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角膜感染症(感染性角膜炎 感染性角膜炎/角膜潰瘍)の種類
矢野による卒試解説解答シリーズ 3 眼科・問題と解答解説 2010 年度問題 問 1 角膜感染症について知るところを るところを述べよ. 解説解答: 角膜感染症は炎症を伴うので うので,感染性角膜炎1と同義と考えて差し支えない えない. もし角膜炎について述べよと べよと聞かれたとしたらそちらの方がより実践的で, ,なぜならば実際の 臨床では角膜に炎症所見を認め めた後にそれが感染性であるか非感染性2であるかを鑑別すること であるかを が診断の手順となるからである となるからである. コンタクトレンズの装用状況 装用状況,発症の外的要因(紫外線,薬剤,外傷)の有無 有無,全身疾患(膠 原病や皮膚疾患)の有無,などから などから感染性と非感染性の鑑別を付け,感染性の の診断は一部の特徴 的な所見によるものを除き,病巣擦過物 病巣擦過物の塗抹検鏡並びに細菌培養検査陽性, ,あるいはウイルス の場合は蛍光抗体法や PCR による による検出による3. 角膜感染症としては以下のものを のものを知っておかなくてはならない(解答で具体的 具体的に挙げるべき項目). 角膜感染症(感染性角膜炎 感染性角膜炎/角膜潰瘍)の種類 •角膜ヘルペス •流行性角結膜炎(アデノウイルスによる アデノウイルスによる) •細菌性角膜炎 •真菌性角膜炎(角膜真菌症 角膜真菌症) •アカントアメーバ角膜炎 角膜炎 1.角膜ヘルペス 角膜ヘルペスは単純ヘルペスウイルス ヘルペスウイルス(HSV-1)による4角膜感染の総称であり であり,これには角膜 上皮でのウイルス増殖による樹枝状角膜炎 樹枝状角膜炎と,角膜実質においてウイルス抗原 抗原に対する免疫反応 が生じる円板状角膜炎がある. . 角膜感染症のリストのトップに のリストのトップに角膜ヘルペスをもってきたのは,うち樹枝状角膜炎 樹枝状角膜炎が特徴的所 見から診断が付く―むしろ臨床 臨床の現場で確定診断のための HSV の分離を行うことは うことは困難であり, 1 角膜炎の結果,角膜上皮および実質に欠損 欠損を来した場合を角膜潰瘍と呼ぶ.角膜は上皮細胞,ボーマン ボーマン膜,固有質,デスメ膜 (脚注 5 で後述) ,内皮細胞の 5 層からなり からなり,上皮のみの欠損の場合は角膜びらんと呼ぶ. 2 本題から外れるので詳述しないが,非感染性角膜炎 非感染性角膜炎には有名なドライアイ,コンタクトレンズ過剰装用 過剰装用,顔面神経麻痺による 眼瞼閉鎖不全で起きる兎眼,電気性眼炎 電気性眼炎(スキーの時にゴーグルをしないと紫外線で目がやられてできるいわゆる がやられてできるいわゆる雪眼) ,点眼 薬や一部の抗癌剤の副作用で起きる薬剤毒性角膜症 薬剤毒性角膜症,化学腐食(酸やアルカリが目に入った場合),などがある などがある. 3 一般には角膜感染症で臨床所見だけから から起炎微生物を鑑別することは難しい.もちろん検出された微生物 微生物が原因であるかの判 断には臨床所見,治療による効果などが などが総合的に寄与することは他の感染症と同様であるが. 4 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によっても によっても角膜ヘルペスが生じることがあり,樹枝状潰瘍末端部の の広がりがなく(下で述べ る HSV の地図状にならずに)点状の広がりを がりを見せる偽樹枝状潰瘍が特徴とされる. 1 所見をもって診断とする―点を特筆すべきだから である. 樹枝状角膜炎では,樹枝状の潰瘍が遷延すると 地図状へと広がりを見せる.角膜炎を疑った場合 にフルオレセイン染色液で角膜上皮を見やすくし て障害を評価するのだが,そのときに右の図 1 の ように特徴的な像(解答でスケッチを示してもいいくら い)が見られる.潰瘍末端は拡大し辺縁部では上皮 内細胞浸潤が生じている.また,角膜知覚の低下 も見られる. すう へき 円板状角膜炎では角膜の中央部にみられる円形の角膜浮腫,デスメ膜皺襞5,角膜後面沈着物な どが特徴的所見である. 治療はウイルス増殖が原因の樹枝状角膜炎に対しては抗ウイルス薬アシクロビル(ゾビラック ス®眼軟膏)により行い,免疫反応が主体の円板状角膜炎に対しては抗ウイルス薬にステロイド 点眼による消炎を加える. 2.流行性角結膜炎 ・ 進行すると角膜にびらんを生じることがあるので流行性角結膜炎と呼ばれるが,アデノウイル スによる本疾患は急性濾胞性結膜炎の像をとることがほとんどである. 多くが家庭内や学校・保育所などの施設内での感染の結果,眼痛・充血・眼瞼腫脹などの症状 で始まり,耳介前リンパ節に腫脹,眼瞼結膜に濾胞形成・乳頭増殖・時に小出血斑(急性濾胞性 結膜炎の徴候)を認める. アデノウイルスには迅速診断キットがあるのでこれで陽性で,耳介前リンパ節の腫脹と,両眼 の急性濾胞性結膜炎を認めたら診断できる. 3.細菌性角膜炎 以前は角膜外傷に続発して生じることが多かっ たが,近年はコンタクトレンズ装用者に急増して いる(コンタクトレンズは角膜に微小外傷を作り やすいので感染の素地としては共通しているわけ だが) . グラム陽性球菌(ブドウ球菌属(MRSA を含む) , 肺炎球菌)とグラム陰性桿菌(緑膿菌,モラクセ ラ,セラチア属)によるものが多く,前者では円 形膿瘍,後者では輪状膿瘍を呈し,病原性に応じ てデスメ膜皺襞,前房内炎症,前房蓄膿などが見られる.ソフトコンタクトレンズ装 用者で炎症の強い場合にグラム陰性桿菌を疑いやすいと言われる. 5 デスメ膜は角膜内皮細胞の基底膜のことで,皺襞は漢字そのままで“しわ”や“ひだ”のこと.細隙灯顕微鏡(言わば眼の断 面を観察できる)を用いると,角膜後面が浮腫によって不規則なしわ状になっている所見として観察される. 2 前ページ図 2 は後に黄色ブドウ球菌が分離された細菌性角膜炎症例の写真である.角膜中心部 に円形膿瘍を認めると同時に,前房蓄膿(眼の内部の空間である前房に膿が生じ,それが底に溜 まるので境界線(図中矢印頭)が見える)も認められる. 抗菌薬の頻回点眼が治療の基本であり,角膜擦過物をグラム染色した結果を基におおまかな菌 種を想定して抗菌薬を選択し,培養結果が得られた時点で再考する.グラム陽性球菌の場合はニ ューキノロン系にセフェム系薬剤の組み合わせ,グラム陰性桿菌では同じくニューキノロン系に アミノグリコシド系薬剤の組み合わせを考慮する. 4.真菌性角膜炎(角膜真菌症) 糸状菌(フザリウム,アスペルギルス)によるものと酵母状菌(カンジダなど)によるものの 2 種類の病型がある. 角膜の糸状菌感染は植物で角膜を傷付けた時に続発し,辺縁の不整な膿瘍,衛星病巣,前房蓄 膿を特徴的所見とし,深層に向かって比較的速く炎症が進行する. 酵母状菌による炎症はステロイドの長期点眼などが誘因となって生じ,細菌性角膜炎に類似の 円形の膿瘍を呈する. いずれも抗真菌薬(内服,注射,眼軟膏など形態はいろいろ6)で治療する.ただ,どうしても 反応が悪い場合には角膜移植が必要になることもある. 5.アカントアメーバ角膜炎 アカントアメーバはアメーバ動物門の原生生物 で,土壌や淡水域に広く普通に存在している. コンタクトレンズ(特に頻回交換型のソフトコ ンタクトレンズ)装用者に難治性の角膜感染症を 引き起こす. 強い眼痛,角膜輪部7の充血と浮腫,斑状の上皮 下浸潤,放射状角膜神経炎などが初期の特徴的所 見で,右の症例写真(図 3)では中央に斑状の上 皮下浸潤が,その周囲に放射状の角膜炎が見て取れる.進行すると円板状の辺縁不整な 混濁を示す. 既存の有効な点眼薬がないために点眼用に調製した抗真菌薬が用いられている.これに病巣の そう は 掻爬を組み合わせて治療する. 参考文献 大野重昭 (監修) (2010).標準眼科学第 11 版,医学書院. 大橋裕一 (2010).角膜炎・角膜潰瘍.金澤一郎・永井良三総編集,今日の診断指針第 6 版,医学 書院. 6 糸状菌はアゾール系薬剤に対する感受性が低いのでポリエン系抗真菌薬や抗ウイルス薬でもあるピマリシン眼軟膏を用いる. 酵母状菌にはアゾール系(ex.イトラコナゾール)かキャンディン系(ミカファンギン)の抗真菌薬を用いる. 7 角膜はいわゆる黒目部分の眼表面であるが,このうち白目と黒目の境目部分を角膜輪部と言う. 3 下村嘉一 (2010).流行性角結膜炎.同上. 宇野敏彦 (2010).感染性角結膜炎.山口徹・北原光夫・福井次矢総編集,今日の治療指針 2010 年版,医学書院. 補問(’09 年度‐問 5)網膜の模式図を描いて細胞名(グリア細胞も含む)を書け. ここで,補問として’09 年度‐問 5 を扱う.以下,問 2 は糖尿病網膜症,問 3 は網膜剥離,問 4 は加齢黄斑変性,問 6 の緑内障も最後に障害されるのは網膜,と,網膜が障害される一連の疾患 が続くので網膜の構造を先に押さえておきたい. 解説解答: 網膜とは眼球の壁を構成する三層のうち一番内側の層であり(外側から強膜→ぶどう膜→網膜) , 後ろ 3/4 を占める光を感じる網膜視部と光を感じない前 1/4 の網膜盲部から成る.網膜盲部は毛 様体と虹彩の内面を被う薄い上皮層であり,それぞれ網膜毛様体部,網膜虹彩部と呼ぶ. 光刺激を神経インパルスに変換し視神経に伝える機能を担い,またそのための 10 層構造(視機 能を担う神経網膜 9 層+網膜色素上皮層)を有するのは網膜視部であり,題意はこの網膜視部の 層構造を図示しそこに細胞名を書き入れよということである. 完璧な解答は下に示す図 4 に尽きるが,その要点をどう捉えるかが重要である. 4 網膜は主に三つのニューロンから成り,それは光刺激を興奮に変換する第 1 ニューロンである 視細胞(杆体細胞・錐体細胞) ,第 2 ニューロンである双極細胞,そしてこれを視床外側膝状体ま で伝える第 3 ニューロンである神経節細胞である(すなわち,視神経は神経節細胞の軸索の集ま りである) .よって,最低限それらは描かねばならない(簡略化された模式図として左下図 5) . 本問では構造を問うており,視覚の生理学の問題ではないの で解答で細胞の機能を詳述する必要はないと思われる. が,生理学での既習事項を復習すると,視細胞は普段脱分極 してグルタミン酸を放出し,光刺激を受けたときだけ過分極し てその放出をやめる細胞であった. 錐体細胞には ON 型と OFF 型の双極細胞があり,ON 型は視 細胞の過分極を脱分極すなわち興奮に変えて同じく ON 型の神 経節細胞に伝達する.つまり,この経路では光刺激が神経節細 胞の興奮になるので明るさが信号化されている. OFF 型双極細胞は視細胞の過分極をそのまま過分極として OFF 型神 経節細胞に伝える.つまり,光刺激が入ったときは過分極しており,逆 に入らないときに興奮している経路であるから,こちらは暗さを信号化 する経路である. さらに周辺の視細胞からは GABA を分泌する水平細胞を通してネガティブフィード バックがかかっている(向こうが興奮したときはこちらに抑制をかけてくる)ので,ON 経路で 言うと真下の視細胞に光の当たった双極細胞は興奮する一方,周辺に光の当たった双極細胞は興 奮しないので輪郭の情報を強調することができる. アマクリン細胞の働きの全体はなお明らかではないが,動きの検出や,ON 型双極細胞しか持 たない杆体系の信号を錐体系へ伝達する役割を担うものがあることがわかっている. 少し特殊な機能を持ったニューロンである水平細胞やアマクリン細胞は簡略化の対象だが,一 つ上の図 5 では足りない点があり,それは問題文の「グリア細胞も含む」という要求に答えてい ない点である. 上記のニューロンを栄養・支持する網膜のグリア細胞とは前ページ図 4 中に黄色で描かれてい ミ ュ ラ ー るMüller細胞に他ならない.ミュラー細胞は外顆粒層の外側から網膜内層にかけて分布し,その 基底膜が内境界膜を形成している.上の主要 3 ニューロンに加えてこのミュラー細胞が指摘でき ていることで本問の要求にほぼ応えることができる. 参考文献 Kierszenbaum, AL. (2007). Histology and Cell Biology: An Introduction to Pathology 2E. Mosby. 伊藤正男・井村裕夫・高久史麿(総編集) (2009).医学大辞典第 2 版,医学書院. 「網膜」 問 2 糖尿病網膜症を進行度別に分類し,各病期の眼底所見と治療法について述べよ. 解説解答: 5 問題文には糖尿病網膜症を「進行度別に分類」し, 「各病期の眼底所見」を述べよとある.が実 際は逆で,糖尿病網膜症は眼底所見に反映される病態によって病期が分類される. 糖尿病網膜症は,まず網膜の毛細血管瘤の形成から始まり,次に血管瘤からの出血や血管透過 性亢進による網膜浮腫を生じる.さらに血栓や血球による毛細血管閉塞から網膜虚血,血管新生 へと進行する.この血管新生を放置すると硝子体出血や牽引性網膜剥離あるいは血管新生緑内障 を引き起こし急速に失明に至る. 上に描いた疾患の進行ルート上にある血管透過性亢進,血管閉塞,血管新生という三つの病態 がそれぞれ単純網膜症,増殖前網膜症,増殖網膜症と対応する. これを表にまとめると下の表 1 のようになる. (解答はこれで満たしている. ) 表1 糖尿病網膜症の診断と治療 病期 自覚症状 単純網膜症 増殖前網膜症 なし なし 血管透過性亢進 血管閉塞 増殖網膜症 なし~視力低下 血管新生 病態 硝子体牽引 毛細血管瘤 軟性白斑 網膜新生血管 網膜出血 静脈異常 乳頭上新生血管 眼底所見 網膜浮腫 網膜内細小血管異常 線維血管増殖膜 硬性白斑 硝子体出血 牽引性網膜剥離 内科的治療 血糖コントロール,血圧管理,高脂血症治療,合併症治療など 経過観察 網膜光凝固 網膜光凝固 眼科的治療 薬物治療 硝子体手術 薬物治療 診療間隔 3-6ヶ月 1-2ヶ月 0.5-1ヶ月 A. 単純網膜症(眼底所見の一例は図 6a,図中矢印は硬性白斑) 初期病変は網膜毛細血管瘤である.細胞毒性のある高血糖によっ て周辺細胞の選択的脱落,血管内皮細胞増殖,基底膜肥厚が生じて 毛細血管瘤ができる. その後,網膜出血(毛細血管瘤の破綻による)や硬性白斑が生じ る.硬性白斑(鮮やかな黄色の輪)は,血管透過性が亢進し血液網 膜関門が破綻して漏出したリポ蛋白などの血漿成分が外網状層に蓄積したものである. この病期では,眼科的治療としては眼底検査と蛍光眼底造影による定期的な経過観察が主体8で, 血糖コントロール,血圧管理,高脂血症治療という内科的治療が中心である. もちろん糖尿病の内科的治療は合併症の一つである糖尿病網膜症の病期に関係なく,網膜症発 症前から全ての病期を通じて,血糖コントロール(HbA1c6.5%未満),血圧管理,高脂血症治療 8 光(レーザー)凝固という治療法を知っていると,なぜ早く焼かないのかと思うかもしれない.だが,光凝固は生きている網 膜が虚血に陥って血管新生をひき起こすぐらいなら,視力にとって決定的に重要な黄斑付近に障害が及ぶような事態になる前に その健康な網膜ごと詰まった血管を焼いてしまえという治療法である.これによりいささかも視力は回復しないし,それどころ か多少なりとも眼は見えにくくなる.よって,それにより物理的に進行を食い止めねばならない事態に至って初めて行われる. また,血管透過性の亢進や血流の停滞が問題ならそれに血管強化薬,循環改善薬を使ってはどうかという発想はごく自然に起 きよう.実際用いられることもある.血管透過性抑制薬アドナ®(脳出血急性期にトラネキサム酸(トランサミン®)と「アド トラ」セットにして使用するので救急の常備薬)や血管拡張薬カリクレイン®(ちなみにこちらは脳出血には禁忌)等を処方す るが,有効だというエビデンスはない. 6 などを厳格に行うのが基本である.このとき一点気を付けなくてはいけないのは,むしろ血糖コ ントロール開始後に 10~20%の患者に網膜症進展がみられることで,血糖コントロール開始前か らの眼科診療(眼科以外の多くの医師にとっては眼科コンサルト)が求められる. cf. 糖尿病黄斑症のうち,黄斑浮腫 黄斑付近に毛細血管瘤が多発したり血液成分が染み出たりするなどして,黄斑に―他の部分の 網膜を焼いてでも最後まで守らなくてはならないその黄斑に時に早々と単純網膜症の段階でも― 浮腫が生じてしまう状態が黄斑浮腫である. 糖尿病黄斑症9の 9 割を占め,これが起きると(多く無症状の単純網膜症段階であっても)視力 の低下が生じる. 局所性浮腫に対しては光凝固が第一選択で,毛細血管瘤に対して直接凝固を行う. B. 増殖前網膜症(図 6b) 単純網膜症で見られた変化に加えて,軟性白斑が生じる. 軟性白斑は,血管閉塞によって神経線維層に虚血性梗塞が生じ, 軸索原形質の破壊物が蓄積したものである.その軟性白斑の発生機 序を知っていれば当たり前のことながら,軟性白斑はある程度広い 血流のない領域(網膜無還流域 NPA:non-perfusion area)の存在 を示しており,これを放置するとそこに新生血管が生じてしまう. このため,血流を要求してしまう網膜も含めて詰まった毛細血管ごとレーザーで焼いてしまう 網膜光凝固を行って,血管新生すなわち次の増殖網膜症への進行を防ぐ. 網膜無還流域の把握に用いるのはフルオレセイン蛍光眼底造影(FA:fluorescein angiography) である.FA では倒像鏡眼底検査だけではとらえられない毛細血管瘤,網膜無還流域,新生血管(旺 盛な蛍光漏出をきたす)が検出できる. 倒像鏡眼底検査と FA によって網膜無灌流域の範囲を正確に把握し,網膜光凝固を行う.網膜 無灌流域は一般には鼻側から生じることが多いが,これが 2 象限以下のときはその領域を選択的 に(選択的網膜光凝固) ,3 象限以上のときは全体に(汎網膜光凝固) ,光凝固を行う. C. 増殖網膜症(図 6c) ベージェフ 網膜無灌流域が拡大し網膜が長期にわたって虚血状態にさらされると,虚血網膜からVEGF(血 管内皮増殖因子)が産生され,新生血管が発育して増殖網膜症の段階に入る.その新生血管を基 盤としてコラーゲンやグリア細胞が蓄積し,線維血管増殖膜を形成す る.この増殖膜が網膜を引っ張って破綻性の網膜前出血,硝子体出血 あるいは牽引性網膜剥離(イメージは次ページ図 7)が生じ,こうな ると著明な視力障害をきたす. この段階では血糖コントロールにかかわらず症状は進行するので, 9 糖尿病性黄斑症には他に網膜色素上皮症(網膜色素上皮の炎症性病変に基づくものをまとめて言う) ,虚血性黄斑症(黄斑部 分で網膜血管が閉塞するもの)がある. 7 早急に汎網膜光凝固を行わなくてはならない わなくてはならない.硝子体 出血や牽引性網膜剥離をきたしている をきたしている場合には,硝子 体手術(硝子体の増殖病変を除去 除去して網膜に対する牽 引を解除する手術)を考慮する する. また,血管新生因子が前眼部 前眼部に拡散して虹彩に新生 血管を生じ,線維血管膜が隅角 隅角を覆って眼圧を上昇さ せることがある.これを血管新生 血管新生緑内障と言い,これ をきたした例に対しては緑内障 緑内障に対する治療(内服治 療や外科治療)も必要になる. . 参考文献 鈴間 潔 (2010).糖尿病網膜症 糖尿病網膜症.今日の治療指針 2010 年版. 池田恒彦 (2008).糖尿病網膜症 糖尿病網膜症.今日の治療指針 2008 年版,医学書院. 伊藤正男・井村裕夫・高久史麿総編集 高久史麿総編集 (2009).医学大辞典第 2 版,医学書院 医学書院.「糖尿病網膜症」 . 日本眼科学会 (2003).糖尿病網膜症 糖尿病網膜症.[online],インターネット<URL:ttp:// ttp://www.nichigan.or. jp/public/disease/momaku_tonyo.jsp jp/public/disease/momaku_tonyo.jsp> 問 3 網膜剥離の原因,症状, ,治療について知るところを述べよ. 解説解答: 網膜剥離とは,網膜内層の神経網膜 神経網膜(色素上皮を除く 9 層(本資料 4 ページ図 ページ 4 参照))が網膜色 素上皮から分離し,そこに水が が溜まる病態である. ★ 原因 その原因により,下表のように のように,最も大きくは裂孔原性網膜剥離と非裂孔原性網膜剥離 非裂孔原性網膜剥離に分け られる. 裂孔原性網膜剥離 後部硝 子体剥 離 萎縮性 小円孔 外傷性 網膜剥 離 硝子体の 加齢変化 網膜周辺 の格子状 変性 眼に強 強い 力の加 加わ る外傷 外傷 非裂孔原性網膜剥離 牽引性網膜剥離 増殖性硝 子体網膜 症 増殖糖尿 病網膜症 8 滲出性網膜剥離 ぶどう膜 炎(原田 病など) 脈絡膜新生 血管(中心 血管 性滲出性網 脈絡膜症) 脈絡膜症 ぶどう膜 滲出症候 群 一般に網膜剥離と言うと,その大部分を占める裂孔原性網膜剥離を指す.網膜に孔が開き,そ こから硝子体の液性成分が網膜下に入ることで生じるものである. 発症年齢は 20 歳前後と 60 歳前後の二峰性を示し, それは裂孔のでき方を反映したものである. 最も多いのは,眼球の内容物である硝子体が老化により急激に液化,収縮して,硝子体を包ん でいる薄い後部硝子体膜が眼底の網膜より剥離した際に(後部硝子体剥離) ,網膜との癒着部位で 裂孔を生じる場合である.その孔から液化した硝子体が網膜下に進入することで網膜剥離が生じ る.その機序からわかる通り,中年以降で加齢性に生じる場合がこれである. もう一つは格子状変性と呼ばれる網膜裂孔が起こりやすい網膜上の変性部位を持っている人で, その部位に萎縮性小円孔が生じて網膜が剥離するもので,こちらは若年性である. また,若年者,特に若い男性に多いが,ボール が目に当たるなど強い力が眼に加わって網膜裂孔 ができそこから網膜が剥離してしまう外傷性網膜 剥離もある.10 これら裂孔原性網膜剥離の確定診断は網膜裂孔 の発見に尽きる.倒像眼底検査により眼底の全体 像を把握し,細隙灯顕微鏡検査で拡大率を上げな がら詳細な所見を取る.右の図 8 はその一症例だ がこれだけ大きければもちろん見逃しようがない けれども,写真中の向かって左上に大きな網膜裂孔が見える. では,この裂孔がない場合はどう診断したらよいだろうか.裂孔がなく滲出物が網膜下に留ま り網膜が剥離するものを滲出性網膜剥離といい,裂孔が小さくて見つからない場合にはこの滲出 性も視野に入れなくてはならない. ぶどう膜の炎症(問 5 のテーマ)や眼内腫瘍などにより,網膜色素上皮のタイトジャンクション11 が破綻して網膜血管や脈絡膜から血液中の水分が滲み出し,神経網膜と色素上皮の間に溜まるこ とで網膜が剥離するものである. 上の機序の通り何か原因となる疾患がないと起きないので,それに続発する点で続発性網膜剥 離とも呼ばれる.原因疾患としては,原田病などのぶどう膜炎,中心性網脈絡膜症12,ぶどう膜 コ ー ツ 滲出症候群13,Coats病14,ピット黄斑症候群15,網膜芽細胞腫,他部位悪性腫瘍(乳癌,肺癌) の脈絡膜転移がある. また,既に糖尿病網膜症を扱った問 2 解説中で紹介したが,網膜表面に何らかの原因で牽引が 生じて網膜剥離に至る場合があり(牽引性網膜剥離) ,増殖糖尿病網膜症で起きるものはその典型 10 その他にも,若年者ではアトピー性皮膚炎(疾患自体ではなくそう痒のため反復して強く眼瞼部を叩打することによると考 えられる),家族性硝子体網膜症,高齢者では強度近視に伴う黄斑円孔など,網膜裂孔の原因となる種々の疾患・病態がある. 11 網膜色素上皮では細胞同士がぴったりと接着して血液網膜関門を形成している. 12 脈絡膜新生血管が関与して黄斑が障害される疾患を加齢黄斑変性滲出型(問 4 のテーマ)を除いて新生血管黄斑症と総称す る.中心性滲出性網脈絡膜症(特発性限局性網膜下新生血管)はその主たるもので,黄斑に新生血管を伴った増殖組織が存在し, 新生血管からの出血や滲出がみられる. 13 渦静脈(脈絡膜の血液を強膜を貫いて上眼静脈に還流)の閉塞により眼球の静脈還流が障害され,ぶどう膜からの滲出液が みられる状態.ムコ多糖症Ⅱ型(ハンター症候群)で,グリコサミノグリカンの沈着により生じる. 14 網膜の毛細血管拡張症や毛細血管瘤,滲出性変化を特徴とする網膜症である. 15 胎生期の眼杯裂閉鎖不全により乳頭内に楕円形の陥凹(乳頭ピット)が見られる先天異常で,多くに黄斑剥離を伴い,これ により黄斑変性をきたしたものをピット黄斑症候群と呼ぶ. 9 例である16.また,網膜裂孔から色素上皮細胞が遊走し網膜表面で増殖して牽引を生じることも あり(増殖性硝子体網膜症) ,これにより網膜剥離を生じた場合は,網膜裂孔の続発症であるが牽 引性網膜剥離と言える. ★ 症状(原疾患がある場合にはその症状が伴うが,網膜剥離自体によるものに限定して述べる.) 前駆症状としては,網膜への硝子体牽引があればそれが刺激になって光が見える光視症,後部 硝子体剥離があると飛蚊症(硝子体の濁りが患者本人に蚊が飛んでいるかのように見えるもの) を認める. 網膜剥離が生じると,剥離した網膜は光を感じる機能を失うのでその範囲に一致した視野欠損 が生じる.裂孔原性網膜剥離では剥離は徐々に広がり,視野欠損も拡大していく17. 剥離が黄斑部に達すると18 視力低下や変視症(物が歪んで見える状態)が生じる(視野欠損は 自覚されにくいので,こうなって初めて自覚されることも多い) . ★ 治療 A. 裂孔原性網膜剥離 外科的に網膜裂孔を閉鎖する(物理的に何とかしなくてならない場合に薬物は無効である) . 限局性の網膜剥離であれば網膜光凝固や冷凍凝固のみと安静保持で済むこともあるが,通常は 経強膜網膜復位術または硝子体手術という観血的手術が必要である. 若年者に多い萎縮円孔網膜剥離など後部硝子体が未剥離のものは経強膜網膜復位術の適応で ある.強膜側から冷凍凝固などを行って色素上皮と神経網膜の癒着を作り,さらにシリコン材を 強膜に縫着して19 強膜を内陥させる術式である. 一方,増殖硝子体網膜症が続発したもの,巨大裂孔網膜剥離, 黄斑円孔網膜剥離などでは硝子体手術を行う.病的な硝子体を 吸引切除し(右図 9 中赤矢印) ,気体を注入して(同青矢印) 網膜を伸展復位させる術式である.これを行うと高齢者では術 後急速に白内障が増悪するため,硝子体手術時に初めから水晶 体を摘出して眼内レンズ挿入を行う硝子体トリプル手術も増 えている. B. 滲出性網膜剥離 原疾患に応じて治療が選択される. 原因として多いぶどう膜炎の場合はステロイド内服(プレドニン®)と抗生物質の点眼(リン デロン A®)を行うことになる. 中心性滲出性網脈絡膜症など脈絡膜新生血管が関与する病態,ぶどう膜滲出症候群,ピット黄 斑症候群などでは網膜光凝固や硝子体手術といった外科治療が有効な場合もある. 16 糖尿病網膜症では,出血しやすい新生血管を含んだ線維血管増殖膜が網膜上に生じ,この膜が収縮して網膜を引っ張ること で網膜剥離が生じるのであった. 17 なお,この剥離の進行は若い人では比較的緩徐で,高年者ほど早い場合が多い. 18 剥離が初めから黄斑で生じる黄斑円孔(強度近視に伴う)の場合は,視野欠損は中心暗点の拡大という形を取る. 19 裂孔が大きい場合やその元になる格子状変性が広い場合には,強膜の上から輪状にシリコーンのバンドを巻くこともある. 10 C. 牽引性網膜剥離 牽引を解除するために硝子体手術が行われる. しかし,残った色素上皮細胞から増殖膜が再発したり,新生血管の再増殖・出血により再剥離 することも多く難治性である. 参考文献 寺崎浩子 (2010).網膜剥離.今日の治療指針 2010 年版. 河野眞一郎 (2008).網膜剥離.今日の治療指針 2008 年版. 小椋祐一郎 (2010).網膜剥離(裂孔原性網膜剥離) .今日の診断指針第 6 版. 医学大辞典第 2 版. 「硝子体手術」 問 4 加齢黄斑変性について述べよ. 解説解答: 加齢黄斑変性は,欧米では成人失明原因20の第 1 位を占める疾患であり,日本でも近年患者数 が増加している. 加齢黄斑変性とは,主として網膜色素上皮細胞,ブルッ フ膜(脈絡膜と色素上皮細胞の接着面の膜),脈絡膜毛細 血管板の加齢変化に関係した黄斑変性の総称であり,その 機序により二つの病型に分けられる. 黄斑部の網膜色素上皮細胞を中心に網脈絡膜の萎縮性 変化が生じて網膜が障害され,視力が徐々に低下していく 萎縮型(症例写真は右図 10a)と,脈絡膜新生血管21が生 じ,これが網膜色素上皮の下あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害 される滲出型(症例写真は左図 10b)である. 萎縮型は有効な治療法がなく積極的治療の対象とは ならないが,この萎縮型に加えて,軟性ドルーゼン22・ 網膜色素上皮異常が認められる段階(前駆病変)の初期 加齢黄斑症や,片眼だけが視力低下を伴う加齢黄斑変性 では,病態の進行やもう一方の眼での発症の予防を狙っ て抗酸化サプリメント(ビタミン C,E, ‐カロチン, 亜鉛)の内服を勧めることがある. 滲出型は,無治療では変視症,中心暗点および高度の 20 ちなみに,日本での重篤な視力障害の原因は,1 位が緑内障(20.7%) ,続いて糖尿病網膜症(19.0%) ,網膜色素変性(13.7%), 黄斑変性(9.1%),高度近視(7.8%)の順となっている.もちろんどの疾患も重要だが,学生としてその疾患を知っていなく てはならない優先度の一つの基準ではある. 21 脈絡膜新生血管は問 2 で見た増殖糖尿病網膜症しかり,’08 年度問 4 で扱われた未熟児網膜症しかり,良いことを一つもしな い.異常な新生血管は正常の血管と異なり血液の成分を漏出させ網膜浮腫を引き起こしたり,網膜下に液体を貯留させたりする (網膜下液) .また,脆弱なために破れて出血する.これらは網膜を障害して視機能の低下を招く. 22 ドルーゼンとは,網膜色素上皮細胞自体が変性・崩壊したものが,網膜色素上皮とブルッフ膜の間にドーム状に蓄積したも のである. 11 視力低下をきたすことが多く(4 年経過観察すると 9 割で視力が 0.1 以下になる) ,良い治療法の 開発もあって治療の対象となる. 診断には視力検査,アムスラー検査(方眼紙を見てもら って見え方の歪みをみる)で視力低下や変視症の症状をみ ると同時に,糖尿病網膜症でも登場した細隙灯顕微鏡を用 いた眼底検査,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)に加 えて,インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA) ,光干 渉断層計(OCT)23を用いて血管新生の所見を捉える. 新生血管が悪さをしているのであれば糖尿病網膜症と同じように網膜光凝固を行えばよいと思 うだろうか. しかし,網膜光凝固は視機能にとって決定的に重要な黄斑に障害が及ぶ前に他の網膜を犠牲に して血管を焼く治療法であって,今,新生血管が生じているのは黄斑であるから基本的には24使 えないのである(黄斑を焼いていては元も子もない) . このように中心窩下に脈絡膜新生血管を伴った加齢 黄斑変性に対しては,光線力学療法(PDT)が行われる ことがある.ベルテポルフィン(ビスダイン®)という 光感受性物質を静注し,この条件の下で中心窩に弱いレ ーザー光を当てることで光感受性物質の集まっている新生 血管で活性酸素を発生させこれを閉塞させる治療法である (左図 12). この光線力学療法すら 2004 年に承認された比較的新し い治療法であるが25,今や脈絡膜新生血管の発生・進展に関 与する血管内皮増殖因子(VEGF)をターゲットとした薬 物の眼局所投与が治療の主流26となっている. そのような薬物としては,ラニビズマブ(ルセンティス ®:抗 VEGF 中和抗体の Fab フラグメントから作られたよ り小さな分子量の誘導体) ,ペガプタニブ(マクジェン®: VEGF165 を選択的に阻害する PEG 化オリゴヌクレオチド(核酸分子) )27,保険適用外だが大 腸癌治療などでよく知られているベバシズマブ(アバスチン®:抗ヒト VEGF 中和抗体)が用い られる. 23 OCT を用いると本ページ冒頭図 11 のような網膜の断面を得ることができる.脈絡膜の新生血管も造影剤を使用せずに捉え ることができ,負担が少なく繰り返し行える点でも有用である. 24 かつてはやむを得ず光凝固を行ったこともあったし,中心窩外に境界明瞭な脈絡膜新生血管を伴った加齢黄斑変性に対して は今でも光凝固は第一選択である. 25 その前は,この滲出型加齢黄斑変性に対して,新生血管抜去術,黄斑移動術など侵襲の大きい外科治療も行われていた. 26 血管新生が基礎病態となっている疾患は数多く,ならば逆にそれらには押し並べて抗 VEGF 療法が有効なのではないかとい う発想は当たり,今や糖尿病網膜症に対しても血管新生の著しい難治例では抗 VEGF 抗体療法が応用されている. 27 眼内で働く VEGF には VEGF121 と VEGF165 があり(数字はそれを構成するアミノ酸残基の数) ,VEGF165 が血管新生 の病態により関与すると言われている. これらを非選択的に阻害するルセンティス®と VEGF165 だけを阻害するマクジェン®では, ルセンティスの方が効果が高く PDT を大きく凌ぐ.その代わり,眼にとって必要な VEGF まで阻害してしまう.一方,マクジェンの効果は PDT と同等と言 われる.脈絡膜新生血管の活動性が高い急性期にルセンティスを使用して病変を落ち着かせ,その後の再発・再燃を防ぐために マクジェンを用いるのがよいのではないかとも言われ,臨床試験が進められている. 12 参考文献 日本眼科学会 (2003).加齢黄斑変性.[online],インターネット<URL:ttp://www.nichigan. or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp>. 大塚眼科病院 (発表年不明,2011 年 4 月検索).抗 VEGF 療法.[online],インターネット<URL: ttp://www.ohtsuka-eye.com/sickness/ouhan/vegf/index.html> 辻川明孝 (2010).加齢黄斑変性.今日の治療指針 2010 年版. 問 5 ぶどう膜炎をきたす疾患三つを挙げそれについて述べよ. 解説解答: ぶどう膜は眼球の壁を構成する三つの膜のうち丁度真ん中の膜で,外側を強膜,内側を網膜に 挟まれ,血管と神経と多量のメラニン色素に富んだ黒褐色の膜である.眼の構造で言うと後方か ら脈絡膜,毛様体,虹彩の三つの部分がぶどう膜でできている. 右の写真(図 13)はそのぶどう膜を見せる意図で撮ら れたものでは全くなく,関節リウマチ患者28で強膜炎の 結果強膜が菲薄化した症例のものだが,このように強膜 が薄くなって透けるとその下のぶどう膜の後方への連 続性が生体眼でもよくわかる(図中矢印部分) . ぶどう膜炎はその名の通り狭義にはぶどう膜,すなわ ち脈絡膜,毛様体,虹彩の炎症であるが,広く眼内炎症 全般を指してそう呼ぶこともある. ベー チェッ ト フォークト サルコイドーシス,Behçet病,Vogt ‐小柳‐原田病(以下,原田病と略)が頻度が高く(これ らでぶどう膜炎の約 30%) ,三大ぶどう膜炎とされる(解答としてこの三つが順当である).これらを 代表に,強直性脊椎炎,炎症性腸疾患などの自己免疫疾患が関与する非感染性ぶどう膜炎がある. また,非感染性のものとしては糖尿病の合併症としての虹彩炎も見逃せない(糖尿病虹彩炎) . 一方で,トキソプラズマ症(網脈絡膜炎),ヘルペス性ぶどう膜炎,単純ヘルペスウイルスまた は水痘帯状疱疹ウイルスによる急性網膜壊死(桐沢型ぶどう膜炎) ,真菌性眼内炎,サイトメガロ ウイルス網膜炎などの感染性29ぶどう膜炎がある(感染性は 15%). また,主に眼原発悪性リンパ腫による仮面症候群―悪性腫瘍が炎症性疾患や裂孔原性網膜剥離 を思わせる臨床像を呈するためにこう呼ぶ―の場合もあり,これは厳密にはぶどう膜炎ではない. さらに,約 50%は種々の検査を行っても原因が特定できない特発性(分類不能の)ぶどう膜炎 であり,今のところ自己免疫疾患の明確な関与はなくとも何らかの免疫異常で生じるのではない かと考えられている. ぶどう膜炎一般の症状としては,最もよく現れるものとして霧視(かすみがかかったように見 えること)と羞明感(まぶしく感じること)がある.その他,視力低下,眼痛,充血(以上は前 28 奇しくもこの関節リウマチでは強膜炎のみならずぶどう膜炎も見られることがあるが,そもそも多くのぶどう膜炎が広く自 己免疫疾患なのでこのこと(関節リウマチという膠原病とぶどう膜炎の合併)は決して想像に難くない事実である. 29 感染性は炎症機序により微生物増殖型(ヘルペス属ウイルス,細菌,真菌)と免疫反応型(トキソプラズマ(他にも犬回虫 や結核などでも))に分けることができる. 13 部ぶどう膜炎で) ,飛蚊症(中間部 中間部・後部ぶどう膜炎で)などの症状も見られる られる. さて,三大ぶどう膜炎―という というのは本当は正確ではなく,ぶどう膜炎の三大原因疾患 三大原因疾患と呼ぶべ きだろうが―のサルコイドーシス のサルコイドーシス,ベーチェット病,原田病について簡単に疾患 疾患の概要をまとめ ておく. サルコイドーシスは非乾酪性 非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変の形成を特徴とする全身性疾患 全身性疾患である. 病因は明らかでないが,活性化 活性化されたマクロファージ・T 細胞から産生されるサイトカインによ されるサイトカインによ り,肺(肺門・縦隔リンパ節を を含む)をはじめ,肝臓,脾臓,表在リンパ節, ,眼,皮膚,心臓, 神経系,唾液腺などに類上皮細胞肉芽腫病変 類上皮細胞肉芽腫病変が形成される疾患である. ベーチェット病は,再発性口腔内 再発性口腔内アフタ性潰瘍,皮膚症状(結節性紅斑,毛嚢炎様皮疹 毛嚢炎様皮疹,皮下 の血栓性静脈炎) ,外陰部潰瘍, ,ぶどう膜炎を主徴とする原因不明の炎症性疾患 炎症性疾患である.HLA-B51 およびその他の遺伝的素因と何 何らかの外因が関与して T リンパ球の過敏反応性 過敏反応性に基づく好中球の 機能亢進が生じ,その結果上述 結果上述の症状を呈する. 原田病はメラノサイトに対する する自己免疫疾患であり,これが存在するところに するところに炎症が起きる. 結果,症状としては発熱,頭痛 頭痛,全身倦怠感で始まり,ぶどう膜炎による視力低下 視力低下,耳鳴り,難 聴が起こる.数週~数カ月遅れて れて全身皮膚に対側性に白斑が多発し,脱毛,毛髪 毛髪の白変をみる. この後者の皮膚症状はメラノサイトが はメラノサイトが侵されていることを見た目にもはっきりと にもはっきりと示すものである. しかし,問題文に「それ(疾患 疾患)について述べよ」とあるとしても眼科の試験 試験であるから,以 上のような疾患の概要よりも眼科的所見 眼科的所見とその補助となる全身検査所見との記述 記述が求められてい るはずである.以下,表にまとめ にまとめて解答とする(眼科所見を箇条書きし,ゴシッ ゴシック小フォントで 全身所見を加えた) . サルコイドーシス • 前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物 豚脂様角膜後面沈着物(次ページ図14),虹彩結節 虹彩結節) • 隅角結節,周辺虹彩前癒着 周辺虹彩前癒着 • 硝子体混濁(雪玉状 雪玉状,真珠首飾り状) • 網脈静脈炎 • 網脈絡膜滲出物 • 血清アンギオテンシン変換酵素 変換酵素(ACE)活性上昇/・ツベルクリン反応陰性化 反応陰性化 • 胸部XpやCTで両側肺門リンパ リンパ節腫脹/・67Gaシンチで肺門部集積 ベーチェット病 病 • 発作性,一過性,再発性 再発性の経過 • 前房蓄膿(次ページ ページ図15) • 網膜滲出物,網膜出血 網膜出血,網膜血管炎 • 硝子体混濁(微塵状 微塵状) • HLA-B51/・口腔粘膜の の再発性アフタ性潰瘍 • 毛嚢炎様皮疹,結節性紅斑 結節性紅斑/・外陰部潰瘍 14 原田病 • 両眼性の急性滲出性網膜剥離 急性滲出性網膜剥離 • 夕焼け状眼底(右図16, ,脈絡膜のメラノ サイトが崩壊消失することで することで,脈絡膜に存 在する豊富な血管の色が が透見されて赤く見 える.) • HLA-DR4, DR53, DQ4/・髄液 髄液での細胞数増加 • 皮膚白斑,白髪,脱毛/・難聴 難聴,耳鳴 参考文献 沖波聡 (2002).ぶどう膜炎.今日 今日の診断指針第 5 版.特に,表 1(病型別の の特徴的所見) ,表 2 (ぶどう膜炎と全身検査所見) ) 大黒伸行 (2010).ぶどう膜炎( (内眼炎) .今日の治療指針 2010 年版. 日本眼科学会 (2003).ぶどう ぶどう膜炎.[online],インターネット<URL:ttp://www.nichigan. ttp://www.nichigan. or.jp/public/disease/budo_makuen.jsp or.jp/public/disease/budo_makuen.jsp> 問 6-1 眼房水は( ア )で産生 産生される.房水は主経路として( イ )を通 通って,集合管に吸 収される.緑内障は隅角所見 隅角所見によって( ウ )と( エ )に分けられる けられる.交感神経 遮 断薬は( オ )によって によって眼圧降下作用を持つ. 解答: 眼房水は(ア 毛様体)で産生 産生される.房水は主経路として(イ 線維柱帯 → シュレム管(強膜 静脈洞) )を通って,集合管に吸収 吸収される.緑内障は隅角所見によって(ウ 開放隅角緑内障)と(エ 開放隅角緑内障 閉塞隅角緑内障)に分けられる けられる.交感神経 遮断薬は(オ 房水産生の抑制)によって によって眼圧降下作用 を持つ. 解説: 緑内障は, 「視神経と視野に特徴的変化 特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより させることにより30視 ・ ・ ・ ・ 30 ここで「眼圧上昇を伴い」と書くと正確 正確でない.平均的な眼圧の範囲に収まっていても人によっては によっては神経がダメージを受け ・ ・ ・ る人もおり(正常眼圧緑内障),正常な眼圧範囲 眼圧範囲を定めそれからの逸脱という形で眼圧上昇を定義することができないからであ することができないからであ る.だが,正常眼圧緑内障の患者さんでも さんでも眼圧を下げると効果があるのでその患者さんにとっては眼圧 眼圧が高かったと言うことが 15 神経障害を改善もしくは抑制しうる しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である である」 (日本緑内障 学会緑内障診療ガイドライン( (第 2 版) )と定義される. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 逆に,その患者にとっての眼圧上昇を生ぜしめるような何らかの構造的機能 構造的機能的異常(あるいは さらにその元になった疾患)は は必ず存在する. 眼圧を決めるのはその圧力を を生じさせ ている房水の産生と排出のバランスであ のバランスであ り,流路上のどこかで排出が滞 滞ることで そのバランスが崩れることがほと れることがほと んどである.ゆえにまず房水の経路 経路 を知っておかねばならない. 右上図 17 にあるように,房水 房水は毛様体で作られ(一部は虹彩でも) ,虹彩の裏を通過して前房 に至り,線維柱帯を経てシュレム てシュレム管から排出される.正常ではこの房水の循環 循環によってほぼ一定 の圧力が眼内に発生し眼球の形状 形状が保たれている. この経路が見かけ上どう障害 障害されるか(障害されるのは隅角近傍なので具体的 具体的にはその所見) と,その障害の原因により,緑内障 緑内障は以下のように分類される(谷原(2002)に に準拠). 原発開放隅角緑内障 正常眼圧緑内障 原発閉塞隅角緑内障 早発型発達緑内障 (いわゆる先天緑内障)) 続発緑内障 •① 眼圧所見:高眼圧 •② 視野異常:緑内障に特徴的な視野異常 •③ 眼底所見:視神経乳頭陥凹・蒼白の拡大とそれに とそれに対応した視神経 線維束欠損 •④ 隅角所見:隅角は見かけ上開放している. •① 眼圧は日内変動も含めて正常範囲内である( (21mmHg以下). •②~④は開放隅角緑内障(以下※)と同様. •①~③は※と同様. •④ 虹彩根部により隅角は閉塞している. •⑤ 急性緑内障発作時には,眼痛,頭痛,嘔吐, ,嘔気,霧視,充血な どを生じるとともに,眼圧は著しい上昇を示し, ,角膜浮腫,瞳孔の中 等度散瞳と対光反射の消失,浅前房を認める. •①~④は※とほぼ同様だが,胎生期における前房隅角 前房隅角の発育異常が 原因であり,緑内障の発症は先天性もしくは乳幼児期 乳幼児期である. •眼球壁が幼弱な時期に発症するため,眼圧上昇により により角膜径や眼球 径が拡大し,角膜浮腫,混濁,またそれによる流涙 流涙,羞明,眼瞼痙攣 を呈する. •①~③は※と同様. •④ 隅角は開放,閉塞のそれぞれがありうる. •⑤ 続発緑内障は,何らかの原因疾患に続発するもの するものを指し,その病 態は血管新生緑内障,落屑症候群,炎症(と癒着 癒着)に関連した緑内障, ステロイド緑内障など,原因疾患により多様である である. できる. 16 補足:開放隅角緑内障の疾患概念について 原発開放隅角緑内障は,線維柱帯とその奥にあるシュレム管が目詰まりを起こし,うまく房水 が流出されないために眼圧が上昇するために生じると考えられている.その意味では流出路が開 放しているわけではなく,隅角により大きく構造的に障害されている(閉塞隅角)わけではない だけである―もちろん,そのことが急性発作がなく慢性に経過する本疾患の性質を作り出してい るわけでもあるが. 目詰まりの原因としては,60 歳以上の開放隅角緑内障の半数以上で水晶体偽落屑症候群(近年 は単に落屑症候群と呼ぶことも多い)があると言われ,これは虹彩や水晶体表面からいわばゴミ が剥がれて眼の中に落ちる疾患である.続発緑内障の原因にも挙げておいたが,ということは原 発開放隅角緑内障には実は続発しているものがあるということであり,原発か続発かという境に は原因疾患の明確さや程度の問題が存在している. 正常眼圧緑内障は,この原発隅角緑内障の中で眼圧が 21mmHg 以下という「正常範囲」にあ りながら視神経障害を呈するものをいう.よって,広義には原発開放隅角緑内障は正常眼圧緑内 障を含み,これを除いたものを狭義の原発開放隅角緑内障と定義している. 正常眼圧緑内障は,視神経の血液循環が悪かったり,遺伝的体質や免疫・酸化ストレスなど種々 の原因のために,通常では緑内障を起こさない程度の眼圧でも視神経が障害されるため生じると 言われている31. 治療であるが,薬物治療,レーザー治療,観血的手術の三本立てで,眼圧の下降を図る.どん な緑内障でもその患者さんにとっての眼圧上昇はあり,眼圧の下降が唯一のエビデンスのある治 療指針である. 薬物治療では右の表 2 に挙がっ ている眼圧下降作用のある薬剤を 組み合わせて使用する. 眼圧は房水の産生と流出のバラ ンスで決まっているならば,産生 を抑えるか,流出を促進させてや れば眼圧を下降させることができ る.実際,表 2 の通り,眼圧下降 表2 眼圧下降薬 薬剤 眼圧下降機序 プロスタグランジン関連薬 房水流出促進 交感神経遮断薬 受容体遮断薬 房水産生抑制 1受容体遮断薬 房水流出促進 1 受容体遮断薬 房水産生抑制+流出促進 炭酸脱水素酵素阻害薬 房水産生抑制 副交感神経刺激薬 線維柱帯流出路抵抗減少 高張浸透圧薬(マンニトール) 硝子体体積減少 薬はいずれかの作用を有する薬剤である(なお,下で紹介する手術の多くは流出を物理的に促進 するものである) . ブロッカー(ニプラジロール(ハイパジール®)) ,炭酸脱水素酵素阻害薬(ブリンゾラミド(エ イゾプト®),急性期にアセタゾラミド(ダイアモックス®)) ,プロスタグランジン関連薬(ラタ ノプロスト(キサラタン®) )はよく使用される.交感神経遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬は続発緑 内障で眼に炎症がある場合でも使いやすい. また閉塞隅角緑内障の急性発作時には縮瞳させてやらなくてはならないので,副交感神経刺激 薬のピロカルピン(サンピロ®)を用いる. 31 が,実に緑内障の 6 割は正常眼圧緑内障であることがわかった今日, 「通常では緑内障を起こさない程度の眼圧」という言い 方すら正確でなく,脚注 30 の繰り返しだが,眼圧の正常値は各人それぞれに決まるものと考えなくてはならない. 17 レーザー治療には,レーザー線維柱帯形成術(レーザーを線維柱帯に照射し房水流出率を改善 する,開放隅角緑内障の治療) ,レーザー虹彩切開術(虹彩による流出路のブロックを解除し前後 房の圧格差をなくす,閉塞隅角緑内障の治療)などがある.加えて,他の手段で眼圧コントロー ルがきかない末期では,毛様体をレーザーにより破壊し房水産生を抑制して眼圧下降を得るやや 無理やりな毛様体光凝固術が施行されることもある. 観血的手術としては,線維柱帯切除術(強膜で作った弁の下で輪部組織を切除し,前房と結膜 下組織の間に新たな房水流出路を作製する術式.大部分の病型の緑内障に対して最も広く行われ ている) ,線維柱帯切開術(効果は切除に比して弱いが術後管理が容易で,発達緑内障や原発開放 隅角緑内障に用いる)がある. また,原発閉塞隅角緑内障では白内障と同様に水晶体再建術(超音波乳化吸引術+眼内レンズ 挿入)を行うと十分な眼圧下降が得られることがわかり,隅角の癒着を剥がす操作(隅角癒着解 離術)と組み合わせてこれを行うことが近年増えている. 問 6-2 緑内障に特徴的な眼底所見を二つ書け. 解答: 視神経乳頭の陥凹拡大,網膜神経線維層欠損 解説: 問 6-1 に対しては片手落ちの解説を書いたが,それは眼圧上昇の何が問題なのかに触れていな いからである. 眼圧が継続的に高い状態が続くと,各人の視神経の脆弱性に応じてではあるが,視神経が障害 され,その視神経の障害に対応して,弓状暗点(ビエルム暗点) ,鼻側階段など特徴的な視野異常 が出る.眼底検査において視神経の変化を認め,それに対応する視野異常があれば緑内障と診断 してよい. 緑内障で見られる特徴的な眼底所見を列挙する. ① 視神経乳頭の陥凹拡大(露出血管も含む) (下図 18) 視神経乳頭内に観察されるへ こみ部分(陥凹)の拡大は視神 経乳頭にみられる緑内障性変化 における最大の特徴の一つであ る. 陥凹が急速に拡大していくと, 本来陥凹縁の内側にそって走行 する小血管がその拡大に追いつ けず,拡大した陥凹の底部ある いはスロープ中に取り残され露 出した状態が生じる.この露出 血管は陥凹の拡大が進行してい ることを示す重要な所見である. 18 ② 視神経乳頭出血 視神経乳頭出血は,緑内障性変化を持つ視神経乳頭にかなり特異的に生じ(健常者では稀) ,特 に反復してみられた場合は病的意義が高い. ③ 乳頭周囲網脈絡膜萎縮 乳頭周囲網脈絡膜萎縮すなわち PPA は,健常者に比して緑内障眼で高頻度に観察され,面積も 大きい.緑内障性視神経乳頭障害にまったく特異的な変化ではないとしても,視神経乳頭部の何 らかの血流障害因子に関連した脆弱性を示唆する所見として重要である. ④ 網膜神経線維層欠損 網膜神経線維層欠損は乳頭陥凹拡大や視野欠損に先行して生じる場合も多く,最も早期に生じ る緑内障性眼底変化と言われており,重要な所見である.網膜血管径より太いスリット状,楔状 欠損が観察される場合に緑内障性変化である可能性が高い. また,網膜神経線維が菲薄化してくると,網膜血管周囲の神経線維層が薄くなり,血管壁はよ り明瞭に観察され,神経線維の上に浮き上がったように見えるようになる.このような変化も網 膜神経線維層の欠損を示唆する. 右図 19 に示したのは正常な網膜と緑内障で ダメージを受けた網膜の断面である.倍率は同 じで,ダメージを受けた右側写真は内側から外 側まで網膜全体が写っているが,正常な左はそ の高さだと写真が途中で切れている. それは緑内障の網膜がダメージで薄くなっ ていることを示しており,正常写真中に NFL と GC と示された神経線維層と神経節細胞層, つまり内網状層 IPL より上の部分が緑内障症 例ではつぶれてしまっている様子にも見て取 れる. これが網膜神経線維層欠損のミクロな実態 である. 参考文献 日本眼科学会 (2006).緑内障診療ガイドライン(第 2 版) ,補足資料 2 緑内障性視神経乳頭・網 膜神経線維層変化判定ガイドライン.日本眼科学会雑誌,110,10:810‐814 谷原秀信 (2002).緑内障.今日の診断指針第 5 版. 図表の出典 図 1 大橋裕一 (2010).角膜炎・角膜潰瘍.金澤一郎・永井良三総編集,今日の診断指針第 6 版, 医学書院.図 5(角膜ヘルペス(樹脂状角膜炎)) 図 2 同上.図 6(細菌性角膜炎)を改変 図 3 同上.図 7(Acanthamoeba 角膜炎) 図4 Kierszenbaum, AL. (2007). Figure 9-14 (Layers of the retina) を改変 19 図 5 伊藤正男・井村裕夫・高久史麿(総編集) (2009).医学大辞典第 2 版,医学書院. 「網膜」図 図 6 a. 後藤由夫(監修),堀貞夫(編集) (2010).糖尿病による失明・網膜症(糖尿病セミナー15). [online],インターネット<URL:ttp://www.dm-net.co.jp/seminar/15_/>.単純網膜症 (同 /15_/momak05.gif) ,b, c. 加藤聡 (編集) (2010).糖尿病網膜症(ヘルスドットネット目と健 康シリーズ No.2) .[online],インターネット<URL:ttp://www.skk-health.net/me/02/index. html>. b. 増殖前網膜症 (同 0208.gif),c. 増殖網膜症 (同 0209.gif) 図 7 日本眼科学会 (2003).糖尿病網膜症.[online],インターネット<URL:ttp://www.nichigan. or.jp/public/disease/momaku_tonyo.jsp>. 図 3(牽引性網膜剥離のイメージ) (同 disease/img/ /tonyo3.gif) 図 8 竹内忍 (2002).網膜剥離(裂孔原性網膜剥離).今日の診断指針第 5 版,医学書院.図 1 (裂孔原性網膜剥離) 図 9 医学大辞典第 2 版. 「硝子体手術」図 図 10 日本眼科学会 (2003).加齢黄斑変性.[online],インターネット<URL:ttp://www. nichigan.or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp>.a. 図 4(眼底写真でみる網膜の萎縮巣) (同/disease/img/AMD4.jpg) b. 図 5(眼底写真でみる網膜の出血)(同/AMD5.jpg) 図 11 同上.図 11(光干渉断層計検査)(同/AMD11.jpg) 図 12 同上.図 12(光線力学的療法)(同/AMD12.jpg) 図 13 奥 田 恭 章 (2009) . RA 診 療 に お け る 重 要 な 関 節 外 症 状 と 合 併 症 , Frontiers in Rheumatology & Clinical Immunology 3, 4. 写真 1(強膜炎)を改変 図 14 藤田眼科 (2011).サルコイドーシス(目の手術・病気について>ぶどう膜炎)(ttp://www. fujitaec.or.jp/budoumakuen/budoumakuen_002.html) 写真(豚脂様角膜後面沈着物)(同 /budoumakuen/p04.jpg) 図 15 藤田眼科 (2011).ベーチェット病(同上)(同/budoumakuen/budoumakuen_001.html) 写 真(前房蓄膿)(同/p01.jpg) 図 16 所敬 (監修) (2002).現代の眼科学第 8 版,金原出版.写真(夕焼け状眼底)を Google 画 像検索を経て ttp://img.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/2a/87/swdsn/folder/1179384/img_1179384 _38974760_0?1155907033 より二次利用 図 17 日本眼科学会 (2003).緑内障.[online],インターネット<URL:ttp://www.nichigan.or.jp /public/disease/ryokunai_ryokunai.jsp>.図 1(房水の循環)(同 disease/img/ryokunai1.gif) 図 18 新家眞 (監修) (2002).緑内障(参天製薬>目の健康).[online],インターネット<URL: ttp://www.santen.co.jp/health/ryokunai.shtml>.眼底写真 図 19 Kumar et al. (2004). Robbins & Cotran Pathologic Basis of Disease 7E. Saunders. Figure 29-26 (The retina and optic nerve in glaucoma) を改変 表 1 船津英陽 (2009).糖尿病網膜症.今日の治療指針 2009 年版,医学書院.表(糖尿病網膜 症の診断と治療) 表 2 川瀬和秀 (2010).緑内障(薬物治療).今日の診断指針 2010 年版.表(眼圧下降薬)を もとに作成 20