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女性研究者向けメンタリング・プログラムの 現状と成果 - ASKA
愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 2011.3 87―99 女性研究者向けメンタリング・プログラムの 現状と成果 Mentoring Programs for Women in Academic and Research: The Status quo and its Accomplishment 渡 辺 かよ子 WATANABE, Kayoko 1.はじめに 本稿は、高等教育におけるメンタリング・プログラムに関する研究の一環として、各国の 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果を明らかにしようとするものである。 メンタリングとは、「成熟した年長のメンター(mentor)と若年のメンティ(mentee または protégé)とが基本的に一対一で継続的定期的に交流し、役割モデルと信頼関係の構築を通 じて発達支援を行う関係性」を意味する。 高等教育におけるメンタリング・プログラムは、メンターとメンティの属性によって、① 学外メンターによるキャリア発達支援プログラム、②学内メンターによるキャリア発達支援 プログラム、③学内教職員による在学生支援プログラム、④在学生による在学生支援プログ ラム、⑤在学生による小中高校生支援プログラム、に類型化され、本稿の対象となる女性研 究者向けプログラムにも①②③のタイプがあり多彩である 1)。 学術分野における男女共同参画の実現が世界的に著しく不十分な日本 2)においても、近年、 文部科学省による「特別研究員事業― RPD(リスタート・ポストドクター) 」、 「女性研究者 支援モデル育成」、 「女子中高生の理系進路選択支援(サイエンス・パートナーシップ・プロ ジェクト)」等、女性研究者を積極的に養成し支援するための多様な取り組みが開始され 3)、 これらの施策に各種メンタリング・プログラムが組み込まれている。 本稿では、萌芽的導入段階にある日本の高等教育におけるメンタリング・プログラムの充 実と発展に資するため、欧米諸国の理工系を中心とする女性研究者をめぐる現状とメンタリ ング・プログラム導入の背景を概括し、欧米各国における女性研究者向けメンタリング・プ ログラムの展開と現状、ならびに最近の研究成果が示すメンタリング・プログラムに関する 知見と今後の課題を分析していきたい。 ― 87 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 2.背景 女性研究者向けメンタリング・プログラムが導入される背景には、各国に共通する学術分 野におけるジェンダー格差がある。改善傾向はみられるものの、研究者全体における女性比 率( ロ シ ア 41.8 %、 米 国 34.3 %、 フ ラ ン ス 27.7 %、 英 国 26.0 %、 ド イ ツ 21.4 %、 韓 国 13.1%、日本 13.0%)は依然として低い。専攻分野や職位に著しい偏りがあることも周知の 事実である 4)。学士課程や大学院の入学時に女性入学者数が男性入学者数を上回る学問分野 でも、実際に博士号を取得し研究者になるのは圧倒的に男性の方が多い。女性研究者は男性 より授業担当数が多いのみならず、低学年の大規模授業をより多く担当する傾向があり、マ イノリティであるがゆえに学生からの相談や無報酬の委員会に参加することを余儀なくさ れ、より多くの時間を授業準備に費している。が、それにもかかわらずテニュア審査や昇進 は研究業績に基いてなされており、問題性が指摘されている 5)。 こうした女性研究者が大学教育制度と職場において、十全な能力を発揮することなく、研 究から退去し排除されていく現象は、キャリア発達における「パイプラインの漏れ」として 知られ、この「漏れ」を防ぐ対策が 1990 年代以後、各国で議論されるようになり、女性研 究者に特化された奨学金や女性占有率の数値目標、育児休暇等の整備に加え、その重要施策 となっているのがメンタリング・プログラムである。メンタリングが注目されるようになっ たのは、1970 年代末以降、法的整備による積極的差別是正に取り組みながらもジェンダー 格差が解消されない米国で「発見された」、生涯発達におけるメンターの重要性である 6)。 大学での研究活動におけるメンタリングについてケネディは次のように述べている。 「その 関係性が深い興味関心と高い能力を共有する、対等ではない地位と経験をもつ人々の間での 親しい関係(コネクション)を包含するため、それは個人的指導に活気が吹き込まれる潜在 的源泉である。しかしながら同時にそれは困難へ向かう温床ともなっている。知的所有や著 作権をめぐる摩擦、共同研究をめぐる闘争、搾取の感覚、評価の問題、個人的親密性と依存 性が発展することに関するストレス、さらには(この結末として生じる周知の)ロマンス、 といった事柄である。 」7) 高等教育におけるメンタリングの現状とメンタリング・プログラムの普及状況については、 2006 年の米国の法学大学院に関する調査では、55%の学生がインフォーマルなメンタリン グを受け、メンタリング・プログラム参加者は 3%であった。メンタリング・プログラムの 効果を支持する者は 56%である一方、インフォーマルなメンタリングを支持する者は 81% であったが、問題となるが、インフォーマルなメンタリングから女性が排除される可能性が 大きいことであり 8)、メンタリングの機会に恵まれない女性のキャリア発達支援としてメン タリング・プログラムが企業や大学で導入されてきた。こうした米国の動向は、英国等 EU 諸国にも影響を与え、今日、各地でメンタリング・プログラムが実施されている。 ― 88 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 3.米国の女性研究者向けメンタリング・プログラムの展開と現状 1)政策動向 米国においては 1960 年代以降の男女差別を禁止する法律の整備、とりわけ 1972 年の高等 教育法(1965 年)の教育修正条項第 9 編(Title Ⅸ of the Education Amendments of 1972)に よる連邦政府が財政支援するあらゆる教育活動における性差別の禁止以来、女子の高等教育 進学は飛躍的に進展した。以後、積極的差別是正策の実施と共に、理工学機会平等法(1980 年)、理工系分野における女性とマイノリティの前進に向けた委員会の設置(1997 年)等、 理工系女子学生と女性研究者の能力開発に向けた施策が推進されている 9)。 こうした中、大学におけるメンタリング・プログラムは、1970 年代以降の多様化した学 生への支援方策、80 年代以後のマイノリティや女性、非伝統的学生 10)のための在学継続戦略、 大学院での研究・キャリア指導、大学教職員養成戦略等として導入された。メンタリングの 重要性は学びの活性化や満足感 11)、キャンパスの多文化化や公正 12)の議論において繰り返 し強調されている。女性やマイノリティが参入機会を与えられながら潜在的能力を十分発揮 できないのはメンタリング関係が欠落しているからであるとして、その補完に向け多くの大 企業がメンタリング・プログラムを導入し、さらにそれに呼応して 80 年代後半には大学に おいても本格的にメンタリング・プログラムが実施されるようになった。90 年代には高等 教育機関におけるメンタリングと個別指導のプログラムの総数は 1700 に達していることが 知られている 13)。 研究者養成と研究者キャリアにおける男女差別の撤廃に向け、学術団体も現状の問題性を 指摘する報告書をまとめ、提言を行っている。例えば、2001 年に全米研究審議会が理工系 博士号取得者のキャリアにおけるジェンダー格差を明示した『希少から顕在へ』14)、2005 年 の教育に関するアメリカ審議会による『卓越性に向けた議題:テニュアトラックの大学教員 のキャリアにおける柔軟性の創出』15)、全米科学アカデミーが 2007 年に発表した『偏向と障 壁を超えて』16)、全米研究審議会が 2009 年に発表した『理工系大学教員の重大な転換におけ 17) 18) や大学院審議会による『大学院教育への参加拡大』 、等である。 るジェンダーの違い』 一連の政策動向をふまえ、AAUW(アメリカ女性大学関係者協会:American Association of University Women、1881 年設立)は、理工系分野におけるジェンダーの平等性の確保に向け た具体的施策の中心がメンタリングにあったとして、以下のように述べている。「メンタリ ングはジェンダー平等化を目指す介入努力において常に中心的呼び物となってきた。研究者 と実践家は長期にわたり、教師と学生ないしは、大学教員と修行中の見習い研究者との間に 存在する個人的なメンタリングの関係性の重要性を理解してきた。著名な研究者の伝記は、 学校や職場でのメンターの影響力に関する賞賛すべき事例を提供している。 」19) こうしたメンタリングへの注目を広く社会に知らしめたのが、1996 年に創設された、理 工 系 分 野 の 優 れ た メ ン タ リ ン グ を 称 え る 大 統 領 賞(Presidential Award for Excellence in ― 89 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 Science, Math and Engineering Mentoring, PAESMEN)である。同賞は、1994 年に発表され 20) (Science in the National たクリントン政権の科学政策計画である『国益における科学』 Interest)が喚起した理工系人材養成におけるマイノリティや女性の参加の重要性を、さら に具体的に促進する延長施策として位置づけられた。同賞は理工系分野におけるマイノリ ティや女性、障がい者の参加促進のためのメンタリングに功績のあった個人と団体を顕彰し ている。同賞は、各人の人生やキャリアにおいて重要であるにもかかわらず当然視し偶然の こととしてきたメンタリングに焦点を当て、理工系分野における才能の開花のためにメンタ リングが重要であることを確認し、全国的なメンタリング促進の機運作りに多大な貢献をな してきた 21)。 2006 年には同賞受賞者が執筆した『メンリング白書』と称される Mentoring for Science, Technology, Engineering and Mathematics Workforce Development and Lifelong Productivity: Success across the K through Grey Continuum( 『理工系労働力の開発と生涯にわたる生産性のためのメ ンタリング:幼児期から老齢期にわたる成功』)が出版された。その後の不利益を被ってい る諸集団の参加を促すアウトリーチ施策の論拠となった『メンリング白書』は、「科学的発 見や技術革新の企ての強みは常に、メンタリングの基礎の上に築かれている。この知識の世 代間伝達と過程は、一つの世代がその先行世代の肩の上に乗って、知恵や創造性、発見や革 新を進展させることを可能にしている」22)とし、以下のように、生涯にわたる全ての年齢段 階における理工系人材の生産性向上に向けたメンタリングの重要性を提起している。 ①米国の広範な理工系分野における人的資源の増強ならびに、②その目的に向けた第一の 活動としてメンタリングの役割と注目度を増強すること、に焦点づけられた同書はメンタリ ングを「個人が自身の最も十分な潜在能力を成就することができるようにする、支援的育成 的環境を創出する強力な、草の根的過程」 、メンターを「学習と発達を活性化し、恒常的な 支援的育成的な関係性を通じて機会を促進するすべての人」と定義している。同書は理工系 研究の促進に向けたメンタリングについて、①幼稚園から第 12 学年(=初等中等教育)、② コミュニティカレッジならびに専門技術学校の学生、③大学ならびに高等教育段階の学生、 ④教員養成ならびに現職教員研修、⑤インフォーマルな教育環境におけるメンタリング、⑥ 大学教員やその他の専門職へのメンタリング、⑦退職者によるメンタリング、として多角的 に論じ、メンタリングを生涯にわたる豊かな生産性の基盤と捉えている 23)。 同書はメンタリングの促進に向けて、以下の 5 点を提言している。第一に、国家科学技術 審議会(National Science and Technology Council)がメンタリングと研究に関するプログラ ムの進展のために関与すること。第二に、連邦、州、機関間、企業で実施されている各種メ ンタリング・プログラム間のメンタリング優先権を調整し拡大すること。第三に、全米科学 基金(National Science Foundation)の指導性と支援をもって、連邦や州機関に具体的プログ ラムを開始し増強すること。第四に、メンタリングを支援し促進する幼稚園から第 12 学年 にわたるプログラムを開始しその財源を確保すること。第五に、カレッジや大学は職員や教 ― 90 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 員、スタッフ、学生によるメンタリングの価値を認める政策や手続きを採用すべきこと 24)。 である。 2)各種団体による動向 上記の連邦政策の動向と共に、大学教員や研究者団体がメンタリングの重要性をのべてい る。学問の自由と大学の共通善に向けた貢献を目的とする AAUP(American Association of University Professors、1915 年設立)は、研究職に関する公正の実現の一環として、マイノ リティや女性研究者の大学の研究職からの離脱防止と育成支援に努め、様々な機会をとらえ てメンタリングの重要性を述べている 25)。10 万人の会員を擁し 120 年以上の歴史を持つ AAUW は、創設以来の女性の平等化と教育への尽力の一環として、2008 年に、Community Diversity Group と共同で、メンタリング・プログラムを開始している 26)。 また、1971 年に女性科学者への差別撤廃を目指して創設された AWIS(Association for Woman in Science、女性科学者協会)が、1990 年代以降、積極的にメンタリング活動を展開 している。AWIS は 1997 年に上述の理工系メンタリング大統領奨励賞を受賞し、2005 年に理 工系学生と女性研究者向けのメンタリングに関する著作 27)を出版している。2009 年に出版 された『あなたのメンタリングの関係性から最大のものを得るために:理工系の女性のため のハンドブック』28)では、メンタリングは過去 30 年間の AWIS の使命と活動の中心であり、 AWIS の会員が他の女性研究者にできる最も重要な貢献がメンタリングであることに合意し ているという。2006 年の AWIS の特別研究調査によれば、理工系の若い女性研究者のキャリ アの促進にとって最も有益な機関(組織)的政策実践として、後輩研究者のメンタリングが 41.3%となり、最も多い割合をしめていた 29)。 12 万の個人ならびに法人会員を擁し 1000 万人の科学者に貢献している AAAS(American Association for the Advancement of Science、科学の進展のためのアメリカ協会、1848 年創設) も、その教育プログラムとして理工系メンタリング研究のウェブサイドを立ち上げ、理工系 のキャリアや職場でのメンタリングのための良質な研究と評価研究の進展のためのガイドラ インと資源を提供している。AAAS によれば、メンタリングは伝統的に理工系分野で不当に 活躍を阻止されてきた集団の参加を増進し、理工系分野で学部学生が大学院進学を決意する 重要要因となり、博士課程の在学継続と学位取得、さらに大学や政府機関、企業における昇 進の重要要因となっているという 30)。 実践面では 1990 年に設立された理工系女性研究者の活躍促進と能力向上、工学教育の革 新を目指す WEPAN(Women in Engineering ProActive Network)が、1998 年に理工系女子学 生向けのテレメンタリング・プログラムである MentorNet を開始し、大学・企業・学会の連 携により今日までに 2.6 万ペアが交流する実績を挙げている。MentorNet の正式名称は The National Electronic Industrial Mentoring Network for Women in Engineering and Science(理工 系女性のための全米電子産業メンタリングネットワーク)であり、参加大学の理工系女子学 ― 91 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 生に産業界で活躍する研究者や技術者がメールを通じてメンタリングを提供している。 こうした動向を背景に、米国の多くの専門学会や大学学内で、大学院生や新任教員向けの メンタリング・プログラムが実施され、女性研究者の支援を行っている。 4.EU 諸国の女性研究者向けメンタリング・プログラムの展開と現状 1)全体的動向 EU 諸国でも、イギリスをはじめ各国で女性研究者向けメンタリング・プログラムが導入 され、その背景には、1990 年代末以後、女性研究者の増大に向けた EU 委員会(European Commission)の主導による政策フォーラムの開始があり、以下のような議論と各国の経験 を共有する動きの活発化が顕著である。1999 年に EU 内外の 30 か国より構成される女性と科 学に関する常設専門家グループとしてヘルシンキ・グループ(Helsinki Group)が設立され ると共に、今日まで多様な臨時専門家グループによる重要提言を含む報告書が出されてい る 31)。こうした中、メンタリングの重要性とプログラムの実践智も蓄積されつつあり、2002 年のヘルシンキ・グループによる女性の理工系研究者に関する域内 30 カ国の調査では、メ ンタリング・プログラムが英国やノルウェーで導入されつつあることが記されている 32)。 2004 年に発表された『女性と産業研究:ヨーロッパにおける変革の加速』においては、 EU が国際競争力を維持するために 2010 年までにさらに 70 万人の研究者が必要であり、その ためには高度な資格を持つ女性研究者の潜在能力の活用が必須であるという立場から、40 か国の企業組織や大学、政府機関等の研究者がワークショップを開催し、その議論をまとめ ている。第 1 ワークショップ「若い女性をいかに産業分野の研究開発のキャリアに動機づけ るか」では、ドイツの「少女の日(Girl’s Day)」実施による成果や保護者の意識改革、企業 との合同プロジェクト、教員研修等と並んで、高校生や大学生向けのメンタリング・プログ ラムの実施が提案され、第 2 ワークショップ「産業分野の女性の研究キャリアと企業の優れ た実践」でも、メンタリングの重要性が指摘されている。さらに第 5 ワークショップ「産業 分野の研究におけるトップの女性:役割モデルとネットワーキングとメンタリング」では、 女性研究者の昇進にとっての障害について、女性の役割モデルやメンタリングの欠如を挙げ る女性が 6 割以上に昇ることが紹介され、企業や大学等でのメンタリング・プログラムの実 践が紹介されている 33)。 2005 年の『女性と科学』においても、ジェンダー格差の解消に向けたアクション・プラ ンの一部として、良き実践例としてメンタリングが記されている 34)。さらに同年発表された 『 ジ ェ ン ダ ー 行 動 計 画: 良 き 実 践 の 一 覧 』 で は、GE = GD + WP、 即 ち GE(Gender Equality) :ジェンダーの平等性は、GD(Gender Dimension of the Research Content):研究 内容のジェンダー次元と、WP(Encouraging Women’s Participation) :女性の参加の奨励を加 算したものであるとし、各専門分野における優れた実践が紹介されている。宇宙工学や食品 ― 92 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 化学、持続可能な成長を目指す環境工学(地表交通、地球的変動、生態系)分野におけるメ ンタリング・プログラムの実践が紹介されている 35)。 2008 年のヘルシンキ・グループによる報告『科学におけるジェンダー的平等にむけた政 策措置の基準評価』によれば、オーストリア、フィンランド、ドイツ、アイルランド、オラ ンダ、スウェーデン、スイス、イギリス等において、女性研究者向けのメンタリング・プロ グラムが導入されていることが判明している。オーストリアでは全 22 大学の 4 分の 1 が女性 科学者や女子学生向けのメンタリング活動を実施している。多様なメンタリング・プログラ ムが存在するドイツでは 1999 年に理工系女性研究者向けのプログラムが開始されている。 フィンランドでは大学による女性研究者向けの新規メンタリング・プログラムが開始され、 アイルランドでは Mentorlink プロジェクトが展開され、オランダでは 2005 年以来各専門学 問分野の女性科学者協会がメンタリングを提供している。スウェーデンでは女性向けの指導 的役割に関するメンタリング・プログラムに加え、大学でも女性研究者向けのメンタリン グ・プログラムが実施されている 36)。 イギリスでは、1990 年代に女性研究者向けのメンタリング・プログラムが開始され、そ の代表が 1999 年に開始されたアテナ・プロジェクト(The Athena Project)である。アテナ・ プロジェクトは、英国の大学、研究組織、並びに理工系の専門職協会や学会とのパートナー シップの下、理工系女性の進出とトップ・ポストに就く女性の数の増大を目指し、英国高等 教育財源審議会、英国大学協議会(Universities UK) 、貿易産業省科学技術局によって設立 された。1999 年に 4 年間の時限プロジェクトとして開始されたが、2007 年まで延長され、メ ンタリング・プログラムを含む多彩なプログラムを支援してきた 37)。2002 年には会員 700 人 を擁する WES(女性技術者協会、Women’s Engineering Society、1919 年設立)が、理工系分 野の女性がキャリアを継続し自らの潜在能力を十全に実現するよう、MentorSET(National Mentoring Scheme for Women in SET)を開始している。MentorSET は、女性の理工系分野 での活躍促進を目指す UKRC(The UK Resource Centre for Women in Science, Engineering and Techonology)の支援を受け、メンタリングを実施している。英国では各専門職協会が資 格試験制度等と連動した独自のメンタリング・プログラムを実施している 38)。 2)eument-net こうした動向にあって、今日、EU による資金援助を受けた様々なプロジェクトが実施さ れ、その一つが EU 内外の女性研究者向けのメンタリング・プログラムの連携を目指す eument-net(The European Network of Mentoring Programmes for Women in Academic and Research、女性研究者のためのメンタリング・プログラムのヨーロッパ・ネットワーク)プ ロジェクトである。eument-net は、EU 内外の総勢 1 万 2 千人以上の女性科学者を擁する 40 カ国、100 以上の組織や団体が参加している科学研究におけるジェンダー格差の解消を目指 す EPWS(European Platform of Women Scientists、2005 年設立)と連携し、2008 年に、スイ ― 93 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 ス、オーストリア、ブルガリア、ドイツの大学を中心に開始された。eument-net プロジェク トは、女性研究者向けのメンタリング・プログラムの自らの経験を共有しつつ、最良実践の 確定を目指している 39)。 eument-net は、その政策勧告において、以下のように述べている。「女性は今なお広範に 科学の意思決定を行う地位において不当に過少であり、学問研究のキャリアを追求する者は 余りにも僅かである。ジェンダー次元は今なお職業機会の決定や研究資金の配分に正当化で きない役割を果たしており、このことによって女性は自身の科学に関する潜在能力を実現す ることができず、ヨーロッパ社会の持続可能な発展を妨げている。/ 10 年以上の間、メン タリングは大学や研究における女性の昇進のための決定的に重要な方策であった。メンタリ ングは女性研究者に役割モデルを提供し、科学のネットワークにおける統合を育成し、研究 者としてのアイデンティティと専門分野における自律性を高めている。メンタリングはキャ リア形成におけるコンピテンスを高めている。/持続可能なヨーロッパの研究分野の目的と 挑戦を鑑み、女性研究者へのメンタリングの提供を増大させ、 現存するプログラムが連携し、 ヨーロッパの大学と研究における男女平等を促進するためのメンタリングの潜在能力につい ての経験と議論の交換を行う、大いなる必要がある。 」40) メンタリングによって女性研究者の地位向上を目指す eument-net の活動目的は、経験の 交換と最良実践、メンタリング・プログラムの定義と質的基準の普及、知識の伝達と国際的 協力、新たなメンタリングの提供サービスの発展、大学や研究におけるジェンダー的平等の 促進のための手立てとしてのメンタリングに関する議論、の促進にある。 eument-net による 2007 年の 770 機関 37 カ国への調査(回集率 23%、30 カ国)によれば、 自国のメンタリング・プログラムを知っているかどうかという問いについては、110 人が肯 定の回答をしめし、否定した者(45 人)の 2 倍以上となっている。また、なぜ自国の大学や 研究機関にメンタリング・プログラムが存在しないのかという理由に関する質問では、「女 性が受け入れない、関心を示さない」ことを否定する者が 60%以上、 「ジェンダー格差の問 題がないため」を否定する者は 80%以上、であった。また、「制度構造の欠如、財源不足、 政府支援がないこと」を肯定する者は 70%以上であった。総じて、EU のメンタリング・プ ログラムが未発達の諸国にあって、その原因は女性が関心を示さないからではなく、歴然と 存在するジェンダー格差の問題の解決にむけたプログラムへの財源欠如が帰因しているとい う結果となっている。博士課程以上の学生にとっての eument-net の必要性については、 88%の回答者が肯定し、15 カ国 109 人のメンタリング・プログラム関係者への調査(回集率 36%、6 カ国)では、92%の回答者が肯定している 41)。 また、北欧諸国ではメンタリング・プログラムの存在は 100%全回答者に知られているが、 東欧諸国ではその存在を知るものは 4 割以下となっている。東欧諸国でメンタリング・プロ グラムが導入されていないのは、その必要性や関心がないからではなく、財源問題と制度構 造の問題によるとされる 42)。 ― 94 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 5.女性研究者向けメンタリング・プログラムの成果と知見 実践面で種々の試みがなされる一方、女性研究者向けのメンタリング・プログラムに関す る様々な研究成果が蓄積されてきている。 前述のように多彩な実践が各国の文脈で実施されるようになり、今日同じメンタリングと 言葉を用いていても、実際の活動や意味には隔たりが生じている。そもそもメンタリングと は何を意味するのか、1996 ~ 2007 年の 88 論文の分析より、以下のことが判明している。第 一に、メンタリング・プログラムが目指す成果や便益とは、キャリア的側面と心理的側面を 含む、新任教員への支援、互恵性を意味している。意図された成果や便益のキャリア的側面 とは、知識・教育能力の向上・研究助成金の獲得・協働ネットワーク・研究プログラムの展 開・出版・テニュア獲得等があり、一方の意図された便益の心理的面とは、被受容感、学風 親和、ソーシャルサポートがあり、これらによって組織文化への社会化がスムースに進み、 在職率が向上すると考えられている。第二に、プログラムの統制の位置づけについては、事 務部局が導入と継続管理を実施しており、FD(ファカルティ・ディベロップメント)に類 似あるいはその一環として行っている場合が一般的であるが、参加者自身が運営団体となっ ている場合もある。第三に、関係性の諸特徴として、参加者数や関係性、組織的文脈等にも 多様性がみられる。参加者数は、 1 対 1 を主とするも時に複数のメンターが必要な場合もあり、 グループ・メンタリングによるメンタリング・コミュニティの形成を目指している場合もあ る。参加者間の関係性については、新任者と上位者のペアに加え、同等者間のピア・メンタ リングも含まれる。組織的文脈についても、学内、学外連携、学外等、多様である。さらに、 メンターとメンティの関係性の強度、頻度、継続についても多様なプログラムがある。第四 にメンタリングで取り上げられている話題については、研究・教育・奉仕のバランス、学内 政治、テニュアの学内手続き、個人的事項(病気、妊娠、家計)等が含まれ、多様である。 第五にメンタリングの実際の行為については、メンターがメンティのための時間を作る、傾 聴、激励、助言とフィードバック、メンティの授業の観察、情報共有、協働することである とされる、一方、メンティはメンターと面談して質問し、メンターの授業の参観を実施して いる場合もある 43)。 近年、メンタリングに関連する女性研究者の日常やジェンダー差別の現状が明らかになり つつある。1980 年代以後、大学院における女性メンターの少なさが指摘され、女子大学院 生にとってのメンタリング機会の少なさがネットワーク形成や出版、専門職的社会化に不利 に作用し、ネットワークから得られる潜在的職位に関する情報から疎外されていることが明 らかになった 44)。理工系人材の国際的争奪の状況にあって、外国人研究者の獲得困難を女性 によって補充する必要性とも相俟って、とりわけ理工系キャリアにおける女性研究者の衰減 原因となっているネットワークとメンタリングの欠如を補完する必要性が繰り返し指摘され ている 45)。 ― 95 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 女性研究者向けメンタリング・プログラムの参加者から、 プログラムに参加してよかった、 多くを学んだという感謝に満ちたコメントが寄せられ、メンタリングが精神健康や生産性に よき効果をもたらしていることがプログラム評価によって判明する一方、期待に反する良か らぬネガティブな影響が生じる場合もないわけではない。メンタリング・プログラムの成果 については、以下のことが明らかになっている。メンタリングを受けた個人は、そうでない 人よりもキャリアに満足し、さらなる昇進を確信し、よりキャリアに関与しているとさ れ 46)、メンタリングは女性研究者が大学に留まり、より多額の研究資金や昇進を実現し、大 学人としてのより良い自己認知をもたらしていると共に、よく構想されたメンタリング・プ ログラムは当人にのみならず、大学に投資に見合う重大な見返りをもたらすことも明らかに なっている 47)。さらにアフリカ系女性研究者の大学院での経験分析より、メンタリングはス テレオタイプ除去等、マイノリティの女性のエンパワーメントに有効であること 48)、女性経 済学者へのメンタリング・プログラムに関する研究によれば、メンタリング・プログラムに 参加した女性研究者は研究助成や出版により成果を挙げていることが判明している 49)。 また近年、ジェンダー的平等を目指すメンタリング・プログラムの在り方について、女性 研究者が必要としている多様な支援を提供するためには、従来のトップダウン型の一対一で 非階層的協働的な異文化間パー はない、 より柔軟な支援ネットワークを目指すべきであり 50)、 トナーシップを活かした多元的メンタリング・パートナーズによって新任研究者を支援すべ きという見解も表明されている 51)。 さらにメンタリング経験や役割モデルに関するジェンダー格差は殆ど判明しない場合で も、地位や階層、人種等の要因が介入することによって問題が顕在化することも明らかに なってきている 52)。メンタリング・プログラムを含む各種支援施策が導入され、ある程度の 定着をみた米国等において今日なお女性研究者が少ない理由についても、出産・育児・介護 の負担や採用受入体制の未整備に加えて、男女のアイデンティや認知能力をめぐる生涯発達 の違いの有無、文化資本の問題、ステレオタイプへの恐怖や自らの能力に対する謙遜傾向等、 論争が継続されている 53)。 6.おわりに 女性研究者向けメンタリング・プログラムの導入に関する各国の違いは、総じて、生涯発 達に関する研究やメンタリング・プログラムに関する知識の普及の度合い、男女共同参画促 進政策やそれらを推進する団体の活動実績の有無、高等教育の政策効果に関する州や地域間 の競争傾向、後進育成のために喜んで時間とエネルギーを提供する個人の存在とそれを奨励 する組織機関の余裕と文化、組織トップによるメンタリングの重要性に関する理解とプログ ラムの推進の有無、等、様々な要因が複合して生じている。今日こうした研究成果を総括し 実践に活かすためのハンドブックの出版等、女性研究者向けメンタリング・プログラムの最 ― 96 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 良実践に向けた理論的実践的知見が急速に蓄積されつつある。 今後の日本における女性研究者向けメンタリング・プログラムの充実発展も、上記要因次 第であり、各国のメンタリングとメンタリング・プログラムに見られる文化的戦略的多様性 を精査しつつ、学生や研究者が自らの潜在能力を十分に発揮し、人類の抱える課題解決に向 けた知的探究が十全かつ公正にできるよう、メンタリング・プログラムを含む多様な円環的 生涯発達支援の活性化が切に望まれる。 注 1)筆者稿「〈研究ノート〉米国高等教育におけるメンタリング・プログラムの研究成果と意義」 『教育学研究』 70(2)2003 年。筆者稿「高等教育におけるメンタリング・プログラムの構造的特徴と類型」 『愛知淑徳 大学現代社会学部論集』第 10 号 2005 年を参照。本稿は、 「女性研究者向けメンタリング・プログラムの 現状と課題」2010 年 5 月 29 日(関西国際大学)『日本高等教育学会第 13 回大会発表要旨集録』30―31 頁 を改訂増補したものである。 2)加野芳正『アカデミック・ウーマン』東信堂 1988 年、原ひろこ『女性研究者のキャリア形成』勁草書房 1999 年、木本尚美「ジェンダー・バイアス:女性教員の何が変化したのか」有本章編著『変貌する日本 の大学教授職』玉川大学出版部 2008 年、等を参照。 3)日本学術会議科学者委員会男女共同参画分科会『対外報告:学術分野における男女共同参画の取組と課 題』2007 年、同『提言:学術分野における男女共同参画促進のために』2008 年。 4)内閣府『平成 22 年版男女共同参画白書』102 頁。日本においては、医学・歯学以外の保健分野において は約半数を女性研究者が占めているが、工学分野では僅かに 7.8%、理学・農学分野においても 10%台 に留まっている。 5)Landefeld, T., Mentoring and Diversity, Springer, 2009. Rayburn, C., et al., eds., A Handbook for Women Mentors, PRAEGER, 2010. 等を参照。 6)Levinson, D. J. etc., The Seasons of a Man’s Life, Ballentine, 1978.(南博訳『ライフサイクルの心理学』 (上・ 下)講談社 1992 年)等を参照。 7)Kennedy, D., Academic Duty, Harvard University Press, 1997, p. 98. 8)Haynes, R., An Exploration and Assessment of Mentoring Within the American Law Professoriate, Paper presented at the Academy of Human Resource Developoment International Conference, 2006. 9)GAO (United States Government Accountability Office), Gender Issues: Women’s Participation in the Sciences Has Increased, but Agencies Need to Do More to Ensure Compliance with Title IX, GAO―04―639, 2004. 10)非伝統的学生とは、①高校卒業後すぐには大学に入学しなかった学生、②パートタイム学生、③週 35 時 間以上のフルタイムの仕事に就いている学生、④資金援助資格のため経済的に自立していると考えられ ている学生、④配偶者以外の扶養家族(子ども等)がいる学生、⑤自身が一人親である学生、⑥高等学 校の卒業証書をもっていない学生、を意味する。National Center for Educational Statistics, Nontraditional Undergraduates, Finding from the Condition of Education, 2002, pp. 2―3. 11)Bowen, W. G. & Bok, D., The Shape of the River, Princeton University Press, 1998. 12)Valverde, L. A. & Castenell The Multicultural Campus: Strategies for Transforming Higher Education, AltaMira, 1998. Jones, L. ed., Retaining African Americans in Higher Education, Stylus, 2001. Allen, W. R. et. al. “Outsiders Within: Race, Gender, and Faculty Status in U. S. Higher Education,” in Smith, W. A. et. al. ed. The ― 97 ― 愛知淑徳大学論集―文学部・文学研究科篇― 第 36 号 Racial Crisis in American Higher Education, revised ed., SUNY Press, 2002. 13)Freedman, M., Kindness of Strangers: Reflections on the Mentoring Movement, Public/Private Ventures, 1992, p. 25. 14)National Research Council, Committee on Women in Science and Engineering, Panel for the Study of Gender Differences in the Career Outcomes of Science and Engineering Ph. D. s., From Scarcity to Visibility: Gender Differences in the Careers of Doctoral Scientists and Engineers, National Academies Press, 2001. 15)American Council on Education, Office of Women in Higher Education, An Agenda for Excellence: Creating Flexibility in Tenure-track Faculty, 2005. 16)National Academy of Sciences, Committee on Maximizing the Potential of Women in Academic Science and Engineering & Committee on Science, Engineering and Public Policy, National Academy of Sciences, National Academy of Engineering, and Institute of Medicine, Beyond Bias and Barriers: Fulfilling the Potential of Women in Academic Science and Engineering, National Academies Press, 2007. 17)National Research Council, Committee on Gender Differences in the Careers of Science, Engineering, and Mathematics Faculty; Committee on Women in Science, Engineering, and Mathematics Faculty; Committee on Women in Science, Engineering, and Medicine; National Research Council, Gender Differences at Critical Transitions in the Careers of Science, Engineering and Mathematics Faculty, National Academies Press, 2009. 18)Council of Graduate Schools, Broadening Participation in Graduate Education, CGS, 2009. 19)AAUW (American Association of University Women) Educational Foundation, Under the Microscope: A Decade of Gender Equity Projects in the Sciences, 2004. 20)President Clinton, W. J. & Vice President Gore, S., Science in the National Interest, 1994. (http://clinton1.nara. gov/White_House/EOP/OSTP/Science/html) 21)Presidential Award for Excellence in Science, Math and Engineering Mentoring(http://www.nsf.gov/ pubs/2004/nsf04525/nsf04525.htm) 22)Mentoring for Science, Technology, Engineering and Mathematics Workforce Development and Lifelong Productivity: Success Across the K through Grey Continuum, 2006, p. 1. (www.unc.edu/opt-ed/events/mentoring workshops/documents/...) 23)Ibid., pp. 3, 5―8. 24)Ibid., pp. 9―16. 25)Resources on Women in Higher Education (http://www.aaup.org), ならびに(http://www.nea.org/he/jsmentor. html)を参照。 26)AAUW state college branch (http://www.aauwstatecollege.org) 27)AWIS, A Hand Up, Women Mentoring Women in Science, 2005. 28)Dean, D., Getting the Most out of Your Mentoring Relationships: A Handbook for Women in STEM, Springer, 2009. 29)Ibid., p. viii. 30)Science Mentoring Research (http://ehrweb.aasa.org/sceMentoring) 31)United Nations Division for the Advancement of Women, UNESCO, Expert Group Meeting, Gender, Science and Technology, What has Worked in Europe to Increase Women’s Participation in Science and Technology, 2010, pp. 6―8. 32)European Commission, The Helsinki Group on Women and Science, National Policies on Women and Science in Europe, 2002, pp. 21, 62, 84. ― 98 ― 女性研究者向けメンタリング・プログラムの現状と成果 (渡辺かよ子) 33)European Commission, Women in Industrial Research: Speeding Up Changes in Europe, 2004, pp. 27, 30, 41. 34)European Commission, Women and Science: Excellence and Innovation-Gender Equality in Science, 2005, p. 10. 35)European Commission, Gender Action Plans: A Compendium of Good Practices, 2005, pp. 33, 37, 49―50, 53, 68― 69. 36)European Commission, Benchmarking Policy Measures for Gender Equality in Science, 2008. 37)ATHENA PROJECT: Athena Guide to Good Practice 1999 to 2002, Report 22, (http://www.athenaproject.org.uk/ reports.htm) 38)筆者稿「米英豪における技術者向けメンタリング・プログラム」 『愛知淑徳大論集―現代社会学部・現代 社会研究科篇―』12 号 2007 年を参照。 39)(http://www.eument-net) 40)Eument-net, Policy Recommendations: Establish Mentoring in Europe to Enhance Gender Equality, (http:// www.eument-net) 41)Eument-net, MuT-LaKoG, Selected Results of Survey on Gender Equality Structures and Mentoring P r o g r a m m e s i n E u r o p e ( h t t p : / / w w w. e u m e n t - n e t . g e n d e r c a m p u s . c h / C o c u m e n t s / S u r v e y s / Selected_results_eument-net_survey_Def.pdf) 42)Peschel, L., et al., Building a European Network of Mentoring Programmes, in Noebauer H. & Genetti, R., eds., Establishing Mentoring in Europe, eument-net, 2008, pp. 111―113. 43)Lottero-Perdue & Fifield, A Conceptual Framework for Higher Education Faculty Mentoring, in Nilson, L. & Miller, J. eds., To Improve the Academy: Resources for Faculty, Instructional, and Organizational Development, Jossey-Bass, 2010. 44)Bogat & Redner, How Mentoring Affects the Professional Development of Women, in Psychology, Professional Psychology: Research and Practice, 16, 1985. 45)Rosser, S. & Taylor, M., Why Are We Still Worried about Women in Science?, Academe, 95―3, 2009. 46)Allen, T. D. & Eby, L. T. et al., Career Benefits associated with Mentoring Protégé: A meta-analysis, Journal of Applied Psychology, 89, 2004. 47)Gardomer, et al, Show Me the Money! An Empirical Analysis of Mentoring Outcomes for Women in Academia, Higher Education Research and Development, 26―4, 2007. 48)Patton, L., My Sister’s Keeper: A Qualitative Examination of Mentoring Experiences among African American Woman in Graduate and Professional Schools, Journal of Higher Education, 80―5, 2009. 49)Blau, et al, Can Mentoring Help Female Assistant Professors? Interim Results from a Randamized Trial, NBER Working Paper, No. 15707 (ED508302), 2010. 50)Bernstein, B. et al., Mentoring Women in Science, Technology, Engineerig, and Mathematics Fields, in Rayburn, C. et al., eds., A Handbook of Women Mentors, Praeger, 2010. 51)Sorcinelli, M. & Yun, J., From Mentor to Mentoring Network: Mentoring in the New Academy, Change: The Magazine of Higher Learning, 39―6, 2007. 52)Murrell, A., et al., eds., Mentoring Dilemmas, Lawrence Erlbaum Associates, 1999. Allen, T. D. & Eby, L. T. eds., The Blackwell Handbook of Mentoring, Blackwell Publishing, 2007. 53)Rosser, & Taylor, op. cit. ― 99 ―