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生産制御システムを中心とした統合制御ソリューションの提供

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生産制御システムを中心とした統合制御ソリューションの提供
生産制御システムを中心とした統合制御ソリューションの提供
横河電機
1.はじめに
高橋 利明
これらは,それぞれ単独で存在させるのではなく,個々との繋
1975 年 6 月,世界に先駆けて発表された統合生産制御システ
がりを持たせることで,さらなる進化を遂げることができる。図1に
ム「CENTUM シリーズ」は,市場の要求に従い,新しい技術を取
示してあるように,CENTUM を中心とした安全計装システム,プラ
り入れることにより発展してきた。さらに進化させるために,他の制
ント運転支援,プラント設備管理,フィールド機器,ネットワークベ
御システム,安全計装システム,プラント運転支援システムなどと
ース生産システムと結合することで,ユーザにとって安全性・信頼
の連携をはかり,以下に述べる 3 つの視点によるさらなる進化へ
性のある最良のソリューションを提供する。さらには,新たな次世
の取り組みを紹介する。
代のシステムへと発展させていく。
・ プラント全体の情報を正確,リアルタイムにきめ細かく監視,
ここでは,CENTUM を中心とした統合制御システムについて説
予測し,プラントの状況を目に見えるデータとして提供す
明するが,進化の例をすべて説明することができないため,代表
る。
的な製品を紹介する。
・ 収集してデータを十分に解析し,将来起こり得る変化を先
取りする。
・ 予期しない事象を最小限に抑え,俊敏で信頼性の高い最
適な操業を実現する。
制御システム
(CENTUM)
PRM
プラント設備管理
TSE
Ethernet
Ethernet
SENG
AOA
Exapilot
PIMS
Exaquantum
OPCサーバ
CS 3000 R3 HIS
CAMS for HIS
TSEサーバ
Vnet
Vnet
SIOS
ProSafe-RS SCS
CS3000 FCS
プラント運転支援
安全計装
システム
Ethernet
接続機器
安全センサー 安全バルブ
FF-H1
STARDOM FCN
ネットワークベース
生産システム
図1
フィールド機器
センサー
バルブ
CENTUM 中心の統合ソリューション
月刊計装 2007 年 11 月号
1
2.目に見えるためのデータ化の実現
そのような状況に陥らないためにも,統合型アラーム管理パッ
現在,世の中にはさまざまな情報が溢れており,それの管理が
ケージ(CAMS:Consolidated Alarm Management Software,以下
難しいため,必要な情報を必要な時に取り出せない状況となって
CAMS for HIS と略す)を用いることにより,オペレータがより安全
いる。そのような状況に陥らないためにも,必要な時に直ぐに見
に高効率なオペレーションができるように,プラントで使用されて
えるようにすれば,問題が発生しても瞬時に解決できる。
いる多種多様なアラーム&イベントの中から必要な情報だけを最
プロセス制御業界においても例外ではなく,後継者問題など
適なタイミングで監視できる。さらに,CAMS for HIS は,統合生産
による知識の継承不足により,必要な情報を直ぐに取り出すこと
制御システム「CENTUM CS3000 R3」に加え,安全計装システム
ができず,個々のオペレータに対する責任範囲が増大している。
「ProSafe-RS」や統合機器管理「PRM」が発報するアラーム&イベ
結果として,オペレータはアラームの氾濫に困っている状況であ
ントなどにも統合することも可能である。したがって,プラント全体
る。実際に,新人オペレータの操業中に,新規アラームが発生し,
の情報を正確,リアルタイムにきめ細かく監視,予測し,プラント
そのアラーム対応中に,また新規にアラームが発生し,その後も
の状況を目に見えるデータとして提供することにより,問題点を解
次々に発生するといったような状況がある。結果的にアラームの
決することができる。(図2)
氾濫の中に置かれてしまうということがある。
図2
アラーム統合画面(CAMS for HIS)
月刊計装 2007 年 11 月号
2
3.起こり得る変化への先取りの実現
安全計装システム ProSafe-RS*)は,プラントシャットダウン以外
にも,さまざまなソリューションを提供しているが,安全計装システ
ム(SIS:Safety Instrumented System)において注目されているソリ
ューションの一つとして,Partial Stroke Test(以下 PST と略す)が
ある。通常バルブは全開状態で保持されており,プラントに異常
が発生しない限り,動作することがないが,PST では,定期的にオ
ンラインでバルブを少しだけ動作させ,診断をすることにより,本
来1年でする全閉テストを延ばして稼動率を高くすることができ
図3
安全ループ構成例
る。
この診断により,異常時にバルブが動かない,機器に異常が
しかし,実際には,バルブ故障を 100%検知することはできな
起きているのにもかかわらずアラームが発生せず,オペレータに
いが,PST を利用することにより,確実に多くの事前故障が検出
情報が伝わらないようなことが起らなくなる。また,全閉テストのた
できる可能性が高まる。また,PST を使用することで,安全レベル
めに,バイパスバルブの設置も不要で,点検のためにプラントを
を低下させることなく,コストのかかるプルーフテスト(全閉テスト)
停止させることがなくなる。その結果として、生産効率の低下やコ
の頻度を下げ,トータル保守コストを低減する効果が期待できる。
ストなどを低減することもできる。
図3の安全ループ構成例に示してあるように,PST は,安全セ
ン サ ー か ら の 信 号 に 従 い , ProSafe-RS の 安 全 コ ン ト ロ ー ラ
また,制御システムと安全計装システムは,統合ソリューションと
しても注目されており,CENTUM 系の新しい機能も安全計装シス
テムに適応することができる。
(SCS :Safety Control Station)がシャットダウンロジックを実行し,
その出力によって安全バルブを全閉する。このような安全ループ
4.信頼性の高い最適な操業の実現
構成の場合,故障箇所としては,センサー,安全コントローラ,バ
近年,後継者問題などによる運転スキル技術の低下が懸念さ
ルブの3つに別けられるが,この場合,一般的に全故障のうち約
れている。さらに,プラント操業における省エネ,省コストは大きな
半分がバルブの故障と言われている。その故障を予測するため
課題となっている。こうした問題点を解決するために,プラント情
に,オンラインでバルブのデータを収集し,十分に解析をすること
報管理システム(PIMS:Plant Information Mangement System 以
により,事前に故障箇所を判断することができ,将来起こり得る変
下 , PIMS と 略 す ) 「 Exaquantum 」 や 高 度 運 転 支 援 ( AOA :
化を先取りすることができる。さらには,安全ループ全体の故障
Advanced Operation Assistant)「Exapilot」などのプラント運転支
診断にも大きく関連してくることになる。
援パッケージを用意している。これらのパッケージは,オープンな
ものとなっており,各社 DCS/PLC と接続可能であるが,特に
CENTUM とは密接に結合する。以下に各パッケージの概要を紹
介する。
プラント情報管理システムは,統合生産制御システム
年 2 月に発売
された世界で初めてのシングルコントローラで,安全度水準
SIL3(SIL:Safety Integrity Level)を実現できる SIS として,
第三者認証機関であるドイツの TÜV から国際規格
IEC61508 の認証を取得したシステムである。プラントの非
常事態や人的な影響で起きる危機的な状況において,最終的
にプラントを安全にシャットダウンさせることができる。
*)安全計装システム「ProSafe-RS」は,2005
月刊計装 2007 年 11 月号
CENTUM CS3000 R3 などが持つ大量のデータを収集し,帳票/ト
レンド/グラフィックとして管理する。また,長期に保存したデータ
から,プラントの操業状態を解析・診断して,操業を改善する。
高度運転支援は,熟練オペレータの頭の中にあるプラントの立
3
ち上げや停止手順などをわかりやすく表現するために,運転手
5.おわりに
順通りに画面に並べ,半自動化運転シーケンスをグラフィカルに
本稿では,CENTUM を中心に,その周りを取り巻く製品などに
作成する。作成した運転シーケンスは,そのまま運転画面として
ついて紹介させて頂いた。ここでは,すべてを紹介することができ
利用できる。これにより,オペレータのノウハウ継承の問題にも対
なかったため,今回の「計測展 2007 TOKYO」においては,是非,
応でき,運転の安定性,安全性,効率性が向上する。
横河電機ブースにお立ち寄り頂き, CENTUM 中心に,安全計
CENTUM と結合できることにより,予期しない事象を最小限に
装,運転支援,プラント設備管理,フィールド機器,ネットワークベ
抑え,俊敏で信頼性の高い最適な操業を実現することにより,省
ース生産システムなどを結合することで,最適なソリューションを
エネ,省コストにつなげることができる。さらには,DCS と PIMS を
提供できることを感じて頂きたい。繰り返しになるが,今後も,お
融合させた新たな運転操業システムへと発展させることが可能と
客様にとって安全性・信頼性のある最良のソリューションを提供し,
なる。
さらには新たな次世代のシステムへと発展させていく所存であ
る。
注)
・ CENTUM, ProSafe, PRM, Exaquantum, Exapilot, STARDOM
は,横河電機(株)の登録商標または商標である。
・ その他,掲載の会社名,商品名称などは,各社の登録商標
または商標である。
月刊計装 2007 年 11 月号
タカハシ・トシアキ
横河電機(株)
IA システム事業センター
PA PMK 部
〒180-8750
武蔵野市中町 2-9-32
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