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Title アベノミクスの行方を懸念する Author(s) 清田, 邦弘, Kiyota

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Title アベノミクスの行方を懸念する Author(s) 清田, 邦弘, Kiyota
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Title
アベノミクスの行方を懸念する
Author(s)
清田, 邦弘, Kiyota, Kunihiro
Citation
経済貿易研究 : 研究所年報, 40: 31-48
Date
2014-03-25
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
論
説
アベノミクスの行方を懸念する
清田
弘
まえがき
2
0
1
2年1
2月2
6日に発足した第2次安倍内閣は、その経済政策を3本の矢に譬え、「大胆な金融緩和
政策」
、「機動的な財政政策」
、「民間投資を喚起する成長戦略」により1
9
9
0年代始めから2
0年余り続く
低迷した経済とデフレからの脱却を目指し、景気回復に自信を持って臨んでいるようである。しか
し、この1年間のアベノミクスの成果を回顧して景気の回復が一時的なものなのか、それとも本格的
な回復の緒に就いているのか、その評価は現在でも未だハッキリしない。
政府は2
0
1
3年1
2月の月例経済報告で、4年2カ月ぶりに「デフレ」の文言を削除し、アベノミクス
による政策が2
0
1
2年末からデフレ脱却の糸口を掴み、今後も景気回復は順調な足取りが続くとしてい
るが、その回復軌道に乗っているとの根拠には資産価格の上昇がしばしば取り上げられる。日本経済
新聞1
2月3
0日付けによると2
0
1
3年末の日経平均株価は1万6
2
9
1円と前年末の1万3
9
5円から5
6.
7%上
昇し、年間の上昇率は1
9
7
2年9
1.
9%以来4
1年ぶりの上昇率であったと報じている。また、9月1
9日国
土交通省が発表した平成2
5年都道府県地価調査による7月1日時点の基準地価では、三大都市圏の地
価が、2
0
0
8年以来の下落幅が縮小している報告(表1)や有効求人倍率などの経済指標(図1)に改
善しているなど景気回復の兆しを示す公表も多い一方で、厚生労働省の毎月勤労統計調査では1
0月の
実質賃金指数(事業所規模5人以上の季節調整値)は2
0
1
3年7月から1
1月(速報値)で何れもマイナ
スを記録している(表2)
。また、賞与や残業代は増えても所定内給与は伸びず、物価の上昇で賃金
が実質的に目減りしていることが窺える。2
0
1
3年1
1月1
8日の産経新聞社と FNN の合同世論調査では
8
1%の人が「景気回復を実感していない」と回答している。まだ道半ばであるアベノミクスの試みが
今後どのように展開されるのかを考えてみる。
まず、資産価格が上昇したのは2
0
1
3年4月4日に金融政策決定会合で黒田日銀総裁が「異次元の金
融緩和政策」を表明したことによる。その後の民間の資金需要が実際に増えるかどうかはともかく、
生産が増えていない状況下でマネーストックを急増させることは、誰もが直観的にインフレで資産価
格が騰貴するであろうと連想するので、インフレ期待が消沈しないうちに早期の短期売買でキャピタ
ルゲインを得ようとする国内外の投資家や投機家による取引で株高になったのであり一時的な上昇と
見ると景気回復の兆しとは捉え難い。
次に、三大都市圏の地価の下落幅の縮小や不動産価格の上昇、中古マンション成約率が前年同月比
論
説
31
平成2
5年地価公示の概要
平成2
5年3月
http : //tochi.mlit.go.jp/kakaku/chikakouji-kakaku
2
0
1
3年国土交通省都道府県地価調査(7月1日時点)
(表1)全国の動向
(1)
1年間の地価
前年よりも下落率縮小
■ 全国的に依然として下落。
前年よりも下落率拡大・上昇率縮小
■ しかし、下落率は縮小、上昇・横ばいの地点が増加。
(単位:%)
住宅地
商業地
21公示 22公示 23公示 24公示 25公示 21公示 22公示 23公示 24公示 25公示
全 国
▲3.2
▲4.2
▲2.7
▲2.3
▲1.6
▲4.7
▲6.1
▲3.8
▲3.1
▲2.1
三大都市圏
▲3.5
▲4.5
▲1.8
▲1.3
▲0.6
▲6.4
▲7.1
▲2.5
▲1.6
▲0.5
東京圏
▲4.4
▲4.9
▲1.7
▲1.6
▲0.7
▲6.1
▲7.3
▲2.5
▲1.9
▲0.5
大阪圏
▲2.0
▲4.8
▲2.4
▲1.3
▲0.9
▲3.3
▲7.4
▲3.6
▲1.7
▲0.5
名古屋圏
▲2.8
▲2.5
▲0.6
▲0.4
0.0
▲6.9
▲6.1
▲1.2
▲0.8
▲0.3
地 方 圏
▲2.8
▲3.8
▲3.6
▲3.3
▲2.5
▲4.2
▲5.3
▲4.8
▲4.3
▲3.3
(図1)
(平成2
5年1
1月分について) |報道発表資料|厚生労働省
求人、求職及び求人倍率の推移
(万人)
月間有効求職者数
300
月間有効求人数
有効求人倍率
280
(倍)
1.6
1.5
1.4
240
1.3
220
1.2
200
1.1
180
1.0
0.9
160
0.8
140
0.7
120
0.6
100
0.5
80
0.4
60
0.3
40
0.2
20
0.1
年度
月
年度
月
月
月
年度
月
年度
年度
年度
月
月
月
月
年度
9
年度
年度
月
年度
年度
月
月
8
6
4
2
7
5
3
年度
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
年度
24 24 25 25 25 25 25 25 25 25 25 25 25
11 12 1
月
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
年度平均
0
︵有効求人倍率︶
︵有効求人・有効求職︶
260
0.0
10 11
(注)1.月別の数値は季節調整値である。なお、平成2
4年12月以前の数値は、平成2
5年1月分公表時に新季節指数によ
り改訂されている。
2.文中の正社員有効求人倍率は正社員の月間有効求人数をパートタイムを除く常用の月間有効求職者数で除して
算出しているが、パートタイムを除く常用の有効求職者には派遣労働者や契約社員を希望する者も含まれるた
め、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低い値となる。
3.文中の産業分類は、平成1
9年1
1月改定の「日本標準産業分類」に基づくもの。
32
経済貿易研究 No.40 2014
(表2)時系列表第1表 賃金指数
(事業所規模5人以上)(平成2
2年平均=1
0
0)
調査産業計
年
月
規模3
0人以上
前年比
前年比
%
%
現金給与総額
平成21年
9
9.
5 −3.
9
9
9
−5
2
2
1
0
0
0.
5
1
0
0
1.
1
2
3
9
9.
8 −0.
2 1
0
0.
2
0.
2
2
4
9
9.
1 −0.
7 9
9.
6 −0.
6
2
4年1
0月
8
4.
3 −0.
4 8
2.
7 −0.
6
1
1
8
6.
9 −0.
8 8
5.
5 −1.
6
1
2
1
7
0.
7 −1.
7 1
8
1.
4 −1.
8
2
5年1月
8
5.
2
0.
1 8
3.
6
0.
8
2
8
2.
8 −0.
8 8
1.
4 −0.
7
3
8
6.
8 −0.
9 8
5.
7 −1.
2
4
8
6
0 8
4.
7
0.
1
5
8
4.
4 −0.
1 8
3.
2
0.
1
6
1
3
7.
6
0.
6 1
4
8.
3
1.
5
7
1
1
3.
8 −0.
1 1
1
3.
7 −0.
4
8
8
5.
6 −0.
9 8
3.
1 −0.
5
9
8
3.
5 −0.
2 8
2.
2
0.
1
0
8
4.
2 −0.
1
8
3
0.
1
1
1
1(速報)
8
7.
3
0.
5 8
6.
8
1.
5
きまって支給する給与
平成2
1年
9
9.
7 −2.
2 9
9.
4 −2.
7
3
1
0
0
0.
5
2
2
1
0
0
0.
2
3
9
9.
6 −0.
4 9
9.
9 −0.
1
2
4
9
9.
5 −0.
1 1
0
0.
1
0.
2
2
4年1
0月
9
9.
6 −0.
2
1
0
0 −0.
5
1
1
9
9.
5 −0.
3
1
0
0 −0.
3
1
2
9
9.
4 −0.
6 9
9.
9 −0.
4
6
2
5年1月
9
7.
9 −0.
7 9
8.
7 −0.
2
9
8.
7 −0.
9 9
9.
4 −0.
8
3
9
9.
2 −1.
1 9
9.
9 −1.
1
4
1
0
0.
4 −0.
2 1
0
1.
1 −0.
1
5
9
8.
8 −0.
4 9
9.
6 −0.
2
6
9
9.
3 −0.
5 9
9.
9 −0.
4
7
9
8.
9 −0.
7 9
9.
6 −0.
4
8
9
8.
6 −0.
4 9
9.
6
0.
1
9
9
8.
7 −0.
4 9
9.
6
0
1
0
9
9.
3 −0.
3 1
0
0.
3
0.
3
1
1(速報)
9
9.
9
0.
4 1
0
0.
7
0.
7
所定内給与
平成2
1年
1
0
0.
4 −1.
3 1
0
0.
3 −1.
6
2
2
1
0
0 −0.
4
1
0
0 −0.
3
2
3
9
9.
4 −0.
5 9
9.
9 −0.
1
2
4
9
9.
2 −0.
2
1
0
0
0.
1
2
4年1
0月
9
9.
4 −0.
1 1
0
0.
1 −0.
1
1
1
9
9.
2 −0.
1 9
9.
8 −0.
1
1
2
9
8.
9 −0.
6 9
9.
7 −0.
2
2
5年1月
9
7.
6 −0.
7 9
8.
6 −0.
5
2
9
8.
4 −0.
7 9
9.
3 −0.
6
3
9
8.
8 −0.
9 9
9.
7
−1
4
9
9.
9 −0.
2 1
0
0.
7 −0.
1
5
9
8.
6 −0.
4 9
9.
4 −0.
4
6
9
9 −0.
6 9
9.
7 −0.
6
7
9
8.
5 −0.
9 9
9.
4 −0.
6
8
9
8.
3 −0.
6 9
9.
4 −0.
3
9
9
8.
5 −0.
6 9
9.
5 −0.
4
1
0
9
8.
7 −0.
7 9
9.
8 −0.
3
1
1(速報)
9
9.
2
0 1
0
0.
2
0.
4
製
造
前年比
%
業
卸売業,小売業
規模3
0人以上
前年比
前年比
%
%
医療,福祉
前年比
%
9
6.
2
1
0
0
1
0
2
1
0
2.
2
8
3.
8
8
7.
5
1
8
6.
9
8
4.
5
8
3.
3
8
5.
4
8
5.
8
8
3.
8
1
3
4.
1
1
3
6.
9
8
6.
1
8
4.
2
8
4.
8
8
7.
8
−6.
9
3.
9
2
0.
2
−1.
4
−2.
8
8
−0.
−0.
5
−1.
2
−1.
7
−0.
6
−0.
5
−0.
8
0.
9
−0.
7
0.
5
1.
2
0.
3
9
5.
9
1
0
0
1
0
2.
2
0
1.
9
1
8
2.
1
8
5.
6
1
9
5.
3
8
3.
3
8
1.
7
8
4.
1
8
4.
3
8
4.
4
1
4
0.
3
1
4
0.
1
8
4
8
2.
7
8
3.
6
8
6.
8
−7.
8
4.
3
2.
2
−0.
3
−1.
3
−3.
5
−1.
3
1.
1
−0.
5
1
−1.
0.
1
−0.
1
0.
1
1.
7
−0.
1
0.
9
1.
8
1.
4
9
6.
7
1
0
0
9
9.
5
1
0
0.
8
8
6.
6
8
8.
3
1
6
3.
9
8
7.
7
8
5.
1
9
2.
1
9
0.
2
8
7.
1
1
2
5.
9
1
2
5.
5
8
9.
9
8
6.
5
8
6.
5
8
8.
7
−4
3.
4
−0.
4
1.
3
0.
7
1.
8
−0.
7
0.
3
0.
4
−1.
5
0.
8
0.
5
−1.
7
0.
8
−0.
2
0.
2
−0.
1
0.
5
1
0
3.
2
1
0
0
9
9.
7
9
9.
4
8
4.
3
8
8.
9
1
7
1.
7
8
7.
4
8
3.
7
8
5.
6
8
6.
7
8
4.
3
6.
8
1
3
1
0
5.
4
8
5.
5
8
3.
5
8
3.
9
9
1.
8
−1.
6
−3.
1
−0.
3
−0.
3
−0.
1
0
−1
1.
3
−0.
9
−2.
2
−0.
5
−1.
1
−2.
1
−1.
2
−1
−0.
8
−0.
5
3.
3
9
6.
8
1
0
0
1
0
1
1
0
1.
8
1.
4
1
0
1
0
1.
6
1
0
1.
3
9
8.
9
1
0
1
1
0
1.
4
1
0
1.
9
1
0
0.
5
1
0
1.
7
1
0
1.
9
1
0
1.
1
1
0
2
1
0
2.
3
1
0
2.
3
−4.
3
3.
3
1
0.
8
−0.
8
−0.
7
−1
−1.
3
−1.
5
−1.
4
−1.
2
−0.
6
−1.
1
−0.
2
0.
2
0.
6
0.
9
0.
7
9
6.
5
1
0
0
1
0
0.
9
1
0
1.
7
1
0
1.
5
1
0
1.
6
1
0
1.
4
9
9.
6
1
0
1.
3
1
0
1.
8
0
2.
2
1
1
0
1.
1
1
0
2.
1
7
1
0
2.
1
0
2
1
0
2.
5
1
0
3
1
0
2.
8
−4.
7
3.
5
0.
9
0.
8
−0.
8
−0.
6
−0.
9
−0.
5
−0.
9
−0.
8
−0.
5
0
−0.
5
0.
5
0.
8
1
1.
5
1.
2
9
8.
1
1
0
0
9
9.
5
1
0
0.
2
1
0
0.
2
1
0
0.
1
1
0
0.
1
9
9.
6
9
9.
6
1
0
0
1
0
2
1
0
0.
7
1
0
0.
5
1
0
0.
7
1
0
0.
5
1
0
0.
4
1
0
0.
2
1
0
1
−1.
4 1
0
3.
1
1.
9
1
0
0
−0.
5 9
9.
8
0.
7 9
9.
9
0.
7 9
9.
5
0.
7 9
9.
4
0.
3 9
9.
7
0.
5
9
9
0.
1 9
8.
9
−0.
3 9
8.
3
0.
8 1
0
0.
3
0.
7 9
8.
4
0.
2 9
9.
8
0.
1 9
8.
7
0 9
9.
1
0 9
8.
6
0 9
9.
1
0.
9 9
9.
4
−0.
2
−3
−0.
1
0.
1
−0.
5
−0.
5
0.
1
−0.
9
−1.
5
−1.
5
−0.
9
−1.
5
−0.
4
−1.
4
−0.
3
−1
−0.
4
0
9
9.
1
1
0
0
0.
9
1
0
1
0
1.
5
1
0
1.
2
0
1.
4
1
1
0
1.
1
9
9.
5
7
1
0
0.
1
0
1
1
0
1.
5
1
0
0.
5
1
0
1.
3
1
0
1.
3
1
0
0.
5
1
0
1.
2
1
0
1.
2
1
0
0.
9
−1.
2
0.
9
1
0.
6
−0.
2
0.
1
−0.
4
−0.
7
−1.
1
−1
−1.
1
−0.
5
−1.
2
−0.
4
−0.
3
−0.
2
0
−0.
5
9
9
1
0
0
1
0
0.
9
1
0
1.
6
1
0
1.
6
1
0
1.
7
1
0
1.
5
1
0
0.
5
1
0
1.
4
1
0
1.
7
1
0
2
1
0
1.
3
1
0
1.
7
1
0
2
1
0
1.
5
1
0
1.
9
1
0
1.
9
1
0
1.
4
−1.
1 9
8.
2
1
1
0
0
0.
9 9
9.
4
0.
7 9
9.
7
0.
1 9
9.
7
0.
4 9
9.
5
−0.
1 9
9.
4
0.
3 9
8.
8
−0.
2 9
9.
1
−0.
3 9
9.
2
−0.
4
1
0
1
1 9
9.
9
0.
−0.
8 9
9.
9
0.
1
1
0
0
0.
2 9
9.
8
0.
1 9
9.
8
0.
3 9
9.
3
−0.
3 1
0
0.
1
−1 1
0
3.
2
1.
8
1
0
0
−0.
6 9
9.
9
0.
3
1
0
0
0.
4 9
9.
9
0.
3 9
9.
5
0 9
9.
9
0.
2 9
8.
6
0.
1 9
8.
8
−0.
5 9
8.
4
0.
5 1
0
0.
4
0.
3 9
8.
4
0 9
9.
7
−0.
3 9
8.
8
−0.
2 9
9.
2
−0.
3 9
8.
7
−0.
4 9
9.
2
0.
6 9
9.
7
0.
5
−3
−0.
1
0.
1
−0.
2
−0.
4
0.
4
−0.
8
−1.
4
−1.
7
−0.
8
−1.
5
−0.
6
−1.
7
4
−0.
−1.
1
−0.
7
2
0.
厚労省毎月勤労統計調査
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
33
(表3)
新築戸建平均成約価格および前年比・前月比
東京2
3区
成約価格
前年比
前月比
4,
5
7
0万円
4.
9%
0.
8%
中古マンション平均成約価格および前年比・前
月比
東京2
3区
成約価格
前年比
前月比
2,
6
5
0万円
1
1.
2%
▲6.
1%
東京都下
3,
4
5
1万円
6.
9%
0.
3%
東京都下
2,
1
2
0万円
1
3.
9%
2
7.
8%
神奈川県
3,
4
4
1万円
2.
8%
0.
4%
神奈川県
8万円
1,
92
▲2.
1%
▲9.
8%
埼玉県
2,
7
5
3万円
3.
3%
▲1.
7%
埼玉県
1,
7
3
8万円
3.
6%
▲0.
7%
千葉県
2,
5
7
7万円
3.
4%
4.
7%
千葉県
1,
5
2
6万円
▲3.
3%
7.
8%
首都圏
3,
3
2
4万円
4.
5%
▲0.
4%
首都圏
2,
1
8
8万円
8.
3%
▲1.
4%
※本資料の掲載データは、当社ネットワーク流通物件のうち、不動産会社間情報として図面(ファクトシート)で登録
された物件をベースとしたものであり、インターネット(ATBB)登録物件は含まれておりません。
※11月期の調査対象物件数は、新築戸建=登録9,
8
8
7件、成約1,
4
99件、中古マンション=登録1,
2
98件、成約2
9
3件
http//athome−inc.jp より転載 アットホーム㈱ 2
0
1
3年1
2月25日閲覧
9ヶ月連続で上昇している(表3)の報道は、1
4年4月からの消費税率引き上げの決定が消費の前倒
しに繋がった結果であると考えられる。日本の総人口が減少の一途を辿り今後も少子高齢化現象が続
くと予想される状況下で不動産取引が活発になるとは考え難い。投機や投資を目的とせず、実際に居
住するために消費税率引き上げ前の駆け込み需要が大勢であったとするならば、消費税率引き上げ後
の4月以降に反動が来て景気の落ち込みも予想されよう。
また、日本経済新聞2
0
1
3年1月1
6日付には、富裕層による高級品や贅沢品の購入でデパート業界の
販売の好調が続いていると報道されているが、高額商品の購入には消費税率の引き上げ前の駆け込み
需要の影響が大きく左右していると考えられるので、必ずしもアベノミクスの効果と判断するよりも
消費税率の引き上げが大きく影響しているのであろう。
ではアベノミクスによる大胆な金融緩和政策と拡張的な財政政策が消費や投資を刺激し、その過程
で民間投資を喚起する成長戦略により景気回復に繋がって行くのかを考えてみよう。
1.なぜゼロ金利政策や量的金融緩和政策は効果がなかったか
政府は1
9
9
1年にバブルが弾けてから経済対策費として毎年巨額の財政支出を行い(図2)
、その歳
入不足を特例公債(赤字国債)の発行で賄ってきた。その結果、公債発行残高も膨らみ続け、平成2
5
年度予算を例にとると一般会計予算9
2兆6千億円の中、実に4
6.
3%が公債発行に依存し、その中の3
7
兆円余りが特例公債で賄っている(表4)
。また、金融政策では1
9
9
5年に短期金利の誘導目標をこれ
までの割引歩合政策から無担保翌日物コールレートにする新金融調節方式に移行した。そして1
9
9
9年
には誘導目標水準をゼロまで引き下げ、所謂ゼロ金利政策を実施した。2
0
0
0年にゼロ金利政策は一旦
解除されたが、米国の IT バブルが弾けたのを受け2
0
0
1年からは日銀当座預金残高を目標とする「量
的緩和政策」が実施され、今日まで一貫して金融緩和政策が行われてきたにもかかわらず、景気低迷
とデフレの状況が続いている(図3)
。
このように財政政策も金融政策も有効に機能しなかった理由は何であろうか?
本来、古典派の主唱では常に需要が旺盛の下では「総需要と総供給は常に一致する」が、不一致が
生じれば価格の騰落で解消される筈であった。しかも、経済に弾力性があれば、供給に対して需要が
旺盛ならば需給の不一致は価格の騰落で調整が可能な筈である。しかし、価格の下方硬直性が顕在化
するようになり経済に弾力性が乏しくなり、総需要と総供給を一致させる価格調整桟能が短期にはう
34
経済貿易研究 No.40 2014
(図2)政府のこれまでの主な経済対策
60
56.8
事業規模(兆円)
補正予算(兆円)
50
兆円
40
30
20
26.9
24超
18程度
16超
10
11.7
21.1 20.2
9.8
15.4
13.1
日本経済再生に向けた
緊急経済対策
5.1
円高・デフレ対応のた
めの緊急総合経済対策
0.9
円高、デフレ状況に
対する緊急的な対応
7.2
明日の安心と成長の
ための緊急経済対策
経済対策名
経済危機対策
4.8
生活対策
1.8
安心実現緊急総合対策
3.0
改革加速プログラム
4.1
2.6
緊急対応プログラム
5.8
1.0
改革先行プログラム
3.9
日本新生新発展対策
6.5
経済新生対策
7.6
緊急経済対策
4.6
総合経済対策
0
14.8
11程度
24.4
策定
時期 1998年 1998年 1999年 2000年 2001年 2001年 2002年 2008年 2008年 2009年 2009年 2010年 2010年 2013年
4月 12月 9月 10月
1月
8月 10月
4月 11月 11月 10月 10月 12月 12月
内閣 橋本
小渕
麻生
管
小泉
鳩山
安部
福田
森
(注)201
0年9月菅内閣は補正予算ではなく経済危機対応・地域活性化予備費を活用した国費
2
01
3年1月安倍内閣の補正予算1
3.
1兆円には経済対策以外の「年金国庫負担2分の1の実現等」の2.
8兆円を含
む。
〈資料〉東京新聞2009.
4.
9/4.
1
1、毎日新聞2
0
0
9.
1
2.
9、官邸公表資料
http//www.ttch.ne.jp/honkawa/5090.html
まく効かないようになってくると、その需給ギャップを埋め合わせるために金融財政政策が必要であ
るのがケインジアンの主唱であった。これは、あくまでも総供給に対して総需要が旺盛であったから
一時的な需給の不均衡を解消するために経済政策が有効であったのである。ところが、わが国のバブ
ル景気崩壊以降の景気低迷は、総供給に対して総需要が旺盛でない状況にあったので、たとえマクロ
経済では三面等価の法則から必ず総供給は総需要に一致することとは言え、その際の総需要と総供給
を一致させる均衡価格がコストを償えない程の下落幅であれば、縮小均衡のデフレスパイラルを引き
起こす結果に繋がり拡張的な財政政策も金融緩和政策も総じて有効にはならなかったと考えている
(表5)(表6)
。
では、どうして総供給に対して総需要が追いついていけない超過供給が起こったのかを次に考えて
みる。
2.総需要が縮小して行った要因
(ア)まず、少子高齢化現象による生産年齢人口(1
5歳以上6
5歳未満)の減少がある。
第一戦を退いた退職者のほとんどは収入が減少し現役時代よりも消費支出が減るので、総需要の減
少に繋がると推測できる(表7)
。
似たような議論に総人口の減少を指摘する論者もいる。総人口の減少が総需要を減らすとの主張は
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
35
日銀金融経済月報2
0
1
3年1
2月号
(図表4
3)
(図3)マネーストック
(%)
5
(%)
10
広義流動性(左目盛)
M3(左目盛)
M2(左目盛)
M1(右目盛)
4
8
3
6
2
4
1
2
0
0
−2
−1
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13 年
(2)対名目 GDP 比率
320
(季調済、%)
(季調済、%)
220
300
200
280
180
260
160
240
140
220
120
200
100
180
80
広義流動性(左目盛)
M3(左目盛)
M2(左目盛)
M1(右目盛)
160
140
120
100
60
40
20
0
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 年
(注)1.M1(現金通貨+預金通貨)
、M3(現金通貨+預金通貨+準通貨+CD)の対象金融機関
は、M2(現金通貨+預金通貨+準通貨+CD)の対象金融機関のほかに、ゆうちょ銀行等
を含む。
2.(1)の20
0
4/3月以前、
(2)の20
0
3/3月以前の M1、M2、M3、広義流動性は、マネー
サプライ統計の「M1」
、
「M2+CD」
、
「M3+CD−金銭信託」
、「広義流動性−債券現先・
現金担保付債券貸借」による計数。なお、
(2)は、これらの季調値を段差修正したうえで
マネーストック統計に接続。
3.201
3/4Q のマネーストックは1
0∼11月の平均値、3
01
3/4Q の名目 GDP は2
01
3/3Q から
横這いと仮定。
(資料)内閣府「国民経済計算」
、日本銀行
36
経済貿易研究 No.40 2014
(表4)我が国の財政事情(平成2
5年度予算政府案)財務省主計局より転載
一般会計の推移
年
度
40
4
1
42
4
3
4
4
4
5
4
6
4
7
48
49
50
5
1
5
2
5
3
5
4
5
5
5
6
57
5
8
59
6
0
6
1
62
63
元
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1
1
1
2
1
3
14
15
1
6
1
7
1
8
1
9
2
0
2
1
2
2
23
24
2
5
一般会計
歳入
36,
58
1
43,
143
49,
5
09
58,
18
6
6
7,
3
96
7
9,
4
98
9
4,
1
43
11
4,
67
7
1
42,
84
1
1
70,
99
1
2
12,
8
8
8
24
2,
96
0
285,
14
3
34
2,
9
50
38
6,
0
01
42
5,
8
88
46
7,
8
81
4
96,
8
08
50
3,
796
27
2
5
06,
524,
99
6
54
0,
8
86
5
41,
01
0
5
66,
997
6
04,
142
66
2,
368
7
03,
4
74
7
22,
18
0
72
3,
548
7
30,
8
17
7
09,
87
1
75
1,
049
7
73,
9
00
77
6,
69
2
81
8,
601
849,
8
71
82
6,
524
8
12,
300
8
17,
8
9
1
821,
10
9
82
1,
829
7
96,
8
60
82
9,
088
13
830,
6
88
5,
4
80
922,
99
2
9
2
4,
116
9
03,
339
926,
1
15
(単位:億円、%)
税収
その他
収入
3
2,
8
7
7
3
1,
9
7
7
3
8,
0
5
2
4
6,
9
7
9
5
7,
38
1
6
9,
38
4
8
2,
96
3
8
8,
48
5
11
0,
7
8
6
13
7,
6
2
0
13
7,
4
0
0
1
5
5,
1
9
0
1
8
2,
4
0
0
2
1
4,
5
0
0
2
1
4,
8
7
0
2
64,
1
1
0
3
22,
8
4
0
3
6
6,
2
4
0
3
2
3,
1
50
3
4
5,
9
6
0
3
8
5,
5
0
0
4
0
5,
6
0
0
4
1
1,
9
4
0
4
5
0,
9
0
0
5
1
0,
1
0
0
5
8
0,
0
4
0
6
1
7,
7
2
0
6
2
5,
0
4
0
6
1
3,
0
3
0
5
3
6,
6
5
0
5
3
7,
3
1
0
5
1
3,
4
5
0
5
7
8,
0
2
0
5
8
5,
2
2
0
4
7
1,
1
9
0
4
8
6,
5
9
0
5
0
7,
2
7
0
4
6
8,
1
6
0
4
1
7,
8
6
0
4
1
7,
4
7
0
4
4
0,
0
7
0
4
5
8,
7
8
0
5
3
4,
6
7
0
5
3
5,
5
4
0
4
6
1,
0
3
0
3
7
3,
9
6
0
4
0
9,
2
7
0
4
2
3,
4
6
0
4
3
0,
9
6
0
3,
7
0
4
3,
8
6
6
3,
4
5
7
4,
8
0
7
5,
1
1
5
5,
8
1
3
6,
8
8
1
6,
6
9
2
8,
6
5
5
1
1,
7
7
4
1
9,
4
8
8
1
5,
0
2
0
1
7,
94
3
1
8,
6
0
0
1
8,
4
3
1
1
9,
0
7
8
2
2,
3
4
1
2
6,
1
6
8
4
7,
1
9
6
3
3,
5
1
2
2
2,
69
6
2
5,
8
2
6
2
4,
0
6
0
2
7,
6
8
7
2
2,
9
3
2
2
6,
3
9
6
3
2,
3
2
4
2
4,
3
4
0
2
9,
2
1
8
5
7,
7
3
7
5
8
1
4
6,
2
7,
3
0
9
2
8,
8
1
0
3
5,
9
0
2
3
6,
9
1
1
3
7,
1
8
1
3
6,
0
7
4
4
4,
1
4
0
3
5,
5
81
3
7,
73
9
3
7,
8
5
9
3
8,
3
5
0
4
0,
0
9
8
4
1,
5
9
3
9
1,
5
1
0
1
06,
0
0
2
7
1,
8
6
6
3
7,
4
3
9
4
0,
5
3
5
公債発行額
7,
3
00
8,
0
0
0
6,
4
0
0
4,
9
0
0
4,
3
0
0
4,
3
0
0
1
9,
5
0
0
2
3,
4
0
0
2
1,
6
0
0
2
0,
0
0
0
7
2,
7
50
8
4,
80
0
1
0
9,
85
0
15
2,
7
0
0
14
2,
7
0
0
1
2
2,
7
0
0
1
0
4,
4
0
0
1
3
3,
4
5
0
1
2
6,
8
00
1
1
6,
80
0
1
0
9,
46
0
1
05,
0
1
0
8
8,
4
1
0
7
1,
1
1
0
5
5,
9
3
2
5
3,
4
3
0
7
2,
8
0
0
8
1,
3
0
0
1
0
5,
0
9
2
9
7,
4
6
9
1
9
1,
4
9
4
1
6
7,
0
7
0
1
5
5,
5
7
0
3
1
0,
5
0
0
3
2
6,
1
0
0
2
8
3,
1
8
0
3
0
0,
0
0
0
3
6
4,
4
5
0
3
6
5,
9
0
0
3
43,
9
0
0
29
9,
7
30
2
5
4,
3
2
0
2
5
3,
48
0
3
3
2,
94
0
44
3,
03
0
4
4
2,
9
8
0
4
4
2,
4
4
0
4
28,
51
0
4条公債
7,
3
00
8,
00
0
6,
4
00
4,
900
4,
3
0
0
4,
300
19,
5
0
0
2
3,
40
0
21,
6
00
2
0,
00
0
35,
25
0
44,
3
0
0
60,
5
0
0
72,
15
0
67,
850
6
0,
8
50
6
5,
1
60
6
3,
6
50
62,
25
0
59,
5
0
0
57,
0
0
0
55,
2
00
5
6,
9
00
5
7,
8
00
55,
9
3
2
53,
4
30
7
2,
8
00
81,
3
0
0
10
5,
0
92
9
7,
4
69
90,
3
1
0
92,
3
70
84,
270
93,
4
0
0
91,
500
87,
60
0
67,
90
0
64,
20
0
6
5,
0
0
0
61,
800
5
4,
8
40
52,
31
0
52,
1
2
0
75,
7
9
0
63,
5
3
0
6
0,
9
00
59,
0
90
57,
7
50
特例公債
37,
5
00
4
0,
50
0
49,
35
0
80,
5
50
7
4,
8
50
5
4,
8
50
3
9,
24
0
6
9,
80
0
64,
5
50
5
7,
30
0
52,
4
6
0
4
9,
81
0
3
1,
51
0
1
3,
3
10
−
−
−
−
−
−
10
1,
1
8
4
7
4,
70
0
7
1,
3
00
21
7,
10
0
2
3
4,
60
0
19
5,
5
80
23
2,
1
00
30
0,
2
50
30
0,
90
0
2
82,
1
00
2
44,
8
9
0
20
2,
0
10
20
1,
36
0
25
7,
15
0
37
9,
50
0
3
82,
0
8
0
3
8
3,
35
0
3
7
0,
7
60
公債
依存度
16.
9
16.
2
11.
0
7.
3
5.
4
4.
6
17.
0
16.
4
12.
6
9.
4
2
9.
9
2
9.
7
32.
0
3
9.
6
3
3.
5
2
6.
2
2
1.
0
2
6.
5
2
5.
0
2
2.
2
20.
2
1
9.
4
1
5.
6
1
1.
8
8.4
7.6
1
0.
1
11.
2
1
4.
4
1
3.
7
25.
5
2
1.
6
2
0.
0
3
7.
9
3
8.
4
3
4.
3
3
6.
9
4
4.
6
4
4.6
4
1.
8
37.
6
3
0.
7
3
0.
5
3
7.
6
4
8.
0
47.
9
4
7.
6
4
6.
3
公債残高
2,
0
00
8,
7
50
1
5,
9
50
4
2
0,
5
4
2
4,
63
4
2
8,
11
2
39,
52
1
8,
1
86
5
7
5,
5
04
9
6,
58
4
1
4
9,
7
31
2
20,
7
6
7
3
19,
0
2
4
4
2
6,
15
8
5
6
2,
51
3
7
05,
09
8
8
22,
7
34
9
64,
8
22
1,
09
6,
947
1,
2
16,
9
3
6
1,
3
44,
3
1
4
1,
45
1,
2
67
1,
5
18,
09
3
1,
56
7,
803
1,
60
9,
100
1,
6
63,
3
7
9
1,
71
6,
473
1,
78
3,
681
1,
9
25,
3
9
3
2,
06
6,
046
2,
25
1,
847
2,
4
46,
5
8
1
2,
57
9,
875
2,
9
52,
49
1
3,
3
16,
68
7
3,
6
75,
5
4
7
3,
92
4,
3
41
4,
210,
9
91
4,
56
9,
7
36
4,
9
9
0,
1
3
7
5,
2
6
9,
27
9
5,
31
7,
0
15
5,
41
4,
5
84
5,
4
5
9,
35
6
5,
9
3
9,
71
7
6,
36
3,
11
7
6,
6
98,
6
7
4
7,
12
6,
8
12
7,
4
9
5,
84
6
公債残高
/GDP
0.6
2.2
3.4
3.7
3.8
3.7
4.8
6.0
6.5
7.0
9.8
12.
9
16.
8
2
0.
4
2
5.
0
28.
4
3
1.
1
34.
9
3
8.
0
39.
5
40.
7
4
2.4
41.
9
4
0.
4
3
8.
7
36.
8
3
6.
2
3
6.
9
39.
9
4
1.
7
4
4.
6
47.
4
4
9.
5
57.
8
65.
5
72.
0
7
8.
2
8
4.
6
9
1.
1
9
9.
3
1
0
4.
3
1
0
4.
4
1
0
5.
5
1
11.
5
1
25.
3
1
3
2.
5
1
41.
5
1
50.
1
1
53.
7
(注1)計数は当初予算ベース。その他収入は前年度剰余金受入を含む額。
(注2)GDP は、平成2
3年度までは実績値、2
4年度は実績見込み、2
5年度は政府見通しによる。
(注3)一般会計歳入においては、上記の他に、いわゆる「つなぎ公債」を含む。具体的には、減税特例公債(平成6
年度:3.
1兆円、
平成7年度:2.
9兆円、
平成8年度:1.
9兆円)と年金特例公債(平成2
5年度:2.
6兆円)を含む。
(注4)平成24年度の公債依存度は、基礎年金国庫負担2分の1ベース。
(注5)公債依存度については、特別税の創設等によって償還財源が別途確保されている。いわゆる「つなぎ公債」を
除いて算出。
(注6)公債残高は各年度の3月末現在額。ただし、平成2
4年度は実績見込み、2
5年度は政府案に基づく見込み。
(注7)平成23年度、平成2
4年度及び平成2
5年度の公債残高は、東日本大震災からの復興のために実施する施策に必要
な財源について、復興特別税の収入等を活用して確保することとし、これらの財源が入るまでの間のつなぎと
して発行した復興債を含む(平成2
3年度末:1
0.
7兆円、平成2
4年度末:1
1.
2兆円、平成2
5年度:1
2.
2兆円)
。
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
37
(表5)
本件の対外公表は、1
0月1
1日 8時5
0分
FOR RELEASE : 8 : 50 a.m. October 11, 2013
Research and Statistics Department
Bank of Japan
2
0
1
3年1
0月1
1日
日本銀行 調査統計局
マネーストック速報(2
0
1
3年9月)
Money Stock(Preliminary figures for September2
0
1
3)
(特に断りのない限り平残前年比伸び率、単位・%)
(Percent changes from a year earlier in average amounts outstanding)
M2
年・期・
月
Year,
quarter,
month
2.
7
2012
現金
通貨
Currency
in circulation
同季調
済前期
(月)比
年率
(a)
同季調
済前期
(月)比
年率
(a)
2011
M1
M3
−
2.
2
−
4.
7
2.
4
預金
通貨
Deposit
money
5.
2
CD
Certifi- 広義
同季調
準通貨
cates
済前期
流動性
Quasiof de- L
(月)比
money
posit
年率
(CDs)
(a)
−0.
1
3.
5
0.
0
−
2.
5
−
2.
2
−
3.
6
2.
4
3.
8
0.
6
5.
7
0.
3
−
2012/4‐6
2.
4
1.
7
2.
1
1.
8
3.
2
2.
2
3.
4
0.
5
1
0.
4
0.
1
0.
3
7‐9
2.
4
2.
7
2.
0
2.
2
3.
3
2.
6
3.
4
0.
6
5.
7
0.
1
0.
7
10‐12
2.
3
2.
9
2.
0
2.
4
3.
3
2.
8
3.
3
0.
7
5.
2
0.
5
1.
2
2013/1‐3
2.
9
4.
3
2.
4
3.
2
3.
8
3.
0
4.
0
0.
8
6.
6
1.
3
2.
7
4‐6
3.
5
4.
2
2.
8
3.
4
4.
5
2.
9
4.
8
1.
1
3.
5
2.
6
5.
8
7‐9
3.
8
3.
8
3.
0
3.
2
5.
2
3.
0
5.
6
1.
1
0.
5
3.
5
4.
6
2012/8
2.
4
3.
1
2.
1
2.
6
3.
4
2.
7
3.
5
0.
6
6.
2
0.
2
2.
0
9
2.
4
2.
8
2.
1
2.
5
3.
6
2.
7
3.
7
0.
6
3.
4
0.
4
1.
6
10
2.
3
2.
3
2.
0
2.
0
3.
3
2.
7
3.
4
0.
6
5.
4
0.
4
0.
3
11
2.
1
2.
0
1.
9
2.
0
3.
2
2.
8
3.
2
0.
6
3.
2
0.
3
1.
1
12
2.
6
6.
1
2.
2
4.
4
3.
4
2.
8
3.
4
0.
8
7.
1
0.
8
2.
1
2013/1
2.
7
3.
3
2.
3
2.
3
3.
6
3.
1
3.
6
0.
8
6.
2
1.
1
3.
1
2
2.
9
4.
9
2.
4
4.
0
3.
9
3.
0
4.
0
0.
8
7.
6
1.
2
2.
8
3
3.
1
4.
5
2.
5
3.
2
4.
1
2.
8
4.
3
0.
8
6.
0
1.
5
4.
3
4
3.
2
2.
8
2.
6
2.
5
4.
0
2.
8
4.
2
1.
0
6.
4
2.
0
6.
9
5
3.
5
4.
4
2.
8
3.
7
4.
4
3.
0
4.
7
1.
1
4.
4
2.
7
7.
5
6
3.
8
6.
8
r3.
1
5.
1
5.
2
3.
1
5.
5
1.
2
−0.
1
3.
1
r5.
4
7
3.
7
2.
0
3.
0
r1.
9
5.
3
2.
9
r5.
7
1.
1
−1.
9
r3.
3
r3.
1
8
r3.
8
r3.
5
3.
0
r2.
9
r5.
2
r3.
1
r5.
6
r1.
2 r−0.
3
r3.
6
r5.
1
9
3.
8
3.
7
3.
1
3.
3
5.
1
3.
1
5.
4
1.
1
3.
7
3.
6
3.
9
(残高、単位・兆円)
(Average amounts outstanding,trillions of yen)
2013/8
r8
5
0.
1
r8
4
9.
7 r1,
160.
4 r1,
159.
5 r5
6
1.
5
r7
9.
9 r4
8
1.
7 r5
6
5.
0
3
3.
9 r1,
512.
3 r1,
512.
4
9
8
5
0.
8
8
5
2.
3 1,
161.
0
7
9.
6
3
4.
2 1,
512.
4
1,
162.
6
5
6
2.
2
4
8
2.
7
5
6
4.
6
1,
516.
9
(注)1.r は訂正値。
2.2013年3月以降の計数を訂正(訂正後の計数は、
「時系列統計データ検索サイト」を参照)
。
Notes :1.r:Revised figures.
2.L−−broadly−defined liquidity−−includes M3 and other components as represented on the following page.
3.Figures in column (a) are seasonally adjusted percent changes at an annualized rate form the previous period.
4.Figures from March 2013 are revised (For revised figures, please see “BOJ Time−Series Data Search”).
38
経済貿易研究 No.40 2014
(表6)
広義流動性のコンポーネント
Components of L
(平残前年比伸び率、単位・%)
(Percent changes from a year earlier in average amounts outstanding)
(1)
M3
金銭の
信託
年・
期・月
Pecuniary
trusts
広義
流動性
Year,
quarter, L
month
投資信
託
Investment
trusts
金融債
Bank
debentures
(2)
(3)
銀行発
行普通
社債
金融機
関発行
CP
Straight
bonds
issued
by
banks
Commercial
paper
issued
by financial institutions
(4)
外債
国債
Government
securities
Foreign
bonds
2011
0.
0
2.
2
−2.
9
−0.
1
−2
2.
6
−4.
8
−1
8.
6
−2
6.
8
2.
1
2012
0.
3
2.
2
−1.
5
−2.
2
−2
2.
2
−1
2.
5
−1
1.
1
−3
0.
7
−0.
7
2012/4‐6
0.
1
2.
1
−1.
6
−1.
8
−2
4.
5
−8.
7
−1
5.
9
−2
9.
4
−2.
2
7‐9
0.
1
2.
0
−0.
8
−2.
8
−1
7.
8
−1
4.
0
−1
5.
1
−3
3.
4
−0.
9
10‐12
0.
5
2.
0
0.
1
−3.
3
−9.
4
−1
5.
6
1
7.
1
−3
3.
9
1.
7
2013/1‐3
1.
3
2.
4
1.
5
−0.
4
−9.
1
−9.
0
3
9.
8
−3
7.
1
7.
3
4‐6
2.
6
2.
8
6.
7
5.
3
−1
5.
0
−4.
2
3
1.
7
−3
6.
9
7.
6
7‐9
3.
5
3.
0
8.
7
9.
2
−1
8.
7
1.
8
2
2.
4
−2
6.
6
7.
5
2012/8
0.
2
2.
1
−0.
7
−2.
8
−1
9.
3
−1
5.
2
−1
4.
5
−3
3.
9
−0.
8
9
0.
4
2.
1
0.
1
−4.
0
−1
3.
8
−1
5.
3
−1
3.
4
−3
1.
4
0.
0
10
0.
4
2.
0
0.
1
−4.
2
−9.
5
−1
6.
6
−0.
7
−3
2.
0
−0.
4
11
0.
3
1.
9
−0.
3
−3.
0
−9.
3
−1
6.
3
1
3.
0
−3
4.
8
0.
7
12
0.
8
2.
2
0.
3
−2.
8
−9.
3
−1
3.
9
3
9.
8
−3
4.
9
4.
9
2013/1
1.
1
2.
3
1.
1
−2.
7
−9.
1
−1
1.
1
3
6.
2
−3
5.
1
9.
1
2
1.
2
2.
4
1.
1
−0.
5
−8.
7
−9.
6
3
1.
2
−3
6.
9
8.
1
3
1.
5
2.
5
2.
3
2.
2
−9.
6
−6.
3
5
4.
1
−3
9.
5
4.
6
4
2.
0
2.
6
4.
8
4.
4
−1
1.
9
−3.
4
4
0.
2
−3
9.
0
5.
0
5
2.
7
2.
8
7.
0
5.
7
−1
6.
6
−4.
9
2
0.
4
−3
6.
4
8.
5
6
3.
1
r3.
1
8.
2
5.
9
−1
6.
5
−4.
3
3
5.
6
−3
5.
1
9.
1
7
r3.
3
3.
0
8.
7
r7.
2
r−1
7.
3
0.
7
1
6.
4
r−3
0.
1
r7.
7
8
r3.
6
3.
0
r8.
7
r9.
5
r−1
8.
7
r3.
5
r2
3.
3
r−2
4.
7
r7.
4
9
3.
7
3.
1
8.
8
1
1.
0
−2
0.
1
1.
2
2
7.
2
−2
4.
8
7.
2
(残高、単位・兆円)
(Average amounts outstanding,trillions of yen)
2013/8
r1,
512.
3
r1,
160.
4
r2
0
1.
6
r8
2.
0
2.
9
1.
2
r0.
6
r2
2.
8
r4
0.
8
9
1,
512.
4
1,
161.
0
2
0
1.
1
8
2.
8
2.
9
1.
1
0.
6
2
1.
8
4
1.
0
(注)1.年金信託、証券投資信託を除く。
2.劣後特約付き社債等を除く。
3.短期社債(電子 CP)を含む。
4.国庫短期証券、TB、FB、財融債を含む。
Notes:1.Pecuniary trusts does not include pension trusts and investment trusts.
2.Straight bonds does not include subordinated bonds.
3.Commercial paper includes dematerialized commercial paper.
4.Government securities includes treasury discount bills, financing bills and FILP bonds.
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
39
適当でないと考える。総人口の減少は総所得を総人口数で割り算した結果、一人当たりの所得水準が
増えるか減るかの議論であり、一定の大きさのパイの配分が大きくなるか小さくなるかの議論であっ
て、パイの大きさが縮小する議論ではないからである。
高齢化社会の到来で企業にとって生産・販売規模を拡大する展望が開けないのが実情であろう。生
産者にとって生産縮小は利潤の低下に繋がるので、パイが縮小する過程でも企業の利潤が減少しない
方法にはコスト削減か、販売先を海外に求め販売数量の減少を食い止めるか、単位あたりの利幅を増
やしていく方法が考えられる。中でも大量生産方式による効率化と省力化を追求して生産の単位あた
りのコスト削減をする方法は景気低迷下で人・在庫品・カネが余る状況下で更なる余剰人員や在庫品
を増やす結果を創り出すことになる。このように国内市場が飽和状態なので日本企業が東南アジア諸
国に進出した結果、安価な逆輸入品が増え国内企業との競合がデフレスパイラルを引き起こした一つ
の大きな要因と考えられる。物価水準の下落がこのような原因に繋がっている場合、日本銀行が金融
機関保有の長期国債をはじめとする公債や ETF(上場投資信託)
、J-REIT(不動産投資信託)債券購
入を増やしても金融機関の日銀当座預金残高が増えるだけで、民間の資金需要に繋がらずデフレが解
消されるとは思えない。
次に製造拠点や営業拠点を東南アジア諸国に設けた場合を考えると、海外での生産が増えた分、企
業の国内での活動が低下を伴うと考えるのが一般的であろう。そうした場合、国内での生産や販売活
動が縮小した分の雇用機会が減り、それに伴う所得も減る。現地企業と M&A を進めた多く企業は、
国内での企業活動を縮小することになろう。ただ企業としての活動拠点が海外に移っただけで企業の
存続が危ぶまれるような事態ではない。このような傾向は野田佳彦政権下で円高が進行した状況下で
は進
し易い状況にあった。企業の海外移転の積極的な姿勢は国内経済活動を低下させ、国内の雇用
機会を奪い、逆輸入品との価格競争がデフレの一因になったと考えられる。
一方、単価の高い製品や部品を製造販売している優良企業は、どのような状況に遭遇しても競合品
や代替品に脅かされずに経営を続けることができる。しかし、卓越して技術や製造ノウハウも日進月
歩で更なる新製品の登場や途上国によるキャッチアップがあり、いつまでも安泰ではない。つまり、
製造業での優越性を維持することは至難の業なので、金融産業やサービス産業への構造転換により生
き残りを模索する必要があろう。このような経済構造の転換が必要な時期に来ているので、アベノミ
クス第3の矢で2
0
1
3年6月1
4日付けの「日本再興戦略」で日本の経済構造の転換が進むのかどうかが
注目する点である。これには、基本的に民間ベースによる常にコマーシャルベースで採算を考慮した
経済構造の転換が必要なので、国の支援や潤沢な助成金で行われる研究室ので研究とは異なることを
念頭に置くべきである。
(イ)グローバル化の進展による国際競争の激化で価格引き下げ圧力が働いた。
グローバル化とは人・モノ・おカネが自由に国境を越えて行き来する、恰も地球全体が一つの国で
あるかのような趨勢を表している。国際競争が激しくなれば海外で生産された安価な類似品や代替品
の輸入が増え、わが国の製造業者に価格引き下げ圧力がかかるので日本企業は廃業するか、それとも
様々な努力と知恵を絞って対抗せざるを得なくなる。金融緩和政策でこの苦境を乗り切るのは無理な
のではないだろうか。この苦境を乗り切るために生産の効率化をはかり省力化した設備や機械を導入
したり、生産拠点を海外へ移転することもある。他にも流通コストや経営資金の調達コストを引き下
げ最終的な製造販売価格を抑える努力もあろう。
いずれも価格引き下げに繋がる努力の結果、実現した安価な製品は新たな発明・発見に類するもの
であり、企業努力で品質が良く安価な製品が流通するようになるのは喜ばしいことであろう。
デフレ下でも大企業の内部留保(利益剰余金)は十分に確保され、デフレが企業利益を侵食してい
40
経済貿易研究 No.40 2014
るとの見解は的を射ていない議論である(図4)
。
(ウ)一般的に家庭で必要とする財は飽和状態にあり、高齢化社会で人々の物的限界効用は限りなく
低下しており、ケインズの言う貨幣の保有動機の中で取引動機は減少の一途を辿り、予備的動機や投
機的動機での貨幣保有が増加していった結果、需要が減少していったと考える。
わが国の人口構成は2
0
1
3年1
0月1日現在、総務省統計局ホームページによると6
5歳以上は全人口の
2
3.
3%を占め、生産年齢人口は6
3.
6%となっている(表7)
。年齢を経るにつれて身の回りには沢山
の物で溢れているので、多機能な省エネ製品が出ても直ぐに買おうと思わなくなり、今使っているの
で不自由しなければ壊れるまで使い、壊れたらその時に考えましょう、と言うのが一般的でないであ
ろうか。新製品の多くは見た目や形状、多機能で使いやすくなっていることは分かっていても、特
に、家電など新たな機能の操作を覚えるのも面倒で、また、総じてあってもなくてもどちらでも構わ
(図4)法人企業統計調査における内部留保(利益剰余金)の推移
非製造業
製造業
(単位:兆円)
350
300
250
200
150
100
50
0
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣ ⅠⅡⅢⅣ Ⅰ
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
注1:法人企業統計四半期別調査の対象法人は資本金1千万円以上
注2:金融業・保険業を除く一般業から算出
注3:
は景気後退期
財務省広報誌「ファイナンス」2
0
1
3年8月号 p.
6
8
(表7)年齢区分別将来人口推計
(千人)
実績値
推計値
2
0
1
0年
2
0
1
5年
2
0
2
0年
2
0
3
0年
2
0
4
0年
2
0
5
0年
2
0
6
0年
総人口
1
2
8,
0
5
7
1
2
6,
5
9
7
1
2
4,
1
0
0
1
1
6,
6
1
8
1
0
7,
2
7
6
9
7,
0
7
6
8
6,
7
3
7
0∼1
4歳
1
6,
8
0
3
1
5,
8
2
7
1
4,
5
6
8
1
2,
0
3
9
1
0,
7
3
2
3
8
7
9,
7,
9
1
2
1
5∼5
9歳
7
0,
9
9
5
6
8,
3
4
2
6
6,
0
7
1
5
9,
4
9
8
5
0,
0
7
9
4
3,
9
2
4
3
8,
4
7
9
6
0∼6
4歳
1
0,
0
3
7
8,
4
7
6
7,
3
3
7
8,
2
3
1
7,
7
8
7
6,
0
8
9
5,
7
0
4
6
5∼6
9歳
8,
2
1
0
9,
7
1
5
5
8,
1
5
7,
3
5
5
8,
8
6
5
6,
6
2
7
5,
6
2
3
7
0∼7
4歳
6,
9
6
3
7,
7
7
9
9,
1
7
9
6,
7
1
1
7,
5
8
4
7,
2
0
2
5,
6
5
6
7
5歳以上
1
4,
0
7
2
1
6,
4
5
8
1
8,
7
9
0
2
2,
7
8
4
2
2,
2
3
0
2
3,
8
4
6
2
3,
3
6
2
(注)201
0年の総数は年齢不詳を含む。
資料:20
10年は総務省「国勢調査」
、2
01
5年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成2
4年1
月推計)」の出生中位・死亡中位仮による推計結果
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
41
ない新製品も少なくない。新しく売り出された製品の善し悪しは二の次で、必要な機能を満たしてい
れば今使っている物で十分なので買い換えを考えない高齢者が多いのではないだろうか。結局、物に
対する執着心は低く、既に一通り揃っているので改めて買う必要性を感じないのが一般的であろう。
人の心理状態の変化を断定することは難しいが、高齢になるにつれて病気や突発的な出来事に備え
て貯蓄するので、貯金がインフレで目減りしないよう投資信託や株式や外貨預金が増え、今までのよ
うな旺盛な物に対する需要の時代は去り縮小傾向になると考えられる。
いつからそのような時代になったのかの断定は難しいが、これは、わが国の生産年齢人口のピーク
が全人口の6
9.
7%を占めた1
9
9
5年以降の人口推移と2
0
0
9年リーマンショックで実質 GDP が大きく落
ち込んだ以降が顕著である(表8)
。
およそ4人に1人が6
5歳以上の高齢化社会になって年金を主な収入源とするようになると、節約志
向が根底にあるのは間違いないが、物に対する執着心の低下、経済学で言う物への限界効用が逓減す
るのも間違いないであろう。そして、高齢化は病気や介護が必要になった時に備えて預貯金で保有し
たり、高利回りやキャピタルゲインを少しでも考慮した金融商品への投資におカネを運用するので、
高齢化社会では物への需要が減少すると考えられる。
(表8)年齢3区分別人口の推移(昭和2
5年∼平成2
3年)
(1
9
5
0年∼2
0
1
1年)
人口(千人)
年次
総数
総人口に占める割合(%)
老年人口
老年人口
生産年齢
生産年齢
年少人口
年少人口
人口
人口
うち
7
5
歳
うち7
5歳
(0∼1
4歳)
(0∼1
4歳)
(15∼64歳) (65歳以上) 以上
(15∼64歳) (65歳以上) 以上
1
9
5
0年
8
3,
2
0
0
2
9,
4
3
0
4
9,
6
6
1
4,
1
0
9
1,
0
5
7
3
5.
4
5
9.
7
4.
9
1
9
5
5
8
9,
2
7
6
2
9,
7
9
8
5
4,
7
3
0
4,
7
4
7
1,
3
8
8
3
3.
4
6
1.
3
5.
3
1
9
6
0
9
3,
4
1
9
2
8,
0
6
7
6
0,
0
0
2
5,
3
5
0
6
1,
62
3
0
6
4.
2
5.
7
1
9
6
5
9
8,
2
7
5
2
5,
1
6
6
6
6,
9
2
8
6,
1
8
1
1,
8
7
4
2
5.
6
6
8.
1
6.
3
7.
1
1
9
7
0
1
0
3,
7
2
0
2
4,
8
2
3
7
1,
5
6
6
7,
3
3
1
2,
2
1
3
2
3.
9
6
9
1
9
7
5
1
1
1,
9
4
0
2
7,
2
3
2
7
5,
8
3
9
8,
8
6
9
2,
8
4
2
2
4.
3
6
7.
7
7.
9
1
9
8
0
1
1
7,
0
6
0
2
7,
5
2
4
7
8,
8
8
4
1
0,
6
5
3
3,
6
6
1
2
3.
5
6
7.
4
9.
1
1
9
8
5
1
2
1,
0
4
9
2
6,
0
4
2
8
2,
5
3
5
1
2,
4
7
2
4,
7
1
3
2
1.
5
6
8.
2
1
0.
3
1
9
9
0
1
2
3,
6
1
1
2
2,
5
44
8
6,
1
4
0
1
4,
9
2
8
5,
9
8
6
1
8.
2
6
9.
7
1
2.
1
1
9
9
5
1
2
5,
5
7
0
2
0,
0
3
3
8
7,
2
6
0
1
8,
2
7
7
7,
1
7
5
1
6
6
9.
5
1
4.
6
2
0
0
0
1
2
6,
9
2
6
1
8,
5
0
5
8
6,
3
8
0
2
2,
0
4
1
9,
0
1
2
1
4.
6
6
8.
1
1
7.
4
5
2
0
0
1
2
7,
7
6
8
1
7,
5
8
5
8
4,
4
2
2
2
5,
7
6
1
1
1,
6
3
9
1
3.
8
6
6.
1
2
0.
2
2
0.
8
2
0
0
6
1
2
7,
9
0
1
1
7,
4
3
5
8
3,
7
3
1
2
6,
6
0
4
1
2,
1
6
6
1
3.
6
6
5.
5
2
0
0
7
1
2
8,
0
3
3
1
7,
2
9
3
8
3,
0
1
5
2
7,
4
6
4
7
0
3
1
2,
1
3.
5
6
5
2
1.
5
2
0
0
8
1
2
8,
0
8
4
1
7,
1
7
6
8
2,
3
0
0
2
8,
2
1
6
1
3,
2
1
8
1
3.
5
6
4.
5
2
2.
1
2
0
0
9
1
2
8,
0
3
2
1
7,
0
1
1
8
1,
4
9
3
2
9,
0
0
5
1
3,
7
1
0
1
3.
3
6
3.
9
2
2.
7
2
0
1
0
1
2
8,
0
5
7
8
3
9
1
6,
8
1,
7
3
5
2
9,
4
8
4
1
4,
1
9
4
1
3.
1
6
3.
8
2
3
2
0
1
1
1
2
7,
7
9
9
1
6,
7
0
5
8
1,
3
4
2
2
9,
7
5
2
1
4,
7
0
8
1
3.
1
6
3.
6
2
3.
3
(注)各年10月1日現在 昭和2
5年∼平成1
7年及び2
2年は国勢調査人口(年齢不詳をあん分した人口)による
昭和45年までは沖縄県は含まない。
統計局ホームページ(平成2
3年1
0月1日現在)
総務省 www.stat.go.jp/
42
経済貿易研究 No.40 2014
3.為替レートと総需要との関係を考えてみよう
大胆な金融緩和、異次元の金融緩和により一時的に円安になることは容易に推測できる。実際に円
相場は2
0
1
2年1
2月安倍内閣発足時には、対ドルで8
3円6
4銭、対ユーロでは1
0
9円6
2銭であったが、2
0
1
3
年1
2月では対ドルが1
0
3円4
6銭、対ユーロでは1
4
1円6
7円で、ドル相場は1年で2
3.
6
8%減価し、対
ユーロでは2
9.
2
3%減価したことになる(表9)
。
円安が企業収益に与えた効果の程度と、その効果が一時的なものなのか長期にわたるものなのかを
見極めるのは容易ではない。例えば、トヨタ自動車の連結決算は売上高で1
4.
9%増、当期純利益で
8
2.
5%増になっているが、それが円安の効果だけと断定することは難しい。なぜならば欧米経済の回
復基調に依ることも考えられるからである(表1
0)
。また、わが国の輸出は需要の価格弾力性が1よ
りも大きい自動車などの「輸送用機器」
、半導体等電子部品、映像機器、通信機などの「電気機器」
、
電算機類および同部分品、原動機などの「一般機械」が主力品目なので円安により輸出総額は大きく
改善すると考えられる一方、輸入は需要の価格弾力性が1よりも小さい原油や石炭、LNG(液化天
然ガス)などの「鉱物性燃料」や、とうもろこし、大豆、小麦などの「食料品」
、銅や鉛、アルミニ
ウムなどの「非鉄金属」が主な主力品目になっている。これらの輸入財は必需品とも言える燃料、原
材料、食料品が多く需要の価格弾力性が1より小さいので円相場の変動に関わりなく年間を通して一
定の量は確保する必要がある。円安による輸入額は、円安分を余計支払うことになり輸入総額は増加
傾向にある。特に、東日本大震災による原発停止に伴い、天然ガスや原油の輸入が急増し、貿易収支
は輸入増が2
3年度以降一貫して続いている(表1
1)
。日本経済新聞1月1
6日付、2
0
1
3年度財務省貿易
(表9)株式・円相場・統計・指標
日経平均株価
(円)
上場株時価総額
(兆円)
1日平均売買
代金
(億円)
対ドル
(円)
対ユーロ
(円)
2
0
1
2年1
2月
9
8
1
4.
3
8
3
0
0.
2
4
1
5
9
3
6
8
3.
6
4
1
0
9.
6
2
2
0
1
3年1月
1
0
7
5
0.
8
5
3
2
9.
2
1
2
2
0
2
3
8
9.
1
8
1
1
8.
5
0
2
0
1
3年2月
1
1
3
3
6.
4
4
3
4
2.
1
9
2
4
1
4
1
9
3.
2
1
1
2
4.
3
6
1
3年3月
20
1
2
2
4
4.
0
3
3
6
3.
0
8
2
5
3
9
4
9
4.
7
5
1
2
2.
8
3
2
0
1
3年4月
1
3
2
2
4.
0
6
4
0
9.
1
8
3
3
9
1
9
9
7.
7
1
1
2
7.
0
9
1
3
1.
0
5
2
0
1
3年5月
1
4
5
3
2.
4
1
3
9
8.
9
5
3
9
2
4
9
1
0
1.
0
8
2
0
1
3年6月
1
3
1
0
6.
62
3
9
8.
3
4
2
8
0
3
7
9
7.
4
3
1
2
8.
7
0
2
0
1
3年7月
1
4
3
1
7.
5
4
4
0
0.
7
5
2
4
8
1
6
9
9.
7
1
1
3
0.
4
0
1
3
0.
2
5
2
0
1
3年8月
1
3
7
2
6.
6
6
3
9
1.
7
7
1
9
6
5
6
9
7.
8
7
2
0
1
3年9月
1
4
3
7
2.
1
2
4
2
1.
6
8
2
3
1
3
1
9
9.
2
4
1
3
2.
4
5
2
0
1
3年1
0月
1
4
3
2
9.
0
2
4
2
3.
4
8
2
1
7
9
4
9
7.
8
5
1
3
3.
3
6
2
0
1
3年1
1月
1
4
9
3
1.
7
4
4
4
5.
4
2
2
4
8
5
9
1
0
0.
0
3
1
3
5.
0
0
2
0
1
3年1
2月
1
5
6
5
5.
2
3
4
6
3.
1
8
2
6
2
5
9
4
6
1
0
3.
1
4
1.
6
7
【備考・その他】
・日経平均株価 期中平均値。
・東証1部上場株時価総額 期末値。
・東証1部、1日平均売買代金 東証発表。
・円相場 東京、銀行間、直物、期中平均値。
日本経済新聞社
http : //www.nikkei.com/txt/report/market/
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
43
(表1
0)連結決算要約(6ヶ月累計)
(単位:億円)
当第2四半期
累計期間
(’
1
3/4
‐
9)
売上高
増減
前年同期
‐
9)
(’
1
2/4
増減率
1
2
5,
3
7
4
1
0
9,
0
8
3
1
6,
2
9
1
1
4.
9%
営業利益
1
2,
5
5
4
6,
9
3
7
5,
6
1
7
8
1.
0%
税金等調整前
当期純利益
1
3,
4
3
5
7,
9
4
5
5,
4
8
9
6
9.
1%
当期純利益※
1
0,
0
0
6
5,
4
8
2
4,
5
2
3
8
2.
5%
9
9円
7
9円
2
0円の円安
1
3
0円
1
0
1円
2
9円の円安
為替
レート
ドル
ユーロ
※当社株主に帰属する当期純利益
トヨタ自動車の20
1
4年3月期第2決算説明会プレゼンテーション資料
統計通関ベース(速報)によると、輸出数量は1
8.
8%増加で、輸入数量は2.
4%の増加になり、輸出
額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字は1兆2
3
9億円と前年同月と比べて9
3.
7%増えた。したが
って、円安により貿易収支が改善した結果にはなっていない。
マーシャル=ラーナーの条件に従えば、輸出需要の価格弾力性と輸入需要の価格弾力性の和が1よ
りも大きい場合、貿易収支は改善する筈であるが、わが国は輸出では需要の価格弾力性は1より大き
くて輸出総額は増加するが、輸入では需要の価格弾力性が1より小さいので輸入総額も増加する。よ
って為替相場の減価(円安)が貿易収支改善に繋がるかどうか一概に言及することは出来ない。特
に、貿易相手国の景気動向により輸出額は大きく左右され、また、輸入も国内の景気動向や東日本大
震災のような突発的な出来事に大きく影響されるので、
「金融緩和政策により円安が引き起こされ、
それがわが国からの輸出財に割安感が生じ輸出が増え、逆に、輸入では円安が居住者にとって外国か
らの輸入財が割高になるので、輸入が減り貿易収支が改善する」…との教科書的な説明は当てはまら
ないと言える。
次に、対 GDP 比貿易依存度について考えてみたい。
わが国の対 GDP 比貿易依存度は、2
0
1
0年の輸出依存度は1
4.
1%、輸入依存度は1
2.
7%で世界でも
極めて依存度の低い国にランクされている(表1
2)
。わが国が貿易大国であり、円高になると輸出が
減り「円高不況」になるとの報道は自動車産業のような輸出を柱する大企業の例であり、わが国の経
済全体への影響は1
0%から1
5%未満である。したがって、超大輸出企業のために国民の税金で巨額な
市場介入をして円高を阻止するなど無意味なことと言いたい。「経済の発展に伴い、貿易収支が変化
する」というクローサーの発展段階説では、日本の貿易赤字は未成熟な債権国から成熟した債権国に
移行する段階で生じる過程であり、過去の対外債権収入による所得収支で経常収支は黒字になってい
る。今後、貿易収支が恒常的に赤字になったとしても、金融緩和政策や市場介入による円安誘導は行
うべきでない。むしろ円高であることが、円の購買力を高め対外投資を積極的に促すことになった結
果として生じた円売りドル買いの円安であれば受け入れられる動向と言えよう。
4.大胆な金融緩和で経済回復に繋がるのか
この度公表された「日本再興戦略」の個々の細目について詳しく検証していないので、その是々
44
経済貿易研究 No.40 2014
(表1
1)
平成2
5年1
1月2
8日
財務省
報道発表
平成2
5年度上半期分(確報)
総額(原値)
(単位:百万円、%)
輸
出
価額
平成2
0年度
輸
伸率
7
1,
1
4
5,
5
9
3 −1
6.
4
入
価額
7
1,
9
1
0,
4
4
2
差
引
伸率
価額
−4.
1
−7
6
4,
8
4
9
伸率
−
2
1年度
5
9,
0
0
7,
8
7
9 −1
7.
1
5
3,
8
2
0,
8
5
2 −2
5.
2
5,
1
8
7,
0
2
7
−
2
2年度
6
7,
7
8
8,
8
3
8
6
2,
4
5
6,
7
0
4
6.
0
1
5,
3
3
2,
1
3
4
2.
8
1
4.
9
2
3年度
6
5,
2
8
8,
4
8
7
−3.
7
6
9,
7
1
0,
5
7
4
1
1.
6
−4,
4
2
2,
0
8
7
−
2
4年度
6
3,
9
4
0,
5
4
4
−2.
1
7
2,
1
1
6,
8
1
8
3.
5
−8,
1
7
6,
2
7
4
8
4.
9
平成2
4年1
0月−3月
9
2
3
1,
7
8
2,
3
−2.
2
3
6,
7
2
3,
2
0
7
4.
3
−4,
9
4
0,
8
1
5
8
1.
0
2
5年4月−9月
3
5,
3
1
9,
7
0
4
9.
8
4
0,
3
1
9,
5
2
8
1
3.
9
−4,
9
9
9,
8
2
4
5
4.
5
平成2
4年1
0月−1
2月
1
5,
4
2
9,
7
3
8
−5.
5
1
7,
5
8
8,
7
2
2
0.
5
−2,
1
5
8,
9
8
4
8
2.
6
2
5年1月−3月
1
6,
3
5
2,
6
5
4
1.
2
1
9,
1
3
4,
4
8
5
8.
1
−2,
7
8
1,
8
3
1
7
9.
9
4月−6月
1
7,
6
0
4,
3
5
5
7.
1
1
9,
6
6
9,
0
5
1
1
0.
4
−2,
0
6
4,
6
9
6
5
0.
7
7月−9月
1
7,
7
1
5,
3
4
9
1
2.
7
4
7
7
2
0,
6
5
0,
1
7.
5
−2,
9
3
5,
1
2
8
5
7.
4
平成2
4年1
0月
5,
1
4
8,
0
1
1
−6.
5
5,
7
0
4,
2
0
6
−1.
5
−5
5
6,
1
9
5
9
6.
5
1
1月
4,
9
8
3,
1
8
0
−4.
1
5,
9
4
0,
2
2
0
0.
9
−9
5
7,
0
4
0
3
8.
5
1
2月
4
7
5,
2
9
8,
5
−5.
8
5,
9
4
4,
2
9
5
1.
9
−6
4
5,
7
4
8
2
1
0.
0
9.
6
2
5年1月
4,
7
9
8,
5
7
4
6.
3
6,
4
3
2,
1
1
6
7.
1
−1,
6
3
3,
5
4
2
2月
5,
2
8
3,
1
0
9
−2.
9
6,
0
6
4,
4
5
4
1
2.
0
−7
8
1,
3
4
5
−
3月
6,
2
7
0,
9
7
2
1.
1
6
3
7,
9
1
6
6,
5.
6
−3
6
6,
9
4
4
3
4
8.
4
4月
5,
7
6
6,
6
1
6
3.
8
6,
6
6
1,
4
5
1
9.
5
−8
8
4,
8
3
5
7
0.
7
9.
9
5月
5,
7
6
6,
6
9
3
1
0.
1
6,
7
6
4,
8
4
2
1
0.
1
−9
9
8,
1
4
9
6月
6,
0
6
1,
0
4
6
7.
4
5
8
6,
2
4
2,
7
1
1.
8
−1
8
1,
7
1
2
−
7月
5,
9
6
0,
5
0
0
1
2.
4
6,
9
8
9,
9
9
1
1
9.
7
−1,
0
2
9,
4
9
1
9
4.
8
8月
5,
7
8
2,
9
2
1
1
4.
6
6,
7
5
0,
7
7
9
1
6.
1
−9
6
7,
8
5
8
2
6.
0
9月
5,
9
7
1,
9
2
8
1
1.
5
6,
9
0
9,
7
0
7
1
6.
6
−9
3
7,
7
7
9
6
5.
0
(注)1.輸出は FOB 価格、輸入は CIF 価格。
2.輸出は当該輸出貨物を積載する船舶又は航空機の出航の日、輸入は当該輸入貨物の輸入許可の日(蔵入貨物、
移入貨物、総保入貨物及び輸入許可前引取貨物は、それぞれ当該貨物の蔵入、移入、総保入、輸入許可前引取
の承認の日)をもって計上。
3.「伸率」は、対前年伸率。
連絡・問い合わせ先
関税局調査課統計係
TEL 3
58
1−4
1
1
1(代表)
内線 2
5
1
5 25
18 2
51
4
税関ホームページ
http : //www.customs.go.jp
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
45
(表1
2)
総務省統計局 世界の統計2
0
1
2 第9章2
2
8ページ
貿易
9−3 貿易依存度
(単位 %)
国(地域)
アジア
日本
イスラエル
インド
インドネシア
韓国
クウェート
サウジアラビア
シンガポール
タイ
中国
トルコ
フィリピン
香港
マレーシア
北アメリカ
アメリカ合衆国 a
カナダ b
メキシコ b
南アメリカ
アルゼンチン
コロンビア
チリ
ブラジル
ベネズエラ c
ヨーロッパ
アイスランド
アイルランド
イギリス
イタリア
オーストリア
オランダ
ギリシャ
スイス
スウェーデン
スペイン
デンマーク
ドイツ
ノルウェー
ハンガリー d
フランス e
ポルトガル
ロシア
ユーロ圏 f
アフリカ
南アフリカ
モロッコ
オセアニア
オーストラリア
ニュージーランド
2
0
0
6
輸出依存度
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
0
6
輸入依存度
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
0
1
4.
9
3
2.
0
1
2.
9
2
8.
4
3
4.
2
5
5.
2
5
9.
3
1
8
6.
9
6
3.
0
3
4.
8
1
6.
1
4
0.
3
1
6
6.
9
1
0
2.
5
1
6.
3
3
2.
2
4
1
2.
2
7.
3
3
5.
4
5
4.
7
6
0.
6
1
6
8.
6
6
2.
2
3
4.
9
1
6.
6
3
4.
9
1
6
6.
3
9
4.
2
1
6.
1
3
0.
1
1
5.
1
2
7.
4
4
5.
3
5
8.
8
6
5.
8
1
7
7.
9
6
4.
5
3
1.
6
1
8.
1
2
9.
3
1
6
8.
4
9
3.
9
1
1.
5
2
4.
5
1
2.
2
2
2.
2
4
3.
4
4
7.
4
5
1.
6
1
4
6.
7
5
7.
5
2
4.
1
1
6.
6
2
3.
8
1
5
2.
2
8
1.
4
1
4.
1
2
6.
8
1
2.
8
2
2.
3
4
6.
0
…
5
7.
8
1
5
7.
7
6
1.
1
2
6.
8
1
5.
5
2
7.
2
1
7
3.
8
8
3.
5
1
3.
3
3
4.
4
1
8.
8
2
2.
1
3
2.
5
7.
0
1
1
9.
6
1
6
4.
1
1
6
2.
2
8.
4
2
6.
3
4
6.
0
1
7
6.
3
8
3.
6
1
4.
1
3
5.
1
1
8.
9
2
1.
5
3
4.
0
1
8.
6
2
3.
4
1
4
8.
2
5
7.
1
2
7.
4
2
6.
3
3
9.
9
1
7
7.
5
7
8.
5
1
5.
7
3
3.
4
2
5.
0
2
5.
0
4
6.
7
1
6.
7
2
4.
2
1
6
8.
3
6
5.
5
2
5.
0
2
7.
7
3
6.
0
1
8
0.
4
7
3.
6
1
0.
9
2
5.
2
1
8.
9
1
7.
4
3
8.
7
1
8.
6
2
4.
0
1
3
3.
6
5
0.
9
2
0.
1
2
2.
9
2
8.
4
1
6
6.
0
6
3.
9
1
2.
7
2
8.
1
1
9.
0
1
8.
7
4
1.
9
…
2
2.
3
1
3
9.
4
5
7.
8
2
3.
7
2
5.
2
3
0.
8
1
9
3.
0
6
9.
1
7.
7
3
0.
7
2
6.
4
8.
3
2
9.
2
2
6.
3
9.
1
2
9.
9
2
6.
7
7.
5
2
3.
4
2
6.
1
8.
7
2
4.
5
2
8.
7
1
4.
3
2
7.
5
2
7.
0
1
4.
4
2
6.
5
2
7.
4
1
5.
1
2
7.
0
2
8.
4
4
1
1.
2
3.
8
2
6.
6
1
3.
4
2
4.
8
2
9.
0
2
1.
7
1
5.
0
4
0.
0
1
2.
7
3
5.
7
2
1.
3
4.
4
1
4
1.
2
1
1.
8
3
0.
5
2
1.
4
1
5.
7
3
8.
9
1
2.
0
3
0.
6
1
8.
2
1
4.
1
3
2.
3
9.
6
1
7.
7
1
7.
5
1
3.
8
3
3.
9
9.
7
1
6.
8
1
5.
9
1
6.
0
2
6.
2
8.
8
4
1
8.
1
7.
0
1
6.
0
2
8.
7
9.
3
2
0.
4
1
7.
4
1
6.
2
3
6.
3
1
1.
0
1
6.
0
1
2.
7
1
4.
1
2
5.
7
8.
4
1
2.
6
1
3.
0
1
4.
1
2
8.
5
9.
2
9.
9
1
9.
5
4
7.
1
1
7.
5
2
2.
3
4
0.
4
5
8.
9
7.
8
3
6.
2
3
7.
0
1
7.
3
3
3.
4
3
8.
4
3
6.
3
6
5.
7
2
1.
7
2
1.
3
7
3
0.
1
7.
2
2
1.
2
4
7.
3
1
5.
5
2
3.
6
4
2.
2
6
0.
7
6
7.
3
7.
9
3
6.
5
1
7.
2
3
2.
7
3
9.
6
3
5.
0
6
8.
0
2
1.
3
2
1.
6
2
7.
6
♯1
7.
4
3
0.
5
4
7.
6
1
7.
4
2
3.
5
4
1.
5
6
1.
6
7.
5
3
7.
9
3
7.
3
1
7.
3
3
3.
8
3
9.
7
3
8.
2
6
8.
4
2
1.
4
2
2.
6
2
8.
0
♯1
7.
3
3
3.
5
5
2.
8
1
6.
3
1
9.
2
3
4.
2
5
4.
1
6.
2
3
3.
7
3
2.
3
1
5.
0
2
9.
9
3
3.
5
3
2.
5
6
5.
0
1
8.
0
1
8.
8
2
4.
3
♯1
4.
6
3
6.
4
5
8.
1
1
8.
3
2
1.
8
3
8.
4
6
2.
7
7.
1
3
5.
4
3
4.
4
1
7.
5
3
1.
1
3
8.
5
3
1.
8
7
2.
6
2
0.
0
2
1.
3
2
6.
4
♯1
6.
2
3
0.
6
3
7.
6
2
2.
4
2
3.
6
4
0.
5
5
2.
8
2
4.
0
3
3.
7
3
1.
9
4
2
6.
3
1.
0
3
1.
5
1
9.
1
6
8.
4
2
4.
2
3
2.
6
1
8.
3
1
6.
6
2
9.
7
3
3.
0
2
2.
1
2
4.
1
4
2.
0
5
3.
7
2
4.
4
3
5.
2
3
3.
1
2
6.
6
3
1.
2
3
1.
6
2
0.
6
6
8.
3
2
4.
4
3
2.
9
1
9.
1
♯1
7.
0
3
1.
6
3
1.
1
2
3.
9
2
4.
4
4
2.
2
5
6.
3
2
5.
2
3
4.
3
3
4.
3
2
5.
9
3
1.
8
3
2.
5
2
0.
1
6
7.
7
2
5.
1
3
7.
3
1
9.
1
♯1
6.
8
2
9.
8
2
8.
2
2
2
2.
1
9.
6
3
5.
6
4
7.
9
2
1.
2
2
9.
9
2
9.
6
1
9.
8
2
6.
4
2
7.
8
8.
5
1
6
0.
0
2
1.
1
3
0.
5
1
6.
9
♯1
4.
1
3
1.
0
2
9.
7
2
5.
0
2
3.
7
3
9.
8
5
6.
2
2
0.
9
3
1.
8
3
2.
3
2
2.
4
2
7.
2
3
2.
3
1
8.
7
6
7.
1
2
3.
5
3
3.
1
1
8.
0
♯1
5.
6
2
2.
4
1
9.
4
2
4.
3
2
0.
4
3
0.
4
2
2.
6
2
1.
8
1
5.
4
2
2.
4
1
9.
3
3
0.
2
3
6.
5
3
0.
9
4
2.
4
3
6.
5
4
7.
3
2
5.
9
3
5.
9
2
5.
8
3
9.
1
1
5.
7
2
0.
9
1
4.
8
2
1.
0
1
7.
9
2
3.
4
1
5.
7
2
1.
1
1
7.
2
2
3.
0
1
7.
7
2
4.
4
1
7.
3
2
3.
5
1
9.
1
2
6.
0
1
6.
7
2
1.
2
1
6.
3
2
2.
6
a 米領バージン諸島を含む。 「輸出」は FAS(船側渡し)価格。 b 「輸入」は FOB 価格。 c 石油の輸出を除
く。 d 再輸出を除く。 e 海外県(仏領ギアナ,グアドループ島,マルチニーク島及びレユニオン)を含む。
f ユーロ圏内での取引を除く。ユーロ参加国数…2
0
0
6年:12,
2
00
7年:1
3,
2
00
8年:1
5,
20
09年:1
6,
2
01
0年:2
7。
46
経済貿易研究 No.40 2014
非々について持論を述べる立場にはないが、異次元の金融緩和政策によりマネタリーベース残高を
2
0
1
2年末の1
3
8兆円から、2
0
1
3年末に2
0
0兆円に、そして2
0
1
4年末には2
7
0兆円にまで2年間でおおよ
そ2倍に増やしてもアベノミクス第3の矢で新たな資金需要が民間で起こらなければ、金融機関が日
銀の当座預金口座に積み増した残高は長期国債購入に向かうしかなく、国債の利回りが一時的に下が
っても「2年程度の期間に消費者物価指数を2%の上昇を目標とする」インフレ目標を達成できるか
どうか疑問である。
教科書的な説明ではインフレが起きる背景は「ディマンドプル」か「コストアップ」である。この
度の黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和政策」は、1
9
9
1年のバブルが弾けて以降、長期にわたる景気
低迷で需要が縮小してきた経済情勢からの脱却を目指す金融緩和政策であった。1
9
8
0年代後半からの
バブル景気で膨らんだ信用が元の状態に戻ろうとする、言わば正常な状態に戻ろうとする反動として
の縮小均衡が続いてきたと言える。つまり総需要の不足はバブル期の価格調整過程とも考えられるの
である。総需要が不足する状況下で大胆な金融緩和とか異次元の金融緩和をしてインフレを引き起こ
そうとすること自体が辻褄の合わない対応としか思えない。1
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1年に発足したレーガン大統領下での
レーガノミクスとアベノミクスを比べると、供給面を重視する景気刺激策である点でアベノミクスと
似ているが、アベノミクスでは減税により需要の喚起を行わない点が異なっている。つまり総需要が
縮小している状況下で消費税率の引き上げを決断したり、年金給付開始年齢の引き上げや給付額の見
直しをするような話題が出ているが、これは年金受給者の財布の紐を引き締める結果になろう。この
ような政策は総需要の減少に繋がりデフレ現象を煽り景気を悪化させかねない。
もっと言えば、「インフレが隠れた税金」であることを忘れてはならない。つまり「2年程度の期
間に2%の消費者物価水準の上昇を目指す政策」は2年間に2%の増税を行うことに他ならない。
ではデフレで景気が悪くなったのか、景気が悪くてデフレになったのかの議論である。米国は1
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年金準備法を制定したが1
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8年3月には法的金準備を撤廃したので、世界中でユーロダラーが増加
し、金の裏付けのない紙幣となった米ドルが投機マネーとなって世界中で頻繁に通貨危機を引き起こ
してきたことを想起すると、おカネが足りなくて景気が悪くなったとは考え難い。したがって、景気
が悪くなってデフレ現象が起きたとするのが妥当な結論であろう。
次に、「コストアップ・インフレーション」の要因は、何らかの要因でコスト上昇によるものか、
完全雇用下での生産増に努めた結果起こる現象である。ところが、第2次安倍政権の異次元の金融緩
和政策は、デフレが続き物価水準が下落している状況下でインフレを起こし企業の販売価格を引き上
げて、国民負担で企業利益を確保しようとする施策であり、消費税率の引き上げと変わらない。
企業は大規模大量生産や生産拠点の海外移転などの企業努力により供給量は増え、物価も下落して
いる状況で2年間に2%のインフレを引き起こそうとする安倍内閣の政策は理解し難い。
あとがき
異次元の金融緩和政策でデフレからの脱却や長引く不況から再興が叶うのであろうか。金融緩和政
策は経済が一時的に低迷した時の応急措置として有効な手段であるが、膨張した信用は何れ収縮して
元に戻るのが健全な本来の経済システムであり、それがバブルの反動として起きたのであるならば、
当然起こるべくして起きた経済現象と言えよう。信用の収縮過程の苦境を回避するために、敢えて更
なるバブルを起こして対処しようとするのは邪道としか言いようがない。
結局、ゼロ金利政策でも叶わなくなった収縮過程を無視して量的緩和政策で対応し名目貨幣量が増
加した相当分の物価が上昇すれば、全く意味のない元の木阿弥である。それどころか、名目貨幣量の
アベノミクスの行方を懸念する
論
説
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増加で利する者と、逆に物価の上昇によりその負担を強いられる者が出ることを肝に銘じておく必要
があろう。
デフレの分だけ物価を上昇させ、インフレを起こすことまで考えていない、とのリフレ論者にして
も量的緩和政策からの出口戦略が問題になるであろう。一度、走り出した信用膨張過程は1
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0年代後
半からのバブル景気のようになるのではないであろうか。バブルがバブルを呼び、止めどない不動産
投機や株高が引き起こされ、その後、大手銀行や証券会社、保険会社が経営破綻や倒産に追い込ま
れ、その不良債権処理には巨額の税金が投入されてきたことは記憶に新しい。
結局、大胆な金融緩和政策の目的が「広く国民の利益のため」ではなく、膨らみ続けた国の債務負
担を軽減するためなのではないのか。それとも一部の大企業を支援するための方策なのではないだろ
うか。
金融緩和政策も拡張的財政政策でも一時的な対症療法としては役に立つかもしれないが、消費税率
の引き上げと同様に、国民から吸い上げられた税金が何の目的で誰に渡るのかが問題である。広く国
民の利益に叶う目的で使われるのであれば負担にも賛同するが、一部の大企業や官僚の天下り先を確
保するために使われるのであれば、負担を強いられた人達の格差拡大に繋がる可能性が生じる。ま
た、政府による税金の再分配は極めて効率が悪く「小さな政府」であり続けることが最善策であろ
う。かつて「3K」と言われた「国鉄・米の食管制度・国民健康保険制度」は巨額な赤字を計上し、
国鉄は民営化され、食管制度は廃止され何とか苦境を乗り越えた。このように国が運営管理した機関
や制度は上手く行かないのは経験的事実である。政府に頼ること自体が問題であり、できる限り民間
で出来ることは民間で済ませることが何よりも大切なことであろう。
アベノミクスの金融緩和政策は低価格品の流通で利益が圧迫されている企業を優先的に上向かせて
景気の上昇を図ろうとしているが、グローバル化による国際競争に打ち勝つため、コスト削減を目指
す結果として大規模大量生産や東南アジア諸国への製造拠点や営業拠点を移した企業はむしろ、内部
留保(利益剰余金)を増やしている状況にある(図4)
。
また、需要面で生産年齢人口の減少が所得の減少とともに消費の減少に繋がることを指摘したが、
同時に、高齢化による物欲への低下、心理的な要因が需要を縮小させる大きな要因として取り上げ
た。つまり、アベノミクスの金融緩和政策の恩恵を被らないのである。
為替相場の金融緩和による円安誘導での貿易収支の改善については、わが国の輸出入財の特性から
改善には繋がらないことを指摘した。特にわが国の貿易依存度は極めて低く、
「貿易立国」とか「貿
易大国」には当たらず、円高で経済が立ち行かなくなるという印象は間違っていることを指摘してお
きたい。
結局、大胆な金融緩和政策により短期的には円安になってもインフレで国内の物価が上昇すれば、
日本製品の割安感が払拭され、円安による輸出の増加は期待外れとなろう。むしろ、タイムラグによ
る副作用が懸念される。
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1年にバブルが弾けた後、長期にわたる景気の低迷とデフレスパイラルの状況は、再三にわたる
景気対策や財政支出、ゼロ金利政策や量的緩和政策でも脱却出来なかった。これは、おカネ不足が要
因でなく、バブル期の信用拡張による生産過剰が原因であったと考えている。特に、その後の低金利
政策や量的緩和政策が企業の金融コスト負担を過小させ、企業が需要予測を誤って大量に設備投資を
したことも生産過剰と需要不足に拍車をかけたのであり、金融・財政政策での対応は的を射ていない
と言える。
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経済貿易研究 No.40 2014
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