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FTSE中国A株インデックスと グローバル・インデックス

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FTSE中国A株インデックスと グローバル・インデックス
FTSEリサーチ ホワイトペーパー
FTSE中国A株インデックスと
グローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
FTSE中国A株インデックスと
グローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な
市場参加者に適合させる
グローバルな株式投資を考える上で、中国株はその重要な一部
を形成している。
これは、世界最大かつ最も急速に成長する経済
の一つを反映する株式にアクセスしたいという投資家の希望の
現れである。現在、国際的な投資家の中国株エクスポージャーの
ほとんどは、
自由に取引できないA株ではなく、主として香港に上
場する株式クラスの保有によるものである。
本稿では、市場分類と市場アクセスの問題、さらに中国A株を
FTSEのグローバルなベンチマーク・インデックス・ファミリーに加
えることがもたらす影響について考察する。
市場参加者がA株と適格外国機関投資家(QFII)投資枠を自社ポ
ートフォリオやグローバル・ベンチマークに組み入れる準備を行
う過程において、FTSEは、移行用の一時的なインデックスやカス
タム・インデックスをお客様に提供し、その移行を支援していき
たいと考えている。
1
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
FTSEグローバル株式インデックス・シリーズ(GEIS)には中国株式
市場の中でも自由に取引できる、主に香港上場の銘柄が組み入
れられており、中国は組入比率第9位の国として、FTSE All-World
インデックスの2.10%、FTSE Global All Capインデックスの時価総
額合計の2.02%を占めている。
FTSEグローバル小型株
●約4,400銘柄
●47カ国
●正味時価総額は3.9兆米ドル
地域・国別インデックス
●47種類の国別インデックス*
●広範な地域別インデックス
FTSE All-World
●約2,800銘柄の大型株・中型株
●47カ国
●正味(浮動株調整後)時価総額
は29.8兆米ドル
グローバルな
セクター別インデックス
●10種類の業種
●19種類のスーパーセクター
●41種類のセクター
●114種類のサブセクター
FTSE Global All-Cap
市場セグメント
●FTSE先進国
●FTSEエマージング
●FTSE第一新興国
●FTSE第二新興国
●約7,200銘柄の大型株・中型株・
小型株 ●47カ国
●正味時価総額は33.8兆米ドル
先進国
小型株
第一新興国
中型株
第二新興国
大型株
出所:FTSE March 2013
2
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
中国株がグローバルなポートフォリオに占める規模はまずまずながら、 全体として、投資家はETFなどの取引可能な商品を通じて中国株へのアク
中国本土で設立され上場した企業の株式で、人民元建てで取引される中
セスを得ることを望んできた。2013年3月末現在、アジア、米国および欧
国「A株」は、現行の投資枠制限のために、多くの機関投資家にとってほと
州の上場ETFで、FTSEの中国株式インデックスに連動したETFの運用資産
んどアクセスできない状態になっている。
残高 1 は200億ドル近くに達していた。
この状況は、FTSEが、中国市場に対
こうした制限にもかかわらず、機関投資家は、中国A株を反映する上場投
あることを示している。
応する株式インデックスの国際的なプロバイダーとして主導的な地位に
資信託(ETF)、
とりわけFTSE中国A株50インデックスに連動するETFを引き
続き積極的に利用している。A株を組み入れたベンチマーク・インデック
スはまだ少ないものの、
こうしたETFは投資家が中国の国内株式市場へ
のエクスポージャーを確保することを可能にするものである。ETF市場は
多くの分野の主要投資動向を把握する貴重な手掛かりになり、特に、参
入が困難で管理に費用がかかる海外資産で有用性が高い。
グローバル
なETF資産残高が2兆ドルを超えるこの市場では、資産配分の決定を実行
に移すためにETFを利用することが多い長期の機関投資家が大勢を占め
る。
様々なFTSE中国インデックスに連動するETFの運用資産残高(100万ドル)
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
Apr 2012 May 2012 June 2012 July 2012 Aug 2012 Sept 2012 Oct 2012 Nov 2012 Dec 2012 Jan 2013 Feb 2013 Mar 2013
アジア
米国
欧州
1出所:モーニングスター、
FTSE
3
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
FTSE中国およびグローバル・ベンチマーク・インデックス
ETFs tracking FTSE China Indices
All AUM by ETF and Region US$(m)
BLACKROCK iShares FTSE/Xinhua China 25 USD
DEUTSCHE BANK db x-­trackers FTSE/XINHUA CHINA
25 ETF
AUM
者が抱く大きな疑問は、中国株がFTSE All-WorldインデックスやFTSE
1,115.59
Global All Capインデックスなどのベンチマークに組み入れ可能となるた
268.38
めに必要なステップはどのようなものか、
ということである。
この点に関し
AXA/BNP PARIBAS EasyETF FTSE Xinhua China 25 EUR
23.60
Sensible Asset Management Value China ETF
23.54
Europe total
グローバル市場に占める中国株の現在の地位を勘案すれば、市場参加
1,431.12
て投資家が直面する主な問題は、市場アクセスと、自由に取引可能な株
式の入手可能性である。
中国株式市場の中でも容易にアクセスできる部分は現在、FTSE Global All
Capインデックスに組み入れられており、その浮動株時価総額は7,270億
ドルである。FTSE中国All Capインデックスの56%近くをH株が占めてい
る。H株というのは、中国本土で設立され、香港に上場している企業の株
BLACKROCK iShares FTSE China 25 Index Fund
PRO-­FUNDS ProShares UltraShort FTSE China 25
PRO-­FUNDS ProShares Ultra FTSE China 25
United States total
7,387.09
116.93
44.24
7,548.27
式である。
これに次いで大きな部分を占めるのはレッドチップで、
これは
中国本土外で設立され、大株主が政府系機関である企業である。
現在、
レッドチップがFTSE中国All Capインデックスに占める比率は24%で
ある。
さらに、最近FTSEのインデックスにおける国籍が香港から中国に変
更されたP株がこのインデックスの17%を占める。P株は、中国本土外で
設立され、香港に上場し、中国本土の個人が経営権を有し、事業所と収益
BLACKROCK iShares FTSE A50 China Index ETF
7,966.27
CSOP FTSE China A50 ETF
2,699.65
Samsung KODEX FTSE China A50 ETF
源が中国本土にある企業である。
レッドチップとP株はともに、中国本土
の売上高・資産の割合も考慮して定義されている。
159.59
最後に、香港ドル建ておよび米ドル建てのB株が、FTSE中国All Capインデ
HSBC PROVIDENT Hang Seng FTSE China 25 Index ETF
27.60
ックスの3%を占めている。B株は中国本土で設立され、上海証券取引所
BLACKROCK iShares FTSE China (HK Listed) Index
33.53
CIMB Xinhua China 25 ETF
9.64
Asia total
10,896.27
TOTAL FTSE China ETF AUMs
19,875.66
出所:モーニングスター、FTSE
または深圳証券取引所に上場されている企業の株式である。
以上の各種中国株を合計してもわずか350社にすぎないが、
これがFTSE
Global All Capインデックスにおける現在の中国のウエイトのすべてに相
当する。
A株市場の成長
A株は、中国本土で設立され、上海証券取引所と深圳証券取引所のいず
れかに上場する企業の株式である。
この人民元建て株式のグローバル・
ベンチマークへの組み入れは、2,100社を超える企業で構成されるA株市
場の開放にかかっている。
A株の上場総数はこの10年間で74%増加した。
この増加の大半は深圳証
券取引所によるもので、深圳証券取引所の新規上場はこの10年間で492
件から1,171件へと2倍以上に増加した。
これと同じ期間に、上海証券取引
所の上場件数は、比較的緩やかなペースで、721件から944件へと約31
%増加した。両証券取引所の売買代金は4,000億ドル足らずから4.6兆ド
ル超へと拡大した。
4
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
深圳証券取引所(SZSE)および上海証券取引所(SSE)におけるA株企業数
2,500
2,000
1,500
922
884
1,000
500
1118
944
1173
1004
826
491
829
522
531
2003
2004
2005
772
834
566
852
657
857
727
863
782
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
上海A株
出所:深圳証券取引所、上海証券取引所、FTSE
深圳A株
このような上場件数と売買代金の大幅な拡大にあわせて、A株の時価総
額合計額もそれ相応に増加している。2013年3月末時点では、深圳証券
取引所と上海証券取引所に上場するA株の時価総額は全体で、浮動株ま
たは外国人保有規制を考慮しないで、約3.6兆ドルに達した。
5
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
適格外国機関投資家(QFII)のステータスと最近の変更
からの参加を奨励するものである。2013年3月6日現在、同制度は200億
A株市場は上場企業数と時価総額の両面において大きく成長したもの
人民元から2,700億人民元(435億米ドル)に拡大し、QFII制度と同様に幅
の、外国人による上場銘柄への投資は適格外国機関投資家(QFII)制度の
下で依然管理されている。2002年11月に初めて導入された同制度は、中
国証券監督管理委員会(CSRC)の所管である。CSRCが一連の基準を満た
した申請者に対してライセンスを付与し、国家外貨管理局(SAFE)が各申
請者に対して投資枠の割当時期と金額を決定している。
制度の創設以来、QFIIには多くの修正が加えられた。最も大きな変更の一
つは、CSRCが2012年7月にQFIIになるための基準を緩和したことであっ
た。
ファンドマネージャーまたは保険会社については、必要な営業年数を
広い資産に投資できるという恩恵を享受している。2013年7月、CSRC、中
国人民銀行およびSAFEは、RQFII制度を香港、台湾からシンガポール、ロ
ンドンにまで拡大する予定であると発表した。
さらに、外国人のA株保有限度が20%から30%に引き上げられた。
しか
し、
これらの重要で好ましい変更が投資枠の要件に加えられたものの、
投資フローを妨げる障害が多数あり、
この点に注目することが大切であ
る。
5年から2年に、証券会社については30年から5年に引き下げた。
また、最
QFII/RQFIIの認定と投資枠に関する最近の傾向
低限必要な運用資産額もファンドマネージャーと保険会社については
QFIIの投資枠は年月を重ねて拡大されてきたが、それらは一般に大手機
関投資家、アセットマネージャー、年金基金、証券会社向けである。最近
の投資枠の急増は割り当ての一層の拡大と認定要件の変更を反映した
ものであり、2013年7月初旬現在、QFIIの投資枠は435億ドルに近い水準
に達している。
50億ドルから5億ドルに、証券会社については100億ドルから50億ドル
に引き下げた。従来、QFIIステータスを申請する商業銀行は資産総額で
世界のトップ100社内に入っていなければならなかったが、
この要件が
大幅に変更され、営業年数10年、有価証券資産額50億ドル以上、ティア1
資本3億ドル以上あればよいと改められた。
新たな規制の下では、株価指数先物、社債、その他の国内銀行間債券な
ど、
より幅広い資産も対象商品に加えられた。2012年4月には、QFIIの投
資枠総額も300億ドルから800億ドルへと大幅に増加した。
市場参加者は、人民元QFII制度(RQFII)が別途創設されたことにより拡大
した。その結果、オフショアに人民元預金を持つ機関投資家が再び中国
国内市場に戻って投資できるようになった。通常、RQFIIの承認枠を利用
2011年末以来、新規申請者のペースが著しく加速し、2013年6月末現在
でQFIIの認定・投資枠を受けた機関投資家が229社となったことは特筆
に値することであり、興味深い。QFIIの認定を受けた機関投資家のうち
150社がアセットマネージャーと推定され、その多くがつい最近の申請者
である。2003年から2006年末にかけて認定を受けた最初のQFII 51社の
中では、
アセットマネージャーは19社にすぎなかった。2012年だけで71
社がQFIIの認定を受け、そのうち60社がアセットマネージャーであった。
こうした傾向は、長期機関投資家がA株市場への参入にますます魅力を
感じるようになっていることを示している。
してオフショアA株ファンドや債券ファンドを設定するという方法で海外
6
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
QFII数の推移
250
200
QFII数
150
100
50
Mar 2013
Sep 2012
Mar 2012
Sep 2011
Mar 2011
Sep 2010
Mar 2010
Sep 2009
Mar 2009
Sep 2008
Mar 2008
Sep 2007
Mar 2007
Sep 2006
Mar 2006
Sep 2005
Mar 2005
Sep 2004
Mar 2004
Sep 2003
Mar 2003
0
出所:CSRC
ETF資産とA株デリバティブのトレンド
投資家が中国株に魅力を感じていることは、上場投資信託(ETF)市場を
通じて資金が流入していることを見れば、明らかである。H株とP株への投
資が比較的容易であるにもかかわらず、米国と欧州の投資家は、低コスト
手段であるETFを選択している。
このような事情から、FTSE中国25インデ
ックスをベンチマークとするETFの資産が増加している。米国で上場され
ている最大の中国ETFは、2013年4月末現在、設定以来の資金流入額が
66億ドルを超えた2。
よって実行されている。
この先物が2006年9月に上場されたとき、取引は
注目を浴びることなく静かに始まった。シンガポール取引所が2010年に
A50 先物契約の仕様を変更し、2012年にCSRC、SAFE、米国商品先物取引
委員会(CFTC)の認定を受けて市場アクセスが拡大されると、A50先物は
取引額と建て玉の双方において大幅に増加した。2012年末には、建て玉
は20億ドル強に達し、概ね安定的に推移していることから、長期投資であ
ることが示唆される。
また、iシェアーズA50 ETFのオプションの建て玉もほ
ぼ3倍に急増している3。
A株がコア・ベンチマークにまだ含まれていないことを考えると、FTSE中
国A 50インデックスを通じてA株市場をトラックするETF資産の成長が、
よ
り興味深く思われるかもしれない。ETFの発行体は、RQFIIの割り当てを受
けた発行体を除き、通常、約束手形(Pノート)の形態を利用してA株市場
にアクセスしている。2011年末から2013年3月末にかけて、市場は37%
近く成長して75億ドルを超えている。
この場合、投資家はETFを利用して、
米ドル、人民元QFII、QFIIの割り当てが厳格に管理されている市場にアク
セスしている。
投資家がA株に投資するもう一つの方法はデリバティブを経由すること
である。
これはFTSE中国「A50先物」に含まれるシンガポール上場先物に
2出所:モーニングスター、
FTSE
3出所:シンガポール取引所
7
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
QFIIおよびRQFIIの投資枠、FTSE中国A株50インデックスの先物およびETFオプション建て玉
45
500,000
40
450,000
400,000
350,000
30
300,000
25
250,000
20
200,000
15
建て玉の枚数
QFII投資枠(10億米ドル)
35
150,000
10
100,000
5
50,000
0!"
0
Sept 2010
Mar 2011
出所:CSRC、SAFE、
シンガポール取引所
Sept 2011
Mar 2012
Sept 2012
Mar 2013
QFII投資枠(10億米ドル)
A株50インデックス先物建て玉
iシェアーズFTSE中国A50インデックスETFオプション建て玉
RQFII投資枠(10億米ドル)
市場アクセスと各国の市場分類
ず、世界銀行の一人当たり国民総所得をもとにした国の経済的重要度の
分類から始まる。カテゴリーは3つあり、全ての国は低所得国、中所得国
(中所得国はさらに下位、中位、上位に分類される)、高所得国のいずれ
か一つに分類される。
この基準によると、中国は現在「上位中所得国」に
分類される。信用力のランキングに関しては、中国は現在、投資適格に分
類されている。
グローバルな株式ベンチマーク・インデックスで重視すべき側面に、国際
的な市場参加者が投資しやすい機会集合の反映がある。FTSEでは、
グロ
ーバル・ベンチマークへの各国の組み入れを最適に行う方法を分析する
ため、詳細な基準に従って各国を「先進国」、
「第一新興国」
「第二新興国」
「フロンティア」の各市場に分類する公式のプロセスを採用している。
こ
のプロセスを統括するFTSE市場分類委員会(Country Classification
Committee)は、
アセットオーナー、機関投資家、投資銀行、投資コンサル このプロセスでは、さらに市場の質に関する複数のテストが実施される
タントなどの業界経験豊富な実務者で構成される独立した委員会であ が、海外市場参加者の投資可能性を判断する上で最も重要な基準の一
つが市場アクセスである。市場の質に関する基準は、先進国、第一新興
る。
国、第二新興国、
フロンティアのステータスを各国に付与する上で重要で
ある。
現在FTSE Global All CapおよびFTSE All-Worldインデックスに含まれる中国
株式(H株、
レッドチップ、P株、B株)は第二新興国に分類されている。A株
がFTSEのグローバル・ベンチマーク・インデックスへの組み入れ対象と見
なされるためには、まず市場分類を行う必要がある。
このプロセスはま
8
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
FTSEの市場分類の枠組み
以下のファクターに基づき先進国、
新興国、
フロンティアのステータスを決定
市場評価(Quality of Markets)に関する
基準は大きく以下の4項目に分けられる
GNIで測定した経済的ステータスおよび
経済の相対的な豊かさ
市場および規制環境に関する7つの基準
市場の質に関する21の基準
カストディおよび決済に関する
6つの基準
国の規模に関する組み入れ要件
ディーリング環境に関する7つの基準
デリバティブ市場に関する1つの基準
市場評価(Quality of Markets)に関するマトリックスの分析分野は大きく4
つに分けられる。市場および規制環境に関する基準でカバーされるの
は、投資家保護(正式な規制当局の有効性から少数株主の法的扱いま
で)、外国人による保有制限、資本の自由移動、株式および為替市場の整
備状況などである。
カストディおよび決済に関する基準では、投資家が受
ける可能性が高いサービスとその効率性、加えて貸株に係る取引、決済、
清算の柔軟性を評価する。さらに、ディーリング環境に関しては、
ブロー
カーのサービスの厚み、市場全体の流動性、取引コスト、空売り、取引所
外取引、市場の透明性などの観点から検証する。
フロー規制と言ってよいだろう。資本フローは徐々に改善しているが、資
本流入出のタイミングに関する制約は引き続き国際的投資家にとって大
きな課題となっている。
資本の投資や引き揚げを自由に行えるようになれば、QFII投資家の現在
の市場アクセスは劇的に変化するだろう。
これは特に、日中取引や、日次
流動性を提供する効率的な設定や償還プロセスが特徴となっているETF
のようなオープンエンド型ファンドにとって重要である。他にも、QFIIのキ
ャピタルゲインの税法上の取り扱いが不透明な点も課題である。
以下の表に簡単にまとめたように、中国は第一新興国または第二新興国
の主要基準の多くをクリアしており、FTSE All-Worldベンチマーク・インデ
ックスに組み入れ可能な水準にある。QFIIやRQFII制度の拡充に伴い市場
アクセスは最近改善傾向にあり、
より開かれた投資環境の実現に寄与し
ている。
FTSEは、資本市場の最近の動向や進化を反映するため、国別の市場分類
の枠組みの様々な側面や基準を継続的に見直し、評価している。現在、中
国およびA株市場の正式な市場分類を阻んでいる項目は、実質的に資本
9
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
基準
先進国
第一新興国
第二新興国
世界銀行の一人当たりGNIにもとづく分類
中国A株
上位中所得国
信用力
投資適格
市場および規制環境
正式な株式市場規制当局が市場を活発にモニタリング
(SEC、FSA、SFCなど)
x
x
x
制約あり*
資本投資または資本やインカムの本国還流に適用される
大幅な制限や罰則はない
x
x
x
条件未達
自由で十分に発達した株式市場
x
x
決済 ― 取引フェイルがほとんどない
x
x
x
パス
カストディ − 高品質のカストディ・サービスが提供される
だけの十分な競争
x
x
x
パス
清算および決済 − T+3、T+5(フロンティア)
x
x
x
T+3
カストディ − 国際的投資家が利用可能なオムニバス口座
の制度
x
x
ブローカー − 質の高いブローカー・サービスが提供され
るだけの十分な競争
x
x
x
パス
流動性 − 大規模なグローバル投資に対応できるだけの
広範な市場流動性
x
x
x
パス
取引コスト − 黙示的、明示的なコストは妥当で競争力が
ある
x
x
x
パス
効率的な取引メカニズム
x
透明性 − 市場の深さに関する情報/可視性およびタイム
リーな取引報告プロセス
x
パス
カストディおよび決済
パス
ディーリング環境
パス
x
x
パス
市場規模
時価総額(百万ドル、2012年12月31日現在)
上場企業の総数(2012年12月31日現在)
3,742,914
2117
* 現在見直し中。
出所:FTSE
10
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
FTSE中国インデックスに及ぼす中国A株の影響
最終的に中国の市場分類にどのような変更がなされるとしても、A株を中
国All Capインデックスに追加することによる影響を考察することは可能で
ある。
中国国内株式市場の現在と将来の状態を反映したシナリオとしては4つ
のものがある。FTSE Global All Cap国別インデックスは、投資可能市場の
98%をカバーすることを目指しながら大型株、中型株および小型株を代
表するよう設計されている。
この基準によると、2013年3月末現在の合計
2,115銘柄中、1,398銘柄のA株がインデックスの適格銘柄となると予想さ
れる。
FTSE中国All Capインデックス
構成銘柄数(ウエイト、%)
FTSE中国All Cap
インデックス 108
(P株を含む) (55.90)
500億ドルの
QFII投資枠 1,398
/30%の外国人 (6.41)
持株比率制限
53
(24.33)
109
(52.06)
55
(22.70)
5,000億ドルの
QFII投資枠 1,398
/30%の外国人 (40.65)
持株比率制限
109
(33.01)
投資枠なし
/30%の外国人 1,398
持株比率制限 (49.99)
投資枠なし
/外国人持株 1,398
比率制限なし (59.89)
0
出所:FTSE
40
60
76
(1.79)
137
(10.15)
55
(12.13)
109
(22.31)
20
76
(2.82)
137
(16.01)
55
(14.39)
109
(27.82)
65
(2.91)
124
(16.86)
55
(9.73)
137
(8.55)
137
(6.86)
80
76
(1.51)
76
(1.21)
100
A株
H株
レッドチップ
P株
B株
11
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
これらのA株を追加するという仮定に基づいた影響度を検討するために
は、500億ドルのQFIIとRQFIIの投資枠から出発する必要があったが、
これ
が5,000億ドルにまで拡大した。別のシナリオは、開放的だが30%の外国
人持株比率制限のあるA株市場へのアクセスを調べることである。
これに
よれば、
これら1,398社の投資可能時価総額は7,800億ドル近くになる。
最後に、極めて長期的なシナリオとして、投資枠の配分や外国人持株比
率制限のない投資環境が想定され、この場合、浮動株時価総額は1兆
8,000億ドル規模となる。
これらの異なるシナリオによれば、改革や投資枠によって投資可能時価
総額が拡大するにつれて、中国All Capインデックスの構造が大幅に変化
することは明らかである。現在の投資枠に基づくA株の当初組み入れで
は、予想されるオール中国インデックスの6.41%をA株が占めることにな
るのに対して、構成銘柄の総数は現在の350から1775に増加する。
A株組み入れ後
中国
構成銘柄数
A株
組み入れ前
500億ドルのQFII 5,000億ドルのQFII 投資枠なし/30%の 投資枠なし/外国人
投資枠/30%の
投資枠/30%の 外国人持株比率制限
持株比率制限 なし
外国人持株比率制限 外国人持株比率制限
350
1,775
1,775
1,775
1,775
726.87
779.94
1,229.94
1,459.50
1,820.06
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
2.02
2.17
3.38
3.98
4.92
15.41
16.37
23.58
26.80
31.35
FTSEアジア太平洋All Cap
9.55
10.19
15.18
17.52
20.94
FTSEエマージングAll Cap
19.36
20.50
28.91
32.55
37.57
正味時価総額(100万米ドル)
インデックス・ウエイト
(%)
FTSE中国All Cap
FTSE Global All Cap
FTSEアジア太平洋All Cap(日本を除く)
出所:FTSE
投資枠を5,000億ドルに拡大すると、A株のウエイトは40%強に達し、投
資可能時価総額は合計1兆2,000億ドルを上回る。
このシナリオの下で
は、現在、インデックスのほぼ56%を占めるH株のウエイトが大幅に低下
し、33%となる。大型H株の多くは対応するA株を有するため、構成銘柄に
一定程度の重複が発生する点に注意すべきである。
柄のA株がインデックスの適格銘柄となると予想される一方、中国株式市
場全体の投資可能時価総額の拡大により、他の銘柄も追加されることに
なろう。
投資枠のない市場という長期的観点に立って仮定した場合、A株のウエイ
トは中国All Capインデックスの50%近くに達し、投資可能時価総額は1兆
5,000億ドル程度となる。投資枠も外国人持株比率制限もないという最
後のシナリオの下では、A株の予想ウエイトはインデックスの約60%に達
し、インデックスの時価総額はさらに増加して1兆8,000億ドルとなる。
こ
うした基準に基づくと、2013年3月末現在の合計2,115銘柄中、1,398銘
12
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
グローバル・インデックスに対する中国A株の影響
A株市場および世界の株式市場における中国の地位
中国がFTSE All-Worldインデックスの適格銘柄に分類されるための基準
を満たしていると仮定した場合、上記と同じシナリオの下でそのウエイト
を評価することが可能となる。500億ドルの利用可能投資枠の水準で
は、A株を追加してもグローバル・インデックスにおける中国のウエイトに
はごくわずかな影響しかない。
世界の株式市場における中国の順位に関して最も際立った側面は、市場
アクセスや自由な資本移動の面で比較的軽微であるが重要な改善がな
されるだけで、順位が大幅に変化し得るということである。現在、中国の
株式市場は、A株を除く既存株式の浮動株時価総額で世界第9位の規模
である。現在の小規模なQFIIやRQFIIの投資枠を加えても順位に変化は生
じない。
投資枠を5,000億ドルに拡大すると、FTSEエマージング・インデックスに
おける中国のウエイトには相当の影響があり、現在の19.9%から30.9%
に上昇する。FTSE All-WorldやFTSE Global All Capインデックスなどのグロ
ーバル・ベンチマークでは、
ウエイトはそれぞれ2.1%から3.7%、および
2.0%から3.4%に上昇する。
国
投資枠を5,000億ドルに変えると、30%の外国人持株比率制限を考慮に
入れても、中国は世界第5位の株式市場となる。FTSEのグローバル・イン
デックスにおける変化は、中国が関連する市場分類基準、
とりわけ自由な
資本移動に関連する基準を満たすかどうかに左右される。長期的観点に
立てば、明らかに、国際的な市場参加者は、そうした状態の実現とそれに
伴う株価指数の変化が持つ意味合いを理解する必要がある。
500億ドルのQFIIと
5,000億ドルのQFIIと
投資枠なしと30%の
30%の外国人持株比率 30%の外国人持株比率 外国人持株比率制限を
制限を含めた中国
制限を含めた中国
含めた中国
A株を除いた
オール中国
投資枠なし、
外国人持株比率制限
なしの中国
国
米国
1
1
1
1
1
米国
日本
2
2
2
2
2
日本
英国
3
3
3
3
3
英国
カナダ
4
4
4
4
4
中国
オーストラリア
5
5
5
5
5
カナダ
スイス
6
6
6
6
6
オーストラリア
フランス
7
7
7
7
7
スイス
ドイツ
8
8
8
8
8
フランス
中国
9
9
9
9
9
ドイツ
韓国
10
10
10
10
10
韓国
13
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
変化するインデックス環境のためのソリューション
市場参加者にとっての課題は、いかにしてこうした大きな変化に最適に
対処するかである。
これは、すでにQFIIの投資枠へのアクセスを有する多くの既存投資家にと
ってますます重要になっている。QFIIの投資枠が拡大し、
より広くアクセス
可能となるにつれ、市場参加者が、拡大した自らの投資ユニバースを適
切にベンチマーク評価できることが極めて重要になるだろう。
中国市場に注目した株式インデックスの国際的なプロバイダーとして主
導的な地位にあるFTSEならば、市場参加者にA株を組み入れたグローバ
ルなベンチマーク・ソリューションを提供できる十分な態勢が整ってい
る。FTSE中国インデックス・シリーズは、一連の株式投資機会を網羅する
包括的なインデックス・ファミリーであり、FTSE中国A 50インデックスや
FTSE中国25インデックスが含まれている。
.
現在の環境では、QFIIの投資枠は厳格に規制され、割当てられているた
め、投資枠が浮動株として取り扱われることはないだろう。中国A株市場
は、主に資本移動の制限のために市場分類に関しても未分類のままであ
る。だからと言って、現在のQFII市場参加者に、そのポートフォリオの内容
を十分反映させられる適切なベンチマークを提供する必要性がなくなる
わけではない。
現在グローバルなベンチマークを使用しているQFII市場参加者は、FTSE
中国A株All-Shareインデックスを使用して、カスタム・インデックス内でA
株に対する幅広いエクスポージャーを反映させることができる。A株エク
スポージャーのウエイトは、ポートフォリオ全体における該当QFII割当額
に応じて設定可能である。
このような解決策を取れば、市場参加者は自
社ポートフォリオのパフォーマンスを、自社独自の要件を満たすインデッ
クスと比較して的確に評価することが可能になるだろう。
政府系ファンド、保険会社、資産運用会社、その他の機関投資家の間で
QFIIの投資枠に違いがあることから、あらゆる市場参加者のA株への配分
に共通の一律なインデックスを作ることは不可能である。カスタム・イン
デックスならば、FTSEの厳密な手法や、独立したインデックス委員会、ガ
バナンスといった基礎の上に構築されるという利点もある。
14
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
中国A株をFTSE GEISに組み入れる
中国がFTSEグローバル株式インデックス・シリーズに必要な基準を満た
した場合、正式な市場分類のプロセスが開始されることになる。独立した
市場分類委員会がウォッチリストに記載された国の変更を勧告する。中
国A株は現在、第二新興国市場のウォッチリストに含まれており、
このリス
トは毎年見直される。分類を変更するためには、その後、FTSEの最上位の
委員会であるFTSEポリシー・グループにより9月の会合で承認される必要
がある。
9月に発表が行われたとすると、その国の変更後のインデックスへの移行
は12カ月後に開始されることになる。発表からインデックス組み入れま
でのこの期間は、市場参加者がポートフォリオ移動の計画と対応のため
に要する時間を見越したものである。中国A株の分類が変更され、FTSE
All-Worldインデックスに組み入れられ、投資枠が5,000億ドルであるとい
うシナリオについて考えると、影響を受けるインデックスすべてにおい
て、大幅なウエイトの変更が生じることになるだろう。前述のように、FTSE
エマージング・インデックスにおけるウエイトは現在の19.9%から30.9%
に、FTSE Global All Capインデックスにおけるウエイトは2.0%から3.4%に
上昇すると見込まれる。
このような重大な市場分類の変更後にはインデックスに大きな調整が生
じることから、FTSEは多数の移行用インデックスを作ることになるだろう。
見積りベースの移行用インデックスが利用に供されるのは、通常、発表か
ら最終的な実施までの間である。
これは、最終的な完了までのスケジュー
ル次第で18∼24カ月となる可能性がある。
こうしたインデックスにより、
インデックス組入比率の変更への対処を円滑に行うことができ、市場参
加者は投資を移動させるタイミングを効率的に検討することができよう。
移行用インデックスは、市場参加者に選択の自由と柔軟性とともに、イン
デックス変更プロセスの透明性も提供するものである。
15
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
要約 − 中国A株とグローバル・インデックス
国際的な投資家は現在、中国の株式市場にH株、
レッドチップ、P株および
B株を利用して参加しており、
これらの株式はすでにFTSEのグローバルな
ベンチマーク・インデックスに組み入れられている。9番目に大きな株式
市場である中国株がFTSE All-Worldインデックスに占めるウエイトは2.1%
である。中国A株市場は規模は大きいものの、市場アクセスの点で相当制
限されている。現在、投資には投資枠の仕組みが適用されており、
この仕
組みはここ数年で変化し、QFIIの資格と投資枠を取得するために要求さ
れる条件が全般に緩和されたものの、やはり大きな課題が残る。
中国に投資する国際的な機関投資家にとって鍵となるのは、自由に取引
可能なA株の入手可能性とアクセス性であり、資本移動と投資期間に制
限のない状況が求められる。
これが、中国A株と現在の市場分類プロセス
にとって大きな制約の一つとなっている。QFIIとRQFIIへの割り当てが行わ
れた後、自由で制限のない資本移動が認められるようになるとすれば、
機関投資家の観点から見て、適切なディーリング環境の創出に大きく役
立つことになるだろう。
投資枠が外部投資家に利用可能となるにつれ、個々の投資家のA株市場
へのエクスポージャーを反映したカスタム・インデックスを作る必要性が
高まっている。FTSEは、既存のFTSE中国インデックス・シリーズを通じて、
国際的な市場参加者に役立つベンチマークを構築する経験を豊富に蓄
積している。投資家による国際的な資産クラスへのエクスポージャー管
理を支援するために設計された包括的なFTSEのインデックスの一部とし
て、中国A株を見積りベースで組み入れたカスタム・インデックスも提供
する。
中国A株市場の長期的な見通しとして、
自由な資本移動とQFIIの制限緩和
が進むと、株式市場のこの部分もFTSEのグローバルなベンチマーク・イン
デックスに組み入れることとなる可能性があるだろう。
自由で制約のない
市場アクセスは、
グローバルなベンチマーク・インデックスに組み入れる
ために不可欠な条件であり、特に、市場アクセスと流動性が重要な要素
であるETFに広く用いられるインデックスではなおさらである。
CSRCとSAFEが国際的な投資家の国内株式市場への参加拡大を目指す措
置を実施する中、FTSEのグローバルなベンチマーク・インデックスは中国
A株を組み入れる方向で変化していくであろう。見積りベースの移行用イ
ンデックスが提供されることは、A株をグローバルな株式ポートフォリオ
に組み入れようとする投資家にとって、ベンチマーキングに関する柔軟な
ソリューションとなろう。
16
FTSE中国A株インデックスとグローバル・インデックス
ベンチマークを国際的な市場参加者に適合させる
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