アラウカニア州
ロス・リオス州
ロス・ラゴス州
アイセン州
マガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州
- 89 -
農業生産環境対策事業
(出典)米国 CIA
図 2.3-26
行政単位
- 90 -
輸入原料安定確保調査等事業
チリの年間降水量の分布を図 2.3-27 に示す。
(出典)FAO
図 2.3-27
年間降雨量
- 91 -
農業生産環境対策事業
チリの年間平均気温の分布を図 2.3-28 に示す。
(出典)FAO
図 2.3-28
年間平均気温
- 92 -
輸入原料安定確保調査等事業
(2)資源量
チリにおけるカリ鉱石の埋蔵量は、永らく 1,000 万トンで推移してきたが、2009
年になって一気に 7,000 万トンにまで拡大した。これは、あらたな鉱床等が発見され
たためではなく、あまり情報がないカリ鉱石の埋蔵量について、チリが情報を更新し
たことによる。
1,000 t-K2O
1,000 t-K2O
800
80,000
700
70,000
600
60,000
500
50,000
400
40,000
300
30,000
200
20,000
100
10,000
0
生産量
(左軸)
埋蔵量
(右軸)
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
(出典)USGS “Minerals Information”より作成
図 2.3-29
カリ鉱石の生産量と埋蔵量の推移(K2O 換算)
一方で生産量については、2000~2001 年にかけて大幅に拡大し、それ以降は 35 万
トン/年前後で推移していた。その後、2006 年頃より生産ペースが拡大し、2010 年
は 70 万トン/年程度にまで増加したとみられている。
- 93 -
農業生産環境対策事業
(3)資源行政
チリは鉱山国として知られているが、その発展には外資の参入とそれに必要な法制
度の整備が、重要な鍵を握ってきた。1970 年代以前は、外資が出資する鉱山開発会
社に対し、国が大きな影響力を持っており、更に税制面での環境も整っていなかった。
その結果、同国の鉱業は開放されていないと認識され、なかなか発展しなかった経緯
がある。政府は、チリ銅公社(Corporación del Cobre de Chille:CODELCO)の設立し、
その状況の打開を図ったが、一定の効果はあったものの、公社と政府の癒着が目立つ
などの問題も生じた。
その後、政府は外国資本の参入を活性化させるべく、外国投資法(法令第 600 号)
を施行し、様々な優遇措置を講じた。
当初は思うような効果が得られなかったが、1990
年、17 年ぶりに民主的な政権が誕生すると、鉱業セクターは海外投資の中心となり、
同国の主要産業として国内外に広く知れ渡るようになった。
同国の鉱業に深く係っているのは、鉱業省、チリ環境委員会、厚生労働省、保険省
及び財務省などである。ここでは、鉱業省及びチリ環境委員会について整理する。
①鉱業省
チリの鉱業を所轄しているのは、鉱業省である。同省の最大の役割は、鉱業規制や
対策の立案、奨励、普及そして評価を行い、チリ鉱業の発展の持続可能性を強化する
ことである。また、社会・経済の発展に最大限に貢献し、国際的リーダーシップを確
保することにある。また、その戦略的な目的を以下のように設定している。
z
国内の鉱業の発展に関する持続可能性を促進する
z
国及び鉱業セクターの成長促進のため、官民共同の取り組みを促す
z
小規模鉱山会社を支援する
z
鉱業セクターに対する規制を時代に合わせて改訂する
z
民間企業に対する制度を時代に合わせて改訂する
z
チリの国際的鉱業リーダーシップを確保する
z
財産を効果的かつ効率的に管理する
また、国内地質調査を実施し、各種地質図を作成したり、閉山法(後述)に係る閉
山計画書の審査する役割を担う従属機関として、地質鉱業庁が設置されている。
一方、チリにおける鉱業権は、以下のように定められている。
z
チリでは 1980 年制定された憲法で所有権の保障が強化されており、鉱業権も
所有権の一部として、直接または間接的に保障されている
z
鉱業権(鉱区)の設定や鉱業権者の権利等は鉱業権法に定められている
z
鉱業権設定手続き
¾
試掘権出願書または採掘権出願書を、鉱区所在地の管轄裁判所に提出
¾
裁判所が審査し、判決公表(鉱業官報へ掲載)
¾
鉱区面積に応じて鉱区料を支払う
- 94 -
輸入原料安定確保調査等事業
¾
z
試掘権は 4 年まで、採掘権は無期限
戦略物質
¾
鉱業法では、炭化水素、リチウム、海洋鉱床には鉱業権を与えないとして
いる
ロイヤルティ(鉱業特別税)については、以下のように定められている。
z
2010 年 10 月改正(地震復興予算確保が背景)
z
従前は最大 5%だったが、今後段階的に 14%まで引上げ
なお、同国では閉山法が 90 年代から検討されており、2010 年 3 月にようやく制定
された。同法においては、鉱山開発段階における閉山計画の策定が義務付けられてい
る。また、環境回復のための積立金もまた義務付けられている。
その他、チリの興業に関する最近の動向と課題は以下のとおりである。
z
ビジネス界出身のピニェラ大統領(2010 年 3 月就任)のもと、効率性・投資
効果を目指した変革が行われようとしている。
z
鉱業ロイヤルティ(鉱業特別税)の引き上げが、2010 年 10 月に施行された。
このうち一部が、地震復興に充てられる。これは大規模鉱業事業者に影響を及
ぼすものであり、税率 0.5%~5%だったものが、最大 14%にまで引き上げられ
るものである。
z
2010 年 8~10 月のサンホセ事故を背景にして、鉱山保安体制の見直しが検討
されている。
(監督制度の強化など)
z
リチウム鉱区管理に関する法律(原子力法)改正に向けた検討がなされている。
②チリ環境委員会(CONAMA)
CONAMA は、1994 年に一般環境問題に関する法律第 19300 号によって設立され、
国家及び州に設置されている。すなわち、国の財産を有する法的機関であると同時に、
地域活動を主とした行政機関でもある。
当委員会の主な役割は、大統領への環境対策の提案や環境規制の施行・遵守に関す
る報告、環境影響評価制度の管理、環境基準及び排出基準の管理などとなっている。
また、環境問題に関するコンサルティングといった役割も果たすとされる。
なお、環境影響評価手続きの概要は以下のとおりである。
z
探鉱・生産プラント・道路等、幅広いプロジェクトを対象とする
z
事業者は環境委員会に環境影響評価書(EIA)を提出する
z
環境委員会は 120 日以内に判定(60 日の延長あり)する
z
環境委員会は、必要に応じて EIA の修正を要請することが出来る(修正対応
期間は判定期限に算入されない)
z
市民には意見や苦情の提出機会が与えられている
- 95 -
農業生産環境対策事業
①環境影響評価書提出
②修正要請(①から120日以内)
③修正
事業者
環境
委員会
④判定
(①から120日以内、ただし60日延長可)
⑤官報等に公告
(①から10日以内)
⑥意見提出
(⑤から60日以内) ④判定(写し)
通知
⑦苦情提出
(④から
15日以内)
市民
図 2.3-30
環境影響評価手続きのフロー
- 96 -
⑧回答
(⑦から
30日以内)
輸入原料安定確保調査等事業
(4)投資環境
チリは、南米の中でも政治が安定しており、治安も良いために投資環境には恵まれ
ている、というのが一般的な認識である。
同国に外国から投資する際、前段で紹介した「外国投資法(最高法令 600 号)」
、ま
たは「チリ中央銀行外国為替規則」に従う必要があるが、現実にはほとんどが外資法
に準拠している。同法は、憲法の原則に基づき、海外の投資家に対して国内投資家と
同等の扱いを保証している。海外投資家は、同法を通してチリ政府と契約を締結し、
当契約によってプロジェクトへの投資が承認される。なお、本契約には法的義務が含
まれるため、
調印後にチリ政府によるまたは法的規制の制定による一方的修正は認め
られない。
外資法の特色は、以下のとおりである。
z
z
外資の受け入れは、外国投資委員会が審査(メンバーは以下の通り)
¾
チリ経済・開発・復興大臣
¾
財務大臣
¾
外務大臣
¾
この委員会に代表を持たない分野での投資案件の場合、当該省の大臣
¾
企画・協力大臣
¾
チリ中央銀行頭取
外資は国内資本と同等に扱われる
¾
投資分野の制限がない(金融投資は不可)
¾
外資企業の土地所有に関する制限は基本的にない
z
投資比率の制限がなく、外資 100%も可能
z
投資に占める自己資本の比率を 25%以上とする(融資比率は 75%以下)
z
海外送金
¾
資本の対外送金は、投資から 1 年経過後に可能
¾
ただし 35%の追加税が課税される(資本引上げ時にも適用)
なお、法人税は一般の租税であり、17%である。
- 97 -
農業生産環境対策事業
(5)主要プレーヤー
チリにおけるカリにかかわる主要プレーヤーとしては、同国の大手鉱物資源企業で
ある SQM がある。同社は、チリ北部に位置するカリーチ鉱石(硝酸ナトリウムなど
の鉱物を多く含む粘土や砂)及び、塩湖から調達できる様々な鉱物資源より、複数の
製品を製造して世界中に販売している。代表的な商品が肥料用カリウムで、設備規模
ベースでは世界のトップ 10 企業に入らないが、
世界最大の Potash Corp が 32%出資し
ており、その関連会社とみなすことも出来る。なお、リチウムやヨウ素については、
世界のリーディングプレーヤーとして知られている。
(出典)SQM Web サイト(http://www.sqm.com/aspx/about/NaturalResources.aspx)
注)■:カリーチ鉱石
■:塩湖
図 2.3-31
SQM の資源調達地域
特に、果物や野菜など、付加価値の高い農作物に利用される硝酸カリウムについて
は、世界でも供給できる企業が限られており、同社は世界最大の製造規模を誇る。2010
年第 4 四半期には、新たなプラントを建設すことを決定しており、その存在感は更に
大きくなっている。
一方でリチウムについては、2009 年に SQM 一社で世界全体の 24%のシェアを握
るなど、中国一国を凌ぐ存在となっており、2010 年には 26%にまで拡大すると推計
されている。
またヨウ素については、
チリは世界最大の生産国として知られているが、
SQM は一社で同国の半分のシェアを持つなど、大きな存在となっている。
- 98 -
輸入原料安定確保調査等事業
(出典)SQM Corporate Presentation
図 2.3-32
SQM の製品輸出先とその割合
製造された製品は、国内にも当然供給されているが、8 割以上が海外へ輸出されて
いる。販売先は 100 カ国以上に及び、地域別でも北米、欧州、アジアと、偏りの無い
ポートフォリオが組まれている。
(出典)SQM Corporate Presentation
*Latest Twelve Month の略で、詳細は不明。ただ、この資料の発表時期より 2009 年第 4 四半期の何れかの月より、12 カ
月分であるとみられる。
図 2.3-33
SQM の売上高(左)と純利益(右)の推移
SQM の売上高は 2008 年にかけて拡大し、同年は 17 億ドルにまで達した。その後、
世界同時不況の影響などから、売上高は縮小したものの、直近 12 ヶ月では回復基調
が鮮明になっている。純利益についても、2008 年は突出していたが、近年も以前に
比べれば高い水準を維持している。
- 99 -
農業生産環境対策事業
(出典)SQM Corporate Presentation
図 2.3-34
SQM の塩化カリウム・硫酸カリウム生産量の推移(1,000 t/y)
同社のカリウム生産量は、近年右肩上がりで拡大している。2006 年は 70 万トン/
年程度であったが、2009 年には 100 万トン/年を突破し、2010 年は 150 万トン/年
近い水準に達したと推計されている。2011 年、この傾向は更に続くとみられており、
170 万トン/年程度になるとされる。
(出典)SQM Web サイト(http://www.sqm.com/aspx/about/ProductionProcess.aspx)
図 2.3-35
カリーチ鉱石由来のカリウム製品製造プロセス
前述の通り、SQM の鉱物資源は、カリーチ鉱脈及び塩湖から得られている。カリ
ーチ鉱石については、破砕もしくはヒープリーチング(堆積浸出法)を通し、再結晶
化プラントによって硝酸ナトリウムが製造され、その後複数の工程を経て結晶化され
た硝酸カリウム、もしくは顆粒状の硝酸カリウムとなる。
一方、塩湖由来のかん水は、天日干しによって濃縮され、工場で処理されて硫酸カ
リウムとなる。
- 100 -
輸入原料安定確保調査等事業
(出典)SQM Web サイト(http://www.sqm.com/aspx/about/ProductionProcess.aspx)
図 2.3-36
塩湖由来の資源からのカリウム製品製造プロセス
- 101 -
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