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資料3 (2)(PDF形式:839KB)
22 3. サービス分野別対応 健康・福祉関連サービス 1. 定義 健康・福祉関連サービスは、国民の最大の関心事である健康や医療に対する ニーズに直接応えるものであり、医療サービス(32 兆円)、医療機器・医薬品(8.4 兆円)、介護サービス(6.7 兆円)、スポーツ・健康維持増進サービス、エステサ ービス等によって構成される。 2. 現状と課題 ○市場規模 ○雇用規模 直近 約51.8兆円 約496万人 → → 2015年 約66.4兆円 約553万人 (1)健康・医療・福祉関連サービスの市場の概要 我が国の健康・医療・福祉関連サービスの市場規模は、約 51.8 兆円と推計さ れる。所得の向上に伴う健康志向の高まりと高齢化の進展により、ニーズは着 実に拡大しており、産業規模及び雇用吸収力は一貫して増加することが見込ま れている。 また、都市部に限らず地方においてもニーズは大きく、他地域や海外からの 利用者の獲得に成功すれば、地域再生の担い手となる産業となることが期待さ れている。 (100 億円の需要に対する雇用創出効果は、公共事業の 994 人に対して、医療 は 1,022 人、介護は 1,785 人) (2)期待される医療・介護費の増大抑制化効果 医療・介護給付等の社会保障費用の増大が財政を圧迫する懸念が高まる中で、 茨城県協和町の事例に見られるように、健康プログラムの導入等による健康増 進や予防医療の実現は、医療・介護費の増大を抑制する可能性があると期待さ れている。 特に、若年層に比べ多額の医療費を要する高齢者の健康増進を図り、健康寿 命と平均寿命の差を縮小することは、高齢者の社会参画を促す観点からも重要 である。 (3)質の高いサービスの確保 健康に対する国民の関心が高い一方で、健康サービス市場が着実に拡大して いくためには、科学的根拠に基づいた質の高いサービスを数多く提供すること が重要である。経済産業省では、平成 16 年度より全国のモデルとなる先導的な 取組を支援し、質の高い健康サービスの確保に努めてきた(サービス産業創出 支援事業) 。 23 今後は、これらの支援事業から得られた成果を活用できる環境を整備するこ とにより、事業者が新たなサービスを開始することを容易にし、サービスの供 給を増やしていくことが重要である。 (4)本分野における生産性向上のポイント 本分野の特徴を考えると、健康サービスについては、潜在的な需要が急拡大 し、事業者は消費者ニーズに対応した多様かつ質の高いサービスの実現に取り 組み、収益向上を実現する必要がある。したがって、生産性向上のための施策 の重点は、医療のみならず健康や福祉に通じたコーディネータなどの人材育成、 地域における健康サービスおよび診療所の連携に際しての IT の活用である。 一方、医療・福祉サービスについては、政府の関与が大きい分野であり、財 政制約等がある中、収益性の追求よりもサービスの質の維持・向上を前提とし た上で、むしろ効率化とコストダウンが重要な分野である。このため施策の重 点は、IT の活用を通じた効率化、共同購入等の地域連携の推進、高度医療機器 の開発等を通じた生産性の向上である。 図 3-1 国民生活における関心事項 4 3 .7 5 0 .0 老後の生活設計 4 4 .8 4 6 .3 自分の健康 3 6 .5 今後の収入や資産の見通し 4 1 .7 3 5 .9 3 8 .4 家族の健康 2 7 .0 2 8 .6 現在の収入や資産 2 3 .5 2 4 .6 家族の生活上の問題 1 4 .6 1 3 .9 自分の生活上の問題 2002年 2003年 1 1 .4 1 1 .1 勤務先での仕事や人間関係 0 10 20 30 40 5 0 (% ) 出典:内閣府「国民生活に関する世論調査」2003 年 図 3-2 医療費の削減事例 図 3-3 医療費の削減事例 医療費の削減事例 茨城県協和町では、筑波大学等の指導の下、全住民を対象と した健康指導プログラムを展開、減塩や栄養バランス教育など を実施(1981年∼現在も継続中)。 健康増進 ①高血圧者の減少 ②脳卒中発症の減少 ③ねたきりの減少 一人当たり5%の医療費の抑制 協和町の国保全加入者について一人当たり5%の医療費を抑制 (1995年∼2001年の国保医療費より算出、対象8,000人) 表. 出典:WHO、厚生労働省 24 3. 対応の方向 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] スポーツ活動の提供を含む健康サービスに対する国民の潜在的ニーズは大き いものの、これを顕在化させる仕組みの整備が遅れている。国民のニーズを実 需に結びつけるためには、良質なサービスを多数提供することにより、国民の 選択肢を拡充していくことが重要である。 [具体的施策] ① 健康・医療・福祉に係る新ビジネスモデル創造を支援 平成 16 年度から 18 年度までにサービス産業支援創出事業で支援した先導的 ビジネスの成果をフォローし、ベストプラクティスとして提供する。 また、予防・健康増進の実現を図る先導的取組に対する支援を行うことによ り、新たなビジネスモデルの開発・普及を図る。 ◆ 経済産業省では、16 年度より、以下に示すようなモデル事業に対する支 援を実施(16 年度 12 件、17 年度 16 件) ・ 速歩の実践と健康指導による健康維持・増進プログラム ・ 糖尿病を対象とした疾病予防管理システムの構築 ◆ ベストプラクティスのフォローアップ情報提供 ② 新健康産業の創出と科学的根拠明確化支援 健康産業の創出と円滑な発展を促していくためには、国民が安心してサービ スを利用できる環境を整備することが重要である。このため、予防やスポーツ 活動の提供を含む健康産業の科学的根拠の明確化を図るとともに、良質なサー ビスを保証する仕組みを取り入れることにより、健康産業に対する信頼性の向 上・確保を図る。 ◆ 科学的根拠に基づき、健康増進効果を計測する手法の提示 (運動プログラムによる効果の計測例:千葉県のプログラムでは 9 ヶ月間 の運動で体力年齢が約 8 歳若返り、松本市のプログラムでは 6 ヶ月間の 運動で脚屈筋力と持久力が 10%上昇) ◆ 優良なプログラムを提供する事業者の認証等を行う仕組みの検討 ③ 健康状態の把握を可能とする基盤整備支援 健康プログラムが効果を発揮するためには、プログラムを継続して実行する ことが重要であるが、時間的制約等により継続困難となる場合も多い。継続す る意欲を高めるためには、健康状態の詳細かつ正確な把握を可能とし、健康プ ログラムの効果を目に見える形で提示することが重要である。 ◆ 検査機関による検査結果のばらつきを改善するための臨床検査用標準物 質の開発と検査機関の信頼性向上 ◆ 個人が自らの健康状態を詳細かつ正確に把握する手法の提示 25 ◆ 疾患リスクの把握や予防・早期診断に活用可能な精度の高いデータを簡 便に取得するための解析技術の開発 ◆ 生涯にわたる健診結果を継続的に収集、管理する仕組みの推進 (A センターでは、検診結果等の健康情報を一元的に管理できるデータバ ンク「私の健康履歴」を構築中) ④ 健康増進インセンティブの検討と普及支援 国民自らが健康増進活動を積極的に行うことを促すためには、健康状態を維 持・増進する重要性に対する意識を高めていく必要がある。このため、健康増 進を促す活動に対してインセンティブを与える方策を検討し、普及促進を図る。 ◆ 民間保険による疾病管理型保険等の普及促進 (B 保険会社では、糖尿病を対象にして、症状の改善状況に基づいて保険 料を引き下げる保険の販売を開始) (C 保険会社では、喫煙習慣や健康状態に応じて保険料率を設定する保険 の販売を開始) ⑤ 高度先進医療注の着実な実現 多くの患者が先進的医療を受けられるようにするため、高度先進医療制度の 対象となる医療技術(先進的な診断・手術方法等)の対象範囲を着実に拡大す る。 ※ 高度先進医療制度 一般の保険診療をベースに患者が全額負担する特別料金を追加することで、 医療保険の対象とするまでには技術が確立されていない先進的な診断・治 療を受けられる制度 26 健康サービス産業創出支援事業例 松本市熟年体育大学を拡大発展させたヘルスケア・マネージメント型サービス 事業 高齢者、企業の従業員、学生などを対象に、個人の特質に合った運動処方を 提示するとともに、日々の運動量、食事量、問診結果等を個人ごとにデータ管 理し、健康指導を実施。 図 3-4 ヘルスケア・マネージメント型サービス事業の例 疾病管理事業(Disease Management)(民間保険の活用) かかりつけ医による糖尿病患者のケア向上に向け、専門医やサービス事業者 による支援体制を確立するとともに、糖尿病患者を対象とした日本初の疾病管 理型保険を実現。 図 3-5 疾病管理事業の例 27 (2)競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 健康・福祉関連サービスの市場を確実に成長させ、競争力・生産性を向上さ せるためには、サービス提供体制の透明性と効率性の向上を図るとともに、関 連する事業者間の連携等により、利用者の視点に立った利便性と質の高いサー ビスを提供していく必要がある。 [具体的施策] ① 良質なサービスを提供する人材の確保・育成 事業者が、利用者のニーズに合った良質なサービスを効率よく提供できる環 境を整備するため、サービスを提供する人材を適材適所に確保・育成する。特 に、健康・医療・福祉関連サービスは、公的色彩が強いゆえに、経営効率の追 求が重視されず、経営状態が悪化している機関も少なくない。経営効率とサー ビスの質の向上を同時に達成するための、人材育成が急務となっている。 ◆ 医療技術と経営実務の双方に通じた人材の育成(教育プログラムの開 発・普及、専門職大学院の充実・支援等) ◆ サービス利用者の視点に立って助言・指導できる人材の育成と利用者が 容易に相談できる仕組みの検討 ◆ 健康・福祉関連サービスを提供する人材確保に対する方策の検討 (日タイ経済連携協定では、タイ・スパセラピストの受け入れ可能性を協 定発効後 2 年以内に検討) ② IT 活用を通じた医療サービスの効率化と質の向上 医療サービスの効率化と質の向上を図るため、医療機関における経営の透明 性を高めるとともに、IT の有効活用を図る。 ◆ 会計基準の導入と IT 活用を通じた可視化による医療法人における経営の 透明性向上 (医療法人に必要な会計のあり方について検討:医療制度改革大綱(平成 17 年 12 月、政府・与党医療改革協議会決定) ) ◆ レセプトのオンライン提出・受領による医療保険事務の効率化 (2011 年度当初から原則として全てのレセプトについてオンラインで提 出・受領:IT 新改革戦略(平成 18 年 1 月、IT 戦略本部決定)) ◆ 電子カルテを用いた医療情報のリアルタイム共有による安全性の向上と 複数の医療機関によるシームレスな治療の推進 (D 病院を中心とする医療ネットワークでは、病院・診療所・薬局等を接続 し、電子カルテの共有による医療連携を実現) ◆ IC タグの活用による、医薬品等の誤認防止や有効期限・利用履歴に対す るトレーサビリティの実現 28 ③ 地域連携型サービス体制の構築支援 大学病院等の大病院と中小病院、診療所等に加え、フィットネスクラブや保 険機関等の間で専門分野の明確化と分業体制の確立等を図り、IT の活用による 情報連携網の整備を通じて、医療機関および関連産業の連携による包括的・効 率的地域ケアシステムの構築を推進する。 (注)一時診療や軽い病気は可能な限り、診療所で行い、重病患者をより大き な病院に紹介する地域医療体制により、各病院のゆとりある診療体制を確保す る。また、医療機関が連携して薬品・機器を購入することにより、コスト削減 も可能となり、地域医療体制の中心的機関に集中して、最新医療機器を導入す ることも考えられる。併せて、健康サービス産業との連携により、予防医療体 制が提供されることが望まれる。 図 3-6 医療法人会計基準導入に向けて(昨年末の医療制度改革において検 討を明記) 医療法人 会計基準 (未制定) 29 図 3-7 レセプトのオンライン化 ④ 高度医療・福祉支援技術の開発・普及 a. 先端的医療機器の開発・普及の促進 i)がんの早期発見・治療に有効な先端的医療機器の開発 日本人の死亡原因の第 1 位であり、年間約 30 万人が死亡するがんを中心とし て、早期発見、短期治療を可能とする先進的医療機器を関係省庁と連携を図り ながら開発する。 ◆ がんを超早期に発見する「分子イメージング機器」 、がん細胞のみを選択 的に消滅させる「DDS 型悪性腫瘍治療システム」 、診断と治療を一体化した 手術システム等の開発 ⅱ)先端的医療機器の普及に向けた環境整備 先端的な医療機器の開発促進と早期の市場導入を実現するため、薬事法審査 の円滑化や医療機器価格の適正な評価のあり方に関する検討を行う。 ◆ 薬事法審査の円滑化及び機器開発の迅速化を図るための技術ガイドライ ンの策定 ◆ 医療機器の費用対効果を評価することにより、医療機器価格を適正に設 定するための経済社会ガイドラインの提示 30 b. ポストゲノム研究の実用化の加速的推進 予防医療や個別化医療の実現に向け、遺伝子情報を活用した創薬や診断に資 する技術や生体情報の解析技術の実用化に受けた研究開発を推進する。 ◆ ゲノム創薬加速化支援バイオ基盤技術の開発 ◆ 個別化医療の実現のための技術融合バイオ診断技術の開発 c.ハイテクを活用した福祉・介護サービスの高度化 高齢者・障害者の移動円滑化を支援するとともに、福祉・介護サービスの高 度化を図るため、先進技術を用いた福祉・介護機器の開発支援等を行う。 図 3-8 医療の情報化に係るこれまでの経済産業省の取組 31 32 育児支援サービス 1. 定義 育児支援サービスは、次代を担う子供やこれを育成する家庭などを支援する ものであり、主なサービスは以下のとおり。 ① 幼児支援サービス (保育サービス、安全提供サービス、就学前教育サービス 等)、 ② 家庭支援サービス (送迎サービス、家事代行サービス、ベビーシッターサービス、再就職支援 コーディネータ、悩み相談サービス 等)、 ③ 事業者支援サービス (企業内託児所サービス、行動計画サポートサービス 等) 2. 現状と課題 ○市場規模 ○雇用規模 直近 約1.7兆円 約30万人 → → 2015年 約2.1兆円 約32万人 (1) 家庭や地域における「子育て力」の低下 ① 核家族化の進行(三世代の同居の減少等) 、近所付合いの減少など家庭や地 域における地縁的つながりの希薄化等により、家庭や地域における「子育て 力」が低下し、また、しつけや子育てに自信が持てないなど育児に悩む親も 増加しており、現在、子育てに自信を持てなくなる専業主婦の割合は約 7 割 に達している。また、親による児童虐待数も増加し、平成 16 年度の虐待に関 する相談処理件数は約 3.5 万件、対前年比 26%の増加となっている。 図 3-9 家庭養育上の問題 25 % 20 しつけや子育てに自信 がない 親(保護者)と子の接触 時間が不足している 親類や近所づきあいが 乏しい 家族の協力が得られな い 15 10 5 0 1989 1994 1999 (資料)厚生労働省「全国家庭児童調査」 (1999年)より作成 33 図 3-10 子育てに自信を持てなくなる専業主婦 図 3-11 虐待に関する相談処理件数の推移 (資料)厚生労働省「福祉行政報告例」 ② 東京都目黒区で平成 16 年度に行われた世論調査によれば、子供が健やかに 育つための重要事項として、「子供が安全に遊べる遊び場の確保など、地域 の生活環境を改善すること」が約半数を超えている。 また、「地域で子供が活躍する機会を充実させること」、「事業者や地域 住民などを含めて社会全体で子供を育てる意識を定着させること」などの回 答が多く、地域の子育て力、機能の充実・向上を求めるニーズが高い。 図 3-12 地域の子育て力の向上に対する期待 −子供が健やかに育つための重要事項− (資料)めぐろこどもスマイルプランⅠ(目黒区次世代育成支援行動計画) (平成17年3月) 34 (2) 育児支援サービスに対するニーズの拡大と多様化 ① 男女雇用機会均等法の成立(昭和 60 年)等を背景として、女性の就労が拡 大している。その結果、平成 9 年度以降、共働きの世帯数が男性雇用者と専 業主婦からなる片働き世帯数を上回っている。 図 3-13 共働き等世帯数の推移 (資料)男女共同参画白書(概要版)平成17年版 一方で、近年、男性の育児にかける時間はまだまだわずかであり、総じて 現在でも育児に対する負担は女性に過重となっている。こうした状況を反映し て、保育所の充実を求めるニーズ、また、保育時間の延長や緊急時に対応可能 な一時保育、夜間保育等を求めるニーズが高い。しかしながら、依然として、 大都市圏を中心に全国で約 2 万人以上の待機児童が存在している。 図 3-14 保育所サービスの充実への期待 (資料)平成16年度 図 3-15 少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査(内閣府)より 待機児童の推移 (人) 30,000 25,447 26,383 24,245 25,000 23,338 21,201 20,000 15,000 10,000 5,000 (参考)厚生労働省資料 H 13 H14 H15 H 16 H17 注)待機児童とは1)保育所入所申込書が市町村に提出され、2)入所要件 に該当している者の中で、3)実際に入所を行っていない児童を指す。 35 ② 0∼5 歳の子育て費用総額のうち「児童福祉サービス費」は 1.7 兆円で、う ち 1.3 兆円は公費負担によるものであり、公的事業の割合が大きい。また、 家庭内で親が行う家庭内育児を金額に換算すると 7.4 兆円であり、育児支援 サービスに対する潜在ニーズは高い。また、育児支援サービス分野では、NPO 法人も多く活躍しており、その数は近年飛躍的に拡大している。 図 3-16 分野別・年齢(3 段階)別にみた子育て費用総額(18 歳未満) 注)家庭内育児を金銭換算するには、1 人あたりの育児時間×時間あたりの平均賃金×365 日 で算出した。1 人あたりの育児時間については、社会生活基本調査(総理府統計局)の結果 を用いている。たとえばゼロ歳児であれば、女性の育児時間は 1 日あたり 307 分、男性の場 合は 39 分である。 「時間あたりの平均賃金」については、家事使用人に依頼すると仮定し、 パート労働者の平均賃金を使用した。 図 3-17 子育て支援に取り組む NPO 法人の推移 (団体) 10,000 9,000 9,328 8,000 7,000 7,264 6,000 5,102 5,000 4,000 3,054 3,000 2,000 1,000 232 1,695 844 - 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 (資料)内閣府国民生活局調べ (備考)データは、子供の健全育成を図る活動を活動分野とするNPO法人認証数 ③ 男女雇用機会均等法成立以来、女性の社会進出に対する環境整備の基礎が 整いつつある。また、 「次世代育成支援対策推進法」の施行(平成 17 年 4 月) により、事業者による行動計画の策定が行われるようになったとともに、 「児 36 童福祉法の一部改正法」の施行(平成 17 年 4 月)により、市町村による子育 て支援事業の法制化が行われた。また、政府は、待機児童数を解消すべく、 待機児童ゼロ作戦(平成 13 年 7 月閣議決定)を実施し、さらに少子化社会対 策大綱に基づき、「子ども・子育て応援プラン」を策定(平成 16 年 12 月) し、保育所などの子育て支援拠点の整備に努力している。 しかしながら、女性の就労拡大、ライフスタイルの多様化等に伴い、育児 に対するニーズも多様化している。現に、子供を持つ母親から、保育所のサ ービスの充実の他、「子供を遊ばせる場や機会の提供」、「親のリフレッシ ュの場や機会の提供」に対するニーズが高く、従来型の保育所中心とした育 児支援以外の分野にも高いニーズが存在している。 図 3-18 保育サービスに対する期待 0 .0 % 2 0 .0 % 4 0 .0 % 2 8 .2 % 2 6 .9 % 残業など急な予定変更への対応 1 9 .3 % 一 人 一 人 の 発 達 に 対 応した 保 育 プ ロ グ ラ ム 1 5 .9 % 長 時 間 の 就 労 に 対 応した 保 育 サ ー ビ ス 1 5 .5 % 子 ど も の 栄 養 や健 康 面 の 管 理 1 3 .8 % 親 の 精 神 的な サ ポー ト 8 .0 % 幼 稚 園 と同 じよ うな 教 育 プ ロ グ ラ ム 6 .2 % 利 用 者 間 の ネ ッ ト ワ ー ク づ くり の 支 援 図 3-19 1 0 0 .0 % 4 6 .9 % 不 定 期 就 労 に 対 応した 保 育 サ ー ビ ス 家 庭 と 同 じ よ う に 子 ど も が くつ ろ げ る 環 境 そ の他 4 .3 % 特にない 3 .3 % 無回答 8 0 .0 % 5 0 .0 % 子どもの病気時の対応 よ くわ か ら な い 6 0 .0 % 4 .7 % 1 .2 % 保育サービス以外へのサービスへの期待 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 子ど もを遊 ばせる場や機会の提供 61.1% 親のリフレッシ ュ の場や機会の提供 45.7% 31.5% 親の不安や悩みの相談 子育て 支援に関す る総合的 な情報提供 29.7% 地域のネットワー クづくりの支援 19.7% 17.6% 父親 の育児参加に関す る意識啓発 子 ど も の発達 や幼児教育のプ ログラ ム 提供 15.5% 子育て のノウハウに関す る研修 その他 特にない よくわか ら ない 無回答 6.5% 1.9% 3.9% 2.3% 1.0% 出典:UFJ総合研究所「子育て支援策に関する調査研究(厚生労働省委託調査)」(2003年3月) 37 このような育児支援サービスに対するニーズは、今後一層拡大すると見込ま れる。例えば、以下のようなサービスが期待されている。 ・病気の子供を預ける病児保育や親の不定期就労に対応した夜間保育サービ ス(夜間、延長保育サービス業を含む) ・親のリフレッシュの場や機会の提供、親の不安や悩みの相談、子育て支援 に対する情報提供など、家庭内育児にストレスを感じる親を支援するサー ビスや、この関連で家庭内労働の負担を軽減するため、買い物や献立作成 などの家事を代行するサービス ・子供の安全を確保するためのサービス (3) 育児支援サービスの効果 育児支援サービスの活性化により、次のような効果も期待される。 ・育児に関する環境を整えることにより出生力の向上など少子化対策の充実 ・仕事と子育ての両立支援による女性の就業率の向上や育児支援サービス現 場における女性やシニア層の雇用機会の創出などによる女性やシニア層の 労働力の一層の活用 (4) 本分野における生産性向上のポイント 本分野は、①公的サービスと私企業によるサービスが共存する分野であるこ と、②子供の健全な発育という視点から、提供されるサービスに求められる質 が高いこと、が特徴である。こうした特徴を踏まえた本分野における生産性向 上のポイントは、安全・安心といった基本的ニーズに対応しつつ、人材育成と、 IT の有効活用等を通じた NPO、病院、自治体等多岐にわたる関係者による地域 ネットワークの形成である。 38 3. 対応の方向 (1) 需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 家庭や地域の「子育て力」の向上に資する新しい育児支援サービスに対する ニーズに対応することにより、保育所と補完・連携しつつ、安心して育児がで きる地域環境を整備する。 [具体的施策] ① 新ビジネスモデルの展開と新しい育児支援サービスに対するニーズの顕在 化 民間企業、NPO、病院、自治体等地域の多様な主体が連携した複合的・融合的 な新しいサービスを支援し、潜在的な育児支援サービスに対するニーズに対応 することにより、保育所と補完・連携しつつ、安心して育児ができる環境を整 備する。 <事例> ◆ 保育所が、関係機関と連携して病院・診療所と連携して病児への対応を行 うモデル ◆ 各種幼児教室と連携して質の高い教育サービスを提供するモデル ◆ 地域社会において、出産・子育てに関するコーディネータを設けること で、妊娠から出産・子育てまで自治体や医療機関など関係者が一体となっ て支援するネットワークを構築するモデル ◆ 定年退職者や子育てを終えた主婦など豊富な経験を有するシニア層等に よるグループと連携して親が自信を持って子育てすることを支援する事業 のモデル ◆ 商店街振興組合等と連携して各商店等が「おむつ替え」「授乳スペース」 「ミルクのお湯」 「くつろげる場所」などのサービスを一軒一軒分担して提 供するモデル ② 企業における育児と仕事の両立環境の整備 企業における子育てと仕事を両立させる環境を整備することで、企業内保育 所の運営サービスや、働く女性の育児を支援するサービスなどに対する広範な 需要を生み出す。 ◆ 中小企業白書(平成 18 年 4 月 28 日閣議決定)において、我が国雇用全 体の 7 割以上を担う中小企業を対象とした両立環境に関する調査、分析を行 い、子供を産み育てやすい社会の実現に向けた中小企業の役割、更なる施策 のあり方等を検討する。 ◆ 両立支援について全国の企業約 100 社の先進事例を調査し、先進事例を ベストプラクティスとして公表(平成 17 年 10 月)。 39 (2) 競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 多様で拡大する需要に対応していくためには、子供の安全を確保し、提供す るサービスの質を向上させつつ、サービスを効率的に提供していくことが課題 となっている。また、既存の保育所との連携、役割分担等により民間企業が担 う育児支援サービスを拡充する。 [具体的施策] ① 育児支援サービス人材の育成 子育てを終えた主婦等子育て経験者の知見や経験、事故事例などを収集・分 析し、年配者や学生等のボランティアや地方公共団体の育児関連の指導員によ る子育てサポーターに対して、その背景や地域の特性等を考慮した教育プログ ラムやテキストの作成を支援する。 ② 育児支援サービス活性化のための基盤整備 a.家庭、保育所等における安全安心設計の推進 母親が安心して子育てに取り組めるよう、家庭、保育所等の児童施設におけ る安全安心な材質・色彩等のデザイン設計を促進するため、子供の身体特性や 動作特性を正確に計測する技術の開発を行う。また、事故情報をもとに、保育 士等が注意すべき点や事故を予防するための設備・機器をインターネットや冊 子で紹介するとともに、 「キッズデザイン協議会」の発足や、キッズデザイン賞・ KD マーク制度を創設し、安全安心な生活環境のデザインの普及に取り組む。 b.育児施設、児童遊戯施設等の整備 空き店舗を活用した育児施設や児童遊戯施設の整備等、商店街の社会的機能 の強化を通じた街の活性化への取組に対して支援を行う。 c.地域連携型育児支援サービス提供体制の構築 NPO、民間企業、病院、自治体等、地域の多様な主体がそれぞれ独自の特性を 活かしてネットワークを構築し、従来、家庭や地域に備わっていた「子育て力」 を再生するための取組に対して支援を行う。 ③ IT の活用 a.周産期医療ネットワーク構築のための基盤整備 複数の周産期医療機関間あるいは自宅と医療機関の間で診療情報を相互に共 有し、理想的な周産期医療の実現を可能とする電子カルテネットワークを構築 し、社会的基盤整備を行うための実証を行う。 b.子育て支援施策の周知等 保育所を始めとする自治体等において行われている子育て支援サービスにつ いて、IT 等を活用し広く周知 PR するとともに、情報提供する。 c.テレワークの推進 育児期の親等個々が置かれた状況に応じ能力が最大限に発揮されるようなテ 40 レワークに関する企業内制度や労務管理の導入、セキュリティ対策の体制・運 用の充実、労務関連制度に関する従来型の規制の見直しなど、産官学の連携の 下、テレワークの飛躍的拡大に向けた取組を推進する(「IT 新改革戦略」 )こと としている。 ④ 保育所における質の向上と市場ルール 保育所における子供の発育保証と保育サービスの質の向上を図りつつ、様々 な場での議論の蓄積を踏まえて、市場ルールの導入を図ることができる領域が ないか検討する。また、業務管理等に IT を活用するなど経営の一層の効率化に ついても検討する。なお、平成 14 年 2 月に発生した香川県の認可外保育所にお ける虐待死事件の判決事例にもあるように、市場ルールで運営されている認可 外保育施設であっても、児童福祉法等に基づき都道府県等が届出の受理や立入 を実施しており、子供の安全を担保するために、適正な保育内容や保育環境の 確保についてのチェックが求められている状況にあることに留意する必要があ る。 注) 保育サービス(保育所)については、委員から①子供の発達を保証し、また 社会にとっての人材として育てていくという福祉や公益の観点からサービスを 提供していくためには市場になじまない面があるという指摘と、②限られた財 政の中で全ての子供について保育サービスを実現するためには、保育サービス (保育所)を効率的に提供する必要があり、市場ルールの導入が適当であると の指摘が、それぞれなされた。 現在、保育サービス(保育所)については、待機児童の存在に象徴されるよ うな超過・多様な需要が存在するとの大きな課題がある。この対応策として、 前者(①)の立場では、現在の保育の質を維持することが極めて重要であり、 そのためには保育等に関する現行の取組みを維持したうえで基本的には財政支 出の拡大によって対応すべきとの意見が述べられた一方、後者(②)の立場か らは、民間企業が自由に競争できるような市場開放も、品質向上に寄与するこ とが期待されることから、利用者と保育所との直接契約や料金設定等の自由化 など可能な限り市場ルールを導入することにより、供給を増やしていくべきと の意見が述べられた。 41 42 観光・集客サービス 1. 定義 観光・集客サービスとは、地域資源を有効に活用し、国内外の人々との多様 な交流を促進するサービスを提供する産業群をいう。旅行業、宿泊業、運輸業、 飲食業、娯楽サービス業等が含まれる。 2. 現状と課題 ○市場規模 ○雇用規模 直近 約24.5兆円 約475万人 → → 2015年 約30.7兆円 約514万人 (1)観光・集客サービスの市場規模 観光・集客サービスの市場規模(国内旅行消費額)は、マイナス成長を記録 した 2001 年 20.9 兆円をボトムに 2004 年度には 24.5 兆円(約 19%増)へと 近時着実に拡大している。また、2003 年にとりまとめられた「観光立国懇談会 報告書」を機に、政府や自治体における観光振興政策が加速しつつある。 (2)観光・集客サービスの波及効果 同産業のウエイトは、GDP では全体の 5.9%、雇用規模では 7.3%に相当する。 製造業では生産の低迷が見られる沖縄、北海道において、同産業では高成長を 達成するなど、地域再生のための中核的産業と期待されている。 (3)消費者ニーズの変化・多様化 一方、観光・集客ニーズは、 「団体型から個人型へ」 、 「お仕着せ型から体験型 へ」と変化・多様化するとともに、宿泊日数・回数の「小口化」が見られるな ど、大きく変化している。また、旅行予約や情報収集に IT の活用が普及し、消 費者の選択の幅が増えるとともに、差別化されないサービスにおいては価格低 下圧力が高まっている。 ◆ 2004 年の一人当たりの宿泊旅行回数は 1.18 回/年、一人当たりの平均年 間泊数は 1.92 泊/年と、1997 年以降減少傾向にある。 (4)環境の変化への対応と業績の二極化 こうした環境構造の変化の下、これらの変化に対応ができていない宿泊施設 やテーマパークなどの倒産が相次いでいる。ひいては地域経済に著しい疲弊が 見られる状況である。一方で沖縄、北海道の好調、九州における黒川温泉や由 布院の好業績、ディズニーランドや旭山動物園の着実な人気など、観光・集客 産業は二極化傾向を示している。 43 図 3-20 観光・集客サービスに関するデータ 市場規模(国内旅行消費額の推移 観光・集客サービスの市場規模(内訳) 26 24.5 24.0 24 22.6 12.4 01年度 5.3 1.8 1.4 22 21.3 20.9 20 16.6 04年度 0 18 2000年 2001年 2002年 2003年度 5 4.5 10 20 25 出典:国土交通省 15 宿泊旅行 日帰り旅行 海外旅行(国内分) 訪日外国人旅行 2004年度 観光・集客サービスの波及効果 1.7 1.6 「平成 16 年版観光白書」 旅行消費額 24.5兆円 0% 生産波及効果 55.4兆円 5.8% 5.9% 29.7兆円 ※2 雇用効果 475万人 1 2 3 4 5 5% ※1 付加価値効果 7.3% ※3 6.0% 4.8兆 税収効果 ※ ※ ※ ※ ※ 日本経済への貢献度 波及効果 ※4 :産 業 連 関 表 生 産 額 9 4 9 .1 兆 円 に 対 応 (2 0 0 0 年 ) :国 民 経 済 計 算 に お け る G D P 5 0 5 . 5 兆 円 に 対 応 (2 0 0 4 年 度 ) :国 民 経 済 計 算 に お け る 就 業 者 数 6 , 5 1 2 万 人 に 対 応 (2 0 0 3 年 度 ) :国 税 + 地 方 税 9 0 . 4 兆 円 に 対 応 (2 0 0 4 年 度 ) :こ こ で 言 う 貢 献 度 と は 全 産 業 に 占 め る 比 率 出典:(社)日本ツーリズム産業団体連合会「21 世紀のリーディング産業へ」 消費者ニーズの推移 国民 1 人当たりの宿泊観光旅行回数及び宿泊数の推移 単 位:回,泊 ( % ) 7 0 1 人 当 た り宿 泊 数 1 人 当 た り回 数 6 0 2.9 4 3 .0 2.9 2 5 0 2 .8 3 2. 30 2 .35 4 0 2 .0 2.14 1.3 2 2 0 1 .20 1 .0 2. 2 4 1 .6 2 1. 54 1.2 6 1 .15 1.3 6 2.47 2 .27 2. 15 1.5 5 3 0 2. 73 2.61 1.62 1.5 2 1.51 1. 92 1.4 1 1 .57 1.1 8 1 . 18 1 0 0 1 9 6 4 66 慰 安 旅 行 68 19 7 0 72 74 7 6 7 8 1 9 8 0 ス ポ ー ツ ・ レ ク リ エ ー シ ョ ン 8 2 84 8 6 8 8 1 99 0 9 2 9 4 9 6 自 然 ・ 名 所 ・ ス ホ ゚ー ツ な ど の 見 物 や 行 楽 9 8 9 9 2 0 00 0 1 02 温 泉 に 入 る ・ 湯 治 0 .0 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 資料:国土交通省「平成 17 年版観光白書」 出典: (社)日本観光協会「観光の実態と志向」 主な宿泊業(ホテル・旅館等)の倒産推移 件 140 114 120 100 97 80 60 59 56 125 109 102 91 81 70 53 40 20 0 1994年 1996年 1998年 44 2000年 2002年 2004年 (出典:東京商工リサーチ経済研究室) 2004 (5)本分野における生産性向上のポイント 本分野の特徴を考えると、観光・集客サービスについては、前述のように需 要が多様化し変化しており、これに対応するためにサービス供給側における可 能な限りのサービスの充実とその生産性向上が必要となる。観光・集客サービ スは、最も典型的なサービス産業の特徴を有しており、私企業の競争力が求め られる分野である。過度な規制はなく、需要の大きな変化に対し、経営理念と 人材育成、IT の利活用、地域における連携、外国人観光客に優しいサービスの 充実、差別化されたサービスを持続的に提供可能とするマニュアル化等あらゆ る手段をもって対応するべきであり、その結果大幅な生産性向上も期待できる。 その中でも特に我が国の競争力ある観光資源を有効に活用し、観光メニューと して提供し、対外的に発信することができる「おもてなしの心」と企画力のあ る人材の育成が鍵である。 3. 対応の方向 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 我が国の観光・集客ニーズは、バブル崩壊後大きく変化した。地域観光資源 の発掘と商品化を環境変化に即して、 「個人型」、 「参加型」へ変化させることに より、集客交流の拡大を図ることが必要である。 [具体的施策] ① 観光資源の差別化と、そのビジネスモデル化の支援 a. 体験型観光の振興による差別化の推進 変化・多様化する観光・集客ニーズに対応すべく、体験型観光等の振興に よる差別化の推進が必要であり、また、地域における魅力ある観光資源の効 果的発信等が必要となっている。このため、地域独自の魅力作りや新たな地 域のブランド作り等に対する取組を支援する。 ◆ 入湯手形による露天風呂巡り。(温泉) ◆ 北海道の宿泊施設では、北海道のスキーを本州の上位概念とするべく、 エコ・スキーを売り物とし、自然鑑賞ガイド付き冬山体験を実施(リゾー ト会社)。 b. 先導的ビジネスモデルの開発支援 地域資源を戦略的に活用して、交流人口の増加や新たな滞在価値の創出に 取り組む先導的なビジネスモデルの開発に対する支援を行うとともに、コン ベンションビジネスを含め魅力あるイベントの集中的開催・地域的連携開催 (例えば、 「愛・地球博」に匹敵する国際イベントの招へい等)等の取組を支 援する。 ◆ 温泉旅館の多店舗展開(総支配人の派遣、共通就業規則の適用等による 運営委託契約方式)を実施(リゾート会社)。 ◆ 温泉博覧会を展開し様々な地域密着イベント・散策コース等を用意する 45 ことにより、団体型から個人型への脱皮を図る(温泉)。 ◆ 旅館においては、泊食分離することにより、食のサービス提供において も旅館間競争を高めることができ、結果的に顧客に対する旅館の魅力を高 めることができる(リゾート会社)。 ◆ 2008 年の北京オリンピック、2010 年の上海万博など大型イベントが中国 にシフトする中で、谷間となっている 2009 年に、例えば、日本の強みであ るアニメとロボットを組み合わせたイベントを開催することが考えられる。 ② 高齢者需要の顕在化 今後、日本の観光需要として拡大が期待されるのは、外国人に加えて高齢者 の需要である。高齢者需要を喚起するため、ユニバーサルデザインによるまち づくり、施設作り、高齢者用プログラム作りなどが重要である。政策的には、 ベストプラクティスの提供が必要である。 ◆ バリアフリー化を進めるとともに、高齢者、障害者、外国人に依頼した モニター調査も踏まえ、おもてなしマニュアルの作成や研修事業を実施(飛 騨高山)。 ◆ 「健康づくり」をテーマとすることにより、平日の中・長期滞在型とし て期待できる高齢者をターゲットとし、稼働率向上を目指す(テーマパー ク等)。 ③ 海外への戦略的広報 地域資源の価値を高めることにより滞在価値向上を図ることに加え、ターゲ ット客層に対し戦略的に対外的広報を行うことが必要である。特に、海外観光 客の訪日拡大を図る上では、海外支社・観光協会・旅行社・行政と連携した国 際 PR が有効と考えられる。政策的には、ベストプラクティスの提供が必要であ る。 ◆ ニューヨークの日本案内に宣伝を掲載、旅行会社の国際部と連携した宣 伝活動、外国人学校の先生に対する体験旅行招待、9 カ国語に対応するホー ムページの活用等(飛騨高山)。 ④ 海外の高度専門人材の受入拡大等の規制改革 ホテル業においては、エステティックやスパ等のサービス提供を担う専門技 術者が不足しているのが現状である。このため、例えば、海外からのエステテ ィシャンやスパ・セラピストを受け入れるための枠組みを検討する。また、外 国人観光客の増大を図る観点から、査証発行の拡大を検討する。 ◆ 日タイ経済連携協定を踏まえ、タイのスパ・セラピスト受入れの可能性 について協定発効後 2 年以内に検討する。 46 (2)競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 個々の事業者の収益力・競争力の向上を図ることに加え、地域全体として地 域資源の魅力の開拓や向上を図ることが極めて重要である。また、生産性の向 上、国際競争力の強化には、観光・集客を担う人材の育成、IT の活用等が重要 である。 [具体的施策] ① サービス理念の明確化と人材の育成 a. 経営理念の明確化とマニュアル作り 「非日常的空間の提供」、「おもてなしを科学する仕組み」といった経営理念 を明確化すると共に、従業員用のマニュアルの作成、多店舗展開を可能とする 人材作りが重要である。政策的には、ベストプラクティスを提供していく。 ◆ 広い空間を確保し、駅を出れば別世界に入れるよう、非日常的空間を演 出(テーマパーク等)。 ◆ 「おもてなしを科学する」との考えの下、自動搬送システムの導入、企 業内幼稚園、クレーム管理の徹底を実施。また、旅館経営の多店舗展開に 資する運営受託スキームを構築中(旅館)。 ◆ 「リゾート運営の達人」を目指し、リピート率の向上による安定集客を 実現するべく、顧客満足度調査によるサービス改善を組織的・科学的に実 施し、ターゲット客を中心に対応を決定するシステムを確立(リゾート会 社)。 b. 高度専門人材の育成 個々の事業者の経営力強化のための人材育成と共に、地域に存在する様々な 資源をコーディネートし、地域全体の魅力を向上させる地域プロデューサーの 育成が重要であり、そのための教育プログラムを開発する。 ◆ 部門の責任者を立候補制とし、立候補者を支援するための金融、会計事 務等を研修するための塾を設立(リゾート会社)。 ◆ フランスでは、90 あまりの大学に観光関連学部が設置されている。 ◆ 我が国においては、「観光」、「ツーリズム」という言葉を冠する学部・学 科が 28 大学に設置されている。また、一部の国立大学においては、観光 振興に資する人材の育成のための大学院や学部の創設について検討が行 われている。 ② サービスの標準化及びその改善 顧客満足の定量評価やリピート客増に至る要因等を継続的に分析・解明・共 有することを通じて、サービスの質の向上を図ることが必要である。また、標 準化されたサービスを他旅館等に展開できる仕組みを構築することも重要であ る。 ◆ 顧客志向を追求するため、サービスレベルを数値化し、スタッフの報酬 47 に連動させるほか、リピート率の向上のため、個人毎に満足度の変化を把 握するシステムを構築(リゾート会社)。 ◆ 顧客アンケートを日々集計し、毎日各セクション毎に点数を発表するな ど、社員教育の中心に位置づけ。また、社員のモチベーション向上のため、 数々の賞を企画し付与(ホテル会社)。 ◆ 世界本部が決めたマニュアルの遵守を基本としつつ、各地における現場 の事情を勘案。また、覆面調査等によりサービスの質を管理(外資系ホテ ル会社)。 ③ 地域ぐるみの魅力向上 観光・集客ニーズの構造変化に対応し、地域内・地域間が連携して、地域の 景観維持の方策等を含めた地域の魅力の秩序だった再構築を行うことにより、 地域ぐるみの魅力向上を促進することが必要である。政策的には、引き続き、 ベストプラクティスを提供する。 ◆ 田畑の景観を保全するため、農家に補助金を出すなど地域ぐるみの魅力 向上を図っている(温泉)。 ◆ 地域として冬の 7 大祭りを認証するスキームを構築。また、北海道ミシ ュランを構築し、地域レストラン・ブランドの形成に貢献。(阿寒∼道央) ◆ 空き店舗への出店に関してはスクリーニングを行い、商店街の景観や店 のレベルを維持することにより、地域の活性化や魅力向上を図っている(街 づくり企業)。 ④ IT の活用 IT の活用には、以下の 3 つの活用局面が考えられる。 a.マーケティングへの活用 ◆ 個々の HP 等を活用し、施設・サービスなどの情報を積極的に顧客に発信 するとともに、自ら予約できるシステムを構築することにより、ダイレク トに顧客に対してアクセスすることが可能となる。 ◆ インターネット予約システムの活用促進(50%超)に伴い、郵便による宣 伝・勧誘を廃止することが可能となり、マーケティングコストを低減(リ ゾート会社)。 b. サービスの差別化への活用 ◆ 交通・宿泊・飲食・健康サービスなどの観光・集客交流サービスメニュ ーをアラカルト方式で一度に提供できるようなシステムを構築することに より、多様な個人ニーズに応えることが可能となる。 ◆ 携帯電話などのモバイル機器を活用し、観光施設やイベント情報等が容 易に取得できるユビキタス環境を構築することにより、旅行者の利便性向 上など、観光資源の質の向上が可能となる。 ◆ 客の注文を本部に即時に伝達するためのコミュニケーション・カメラの 設置、バーコードの活用による食膳の自動配送、予約システムと苦情把握 48 システムを一体管理するデータベース活用等を客に見えない形でフルに活 用することにより効率経営(ホテル会社)。 c. ユビキタス環境作りへの活用 ◆ 携帯電話を活用して位置情報を利用したマーケティングを構築すること により旅行者の利便性の向上を図ることができる(京都における携帯観光 コミュニティプロジェクト)。 ◆ アトラクションの待ち時間を携帯で把握できるようにすることにより旅 行者の利便性向上が図られた(「愛・地球博」)。 ⑤ 外国人旅行者に優しい観光・集客サービス体制の構築 外国人旅行者が来日して不便に思う原因を明らかにし、こうした問題に対処 すべく、観光情報を容易に取得できる多言語情報のユビキタスな提供や言葉の 壁の克服を可能とする外国語に精通した多言語人材の育成を推進する。政策的 には、引き続きベストプラクティス情報を提供する。 ◆ 2010 年に訪日外国人旅行者を 1,000 万人にする目標を達成すべく、現在、 政府を挙げて取り組んでおり、現在 673 万人(2005 年)とここ数年増加傾 向にあるものの、1,000 万人を達成するためには更なる取組の強化が求めら れている(観光立国推進戦略会議提言)。 ◆ コンドミニアムの建設誘致、託児所の設置により外国人旅行者にも利便 性向上を図り、外国人旅行者を集客(リゾート会社)。 ⑥ 集客事業の成功・失敗要因から学ぶ 全国各地の観光・集客サービス事業の成功確率を高めるためには、地域が持 つ地域資源を核とした地域の取組からその成功・失敗要因を抽出・類型化し、 分析提供することが必要。 このため、環境変化への対応についての成功・失敗要因を抽出・類型化し、 観光・集客交流百選を作成する。 ◆ 24 軒の温泉旅館による協同組合が、分科会等を作り、環境対策、広告、 研修、恒例事業に関し、知恵を出し合った(温泉)。 ◆ バブル期の 50 年代は、団体型、宴会型に勢いがあったが、バブル崩壊以 降は大変厳しい状況。昭和 61 年に、入湯手形を導入。平成元年以降の 5 年 で 50%増。その後、個人型ブームの中で、着実に集客量が増加。平成 16 年時点で、元年比、倍増(50 万人⇒100 万人)を超える(温泉)。 ◆ 昭和 58 年以降、ほぼ 15 年間、集客力低下。ジェットコースターなど乗 り物を入れても、傾向変わらず。平成 9 年に、 「行動展示の理論」により、 「動物の生活を見せる動物園」に転換後、集客力急増。今日までの 8 年間 で、5 倍(26 万人⇒135 万人)へ。平成 11 年以降、冬の動物園も開園(テ ーマパーク等)。 49 ⑦ 需要の平準化による競争環境の整備 観光・集客の需要が土日祝日やゴールデンウィーク時に集中するため、宿泊 施設、観光施設などにおいては商品・サービスの質の良し悪しに係わらず集客 が行われるオフシーズン時や平日の施設利用率の低迷など、健全な競争が促さ れない状況にある。地域や事業者において有給休暇取得の分散化等を促進する ことにより、需要の平準化を図ることが重要である。 ⑧ 観光・集客サービス業に係る統計の整備 我が国の観光・集客サービス分野における入り込み客数・宿泊客数などの統 計は各地方自治体毎に独自に集計されるなど、様々な主体による統計に依存し ており、量的・質的な充実が特に必要とされている。このため、統計の充実・ 統計手法の標準化が必要である。 ◆ 宿泊事業者、大学等の連携のもと、地域独自で宿泊統計を整備し、翌月 には公表している(自治体)。 ⑨ アクセス改善による集客の増加 観光に関する目標を掲げている地域について重点的にアクセス向上のための 交通インフラを改善させ、地域において、それを生かした顧客の誘導の面での 連携等を進める。 50 コンテンツ(製作・流通・配信) 1. 定義 コンテンツは、人間の創造的活動により生み出される「情報とイメージ」の 固まりであり、消費者に対し様々な教養や娯楽を提供すると共に、消費者の豊 かな生活を実現するものである。具体的には、映像(映画、テレビ、アニメな ど)、音楽、ゲーム、出版・新聞等がある。 2.現状と課題 直近 約13.6兆円 約185万人 ○市場規模 ○雇用規模 → → 2015年 約18.7兆円 約200万人 (1) コンテンツの市場規模 我が国のコンテンツ国内市場規模は 2004 年 13.3 兆円(鉄鋼の約 1.2 倍)で あり、米国に次いで世界第 2 位である。しかしながら、近時、日本の市場規模 は漸増傾向となっている。 図 3-21 日本と世界の市場規模の円グラフ 世界のコンテンツ市場(2004 年) 136 兆円 アジア・南太平洋 その他 6.2 兆円(4.5%) アメリカ 25.9 兆円(19.0%) 欧州 図 3-22 日本の国内コンテンツ市場 (2004 年)13.3 兆円 出版・新聞 映像 56,757 億円 47,312 億円 58.1 兆円(42.6%) 46.1 兆円(33.9%) ゲーム 音楽 10,733 億円 18,580 億円 近年のコンテンツ市場規模推移 市場規模(日本) 兆円 15 14 13 12 2002 2003 2004 年 コンテンツ産業の雇用規模は 2004 年 185 万人であり、雇用全体に占めるウェ イトは 2.9%である。一方、米国の雇用規模は 471 万人(2001 年)であり、コン テンツ産業の市場規模の拡大に従って従業者数も増えてきている (10 年間で 1.6 倍)。日本も、今後市場が伸びていけば、それに応じた雇用拡大が期待される。 51 図 3-23 日米の雇用規模比較 2001 2000 1999 千 人 従業者数推移(日本) 1998 1997 1996 1995 1994 1993 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 1992 千人 従業者数推移(米国) 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 2002 2003 年 2004 2010 年 (各業界団体等からのヒアリングによるDCAj調査 (IIPA「The 2001 Report」より作成) 及び「デジタルコンテンツ白書2005」より作成) 我が国におけるコンテンツ産業のウェイトは GDP では全体の 2.2%であり、こ れは世界平均や米国に及ばない水準である。また、日本のコンテンツ産業の海 外市場依存度は 1.9%しかなく、米国の 17.8%に遠く及ばない。 図 3-24 日本のコンテンツ産業と世界市場(2004 年) コンテンツ規模 GDP コンテンツ/GDP 海外売上/コンテンツ 日本 0.1 兆ドル 4.6 兆ドル 2.2% 1.9% 米国 0.6 兆ドル 11.7 兆ドル 5.1% 17.8% 世界 1.3 兆ドル 40.9 兆ドル 3.2% N.A. (世界銀行 HP、DCAj白書 2005、DCAj調査のデータより、コンテンツ課作成) 図 3-25 コンテンツ産業の成長率予測 12 10 (%) 8 6 4 2 0 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 アジア 世界 (2) 国内市場と海外市場のアンバランス 最大の問題点は、海外市場からのリターンが極めて少ないことである。これ まで国内需要に支えられてきた結果、海外とのビジネスメークが不足しており、 我が国コンテンツのポテンシャルの高さを外貨獲得に十分活かせていない。 52 (3) 放送・通信による流通の多様化に向けた対応 近年、ネットワーク環境の整備、技術革新の進展等によって、放送と通信に よる流通の多様化が進んでいる。インターネット配信等が拡大することによっ て、コンテンツのマルチユースが進展し、コンテンツ市場が拡大する可能性が 高まっている。今後も、中立性・透明性が確保された制度環境において、イノ ベーションの進展、市場の拡大がさらに加速し、経済成長にも貢献することが 期待される。 (4) 生産環境のグローバル化 日本のアニメプロダクションの中には製作工程の多くをアジア地域に外注す るところもあり、産業の空洞化が進み、若手人材が育ちにくくなっているとの 指摘もある。こうした事業環境の変化の中で、日本は何に付加価値を見出すべ きか、どのようにして質の高い人材を集めるかを検討する必要がある。 (5) 本分野における生産性向上のポイント 本分野の特徴を考えると、コンテンツについては、国際市場の開拓とそのた めに必要となる供給力の確保に当たって生産性向上を実現していくことである。 その際のポイントは、より付加価値が高く創造力に富んだプロデューサ・クリ エーター等の人材育成、制作過程等におけるITの有効活用とより効率的で適 正なコンテンツ製作及び製作部門に資金・人材が環流するようなスキームをつ くる等の流通環境の整備である 3. 対応の方向 (1) 需要の拡大・創出 [問題意識・課題] 国際競争の激化や放送・通信による流通の多様化の中で、コンテンツを映画、 パッケージ、放送、通信など、マルチの流通チャネルで展開するとともに、海 外への積極的な展開を図ることにより大きな収益を上げていくようなビジネス モデルを構築していくことが必要である。 [具体的施策] ① 国際展開の推進 日本のコンテンツ産業の海外への積極的な展開を推進するため、東京国際映 画祭コンテンツマーケットへの支援を拡充するとともに、海外流通を前提とし た国際共同製作のビジネスモデル構築を支援する。また、JETRO の機能強化など を通じて、海賊版取締の更なる強化を図り、正規版コンテンツの流通拡大を目 指す。特に、今後、高い成長が見込まれ、文化的にも親和性のあるアジア諸国 との間で、国レベルでの連携を図り、日本のコンテンツの国際展開を支援する。 ◆ 「アジアコンテンツ産業セミナー」の開催等により、多国間及び二国間 53 での関係構築を国レベルで促進する。 (参考)昨年 10 月に「アジアコンテンツ産業セミナー閣僚会合」を東京で 開催。アジア 14 ヵ国(日本、中国、韓国、インド及びアセアン 10 ヵ国) の閣僚レベルで共同声明を取りまとめた(第 2 回は今年 5 月フィリピン で開催予定)。 ◆ 国際共同製作推進のため、(財)日本映像国際振興協会(ユニジャパン) が窓口となり情報提供・マッチング支援を行うとともに、海外の映画祭に おいてワークショップを開催し、我が国のプロデューサーの共同企画開発 を支援する。 ◆ 東京国際映画祭コンテンツマーケット(TIFFCOM)を拡充し、アジア最大 のマーケットを目指す。 ◆ JETRO を機能強化し、 「コンテンツトレードセンター」として活用する。 具体的には、ロサンゼルス、パリ、上海、バンコクなど拠点となる事務所 にコンテンツの担当者を配置し、コンテンツ関連の情報収集・提供、企業 相談等に対応できる体制を構築する。 ◆ ◆ 在外公館を積極的に活用し、日本のコンテンツの情報発信を強化する。 海外における正規版コンテンツ流通拡大の観点から、チャネルの開拓、 阻害要因調査など海賊版対策の一層の強化・拡充を図る。 ◆ 製造業等の海外における広報・販売促進と連携して、テレビドラマ等の 輸出を行うような、ハード・ソフト一体で国際展開を図る新たなビジネス モデルを JETRO との協力の下に構築する。 ◆ ゲーム・アニメ産業の国際競争力強化に向け、 「ゲーム産業振興戦略」を とりまとめるとともに、アニメ産業についても、キャラクタービジネスの 戦略的な国際展開について検討する。 ② 新ビジネスモデルの展開とデジタル化やブロードバンドの積極的活用 コンテンツのデジタル化やブロードバンド化の進展を活用した、新しいフロ ンティア市場を開拓するため、多様なデジタルコンテンツが配信ビジネスに活 用されるようなマーケットの整備を行う。特に、権利処理円滑化など著作権処 理を巡る課題への対応を強化するとともに、配信用コンテンツの製作が拡大す るような基盤整備を行う。 ◆ コンテンツ情報や権利者情報が一元的に提供できる多言語ポータルサイ トの構築を図る。また、各事業者のデータベースの連結や、横断的な検索 システムの開発を促進し、日本コンテンツの情報発信等を図る。 ◆ コンテンツ製作者が企画提案や作品等の情報提供を行うとともに、国内 外の事業者や配信事業者、ファンド等がそうした情報を入手し、コンテン ツ配信ビジネスにつなげるためのネット上でのビジネスマーケットを構築 する。 ◆ IP マルチキャストや VOD(ビデオ・オン・デマンド)など、インターネ ットを活用した映像コンテンツの配信の活用化を図るため、使用料率を含 54 めた契約のあり方や権利処理が必要な範囲の明確化などビジネス促進のた めの方策を検討する。また、デジタルライツマネージメント(DRM)やマイ クロペイメントの技術等を活用した新たなビジネスモデルの展開を進める。 ◆ 映画製作について、コンテンツ製作者への利益還元がなされ、かつマル チユースを想定した契約ひな形を作成し、公正かつ透明な契約環境の整備 を図る。 ◆ 「情報家電のネットワーク化」事業の推進により、デジタルテレビに共 通するプラットフォームの実現を支援するとともに、ブロードバンドに接 続する機能を有するデジタルテレビの普及を図る。 ◆ IP マルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを早期に明確化し、法改正 を含め必要な措置を速やかに講ずるとともに、クリエーターに十分な報酬 が支払われるような仕組みを検討する。 (2) 競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 経済のグローバル化が進展する中で、適切な海外との役割分担の下に戦略的 なビジネス展開を進めるとともに、コンテンツを創造する源泉である人材確保 等を通じ、生産部門の活性化による強靱な産業構造の構築が必要である。 [具体的施策] ① 創造性ある人材の育成 付加価値の高いコンテンツの生産を担う、創造力溢れる人材が、我が国から 継続的に生み出されるような環境整備を図る。特に、大学等の教育機関と産業 界との連携をより一層強化するとともに、我が国に残すべき技術を有し、コン テンツ製作の核となる人材の育成・発掘を重点的に進める。また、海外の優秀 な人材を集め、日本が製作のハブとなるような仕組み作りも進める。 ◆ 産業界からのニーズを受け、映画・映像、アニメ等のクリエーター教育 を行う国内の大学・大学院におけるコンテンツ人材の育成の参考となるモ デル教育プログラムの普及を図る。 ◆ 映像産業振興機構(VIPO)と連携しつつ、インターンシップの推進や、 将来的なプログラムの認証(アクレディテーション)に向けた検討を進め、 産業界で即戦力となるような人材の輩出を図る。 ◆ アニメ分野について、業界で設立したアニメセンターと連携しつつ、企 画や絵コンテ、原画の製作を担うようなコア人材を育成・発掘する。また、 国際共同製作を進められるような優秀なプロデューサーを育成する。 ◆ 財団法人海外技術者研修協会(AOTS)等を通じた技術協力等も活用しつ つ、海外の優秀なプロデューサー、クリエーター等を日本のビジネスパー トナーとして育成するとともに、こうした海外人材の日本への流入を促進 する。 55 ② 優れたコンテンツを生み出す製作環境の改善 優れたコンテンツを生み出す環境を整備するため、資金の透明化を図りつつ 必要な製作資金がクリエーターにわたるようなサイクルを構築するとともに、 製作と流通との取引慣行の改善により、流通優位の業界構造を是正していく。 ◆ 平成 14 年に策定したアニメモデル契約について、ネット配信の広がり等 を踏まえた見直しを検討する。また、下請法の運用強化や契約慣行の見直 し等について検討を進める。 ◆ 今後の映像製作においては、任意組合ではなく、原則有限責任事業組合 (LLP)を利用することにより、資金獲得プロセスの透明化とクリエーター への還元を図る。 ③ IT 活用による生産・流通の効率化 地域におけるデジタル上映の推進等により、製作から流通、興業に至るプロ セスを効率化するデジタルシネマの普及を促進する。 また、アニメなどコンテンツの製作において、IT をより一層活用することに より生産プロセスの効率化を図る。 ④ コンテンツの地域展開の促進 映画やドラマのロケーションを行った地域に観光客が集中するような事例も 踏まえつつ、地域の産業振興・活性化の観点から、地域コンテンツの積極的な 活用を進め、特に観光等他産業と一体となったコンテンツ展開を促進する。 ◆ 海外からの積極的なロケの受入、地域におけるライブエンターテインメ ントの振興、地域での上映イベントの開催など、観光産業をはじめとした 地域の産業とコンテンツが一体となった取組を進めるとともに、日本ブラ ンド発信のため、必要な支援を行う。 56 ビジネス支援サービス 1. 定義 ビジネス支援サービスとは、広告や情報サービス、機械等のリース・レンタ ル、自動車や機械の修理のほか会計やデザイン等の事業所サービスなど、企業 活動と密接に関わり、企業活動の代替を行うサービスである。 具体的には、広告、情報サービス、労働者派遣サービス、リース・レンタル、 自動車・機械修理、会計・法務・財務サービス、デザイン等がある。 2. 現状と課題 ○市場規模 ○雇用規模 直近 約75.0兆円 約630万人 → → 2015年 約94.0兆円 約681万人 (1)市場規模と雇用者数 ビジネス支援サービス産業の市場規模は、1990 年の 53 兆円から 2004 年には 75 兆円に(年率 2.51%増)、雇用者数も 460 万人(90 年)から 630 万人(04 年) に(年率 2.27%増)、それぞれ大きく増加している。今後も、市場規模(2015 年 94 兆円)及び雇用者数(同 681 万人)とも引き続き拡大する見込みである。 (2)対事業所サービス依存が高まる製造業 製造業との相互補完関係も年々増加し、製造業の中間投入におけるサービス 部門の割合は、1985 年の約 2 割から、2004 年には約 3 割に拡大しており、特に、 対事業所サービスがサービス部門に占める割合は、1985 年の約 1 割から 2004 年 には約 2 割と拡大しており、構成比の上昇が著しい。 (3)労働生産性の分野別分析 ビジネス支援サービス産業の労働生産性(雇用者一人当たりの生産額)は、 1990 年から 2000 年にかけて 7%程度改善(米国は 2%改善)しているが、分野別 に見ると、労働者派遣、貸自動車等の分野において、米国に比して相対的に労 働生産性が低いことが明らかである。 特に、労働者派遣サービスについては、我が国において市場が 2 倍となって いるのに対して、 労働者数は 3 倍以上に増加し労働生産性が 4 割低下しており、 労働生産性の向上が大きな課題となっていると考えられる。 (4)ビジネス支援サービス活用のメリット ビジネス支援サービス活用のメリットは、 (イ)従来内製化していたサービス を、多数の顧客、規模の優位性を持つ企業から付加価値の高いサービスの提供 を受けることができること、 (ロ)今までは社内で行っていた業務が市場原理に 基づくサービスの対価となり、コストの可視化や人件費の削減等を通じたコス 57 ト削減につながるだけでなく、社員をコアの業務に集中させることができるこ と、 (ハ)ビジネス支援サービスを活用することにより、自社で専門家を育成す ることなく、必要に応じて経営コンサルティングの活用、エグゼクティブリサ ーチ等高度な専門知識やノウハウを活用することが可能となること、があげら れる。この他、ビジネス支援サービスの活用自体が、注力すべきコア業務の内 容とその分野における自社としての人材育成のあり方を再考させることにもつ ながり、組織・人材の活性化にもつながる。 (5)ビジネス支援サービスの活用を通じた新たな役割分担と競争力の向上 従来の我が国における経営のモデルは、年功序列と終身雇用を前提とした非 効率的とも言える自前主義であった。しかしながら、近年迅速な経営が重視さ れ、業務においても個々の分野における専門性の深化とともに、現場における 問題解決能力の全般的な低下が見られること等により、従来型の経営モデルの コストに対する問題意識も急速に高まってきた。こうした状況の中で、縦割り 型の産業がコア業務に集中し、横割り産業としてのビジネス支援サービスの活 用が進むことで、縦割り型の産業は、その生産性向上と経営の柔軟性確保を実 現し、結果として従来にはない競争力の向上が可能となる。 (6)本分野における生産性向上のポイント 本分野の生産性向上のポイントとして、人材派遣・請負業、実務教育サービ ス、デザイン業等に共通して言えることは、人材育成が最も重要な点である。 これは、人材派遣・請負業がまさしく派遣される人・請負人本位に提供される サービスであり、実務教育サービスは人材の育成のためのサービスであり、デ ザインについては企画・創造力が最も必要なためである。この中でも特に、今 後急速に市場が拡大する人材派遣・請負業については、本分野で働く者のモチ ベーションを向上していく必要があり、このために、キャリアアップ・パスの 構築等をあわせて行っていくことが必要である。 58 図 3-26 日米のビジネス支援サービスの市場規模と雇用者数 国内生産額(兆円) 1990年 2000年 対事業所サービス 日 広告 米 調査情報サービス 物品賃貸業(除貸自動車) 日 米 日 米 日 貸自動車業 米 日 自動車修理 米 日 機械修理 米 日 建物サービス 米 法務・財務・会計サービス 土木建築サービス 労働者派遣サービス その他の対事業所サービス 日 米 日 米 日 米 日 米 日 合計 米 5.8 2.8 7.3 10.4 8.5 3.5 0.8 1.8 5.7 9.1 6.7 4.6 2.3 3.3 1.8 21.4 3.7 10.8 0.8 4.0 9.2 24.8 52.5 96.5 9.1 4.9 14.9 29.2 11.0 5.0 1.6 6.6 6.7 10.8 6.1 5.4 4.2 5.3 2.7 24.2 4.1 14.0 1.6 10.6 14.0 43.3 76.2 159.2 雇用者数(万人) 1990年 2000年 18 24 59 77 15 34 2 17 64 74 28 37 42 81 28 148 48 79 15 154 140 274 460 999 25 30 101 210 29 45 4 23 62 102 26 37 72 99 35 173 46 102 50 389 177 403 627 1,612 資料:平成 12 年度産業連関表 図 3-27 労働生産性の伸び(1990 年∼2000 年)の日米比較 アメリカ=1.0 (2000年) 1.60 1.421 1.40 1.269 1.20 1.154 1.154 1.009 1.00 0.856 0.844 0.822 0.80 0.621 0.60 0.40 0.552 0.397 0.20 0.00 ス ス ス ス ス 車) ビス 車業 車修理 械修理 ービ 広告 ービ ービ ービ サービ サー 自動 自動 サ サ サ サ 動 機 貸 所 計 築 自 貸 派遣 事業 情 報 (除 建 物 ・会 木建 働者 務 対 土 調査 貸業 財 ・ 労 賃 他の 法務 物品 その 備考:労働生産性の伸びは、生産性の伸び÷雇用者の伸び 資料:日本・平成 12 年産業連関表、米国・Employment outlook:Bureau of Labor statistics 59 3. 対応の方向 A. 人材派遣・請負業 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 近時、ユーザ企業は、ビジネス支援提供企業に対しより付加価値の高いサー ビスを提供するよう求めるなど、ニーズが多様化・変化(単なるコストダウン から生産性向上に対する期待の高まり)しつつある中、ビジネス支援企業は、 このようなユーザ企業のニーズにきめ細かく対応することが重要である。 [具体的施策] ① 新ビジネスモデルの展開と優良なビジネス支援提供企業の認証等 就業者の意欲を高めるためには、就業者の権利保護を確実に行う必要がある。 このような各ビジネス支援提供企業における権利保護状況を外部に対して明確 にし、ユーザ企業がビジネス支援提供企業と契約するに当たり参考とできるよ うにビジネス支援サービス提供企業の認証、格付け等を行うことを検討する。 ◆ 「ユーザ企業も 2 次、3 次下請けではコンプライアンスよりもコスト重視 のメーカーが多い。中小のベンダーがコンプライアンスを遵守しようとし ても、大手業者がそれを無視して、低コストで参入するケースもある」 (請 負会社)。 ◆ 「コンプライアンスをきちんとしている事業者が、そうでない事業者と 競争しなければならず、厳しい状況に追い込まれている」(請負会社)。 (2)競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 企業の競争力強化を図る上で、ビジネス支援提供産業とそのユーザ企業が戦 略的な提携関係を深めることは極めて重要である。また、就業者の権利保護や 就業者の教育インセンティブが働く仕組みを構築することにより、就業者の意 欲が高まり、ひいては、ビジネス支援提供企業による質の高いサービス提供が 実現する。こうしたユーザ、ビジネス支援サービス提供企業、就業者の 3 者の win-win-win の関係を築くような環境整備を図る必要がある。 ◆ ビジネス支援提供企業とユーザ企業の双方で、パートナーを絞り込みよ り深い協力関係を構築していく動きが顕在化。 ◆ あるユーザ企業においては、グループ内の生産請負・派遣を担う会社を 請負会社との合弁で設立。ビジネス支援提供企業とユーザ企業が資本協力 した体制を構築。 [具体的施策] ① 人材育成とこれを促すモデル契約の整備 ビジネス支援提供企業とユーザ企業の間での教育投資コストなどの必要コス トに関し、応分の負担を可能とするような協力関係を築くことが必要であり、 60 そのためのモデル契約を整備する。また政府としても請負・派遣契約のあり方 に関する議論の場を設定することが必要である。 ◆ 「契約が、出来高制であるため、こちらが請負社員を育成しても、それ らは相手企業のメリットとなる。しかし、生産効率ではなく、品質水準を 上げようと思えば、ユーザが外部人材を教育せざるを得ない状況にある」 (電機メーカー)。 ◆ 「派遣の場合、個々人の能力は単価に反映されない。教育訓練コストな どの費用をユーザ側が認知し、適切な費用分担を実施することが必要であ る。ユーザが「少ないコストで早く生産するための手段」だけの目的で外 部人材を活用する意識を変える必要がある」(請負会社)。 ◆ 「提供側と利用側双方が発展するために、メリットをシェアできる仕組 みが必要である。そうしないと人材派遣側では教育投資を行うインセンテ ィブが発生せず、集めた人材を要望の人数だけ送り込むビジネスから発展 しない」(派遣会社)。 ② 意欲向上に資する就業者のキャリアアップ・パスの構築 就業者の意欲を高めるため、労働現場において就労する多様な就労契約形態 における就業者(正規社員、有期社員、派遣社員、請負社員等)が就労契約形 態にかかわらず、競争力を担う人材として活躍していくことのできる環境を整 備することが重要である。 そのため、ビジネス支援提供企業とユーザ企業が合意の上で、就業者のキャ リアアップのパスを構築することは、極めて重要であり、例えば業界として、 スキルを外形的に表示することを可能とする資格制度等を設けることが必要と 考えられ、政府としてもこのような取組に対して支援を行うことを検討する。 ◆ 「外部人材のモチベーションを高めるためには、適切な評価と同時に処 遇面での整備が必要である。その上で人材育成ができれば良い。しかし実 態は、評価はユーザが行うしかなく、処遇は派遣・請負企業側が行うしか ない。評価と処遇が連動するためには、両者の連携が不可欠である」 (請負 会社)。 ◆ 「スキル評価についても自社でできるように作り込んでいる途中である。 こうした取組はユーザ企業の協力が欠かせない」(請負会社)。 B. 実務教育サービス産業 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 企業が競争力強化するためには、ニーズに対応した人材を確保することが重 要である。しかし、企業の人材ニーズは多様化・高度化しているため、求めら れる人材が社内外から得られない旨報告されている。現状においては、教育産 業等が必要な人材の育成に十分貢献できていない状況にあると考えられる。 61 [具体的施策] ① 先導的なビジネスモデルの開発支援 実務教育サービス産業の振興を図るため、特に産業界においてニーズが高い スキルである高付加価値サービス展開力(高付加価値サービス提供体制をマニ ュアル化すること等により、高付加価値サービスの大量生産を可能とする能力) 、 外部人材の生産性向上(請負・派遣等の非正規社員に高いモチベーションを与 えつつ活躍させる能力)、事業企画・実践推進力(金融・財務面や企画・プロデ ュース面を踏まえて事業の成長を実現する能力)について、先導的な人材育成 ビジネスモデルの開発支援を行う。 ◆ プロ店長、旅館再生人材の育成等、これまで教育産業において教育ニー ズを満たすことのできなかった人材について新たなビジネスモデルにより 人材育成を行う事業を支援 (2)競争力・生産性向上 [問題意識・課題] 実務教育サービス産業は、人材育成サービスを通じて、企業の競争力強化に 貢献することが期待され、大学経営学部等の既存の教育インフラを更に有効活 用することよりサービスの質の向上を図る必要がある。 [具体的施策] ① 産業界と大学経営学部等との連携強化 産業界が大学経営学部等の活力を有効活用し得る方策について検討を行う。 C. 情報サービス産業 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 我が国情報サービス業は、技術の発展と経済のサービス化の中で、企業の経 営戦略実現、あるいは社会組織の様々な課題を解決する機能を提供する主体と して、多様かつ高度な役割を期待されている。 しかし、我が国ユーザ企業は、米国などと比較した場合、IT 利活用経営とい う点で未だ不十分であり、IT 経営の実現、すなわち生産性の高い経営を提供し ていくことが大きなミッションである。このため、情報サービス業においては、 情報システムの構築がユーザとの共同作業であるとの認識に立って、ビジネス の仕組みを構築していく必要がある。同時に、この認識はユーザ側にも求めら れる。 [具体的施策] ① 透明・オープンで価値創造型の市場創造 透明性の高い(可視化された)情報システム市場の創造は、 「価値」に基づく 取引を可能とし、ユーザの戦略的な情報化投資に大きく貢献する。信頼性、生 62 産性の観点から可視化を促進するために、 「情報システムの信頼性向上に関する ガイドライン」や「IT 経営力指標(仮) 」に基づいた具体的な可視化の手段を整 備し、もって市場の高度化を実現する。 ② 産業競争力のための情報基盤強化税制の普及 平成18 年4 月より「産業競争力のための情報基盤強化税制」が施行されてい る。企業にこの税制を活用してもらうことで、セキュリティに配慮しつつ、戦 略的なIT投資や、部門間・企業間の情報共有・活用を促進する。 ③ 情報システムユーザスキル標準の策定・普及 情報システムのユーザ企業が有すべき機能・役割、また、それらを実現する ために必要となるスキルを体系的に整理し指標化した情報システムユーザスキ ル標準の策定・普及を行うことにより、当該企業の発注能力の向上を図り、も って効果的な IT 投資の促進を図る。 (2)競争力・生産性向上 [問題意識・課題] 我が国の情報サービス業は、情報システムの提供を通じて日本経済の成長を 支えてきた。ただし、経済の高度化、技術の高度化の中でメインフレーム時代 に構築された産業構造が時代の要請にマッチせず、いわば制度疲労が顕在化し ている。さらに、この産業を支える基盤となるべき人材については、 「過酷な職 場環境、処遇が労働に見合っていない」というイメージが浸透していることも あって、優秀な新卒者の確保が困難となっているのが現状である。 [具体的施策] ① 国際競争力の高いイノベーション志向型の産業の創造 産業の長期発展のためには、グローバル市場で通用するイノベーティブな商 品・サービスの提供を目標とすることが重要である。そのために、オープンイ ノベーション環境の整備や、情報検索技術等次世代を視野に入れた戦略的技術 開発を行う。 ② 高レベル人材の育成 情報サービス・ソフトウエア産業で最も重要な生産資源である人材のレベル 向上のためには、いわゆる 3K 職場でなく、高い付加価値創造とそれに見合った 適切な処遇、いわば魅力ある職場を提供することが急務である。このための条 件として、IT スキル標準と情報処理技術者試験の有機的な連携を構築し、IT の 人材レベルを産業界として客観的に評価できる基準を整備することが重要であ る。これにより、当産業に携わる技術者自身のキャリア形成に係る予測性が向 上し、技術者にとっての産業の魅力の向上にもつながる。 63 ③ 産学が連携した IT 人材の育成・供給メカニズムの構築 産と学における IT 人材の質的・量的な需給ギャップが問題視される中、産学 が連携した実務対応型の教育の実施を支援する。 ④ グローバル展開 今後大手ユーザ企業がグローバル展開を行っていくことを考慮すると、情報 システムのベンダーもグローバルな競争環境に突入していくことが考えられ、 ベンダーは国際競争力の向上のため、海外の人材の効果的な利用や逆に海外へ の展開を行っていく必要がある。情報処理技術者試験の海外相互認証等アジア の人材の効果的な活用及び戦略的 ODA の活用や OSS の整備等海外市場への展開 の支援を行う。 D. デザイン産業 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 我が国のデザイン産業をさらに発展させていくためには、その需要の拡大を 図るため、国内におけるデザインに関する意識の向上を図ると共に、海外市場 も視野に入れた取組が不可欠である。近時、我が国文化や伝統に対する世界の 関心も高まりつつあるところであり、また、付加価値の評価は、 「価格から質へ」 、 さらに「質から品位への時代」へと移っている。 [具体的施策] ① 「新日本様式」の活用 我が国デザイン産業が「我が国の伝統文化をもとに、今日的デザインや機能 を取り入れて、現代の生活にふさわしいように再提言」する新しい日本ブラン ドである「新日本様式」を国内外に発信していくなどの取組を最大限活用する。 ◆ 活動の母体となる民間による「新日本様式」協議会が平成 18 年 1 月に設 立。 (2)デザイン産業の競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] デザイン産業の競争力強化やその活用による他産業の競争力の強化の実現の ためには、デザインをより活用しやすくする周辺環境を整備していくことが重 要である。このため、デザイン保護法制や表彰制度の充実、各種デザインを創 造する上で基盤となるデータの整備を行う。 64 [具体的施策] ① 人材育成 国内の大学・大学院等教育機関においてモデルカリキュラムやシラバスの検 討などデザインマネジメント人材育成を進めてきた。本年度より九州大学大学 院に芸術工学府デザインストラテジー専攻が設置され、デザインを戦略的に活 用できる人材育成への取組が行われている。 ② デザイン保護法制の充実 魅力あるデザインの創造を促すため、意匠権の保護強化や模倣品対策強化の 観点から、意匠法等の一部を改正する法律案が今通常国会に提出された。 ③ 「新日本様式」やグッドデザイン賞等の表彰制度の充実 我が国企業のデザインの優れた商品等を選定・表彰することにより、生活者、 生産流通関係者等のデザインに対する理解と関心を深めるとともに、商品等の デザイン水準の向上を図るため、グッドデザイン賞事業(G マーク制度)につい て、国際的な情報発信等引き続き魅力ある事業展開を行う。「新日本様式」に ついても、協議会で評価軸を定め、「新日本様式」にふさわしい製品・コンテ ンツが選定される予定であり、このような活動も支援する。 ④ 関連データの整備 ユニバーサルデザインを始めとする各種デザインを創造する上では、基盤と なる人体寸法・形状データの整備が必要であることから、「人間特性基盤整備 事業」において人体寸法・形状データベースの整備を行う。 65 66 流通・物流サービス 1. 定義 流通・物流は、供給側が生産する製品を販売につなげるとともに、需要側が 必要とする製品を調達する機能を果たすものである。具体的には卸売業、小売 業、運輸業等が該当する。 2. 現状と課題 ○市場規模 ○雇用規模 直近 約126.5兆円 約1447万人 2015年 → 約150.7兆円 → 約1458万人 GDP に占める流通・物流の割合は、卸売・小売業 13.3%、運輸業 4.7%(※名目 GDP、平成 15 年度 SNA)で、我が国経済において重要な意義を有している。 この分野において効率化・高付加価値化を進めることは、供給側の販売効率 の向上等につながるとともに、需要側の消費者余剰の拡大、消費者ニーズの一 層の充足につながる。 A. 流通分野 (1)欧米と比較した我が国の生産性・効率性 我が国の流通は世界的に見ても競争が激しく効率化・高付加価値化が進んで いる面があるものの、米国と比べて生産性が相対的に低いとの指摘がなされて いる。産業別 GDP を従業者数で除した労働生産性の数値で比較すると、我が国 の商業部門の労働生産性は、米国よりも低いが、欧州主要国よりも高い。 これは、欧米と比べて、歴史的に中小製造・小売業者の信用力を卸売業が補 完する役割を担ってきたため流通が多段階化していること、日本人特有の消費 文化が存在していること、狭隘な国土であること、輸送インフラの整備が十分 ではなかったこと、大企業よりも類型的に効率性が低い中小企業の占める割合 が高いこと、等の結果であると指摘されている。 更に、大手の流通企業についても、欧米に比べて販売管理費率が高く、利益 率が劣後している状況が見られる。 ◆ 「日本の流通は、消費者利益に直結しない。価格交渉などに多くの人材、 時間を割いている」 (外資メーカー)。 (2) 流通・物流に影響を与える日本人の消費行動・嗜好 こうした状況の背景として、日本人特有の消費行動・嗜好によって我が国の 流通・物流が形成されてきたことが指摘されている。更に、近年、我が国では、 ①消費者の価値観の多様化に伴って消費の量的拡大から質的向上が重視される ようになっていること(消費需要の多様化)、②インターネットで商品情報や価 格比較が容易になったこと等に伴って、品質・価格・入手形態等に対する要求 水準が高度化していること等、需要構造の変化が生じている。 67 図 3-28 GDP において流通・物流の占める割合(%) 卸売・小売業 運輸業 卸売業 小売業 各産業のGDP(兆円) 66.1 40.9 25.2 23.6 我が国GDPに占める割合(%) 13.3 8.2 5.1 4.7 日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 為替レート換算 国民経済生産性3) 100 103 68 68 75 商業4) 100 110 59 56 78 運輸・倉庫・通信業 100 換算レート 102 84 74 76 121.53円/ドル 175.01円/ポンド 108.75円/ユーロ 108.75円/ユーロ 資料出所>日本:内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算年報 平成16年版」 その他:OECD “National Accounts Vol.2 2004” 為替レート:IMF “International Financial Statistics Yearbook 2003” 労働生産性水準は、為替レートにより算出した。 以上から、独立行政法人 労働政策研究・研修機構作成 注)経済活動別労働生産性=経済活動別国内総生産/経済活動別就業者数(軍人を除く) 注3:国民経済生産性=国内総生産/就業者数(軍人を除く) 注4:商業は卸売・小売業・自動車及び家庭用品の修理・ホテル・レストラン。ただし、日本は、卸売・小売業。 日本のその他は、サービス業に含まれる。 図 3-29 小売業に関するデータ① 食品小売業の市場規模及び構成比 (%) 英 独 仏 米 日 市場規模(億円) 147,537 186,732 196,176 914,886 529,230 合計(%) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 ハイパーマーケット 13.3 18.0 41.7 15.8 16.1 スーパーマーケット 60.5 16.7 30.6 51.0 31.6 コンビニエンスストア 1.6 2.8 4.5 10.6 食品ディスカウンター 4.2 27.1 5.4 13.8 1.3 専門店 12.7 29.8 14.6 1.3 9.1 その他 7.7 8.5 4.9 13.6 31.3 日米大手小売業財務データ比較 ウォルマート イオン 2004/1 ①総売上高 ②売上原価 ③売上総利益(①−②) ④営業収入 ⑤営業総利益(③+④) ⑥販売費及び一般管理費 ⑦営業利益(⑤−⑥) 単位:百万円 イトーヨーカ堂 2004/2 29,716,221 100.0% 23,040,740 77.5% 6,948,149 23.4% 272,667 0.9% 7,220,816 24.3% 5,206,300 17.5% 1,741,848 5.9% 1,676,112 100.0% 1,251,271 74.7% 424,841 25.3% 88,252 5.3% 513,093 30.6% 489,076 29.2% 24,017 1.4% 2004/2 1,474,808 100.0% 1,066,600 72.3% 408,208 27.7% 19,153 1.3% 427,361 29.0% 403,259 27.3% 24,103 1.6% ※為替レート:1USD = 115.93円(2003年度期中平均レート) 業態の定義 ハイパーマーケット:売場面積2500㎡以上でうち35%以上がノンフードの売場 スーパーマーケット:売場面積400㎡以上2500㎡未満、食品販売構成比70%以上 コンビニエンスストア:週7日営業、6日以上は開店時間午前9時前かつ閉店時間午後8時以降。セルビデオ、弁当・サンド イッチ類、新聞・雑誌、切花、グリーティングカードのうち、2以上を取り扱う 食品ディスカウンター:売場面積300-900㎡、取扱品目はプリパッケージのグロサリー中心に1000品目以下。PB商品が 多い。又は、やや大きめの売場面積で1500-4000品目を取扱うタイプも含む 専 門 店:ベーカリー、精肉店、青果店、鮮魚店など そ の 他 食 品 販 売:構成比が50%以上の単独小売業(店舗数2-3店以下)など、ボランタリーチェーン 出所:各社有価証券報告書、アニュアルレポート 日本の消費者は買物出向頻度が高く、家庭内在庫をあまりもたない。 東京都での消費者の小売店利用頻度 地元の商店(商店街)又は大型店の利用頻度 米国でのスーパーマーケット又は食料品 店の利用頻度 2週に1回 以下 2% 週に1回以 下+不明 18% ほぼ毎日 46% 月に1回以 下 7% 2週に1回 7% 週に2回以 上 16% 週3回 15% 週1回 42% 週に2ー3 回 36% 週に1回 70% 週2回 29% 出所:東京都「東京都における消費 者購買行動調査」2002年 英国における主たる食料品の購買頻度 週4回以上 12% 出所:米国FMI「トレンズ2004」 出所:英国競争委員会「スーパーマーケット」2000年 日本は在庫回転を高く、鮮度の良い商品を供給している。 日本の店舗密度は高く、消費者に利便性を提供。 人口1万人あたりの小売業店舗数 日本 米国 英国 フランス ドイツ 91.0 54.8 52.2 51.0 62.3 小売業の商品回転率の日米比較 日本 米国 商品販売額 商品手持額 商品回転数 売上高 在庫高 商品回転数 (億円) (億円) (回/年) (百万ドル) (百万ドル) (回/年) (店/万人) 出所:米国:小売業店舗数はCensus2002、その他はU.S.Dept..of Agriculture, Economic Research Service, Food Marketing Review,annual 英仏独:Euromonitor Retail Trade International 2001、Mintel International Group/European Retail Handbook2002/2003 日本:経済産業省・商業統計 小売業計 自動車小売業を除く計 1,351,253 127,948 10.56 3,230,122 425,250 7.60 1,190,497 115,503 10.31 2,383,874 281,767 8.46 各種商品小売業 173,183 12,853 13.47 451,365 62,621 7.21 飲食料品小売業 412,376 16,077 25.65 489,445 35,256 13.88 出所:経産省「商業統計」2002年、U.S. Department of Commerce U.S. CENSUS BUREAU「Annual Benchmark Report for Retail Trade and Food Services」2004 68 (3) 需要構造の変化に合わせた流通の変化 需要構造の変化に合わせて供給構造が変化する中で、事業所数の減少、小売 業の合併、上位企業への売上高の集中など、流通の集約化が徐々に進んでいる。 また、多様化する消費ニーズに対応する形で、ドラッグストア、ホームセン ター、100 円ショップ、100 円コンビニなど、従来の総合スーパーや百貨店とは 異なる小売業態が成長している。 更に、ブロードバンド化による定額インターネットが普及し、ネットショッ ピングの環境が整備されたことから、取扱商品が従来までのパソコン、書籍、 CD 等から衣料品等に拡大しつつあり、ネットショッピング等の無店舗での販売 額も増加傾向にある。 こうした消費構造の変化に対応するには、メーカー、卸売、小売等の流通業 界全体として、変化する消費の情報を共有し、消費ニーズに応える財の提供が できるような連携が重要となっている。 <事例> ◆ 「消費牽引型の流通構造の変化は、酒類や医薬品等消費財の流通に関す る規制緩和と相まって進んでいるところであり、今後も継続していくと考 えられる」(消費財メーカー)。 ◆ 「流通の起点がメーカーから消費者へとシフトしている」(卸業者)。 (4) 流通の効率化・高付加価値化のための情報化に対する欧米との相違 ① 流通・物流分野では、多数の企業が高い頻度で情報交換を行っており、情 報技術の活用が効率化に効果的と言える。 流通情報化の効果は、消費ニーズへの対応において差別化の源泉にならな い部分をできるだけ同じフォーマットで利用すればするほど高くなる、とい う逓増的な関係にあるため、メーカー・卸・小売の企業間の壁を越えて標準 化された流通情報化を推進することが重要である。 こうした企業間の壁を越えた標準化は、メーカー・卸・小売間のサプライ チェーンにおけるデータ分析や円滑な情報共有・すりあわせに基づく的確な 消費ニーズへの対応を可能にし、付加価値の増大も図っていくことが可能と なる。 ② 我が国と欧米を比較すると、企業毎、業界毎に、利益の源泉とならない部 分も含めて差異化したバラバラなフォーマットで情報化が進展している。 ※ 商品の属性を表すデータについて、入力する内容が企業毎に全くバラバ ラである。また、EDI におけるデータ項目や通信方式も企業別、商材別に異 っている。 結果として、メーカー・卸・小売間のサプライチェーンにおける情報共 有・すりあわせや消費ニーズへの的確な対応が十分に進んでいないことが、 欧米に比べて流通システム全体での非効率を招いている。 69 <事例> ◆ 「企業間の EDI(電子データ交換)のフォーマットは 1,400 通りあり、こ れら全てに対応している」(メーカー)。 ◆ 「欧米の大手流通業よりも比較的規模が小さく上位企業の寡占度が低い 我が国では、企業間で標準化のための調整が困難であったため、標準化が 進んでいない」(メーカー)。 ◆ 「もはや個別フォーマットへの対応は差別化要因ではない」 (食品卸事業 者)。 図 3-30 1,800,000 1,600,000 小売業に関するデータ② 小売業の商店数の推移(1991-2002) 食品卸売業上位15社のシェア推移 1,605,583 1,449,948 1,419,696 1,406,884 50.0% 1,400,000 10 0% 小売業態別商品販売額シェア(自 動車小売業・燃料小売業は除く) 1,300,057 1,200,000 1,000,000 8 0% 40.0% 業種店他 800,000 600,000 400,000 16.6% 30.0% 17.7% 6 0 .3 6 4 .0 6 7 .0 18.1% 5 6 .7 5 9 .4 衣 料 品 スー ハ ゚ー ト ゙ラッ ク ゙ス トア 6 0% 15.3% 200,000 14.1% 13.8% 0 1991 1994 1997 1999 6位∼15位のシェア 上位5社のシェア 4 0% 2002 出所:商業統計 自動車・燃料小売業除く 0 .8 0 .7 20.0% 小売業計 2 .8 10.0% 20.5% 19.2% 18.1% 21.9% 22.8% 2 0% 24.5% 1 .8 3 .5 2 .7 1 .5 1 .0 1 .1 3 .9 4 .5 4 .4 5 .3 5 .7 1 .3 2 .3 6 .2 1 0 .1 1 1 .6 1 2 .7 1 4 .5 1 4 .7 7 .6 8 .2 8 .5 7 .7 7 .9 1 0 .1 9 .3 9 .2 8 .4 7 .8 199 1 1 994 199 7 1 999 20 02 0% 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 出所:商業統計 出所:(財)流通経済研究所 (上位企業の売上高は日経流通 新聞。シェアは、商業統計における酒類卸売業、菓子卸売業、 その他食品・飲料卸売業の1次卸販売額をベースに作成) 図 3-31 小売業に関するデータ① 欧米の高い集中度に比較して、日本では 上位企業への集中度が低い。 独自の発注フォーマットでデータを送信している小売業が大半。 オンライン発注フォーマット(複数回答) 日米欧の小売業上位5社の累積市場シェア(日米仏独2000 年、英2001年) 自社独自、または取引先指定フォーマット% % 50 英国-食品小売市場 40 仏国-総小売市場 米国-食品小売市場 30 独国-総小売市場 20 日本-食品小売市場 ン タ ー グ ス トア 電 量 販 店 専 門 店 そ の 他 無 回 答 ッ ラ 家 セ ド 舗 舗 店 店 協 協 ー ム 生 ホ ー トア ス ス 農 ー パ ニ エ ン ー パ ー ス ー ミニ 第1位 ン ビ 0 第2位 第3位 第4位 第5位 資料:英−IGD、仏−Retail Intelligence, INSEE、米− supermarket news,米国商務省、独−M+M Eurodata, Retail intelligence、日−有価証券報告書、日本スーパー名鑑、商業統計等 コ ス 料 品 食 衣 ス ス ー ー パ パ ー 店 貨 全 体 10 百 354 22 16 126 3 11 10 6 13 35 35 2 57 10 8 60 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 合 全体 百貨店 総合スーパー 食品スーパー 衣料スーパー ミニスーパー コンビニエンスストア 農協店舗 生協店舗 ホームセンター ドラッグストア 家電量販店 専門店 その他 無回答 自社独自、ま たは取引先 件数 指定% 61.9 54.5 62.5 57.1 66.7 81.8 60.0 50.0 46.2 65.7 54.3 0.0 75.4 90.0 62.5 総 業態 出所:流通システム開発センター「2003年版流通情報システム化実態調査報告書」 70 コ ン ビニエ ン ス ス ト ア 食 料 品 スー ハ ゚ー 総 合 ス ーハ ゚ー 百貨店 0.0% 1996年度 住 関 連 スー ハ ゚ー B.物流分野 (1)物流分野の規制緩和 貨物自動車運送事業法及び貨物運送取扱事業法について、1990 年に、トラッ ク事業の参入規制の緩和と、輸送手段別の管理から複合一貫輸送への対応を内 容とする規制緩和が実施された。これによって、新規参入の拡大によりコスト 競争が激化し、非正社員化・パート化による対応が進展するとともに、物流の 側面からサプライチェーン全体の効率化が図られたことにより、物流コストの 低下が実現した。 (2)経済のグローバル化における国際・国内の物流 経済のグローバル化が進展するなか、アジアと我が国との間の貿易量が増大 しており、アジアを中心としたグローバルな視点で事業最適化を図る我が国企 業にとっては、国際物流の効率化が一層重要となってきた。 しかし、国際物流及びこれに接続する国内物流のトータルコストやリードタ イムにおいて、国内物流区間の占める比重が高くなっており、国内物流の効率 化が必要とされている。 3.対応の方向 A.流通分野 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 流通分野における需要は消費活動全体の量に連動するものであり、その創 出・拡大に当たっては、適切なマクロ経済運営が重要である。 (2)情報化・標準化による生産性の向上 [問題意識・課題] 流通ニーズが多様化・高度化しつつある中で、卸・小売の事業所数の減少、 企業間の合併等、集約化の動きが進んでいる。また、メーカーが流通機能を担 い、物流事業者が小売業に進出するといったメーカー、卸、小売、物流という 従来の垣根を越えたビジネスモデルが出現しており、必要なルール整備など新 たな変化への対応が必要となっている。こうした動きへの対応は流通分野の生 産性向上に寄与するものである。 とりわけ、情報技術をより効果的に活用し、消費者に対して付加価値の高い 71 図 3-32 物流に関するデータ 売上高に占める物流コスト比率 9.4 9.2 9 8.8 8.6 物流コスト比率 8.4 8.2 8 7.8 97年 99年 01年 日本ロジスティクスシステム協会調査 アジアと我が国との間の貿易量の増大 1991年 高まる国内物流区間の占める比重 海上貨物の平均所要日数の構成 2003年 アジア→日本(東京) 0% 763 20% 40% 60% 80% 日本(東京)→アジア 0% 100% 20% 40% 60% 80% 100% 321 中国 267 21 86 103 630 23 707 19 955 594 287 509 NIEs 上 海∼東 京 23 23 23 33 3 3 28 25 13.0日 54 54 339 9 31 31 44 4 4 24 2 4 18.0日 1054 231 665 227 ASEAN4 16.0日 728 951 (注) ・出所:IMF DOT。全て輸出データ(FOB)。 ・アセアン4はフィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ 28 28 177 1 12.5日 52 46 36 18.0日 37 37 17.5日 アジアサイド 446 0% 20% 40% 60% 80% 海上(航空)輸送 日本サイド 日本(東京)→アジア 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 445 仁 川∼成 田 上 海∼成 田 18 5 シンガポール∼成 田 18 10 19 4 77 63時 間 64 77 62時 間 64 67時 間 63 3 332 2 75時 間 32 75時 間 ASEAN4 NIEs 41 224 4 366 3 アジア→日本(東京) 234 417 京 航空貨物の平均所要時間の構成 254 669 山∼東 日本 日本 320 釜 シンガポール∼東 京 175 389 48 香港 中国 香港 241 (単位:億ドル) 72 4 出所:「アジア主要国の運賃・料金及び日本∼当該諸国間輸送コスト実態調査」(2001年度 72 19 18 38時 間 経済産業省委託調査) サービスを提供していく観点からは、更なる取組みの余地がある。 ◆ 「製造企業が流通分野に進出、流通企業が物流分野に進出、というよう に、流通業界内の製造、卸、小売、物流といった分野の垣根がなくなってお り、制度等に関する分野間での相違に留意することが重要。」(物流企業) [具体的施策] ① IT を活用した流通システムの情報化・標準化による効率化等 企業間商取引でやりとりされるデータのうち、消費ニーズへの対応におい て差異化の源泉にならない部分について標準化を推進する(具体的には、総 合スーパー、日用雑貨品・加工食品メーカー・卸売等、業種横断的・商材横 断的に商品情報や EDI について標準化を推進する) 。 また、中小卸・小売業等についても、消費需要の多様化に対応すべく、販 売情報等の情報収集を行い、安定した商品調達力等のリテールサポートの強 化、製・配・販や業種・業態を融合した流通システムを構築することで効率 化を図る。 ※企業間商取引の標準化に関して、現在、総合スーパー、食品スーパー、日 用雑貨品・加工食品メーカー・卸売の主要な企業を中心として、標準化に 取り組む機運が高まっている。 ② 最新のテクノロジーを活用した流通システムの高付加価値化 最新のテクノロジーを活用して、生産から消費に至るまでの流通全体の効 率化・付加価値向上を実現するとともに消費者満足を向上させる「フューチ ャーストア構想」を推進する(商品識別、在庫検索等に革新をもたらす電子 タグの実用化の促進、クレジットカードや携帯課金システム等の決済サービ スの高度化、決済サービスにおける消費情報の活用等)。 また、メーカーから小売までの流通においてパレット等の物流資産の効果 的な活用を通じた付加価値の向上について検討を進める。 更に、こうしたビジネスモデルの国際標準化についても検討を進める。 流通では、情報の流れに伴い決済情報もやりとりされるが、IT 技術の発展 により債権の発生・消滅等の取引の可視化が進めば、売掛債権担保融資や一 括決済等の信用供与や決済についての新たな金融サービスの提供が可能とな ると考えられるため、制度・実態の両面から検討を進める。 カード決済において、店舗からカード会社に渡される情報には、カード番 号や金額に加えて、商品情報を付加しうるが、現時点では、積極的な消費動 向の把握に利用されていない。そこで、こうした情報を消費動向の把握に利 用するための方策を検討する。 73 (3)流通分野の取引環境整備 [問題意識・課題] ネット取引は、生産性の高い新たな流通手法として注目されているが、取引 が増大する中、インターネットの匿名性を背景として、不十分・不適切な情報 提供や詐欺等、消費者保護が十分図られない面もあり、更なる発展の阻害要因 となりかねない。 ◆ 「インターネットオークションで、事業者が出品していたパソコンを購 入した。支払い方法が先払いの銀行振込しかなく、代金を振り込んだが、 納期を過ぎても届かず、連絡も取れない。」 [具体的施策] ① インターネット取引における消費者保護の徹底 利用者、消費者が安心・安全に取引できる環境の整備を図るため、不適切な 広告表示の排除や法令で求められた表示事項の遵守確保、安心・安全な支払方 法の普及を促進。裁判外紛争処理(ADR)メカニズムの充実に向けた取組を支援 する。 B.物流分野 (1)需要の創出・拡大 [問題意識・課題] 物流分野における需要の規模は経済活動全体の量に連動するものであり、そ の創出・拡大に当たっては、適切なマクロ経済運営が重要である。 (2)競争力・生産性の向上 [問題意識・課題] 物流は、単に財を物理的に移動する機能にとどまらない。生産と消費の間の 財の流れ(=物流)に関する情報共有を通じて、自社と取引先を含むサプライ チェーンの全体最適化と効率化が可能となる。こうした物流機能の重要性を踏 まえ、物流事業者は、IT 活用による在庫管理、共同配送、配送経路の見直し等、 より付加価値の高いサービスや物流改革を荷主に提案していくことが重要であ る。 また、わが国物流分野では、国際物流及びこれに接続する国内物流のトータ ルコストやリードタイムにおいて国内物流の占める比重が高い。このため、国 内物流の生産性の向上を図ることが必要であるとともに、国際物流と継ぎ目の 無い連結の実現を図ることが必要である。 74 [具体的施策] ① 国際的な物流システムの効率性向上 国際拠点となる港湾・空港といったインフラの整備やそれら施設の管理・運 営手法の改善、輸出入や港湾手続に関する電子化の促進、電子タグやコンテナ 等の標準化等を通じた国際的な物流基盤の整備等を進めることにより、国際物 流と国内物流の継ぎ目のない連結の実現を図る。 ② 国内における物流システムの生産性向上 国内物流について、国際物流との円滑な連結とともに、更なる生産性向上に よる競争力強化が重要である。このため、パレット等の輸送機材の標準の普及、 電子タグ等の情報技術の標準化や実用化の促進、安全・安心、確実で、標準的 な物流サービスを持続的に提供出来る方策の検討等により、国内物流の生産性 向上を図る。 ③ 国際・国内一体となった物流ネットワークの整備 物流拠点から生産拠点までの切れ目のない直結した物流ネットワークの構築 (空港・港湾−高速道路 IC−工場間のアクセス効率の向上など)を図る。 75 76 スケジュール 2 月 17 日(金) 第 1 回サービス政策部会(10:00-12:00、第一特別会議室) ・サービス産業活性化の意義 ・サービス産業の現状と課題 ・サービス政策の方向性 3 月 15 日(水) 第 2 回サービス政策部会(15:00-17:00、国際会議室) ・中間とりまとめ骨子(案)について 5 月 10 日(水) 第 3 回サービス政策部会(14:00-16:00、国際会議室) ・中間とりまとめ(案)について 77 産業構造審議会サービス政策部会委員 部会長 阿部 正浩 獨協大学経済学部助教授 石塚 邦雄 ㈱三越代表取締役社長 上原 征彦 明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授 上村多恵子 ㈱京南倉庫代表取締役社長 尾池 ㈱ナストーコーポレーション代表取締役会長 良行 大石佳能子 ㈱メディヴァ代表取締役 大日向雅美 恵泉女学園大学大学院教授 加賀見俊夫 ㈱オリエンタルランド代表取締役会長 セーラ・マリ・カミングス ㈱桝一市村酒造場取締役 神野 正博 特別医療法人財団董仙会理事長 今野 由梨 ダイヤルサービス㈱代表取締役社長 斎藤 敏一 ㈱ルネサンス代表取締役社長 迫本 淳一 松竹㈱代表取締役社長 妹尾堅一郎 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 田中 滋 慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授 中島 隆信 中村 裕 西本 甲介 西山 悟 ㈱タスク・フォース代表取締役 廣田 正 ㈱菱食代表取締役会長 星野 佳路 ㈱星野リゾート代表取締役社長 前田 正子 横浜市副市長 俣木 盾夫 ㈱電通代表取締役社長 森 正勝 アクセンチュア㈱取締役会長 依田 巽 和田 洋一 慶応義塾大学商学部教授 ㈱ロイヤルパークホテル代表取締役社長 ㈱メイテック代表取締役社長 ㈱ギャガ・コミュニケーションズ代表取締役会長 ㈱スクウェア・エニックス代表取締役社長 78