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河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の 特性
大成建設技術センター報 第37号(2004) 河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の 特性に関する実験的研究 -動力・重力併用式CSG製造装置DK-IIによる製造と施工- 大友 健*1・楠見 正之*2・道場 信昌*2・小菅 憲正*3・平川 勝彦*3 Keywords : CSG (cemented sand and gravel), unit water content, compaction, structural strength, void content, river-bed sand and gravel CSG(セメント砂礫混合物),単位水量,締固め,構造体強度,空隙量,河床砂礫 2. 室内実験による CSG の特性の評価 1. はじめに 台形 CSG(セメント砂礫混合物:Cemented Sand and 2.1 試験内容と使用材料、供試体の作成方法 室内実験においては、単位セメント量、単位水量、母 Gravel)ダムは「材料の合理化」に着目した新しいダム 1) 形式である 。従来のダム構造と比較して、ダムサイト 材の粒度構成の各々の配合材料要因と、供試体作成時の 周辺で得られる材料を有効に活用することができ。また 締固め密度とが CSG の圧縮強度に及ぼす影響を測定し 原石山・骨材製造設備の省略によるコスト縮減と環境保 た。 全が可能とされるものである。この CSG の製造では、 母材には忠別川産の河床砂礫を使用し、最大寸法が 従来からバックホウなどによる撹拌混合が行なわれてき 80mm になるようにスクリーニングした自然粒度母材と、 2) が、大規模な台形 CSG ダムの施工の要求に適応し これらをふるい分けによって粒度調整したものを使用し て、製造効率と品質安定性の向上を目的とした新しい た 。 こ れ ら の 粒 度 分 布 を 図 -1 に 示 す 。 母 材 密 度 は CSG の製造技術が要求されるようになってきている。 2.46kg/m3 である。 た 著者らは、CSG 工法における製造効率向上や品質の 結合材として普通ポルトランドセメントを使用し、標 安定化などを目的として、大量打設に対応できる CSG 準の単位量が 60kg/m3 となるように母材に対して外割り 連続混合装置(重力・動力併用型 DK-II3))を開発する で添加した。同じ種類の材料による実績を考慮し 2)、母 4) 材の含水比が 10.0%となるように調整したので、単位水 とともに、CSG の自重落下による混合効率に関する 量としては 125kg/m3 が標準となった。 5) 研究を継続的に進めている 。 本報告は、河床砂礫材料を母材とした CSG を対象と 練混ぜには、傾胴形の重力式ミキサ(公称容量 して行なった室内実験、実機製造実験、模擬構造体施工 0.055m3,最大内径 600mm,回転数 27.6r.p.m.)を使用し 実験の結果をまとめたものである。室内実験においては、 様々な配合・材料・製造要因が CSG の密度と強度に及 実機により製造した CSG について、単位水量と川床砂 礫の種類の相違を考慮した配合を選定し、これにより得 られる CSG の性質を確認した。さらに、これらの CSG を打ち込んで構築した模擬構造体について密度と強度を 評価することで CSG の施工性能についても考察した。 *1 *2 *3 技術センター土木技術研究所土木構工法研究室 土木本部土木技術部 札幌支店土木工事作業所 100 ふるい通過百分率(%) ぼす影響を把握した。実機製造実験では、連続混合装置 80 60 40 20 0 0.1 1 10 ふるい呼び寸法(mm) Uc:均等係数 粒調1 Uc=39.0 粒調2 Uc=64.0 自然粒度 Uc=89.3 粒調4 Uc=75.7 粒調5 Uc=77.5 100 粒調6 Uc=18.5 図-1 実験に使用した母材の粒度分布 Particle Distribution of Sand and Gravel 19-1 河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の特性に関する実験的研究 2 圧縮強度(N/mm ) た。ミキサ内に母材(30 リットル)を投入し、セメントを その上に載せた後、20 秒間回転してから排出し、排出 した試料のうち骨材寸法が 40mm 以下のものをウエッ トスクリーニングによりふるい取り、φ150×300mm 供 試体 3 本に成型した。 2.0 1.5 1.0 W=125kg/m3 密度=2.00-2.06g/cm3 0.5 0.0 40 成型には外部振動機を使用し、湿潤密度が 2.0g/cm3 程度(現位置採取砂礫の 150mm までの粒径に換算する 図-2 単位セメント量と圧縮強度の関係 Influence of Cement Content for Compressive Strength と湿潤密度 2.25g/cm3 に相当する)となるように締め固 めた。供試体は材齢 7 日まで 20℃で封緘養生してから 2 圧縮強度(N/mm ) 圧縮強度試験に供した。 2.2 単位セメント量と単位水量、締固め密度の影響 単位セメント量を 45~75kg/m3 の範囲で変化させた場 合の圧縮強度の変化状態を図-2 に、単位水量を 44~ 209kg/m3 の範囲で変化させた場合の締固め密度と圧縮 2.0 1.5 1.0 0.5 C=60kg/m3 0.0 30 強度の変化状態を図-3 に示す。 締固密度(g/cm ) セメントを多く添加するほど、圧縮強度は増大する傾 3 向にあるが、単位水量については、圧縮強度を最大とす る単位水量が存在するようである。単位水量が一定量以 下であると、締固め時間を大きくしても所定の供試体密 度が得られず圧縮強度が小さくなる。単位水量が大きく 2.1 2.0 1.9 C=60kg/m3 1.8 30 3 209kg/m の場合締固めなし)作成されるが、単位水量 60 90 120 150 180 210 3 単位水量(kg/m ) 図-3 単位水量と圧縮強度の関係 Influence of Unit Water Content for Compressive Strength が大きくなるほど圧縮強度は小さくなる傾向にあった。 単位セメント量と単位水量が同じ条件で、締固め密度 を変化させた時の圧縮強度の変化状態を図-4 に示す。 2 圧縮強度(N/mm ) 単位セメント量や単位水量の影響に比較して締固め度の 影響が非常に大きくなることが明らかであり、CSG の 強度を設定する場合には、締固め密度の設定が重要にな ることが明らかとなった。 2.3 母材の粒度構成の影響 図-5 および図-6 には、締固め時間を一定とした場合 に、母材の均等係数と粒形 5mm 以下の構成比率が圧縮 4.0 3.0 W=125kg/m3 C=60kg/m3 2.0 1.0 0.0 1.7 1.8 1.9 2.0 2.1 2.2 2.3 3 締固め密度(g/cm ) 図-4 締固め密度と圧縮強度の関係 Influence of Density for Compressive Strength 強度および締固め密度に及ぼす影響を示す。図-7 には 6) 60 90 120 150 180 210 3 単位水量(kg/m ) 2.2 なれば密度の大きい供試体が容易に(単位水量 同じように粒度分布定数 50 60 70 80 3 単位セメント量(kg/m ) が圧縮強度および締固め密 度に及ぼす影響を示す。 同じ母材であっても粒度構成が異なる場合には圧縮強 2.2 に示すように、CSG の強度の評価には水セメント 度を最大とする粒度分布が存在する。粒度分布の構成要 比のほかに供試体の密度も影響していることが明らかな 素としては、均等係数の影響は明確ではなく、微粒分量 ので、供試体の密度から空隙率を算定し、空隙セメント (ここでは粒形 5mm 以下の量として区分)の影響が大 比((A+W)/C,A:空隙容積,W:単位水量(容積),C: きい。粒子の細かさと均質性の双方を同時に評価できる 単位セメント量(容積))による圧縮強度の評価を試みた。 n 粒度分布定数 b(=1/De :ロージン・ラムラー式)により 図-8 には、単位セメント量・単位水量・締固め密度 評価すれば、圧縮強度が最大となる粒度分布と締固めの の異なる供試体の強度と空隙セメント比の関係を示す。 難易度が急変する粒度分布状態を独立して評価すること 図-9 は、図-8 に 2.3 において示した粒度分布の異なる が可能となるようである。 母材に関する測定結果を重ねたものである。 単位水量が著しく大きい配合を除けば、単位セメント 2.4 空隙セメント比による評価 19-2 20 40 60 均等係数 80 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 2.2 2.1 2.0 1.9 20 40 60 均等係数 80 2.3 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 100 2.3 0 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 3 3 締固め密度(g/cm ) 0 1.5 1.2 0.9 0.6 0.3 0.0 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 n 粒度分布定数b=1/De 2 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 圧縮強度(N/mm ) 1.5 1.2 0.9 0.6 0.3 0 第37号(2004) 締固め密度(g/cm ) 2 圧縮強度(N/mm ) 大成建設技術センター報 100 2.2 2.1 2.0 1.9 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 n 粒度分布定数b=1/De 1.5 1.2 0.9 0.6 0.3 0 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 0 10 20 30 40 50 粒形5mm以下の構成比率(%) 2.3 粒調1 粒調2 自然粒度 粒調4 粒調5 粒調6 2.2 2.1 2.0 1.9 0 10 20 30 40 50 粒形5mm以下の構成比率(%) 分布 定数 n 0.54 0.56 0.56 0.60 0.57 0.73 粒度分 布定数 n b=1/De 0.26 0.19 0.15 0.11 0.12 0.06 図-7 粒度分布定数 b と圧縮強度,締固め密度の関係 Influence of Particle Distribution Coefficient for Strength and Density 60 1.8 4 f'c=160/((air+w)/c) 2 3 締固め密度(g/cm ) 粒度特 性定数 De 粒調1 12 粒調2 19 自然粒度 30 粒調4 38 粒調5 43 粒調6 50 種類 圧縮強度(N/mm ) 2 圧縮強度(N/mm ) 図-5 均等係数と圧縮強度,締固め密度の関係 Influence of coefficient for Strength and Density 60 セメント量 変化 単位水量変 化 締固め度変 化 双曲線 3 2 1 W=210 0 0 図-6 微粒分量と圧縮強度,締固め密度の関係 Influence of Fine Particle Content for Strength and Density 図-8 空隙セメント比と圧縮強度の関係 Influence of Void Cement Ratio for Compressive 4 f'c=160/((air+w)/c) 2 圧縮強度(N/mm ) 量・単位水量・締固め密度が圧縮強度に及ぼす影響は、 空隙セメント比によって統一的に評価することができそ うである。この場合、空隙セメント比と圧縮強度とは双 曲線関係にあることが推察される。一方、粒度分布が異 なる場合には、A,W,C による一義的な関係は当ては まらない。空隙セメント比―圧縮強度曲線は、ある粒度 分布に固有に存在するものであることが考えられる。 5 10 15 20 25 30 空隙セメント比(容積) セメント量 変化 単位水量変 化 締固め度変 化 粒度調整 3 2 1 0 0 3. 連続混合装置(重力・動力併用型 DK-II)により製造した CSG の特性 1.8 5 10 15 20 25 30 空隙セメント比(容積) 双曲線 図-9 空隙セメント比と強度の関係に及ぼす粒度分布の影響 Influence of Particle Distribution forRelationship Void Ratio and Strength 3.1 連続混合装置(重力・動力併用型 DK-II)の概要 連続混合装置(重力・動力併用型 DK-II3))の概観と 19-3 河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の特性に関する実験的研究 SG +W 通過百分率(%) 写真-1 CSG 連続混合装置 DK-II の全景 View of CSG Continuous Manufacturing System DK-II 拡散 +C 落下 100 粗粒砂礫 細粒砂礫 80 60 40 20 0 0.1 1 10 ふるい呼び寸法(mm) 100 種別 密度 吸水率 (g/cm3) (%) 粗粒砂礫 2.49 5.68 細粒砂礫 2.46 6.57 衝突 積込 12 2 圧縮強度(N/mm ) 2 圧縮強度(N/mm ) 図-10 連続混合装置の構成要素 Elements of CSG Continuous Manufacturing System 9 6 3 0 12 図-12 砂礫の粒度分布 Particle Distribution of Sand and Gravel パドル衝突機会 26% 46% 効果を高めることに寄与していると考えている。この装 9 6 置を最大速度で稼動させれば、おおよそ 75m3/hr 程度の 3 CSG が連続して製造可能である。 3.2 試験内容と使用材料、供試体の作成方法 0 振動 振動 回転 なし あり 49rpm 回転 実機製造実験は、3.1 に示した連続混合装置により、 73rpm 1バッチを 3m3/hr 程度以上として CSG を製造したもの である。2種類の川床砂礫を母材として、異なった単位 図-11 振動とパドルの回転が圧縮強度に及ぼす効果 Effects of Vibration of Equipment and Rotation of Paddle 水量により得られる CSG の性質を確認した。 母材には、最大寸法を 80mm に調整した忠別川産の 川床砂礫2種(粗粒:河川水面より上部分で採取,細 装置の構成要素を写真-1 および図-10 に示す。ベルトコ 粒:河川水面より下部分で採取)を使用した。これらの ンベアによって砂礫材料を上方向に移動させる過程にお 母材の粒度分布は図-12 に示すものである。両者の粒度 いてベルトスケールによって母材重量を計量し、これに のみかけの差は小さいが微粒分の質は異なるようである 応じて、散水による単位水量調整、所定量のセメント噴 (土質試験による最適含水比は粗粒:8.6%,細粒 9.7%) 。 出吹付けを行なう。セメント吹付け過程において同時に 結合材として普通ポルトランドセメントを 60kg/m3 添 パドルミキサによる母材の攪拌分散を行なうことで、効 加し、単位水量を 50~130kg/m3 の範囲で変化させ、フ 率の良いセメント分散を行ない、ボックス内での落下衝 レッシュな CSG の締固め密度および。硬化 CSG の圧縮 突過程により混合を行なうシステムである。パドルによ 強度を測定した。 る攪拌作用と自重落下時の衝突振動 5) に電気動力によ 連続混合装置から排出した試料から 40mm 以下のも るエネルギを与えることから「重力・動力併用型」とな のをウエットスクリーニングによりふるい取り、φ150 る。なおいずれの動力も図-11 に示すように CSG の混合 ×300mm の供試体に成型し、この重量から締固め密度 19-4 粗粒砂礫 2.3 2 3 2.4 細粒砂礫 2.2 粗粒施工 2.1 細粒施工 2.0 1.9 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 50 70 90 110 3 単位水量(kg/m ) 130 10 8 圧縮強度差 2 (N/mm ) 粗粒砂礫 細粒砂礫 6 粗粒施工 4 細粒施工 2 50 70 90 110 3 単位水量(kg/m ) 130 2 圧縮強度(N/mm ) 試験体 密度 2.05 W=100 3 kg/m に相当 1.90 6 7 3 エアメータ 密度 細粒 2.10 試験体 密度 2.05 W=85 3 kg/m に相当 2.00 1.95 1.90 5 6 7 粗粒材 細粒材 6.0 4.0 2.0 W=85 W=100 0.0 0.4 8 9 10 11 12 含水比 (%) 2.15 施工1 試験体 粗粒材 細粒材 4.0 2.0 0.0 土質試験 密度 図-14 含水比と乾燥密度の関係 Relationship Moisture Ratio with Dry Density 1.4 6.0 1.9 8 9 10 11 12 含水比 (%) 0.6 0.8 1 1.2 セメント水比C/W 8.0 施工2 試験体 を算出した。成型には RCD 用標準試験体作成装置 130 8.0 土質試験 密度 2 5 施工2 試験体 2 1.95 圧縮強度(N/mm ) 2.00 施工1 試験体 圧縮強度(N/mm ) 3 乾燥密度(g/cm ) エアメータ 密度 粗粒 2.10 50 70 90 110 単位水量(kg/m3) (Kg/m3) 図-15 単位水量が圧縮強度とその変動に及ぼす影響 Influence of Unit Water Content for Compressive Strength and that Variation 図-13 単位水量が密度と空気量に及ぼす影響 Influence of Unit Water Content for Density And Air Content 2.15 130 粗粒材 細粒材 30 30 50 70 90 110 単位水量(kg/m3) 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 0 乾燥密度(g/cm ) 粗粒材 細粒材 30 30 空気量(%) 第37号(2004) 圧縮強度(N/mm ) 試験体密度(g/cm ) 大成建設技術センター報 2 2.1 2.2 3 試験体密度(g/cm ) 2.3 8.0 粗粒材 細粒材 6.0 4.0 2.0 0.0 0 3 6 9 空隙量(%) 12 15 7) 図-16 セメント水比と密度・空隙量が圧縮強度に及ぼす影響 Influence of Cement Water Ratio, Density and Void Content for Strength を使用し(3 層×40 回) 、最上層のみは手動タンパに て均し仕上げした。なおエアメータの手動タンパ充て んでの測定も併用した。成型後は、型枠内で材齢 28 日まで封緘養生した後に圧縮強度試験に供した。 位水量は粗粒砂礫の場合には約 100kg/m3、細粒砂礫 3.3 締固め密度の変化傾向 の場合には約 85kg/m3 となった。空気量の測定結果か 単位水量を変化させた場合の試験体密度および空気 らは、この水量程度以上での CSG の空隙はおおむね 量の変化状況を図-13 に示す。単位水量が小さい場合に 2%程度で一定であることが推察されるものであった。 は水量を大きくするほど密度も大きくなるが、一定の水 図-14 に示すように、母材の土質試験(突固めによる 量以上になるとおおむね最大密度となる。この下限の単 締固め試験)により得られる含水比と乾燥密度との関係 19-5 河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の特性に関する実験的研究 に、混合した CSG を炉乾燥して得た乾燥密度の測定値 を合わせて示すと、最大締固め密度を得る下限の単位水 量は、母材の種類ごとに、最適含水比となる単位水量に 近いものとなっていた。 3.4 CSG の圧縮強度に及ぼす単位水量の影響 図-15 には、単位水量が圧縮強度とそのばらつき(3 本の供試体の最大値と最小値の差)に及ぼす影響を示す。 粗粒砂礫、細粒砂礫ともに、各々の締固め密度を最大と する下限の単位水量(以下、これを仮に最適水量と呼 ぶ)において圧縮強度が最大で、単位水量が大きくても 小さくても強度は小さくなる傾向が認められた。 表-1 模擬構造体を構築した配合 Mix proportions of CSG for ModelStructure 3 3 水セメ 母材 空気量 単位量(kg/m )(容積(l/m )) ント比 種別 (%) 水 セメント 母材 (%) 粗粒 100 60 2144 167 2.0 砂礫 (100) (19) (861) 細粒 85 60 2155 142 2.0 砂礫 (85) (19) (876) 3 普通ポルトランドセメント 密度3.16g/cm 3 粗粒砂礫:密度2.49g/cm 吸水率:5.68% 3 細粒砂礫:密度2.46g/cm 吸水率:6.57% *粗粒砂礫:河川水面より上の自然粒度の砂礫 *細粒砂礫:河川水面より下の自然粒度の砂礫 図-16 に示すように、圧縮強度の変化をセメント水比 との関係とした場合には、この最適水量を上回る領域に おいては圧縮強度の変化に対してセメント水比説が適用 できるのに対して、最適水量以下ではこれが成立しない。 単位水量が最適水量より小さい領域では、図-13 に示す ように締固め密度が小さく空気量が多くなる傾向が明ら かであることから、この領域での強度の発現性は CSG の空隙量に依存していると推察される。このことは 2.4 において示した考察と同様である。 細粒砂礫の圧縮強度結果において単位水量の小さい領 域での強度のばらつきが大きいことも、試験体成型時の 締固めのばらつきによる空隙の多少の程度が影響してい 写真-2 打設状況(ブルト-ザによる撒出し) Placing of Model Structure るように思われる。 なお、粗粒砂礫に比べて細粒砂礫の圧縮強度が大きい 傾向にあるが、これは水セメント比の影響ではなく材料 自体の性質に起因するものである。空隙セメント比-圧 縮強度曲線は、粒度分布に対して固有であるだけでなく、 ほかの何らかの母材の性質にも依存して変化するもので あることが考えられる。 4. CSG を打ち込んだ構造体の性質 写真-3 締固め状況(振動ローラによる転圧) Compaction of Model Structure 4.1 模擬構造体の構築方法と調査方法 模擬構造体の構築には、表-1 に示す粗粒配合および 細粒配合の2種類の配合を用いた。これは、3.4 におけ る評価により圧縮強度が最大となる単位水量を選定した ことによる。 連続混合装置 DK-II により製造した CSG をダンプで 運搬後、7t 級ブルトーザにより 25cm×2 層で敷き均し、 11t 級振動ローラ(SD451)により、無振動 2 回、有振動 6 回、無振動 2 回(計 5 往復)により転圧した(1 層目) 。 さらに 9 日後に同じ手順で積層した(2 層目) 。各層と も転圧終了後直ちに RI 法による密度測定を行なった。 敷き均し、転圧、転圧終了後の密度測定状況を写真-2~ 19-6 写真-4 転圧後の密度測定状況(RI 法) Measurement of Density after Compaction 大成建設技術センター報 現場測定密度 3 (g/cm ) 表-2 供試体密度と現場測定密度(RI)の一覧 Density of Specimens and Structure Measured by RI 3 3 密度(g/cm ) 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 10 100 材齢(日) 圧縮強度 2 (N/mm ) 15 12 9 6 3 0 圧縮強度 圧縮強度 2 (N/mm 2) (N/mm ) 10 100 材齢(日) 2.15 2.25 3 供試体密度(g/cm ) 1層 2層 1層 2層 2.35 コア コア平均 粗粒1層目 1 10 100 15 15 材齢(日) 12 12 粗粒2層目 粗粒2層目 9 9 1000 1000 1000 6 6 3 3 0 0 1 1 15 粗粒2層目 1 12 100 1010 100 材齢(日) 材齢(日) 1000 細粒1層目 9 6 3 0 1 10 100 材齢(日) 細粒2層目 1000 1 10 100 材齢(日) 1000 15 細粒1層目 1 3 コア平均 0.965 供試体 粗粒1層目 1 密度(g/cm ) コア 粗粒 粗粒 細粒 細粒 図-17 供試体密度と現場測定密度(RI)の相違 Difference of Density of Specimens from that of Structure Measured by RI 圧縮強度 2 (N/mm ) 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 全粒度推定 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 2.05 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 10 100 材齢(日) 圧縮強度 2 (N/mm ) 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 3 密度(g/cm ) 材料 粗粒砂礫 細粒砂礫 平均 施工層 1層目 2層目 1層目 2層目 3 実質水量 100 99 83 87 (kg/m ) 密度 湿潤密度 2.226 2.276 2.212 2.273 3 (40mm以下) 乾燥密度 1.999 2.062 1.986 2.029 (g/cm ) 密度(全粒度 湿潤密度 2.285 2.326 2.265 2.315 3 推定*) 乾燥密度 2.097 2.141 2.075 2.109 (g/cm ) 3 現場測定 湿潤密度 2.200 2.210 2.225 2.210 (g/cm ) RI(平均) 含水比 8.8 8.2 9.4 8.4 (%) 3 乾燥密度 2.022 2.043 2.033 2.039 (g/cm ) 試験体と現場 湿潤密度 0.96 0.95 0.98 0.95 0.96 測定の比率 乾燥密度 0.96 0.95 0.98 0.97 0.97 3 3 *粗粒8040表乾密度:2.58g/cm ,粗粒40以下表乾密度:2.45g/cm 3 3 細粒8040表乾密度:2.52g/cm ,細粒40以下表乾密度:2.43g/cm 密度(g/cm ) 測定 項目 供試体 第37号(2004) 1000 12 9 6 3 0 細粒2層目 1 10 100 材齢(日) 図-19 供試体強度の経時変化とコアによる強度の測定値 Time Dependent Change of Specimen Strength and Strength Measured by Cores 1000 図-18 供試体密度の経時変化とコアによる密度の測定値 Time Dependent Change of Specimen Density and Density Measured by Cores て圧縮試験に供した。密度は圧縮試験用のコア自体を 用いて水中重量法により測定した。 4.2 構造体における密度と強度の評価 写真-4 に示す。その後材齢 100 日程度経過後からコ 表-2 および図-17 には、打込み直後に行なった RI 法 ア採取(φ200mm,縦方向)を行ない、材齢 133 日に による密度測定結果を示す。供試体測定密度を 40mm~ 19-7 3 コア密度(g/cm ) 河床砂礫を母材としたCSG(Cemented Sand and Gravel)の特性に関する実験的研究 2.35 2.30 2.25 2.20 2.15 2.10 2.05 2.05 1) セメントを多く添加するほど、圧縮強度は増大する 粗粒砂礫 細粒砂礫 0.984 傾向にあるが、単位水量については、圧縮強度を最 大とする単位水量が存在する。 2) 単位セメント量や単位水量の影響に比較して締固め 2.15 2.25 3 供試体密度(g/cm ) 度の影響が非常に大きくなるので、CSG の強度を設 2.35 定する場合には、締固め密度の設定が重要になる。 3) 同じ母材であっても粒度構成が異なる場合には圧縮 コア圧縮強度 2 (N/mm ) 15 強度を最大とする粒度分布が存在する。粒度分布定 粗粒砂礫 細粒砂礫 12 9 数により圧縮強度が最大となる粒度分布と締固めの 難易度が急変する粒度分布状態を独立して評価でき 6 0.870 3 る可能性がある。 0 0 3 6 9 12 供試体圧縮強度(N/mm2) 4) 単位セメント量・単位水量・締固め密度が圧縮強度 15 に及ぼす影響は、空隙セメント比によって評価でき、 空隙セメント比と圧縮強度とは双曲線関係にある。 図-20 供試体密度・強度とコア密度・強度の比較 Comprehension Density and Strength of Core with those of Specimen 5) 連続混合装置 DK-II により製造した CSG においても、 圧縮強度を最大にするのに最適な単位水量が存在す ること、強度の発現性には CSG の空隙量が影響して 80mm の粒径の母材を含む全粒度に換算した締固め密度 いることが確認された。 に対して、転圧した構造体の密度は 0.97 倍程度となり、 6) 河床砂礫による CSG を連続混合装置 DK-II により製 現場施工としては良好な締固め状態といえるものであっ 造し打込んだ構造体は、密度が供試体とほぼ同等で、 た。 圧縮強度も供試体強度とおおむね同等になっている 図-18 および図-19 には、供試体密度および圧縮強度 と評価できる。 の経時変化と採取コアにより測定した密度と強度(材齢 133 日)を示す。材齢の経過にしたがい密度はやや小さ 謝辞 くなる傾向にあるが、圧縮強度は増進している。 本研究のうち、CSG 連続混合装置 DK-II を用いて行 密度の経時変化と圧縮強度の増進を考慮して推定した なった実験は、大成建設札幌支店忠別ダムコンクリート 材齢 133 日における供試体の密度・強度とコアの密度・ 堤体工事作業所/フィル堤体工事作業所内において行な 強度との比率を図-20 に示す。コアの密度比は 0.98 であ ったものである。フィールドを提供していただいた北海 るので、供試体とコアではほとんど同様の密度になって 道開発局旭川開発建設部忠別ダム建設事業所の皆様、大 いると考えて良い。 成・地崎・竹中土木特定建設工事共同企業体の皆様に厚 コア強度の比率は平均で 0.87 である。圧縮強度が小 く御礼申し上げます。 さい CSG のコアボーリングによるサンプリング試料で 参考文献 あること、含まれる骨材の寸法(最大寸法 80mm)と供 試体に含まれる骨材の寸法(最大寸法 40mm)が異なる 擬構造体施工実験により、以下のことがらが明らかとな 1)藤沢侃彦,吉田等,平山大輔,佐々木隆:台形CSGダムの 特徴と現在までの検討状況,ダム技術,No.191,pp.2-23, 2000. 2)芳賀敏二,豊田光雄,今井裕一,有銘伸与:CSG材料の工 学的性質の経時変化,ダム技術,No.169,pp.49-60,2000. 3)台形CSGダム技術資料作成委員会:台形CSGダム技術資料, 2003. 4)岡谷豊ほか:砂礫とセメントの簡易混合機開発基礎実験, 土木学会第57回年次学術講演会講演概要集VI,2002. 5)大友健,伊藤一教,平川勝彦,楠見正之,道場信昌,岡谷 豊:砂礫とセメントの自重落下による混合作用の評価とそ のシミュレーション,大成建設技術センター報,Vol.36, 2003. 6)粉体-理論と応用-,丸善,1979. った。 7)RCD工法技術指針(案),山海堂,1998. ことを考慮すれば、構造体は、供試体とほぼ同等の強度 が確保されていると評価されるものである。なお、供試 体とコアとの密度比・強度比の評価においては粗粒砂礫 と細粒砂礫の差異はほとんど認められなかった。 5. 結論 河床砂礫材料を母材とした CSG を対象として行なっ た室内実験、連続混合装置による実機製造実験および模 19-8