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住宅を対象とした常時換気システムの換気効率に関する研究
新潟大学大学院自然科学研究科環境共生科学専攻 都市人間環境学(建築学)教育研究群修士論文梗概 平成19年度 住宅を対象とした常時換気システムの換気効率に関する研究 ー数値流体解析(C F D 解析)を用いた暖房時の換気手法の検討ー F06D037E 鍛治紘子 指導教員 赤林伸一教授 1 研究目的 2003 年7月の建築基準法の改正により、2004 年7月 図1(2)に天井給排気口の位置を示す。 400㎜ 830㎜ 天井給排気口⑤ 天井給排気口⑥ (温度⑤) (温度⑥) CE-1 be WW 3 e S C 2 e S C 1420㎜ 400㎜ 2600㎜ 2150㎜ CSa-6 CSa-5 CSb-6 LD CSb-5 和室 CSb-4 2 d S C 2150㎜ 浴室 CE-4 2 c S C CSa-3 CSa-4 CSa-1 Aa CSa-2 CSb-3 子供室1 1 d S C d A 3 d S C 3 c S C d W (3)同時給排気型換気口の概要 図1 住宅の居間を対象とした解析モデルの概要 2F c W 3640㎜ c A 1 c S C 西壁面 CE-3 洗面室 1 e S C e A 子供室2 3 E C 2 f S C 3 f S C 窓 4550㎜ 断面X 南壁面 CSd-5 CE-2 給排気口の間隔を 0~300㎜とする。 主寝室 CSd-6 K 予備室 給排気口の間隔を 0~300㎜とする。 CSc-6 1 -b b SA C 4 E W 1 f S C 3 E W f A f aW W 給気口B(100×100㎜) 排気口B(100×100㎜) 給気口A(100×100㎜) 排気口A(100×100㎜) CSd-3 洋室2 窓 1F CSd-4 和室 a A 天井給排気口⑦ 天井給排気口⑧ 天井給排気口⑨ (温度⑦) (温度⑧) (温度⑨) (2)天井給排気口の概要 (1)居間の概要 2600㎜ CSc-4 CSc-5 LD 3 b S C 625㎜ 1420㎜ 2000㎜ 2000㎜ 2150㎜ 1 E W CSc-3 2 b S C 天井給排気口④ (温度④) 3 a S C アンダーカット 幅20㎜ 2 a S C 2600㎜ K CSc-2 洋室1 壁給排気口② (150×150㎜) 4550㎜ 天井給排気口② 天井給排気口③ (温度②) (温度③) 天井給排気口① (温度①) 1 a S C 壁給排気口① (150×150㎜) 隙間(幅20㎜) Wd Ad CSd-2 CSd-1 Ac CSc-1 ドア 437.5㎜ 2500㎜ Wc 400㎜ 1 E C エアコン室内ユニット(H300×W840×D250) 窓 1875㎜ 400㎜ 同時給排気型換気口(100×100㎜) 壁給排気口③ (150×150㎜) 1875㎜ CS:天井給気口 CE:天井排気口 W:壁給排気口 (150×150mm) A:エアコン(H300×W840×D250mm) :床暖房を設置する範囲 *室内のドアにアンダーカット(H100×W200mm)を設置する。 2 E W 隙間(幅20㎜) 3640㎜ 2 研究概要 2.1 解析対象 2.1.1 住宅の居間を対象とした解析 図1に住宅の居間を対象とした解析モデルの概要を示 す。解析対象は床面積 16.6m2、容積 43.1m3 の居間とし、天 井給排気口、壁給排気口、エアコン、同時給排気型換気 扇を設置する。居間の西面・南面は、外気に面し、北面・ 東面・天井面・床面* 1 は上下階及び隣室に面している。 2.1.2 住宅全体を対象とした解析 図2に住宅全体を対象とした解析モデルの概要を示 す。解析対象は次世代省エネルギー基準(Ⅳ地域)を満 たす日本建築学会標準住宅モデル、片廊下型板状タイプ 2 E C から住宅の居室に機械換気設備の設置が義務付けられ た。また近年、住宅の高断熱、高気密化が寒冷地以外で も進行しており、計画換気の重要性が増加している。こ のため、国土交通省は「改正建築基準法に対応した建築 物のシックハウス対策マニュアル - 建築基準法・住宅 性能表示制度の解説及び設計施工マニュアル」を作成 し、設置すべき機械換気設備の技術的情報、設計手法、 具体的な設計例などを広く提供している。しかしなが ら、住宅設計者が換気システムを選定する際に、施主へ シェルター性能(断熱・気密性能)や空調方式、換気シス テムとの相互効果によって実現される室内温熱空気環境 を明確に提示することは、設計基礎資料が不足している ため困難である。従って、良好な室内温熱空気環境を実 現することのできる換気システム選定方法について、設 計資料を整備する必要がある。一方、設計や施工の簡便 性により、近年、各居室に同時給排気型の換気扇を設置 する住宅が増加している。同時給排気型換気扇は給気口 と排気口が近接しているため、給気が排気口へショート サーキットすることが懸念されている。 本研究では、住宅の居間、戸建住宅、集合住宅を対象 に、CFD 解析を用いて暖房時(温風暖房、床暖房)の換 気方式による居室の室内温熱空気環境の良し悪しや、換 気方式、給排気口の位置によって変化する空気齢を用い た換気効率を明らかにすることを目的とする。さらに、 同時給排気型換気扇における給排気口の距離が室内の換 気効率に及ぼす影響に関する検討を行う。 CSb-2 Ab CSb-1 Wa (1)戸建住宅の概要 (2)集合住宅の概要 図2 住宅全体を対象とした解析モデルの概要 Wb の集合住宅の中間階・中間住戸とし、天井給排気口、壁 表2に戸建住宅を対象とした解析 case を、表3に集合住 宅を対象とした解析 case を示す。換気方式、給排気口の位 給排気口、空調機(エアコン、床暖房)を設置する。 置、空調方式(温風暖房及び床暖房)を変化させた場合の室 2.2 解析方法 内温度分布と空気齢 * 2を用いた局所空気交換効率(ε p )の 図3に居間を対象とした換気方式の概要を、図4にエ 解析を行う。機械換気設定風量は、換気回数 0.5 回 /h とし、 アコンの設置位置を示す。表1に居間を対象とした解析 温風暖房の吹出温度、床暖房の発熱温度は、LDK の SET * が case を示す。換気方式は、第1種機械換気と第3種機械 22℃となるように設定する。解析には汎用流体解析ソフト 換気とし、給気方式と排気方式を変化させた6通りとす る。エアコンの設置位置は、一般的に設置されるエアコ (STREAM)を用い、標準 k- εモデルにより室内温度分布と 空気齢を用いた換気効率の解析を行う。 ンの位置を想定し、西壁中央(エアコン1)、南壁・西 2.3 評価方法 側(エアコン2)、南壁中央(エアコン3)とする。換 換気効率は、空気齢を用いた室内の換気の良否を示す 気方式、給排気口の位置、エアコンの設置位置を変化さ せた 29case と同時給排気型換気扇(南壁中央・西壁中央) 指標である局所空気交換効率(εp)を用いて評価する。 式(1)、 (2)により求められ、完全拡散の場合にεpは 1.0 の給排気口の間隔を変化させた 10case の合計 39case の解 となり、値が大きいほど換気効率が良いことを示す。 析を行う。 天井給気 天井排気 壁給気 天井排気 漏気 天井排気 εp=τ n / τp (1) τ n =V / Q (2) τp:局所空気齢(s) τ n:名目換気時間(s) V:室容積(m 3) Q:換気量(m 3/s) (1)方式1(第1種) (2)方式2(第3種) (3)方式3(第3種) 表2 戸建住宅を対象とした解析 case 解析case ドア ドア ドア 天井給気 アンダーカット排気 壁給気 アンダーカット排気 漏気 アンダーカット排気 (4)方式4(第1種) (5)方式5(第3種) (6)方式6(第3種) 図3 換気方式の概要 西壁中央 窓 南壁・西側 戸建1-3-1 南壁・窓上中央 (1)エアコン1 (2)エアコン2 (3)エアコン3 図4 エアコンの設置位置 戸建2-1-1 戸建2-1-2 戸建2-1-3 戸建2-2-1 戸建2-2-2 戸建2-2-3 戸建3-1-1 戸建3-1-2 戸建3-1-3 表1 居間を対象とした解析 case 解析case 居間1 居間2 居間3 居間4 居間5 居間6 居間7 居間8 居間9 居間10 居間11 居間12 居間13 居間14 居間15 居間16 居間17 換気方式 天井給気口① 天井排気口③ 壁給気口① 天井排気口③ 壁給気口① 天井排気口① 壁給気口③ 天井排気口① 漏気による給気 天井排気口③ 天井給気口① アンダーカット排気 天井給気口② アンダーカット排気 天井給気口③ アンダーカット排気 天井給気口④ アンダーカット排気 天井給気口⑤ アンダーカット排気 天井給気口⑥ アンダーカット排気 天井給気口⑦ アンダーカット排気 天井給気口⑧ アンダーカット排気 天井給気口⑨ アンダーカット排気 壁給気口① アンダーカット排気 壁給気口② アンダーカット排気 漏気による給気 アンダーカット排気 エアコン位置 解析case 方式1 居間18 方式2 居間20 居間21 方式3 天井給気口① 方式1 天井排気口③ 居間23 居間24 エアコン停止 方式4 居間26 居間27 方式2 居間29 方式5 方式6 居間30 居間31 居間32 居間33 居間34 居間35 居間36 居間37 居間38 居間39 エアコン2 エアコン1 方式4 アンダーカット排気 エアコン2 エアコン3 エアコン1 壁給気口① 方式5 アンダーカット排気 給排気口間隔 0㎜ 給排気口間隔 50㎜ 給排気口間隔 100㎜ 給排気口間隔 200㎜ 給排気口間隔 300㎜ 給排気口間隔 0㎜ 給排気口間隔 50㎜ 給排気口間隔 100㎜ 給排気口間隔 200㎜ 給排気口間隔 300㎜ 集合1-1-1 集合1-1-2 集合1-1-3 集合1-2-1 集合1-2-2 集合1-2-3 集合1-3-1 集合1-4-1 集合1-5-1 集合1-6-1 集合1-7-1 集合2-1-1 集合2-1-2 集合2-1-3 集合2-2-1 集合2-2-2 集合2-2-3 集合3-1-1 集合3-1-2 集合3-1-3 集合3-2-1 集合3-2-2 集合3-2-3 集合3-3-1 集合3-3-2 集合3-3-3 エアコン2 エアコン3 天井給気口① 居間28 解析case エアコン1 エアコン1 天井排気口③ 居間25 エアコン位置 エアコン3 壁給気口① 居間22 暖房方式 (吹出/発熱温度) なし 温風暖房(40℃) 床暖房(35℃) なし 温風暖房(40℃) 床暖房(35℃) 排気口位置 CSd-1, Cse-1, CSf-1 CE-1, CE-3 Wa, Wb, Wc 第1種 機械換気 第2種 機械換気 CE-1, CE-3 Wd, We, Wf CSa-2, CSb-2, CSc-2 CSd-2, Cse-2, CSf-2 CSa-3, CSb-3, CSc-3 CSd-3, Cse-3, CSf-3 CSa-1, CSb-1, CSc-1 CE-1, CE-3 なし CE-1, CE-3 なし Wa, Wb, Wc なし 温風暖房(40℃) 床暖房(35℃) なし 温風暖房(40℃) 床暖房(35℃) なし 温風暖房(40℃) 床暖房(35℃) CSd-1, Cse-1, CSf-1 Wd, We, Wf CSa-2, CSb-2, CSc-2 Wa, Wb, Wc CSd-2, Cse-2, CSf-2 Wd, We, Wf 第3種 Wa, Wb, Wc 機械換気 Wd, We, Wf WE-1, WE-2 WE-3 WE-4, CE-2 表3 集合住宅を対象とした解析 case 換気方式 居間19 給気口位置 CSa-1, CSb-1, CSc-1 戸建1-4-1 窓 窓 戸建1-1-1 戸建1-1-2 戸建1-1-3 戸建1-2-1 戸建1-2-2 戸建1-2-3 換気方式 エアコン2 エアコン3 同時給排気型 換気扇 南壁中央設置 エアコン停止 同時給排気型 換気扇 西壁中央設置 換気方式 給気口位置 排気口位置 CSa-1, CSb-1 CSc-1, CSd-1 CE-1 CSa-6, CSb-6 CSc-6, CSd-6 第1種 機械換気 CSa-,1 CSb-1, CSc-1, CSa-2, CSb-2, CSc-2, CSa-4, CSb-4, CSc-4, CSa-5, CSb-5, CSc-5, CSa-3, CSb-3, CSc-3, CSa-1, CSb-1 第2種 機械換気 CSc-1, CSd-1 CE-1 CSd-1 CE-2, CE-3, CE-4 CSd-2 CE-1 CSd-4 CE-1 CSd-5 CE-1 CSd-3 CE-1 Wa, Wb, Wc, Wd CSa-6, CSb-6 CSc-6, CSd-6 Wa, Wb, Wc, Wd Wa, Wb ,Wc, Wd CE-2, CE-3, CE-4 Wa, Wb, Wc, Wd CE-2, CE-3, CE-4 Wa, Wb, Wc, Wd CE-2, CE-3, CE-4 第3種 機械換気 第3種 機械換気 (*) 暖房方式 (吹出/発熱温度) なし 温風暖房(32℃) 床暖房(28℃) なし 温風暖房(32℃) 床暖房(28℃) なし なし なし なし なし なし 温風暖房(28℃) 床暖房(28℃) なし 温風暖房(28℃) 床暖房(28℃) なし 温風暖房(28℃) 床暖房(28℃) なし 温風暖房(28℃) 床暖房(28℃) なし 温風暖房(28℃) 床暖房(28℃) * LDK のアンダーカットを(H200 × W200 ㎜)とする。 1.30 1.25 1.20 1.15 1.10 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85 0.80 0.75 0.70 エアコン停止時 間1のεpは、給気口付近でεpが 1.0 以上と大きく、西 壁面、南壁面付近では 1.0 となり、居間全体ではεpが 1.0 以下の領域が生じる。エアコンを運転した居間 18(エア コン1)のεpは、居間全体でほぼ 1.0 である。エアコン を運転した場合には、居室全体の換気効率は向上し、室 内の換気効率の分布は小さくなる。エアコンを停止した 場合には、換気効率の高い領域と低い領域が生じる。 図7に居間の代表的な解析 c a s e のεpの分布(床上 1.1m 水平断面)を示す。換気方式4(天井給気、アンダー カット排気)の場合、給気口がアンダーカットと離れて εp 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2.0 1.4 天井給気口① 天井給気口① 天井排気口③ 天井排気口③ 1.0 1.0 エアコン1(運転) 1.0 1.0 エアコン3(停止) 1.2 W E W (1)居間1 (2)居間 18 図6 解析 case 居間1と居間 18 のεp分布(床上 1.1m) 1.0 1.2 天井給気口① 0.8 1.0 天井給気口② 1.0 1.0 W エアコン3(停止) エアコン3(停止) E (1)居間6 W E (2)居間7 アンダーカット アンダーカット 1.0 1.0 天井給気口③ 0.8 1.0 天井給気口⑦ エアコン3(停止) エアコン3(停止) 0.8 1.2 W E W E (3)居間8 (4)居間 12 図7 居間の代表的な解析 case のεp分布(床上 1.1m) エアコン運転時 図5 室内呼吸域平均εp 居間39 居間38 居間37 居間36 居間35 居間34 居間33 居間32 居間31 居間30 居間29 居間28 居間27 居間26 居間25 居間24 居間23 居間22 居間21 居間20 居間19 居間18 居間17 居間16 居間15 居間14 居間13 居間12 居間11 居間9 居間10 居間8 居間7 居間6 居間5 居間4 居間3 居間2 E アンダーカット アンダーカット 同時給排気型換気扇 居間1 室内呼吸域平均εp 3 住宅の居間を対象とした換気効率の検討 3.1 局所空気交換効率(εp) 3.1.1 呼吸域平均局所空気交換効率*3 図5に室内呼吸域平均εpを示す。エアコン運転時の 呼吸域平均εpは、どの case も 1.0 程度の値となり、エ アコン運転時は換気方式やエアコンの設置位置の差は小 さく、外気が室内でほぼ完全拡散している。 エアコン停止時の呼吸域平均εpは、隙間からの漏気に よる給気を行う解析 case 居間5、居間 17 では、1.0 を超 え、エアコン運転時より大きい値を示す。それ以外の case では、1.0 以下となり、エアコン運転時の値より小さい。 換気方式4(天井給気、アンダーカット排気)の場合 では、天井給気口がアンダーカットに近接して位置する 居間8(天井給気 ③)の呼吸域平均εpは約 0.72 となり、 居間7(天井給気②)、居間 11(天井給気⑥)では約 0.85 である。天井給気口がアンダーカットから離れて位置す る居間6( 天井給気①) 、居間9(天井給気④) 、居間 10 (天井給気⑤) 、居間 12(天井給気 ⑦) 、居間 13(天井給 気⑧) 、居間 14(天井給気⑨)では、呼吸域平均εpは約 0.9 ∼ 1.0 である。このことから、給気口と排気口の距 離は換気効率に大きく影響し、天井給気口の場合では、 給気口と排気口の距離が部屋の長辺方向の半分以上離れ ていれば、ε p の差は小さい。 同時給排気型換気扇を用いた場合では、給排気口間隔 が 0 ㎜の解析 case 居間 30(南壁中央設置)、居間 35(西 壁中央設置)では、呼吸域平均εpは約 0 . 8 となり、給 排気口間隔が 50 ㎜の居間 31(南壁中央設置)、居間 36 (西壁中央設置)では、室内呼吸域平均εpは約 0 . 9 5 で 1.0 以下となる。給排気口間隔が 100 ∼ 300 ㎜では、室内 呼吸域平均εpはほぼ 1 . 0 となり、外気が室内で完全拡 散していると考えられる。 3.1.2 局所空気交換効率(εp)の分布 図6に解析 case 居間1と居間 18 のεpの分布(床上 1.1m 水平断面)を示す。換気方式1(天井給気①、天井 排気③)の場合では、エアコンを停止した解析 case 居 温度①、温度⑦、温度⑧(図1(2)参照)において、そ れぞれ床上 1.1m の温度と床上 0.1m の温度の差とする。 給気方式が天井給気の場合、温度①の上下温度差は 0.5℃以下となり、温度⑧の上下温度差は2℃以下と小 さい。給気方式が壁給気の場合、温度⑦の上下温度差 は、エアコン 1(西壁中央設置)とエアコン 2(南壁西 側設置)の case で3℃以上と大きく、エアコン3(南 壁窓上中央設置)の case では2℃以下と小さい。温度 ⑧の上下温度差は、解析 case 居間 27(壁給気②、アン ダーカット排気、エアコン 1 )で、窓面のコールドド ラフトの影響を受けるため、3℃以上と大きくなる。 天井給気の場合、エアコンの設置位置に関係なく窓面 や給気口からの冷気による影響が少なく、壁給気の場 合、エアコンの設置位置をエアコン3(南壁窓上中央 設置)とした場合に、良好な温熱環境となる。 4 戸建住宅を対象とした換気効率の検討 4.1 換気量 図 11 に機械換気設定風量(0.5 回 /h)に対する各部位 の給排気量の割合を示す。第2種、第3種、第1種機械 換気の順に漏気量が多く、温風暖房時と床暖房時の換気 量には相違が見られない。第2種機械換気の場合、温風 暖房時では排気口からの流入が隙間からの流入の 4.3 倍、 床暖房時では 3.4 倍、第3種機械換気の場合、温風暖房 時では給気口からの流出が隙間からの流出の 1.9 倍、床 暖房時では 2.6 倍となり、第2種機械換気は第 3 種機械 換気と比較して、自然排気口からの逆流量が多い。 3.0 10.0 2.0 5.0 1.0 0.0 0.0 0.8 居間29 15.0 居間18 1.0 4.0 居間28 1.2 1.4 20.0 居間27 1.0 1.2 5.0 温度⑦ 居間26 2.0 居間25 1.0 居間24 0.8 温度①または温度⑦の上下温度差 温度① 居間23 0.6 居間22 0.4 居間21 0.2 温度[℃] 0.0 温度⑦ 居間20 εp 床上1.1mの温度 温度① 上下温度差[℃] 床上0.1mの温度 25.0 居間19 位置する解析 case 居間6(天井給気 ①)、居間 12(天井給 気⑦)では、天井給気口、床面付近のεpは 1.0 以上とな り、呼吸域のεpは 0.8 ∼ 1.0 の範囲に入る。居間7(天 井給気②)は、北壁面付近で 0.6 ∼ 0.8 と低い領域が生 じるが、床上 1.1m のεpは、ほぼ 0.8 ∼ 1.0 の範囲に入 る。給気口がアンダーカットと近接して位置する居間8 (天井給気 ③)は、天井給気口付近のεpは 1.0 以上とな るが、室全体のεpは 0.6 ∼ 0.8 と低くなる。給気口と排 気口の位置が近接するほど、ショートサーキットが生 じ、換気効率の低い領域が生じる。 図8に同時給排気型換気扇(南壁中央設置)のεp分 布(鉛直断面X)を示す。解析 case 居間 30(給排気口 間隔 0 ㎜)のεpは、給気口部分で 1.0 以上となるが、呼 吸域で 0.6 ∼ 0.9 と低く、換気効率の低い領域が生じる。 居間 31(給排気口間隔 50 ㎜)のεpは、給気口より高い 領域で 1.0 以上となり、居間 30(給排気口間隔 0 ㎜)と 比較して、1 . 0 以上の領域が増加するが、呼吸域のεp は 0.9 ∼ 1.0 の範囲となる。居間 32(給排気口間隔 100 ㎜) 、居間 34(給排気口間隔 300 ㎜)のεpは、給気口から の新鮮な空気が北壁面を通り、床面へと流れる為、給気 口より高い領域、壁面、床面付近で 1.0 以上となり、換 気効率は向上する。同時給排気型換気扇の場合、給排気 口の間隔が狭い場合は、給気口から排気口へショート サーキットが生じ、給気口より低い領域へ新鮮な空気が 行き渡らず、換気効率が悪くなる。 3.2 室内の上下温度と温度差 図9に温度①と温度⑦の温度と上下温度差を、 図 1 0 に温度⑧の温度と上下温度差を示す。 上下温度差は、 図9 温度①と温度⑦の温度と上下温度差 S N S N 床上0.1mの温度 (1)居間 30(給排気口間隔 0 ㎜) (2)居間 31(給排気口間隔 50 ㎜) 温度⑧上下温度差 5.0 20.0 4.0 15.0 3.0 10.0 2.0 5.0 1.0 0.0 0.0 1.2 図 10 温度⑧の温度と上下温度差 居間29 居間28 居間27 居間26 居間25 居間24 (3)居間 32(給排気口間隔 100 ㎜) (4)居間 34(給排気口間隔 300 ㎜) 図8 同時給排気型換気扇(南壁中央設置)のεp分布(鉛直断面X) 居間23 N 居間22 S 居間21 N 居間20 S 1.0 1.0 居間19 1.0 居間18 1.0 上下温度差[℃] 1.2 温度[℃] 1.4 床上1.1mの温度 25.0 4.2 温熱環境と居住域平均局所空気交換効率(εp)の関係*4 図 12 に LDK と主寝室の上下温度差係数と平均εpの関 係を示す。上下温度差係数は、上下温度差(床上 1.1m の 温度と床上 0 . 1 m の温度との差)を室内外温度差で割っ た値である。床暖房時は、上下温度差係数が 0 . 1 5 より 小さく、温風暖房時に比較して相対的に良好な温熱環境 である。εpはどの換気方式でも温風暖房時と床暖房時 の間に明確な差は見られない。 4.3 局所空気交換効率(εp)の分布 図 13 に戸建住宅の代表的な解析 case のεpの分布(床 上 1.1m 水平断面)を示す。解析 case 戸建 1-1-2(第 1 種、 温風暖房)と戸建 1-1-3(第1種、床暖房)では、1Fの 居室のεpは 1.2 ∼ 2.0 と大きく、2Fの居室は 1.0 とな り、εpの分布に大きな相違は見られず、空調方式による 差はない。戸建 2-2-3(第2種、床暖房)は、1Fの排気 口から給気されるため、1Fの居室のεpの値は 1 . 6 ∼ 2.0 と大きく、2Fの居室は 1.0 となり、換気効率は良い。 戸建 3-1-3(第3種、床暖房)は、1Fの全ての室で 1.0 を超え、換気効率は良い。2Fの居室は1Fの空気が階 段室を通り、アンダーカットから流れ込むため、居室の 給気口から新鮮な外気が流入せずεpは 1.0 以下となる。 5 集合住宅を対象とした換気効率の検討 5 . 1 温熱環境と居住域平均局所空気交換効率(εp)の関係 図 14 に LDK の上下温度差係数と平均εpの関係を示す。 給気口からの流入 排気口からの流出 隙間からの流入 隙間からの流出 床暖房時では、上下温度係数が 0.15 より小さく、第1 種、第2種機械換気の場合に平均εpは 1.0 以上となり、 温熱環境、換気効率ともに良好となる。温風暖房時で は、第1種、第2種機械換気の場合に上下温度差係数は 0.15 より小さく、平均εpは 1.0 以上となり、温熱環境、 換気効率共に良好となる。第3種機械換気の場合、上下 温度差係数は 0.15 以上と大きく、平均εpは 1.0 以下と なり、温熱環境、換気効率ともに悪くなる。 5.2 局所空気交換効率(εp)の分布 図 15 に集合住宅の代表的な解析 case のεpの分布(床 上 1.1m 水平断面)を示す。解析 case 集合 1-1-1(第1種、 εp 0.0 0.2 0.4 0.8 1.0 2.0 1.0 0.9 1.8 0.5 0.9 1.2 1.3 0.9 0.8 2.0 0.9 0.9 1.4 1.0 1F 2F (1)戸建 1-1-2 (第1種機械換気、温風暖房) 1.0 1.0 0.9 0.5 1.8 0.9 0.9 1.2 0.7 1.2 1.8 1.8 排気口からの流入 給気口からの流出 180% 0.6 0.9 0.9 1.4 1.0 1.8 160% 漏気部分 140% 1F 2F (2)戸建 1-1-3 (第1種機械換気、床暖房) 120% 100% 0.4 1.2 80% 1.2 0.5 0.4 60% 1.2 40% 0.4 1.0 20% 1.6 0% 給気 排気 給気 戸建1-1-2 排気 給気 戸建1-1-3 排気 給気 戸建2-2-2 第1種機械換気 排気 戸建2-2-3 給気 排気 戸建3-1-2 第2種機械換気 給気 排気 居住域平均εp LDK 1.5 LDK 1.0 主寝室 主寝室 主寝室 主寝室 0.5 室内上下温度差(3℃) 室温(20℃)-外気温(0℃) LDK LDK 1.0 主寝室 主寝室 主寝室 主寝室 床暖房 LDK 1.6 LDK LDK 1.8 0.05 2.0 温風暖房 戸建1-1-2 戸建1-2-2 戸建2-1-2 戸建2-2-2 戸建3-1-2 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.6 2.0 1.4 戸建1-1-3 戸建1-2-3 戸建2-1-3 戸建2-2-3 戸建3-1-3 0.0 0.00 1F 2F (3)戸建 2-2-3 (第2種機械換気、床暖房) 1.8 1.8 1.8 主寝室 主寝室 0.9 LDK LDK LDK 2.0 第3種機械換気 図11 機械換気設定風量(0.5 回/h)に対する各部位の給排気量の割合 2.0 1.6 戸建3-1-3 0.35 上下温度差係数(室内上下温度差(℃)/室内外温度差(℃)) 図 12 LDK と主寝室の上下温度差係数と平均ε p の関係 0.40 0.6 1.6 0.6 0.4 2.0 1.8 0.6 0.4 1F 2F (4)戸建 3-1-3 (第3種機械換気、床暖房) 図 13 戸建住宅の代表的な解析 case のεp分布(床上 1.1m) 空調なし)では、キッチンと和室でεpが 1.0 以下の領域 が生じ、換気効率の良い領域と悪い領域が生じる。集合 1-1-2(第1種、温風暖房)と集合 1-1-3(第1種、床暖 房)では、全ての居室でεpは 1.0 ∼ 1.2 の範囲に入り換 気効率は良い。また、εpの分布、換気回数ともに大きな 相違は見られず、空調方式(温風暖房、床暖房)による 全拡散の状態となると考えられる。 ③給気口と排気口の距離は換気効率に影響し、給気口と 排気口の位置が離れるほど換気効率は向上する。給気 口と排気口の距離が部屋平面の長辺方向の半分以上を 超えると、εpの分布の差は小さくなる。 ④同時給排気型換気扇の場合では、給気口と排気口の距 離は最低が 1 0 0 ㎜以上離して設計する必要がある。 ⑤エアコンを窓上に設置した場合と給気方式が天井給気 の場合は、換気効率が良く、窓面の冷気による影響が 小さい換気空調方式である。 ⑥戸建住宅では、暖房時の換気量は、換気方式に関わら ず設定換気風量(0.5 回 /h)を超え、第2種、第3種、 第1種機械換気の順に多くなる。 ⑦戸建住宅、集合住宅ともに、床暖房時では、温風暖房 時より、室内上下温度差、室間温度差が小さく、室内 の温熱環境は良好である。 ⑧戸建住宅、集合住宅ともに、εpには、暖房方式(温風暖房、 床暖房)による差は見られない。 ⑨換気効率は、換気方式によって差が見られる。戸建住 宅では、第1種、第2種機械換気では、居室のεpは 1.0 程度または 1.0 以上となり、換気効率は良く、第 3種機械換気では2Fのεpは 1.0 以下となり、換気効 率は悪くなる。集合住宅では、第1種機械換気では、 居室のεpは 1.0 程度または 1.0 以上となり、換気効率 は良く、第2種、3種機械換気では居室のεpは 1.0 以 下となり、換気効率は悪くなる。 差はない。集合 2-2-3(第2種、床暖房)では、LDK、和 室、洋室1のε p は 1.0 を超え、換気効率は良いが、洋室 2は廊下から汚染された空気が洋室のドアのアンダー カットを通じて流れ込む為、ε p は 1.0 以下となる。集合 3-1-3(第3種、床暖房)は、LDK、和室での換気回数は 0.5 回 /h 未満となり、ε p は 1.0 以下と小さくなるが、洋 室1、洋室2では、給気口から多量の外気が流れ込むた め、換気回数は1回 /h を超え、ε p の値は 1.6 ∼ 1.8 の範 囲に入り、換気効率は良い。 6 結論 ①エアコン停止時の局所空気交換効率(εp)は、1.0 以 上となる領域が大きくなるが、換気効率の低い領域と 高い領域が生じる。 ②エアコン運転時のεpは、換気方式やエアコンの設置 位置に関わらず 1.0 程度の値となり、外気が室内で完 2.0 室内上下温度差(3℃) 室温(20℃)-外気温(0℃) 居住域平均εp 1.5 1.0 0.5 床暖房 集合1-1-2 集合1-2-2 集合2-1-2 集合2-2-2 集合3-1-2 集合3-2-2 集合3-3-2 温風暖房 集合1-1-3 集合1-2-3 集合2-1-3 集合2-2-3 集合3-1-3 集合3-2-3 集合3-3-3 *1: 床からの熱損失はないものとしている。 *2: 空気齢は、外気が室内に供給されてからある点に到達するまでの平均 時間であり、短いほど新鮮な外気が供給される。空気齢の算出には、 漏気も加えた換気量を用いた。 *3:呼吸域は、床上 0.5m ∼ 1.8m の範囲。 *4:居住域は、床上 0m ∼ 2.0m の範囲。 0.0 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 上下温度差係数(室内上下温度差(℃)/室内外温度差(℃)) 0.40 <>内は換気回数 図 14 LDK の上下温度差係数と平均ε p の関係 0.0 0.2 0.4 1.4 1.4 1.4 1.2 1.4 <0.74回/h> εp <0.74回/h> <0.73回/h> 0.8 <0.72回/h> <0.71回/h> <0.66回/h> <0.64回/h> 0.8 1.2 1.0 2.0 1.8 1.8 1.0 <0.75回/h> 0.6 <1.09回/h> <1.23回/h> 1.2 1.2 0.1 0.8 1.0 0.1 0.1 1.0 1.0 0.1 0.2 0.1 0.1 1.2 1.1 0.3 0.1 0.1 1.2 0.8 1.4 1.2 0.1 1.2 0.9 0.1 0.8 1.2 1.2 1.2 1.0 <0.63回/h> <0.64回/h> 1.4 <全体 0.55 回 /h > (1)集合 1-1-1 (第1種、空調なし) <0.67回/h> <0.70回/h> <0.72回/h> 0.6 1.2 1.4 <0.66回/h> <0.65回/h> <0.68回/h> <0.48回/h> <0.32回/h> 1.2 <全体 0.56 回 /h > <全体 0.57 回 /h > <全体 0.52 回 /h > (2)集合 1-1-2 (3)集合 1-1-3 (4)集合 2-2-3 (第1種、温風暖房) (第1種、床暖房) (第2種、床暖房) 図 15 集合住宅の代表的な解析 case のεp分布(床上 1.1m) <全体 0.57 回 /h > (5)集合 3-1-3 (第3種、床暖房)