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1 1.小規模地熱発電(バイナリー方式)導入可能性調査の目的

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1 1.小規模地熱発電(バイナリー方式)導入可能性調査の目的
1.小規模地熱発電(バイナリー方式)導入可能性調査の目的と背景
1-1.小規模地熱発電(バイナリー方式)導入可能性調査の目的
地球温暖化を初めとする環境問題や従来型エネルギーである化石燃料の枯渇問題や高騰
が進む中で、エネルギーを取り巻く環境は近年著しく変化しており、より環境負荷の少な
いエネルギーシステムの利用が求められています。そうした中で、環境負荷の少ないエネ
ルギーとして地域の特徴や資源を活かした新エネルギーの利用が進められています。新エ
ネルギーは化石燃料とは異なり二酸化炭素排出量が少なく、かつ地域に根ざした再生可能
なエネルギーである特徴を活かし、大量消費の社会システムから循環型の社会システムへ
の転換を目指し、国をはじめ、地方自治体、企業などで進められています。
新潟県では平成 21 年 3 月に、国の「京都議定書目標達成計画」を勘案し、低炭素社会
の実現に向け、地域の総合的・計画的な地球温暖化対策を推進するため、
「地球温暖化対策
推進計画」を策定しました。同計画では、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーの利
用を促進し、家庭や事業所等における二酸化炭素排出量の削減を目指しています。
本調査は、全国で 3 番目に多い新潟県の温泉資源を活用した、出力 1,000kW 以下の小
規模バイナリー地熱発電設備導入の可能性について調査し、本県における導入モデルを検
討することを目的とします
1-2.小規模バイナリー地熱発電導入可能性調査の背景
(1)地球温暖化に対する取り組み(京都議定書)
気候変動枠組み条約の目標を達成すべく、長期的・継続的な温室効果ガスの排出削減を
行うため法的拘束力を有する京都議定書が、1997 年 12 月に京都で開かれた「気候変動枠
組条約第 3 回締結国会議(COP3)」にて採択され、2004 年 11 月のロシアの批准により、
2005 年 2 月 16 日に京都議定書が発効しました。この中で、日本は 1990 年比で 6%の CO2
削減を約束しています。この目標を国際的に協調して達成していくために、1) 温室効果ガ
スの排出量取引、2) クリーン開発メカニズム(CDM)、3) 共同実施(JI)などを行うこ
とができる仕組みを柱とする「京都メカニズム」や、森林吸収源などの新たな制度や仕組
みが導入されています。2006 年度時点での温室効果ガス排出量は基準年比で約 6.4%増加
しており、森林吸収源対策、京都メカニズムを利用した上で、約 7.0%の排出削減が必要と
なっています。
京都議定書の発効をうけ平成 17 年 4 月に「京都議定書目標達成計画」が策定(平成 20
1
年 3 月に全部改訂)され、
「新エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、
エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策の充実等によりその導入を促進する。」と
されています。
平成 21 年 9 月には鳩山総理が国連総会において、温室効果ガスの中期削減目標につい
て、すべての主要排出国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築及び意欲的な目
標の合意を前提として、1990 年比で 2020 年までに 25%削減を目指すとの目標が提示さ
れました。
(2)新エネルギーの中における地熱の位置付け
1)新エネルギーの特徴
新エネルギーは一般的には、石油等の化石燃料や原子力、水力等の既存エネルギーとは
異なる新たなエネルギーとそのシステムによって供給されるエネルギーとも言えますが、
政策的には、
「技術的に実用化段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分
でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために特に必要なもの」と定義されてい
ます。
2)新エネルギー利用促進の施策
内外の経済的・社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保に資する
ため、新エネルギー利用等についての国民の努力を促すとともに、新エネルギー利用等を
円滑に進めるために必要な措置を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展と国民生
活の安定に寄与することを目的として、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」
が制定されており、地熱発電(バイナリー方式)を含む、10 種類が指定されています。新
エネルギーの多くは純国産エネルギーで、資源の乏しい日本にとって、その技術開発の推
進には大きな価値があります。日本の一次エネルギー総供給量に占める新エネルギー等の
割合は年々増加しており、2005 年度で約 2.0%。国はこの割合を 2010 年までには 3%程
度にまで向上させることを目標にしています(資源エネルギー庁ホームページ)
。
2
【新エネルギーとは】
「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」では、
「石油代替エネルギーを製造し、
若しくは発生させ、又は利用すること及び電気を変換して得られる動力を利用すること(石
油に対する依存度の軽減に特に寄与する物に限る。)のうち、経済性の面での制約から普及
が十分でないものであって、その促進を図ることが石油代替エネルギーの導入を図るため
特に必要なもの」と定義されており、バイオマス燃料製造(バイオマス由来の廃棄物燃料
製造を含む)、バイオマス熱利用(バイオマス由来廃棄物の熱利用を含む)、太陽熱利用、
海水・河川水その他の水を熱源とする熱利用、バイオマス発電(バイオマス由来の廃棄物
発電を含む)、地熱発電(バイナリー方式)、風力、中小規模水力発電、太陽光発電の 10
種類が、政令で指定されています。
3
1-3.地域における新エネルギー(再生可能エネルギー)の活用
地域の中での再生可能エネルギーの利用を図るための方法として EIMY(Energy In My
Yard)と呼ばれる概念が提唱されています(新妻)。EIMY とは、あるエネルギーの需要量
があった場合、その地域で利用できる再生可能エネルギー(太陽・風力・バイオマス・水
力・地熱など)を自然の条件や経済的な条件が許す限り最大限利用し、不足する分につい
ては従来のエネルギーシステムにより需給するエネルギーシステム・社会システムのこと
です。すなわち、EIMY の概念とは、再生可能エネルギーを地域で利用するための視点と
して、これまでのハードウェア主体の視点ではなく、再生可能エネルギーを地域で活用で
きる新たな社会システムやライフスタイルを考えるものです。
また、域内に賦存する再生可能エネルギーを利用することによって、地域が豊かになる
ことも重視するものであり、地域のためのエネルギーシステム・社会システムの実現を目
指す概念です。これらのシステムを構成する要素として、地域社会自体が持続可能である
こと、エネルギーシステムが持続可能であること、現金収入、雇用・地域産業の創出など
の経済的価値と、地域環境の改善・伝統・文化・コミュニティ活動の維持などの経済外的
価値の両方を創出することが重要であると指摘されています。
昨今、EIMY の概念のように地域の地熱資源を活用したエネルギーシステムを地域で活
用し、活性化に結び付けていくことが重要視されています。
第1-3-1図
EIMY (Energy In My Yard) の概念
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1-4.新エネルギーを活用した地域活性化の例
新エネルギーを活用した地域活性化の例として、NEDO 技術開発機構と経済産業省によ
り選定された「新エネ百選」から、岩手県葛巻町と岡山県真庭市の例を紹介します。
(1)岩手県葛巻町
岩手県葛巻町は岩手県北部に位置する人口 7,700 人の林業と酪農が基幹産業の町です。
平成 11 年に「新エネルギー宣言」を行い、風力発電、太陽光発電、畜ふんからのバイオ
ガス製造、木質バイオマスなど様々な再生可能エネルギーを積極的に取り入れた結果、電
気では 180%、総エネルギーでは 78%の自給率を誇っています。さらに、特産品の乳製品、
やまぶどうワインとともに、新エネルギーへの取り組み自体も「ブランド化」した結果、
平成 11 年には 20 万人弱であった観光客は、平成 12 年度から増え続け、平成 20 年度には
50 万人以上となっています。(財団法人
岩手県観光協会)
。
(2)岡山県真庭市
岡山県真庭市は、岡山県北部にあり、北は鳥取県に接する人口 51,000 人の林業、農業
が中心の市です。真庭市は、
「バイオマスタウン」を目指した取組をしており、平成 17 年
度から木質バイオマスを原料とした蒸気ボイラー、温室ボイラーを市内 10 ヶ所に導入し、
地域内で木質燃料の循環を実施しています。さらに、平成 19 年には経済産業省により「次
世代エネルギーパーク」にも認定されています。特徴的なのは、市内一円のバイオマス関
連施設を見学できるコースを観光ルート化した『バイオマスツアー真庭』を実施している
点です。この有料ツアーには、北海道から沖縄まで毎年 2,000 人以上の参加者があり、新
しい産業観光として地域振興に貢献しています。そのユニークな取り組みは高い評価を得
ており、第 14 回「新エネ大賞」優秀普及啓発活動部門において金賞の「経済産業大臣賞」
を受賞しています。
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