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B04-005 二種燃料を用いた燃料成層化による HCCI 燃焼に関する研究
B04-005 二種燃料を用いた燃料成層化による HCCI 燃焼に関する研究 ○ 片山 泰貴 1) 山崎 祥史 2) 飯島 晃良 3) * 庄司 秀夫 4) Research on HCCI Combustion using Mixture Stratification by Dual Fuels Taiki Katayama Yoshifumi Yamazaki Akira Iijima Hideo Shoji Homogeneous Charge Compression Ignition (HCCI) combustion has attracted considerable interest in recent years as a new combustion concept for internal combustion engines. The HCCI combustion process has four issues to be resolved: ignition timing control, slower combustion, difficulty expanding stable operation to the high load region and avoidance of knocking. In this study, an attempt was made to overcome these issues by mixture stratification. This stratification combustion has such a concept. : the density of the air-fuel mixture is uniform, the ignition characteristic is different in the cylinder. The experimental result that ignition occurred locally at the low octane side then occurred high octane side in the cylinder. As the result, the combustion steep index number can be slower and avoidance of knocking without using EGR. Key Words: Internal Combustion Engine, Compression Ignition Engine, Combustion / Spectroscopic Measurement, Dual Fuels, Mixture Stratification ④ 1. は じ め に 近年, 高効率かつ低公害な燃焼方式として予混合圧縮着 火 (Homogeneous Charge Compression Ignition 以下 HCCI) こともわかっている. そこで, 相当オクタン価変化や燃料 の投入量を変化させても同様の効果が得られるか検討を行 った. 2. 実験装置及び実験方法 機関が注目されている. しかし, HCCI 機関には物理的着火 手段が無く, 着火時期及び燃焼は混合気の化学反応による 供試機関には, 2 ストローク空冷単気筒ガソリン機関を 影響が大きい. そのため, 着火時期の制御及び燃焼が急峻 用いた. 供試機関仕様及び実験条件を表 1 に, 実験装置概 (1) 過ぎるという課題が存在する . その解決手法として, 燃 料及び温度などを不均一とした成層燃焼の研究がなされて いる. そこで, 著者らは着火特性の異なる燃料を 2 つのポ ートそれぞれに噴射することで, シリンダ内の混合気を不 均一とする成層燃焼を行った. 燃焼状態の観測には, 分光 学的手法の 1 つである発光法を用い, 発光の挙動を確認 した. 過去の研究で S50 RON かつ希薄域においては, シ リンダ内の混合気を不均一とする成層燃焼を行うことで, 分光学的手法である発光法を用いた結果, 燃焼室内の発光 が捉えられる時期に空間的な差異があり, 段階的な燃焼に なっていることがわかっている (2) . また, 従来の混合気が 略を図 1 に示す. Table 1 Specifications of test engine and test condition 2 Stroke Air Cooled Single Cylinder Gasoline Engine Bore × Stroke 72 × 60 mm Displacement 244 cm3 Type of Scavenging Timing Schnürle Scavenging Port Opening Timing 54 deg. BTDC Scavenging Port Closing Timing 54 deg. ATDC Effective Compression Ratio ε = 12 : 1 Engine Speed Ne = 1000 rpm Throttle Wide Open Throttle Injector 1 n-heptane (0 RON) Test Fuel Injector 2 iso-octane (100 RON) 均一な HCCI に比べ, 燃焼を緩慢にすることが可能である 本実験では 2 種の着火特性の異なる燃料を用い, 左右 *2009 年 03 月 03 日自動車技術会関東支部学術研究講演 の掃気ポートからインジェクタを用いて, 着火特性の異な 会において発表. る燃料を噴射することで成層燃焼を行った. そこで, 図 2 1)・2)日本大学大学院理工学研究科 (101-8308 東京都千代 にインジェクタ取付位置及び測定位置の概略図を示す. 田区神田駿河台 1-8-14) Injector 1 からは自着火が容易な n-heptane (0 RON) を, 3) ・4)日本大学理工学部 (同上) Injector 2 からは自着火が困難な iso-octane (100 RON) を 噴射し, 噴射量を個別に制御した. ここで, 燃料の投入量 395.2 nm Intake Gas Temperature Charge Amplifier Monochromator Fuel Tank Optical Fiber Light Emission Exhaust Gas Temperature Fuel Tank Throttle Valve Heater Dynamometer Scavenging Gas Temperature Laminar Flowmeter Torque Crank Angle Pick-up Fig. 1 Configuration of experimental equipment Scavenging Port Injector 2 (100 RON) Quartz Window (Injector 2 Side) Crystal Pressure Transducer Heat Release Rate, HRR [J/deg.] Computer Cylinder Pressure Table2 Fuel injection heat value condition Fuel Injected Heat Value [J/cycle] Equivalence Case No. n-heptane iso-octane Total RON 1 240 60 S20 RON 2 180 120 S40 RON 300 3 150 150 S50 RON 4 120 180 S60 RON 5 140 140 280 S50 RON 6 185 185 370 7 210 210 420 8 180 320 S56 RON 140 9 210 350 S60 RON <Hot Flame> > Combustion Period, THTR [deg.] HRRMAX [J/deg.] HRR0MAX [J/deg.] 0.1 × HRR0MAX <Cool Flame> > Crank Angle, θ [deg.] Fig.3 Definition of Combustion sheet index number 熱発生率 (HRR [J/deg.]) は (1) 式を用いて求めた. ここ では, 比熱比 (n = 1.33) 一定として近似した(4). Light Emission Exhaust Port Intake Port Light Emission Spark Plug Scavenging Port Quartz Window (Injector 1 Side) HRR [J/deg.] = dQ 1 dP dV = V + nP dθ n-1 dθ dθ (1) 本実験では, 熱炎の熱発生率波形の急峻度合いを示す指 標として, 燃焼急峻指数 (INc [deg.2]) を以下 (2) 式のよう に定義した. Injector 1 (0 RON) Fig.2 Injection position and measurement position 割合を相当オクタン価と定義し, 通常のオクタン価表示の INc [J/deg.2] = HRRMAX THTR (2) ここで, HRRMAX [J/deg.] は熱発生率波形における熱炎最大 頭に S をつけることで区別した. また, 今回の各条件にお 熱発生率, THTR [deg.] は燃焼期間 (HRR0MAX 10 % 以上の ける燃料の投入量を表 2 に示す. 期間) である. これらの定義を図 3 に示す. さらに, 燃焼室内の燃焼状態を観測するため, シリンダ 3. 実験結果及び考察 ヘッド上部の各掃気ポート付近に石英観測窓を設けた. そ れぞれの石英観測窓より, 燃焼室の発光を捉え, 採取した 3.1. 相当オクタン価変化が与える影響 発光は光ファイバを用いて分光器へ導いた. 分光器で分光 燃料の総投入量を 300 J/cycle 一定とし, n-heptane 及び (3) した波長は, CO- O 放射 の代表的な波長に相当する iso-octane の投入量割合 (相当オクタン価) を変化させ, 実 395.2 nm である. そして, 分光した波長を光電子増倍管に 験行った (Case 1 ~ 4). 掃気温度 Tsc = 383 K 一定における よって電気信号に変換し, その出力電圧を発光強度 (E395.2 結果を図 4 に示す. 横軸は, クランク角 (θ [deg.]), 縦軸に [A.U.]) とした. このとき, Injector 1 (n-heptane) 側の発光強 は 上 か ら シ リ ン ダ 内 圧 力 (P [MPa]), 熱 発 生 率 (HRR 度を E395.2-0 RON [A.U.], Injector 2 (iso-octane) 側の発光強度 [J/deg.]) である. を E395.2-100 RON [A.U.] とした. なお, 分光器の半値幅は λ = 4.0 nm である. 熱発生率に着目すると, 相当オクタン価の上昇に伴い, 着火時期が遅角していることが確認できる (矢印 A). また, また, シリンダ内圧力 (P [MPa]), 掃気温度 (Tsc [K]), 吸 最大熱発生率が減少していることも確認できる (矢印 B). 気温度 (Tin [K]), 排気温度 (Tex [K]) , トルク (T [N・m]) これは, 相当オクタン価が上昇し, 自着火がより困難にな を測定した. り, 着火時期が遅角したと考えられる. したがって, 相当 Case 2 Case 3 Case 4 1 Ne = 1000 rpm ε = 12 : 1 Tsc = 383 K B 10 Case 5 Case 7 3 A D 80 Ne = 1000 rpm ε = 12 : 1 60 Tsc = 383 K 40 20 C 0 0 -30 4 1 Heat Release Rate, HRR [J/deg.] 20 Case 5 Case 6 Case 7 Case 6 2 0 30 E 5 Case 1 Pressure, P [MPa] 2 Case 1 Case 2 Case 3 Case 4 -20 -10 TDC 10 Fig.4 0.05 20 Crank Angle, θ [deg.] Typical waveforms (Case 1 to 4) オクタン価を変化させることで,着火時期を制御できると 考えられる. また, 最大熱発生率の減少から, 燃焼を緩慢 Light Emission, E395.2-0 RON [A.U.] Heat Release Rate, HRR [J/deg.] Pressure, P [MPa] 3 合が同じである S50 RON において, 燃料それぞれの投入 F5 Injector 1 side (n-heptane) 0.03 0.02 0.01 1.0 Light Emission, E395.2-100 RON [A.U.] 3.2. S50 RON における燃料の投入量が与える影響 n-heptane (0 RON) 及び iso-octane (100 RON) の投入量割 F6 0.00 にするには, 相当オクタン価の上昇が有効であると考えら れる. F7 0.04 量を 140, 185, 210 J/cycle として実験を行った (Case 5 ~ 7). Injector 2 side (iso-octane) 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -30 掃気温度 Tsc = 383 K における結果を図 5 に示す. 横軸 -20 -10 TDC 10 20 Crank Angle, θ [deg.] にはクランク角, 縦軸には上からシリンダ内圧力, 熱発生 Fig.5 Typical waveforms (Case 5 to 7) 率, Injector 1 (n-heptane) 側の発光強度 (E395.2-0 RON [A.U.]), Injector 2 (iso-octane) 側の発光強度 (E395.2-100 RON [A.U.]) で 熱発生率波形に着目すると, 燃料の投入量の増加に伴い, 着火時期が進角していることがわかる (矢印 C). また, 最 4 Pressure, P [MPa] ある. はっきりとノッキングが見られる (領域 E). したがって, 同一の燃料割合である S50 RON で燃料の投入量を増加さ せたのでは, 燃焼を緩慢にすることは難しいと考えられる. Heat Release Rate, HRR [J/deg.] れ, シリンダ内圧力波形においても Case 7 においては, そして, 発光強度波形に着目すると, すべての Case に Injector 2 側で発光していることが確認できる (領域 F5, F, 6, F7 (斜線部)). このことから, 自着火が容易な n-heptane が 噴 射 さ れ た Injector 1 側 で 着 火 し , 自 着 火 が 困 難 な 3.3. iso-octane の投入量変化による総投入量変化の影響 S50 RON において, 燃料の投入量を増加させたのでは, 燃焼を緩慢にすることは困難であったので, 自着火が容易 20 G 10 0 Injector 1 side (n-heptane) 0.02 0.01 0.00 1.0 Injector 2 side (iso-octane) 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -10 -5 な n-heptane (0 RON) の投入量を 140 J/cycle 一定とし, 自 着火が困難である iso-octane (100 RON) の投入量を 140, Ne = 1000 rpm ε = 12 : 1 Tsc = 383 K H 0.03 Light Emission, E395.2-100 RON [A.U.] 段階的に起こっていると考えられる. 30 0.04 iso-octane が噴射された Injector 2 側の着火を誘発したも のと考えられる. したがって, シリンダ内において燃焼が 2 0.05 Light Emission, E395.2-0 RON [A.U.] お い て Injector 1 側 で 先 に 発 光 が 確 認 で き , そ の 後 Case 5 Case 8 Case 9 1 大熱発生率が急激に上昇していることも確認できる (矢印 D). このことから, 燃焼が急峻になっていることが考えら 3 Case 5 Case 8 Case 9 TDC 5 10 15 Crank Angle, θ [deg.] Fig.6 Typical waveforms (Case 5, 8 and 9) 20 180, 210 J/cycle と変化させ, 実験を行った (Case 5, 8, 9). 掃気温度 Tsc = 383 K における結果を図 6 に示す. また, 図 7 下図より, S50 RON において燃料投入量を 増加させた場合では, 燃料投入量が増加しているにも関わ 熱発生率波形に着目すると, iso-octane の投入量の増加に らずトルクが大きく減少していることが確認できる (矢印 伴い, 着火時期が遅角している (矢印 G). また, 燃料の総 K). これは, 過早着火となったことでノッキングなどが起 投入量が増加しているにも関わらず, 最大熱発生率に大き こったことによるものと考えられる. 一方, n-heptane の投 な上昇が見られない (領域 H). このことから, iso-octane 入量を一定とし, iso-octane の投入量を増加させた場合では, の投入量を増加させることで, 着火時期が遅角し, 燃焼を トルクの上昇が確認できる (矢印 L). このことから, 高出 緩慢にすることができると考えられる. 力化の面でも iso-octane の投入量を増加させることが効果 また, 発光強度波形に着目すると, S50 RON での結果と 的と考えられる. 同様にすべての Case において Injector 1 側で先に発光が 確認でき, その後 Injector 2 側で発光していることが確認 できる. したがって, 噴射割合が異なった場合においても, 燃焼が段階的に起こっていると考えられる. 4. 結 論 (1) 相当オクタン価を変化させることで着火時期が制御可 能であり, 燃焼の緩慢には相当オクタン価の上昇が有 3.4. 燃料投入量が燃焼急峻指数及びトルクに与える影響 効である. S50 RON において燃料の投入量を変化した場合 (Case 5 (2) n-heptane 及び iso-octane の投入量割合が同じ S50 RON ~ 7), n-heptane の投入量を一定とし, iso-octane の投入量を において, 燃料の投入量を増加させた場合, 燃焼を緩慢 変化させた場合 (Case 5, 8, 9) の総燃料投入量と燃焼急峻 にすることは困難である. 指数及びトルクの関係を図 7 に示す. (3) n-heptane の投入量を一定とし, iso-octane の投入量を増 図 7 上図より, S50 RON において燃料の投入量を増加 加させた場合, 着火時期が遅角する. そのため, 燃料の させた場合, 燃焼急峻指数が大きく上昇していることが確 総投入量が増加しているにも関わらず, 燃焼を緩慢に 認できる (矢印 I). 一方, n-heptane の投入量を一定とし, することが可能である. iso-octane の投入量を変化させた場合, 燃焼急峻指数があ (4) 燃 焼 室 内 の 発 光 を 捉 え た 結 果 , 自 着 火 が 容 易 な まり変化していないことが確認できる (矢印 J). 燃焼急峻 n-heptane が噴射された側で発光が確認された後, 自着 指数が変化した理由として考えられるのは, 過去の研究か 火が困難な iso-octane が噴射された側で発光が確認さ ら燃焼急峻指数は着火時期による影響が大きいことが明ら れた. このことから, シリンダ内において燃焼が段階的 かで, 着火時期が遅角すると, 燃焼急峻指数が抑制される に起こっていると考えられる. ことがわかっている(5). これは, S50 RON において燃料の (5) 燃焼急峻指数の抑制及び高出力化において燃料投入量 投 入 量 を 増 加 さ せ た 場 合 で の 着 火 時 期 の 進 角 ( 図 5), を増加させるには, iso-octane の投入量を増加させるこ n-heptane の投入量を一定とし, iso-octane の投入量を増加 とが効果的である. させた場合での遅角 (図 6) とも一致している. したがっ て, 燃焼急峻指数の抑制には, 着火時期の遅角が有効であ 参 考 文 献 (1) 飯島 晃良, 庄司 秀夫 : 発光・吸収計測による予混合圧 縮着火燃焼の研究, 自動車技術会論文集 Vol.38, No.6, p.83-88 (2007) (2) 山崎 祥史, 片山 泰貴, 飯島 晃良, 庄司 秀夫 : 二種燃 40 Case 5 to 7 Case 5, 8, 9 料成層化による HCCI 機関の燃焼特性に関する研究, I 30 日本機械学会関東支部山梨講演会講演論文集, p.181-182 (2008) 20 (3) A. G. Gaydon : The Spectroscopy of Flame, London, 10 Chapman and Hall Ltd., 1957, 412p. J 0 6 5 L 4 3 2 K 280 300 320 340 360 380 400 1 420 Total Fuel Injected Heat Value [J/cycle] Fig.7 Total fuel injected heat value vs. combustion steep index number and torque 0 (4) Takashi Watanabe, Kentaro Goto, Akira Iijima, Koji Yoshida, Torque [N・ m] 2 INc [J/deg. ] Combustion Steep Index Number, ることから, iso-octane の投入量を増加させることが効果的 と考えられる. Hideo Shoji : Influence of EGR on Homogenous Charge Compression Ignition Combustion -A Comparative Study of High- and Low- temperature EGR-, SAE paper 20056091 (5) 片山 泰貴, 山崎 祥史, 糟谷 宏樹, 飯島 晃良, 庄司 秀 夫, : 内部 EGR を用いた HCCI 機関における燃焼特 性に関する研究, 自動車技術会 2008 年秋季大会学術 講演会前刷集, No.124-08, p.15-18 (2008)