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講義資料 - 経営教育研究センター
6. 顧客価値 6.1 価値マップ 6.2 顧客価値と競争優位 6.3 製品進化のモデル 6.4 新興市場戦略 1 • 新宅純二郎(2009)「新興国市場開拓に向けた日本企業の課題と戦略」『 国際協力銀行・国際調査室報』2号, pp.53-66. ⓒ新宅2015 2 光ディスクメディア産業の動向 企業国籍別メディア生産枚数 千枚 16000000 14000000 25000 20000 12000000 15000 10000 10000000 中国 5000 インド(MBI) 0 8000000 1991 1992 1993 1994 1995 台湾 6000000 日本 4000000 2000000 0 年 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 データ出所 日本、中国:テクノ・システム・リサーチ 台湾:IEK インド:モーザーベア・インディア 光ディスクメディアは、日本企業が先行して規格開発を行い、1996年頃までは産業を日本企業だけで 独占していた。1996年頃より台湾企業が参入、設備と材料を主に欧州企業から調達し、 完成品の製造に特化してシェアを拡大する。MBIは台湾企業の参入におよそ3年ほど遅れる1999年に 三菱化学との連携により参入し、最新の設備・材料と製造ノウハウを利用して品質・コストに優れた製品 を出荷、シェアを伸ばしている。 出所:中川(2005) 3 CD-R/RW媒体の価格推移 日本企業黒字 US$ 9 台湾企業巨額の黒字 台湾:特別税制 Write Strategy 8 7 1年で1/4に下落 追従不可能 CD-R 媒体価格 6 CD-RW 5 1/8 1年で1/3 4 台湾企業 OEM:0.17 3 1/2.5 2 0.55 1 0 為替:1$= © 漸く益転 台湾企業も赤字 '95 '96 83¥ 110¥ 小川紘一@MMRC 値上げ 0.37 '97 '98 '99 '00 '01 120¥ 138¥ 120¥ 105¥ 120¥ 台湾企業の参 入 0.22 0.29 '02 125¥ 0.31 '03 120¥ 日本の主要企業:製造から撤退 Start-labが最後まで頑張る 4 光ディスクメディアの生産シェア Shipment share of CD-R media in 2000 Other Taiwanese 29% Kodak 4% Taiyo Yuden 8% TDK 5% MKM 2% National share Other Japanese 5% the US 4% Japan 21% Ritek 24% CMC 23% Taiwan 75% Total: 4457.1 million units Source: Techno System Research 出所:中川(2005) © 新宅@東大MMRC 5 光ディスクメディアの販売シェア Sales share of CD-R media in 2000 Memorex(US) 11% Imation(US) 6% unknown 34% National (areal) share Kodak(US) 4% the US 21% MKM 10% TDK 9% princo(TW) 6% Philios(EU) 6% Other Japanese 9% unknown 33% Taiwan 6% EU 6% Japan 34% Hitachi Maxell Total: 4457.1 million units 5% Source: Techno System Research 出所:中川(2005) © 新宅@東大MMRC 6 台湾企業の品質思想 Reasonable Quality • 大手企業 – 日本企業へのOEMで品質管理を学習 – 日本企業向けには高品質 – 自社ブランド、海外市場向けには、その品質基準の20ー 30を使う。日本市場は特殊、過剰品質。 • 中小企業 – 設備メーカーに依存。 – 品質に問題あり 7 新宅(2009)の議論 過剰品質(オーバースペック)か? J high 価格 R C low low 品質・機能 high ⓒ新宅2015 出所:新宅純二郎『日本企業の競争戦略』有斐閣, 1994年, 第4章。 8 Reasonable Quality and Price CD-R:北米市場、二輪:中国市場、 DRAM:PC市場、液晶:モニタ市場 high J price 過小 品質 R 適正 品質 C low low 過剰 品質 quality high ⓒ新宅2015 9 Reasonable Quality and Price CD-R:日本市場、二輪:日本市場、 DRAM:サーバー市場、液晶:TV市場 high J price 過小 品質 R 適正 品質 C 過剰 品質 low low quality high ⓒ新宅2015 10 6.4 新興市場戦略 新興市場戦略 消費者の無差別曲線(価格重視) 11 6.4 新興市場戦略 新興市場戦略 消費者の無差別曲線(機能重視) 12 過剰品質問題への対処 ① 品質を低価格市場に適合させる high 品質設計基準を見直し、 品質を落としながら、コ スト/価格低下。 価格 × 単なるコスト削減では 半額にはならない。 low low 品質・機能 high ⓒ新宅2015 13 二輪車の世界生産量および 日本企業の生産量の推移 50,000,000 45,000,000 40,000,000 35,000,000 日本企業グローバルシェア 1999年 36.9% 04年 46.1 00年 37.5 05年 54.8 01年 39.2 06年 51.0 02年 44.3 07年 47.4 03年 46.1 世界生産量台数(推定) 日本企業国内生産 日本企業グローバル生産 30,000,000 台 25,000,000 20,000,000 15,000,000 10,000,000 5,000,000 2005年 2003年 2001年 1999年 1997年 1995年 1993年 1991年 1989年 1987年 1985年 1983年 1981年 1979年 1977年 1975年 0 出所:太田原(2009), 新宅・天野編著『ものづくりの国際経営戦略』第8章。著者が、本田技研工業『世界二輪車概況』各年度版、各社(本田技研工業、 ⓒ新宅2015 ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業)有価証券報告書・IR資料より作成。 14 ホンダのオートバイ販売台数 ホンダ二輪車売上台数 千台 12,000 その他の地 域 10,000 8,000 アジア 6,000 欧州 4,000 北米 2,000 0 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 日本 出所:ホンダアニュアルレポート ⓒ新宅2015 15 ベトナム二輪市場における中国製と ホンダの争奪戦 生産 千台 2500 2000 1500 シェア % 80 ホンダ生産 70 総市場 60 ホンダベトナム シェア 50 40 1000 • • • 30 20 500 10 0 0 1998 1999 2000 2001 出所:ホンダベトナム資料より作成。 2002 • 2003 1999年中国のコピー車が 登場、市場に氾濫。 中国系は500‐700ドル。日 本製は1200~2000ドル。 2002年ホンダWave αを 800ドルで投入。価格差は、 2000年の2.3倍から、1.3 倍に。 55社の組立メーカーが あったが、淘汰されて16 社に。 ←中国系バイク ホンダWave α→ ⓒ新宅2015 16 4.新興国市場向け製品戦略 アジア市場とホンダのシェア推移 20.0% 1500 15.0% 1000 10.0% 500 5.0% 0 0.0% アジア市場 ホンダ ホンダシェア 04 年 2000 02 年 25.0% 00 年 2500 98 年 30.0% 96 年 3000 94 年 35.0% 92 年 3500 出所:太田原(2009), 新宅・天野編著『ものづくりの国際経営戦略』第8章。著者が、本田技研工業社内資料 を基に作成。 アジア市場とは、インド、インドネシア、タイ、中国、マレーシア、フィリピン、ベトナムの合計を指す。 ⓒ新宅2015 17 アジア市場におけるホンダ製オートバイのシェア(2007年) ⓒ新宅2015 18 三星電子の品質思想 • 品質は顧客が決めるものであり、メーカーが 勝手に決めるものではない。 • 同じ製品でも、顧客は購入価格によって異な る品質を求める。 – 部品はランク分けして、高く売れる市場向けに高 ランク部品、低価格市場向けには低ランク部品。 • 品質管理の指標 – 体感不良率=クレーム件数÷販売台数 ⓒ新宅2015 19 過剰品質問題への対処 ② 品質差の見える化 high 品質の見える化 価格 誤った認識 品質格差は小さく、価 格差が大きい 高価格は単なるブラン ドプレミアム 故障の頻発 low low 品質・機能 high ⓒ新宅2015 20 ⓒ新宅2015 21 中国エアコン市場シェア 販売台数シェア(%) 国産 外資 販売額シェア(%) 国産 外資 2008年 2007年 2008年 2007年 2008年 2007年 2008年 2007年 壁掛型 80.45% 86.23% 19.55% 13.77% 74.01% 83.30% 25.99% 16.70% 床置型 76.64% 82.50% 23.36% 17.50% 70.56% 78.44% 29.44% 21.56% 全体 79.75% 85.62% 20.25% 14.38% 72.74% 81.80% 27.26% 18.20% 注)2007年・2008年上半期中国国内空調販売量にもとづき計算。床置型については、中国では床置型エ アコンでもルームエアコンのカテゴリに入り、家庭ではよく使われている。広いリビングルームに置かれるこ とが多い。 出所)中国国家信息中心「2008冷凍年度国内空調市場白書」(筆者訳) ⓒ新宅2015 22 品質評価基準 • 消費者にとって、ものづくり能力を間接的に 評価する基準 • 制約条件だといずれ超えられる • 日本企業の強みは継続的な改善 • 連続変数にすることが重要 • 燃費、省エネ基準、ディスク寿命 ⓒ新宅2015 23 • メディア寿命 の推定 • 国内ブランド と海外メディ アで顕著な差 がある。 ⓒ新宅2015 24 過剰品質問題への対処 ③ 差別化軸の転換 ローカル対応 現地市場固有の品質・機能 high 下げる品質と上げる品 質との組み合わせ 何を下げて、 何をあげるか、 が問題 low low 日本市場固有の品質・機能 ⓒ新宅2015 high 25 インド市場への適応 • 携帯電話 トラック運転手対応 – キーパット、灯、音量 • 自動車 モンスーン対応 – ECU • 自動車 泥棒対応 – ギアロック • 家電品 停電対策 • AV製品 朴英元 (2009) 「インド市場で活躍している韓国企業の現地化戦略:現地適応型 マーケティングからプレミアム市場の開拓まで」『赤門マネジメント・レビュー』 8(4), 181-210. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR8-4.html ⓒ新宅2015 26 • 上海生活総合研究センター(白物家電系):2005年~ – 商品企画の現地化を図れないか・・(事業部が強い会社。企画の主導権は事 業部にある。開発者が短期間現地に滞在しても、うまく企画できない) – 市場調査専任のローカルスタッフを10人で組織化、ホームアプライアンス社( 洗濯機、冷蔵庫、エアコン)、パナソニック電工(理容・健康機器)、エコシステ ムズ社(空気清浄機)と契約を結び、現地家庭の市場調査や商品企画の提 案を実施、情報を日本の事業部や中国のマーケティング部隊とも共有化 – 家庭訪問調査、グループインタビュー、アンケート、街頭インタビュー、商品コ ンセプト提案、事業部側との協議・発表会 – グループ内の認知度が上がり、成果が出始めている 導入事例:光 触媒を利用し たAG除菌機 能(洗濯機) 中国人ユーザー(主婦)の目線に立った 商品企画と日本側への情報発信(上海 生活総合研究センター) ⓒ新宅2015 幅55セン チの冷蔵 庫(右) 27 インド日立:エアコンのローカル開発 • インドでは、人間の体に直接送風があたるの が好まれる。 ↓ • “Follow Me” 人間の動きを追う送風機を持つエアコンを設 計製造。(インド人技術者の提案・設計) ⓒ新宅2015 28 インド日立 • 家庭用ルームエアコン 4位 8%(2008年) – LG 31%、サムスン16%、Voltas15% – 他社品25,000ルピーに対して35,000ルピー • 業務用エアコン 3位 12%(2008年) – Blue Star 19%, Carrier 15% – 携帯基地局用では、27% – カタログではない実測値で訴求(冷房能力など) • 新工場 2008年9月 35,000㎡(170×200) ⓒ新宅2015 29 製品戦略のまとめ (1)低価格製品市場開拓 品質基準の見直し →トップの強いリーダーシップ (2)高品質差別化戦略 品質、機能格差の見える化 (3)現地適合製品開発戦略 割り切る機能と重視する機能の見極め ⓒ新宅2015 30