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台湾知財ニュース(17年8月号)
台湾知財ニュース(17年8月号) ・CD-R 特許関連行政訴訟、フィリップスら三社に勝訴逆転判決 ・音楽ダウンロード 5 割超が「有料で利用したい」、ネット調査 IFPI:消費者だけの意見調査は大した意味がない ・医薬品特許、輸出のための強制実施 法制化に向けた作業進行中 ・自治体が中央官庁所有特許工法を無断で使用 特許権管理機関からロイヤリティーの請求 ・『inside』はインテルが独占使用する英文字ではない! 最高行政裁判所、称呼類似が類似商標か 誤認混同のおそれの有無で判断 ❏CD-R 特許関連行政訴訟、フィリップスら三社に勝訴逆転判決 台湾 CD-R メーカー各社に対する CD-R 関連特許の一括ライセンスが公平取引法で禁じ られている連合行為(日本独禁法にいう共同行為)にあたるとされ、公平取引委員会 (以下、公平会)から過料処分を受けたフィリップスら三社が起こした行政訴訟で、台 湾高等行政裁判所は 11 日、公平会の処分を取り消し、原告側によるライセンス供与は 連合行為にあたらないとする逆転判決を言い渡した。 判決では、市場状況の著しい変動が生じたにもかかわらず、ライセンシーに交渉の機 会を与えず、従来の実施料率の算定方法を維持していたなど違法な事実はがあったこと を認定している一方、三社がそれぞれ保有する CD-R 関連特許技術は代替不可能な「相 互補完性」を有するものであって、互いに競い合う関係が存在しないことから、連合行 為に当たらないと認定し、公平会の見解を覆した。 1999 年、台湾 CD-R メーカー三社は、フィリップスらがライセンス料の料率を共同で 決定する合意に基づいて一括ライセンスの形で台湾 CD-R 特許技術市場で独占的な地位 を築き上げ、ライセンス料の料率を不当に維持し、またライセンシー側に実施許諾に関 する重要な情報の提供を拒否し、特許権の有効性への異議を禁止するなど市場支配力を 濫用したとして公平会に告発した。公平会は調査を経て公平取引法違反と認定し、かか る行為を直ちに停止することを求めるとともに、三社に併せて 1400 万元の過料処分を 下した。これを不服としてフィリップスらは訴願手続きを提起したが、処分を逆転させ ることに失敗し、転じて高等行政裁判所に裁判を起こした。 裁判が行われていたここ数年の間に、光ディスク産業の環境は大きく変化している。 フィリップスら三社はとっくに一括ライセンスを取り止めており、各社独自のライセン ス供与を行い、ロイヤリティーを徴収している。要するに、当初問題とされていた「連 合行為」はもはや存在しない。あるメーカーの話しでは、裁判の結果が出たところで、 影響を受けることはない。フィリップスら三社の「連合行為」を公平会に告発したメー カーも、今は一社だけが生産を続けているという。 経済日報 2005.08.19 ほか (解説) 公平会は「原告らは市場で水平的な競争関係にあり、CD-R 関連特許をそれぞれ保有し ている。ソニーと太陽誘電はライセンス供与に関してフィリップスに一任し、フィリッ プスが仕切る形で各社の保有する関連特許をまとめて台湾 CD-R メーカーに一括ライセ ンスを受けさせた。相互間の競争が排除されたことによって、市場機能が妨害され、公 平取引法第 14 条違反になる」と主張している。これについて、判決では公平会と異な る見解が次のように示されている。「公平取引法第 14 条に定めた『連合行為』を構成 する主体的要件から、製造販売の同一の段階において水平的競争の段階にあることが必 要である。但し、競争関係が存在するかしないかは事業者が提供する商品又は役務に代 替可能性があるかないかによる。裁判所が調べたところ、CD-R の技術分野においては、 ライセンス供与を受けようとする者がフィリップスら三社の特許技術を同時に使用しな ければ CD-R を作り上げることができない。フィリップスら三社が保有する特許技術に 相互補完性があり、他の技術への代替が不可能である。したがって、三社の間には競争 関係が存在しない。競争関係がなければ、当然のこと公平取引法上の『連合行為』に当 たらない。」 次に、「ライセンス料の算定方法の不当な価格維持」、「特許権の有効性への異議の 拘束(ライセンス契約の締結を条件にライセンスの対象となる特許権への無効審判請求 の取り下げを要求)」は独占的な市場支配力の濫用であって、公平会が公平取引法第 10 条第 2 号、同条第 4 号違反と認定し、処分した部分について、判決では、原告らによる 不法行為であったことを確認したうえ、処分の根拠となる条文の適用に誤りがあったこ とを指摘し、原告らを独占事業者と認定・公告しないまま(注:1999 年 2 月 3 日の法改 正で独占事業の公告に関する第 10 条第 2 項の規定は削除。改正法の発効前にたとえ市 場支配力を濫用した行為があったとしても、主務官庁による独占事業公告の手続きを経 ない限り、罰されるべきではない)、独占禁止関連規定が引用された処分の適法性に問 題があるとして、原処分を取り消すことにした。 主な参照条文: 公平取引法(2000.04.26) 第 7 条 本法において連合行為とは、事業者が契約、協議その他の方式の合意に よって、競争関係のある他の事業者と共同で商品又は役務の価格を決定し、又は数量、 技術、製品、設備、取引相手方、取引地域等を制限し、互いに事業活動を拘束する行 為をいう。 事業者は連合行為をしてはならない。・・・ 第 14 条 第 41 条前段 公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めて その行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、また新台湾ドル 5 万元以上、 2500 万元以下の過料に処することができる。 公平取引法(1999.02.03)(2000.04.26) 第 5 条 本法において、独占とは、事業者が特定市場において競争のない状態、 又は圧倒的な地位にあって、競争を排除できる能力を有することをいう。 二以上の事業者が、実質的な価格競争をしないが、その全体の対外的関係には前 項規定に該当する場合があるときは、独占とみなす。 第 1 項においていう特定市場とは、事業者が一定の商品又は役務について競争 を行う区域又は範囲をいう。 第 10 条 独占の事業は、次に掲げる行為を行ってはならない。 第 2 号 こと。】 第4号 【商品の価格又は役務の報酬について不当な決定、維持又は変更を行う 【その他市場での地位を濫用する行為。】 公平取引法施行細則(1999.08.30) 第 2 条 本法第 5 条においていう独占とは、次に掲げる事項を参酌してこれを認定 しなければならない。 一.特定市場における事業の占有率。 二.時間、空間などの要素を考慮して特定市場が変動するなかでの商品又は役務の代替可 能性。 三.事業が特定市場の相場への影響力。 四.他の事業が特定市場へ参入するにあたり、容易に克服できない困難の有無。 五.商品又は役務の輸出入状況。 第 3 条 事業が次の各号のいずれにも該当しないときは、前条独占事業の認定範囲 から除外する。 一.特定市場における事業の占有率が二分の一に達する。 二.特定市場における事業全体の占有率が三分の二に達する。 三.特定市場における事業全体の占有率が四分の三に達する。 前項各号の場合のいずれに該当するものであって、その個別事業の当該特定市 場における占有率が十分の一に達していないとき、又は事業の前の会計年度の売上げ 総額が新台湾ドル十億元に達していないときは、同事業を独占事業の認定範囲から除 外する。 事業の設立又は事業者の提供する商品若しくは役務の特定市場への進出が法令、 技術の制限を受け、又はその他市場の需給に影響し、競争能力を排除するに足りる事 情があるときは、前二項の認定範囲から除外される事情があっても、中央主務官庁は なおそれを独占事業と認定することができる。 ❏音楽ダウンロード 5 割超が「有料で利用したい」、ネット調査 IFPI:消費者だけの意見調査は大した意味がない 台湾国内最大級の音楽ダウンロードサイト、「KURO(飛行網)」が著作権法違反でレ コード会社から刑事告訴された事件は 9 月 9 日に判決が言い渡されることになっている。 6 月 30 日、同じ P2P ソフトを利用する音楽ダウンロードサイトの「ezPeer」に対して台 北地裁から無罪判決が下されたこともあって、KURO にはどのような判決が下されるか注 目されている。昨日、KURO、ezPeer を会員に持つ台北市消費者電子商務協会(SOSA)が インターネットユーザーを対象にアンケート調査を実施したところ、5 割超の人が音楽 ダウンロードサービスを有料で利用したいと答えたことが分かった。この結果を受けて、 SOSA は消費者の権利保護の見地から、レコード会社と P2P サイト経営者が音楽著作物の 利用許諾について速やかに協議を行うべきことを訴えている。 「インターネットにおける音楽ダウンロード」に関する調査の結果によると、音楽ダ ウンロードサービスを利用したことのある人が 85%を占めている。そのうち、6 割以上 の回答者が適法性の問題や司法捜査の対象にされるのを懸念している。このため、半数 以上が「有料で利用したい」との回答。さらに月額利用料について尋ねたところ、台湾 元 100 元(約 300 円)程度の支持率が最も高い。 SOSA は調査結果を次のようにコメントしている。「音楽ダウンロードという時代の流 れには逆らえない。ユーザーはちゃんと料金を支払って利用したいと言っている。P2P サイトとの協議に先行してユーザーを懲らしめるようなことは望ましくない。調査の結 果に示されているように、7 割以上の回答者は IFPI、レコード会社と P2P サイト間の紛 争の早期解決に期待している。 学者によれば、P2P サイトはユーザーに対して音楽ファイルの公開伝達は著作権法に 違反し、法律責任を負わねばならないということを告知すべき義務を果していないなら、 消費者保護法違反になる可能性がある。また、他人に著作権侵害を教唆したり幇助した りすることが刑事責任につながるので、そのようなことのないように「無制限に音楽を ダウンロードできる」といったようなキャッチフレーズは避けたほうが無難であるとい う。 一方、IFPI は SOSA の調査に対して、「消費者だけを対象にする調査は消費者にベン ツを幾らで買いたいかを尋ねるのと同じで、大した意味はない」と冷ややかな反応。 自由時報 2005.08.31 (解説) SOSA の調査結果によると、音楽ダウンロードサービスを料金を支払って利用したいと 答えた人のうち、月額利用料 100 元程度を熱望する声が大勢を占めているという。これ は一曲ごとの購入の料金ではなく、月額固定制サービスの利用料である。つまり、毎月 100 元程度の利用料を払って無制限にお気に入りの曲を好きなだけダウンロードしたい ということである。消費者の受容価格範囲とレコード会社が考えていた価格設定が大き くかけ離れている結果になった。消費者にしてみれば、低料金で利用できるに越したこ とがないのはいうまでもないが、平均で 350 台湾元(1050 円)がする新作アルバム CD をたかが 100 元程度でダウンロードし放題にするなんてことをレコード会社が首をたて に振るわけがない。レコード会社の業界団体である IFPI から冷ややかな反応しか返っ てこなかったのも分かる。 国民平均所得が 3 万 2000 ドルのアメリカではわずか 12 ドルで最新アルバムを手に入 れることができる。国民平均所得 3 万ドルの日本では新作音楽 CD の平均価格が 20 ドル。 それなのに、1 年当たりの国民平均所得が 1 万 4000 ドルの台湾で 1 枚の CD を買うのに 約 10 ドルがかかるのは高すぎるとの厳しい指摘がある。音楽ダウンロードサービスの 利用料にせよ、音楽 CD の料金にせよ、売り手と買い手との考えに開きが大きい。 ブロードバンド時代の到来に伴い、様々なビジネスモデルが出現しつつある中で、ピ アツーピア(P2P)ファイル交換ソフトが開発され、今までと全く違う形で消費者の趣 味・娯楽・生活により豊富な選択肢を提供してくれた。P2P ソフトが普及し、レコード 会社の業績は悪化する一方だ。音楽 CD 市場の萎縮に苦しむレコード会社は P2P ソフト を利用する音楽ダウンロードサイト、ezPeer、KURO を相次いで刑事告訴し、裁判で劣勢 の巻き返しを図ろうとした。しかしながら、ezPeer サイトの経営者に無罪判決が下され、 裁判官の見解をめぐる新たな論争に火をつけた。 P2P ソフトを公衆が利用できるように提供したり、ユーザーによる特定ファイルの伝 達に制限を課したりするなど、著作権法違反になりそうなコンテンツのフィルタリング を P2P ウェブサイトに義務付ける規定は現行のどの法律にも見当たらない。法律の規範 とインターネット技術の進化がもたらしたライフスタイルの変化に隔たりが広がってい るといわざるを得ない。 ❏医薬品特許、輸出のための強制実施 法制化に向けた作業進行中 鳥インフルエンザの感染拡大等疫病の大発生による公共衛生への衝撃に備えて、知的 財産局は、特定の状況下で強制実施許諾の許可を受けた国内の製薬メーカーにジェネリ ック医薬品の製造、及び第三世界の貧しい国への輸出を認める方針が明らかになった。 緊急事態に備えた強制実施許諾は既に特許法に規定されており、今回は新たに特許医薬 品の輸出のための強制実施許諾に関連する規定を追加する。なお、医薬品輸入のための 強制実施権については検討中ということである。 国家の緊急事態等一定の条件を満たす場合には、製薬メーカーは特許法(専利法)第 76 条に基づいて、特許保護期間中の医薬品について知的財産局に製造の認可を申請する ことができる。認可を受けたメーカーはたとえ当該医薬品の特許権者の許諾を得なくて も、緊急的に生産に入ることができる。但し、生産の量についてはあくまでも限定的で、 また輸出するには知的財産局の許可が必要とされる。 「医薬品輸出の強制実施許諾」法案は優先法案として国会での早期成立を目指す。 工商時報 2005.08.29 (解説) 2001 年のドーハ閣議会議で採択された「TRIPS 協定及び公衆衛生に関するドーハ宣 言」及び、2003 年 8 月 30 日にジュネーブで開催された WTO 一般理事会の医薬品アクセ スに関する決定は、医薬品製造能力のない若しくは不十分な加盟国はエイズ、瘧病、結 核その他重大な伝染病等公衆衛生にかかわる悪影響を与える疾疫により、国が緊急事態 に直面したときは、国外市場から安価な特許薬を合法的に輸入することを可能にした。 言い換えれば、医薬品に特許があっても一定の条件を満たす場合には、そのような国に 対してジェネリック医薬品を輸出することができる制度を提供するということになる。 台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法に相当)により強制実施権が許諾 されるのは国内市場への供給に限定されているため、医薬品輸出の強制実施ができるよ うに法改正を行わなければならない。 次に台湾専利法における強制実施許諾(台湾では「特許実施」という)について若干 説明する。 まず、強制実施権は発明に係る特許についてのみ許諾される。法定強制実施許諾の事 由としては次の六つある。1.国家的緊急事態に対応するための非営利的目的の使用 (特許法第 76 条第 1 項)、2.公益増進のための非営利目的の使用(特許法第 76 条第 1 項)、3.請求者が合理的な商業上の条件を(特許権者に)提示したにもかかわらず、 相当な期間内に特許発明の実施許諾に関して協議が成立しない場合(特許法第 76 条第 1 項)、4.特許権者に競争制限若しくは不正競争の事実があり、裁判所の判決又は行政 院公平取引委員会の処分によってこれが認定された場合(特許法第 76 条第 2 項)、5. 再発明の特許権者は元発明の特許権者と元発明の実施許諾について協議が成立しない場 合(特許法第 78 条第 4 項)、6.(特許製法によって製造された物について他人が特許 権を保有する場合)製法特許の権利者は物の特許の権利者と物の特許の実施許諾につい て協議しても合意が得られない場合(特許法第 78 条第 4 項)。 強制実施権は内需への供給に限られていて、また権利の処分、例えば譲渡、信託、相 続、許諾若しくは質権の設定についても制限がある。 ❏自治体が中央官庁所有特許工法を無断で使用 特許権管理機関からロイヤリティーの請求 国家科学技術委員会(以下、国科会)が所有する鉄骨造高層ビルの建設工事によく使 われている特許工法が、台北市発注工事に無断で使用されているため、同特許権の管理 機関である国立台湾科技(科学技術)大学は、市発注工事について請負業者による施工 状況など監督の責任があると主張し、台北市政府に対して市政府所属機関の全ての発注 工事に同特許工法が使用されていないか、或いはこれから使用する予定があるかどうか を全面的に調査し、使用の事実があるなら、速やかに権利者の許諾を受け、特許実施料 を支払うよう要求した。 同特許工法に係る特許権は国科会が所有するが、台湾科技大学の教授によって開発さ れたため、科学技術基本法により台湾科技大学が運用・管理している。台湾だけでなく、 アメリカ、日本、EU でも特許権を取得している。 地上 101 階建の世界最高層ビル、「TAIPEI 101、台北フィナンシャルセンタービル」 (2004 年 12 月完成)をはじめ、権利者から許諾を受けて同特許工法を採用した鉄骨造 高層ビルの数が 50 を超えているという。1999 年 9 月 21 日、台湾中部に起きた「921 大 地震」以降、高層ビルの建設工事に多く用いられるようになり、今や業界では鉄骨造建 築物の標準施工法として知られている。 経済日報 2005.08.12 (解説) 台北市が発注する、繁華街にある地下鉄駅の総合開発ビル建設工事に無断で使用され、 特許権侵害の問題となっている施工法は、鋼材を材料とする鉄骨が使用されている柱と 梁をつなぐための接合部材に関する特許発明で、伝統的な接合システムに比べ耐震能力 を大幅に向上させ、また設計や施工方法の簡易化により生産コストの低減が図れるなど 経済的メリットを創出している。 知的財産権に対する認識不足などから、政府から支給される科学研究補助金で研究機 関や大学で開発された成果を、勝手に使っても問題にならない公共財と勘違いして使っ てしまう人は少なからずいる。このケースのように、一般の人々はともかく、公の機関 でさえこういうことが起こり得る。 台北市政府によれば、施工業者に問い合わせたところ、工事の進捗状況をみて建築士 を通じてロイヤリティーを支払うつもりでいるということだった。つまり前もって特許 権者の許諾を得てから使用するのでなく、権利者に何のことわりもなく使用している。 しかも、ロイヤリティーを支払うタイミングは自分の都合によって決める。 無断使用のうえに特許権者からの権利の主張を受けても積極的に対処せず、同ビルの 開発などは SOGO 百貨店に一任するという市政府関係者の姿勢に問題があったのではな いか。 ❏『inside』はインテルが独占使用する英文字ではない! 最高行政裁判所、称呼類似が類似商標か 誤認混同のおそれの有無で判断 コンピュータを使ったことがあるなら、インテル社の商標「intel inside」以下、引 用商標)を知らない人はいないといっても過言ではない。CPU やチップセットで世界市 場を制覇するインテルが、係争商標「DSP inside」の商標登録査定への異議申立に関連 して、台湾知的財産局の異議不成立処分を不服として最高行政裁判所まで争った事件で、 係争商標は引用商標と類似する商標にあたらないとして訴願決定及び原処分取消し等原 告側の請求を棄却する判決が下された。 最高行政裁判所は判決で、商標の類似は、普通の知識や経験を有する消費者が商品を 購入するにあたり、通常の注意を払って(商品の出所につき)混同誤認のおそれがある かないかによって判断されるとするのが原則であり、称呼において近似する場合でも、 誤認混同のおそれがなければ、商標法に違反しないとしている。 経済日報 2005.08.12 2005 年 7 月 21 日最高行政裁判所判決 94 年度判字第 1066 号商標異議申立 (解説) 係争商標への登録異議申立に対して、知的財産局は商標登録を維持すべき決定をした 時の商標法第 37 条第 7 号、第 12 号により、商標が「他人の著名な商標または標章と同 一または類似で、公衆に混同誤認を生じさせるおそれがある」、「他人の同一商品又は 類似商品に係る登録商標と同一又は類似である」という場合のいずれかに該当するとき は、登録を受けることができないが、同条文の適用は、対比する両商標の構成が同一で、 又は類似することが前提となっている。商標の有する外観、称呼及び観念のうち一つで も類似であれば類似商標となりうる。また、商標の類否は、一般的取引者・需要者の通 常有する注意力を基準として混同のおそれがないかを判断しなければならない。 本 件 係 争 商 標 は 外 観 で は 、 イ ン テ ル の 「 intel inside 」 、 「 INTEL INSIDE 」 、 「INTEL INSIDE XEON」等商標との区別がつきやすい。また取引における経験則に基づ き場所と時間を異ならせて隔離的な観察をしても、需要者層で関連のあるシリーズ商品 と間違えて商品の出所を混同するおそれがあるとはとうてい言い難い。 インテルは、世界中の二百余りの国で商標登録を受けている「intel inside」が同社 のコンピュータプロセッサー製品を表す商標として周知されている事実を強調し、係争 商標のように商標中に「inside」が含まれている場合、インテルが連想されると主張す る。これに対して、知的財産局は両商標とも英文字「---inside」が含まれているが、 係争商標の中心的な部分、白文字の「DSP」は立体的にデザインされた黒地の三つのス クエアのなかに均等に配列されていて、平面的で太いラインで描かれたちょっぴり変形 のサークルに「intel inside」が走り書きのように書かれている引用商標とは構成が大 いに異なると反論。 主な参照条文: 商標法(1997.05.07) 第 37 条 商標の図形であって、次に掲げる各号のいずれかに該当するものは、登録 を受けることができない。 第七号【他人の著名商標又は標章と同一又は類似のものであって、公衆に混同を生 じさせるおそれがあるもの。但し、出願人は商標若しくは標章の所有者又は使用許諾 をする者の同意を得て登録出願をするときは、この限りでない。】 第十二号【他人の同一商品又は類似商品に係る登録商標と同一又は類似のもの。】 商標法施行細則(1999.09.15) 第 15 条第 1 項:商標図形の類似は、普通の知識や経験を有する一般の商品購買者が 商品を購入するときに通常の注意を払って混同誤認の虞があるか否かによって判断す る。