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海外調査報告(参考資料)

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海外調査報告(参考資料)
資料1
海外調査報告(参考資料)
平成19年3月19日
農 村 振 興 局
0
目
次 (案)
1.OECDにおけるソーシャル・キャピタルの取組状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(1)貿易農業局及び行政管理地域開発局
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(2)科学教育局 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
(3)OECD科学教育局におけるソーシャル・キャピタルの研究動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
2.欧州委員会におけるソーシャル・キャピタルの政策評価上の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・ 8
3.イギリス統計局におけるソーシャル・キャピタル計測手法の研究状況 ・・・・・・・・・・・・・・ 9
(1)概略 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
(2)Harmonized Question Set作成の取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(3)イギリス統計局の取組の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
4.ソーシャル・キャピタル概念の政策への導入の動き
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(1)イギリス内務省の動き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(2)イギリスのパリッシュ・プログラム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
1)イギリスのパリッシュ計画づくりにおけるソーシャル・キャピタルの取り組み ・・・・・・・・・・・・・16
2)パリッシュ計画とCCBについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(3)アイルランドにおけるソーシャル・キャピタルの取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
5.LEADER事業におけるソーシャル・キャピタル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(1)LEADER事業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2)EUの新CAP政策におけるLEADER事業の位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(3)ソーシャル・キャピタルの観点からみたLEADER事業の評価
(主として生活の質的向上の観点から) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
1)生活の質的向上のためのLEADER事業における取り組み
2)イギリスの質的向上のためのLEADER事業の取り組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
1
1.OECDにおけるソーシャル・キャピタルの取り組み状況
(1)貿易農業局及び行政管理地域開発局
○2006年12月に経済開発協力機構(OECD)の組織改革が行われ、貿易農業局(Trade & Agriculture
Directorate,TAD) 及び行政管理地域開発局)(Directorate for Public Governance & Territorial
Development,GOV)を設立。TADの専門分野は農業政策であり、GOVは農村開発、特にネットワークや
土地政策(land-based policy)などの横断的政策(horizontal policy)を担当。
○1990年代後半に地域レベルでのソーシャル・キャピタルの重要性を示した地域(sub-national)レベル
の調査が実施されたことを契機として、農村開発の研究が重要となった。(ただし、貿易農業局では農村
開発が何かという明確な把握ができておらず、ソーシャル・キャピタルに関する認識や理解に一貫性は
まだないという認識。)
【GOVにおけるソーシャル・キャピタルの取り組み】
○GOVでは、農村開発政策上「ネットワーク」や「信頼関係」を重要視しており、ソ−シャル・キャピタルは新たな農村開発政
策の中心と考えている。課題は、多くの国ではソーシャル・キャピタルの理解が進んでいないこと。多くの国に認められる
ためには、地域だけでなく、加盟国と連携して定量的な把握を行うことが重要としている。
○また、ソーシャル・キャピタルの定義に一貫性がないため、指標にも一貫性がないという問題がある。GOVでは、定量的
データだけでなく、質的データをもっと集めるための調査に取り組んでいる。Regions at a Glanceという出版物の最新版
(2007年出版予定)では、福利・教育、社会参加、犯罪率、政治参加などの質的な指標に注目している。
○さらに、高齢化の進む農村地域が多い加盟国においては、新たな創造力ある人材の確保がソ−シャル・キャピタルに
とって重要な課題であり、新たな農村と都会のつながりを築く機会ともなる。また、ソーシャル・キャピタルの良い影響をど
のようにして最大限に伸ばすかが重要と考えている。
○また、北欧(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)等、人口密度が希薄な国々では、公共サービスの提供に最低限の
基準を作る必要にせまられている。地域の知識や地元の住民のニーズを把握しなければサービス提供の質が向上しな
いため、実際の場所を重視する(place-based)アプローチが重要としている。
2
(2)科学教育局
○科学教育局教育研究革新センター(Centre for Educational Research & Innovation:CERI)では、2005
年にOECDの統計局が豪州統計局と共に福利(well-being)とソーシャル・キャピタル計測の検討に取組
始めたことを契機に、社会的福利分野におけるソーシャル・キャピタルの研究を進めている。
○現在データ収集に取り組んでいるが、分析に当たってはどの単位が最も適しているかが大きな問題と
している。OECDは通常国単位で分析を行っているが、social capitalに関しては国が一番適切な単位と
は言いがたいと考え、学区単位での計測を試行中。
○また、個人の人的資源や能力は「信頼」や「ネットワーク」などのソーシャル・キャピタルが無ければ有
効に利用されないとの認識に立ち、ソーシャル・キャピタルにおける「ネットワーク」に注目している。
○さらに、行政とソーシャル・キャピタルの関係について、どのように信頼を築き(直し)、維持していくかが
重要な課題であるとしている。(地方自治体の信頼回復のため、説明責任(accountability)や目標設定
を官僚と市民の関係の中で明確にすることが重要)。
○農村におけるソーシャル・キャピタルに関しては、農村は新たなアイデアに触れる機会が少ないという
問題があり、革新(Innovation)が重要である。また、農村は結合性が高い(high bonding)ことから、これ
を肯定的に受けとめる一方で、アクセス不足の面から、橋渡し型のソーシャル・キャピタルの強化が重
要としている。
3
(3)OECD科学教育局におけるソーシャル・キャピタルの研究動向
(トム・シュラー報文「政策分析における概念としてのソーシャル・キャピタル」より)
【OECD】
○2001年に、『国の福利:人的資本及び社会的資本の役割』を刊行し、次のとおり抽象的なソーシャル・
キャピタルの概念を政策領域にもたらすために明確化した。
① 経済・社会的成果の妥当性について、従来の評価手段への懸念の高まりがある。一人当たりの
GNPを否定するわけではないが、「成功」を測るために金額の代わりとなる尺度への興味が増している。
福利、社会的結合、生活の質がその尺度として提案されており、ソーシャル・キャピタルはこの課題に対
応のために有益な手段と見なされる。
② 経済成長のために、教育および人的資本の大きな役割があり、人的資本が個人と組織の生産力、
雇用見通しを形成している。しかし、教育人的資本は、自力のものでありパフォーマンスについて説明
するのには不適当である。社会的側面を持つパフォーマンスの分析にはソーシャル・キャピタルを反映
するべきである。
③ 教育分野では、属するネットワークやそのネットワークを特徴づける価値や規範が、成功への主な
要因である。言いかえれば、ソーシャル・キャピタルは、なぜ人的資本が適用される範囲に相違がある
のかを説明している。
○また、次のとおり結論としてまとめている。
① 人的資本を増加させる政策は、組織内外での社会関係に関心を向けるという方策によって補足す
る必要がある。
② 人的資本とソーシャル・キャピタルの関係が大事である。教育の達成レベルは、社会ネットワークの
強さに影響を与え、また、ネットワークから影響を受ける。
③ しかしながら、分析手法や政策手段として、どのようにソーシャル・キャピタルを使用することができる
かについては、大いに議論する必要がある。なぜなら、明白な解析や容易に政策適用できる手法が確
率していないからである。
4
【アイルランド】
○2003年に、国家経済社会フォーラム(NESF)が、「ソーシャル・キャピタルの政策的含意」を公表した。
ここでソーシャル・キャピタルの政策適用に関して多くの主要な課題を定義した。ソーシャル・キャピタル
の主要な利点は、貧困と社会的疎外、健康、犯罪と社会的逸脱、生産力、そして個人の幸せを含む広
範囲の分野の点から見られるとした。ソーシャル・キャピタルを向上する主な手段は次のとおり。
① 積極的社会参加及び地域開発:「地域資源とボラティアの利用」「信頼とコミュニティーの力の促進」
「有権者の登録と参加の増加」等
② 仕事と生活のバランス:小児保育の改善やフレックス制のような現実的な政策の追求。
③ 空間的・物理的計画:住宅開発や交通政策はソーシャル・キャピタルに影響。
④ 生涯学習:ソーシャル・キャピタルは学習する機会と相関関係。
○しかしながら、NESFの報告書は、OECDの報告書と同様、ソーシャル・キャピタルが単純化されて理
解されていることに対して警告している。要因間の因果関係の解釈は困難であり、政策適用のための基
礎を向上することを提案している。
【カナダ】
○カナダ政策研究イニシアチブ(PRI)が公共政策に対するソーシャル・キャピタルの適用性を理解してい
る。ソーシャル・キャピタルが生みだす利点は、①サービス(ネットワーク内から提供される小児育児の
ようなサービス)、②情報(ネットワークからの経済やコミュニティーに関する重要な情報)、③積極的な
生活態度(健全な食生活や喫煙の削減)等としている。
○また、ソーシャル・キャピタルを理解するための主要素として、①法的、政治的、文化的要素、②資本
(金融)などの資源、③個人やグループの決定力を挙げ、ネットワーク、健康、雇用、福利というような社
会・経済効果を決定するとしている。なお、個人の資産として所有するものではなく、人と人のつながり
の問題としてソーシャル・キャピタルへの重点が置かれている。
○さらに、政策が必ずソーシャル・キャピタル向上に影響するとし、①社会的疎外の危険に対する支援、
②援助が最も必要な人生の中の大きな転換期への支援、③コミュニティー開発の促進、の3つの公共
政策を定義している。
5
【イギリス】
○イギリスは、統計・計測と政策適用の両面で発展した。統計局は、様々な社会集団の情報と共に、ボラ
ンティア、互助、社会的つながり、コミュニティーの認識に関する情報の蓄積を非常に積極的に推進して
いる。また、統計局は、ソーシャル・キャピタルのレベルと、反社会的な行動や犯罪行為、民主的なプロ
セス、許容範囲、事業効率などの公共政策の間の相互関係を強調している(特に教育)。
○内閣府はソーシャル・キャピタルの「議論文書」を発行した。ソーシャル・キャピタルを適切な政策への
可能性を調査し、ソーシャル・キャピタルへの積極的介在におけるいくつかの重要な議論を定義した(生
活の充足、障害者援助、社会のつながりの分割と緩みに対する懸念など)。政策介入レベルを次のとお
りとしている。
①小規模、個人レベル:家族、新人指導教育スキーム、ボランティアに対する支援
②中規模、コミュニティー・レベル:活気ある地方自治体の促進、コミュニティーに基づいた資産計画の形
成、会社と従業員とコミュニティーの間のネットワークの構築、相互作用を強くするための情報伝達技術
の活用
③大規模、社会レベル:市民教育の促進、地域信用スキームの開発、ボランティアへの支援、相互の責
任を促進するために共有されるモラルの向上
【フランス等】
○フランスの社会学者の労働市場パターンの分析では、正社員雇用契約の課題(フランスでは、通常正
社員になるために3∼8年間アルバイトしてから正社員になる)において、社会再生の手段としてソー
シャル・キャピタルの重要性が増しているとしている
○ベルギーでは、地域経済学の問題にソーシャル・キャピタルを利用している研究がある。
6
【最終提案】
○ソーシャル・キャピタルは他の資本との相互作用の中で最も理解され、向上する。
・ソーシャル・キャピタルは社会ネットワーク間での関係に最も強力に活用される。
・他の資本とどのように相互に作用するかを見ることが重要である。
・教育は重要であり、ソーシャル・キャピタルを向上することができ、減退を防ぐ。
○ソーシャル・キャピタルは長期投資である。
・ソーシャル・キャピタルは魔法の解決法ではないというだけではなく、速く生成することができない。
・ソーシャル・キャピタルの明白な等価物はないが、政策決定者は社会的結束、社会とのつながり、相
互の尊敬の価値に対する公約を実証する行動を検討する手段にできる。
・ソーシャル・キャピタルが価値あるものとするには、長期展望が不可欠。
○ソーシャル・キャピタルは革新(Innovation)を促進する。
・ネットワークは情報の流れを増加させ、取引コストを縮小し、新しい才能を引きつけ、新しい考えを生
成することから、革新の重要な決定要素である。
・ソーシャル・キャピタルの構築は質のよいネットワークを促進する。
○ソーシャル・キャピタルは多くの観点を必要としている。
・政策には、適切で明示的なデータと分析に基づくことが求められている。
・ソーシャル・キャピタルの理解には、例えば、詳細な研究、民族誌学の報告、長期的な事例研究など
が必要である。
・ソーシャル・キャピタルを向上するために有効な政策の検討は、一連の研究の蓄積、様々な視点から
の検討が必要である。
・全国的レベルと共に、地域レベル、コミュニティーレベルにおいて、どのようにして最もよいソーシャル・
キャピタルが構築され、向上し、評価されるかについての議論が必要とされている。
7
2.欧州委員会におけるソーシャル・キャピタルの政策評価上の位置づけ
○欧州委員会におけるEU諸国の農村開発政策の評価は、LEADER事業を中心に行われており、現在ま
でに①LEADER2に関する評価、②各国の同様のプログラムにおけるLEADER事業の主流化に関する
評価、③LEADER事業の中間評価(LEADER+の中間評価)を実施。
○LEADER+の主たる目的は、農村地域のおけるソーシャル・キャピタルを高めることであり、事業とソー
シャル・キャピタルの向上の連鎖反応、スパイラルの効果を期待している。
○LEADER+の評価に当たっては、具体的な指標を、①EU全域のレベルにおけるガバナンスという相対
的な指標、②加盟国毎に各地域性・独自性に根ざした指標、という2つ次元から策定。とりわけ、加盟国
毎の地域性・独自性に根ざした指標においては、ソーシャル・キャピタルの概念を超えた、革新
(Innovation)、雇用創出・喚起、経済の多様化・活性化などの指標も設定。
○将来、欧州農村開発ネットワークを作り、指標づくりの活動を行っていく予定。
【LEADER事業とソーシャル・キャピタルの
連鎖反応、スパイラルの効果のイメージ】
【LEADER+における評価指標】
①EU全域のレベルにおけるガバナンスという相対的な指標
・特定地域における全域の中でローカル・パートナーシップ、LAG
によってカバーされている領域、人口の割合*
LEADER事業
新たなプログラム
スパイラル
ソーシャル・キャピタル
の向上
*:LAGによってカバーされている地域が100%となっている国は、現在スペイ
ン、フィンランド、アイルランドがある。近い将来の2008年頃には、さらにス
ウェーデン、オーストリアが100%に達すると思われる。EU委員会としては、1
00%カバーする国が23カ国、そして1,500のLAGが設立するレベルを期待し
ている。EU全域で考えると、今の数字で約30%になる。
②加盟国毎に各地域性・独自性に根ざしたガバナンス
ソーシャル・キャピタル
※ソーシャル・キャピタルが高まると、さらに次のLEADERプログラムに繋がっていく。
そして、更なる活性化が進み、また次へというような良質のスパイラルの効果を期待。
・例えばドイツでは地域の参加度を評価し、LAG毎、農業分野毎
に指標化。
・その他、どれだけ企業がサポートしているか、雇用創出につな
がるどのようなトレーニング活動が実施されたか、どのような新
しいプロジェクトができたか、革新的な新しい活動としてはどうい
うものがあるか、等の観点からの指標も作成。
8
3.イギリス統計局における、ソーシャル・キャピタル計測手法の研究状況
(1)概略
○これまで、イギリス統計局(以下、ONS)のソーシャル・キャピタル概念を利用した研究に関するレポートは
八本ある 。そのうち、定量的な研究は五本あり、そこで用いられている手法は①クロス集計表および平均
の検定②ロジスティック回帰分析③因子分析である(表1参照)。これまでの取組の中心をなすのは、
Harmonized Question Setの作成を行った(4)である。2001年から2002年までの文献(1)∼(3)はその準備
と位置づけられる。また、(6)は、ソーシャル・キャピタルとパフォーマンスとの関係を分析したもので、分析
の目的が明確なものである。(5)(7)(8)は、年齢や性別、社会階層などで分けた人口グループ間や、地域
間においてソーシャル・キャピタルの高低を分析したものである。
1
Social Capital Projectのアウトプットとして挙げられているもののうち、会議用の資料等を除いた数。(http://www.statistics.gov.uk/socialcapital/project.aspを参照)
(1) Office for National Statistics, U.K.(2001):Social Capital A review of the literature.
(2) Office for National Statistics, U.K. (2001): Social Capital Matrix of surveys.
(3) Coulthard, M.,Walker, A. and Morgan, A. (2002): People’s perceptions of their neighborhood and community involvement.
(4) Green, H. and Fletcher, L. (2003): Social Capital Harmonised Question Set -A guide to questions for use in the
measurement of social capital-.
(5) Ruston, D. (2003): Volunteers, helpers and socialisers: social capital and time use.
(6) Brook, K. (2005): Labour market participation: the influence of social capital.
(7) Deviren, F. and Babb, P. (2005): Young People and Social Capital.
(8) Office for National Statistics, U.K.(2005):Harmonised Concepts and Questions for Social Data Sources, Secondary
Standards, Social Capital.
9
(2)Harmonized Question Set作成の取組み2
○Harmonized Question Setの作成は、イギリス国内で行われている様々なソーシャル・キャピタルの調査で
用いられている質問を統一化し、各調査結果の比較や考察をより容易にすると同時に、ソーシャル・キャ
ピタルをより短い質問紙により簡便に測定することを目的とした研究である。具体的には、以下の三段階
の作業を経てそれを行っている。
1.グループインタビュー(複数の対象者に対して質問者が質問を行うタイブの面接調査)により、ソー
シャ ル・キャピタルを尋ねる様々な質問項目について感想を尋ね、それが適切であるか議論する。
2.上記により修正された質問項目に実際に回答してもらい、答えにくい箇所や質問の意図と異なる回答
が行われた箇所を指摘してもらう(パイロット調査)。
3.質問項目への回答を因子分析によりグループ化し、各グループの因子(グループ内の質問項目を説
明する共通の要因)に対して最も相関の高い質問項目を選択する。
上記の、三段階の作業に入る前に、ソーシャル・キャピタルを構成するグループとして①市民参加②社
会的ネットワーク③社会的サポート④地域をどう見るか⑤近所づきあい、の五つを仮定していたが、因子
分析を経た三段階の作業後に得られたのは、以下の六グループである。
1. 隣人とのふれあい
2. 地域をどのように見ているか
3. 社会的なネットワークおよび支援(友達と肉親)
4. 公共機関への信頼
5. 社会への参加(一部)
6. 価値観/誠実さ
この六グループから、それぞれグループを代表する質問項目を選抜し、最終的に15程度の質問項目か
らなる「推奨する中核的な質問事項」および、50程度の質問事項からなる「改定後の本式の質問事項」を
提示している。
2
日本農業土木総合研究所(2005):『水土の知を語る (Vol. 10) 都市と農村の共生を考える―その2−なぜ今「都市と農村の共生」なのか』.
日本農業土木総合研究所,東京.から
10
(3)イギリス統計局の取組の特徴
1. イギリス統計局におけるソーシャル・キャピタル概念を用いた研究の特徴の第一として挙げられるの
は、測定方法の開発に力を注いできた点である。各政府機関のレポートの多くが、文献のレビューと
いった概念の整理にとどまっているのに比較して、ソーシャル・キャピタルの測定方法に関する独自
の研究を立ち上げている点で抜き出ている感がある。
2. 第二に、より良い質問項目を選択する過程で面接調査を行っている点である。ソーシャル・キャピタ
ルを測定するための質問を開発する過程で面接調査を行い、質問項目により知りたい内容が本当
に捉えられるのかというアンケートの根本に関わる部分を報告している公的レポートは他に見当たら
ず、貴重な研究を行ってきたといえる。
3. ソーシャル・キャピタルを「手段」よりも「目的」と捉えた分析が多い。そのため、ソーシャル・キャピタル
により何らかのパフォーマンスを説明するという分析は、表1の文献では(6)だけであり、それよりも、
どのようなタイプの人々で、また、どのような地域でソーシャル・キャピタルが高いかを見る分析が多
い。これは、国の調査がベンチマーク作りであることにも起因していると考えられが、言い換えれば、
イギリス統計局の調査と特定の施策との関連が薄いことを示唆する。
11
表1 イギリス統計局によるソーシャル・キャピタルの定量的研究において用いられている手法のまとめ
12
13
14
4.ソーシャル・キャピタル概念の政策への導入の動き
(1)イギリス内務省の動き
○イギリス内務省コミュニティ局の社会的結合性及び信頼に関する課(Cohesion and Faiths Unit)は、「社会
的結合」を政策のテーマとしている。同課は、政策立案グループ(central policy unit)として、コミュニティ
において社会的結合性がしっかりと形成されるための条件整備、及び政府の他の政策が地域の社会的結
合性を脆弱化させないことをめざしている。
○また、成果管理(performance management)を政策の一環として導入。社会的結合性がいつ改善したか
を判断するためには、社会的結合性の計測が重要と考えている。社会的結合性の計測は、「市民、家庭及
びコミュニティの調査(Home Office Citizenship Survey)」という市民調査を通じて計測。本調査は2001年に
開始され、2年に一度実施。
○調査結果より、コミュニティの結合性を5つの主要な要素に分解し、初期段階の結果として、「コミュニティ
としての感覚」というソーシャル・キャピタルの要素が犯罪と最も強い関連性を持つとしている。
【社会的結合性形成のための条件整備及び地域の社会的結合性を脆弱化させないための手法】
①「社会的結合性の原則」を政府の主要な施策として、他の部局が行っている政策に反映させること(mainstreaming)
②地方自治体や地方関係者が「社会的結合性」を地域の政策に反映させるよう、積極的に支援すること(中央政府の他の部
局の指導者に対する社会的結合性に関する啓発活動)
③現場の政策担当者に向けた「社会的結合性」の優良事例の推進及び普及活動
(「コミュニティにおける社会的結合性に関するガイドライン」の作成)
【コミュニティの結合性に関する5つの主要な要素】
①コミュニティとしての感覚(sense of community)
②平等な機会(similar life opportunities)
③多様性の尊重(respect of diversity)
④政治に対する有効性(political efficiency)
⑤帰属意識(sense of belonging)
「市民、家庭及びコミュニティの調査(Home Office Citizenship Survey)」より
15
(2)イギリスのパリッシュ・プログラム
1)イギリスのパリッシュ計画づくり(Parish Planning)におけるソーシャル・キャピタルの取り組み
○英国の地方自治体や地方行政における考え方として、環境的、社会的、経済的生活の質的向上(quality of
life)に関心を示している。
○Parish Planningは、質的向上のための取組みを、EUのLEADER事業とは別に、英国又はイギリス独自に実
施しているもの。
○英国では教会、教区を中心としたコミュニティが長い歴史を持っており、パリッシュ計画とは、教会、教区を基
礎としたコミュニティーの要望や目標を示す協議に基づいた計画。
○計画には、地域の歴史、人口や人口構成、地域の施設やサービスなど様々な情報を含むとともに、住民全
員が参加することにより、社会全体を包括する特徴を有しており、その目的はソーシャル・キャピタルの構築で
あるといえる。
【パリッシュ計画作成の手順】
①情報の収集
・パリッシュ計画を実施しようとしている教区は多くの人々を参加させるた
め、一般公開日を設け、村の集会所での意見交換会やイベントを開催。
・また、各家庭に対するアンケート調査を実施。
②運営委員会の設立
・パリッシュ計画を作成しようとしているコミュニティーのボランティアが運営
委員会を立ち上げ、パリッシュ計画を検討。
③アクション・プランの作成
・運営委員会において、課題にどのようにして対処していくかに関する優先
順位を検討した上で実行計画(action plan)を作成。
④Parish Planの出版
・実行計画とパリッシュ計画を出版し、地域内で配布(CCBのような団体や
もっと重要である地方自治体にも配布)
⑤プロジェクトの実行と評価
・課題に対処するために生み出したプロジェクトをコミュニティーが実行。
・数年後、コミュニティーで計画を再び評価、協議(アンケート調査、イベント
等が行われ、プロジェクトを実行した結果どのようにコミュニティーが変化
したかを把握)
【パリッシュ計画の特色】
①パリッシュ計画が他のプロジェクトとつながり、他の
予算との連鎖、連携することにより、最も重要で必
要なものに効率的に予算が使われることが可能と
なること。
②目的がコミュニティづくりのため、コミュニティへの
参加が重要な要素となっていること。
③計画の一部は地域住民自らが実施可能なものが
あり、住民による取り組みがプロジェクトの触媒的
な作用を果たしうること。
④計画の作成までに至る過程と実際の実施の両方
の観点を重視していること。
⑤ソーシャル・キャピタルに関連する「信頼」が重要な
要素であること。
(地域開発に取り組んでいるCCBのような団体や積
極的な地方行政により、様々な機関に対するコ
ミュニティーの信頼が根づくこと。)。
⑥質的向上政策としての英国独自のもので、地域開
発や特に農村地域開発におけるボトムアップ方式
の導入に関する長年の成果であること。
16
2)パリッシュ計画とCCB(Connecting Communities in Berkshire)について
○CCBは、Berkshire州の数々のコミュニティーを結ぶ役割を担う地域開発機関(Community Development Agency)。
○地域社会と直接仕事をし、地域社会をサポートし、課題の特定に協力し、その課題に取り組むためのプロジェク
トの実現を支援。
○公認慈善事業(registered charity)を実施する独立した非営利団体であり、会員制の団体で100から200の個人
又は団体会員が会費を払っている。会員は我々の仕事や我々と地域のコミュニティーとの連携に関心がある
方々。
○パリッシュ計画は、CCBの仕事の土台であり、各プロジェクトが本当に望ましく、必要であり、正しいものに焦点
を絞っているかを確認するための協議に参加。また、パリッシュ計画においてコミュニティー自らが自らのために
プロジェクトをするよう勧めることにより、それを支援する仕事がCCBのような団体に流れる。
○CCBが実施するプロジェクトには、①地域公営住宅プロジェクト(Rural Housing Project)、②地域交通プロジェク
ト(Rural Transport Project)、③地方都市プロジェクト(Rural Towns Project)、④村の集会所への相談窓口
(Village Halls Advice Program)、⑤地域プロジェクト開発(Community Project Development)がある。
《バークシャーコミュニティー協議会(CCB)の活動内容》
【集落地域(Parish Community)計画】
【地域公営住宅プロジェクト】
・地域の住民と協議し、地元に手ごろな価格の住宅に関するニーズがあるかを把握。要望がある場合は自治体と連携で安くて小さな
住宅が建てられそうな場所を確保し、プロジェクトを実行して価格の手ごろな住宅を提供。
【地域交通プロジェクト】
・農村地域のコミュニティーとの連携でその地域の施設や病院や娯楽施設など特殊な施設へのアクセスに関する問題に直面していな
いかを確認。ニーズを把握し、問題解決に向けて他のパートナーと協力。
【村の集会所窓口】
・村の集会所(Village hall)とはコミュニティーが運営する地域の施設で、 CCBは村の集会所の管理委員会を対象とした幅広い相談
窓口を設け、防火法規の解説など衛生安全に関し、施設を安全に利用するためのアドバイスを提供。
・施設を事業として扱い、どのようにして経済的に継続可能な事業にし、どのようにして施設をよくするために投資できる収入を生み出
す経営をし、できるだけ色々な活用方法を考え出すことに関する助言も実施。
【地域プロジェクトの開発】
・総体的な地域開発の仕事であり、ある地域が自らのコミュニティーで行いたいプロジェクトがある場合、資金の調達、プロジェクトの計
17
画の立て方、ボランティアの集め方など一般的な助言。
(3)アイルランドにおけるソーシャル・キャピタルの取り組み
○アイルランドでは、ソーシャル・キャピタルの向上により地域開発を行い、民主主義を機能させ、包括的で
凝集力のある社会の形成をめざしている。ソーシャル・キャピタルが適切に適用され、促進されることで、政
府機関との「連携(Linking)」を進め、不利な立場にあるグループなどへの橋渡し(Bridging)をし、コミュニ
ティレベルの支援や相互ケアといったコミュニティの結合(Bonding)を強化することができるとしている。
○アイルランドにおいて、ソーシャル・キャピタルは自然と発達してきた概念であり、計測を優先していない
(計測が困難であることも認識)。さらに、成果報告の必要性から様々な数値指標の達成を強要すると、結
果的に従来から地域に根付いているボランティア精神を損ねてしまう場合があることを指摘している。
【ソーシャル・キャピタルを活かした新しい公共政策の4つの原則】
①意志決定を最も身近な低いレベルに持って行き、高いレベルは必要に応じて支援するという分権化、補完性の原則
②政策過程に直接参加するコミュニティ開発や個人のオーナーシップ制度
③公共政策の透明性と説明責任
④公共政策におけるソーシャル・キャピタルの主流化(mainstreaming)
【ソーシャル・キャピタルを活かした具体的な政策領域の提示】
①ソーシャル・キャピタルの測定
②ソーシャル・キャピタルの主流化
③市民活動の活性化とコミュニティ開発
④柔軟な労働環境の整備
⑤生涯学習の充実
⑥社会参加と持続可能なコミュニティのための場の確保
⑦政府やコミュニティへの参加の促進
【留意事項】
①コミュニティのメンバー間の相互交流を助長するような農村計画の重要性を指摘。
②ソーシャル・キャピタルの計測については、以前人的資本(Human Capital)の計測に長時間を費やしたこともあり、没頭することは危険。
③まず、ソーシャル・キャピタルの概念を取り込んだ政策立案を実際に実行してみることが重要。そして、議論を重ね、異なる政策領域に
おいて、ソーシャル・キャピタルの持ちうる意味合いを分析すること(パイロット事業による試行錯誤により、段階的に政策転換を図ってい
くこと)。
④ソーシャル・キャピタルに関わる戦略的な枠組みを構築し、政策立案に役立つよう、ソーシャル・キャピタルを様々な要素に分類。
(一つはSCの計測、次の要素はソーシャル・キャピタルの主流化(mainstreaming)
18
5.LEADER事業におけるソーシャル・キャピタル
(1)LEADER事業の概要
○ LEADERとは、「Liasons Entre Actions de Development de l Economie Rurale(農村地域における経済開発のための活動連携)」の頭文
字をつなげたものであり、官民のセクターを超えたパートナーシップづくりによる農村開発を行うもの。
○ EUのLEADER事業は、1991年より始まる第一期のLEADER ⅠからLEADER Ⅱに引き継がれ、現在は第三期のLEADER+(プラス)
事業が実施されている。
○ 地域住民、地方自治体、民間企業、NPO等の多様な主体で構成するローカルアクショングループ(LAG)が事業主体(個別プロジェクトの
実施主体は申請者(参加団体))。2004年時点で15カ国に892のLAGがあり、150万km2、人口5,500万人をカバー。2004年5月に
加盟した10カ国には、2006年までの期間は別の同タイプ事業が用意されている。
目
的
事業主体
農村社会経済の持続的な発展のための新しい地方戦略を企画し、意欲的に取り組む
人々への支援を目的として、欧州農業指導保証基金指導部門が助成するプログラム
ローカルアクショングループ(LAG)
地域住民、地方自治体、民間企業、NPO等の多様な主体で構成
【イングランドの場合】
事業資金
EU(45%)+国・地方政府(45%)+民間(10%)
申請・承認
申請者がLAGのスタッフの協力を得て計画作成、LAGから国に提案、国が承認
種
類
対象事業
予算配分
優先戦略
的テーマ
個別の農村地域事業への
助成
農村地域間の協力の支援
(2003年助成開始)
ネットワーク化
グリーンツーリズム、持
続可能な観光業の発展に
資するプロジェクト、農
産物に付加価値を付ける
取組、販売促進、伝統工
芸等の地場産業の振興、
アグリビジネス、観光業
等の人材育成、職業訓練
同国内のLAG同士が協
力活動を行う場合(地域
間協力)や、他のEU加
盟国や非加盟国と協力活
動を行う場合(複数国間
協力)における共同プロ
ジェクトや協力のための
技術支援
ネットワークの組織化、
優良事例の収集、分析・
普及、後進地域のために
経験・ノウハウ交換を組
織すること、地域間協力
のための技術支援
約88%
約10%
約1.4%
・地域の価値を高めることを含む自然・文化資源の最適な利用
・農村地域の生活の質的向上
・地域産品への付加価値の獲得。特に、集団的行動を通じて小規模産品の市場アクセ
スを整備すること
・農村地域の産品とサービスの競争力を高めるための新たなノウハウと新技術の利用
実施期間
その他
2000年∼2006年
モニタリングは、LAGレベルと国レベルで行われる。
ローカルアクショングループ(LAG)の例
プログラム・コーディネーション・グループ
3つの地域グループを
統合する組織
プログラム・スタッフ
LAG事務局
スタッフ(専従)
・プログラム・スタッフの支援及び指示
・財務の管理
・全体の事業及びその成果の戦
略的管理
・計画の実施状況の監督
・プログラム・コーディネーター
(住民参加の推進、普及・啓蒙、
行政部門との連携、研修等)
・アシスタント・プログラム・コーディネーター
(事業評価、申請書類修正等)
・オフィス・マネージャー
(会計・事業評価DB管理等)
地域グループ
地域の実質的な
意志決定を行う
地域グループ
地域グループ
参加団体のセクター
①コミュニティ
②ボランタリー
(複数地域を対象とし
て活動している団体)
③民間
④行政
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出典:農村振興局事業計画課資料を元に再作成
(2) EUの新CAP政策におけるLEADER事業の位置付け
○2007年改革により、デカップリングの理念に立脚する「単一支払制度」を確立するとともに、第1ピラー(価格市場
政策)から第2ピラー(農村振興政策)への財源移転をもたらす「モジュレーション」、並びに第1ピラーの直接支払
の受給条件として農業者に環境基準等の遵守を義務づける「クロス・コンプライアンス」が導入された。
○2007年からはCAPの第2ピラーである農村振興政策の第4軸に位置付けられる。
○LEADER事業において、ソーシャル・キャピタルと関連の深い分野は、「生活の質的向上(quality of life)であり、
LEADER事業の4つの基軸のうちの第3軸に、「農村経済の多様化と生活の質的向上」として明記されている。
旧CAP
第1ピラー ・・価格市場政策
(∼2002年)
新CAP
第1ピラー ・・価格市場政策
(2003年∼)
・単一支払制度(SPS)の確立
(2005年1月1日∼、2007年1月1日まで遅らせること可)
・モジュレーションの導入(2005年∼)
・クロス・コンプライアンスの導入(2005年∼)
第2ピラー ・・農村振興政策
(2000年∼2006年)
第2ピラー ・・農村振興政策
( 2007年∼2013年)
(構造政策、条件不利地域政
策、農業環境政策等)
第1軸(目的) 農林業の競争力向上
【農村振興政策(第2ピラー)EU予算の10%以上】
第2軸(目的) 農林地の持続的利用
【農村振興政策(第2ピラー)EU予算の25%以上】
第3軸(目的) 農村経済の多様化と生活の質
的向上
【農村振興政策(第2ピラー)EU予算の10%以上】
構造政策
(地域政策)
LEADER+
CAP外
CAP内
第4軸(手法) LEADER
【農村振興政策(第2ピラー)EU予算の5%以上】
※第4軸の予算は、その目的により第1∼3軸にも計上。
※第1∼3軸の最低計上割合の合計(45%)以外の55%は、
各加盟国の裁量により目的(第1∼3軸)を選択できる。
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(3)ソーシャル・キャピタルの観点からみたLEADER事業の評価
(主として生活の質的向上(quality of life)の観点から)
1)生活の質的向上のためのLEADER事業における取り組み
○生活の質的向上は、あくまで西欧諸国に焦点を絞ったテーマ。(西欧諸国の農村を見ると、都会にある
様々なインフラは農村にもある程度はあるということで、農村における生活を非常に高い水準と見なす人が
多くいるということを反映。)
○生活の質的向上に関する取り組みは、①自然環境・景観及び文化的な面での農村の遺産(rural heritage)
という側面、及び②農村の開発あるいは活性化、改善(renovation)といった側面があり、経済的な活動以外
の全ての要素を含む。
○また、生活の質的向上は、農村に人々を魅了するというよりも、むしろ農村の生活水準を上げていくという
ことが中心。若年者や女性が農村に住み続けたいと思うような魅力のある生活水準を確保していくことが必
要。(ヨーロッパ各国の都会もいろいろな問題を抱えている中、今後はもっと農村に着目してよいのではない
かとの考え方の反映。)
【生活の質的向上に関する定義】新しい欧州連合規則より
①質的向上というものはあくまで西欧に焦点を絞ったものであること。旧東欧諸国と西欧諸国では非常に格差があり、まだまだ
東欧諸国では質的向上といわれるようなものを十分享受している人々は少なく、西欧に焦点を絞っている。
②自然環境・景観といった意味での遺産及び文化的な遺産(例えば村、地域の歴史とか、地域の個性を高めて確立することが
できるような文化的な背景)といった農村の遺産(rural heritage)というポイント。
文化的遺産は、国によって状況が違うため、文化的遺産の対象は、各国主導で定めている。
③農村の開発あるいは活性化、改善(renovation)といった要素。いわば基盤整備に直結していく部分であるが、市街地、農村
の中心の地域整備や道路の近代化とか鉄道といったものがはいると思う。
【生活の質的向上に関する活動の事例】
・企業あるいは個人の住宅の為の土地探しに関する活動
(企業が起業したり、施設を確保したりする際に十分な情報がないために適切な場所が見つからないといった問題を解決する
ため、企業に農業を活性化する活動をしてもらうために、それらの企業が土地を見つけることができるようにマーケット自体を
組織化するという意味での情報提供)
・女性を対象とした情報センター
(自分たちの能力開発のためのトレーニングの機会としてはどういうものがあるのか、教育の場はどういうものがあるのか、あ
るいは保育所・保育サービス等はこういったものがあるといった情報提供)
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・様々な文化関連のサービス(映画館を作ったり、図書館を開設したり、アートスクールやホビー活動の場、などの提供)
2)イギリスの質的向上のためのLEADER事業の取り組み
(オックスフォード西部地域ネットワーク LEADER+の事例)
○イギリスにおけるLEADER事業は、そもそも生活の質的向上をめざすことが主であり、環境食糧農村地域省
と行政府により監督されている。
○イギリスにおけるLEADER事業においては、①地域に根ざした方策、②ボトム・アップアプローチ、③連携 し
ながらの取り組みと地元活動グループ(LAG)の活用、④革新、⑤社会に同化した取り組み、⑥連携網の形成
と地域間協力、⑦地元での資金調達と地元運営を、7つの重要な方針として定めている。
○ウェスト・オックスフォードLEADER+には、EU及びイギリス環境食糧農村地域省から出資されているほか、
民間資本であるイングランド東南部開発機関(SEEDA)からも出資。
○同プログラムの目的は、農村地域であるウェスト・オックスフォード地域に住み、働いている人々のために生
活の質と社会的結束力を向上すること。
○同プログラムは、地域活動グループ(Local Action Group)であるオックスフォード西部地域ネットワーク(West
Oxfordshire Network)と呼ばれるパートナーシップにより、地元で実施。
【オックスフォード西部地域ネットワーク LEADER+の実施基準】
オックスフォード西部地域ネットワーク LEADER+への出資体系
【EUからの資金】
【環境食糧農村地域省からの資金】
↓約3億2,600万円
↓ 約4,600万円
↓
↓
↓
↓←【民間資本(イングランド東南部
↓
↓ 開発機関:SEEDA)からの資金】
約1億1,300万円
【オックスフォード西部地域ネットワーク(WON)】
↓
↓
↓
↓
↓
【14の地元組織による運営グループ】
①ウェスト・オックスフォードシャーに所在する、もしくはその地域の社会や人々に
利益をもたらすこと
②実験的であること−存在する問題を新たな方法で対処する計画であること
③既存の商品やサービスを補完するものであり、それらと競争するものであっては
ならないこと
④地域社会が明確に必要とすることに基づいていなくてはならないこと
⑤WONの表明する目的や目標に合致すること
⑥農村住民との連携や関与を行う協力を示すこと
⑦明確な社会的、経済的もしくは環境的メリットを有すること
⑧最低50%の費用は他の資金源によって提供されることを示すこと
⑨当該リーダープラス・プログラムが終了すれば以後WONからの財政支援は必
要ないこと
⑩許された期間内で実現可能なものであること
⑪欧州連合(EU)以外の資金援助を受けないこと
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○オックスフォード西部地域ネットワークは、地元の公的機関、コミュニティー、ボランティア、及
び民間の14つの団体で構成された運営委員会で構成。
○本地域におけるLEADER+は、農村における生活の質的向上を目的として、①ロングハンボ
ロー地区スケート公園整備、②ブリッドウェル地区有機庭園整備、③タッックレイ地区村の集
会場整備、④オックスフォード地区高齢者サービスなど、50以上の様々な事業を実施。
○ 事業評価は、LEADER+の各部門、各テーマによって、それぞれ具体的な指標を設定。本地
域においては、生活の質的向上のテーマに応じた様々な指標を設定し、開発計画を作成す
る時にこれらの指標に対しての達成度を予測、半年おきに官庁への進歩状況を報告する経
過報告書の提出が義務づけられている。
○LEADER+の指標の良い点は、経済的な指標の計測だけではなく、社会的な面を測る指標も
認識していること。
○LEADER+は良い経済効果だけを目的とするのではなく、social capitalの蓄積自体も目的で
あり。経済的な指標だけでなく、社会的な指標の価値を認めている点がLEADER+の優れた
特徴。
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イギリスにおけるLEADER事業評価指標
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