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事例12 経 済 的 虐 待 に対 し、成 年 後 見 制 度 を活 用 した例 認 知 症 のある 80 代 の男 性 。 60 代 の妻 も精 神 疾 患 があり、判 断 能 力 不 十 分 。 知 人 と称 するものが生 活 支 援 として介 入 、本 人 の通 帳 やカードを管 理 し、経 済 的 虐 待 が行 われていると、ケアマネジャーが地 域 包 括 支 援 センターに通 報 す る。 本 人 の実 弟 と連 携 し成 年 後 見 の申 立 を検 討 。 今 後 、 法 的 な 対 応 が必 要 と な る可 能 性 があ る た め 、 後 見 人 候 補 者 を 弁 護 士 に依 頼 し、後 見 の申 立 を支 援 した。 事例 13 介 護 の放 棄 等 の虐 待 に対 し、やむを得 ない措 置 を行 った例 60 代 女 性 。うつ病 とリウマチによりねたきりの状 態 。40 代 の息 子 と2人 暮 らし。 年 金 の搾 取 及 び適 切 な医 療 ケアがなされていない。 介 護 サービスも経 済 的 理 由 で息 子 が拒 否 。 息 子 が 2 日 帰 宅 せず、家 も施 錠 されたままなので本 人 の安 全 確 保 には分 離 不 可 欠 と判 断 し、特 別 養 護 老 人 ホームにやむをえない措 置 を行 った。 事例 14 警 察 と連 携 して対 応 した例 60 代 女 性 。要 介 護 度 自 立 。30 代 の息 子 と2人 暮 らし。 息 子 はサラ金 に借 金 あり、経 済 的 虐 待 及 び暴 力 、暴 言 もある。 本 人 が 度 重 な る暴 力 に 耐 え ら れず 、 民 生 委 員 宅 に助 け を 求 め、 在 宅 介 護 支 援 センターに連 絡 し、保 護 。 本 人 の希 望 により 養 護 老 人 ホームへ短 期 入 所 。息 子 には地 域 包 括 支 援 センタ ー 職 員 が事 実 確 認 。 職 員 が本 人 と 同 行 し、 警 察 で息 子 の 暴 力 に つ い て 相 談 す る。 本 人 の希 望 により帰 宅 する際 、警 察 官 と地 域 包 括 支 援 センター職 員 が同 行 し 息 子 と話 し、再 発 に対 する厳 重 注 意 を行 った。 以 後 、警 察 を含 めた関 係 機 関 で定 期 的 な訪 問 を行 い再 発 防 止 に努 めている - 45 - 3 老人福祉法に基づく措置の実施 国P62-70 (1)措置制度の概要 介護保険制度の導入により、高齢者福祉サービスは基本的に契約による利用 形態ですが、介護保険法施行後も老人福祉法において、養護者の高齢者虐待等 により、介護保険サービスの利用や居宅において養護を受けることが困難な高 齢者に対し、市町村が職権をもって必要なサービスを提供するために、措置制 度が存続しています。 措置制度には、「養護老人ホームへの入所」と、「やむを得ない事由による措 置」があります。 (2) 養護老人ホームへの入所(法第11条第1項第1号) ①趣旨・目的 「養護老人ホーム」は、環境上の理由及び経済的な理由により居宅にお いて養護を受けることが困難な高齢者を、市町村が職権により入所の措 置を行います。 なお、養護老人ホームの措置入所には、介護認定の有無や介護度は直 接関係ありません。 高齢者虐待も、養護老人ホームへの措置理由の 1 つになると考えられ ます。 ②入所措置の基準(老人ホームへの入所措置等の指針について【平成 18 年3 月31日老発第0331028号老健局長通知】より抜粋) 次のア及びイの両方に該当する必要があります。 ア、環境上の理由 健康状態:入院加療を要する病態でないこと 環境の状況:家族や住居の状況など、在宅において生活することが困 難であると認められること イ、経済的理由 生活保護世帯、市町村民税所得割非課税世帯若しくは災害その他の事情 により、生活の状況が困窮していると認められる世帯であること。 - 46 - (3) やむを得ない事由による措置 (法第 10 条の4第1項及び第 11 条第1項第2号) ①趣旨・目的 やむを得ない事由(高齢者虐待等)により、契約によって必要な介護保 険サービスの提供を受けることができない 65 歳以上の高齢者に対して市 町村が職権をもって介護保険サービスの利用に結びつける制度です。 当該措置は高齢者の福祉を図るために行われるべきものであり、介護保 険サービスの利用について家族が反対していても、高齢者の受診拒否によ り要介護認定ができない場合等も、市町村が職権で利用決定できるので、 高齢者虐待ケースの最終的な手段として最も有効な制度です。 ②やむを得ない事由として、次のような場合が想定されています。 (老人ホームへの入所措置等の指針について【平成 18 年3月31日 老発第0331028号老健局長通知】より抜粋) ア、事業者と「契約」して介護サービスを利用することや、その前提となる 市町村に対する要介護認定の「申請」を期待できない場合 イ、65 歳以上の者が養護者による虐待を受け、保護される必要がある場合 又は 65 歳以上の者の養護者がその心身の状態に照らし養護の負担を軽 減する必要がある場合 ③措置の内容 市町村は必要に応じて、次のサービスを提供することができます。 なお、居宅サービスについては、市町村の義務ではなく、実施するしな いは、市町村の任意となりますが、特別養護老人ホームへの入所について は、市町村は必要があれば、入所措置をとることが義務づけられています。 ア、居宅サービスの利用(法第10条の4第1項) a 訪問介護 b 通所介護 c 短期入所生活介護 d 認知症対応型共同生活介護 e 小規模多機能型居宅介護 イ、特別養護老人ホームへの入所(法第11条第1項第2号) - 47 - ④「やむを得ない事由による措置」の手順 国 P66-67 「やむを得ない事由による措置」の手順は次のとおりです。ただし、緊 急時で、要介護認定が間に合わない場合や要介護認定が困難な場合等は、 要介護認定する前に(介護保険制度を利用しないで)市町村が措置を開 始し、事後に要介護認定を行うことができます。 18 年 4 月 1 日からは、短期入所生活介護利用についても、虐待の場 合、措置による入所かどうかを問わず、定員を超過しても減額されない こととなりました。 手順 内容 ①発見 通報、相談等により高齢者虐待の発見 ②調査 保健師等の専門職が訪問調査等により実態調査を実施 ③要介護認定 高齢者が要介護認定を受けていない場合は、市町村の職権で要介 護認定を実施 ④措置決定 ②及び③に基づき措置決定 ⑤サービス提供 市町村が事業者に委託し、介護保険サービスの提供開始 ⑥費用支弁 1割(利用者負担分)を市町村が措置費で支弁(注1) ⑦費用徴収 高齢者の状態像に応じて市町村が費用を徴収(注2) ・特別養護老人ホームへ入所したことで、養護者から離脱できた場 ⑧やむを得な い事由の解消 合 ・成年後見制度の活用により、本人の意思で契約できる状態になっ た場合 ⑨措置解除 措置を解除し、本人は通常の契約による介護保険サービス利用に 移行 (注1)要介護認定前に措置を開始した場合、その費用は、要介護認定後、措置を 開始した日に遡って介護保険から給付を受けることが可能です。 (注2)市町村が支弁した費用については、高齢者本人の状態像に応じて(介護保 険制度に準ずる考え方で)市町村が徴収します。 措置の決定についての手順を要綱などで定めておくと、いざというときあわてません。 (参考資料P35) ⑤措置入所後のフォロー 国 P68-70 施設入所後、養護者が施設に「高齢者を引き取りたい」と執拗に迫ったり、 親族が高齢者の年金を押さえてしまったりと虐待が続くこともあります。 施設長や市町村長は虐待の防止と高齢者の保護の観点から養護者と高齢者 - 48 - の面会を制限することができます。(第 13 条) 面会の可否に関する判断は、高齢者の安全を最優先にケース会議で図ります。 施設単独で判断せず、必ず市町村と協議し、最終的には市町村が決定します。 老人福祉法によるやむをえない事由による措置の流れ 利用者 措置 サービス提供 費用徴収(1 割) 自己負担請求 市町村 事業者 支払(1 割) 個人台帳 介護保険給付 9割 介護給付費請求(9 割) 国保連 (4)65 歳未満の者に対する措置 ア、60 歳未満の者でも以下のいずれかに該当するときは養護老人ホームへ の入所措置を行います。 a 老衰が著しく救護施設の入所要件を満たすが、救護施設に入所できな い者 b 介護保険法施行令第 2 条第 6 号に規定する初老期における認知症に 該当するとき。 c その配偶者が老人ホームの入所の措置を受ける場合であり、その者自 身が老人ホームへの入所基準の内、年齢以外の基準に適合するとき。 イ、介護保険法第 7 条第 3 項第 2 号に規定する、*特定疾病により要介護 状態となった 45 歳以上 65 歳未満の者は、特別養護老人ホームへの入 所措置を行います。 *特定疾病:若年性認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる 15 種の病気 - 49 - 4 成年後見制度及び地域福祉権利擁護事業の活用 (1)成年後見制度 国71-72 ①趣旨・目的 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等の判断能力が不十分な人たち は、財産管理や介護保険を利用するといった契約を自分で行うことが困難 です。又、悪質な商法の被害にあうおそれもあります。 成年後見制度は、契約を本人に代わって行ったり【代理権】、本人が誤 った判断で契約をした場合は、その契約を取り消すことができる【同意 権・取消権】などの権限を家庭裁判所が選任した成年後見人等に与え、本 人の生活状況に応じた保護や支援を行う制度です。 ②援助の種類 援助は本人の判断能力の状態によって、下表のとおり種類があります。 区分 本人の判断能力 代 援助者 理 権 付与される範囲 後見 保佐 補助 財産に関する全ての法律 欠くのが通常の状態 後見人 行為 本人の同意 不要 著しく不十分 特定の法律行為 保佐人 (申立ての範囲内) 必要 不十分 特定の法律行為 補助人 (申立ての範囲内) 必要 注)上記は、法定後見制度の援助者であり、このほかに「任意後見」があるが、 虐待ケースに直接関係しないので説明を省略 ③後見人等になる人 配偶者・親族に限らず、司法書士・弁護士・社会福祉士などの第三者が選 任されます。法人が成年後見人等になることもできます。 - 50 - ④市町村審判の申立て 国 P73-74 成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に対し、後見(保佐、補 助)開始の審判の申立てを行います。申立ては、通常、本人、配偶者、4 親等内の親族が行います。 しかし、虐待により親族による申し立てが期待できない場合、市町村長 が申立てを行う必要があります。 (第 9 条第 2 項、老人福祉法第32条等) (資料編「成年後見制度における市町村長申立に係る要綱(参考例)参照」) 市町村長が申立を行う場合は、基本的には 2 親等以内の親族の有無、申 立の意思を確認すれば足りる取り扱いとされています。(平成 17 年 7 月 29 日、老計発第 0729001 号) なお、直ちに搾取されている年金の振込口座を確保する必要がある場合 等、審判申立と同時に審判前の保全処分申立(財産管理者の選任)も行い、 財産の保全を図ります。 成年後見制度の利用の費用負担が困難と認められる者に対しては、市町 村が「成年後見制度利用支援事業」を活用して審判申立てに要する経費や 後見人等の報酬を助成することができます。 市町村申立(参考資料p41)や成年後見制度利用支援事業に関する要 綱(参考資料p46)を作成しておくと必要時に迅速な対応を取ることが できます。 2親等内の親族とは・・・・A ・親、子、祖父母、孫、兄弟姉 ・配偶者の親、子、兄弟姉妹 4親等内の親族とは(A に加え) ・おじ、おば、ひ孫、甥、姪 ・いとこ ⑤手続きの流れ 具体的には、管轄の家庭裁判所に問い合わせてください。 ア、申立て(原則、本人が居住する地域の家庭裁判所) a 申立書(戸籍謄本、住民票等添付) b 収入印紙:800円(申立手数料) c 登記印紙:4,000円(登記手数料) d 郵便切手:4,550円程度 e 鑑定費用:10 万円程度 f その他戸籍謄本、戸籍付票(住民票)、登記事項がないことの証明書、 診断書取り寄せ費用:5,000円~10,000円程度 ↓ - 51 - イ、審判手続 a 調査:調査官が事情を調査 b 鑑定:医師が本人の判断能力を鑑定 c 審問:必要に応じて調査官が直接事情聴取 ↓ ウ、審判 a 裁判官による審判 b 家庭裁判所から審判書送付 ↓ エ、援助開始 (2)地域福祉権利擁護事業 国 P75 ①趣旨・目的 地域福祉権利擁護事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等で、 日常生活に支障や不安のある人たちが、地域で安心して自立した生活を送 ることができるよう、福祉サービスの利用手続きの援助や日常生活の金銭 管理援助及び書類等の預かりサービスなどを行うことにより、これらの人 たちの在宅での日常生活を支援する制度です。 高齢者虐待との関係では、勝手に本人の預金を取り崩したり財産を処分 するなどの経済的虐待への対応や予防に有効です。 ②支援サービスの内容 ア、福祉サービスの利用援助 a 福祉サービスの情報提供・助言。 b 福祉サービスを利用する際の手続きの援助 c 福祉サービスの苦情解決のための手続き援助 イ、日常的な金銭管理サービス a 年金、手当などの受領に必要な手続き b 医療費、公共料金等の支払いなど c 日常的な生活費に必要な預貯金の預け入れや払い戻しの手続き ウ、財産保全サービス 預貯金の通帳、年金証書、保険証書、不動産権利証書、契約書、実印 等を金融機関の貸金庫に保管します。 - 52 - 但し、宝石や絵画、骨董品などは預かりません。 エ、弁護士・司法書士・社会福祉士紹介サービス 専門的な援助や助言が必要な方や成年後見制度の利用を希望されて いる方に対して弁護士・司法書士・社会福祉士を紹介します。 ③利用料 福祉サービスの利用援助及び財産管理サービス:30分まで500円 (以降30分を超えるごとに500円を加算します) 財産保全サービス:年額3,000 円 年会費:年額 3,600 円 *生活保護受給者は無料です。 *生活支援員が本人宅を訪問する際の交通費が別途かかります。 ④利用手続きの流れ ア、相 談 利用者が住んでいる市町村社会福祉協議会に相談します。 イ、訪問調査 千葉県後見支援センターの「専門員」が自宅等を訪問し、 本人との面談、関係者との調整等を行います。 ウ、計画提案 専門員が本人の希望と状況に応じた契約内容・支援計画を 作成提案します。 エ、契 約 本人と千葉県後見支援センターが契約を締結します。 オ、サービス開始 「生活支援員」が支援計画に沿ってサービスを提供しま す。 (3)権利擁護に関する相談機関等 ①成年後見制度 ア、申立受付・相談 千葉家庭裁判所 〃 市川出張所 〃 佐倉支部 〃 一宮支部 〃 松戸支部 〃 木更津支部 〃 館山支部 〃 八日市場支部 〃 佐原支部 - 53 - 043(222)0165 047(336)3002 043(484)1215 0475(42)3532 047(368)5742 0438(22)3774 0470(22)2273 0479(72)1300 0478(52)5010 イ、成年後見人等の紹介、手続代行、相談等 ・高齢者・障害者支援センター(千葉県弁護士会) 043(227)8431 ・成年後見センター・リーガルサポート千葉県支部(千葉司法書士会) 043(246)2666 ・権利擁護センターぱあとなあ千葉(千葉県社会福祉士会) 043(238)2866 ウ、成年後見登記について 東京法務局民事行政部後見登録課 03(5213)1234 エ、登記事項証明書の申請用紙等 千葉地方法務局 043(302)1311 ②地域福祉権利擁護事業 千葉県後見支援センター(愛称すまいる) ちばし権利擁護センター 043(204)6012 043(222)3910 かしわ広域後見支援センター (かしわ・すまいるセンター) まつど広域後見支援センター (まつど・すまいるセンター) きみつ広域後見支援センター (きみつ・すまいるセンター) さくら広域後見支援センター (さくら・すまいるセンター) あさひ広域後見支援センター (あさひ・すまいるセンター) ふなばし高齢者等権利擁護センター (ぱれっと) 成田市社会福祉協議会 八千代市社会福祉協議会 習志野市社会福祉協議会 浦安市社会福祉協議会 いちかわ社協てるぼサポート 04(7165)1144 ③人権相談 千葉地方法務局 一般人権相談 子ども人権相談 女性の人権ホットライン - 54 - 047(368)0349 0439(55)0454 043(484)0698 0479(63)2944 047(431)7560 0476(27)7755 047(483)3022 047(452)4161 047(355)5271 047(320)4001 043(302)1320 0570(070)110 0570(070)810 (4)無料法律相談 ①千葉県弁護士会 月・水・金 13:00~ 043(227)8530 (来所相談:当日9:30から電話受付) ②千葉県後見支援センター【愛称すまいる】 043(204)6012 原則第1・3水曜日 14:00~16:00(来所相談:予約制) ③県民センター(参考資料 P67) 5 再発・未然防止対策 国P83-86 (1)養護者等家族への支援 ①介護保健サービスの利用(ショートステイ・デイサービス・訪問介護・訪 問看護等) ②地域の見守り活動(民生委員、介護サービス事業者等の連携) ③介護知識・技術の普及(介護教室・リーフレット作成・広報誌の活用等) 県事業:「けやきプラザ」(18 年 8 月1日開設、JR 我孫子駅前)内 「介護実習センター」において介護に従事する家族等を対象 に各種講座開設 連絡先:千葉県福祉ふれあいプラザ 04(7165)2881 ④介護者の相談体制の充実 県事業:こころの相談(週 2 回:予約制) 臨床心理士、介護福祉士等が介護に関わるご相談に応じま す ・福祉機器や住宅改修相談 同上「介護実習センター」において実施 連絡先:千葉県福祉ふれあいプラザ 04(7165)2881 ⑤経済的な支援 生活保護・社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度等の情報提供 ⑥児童に関する支援 教育相談等(参考資料 P66) ⑦医学的な支援 医療安全相談センター:月~金(祝・祭日を除く) 043(223)3636 精神保健福祉相談:精神保健福祉センター 043(268)7830 各健康福祉センター(参考資料 P65) - 55 - 難病相談:各健康福祉センター(参考資料 P65) (2)高齢者虐待についての県民の意識啓発 (3)認知症に対する取り組み 平成 16 年に県が実施した「家庭における虐待に関する調査」では、虐待され ている高齢者の約 7 割が認知症もしくはその疑いのある方となっています。 認知症が病気であると認識せず、適切な支援や医療を受けずに、「認知症によ る言動の混乱」に介護者が振り回され、介護疲れ等から虐待に至る事例も見られ ます。 高齢者虐待を未然に防止するためには、県民が認知症を正しく理解することが とても重要です。 ①認知症とは 脳の器質的変化(①脳の細胞がゆっくり死んで、脳が萎縮する②血管が 詰まって脳の一部が死ぬ)により、記憶力・判断力や言語機能などの知的 機能の他、感情や意欲などの精神機能も進行性の低下を示し日常生活に支 障をきたす状態(およそ 6 か月以上継続)を指します。 認知症の原因となる疾患は、日本人の場合、アルツハイマー病、脳血管 性認知症、レビー小体病の順に多いとされています。 認知症の一部には知的機能低下が治療により改善可能なものもありま すが、現在のところ多くの場合は改善が不可能で、しかも進行性の経過を たどります。 認知症が進むと、身体的な機能も低下していきます。 ②症状 ・認知症による症状は「中核症状」と「周辺症状」の二つに大別されます。 ・ 「中核症状」は脳の障害に起因する記憶や見当識(時間・場所・人)、判 断力等の低下などをいい、現状では医療により改善することはほとんど できません。 ・「周辺症状」は、幻覚・妄想・興奮・衝動的行為やいわゆる徘徊などを 指します。これらは中核症状に環境要因等が作用し、心理的不安やスト レスが強まることで誘発されます。介護する家族にとって負担が大きく、 虐待の要因ともなりやすいのがこの周辺症状です。 ・現在、この周辺症状については、本人及び家族への適切な支援によって、 困難な症状をかなり抑えることが可能であることがさまざまな実践か ら明らかになっています。 - 56 - ・介護者のストレスを軽減し、虐待のリスクを減らすには、早期の診療を 実現するとともに、環境や周囲の人の対応を工夫することにより、周辺 症状の改善を図り安定した生活が送れるよう支援していくことが大切 です。 ③認知症ケアにおける医療の役割 ・早期に正しい診断がなされることが重要です。 知的機能の低下があっても、うつ病や甲状腺機能低下症のように認知 症ではなく、医療による改善が可能なものもあります。 また、認知症の中にも、正常圧水頭症など医学的治療により改善可能 なものもあります。 アルツハイマー型でも投薬により進行を遅らせることができます。 ・認知症の診断は初期ほどむずかしく、高度な検査機器と熟練した技術を 要する検査が必要です。物忘れ外来等専門の医療機関への受診が不可欠 です。 ・県では、認知症の早期発見、早期支援の実現に向けて、かかりつけ医の 認知症対応力の向上を図るための研修を実施することとしています。 ④介護者の気持ちを理解したうえで適切な支援を行います。 介護者の心理的ステップ とまどい・否定 「あんなにしっかりしていた人がまさか」 他の家族にも打ち明けられない。 ・どう対応してよいかわからず混乱し、ささいなことに 混乱・怒り・拒絶 怒る ・身体的・精神的に疲労困憊し、「顔も見たくない」と 拒絶感、絶望感に陥る。 諦め・割り切り 怒っても仕方ないと割り切るようになる時期 ・認知症の人の心理を介護者自身が自然に受け止 受 容 められるようになる。 ・認知症の家族のあるがままを受け入れられるよう になる - 57 - ⑤認知症に関する相談機関 ア、老人性認知症センター(県内7指定病院) 専門医療相談及び診察・検査機関 ① 東京慈恵会医科大学附属柏病院(柏市柏下 163-1) 04(7167)5808 ② 順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院(浦安市富岡 2-1-1) 047(354)9435 ③ 成田赤十字病院(成田市飯田町 90-1) 0476(23)5335 ④ 旭中央病院(旭市イ 1326) 0479(64)1294 ⑤ 東条メンタルホスピタル(鴨川市広場 1338) 04(7093)6046 ⑥ 袖ヶ浦さつき台病院(袖ヶ浦市長浦駅前 5-21) 0438(63)1119 ⑦ 帝京大学医学部附属市原病院(市原市姉崎 3426-3) 0436(62)1700 イ、千葉県精神保健福祉センター 043(263)3893 ウ、各健康福祉センター(保健所) (参考資料 P65) エ、各地域包括支援センター (参考資料 P61) オ、認知症の人と家族の会千葉県支部 月火木土 11:00~15:00 043(204)8228 カ、地域福祉権利擁護事業及び成年後見制度(P50参照) ⑥市町村の取組み 地域密着型サービスや介護予防の事業等を含め、認知症に対する総合的な施 策の展開が望まれます。 ⑦県の取組み ア、認知症サポーターの養成研修 認知症サポーター育成講座の講師役「キャラバン・メイト」を養成しま す。地域で認知症を理解し、認知症の方や家族を支援する「認知症サポ - 58 - ーター」を養成します。 イ、認知症サポート医養成研修 かかりつけ医に対し、助言や指導を行い、専門医療機関や地域包括支 援センター等との連携の推進役となる「認知症サポート医」を養成しま す。 ウ、かかりつけ医認知症対応力向上研修 高齢者が日ごろ受診する診療所等の主治医(かかりつけ医)を対象に 認知症の診断・技術等を習得するための研修を実施します。 。 エ、認知症介護サービス事業開設者研修 認知症対応型共同生活介護事業所及び小規模多機能型居宅介護事業 所の代表者を対象として実施します。 オ、千葉県認知症対応型サービス事業管理者等研修 認知症対応型共同生活介護事業所、認知症対応型通所介護事業所及び 小規模多機能型居宅介護事業所の管理者又は予定者を対象として実施 します。 カ、千葉県認知症介護実践研修 介護保険施設、居宅サービス事業所及び地域密着型サービス事業所等 に従事する介護職員等で適当と認められる者を対象として実施します。 6 市町村と地域包括支援センターの役割 - 59 - 国P87-92