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技術開発・知的財産活動
技術開発 技術開発ポリシー 「オープン・イノベーション」 大阪ガスグループは、技術開発を競争力強化の ています。 「オープン・イノベーション」とは、当社 ための最も有効な差別化要因と位置付け、エネル が取り組む重要な技術的課題について、大手企業、 ギー環境分野をはじめとしたさまざまな分野で戦 中小企業、ベンチャー、公的機関、大学あるいは海 略的な資源投入を図り、技術開発やその事業化に 外研究機関などの外部機関に公開し、社内外で連 取り組んできました。近年、当社は研究開発のス 携することによって低炭素社会の実現あるいはビ ピードアップや効率化のために、 「オープン・イノ ジネスフィールドの拡大を支援する技術開発を進 ベーション」を進めており、社外技術の活用に努め めるものです。 低炭素社会の実現に貢献する技術開発 家庭におけるエネルギー効率化の 取り組み の技術開発を完了させ、スマートエネルギーハウスが早 期に市場導入されることを目指します。 ◆スマートエネルギーハウス 当社は、家庭用燃料電池、太陽電池、蓄電池の 3 つの電 ◆家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC) 池を組み合わせて最適運用し、家庭内で省エネ、CO2 削 当社では家庭用燃料電池コージェネレーションシステ 減を実現するスマートエネルギーハウスの実証実験を進 ム「エネファーム」に続き、家庭用固体酸化物形燃料電池 めています。昨年度は経済産業省の委託事業「スマート (SOFC)を京セラ(株)、トヨタ自動車(株)、アイシン精 ハウス実証プロジェクト」に参画し、3 電池の最適運転制 機(株)と共同で開発を進めています。SOFC は、発電効 御システムの実現性の確認などに取り組みました。2010 (LHV 基準)と高く、熱需要が比較的少ない住宅 率が 45% 年度は開発の加速と社会への情報発信を進めるために、 でも環境性・経済性のメリットを享受でき、発電ユニッ 技術評価住宅(大阪市此花区酉島実験場内) 、居住実験住 トが小型であることからスペースに制約のある戸建住宅 宅(奈良県北 や集合住宅への設置も可能です。当社は、2007 年度から 城郡王寺町)を新たに建設し、要素技術の 実証やシステムの効果検証を行っていく予定です。2013 年度末まで実証実験を行い、2015 年には実用レベルまで (財)新エネルギー財団が実施する実証研究に参画し、 2009 年度までに累計 80 台を実居住宅で設 置・運転して各種デー タを取得してきまし た。共同開発各社の技 術・ノウハウを活かし て、2010 年 代 前 半 の 実用化を目指してい ます。 家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC) 地域におけるエネルギー効率化の 取り組み ◆スマートエネルギーネットワーク スマートエネルギーネットワークとは、再生可能エネ ルギー、コージェネレーションを含む複数の電源を組み 合わせ、電気や熱を複数の需要家間で融通し、IT を活用 36 Osaka Gas Group Annual Report 2010 してエネルギー需給を最適に制御するシステムです。こ のシステムは、最終エネルギー消費の 50% 超を占めてい 太陽熱を活用した業務用ソーラー空 調システム「ソーラークーリング」 る熱の有効利用及び大規模ネットワークと分散型システ 業務用ソーラー空調システム「ソーラークーリング」 ムの協調、再生可能エネルギーの積極的な活用を目指す は、太陽熱を有効活用して、夏は冷房、冬は暖房を行うシ もので、情報通信でつながるコミュニティー内で大幅な ステムです。当社はこの実用化を進めるため、事業所内で 省エネ、CO2 削減を可能にします。 の実証試験を 2009 年 6 月より進めています。同システム 大阪ガスでは、2010 年 5 月より同ネットワークの構築 は、太陽熱を効率良く集めて温水に変換する太陽熱集熱 に着手、今後、データの取得・解析やシステムの改良を進 器と、コージェネレーションシステムの排熱利用機器とし めていきます。この実証事業では、既存の地域冷暖房施設 て開発された排熱投入型ガス吸収冷温水機「ジェネリン 「岩崎エネルギーセンター」を中心に 4ヵ所程度に設置す ク」で構成され、太陽熱から変換された温水を、夏はジェ る太陽光発電装置、5 件程度のお客さまのコージェネレー ネリンクの熱源として利用し、冷水を作り出すことで冷房 ションシステムを連携し、熱は各サイトで有効利用しな を行い、冬は温水を直接暖房に用いるものです。熱源とし がら電力融通することを想定した遠隔監視制御を実施し て太陽熱を優先的に活用するため、省エネルギー性の高 ます。本事業では約 3 割の CO2 削減を見込んでいます。 い冷暖房が実現できます。 温水(90℃) 太陽熱集熱器 都市ガス 吸収式ジェネリンク 冷房利用 冷水(7℃) ソーラークーリングにより約 30% の省エネ ガスの安定供給・安全・安心を支える技術 当社はお客さまの安全・確実なガス利用のための技術革 となり、検査全体の省力化、工期短縮が可能となります。 新に、日々、取り組んでいます。2010 年 3 月期は、球形ガ 当社は、今後も保安向上・安定供給を目指し、技術開発を スホルダーの表面欠陥検査に用いる新しい非破壊検査手 推進します。 法として、 「密閉型磁粉探傷検査」を開発しました。磁粉を 含む検査液を透明の検査シートに密閉することにより、塗 膜の割れなどの影響を受けることがなくなり、従来の磁 粉探傷検査で必要であった塗膜剥離などの前処理が不要 現場検査の様子 Osaka Gas Group Annual Report 2010 37 技術開発 環境保全に貢献する技術開発 ◆新規合成ガス製造プロセス (AATGプロセス) ◆炭鉱メタン(CMM)濃縮技術 大量に燃焼廃棄されている原油随伴ガスを原料として、 地球温暖化防止への貢献として、石炭採掘に伴って発生 洋上で合成ガス(H2+CO)を製造し液体燃料化(GTL 化) し、大気放散されている低濃度のメタンガスを濃縮するこ することにより、CO2 排出量の削減と資源の有効利用が とで、コージェネレーションやボイラーなどの燃料に有効 可能になります。当社は、日揮(株)と共同で、この洋上プ 濃縮装置」 利用することを可能とする「炭鉱メタン (CMM) ラントに適したコンパクトな合成ガス製造技術 AATG を開発し、中国遼寧省の阜新炭鉱でパイロット装置によ (Advanced Auto Thermal Gasification) プロセスのパイ る実証試験に成功しています※。2010 年 3 月期からは、早 ロット実証を進めています。また、AATG は CO2 を回収し 期の市場導入を目指し、さ やすいという特徴を活かし、化学プロセス用の合成ガス らなる性能向上とコストダ 製造装置として、新設や改修を計画されている国内化学 ウンに取り組んでいます。 メーカーに導入を提案するなど、商用化に向けた営業活 この技術には、空気とメタ 動も展開しています。 ンの混合ガスから選択的に ※本研究は、 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から メタンを吸着できる当社の 受託しています。 材料技術を活用しています。 原油随伴ガスを有効活用する技術 低濃度 CMM 濃縮装置(実証装置) ※ 2008 年 3 月期、2009 年 3 月期(独)新エネルギー・産業技術総合開 発機構(NEDO)研究協力事業 ◆エネルギー創出型廃水処理プロセス (水熱ガス化プロセス) 当社は水熱ガス化プロセスによって工場廃水を分解 し、従来の生物処理方法では不可能だった廃水処理を可 能にするとともに、同時にメタンを創出し燃料として利 ・年間CO2排出量 60万t-CO2 (洋上浮体式プラント1基あたり) ・年間CO2排出量 30万t-CO( 2 −30万t-CO2) ・GTL製造(原油増産) +3,000バレル/日 注:油田規模1万∼10万バレル/日 程度の場合 用可能にする技術を開発しています。半導体工場内にパ イロットプラントを設置し、2010 年 11 月より実証運転 を行う予定です。今後は、同種の化学工場向けの廃水処 理プロセスとして事業化を進めていきます。 ◆汚泥、生ごみを利用した高効率メタン発酵 技術(メタソリューション) 大阪ガスの独自技術である樹脂改質技術と超高温可溶 化技術(登録商標:メタソリューション)を活用し、生ご みと生ごみ回収に用いるごみ袋を まるごと 短時間で分 AATG パイロット装置 (実証装置) 解・発酵し、再生可能エネルギーとして回収できる高効 率バイオガス化技術を新たに開発しました。 行動観察/サービス・生産性の向上への取り組み 当社は、これまでノウハウの蓄積を「経験と勘」に頼る る生産性向上などを目指すもので、受託ビジネスとして 側面が強かったサービスについて、科学的手法を導入す もすでに多くの実績を上げています。2009 年 7 月には、 ることで生産性を向上させるサービスサイエンスの研究 この「行動観察」を用いたサービスサイエンスの普及促進 及び事業促進に取り組んでいます。これは、 「行動観察」 を目的とする大阪ガス行動観察研究所を設立、グループ に基づいた営業ノウハウの共有化、お客さまが商品を選 全体で「行動観察」ビジネスの拡大に取り組んでいます。 びやすい店舗レイアウト、働きやすい職場環境作りによ 38 Osaka Gas Group Annual Report 2010 大阪ガスグループの知的財産活動 知的財産戦略 技術開発が成長の重要な根幹のひとつであるという技術経営の視点に立ち、技術開発成果にかかわる知的財産活動に ついて、以下の 3 つの基本方針を定め、積極的に取り組んでいます。 重要技術分野における知的財産権 知的財産権活用による 「オープン・ の取得強化 イノベーション」の促進 グループ全体の知財力強化 家庭用エネルギーシステムなど、現在 自社の強い技術を積極的に外部へ開示 リスクマネジメントや人材育成など、 及び将来の大阪ガスグループの経営戦 するとともに、他社の優れた技術を効 知的財産に関するノウハウ・インフラ 略上重要と位置付けられる分野につい 果的に導入することで、自社の知的財 を大阪ガスグループ内で共有化し、グ て、事業強化に資する知的財産権の取 産権をキー技術として最大限活用する ループの知財総合力の向上を図ります。 得強化を図ります。 「オープン・イノベーション」 の促進を 図ります。 戦略的な特許出願 重要技術分野を中心に、パテント・ポートフォリオ・ 2010 年 3 月期の、当社グループの特許出願実績は 449 マネジメントなどの手法を用い、権利取得をすべき範囲 件となっています。 を特定して特許出願するなど、強い権利網の構築を進め ています。特に、燃料電池などの家庭用コージェネレー ションシステム関連では、戦略的な特許出願を行ってい ます。 大阪ガスグループの特許出願件数の推移 06.3 471 07.3 407 08.3 390 09.3 353 (件) 10.3 449 特許の保有及び活用の状況 現在、当社は家庭用エネルギー分野で、家庭用コー ジェネレーションシステムやミストサウナなどの特許を 大阪ガスグループの分野別保有特許件数 (2010年3月31日現在) 保有しています。また、業務用エネルギー分野では、コー ジェネレーションシステムやガス空調などの特許を、製 造・輸送・供給分野では、LNG タンク技術や非開削工法 などの特許を保有しています。さらに、材料技術分野で 2,240件 家庭用エネルギー分野 21% 業務用エネルギー分野 29% 製造・輸送・供給分野 21% 材料技術分野 16% その他 13% はファイン材料などに関する特許を保有しています。 保有特許については、自社事業への活用に加え、他社 へも積極的なライセンス供与を行っています。グループ 全体の保有する特許は、2010 年 3 月 31 日現在で 2,240 件 となっています。 知財リスクマネジメント・知財人材育成への取り組み グループ全体の知財リスク低減のため、リスク点検を 向上を図るため、社内外の講師による目的別・階層別の 継続して実施するとともに、知的財産活動のベースとな 研修の開催、知的財産に関するニュースや業務上の留意 る調査システムや情報の共有化を図っています。また、 点を解説したメールマガジンの配信など、さまざまな教 大阪ガスグループ社員の知的財産に関する知識のレベル 育・啓蒙活動を行っています。 Osaka Gas Group Annual Report 2010 39