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「大腸がん ~どう防ぐ、どう治す~」 講演者

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「大腸がん ~どう防ぐ、どう治す~」 講演者
第2回 市民公開講座講演集
講演
「大腸がん ∼どう防ぐ、どう治す∼」
栃木県立がんセンター 手術部長
固 武 健二郎
今日は「大腸がん∼どう防ぐ、どう治す∼」と題してお話しさせていただきます。
1)大腸がんを防ぐ
1.消化管のなかの「大腸」
消化管とは食べ物の通り道を構成する臓器です。食べ物は口から食道を通って胃に入ります。食べ
物は胃と小腸(十二指腸、空腸、回腸)を通る間に消化・吸収されます。主な栄養分が消化・吸収され
た後の残りかすが通ってゆく臓器が大腸です。大腸は結腸と直腸に大別され、結腸はさらに盲腸、上
行結腸、横行結腸、
下行結腸、S状結腸
に区分されています。
盲腸についている虫
垂、便の出口である
肛門も広い意味では
大腸に含まれます。
盲腸から横行結腸ま
でを「右側結腸」、下
行結腸とS状結腸を
「左側結腸」という分
け方をすることがあ
ります。
2.「大腸」のはたらき
大腸のおもなはたらきに腸内容からの水分と電解質(ミネラル)の吸収があります。右側結腸のな
かでは水様であった便が直腸に到達するまでにある程度の硬さになります。第二のはたらきは、便を
一定の時間貯めておくことです。第三のはたらきは、自分の意のままに便を出すことで、直腸と肛門
がその役割を担います。小腸と大腸のなかには腸内細菌とよばれるバイ菌が大量に棲息しています。
細菌の作用には、人間にとって役に立つ「発酵」と役に立たない「腐敗」があります。発酵によって
生成された物質を再吸収することも大腸の大切なはたらきです。
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◆栃木県立がんセンター
3.大腸がん日本人に急増中
日本人の大腸がんについて、少し具体的な数字お示ししながら説明します。昨年(2004年)に日本
において大腸がんで死亡された方は4万人以上にのぼり、他のがんのなかでも、女性は第1位、男性
は第4位を占めています。1999年に大腸がんにかかった人は推定9万4,000人におよびました。男性は
胃がんについで第2位、女性も乳がんについで第2位です。私たち日本人が一生涯に大腸癌になる確
率は、男性は14人に1人、女性は30人に1人であると試算されています。都道府県別に大腸がん死亡
率を比較してみますと、直腸がんと結腸がんとでは違いがありますが、どちらも概して東北地方から
北陸・山陰地方で死亡率が高く、栃木県は全国平均よりも0.1ポイント高率です。
4.大腸がんの1次予防
がん死亡を少なくするための最も確実な対策は「がんにならないこと」です。これをがんの1次予
防といいます。がんは遺伝子の病気であると言われますが、大腸がんも例外ではありません。大腸の
正常細胞ががん細胞に変化するにはいくつかの経路があると考えられます。スライドはその1例を示
したものです。正常細胞
が良性のポリープ(腺腫)
を経て早期の段階のがん
になり、やがては転移す
る能力をもつ進行がんに
変わってゆくという経路
で、多段階的な変化が起
こると考えられていま
す。
それぞれの段階に遺伝
子の異常が関与します。
遺伝子に異常が起こす原
因がとりもなおさず大腸
がんの原因ということに
なります。
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第2回 市民公開講座講演集
大腸癌の原因は、「環境要因」と「遺伝要因」に分けることができます。環境要因というのは食事
や運動などです。遺伝要因というのは生まれつきの体質で、体の細胞の特定の遺伝子に異常があるた
めにがんになりやすくなります。
東洋人がアメリカに移住すると結腸がんの死亡率が上がると言われます。日本人では、アメリカに
移住した人の結腸癌死亡率は1.3倍高まります。韓国人では1.5倍、中国人では2.8倍です。このような
現象は大腸がんの発生に環境要因が大きく関与していることを裏付けるものです。
大腸がんの発がん物質というものが知られています。例えば、ソテツの実に含まれるサイカシン、
ワラビに含まれるプタロキサイド、化学薬品でキノコの一種にも含まれているヒドラジンなどです。
しかし、このような特定の発がん物質を摂取することによって発生する大腸がんはきわめて少ないと
考えられます。
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◆栃木県立がんセンター
大腸癌の環境要因については多くの調査報告がでていますが、1997年におもだった調査結果を総括
した報告書が出ています。それによりますと、大腸がんに予防的に作用するもののうち、「確実なも
の」として運動、野菜があげられています。アスピリン等の鎮痛解熱剤も予防的に作用すると考えら
れています。そのほかに、植物繊維、でんぷん、黄緑色野菜に含まれているカロテノイド等が知られ
ています。一方、危険因子の「ほぼ確実なもの」として赤身肉とアルコールがあげられています。タ
バコはがんとの直接的な因果関係は示されていませんが、良性ポリープ(腺腫)の危険因子とされて
います。その他に、潰瘍性大腸炎という難治性の大腸炎も大腸がんの危険因子です。日本人には潰瘍
性大腸炎は少なかったのですが、最近は増加しています。これらの要因を私たちの食生活にあてはめ
て考えると、「食生活の欧米化」が危険因子であると総括することができます。食物繊維や黄緑色野
菜を中心とした和食が望ましいといえるでしょう。さらに、定期的に運動を行い、お酒を控えること
がポイントでしょう。
蛇足ながら、大腸がんの予防に良いものは他のがんの予防にも良く、悪いものは悪く、互いに矛盾
することはありません。野菜、果物、運動などは多くのがん予防に好ましく、タバコやアルコールは
多くのがん発生に関与します。アメリカでは2000年の死因のトップは心疾患、2位ががん、3位が脳
血管障害でしたが、実際の死因を調査すると、トップはタバコでアメリカ人の死因の37%を占め、次
いで不適切な食事と運動不足が35%、アルコールは7%の順でした。大腸がんに好ましくない環境要
因は、健康のすべてによくないということがおわかりいただけると思います。
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第2回 市民公開講座講演集
大腸がんの遺伝要因を端的に表すものに「家族性大腸ポリポーシス」という病気があります。生ま
れながらに持っている体の細胞の遺伝子の異常によって起こる病気です。大腸ポリポーシスの検査所
見を示します。
小さな粒々がすべてポリープで、大腸全体では何千という数のポリープができています。この方の
ご家族には大腸がんになった方が多く、大腸がん以外のがんになった方もいらっしゃいます。このよ
うなポリープの発生には環境要因よりも遺伝要因が強く作用しています。
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◆栃木県立がんセンター
診断には遺伝子検査が有用です。私たちの栃木県立がんセンターでは「がん予防相談外来」で遺伝
要因の関与が強い「遺伝性腫瘍」に関するご相談をお受けしています。
2)大腸がんを治す
1. がんの2次予防とがん検診
大腸がんに限らないのですが、がんは「早く発見して治療すること」により治癒率を高めることが
できます。これを「がんの2次予防」と呼びます。この目的には、検診が重要な役割を果たします。
厚生労働省の指針(2004年)によれば、大腸がん検診の対象は40歳以上、受診回数は年1回、1次検
査として便潜血反応検査を行い、問診も参考にします。便潜血反応検査が陽性と判定されれば2次検
査が必要です。2次検査は「全大腸内視鏡検査」または「S状結腸内視鏡と注腸X線検査」で調べる
こととされています。大腸がん検診によって、大腸がん死亡率が15%∼23%低下することが欧米の研
究から示されています。
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第2回 市民公開講座講演集
残念ながら、日本の検診受診率はかなり低いのが現状です。2002年の調査では、検診受診者は検診
の対象となる人口のわずか17%に過ぎませんし、2次検査の受診率も58%と低率です。これからは2
次予防を推進してゆくことが大きな課題です。がん検診は、厚生労働省の「健康日本21」という健康
増進法に基づく政策に掲げられ、栃木県では「とちぎ健康21」として推進されています。
検診で無症状のうちに早期のがんを発見することが理想ですが、せめて大腸がんの症状がでたら放
置せずに受診していただきたいと思います。表に大腸がんの典型的な症状を示しました。
ただし、どの症状も大腸がんに特有なものではありません。結腸がんと直腸がんの症状は基本的に
同じですが、発現頻度に多少の差があります。直腸がんに多いのは「出血」です。出血は、きれいな
赤色であることも赤黒いこともあります。ほかには便秘、便が細くなる、下痢、腹痛、肛門痛などが
おもな症状です。結腸がんに多いのは、腹痛、出血、便秘、腹部膨満、下痢などです。右側結腸は比
較的太いうえに腸内容(便)が液状であるため症状が出にくいという問題があります。
反対に、左側結腸と直腸は、腸内容が硬いため便秘などの便通異常が現れやすく、出血も便に混ざ
らずに表面に付着し、血液として認識しやすいことから、右結腸よりは症状を捉えやすいといえます。
このように症状が出にくい右側結腸がんが増加していますので注意が必要です。
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◆栃木県立がんセンター
2.大腸がん治療ガイドライン
大腸がんの治療の基本は切除です。大腸がんの切除法には「内視鏡治療」と「手術治療」がありま
す。今年(2005年)の7月に「大腸がん治療ガイドライン」が発行され、実地医家にわかりやすいよ
うに大腸がんの治療方針が記載されています。来年(2006年)には一般の方を対象としたこのガイド
ラインの解説書が出版される予定です。
3.大腸がんの進行度
大腸がんの治療についてご理解していただくために、大腸がんの進行度をあらわすステージついて
簡単にお話します。がんの進行度は「T、N、M」の3つ因子に規定されます。「T」は臓器によって
違うのですが、胃や大腸では「深達度」で表します。「N」はリンパ節転移です。「M」はリンパ節以
外の遠隔臓器への転移です。
大腸の壁は、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜(外膜)の5層構造で構成されます。
「T」
はがんがどの層まで拡がったかによって区分されます。「T、N、M」の組み合わせによってステージ
0からステージ4までに分類します。ステージ4はM(遠隔転移)があるもの。
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第2回 市民公開講座講演集
ステージ3は、MはないがN(リンパ節転移)があるものです。がんが粘膜にとどまっているもの
はステージ0です。ステージ0にはNやMは絶対に起きません。残る転移がないものを、Tによって
ステージ1とステージ2に分けます。
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◆栃木県立がんセンター
4.内視鏡治療
内視鏡治療はTisまたはT1のうち、がんの大きさが原則的に2㎝以下のものと、T1では粘膜下層へ
あまり深く拡がっていないと予測されることが条件です。
重要なことは、切除した組織を十分に病理検査することです。
切除した組織の切り口にがん細胞がある場合は再切除が必要になります。切り口にがん細胞がない
場合でも、がんのタイプ(組織型)、粘膜下層への拡がりの深さ、静脈やリンパ管への拡がりを総合
的に判断して、手術による追加切除の要否を判定します。
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第2回 市民公開講座講演集
大腸は管状の臓器ですので、内視鏡ではトンネルの中を覗いたように見えます。ポイントは内視鏡
医の観察眼です。(内視鏡治療の実際を供覧:略)
5.手術治療
手術治療のポイントは進行度に応じた過不足のない切除です。過不足のない手術とは、がんの拡が
りを正確に把握して、切除すべき範囲を正確に切除し、切除する必要のない組織は切除しないという
ことですが、言うほどに簡単ではありません。
手術治療には相応の知識、経験、熟達したスキルが必要です。なかでも重要なのがリンパ節廓清
(リンパ節を切除すること)です。不十分なリンパ節郭清は再発の原因となります。
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◆栃木県立がんセンター
6.腹腔鏡手術
技術革新によって身体に負担の少ない腹腔鏡下手術が発達してきました。腹腔鏡下手術は、件の医
療事故の報道などでマイナスのイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、適応を誤ら
なければ身体にとって負担の少ない有用な治療法です。これは腹腔鏡手術の手術場の風景です。おな
かの中をテレビモニターで見ながら手術を進めています。
腹腔鏡手術の最大の長所は傷が小さいことです。普通におなかを開けますとスライド右のような傷
になりますが、腹腔鏡手術では左のような小さな傷跡ですみます。
創が小さいことは、整容的に良いばかりでなく、術後の痛みが少なく、術後の早期回復にも有利で
す。
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第2回 市民公開講座講演集
7.直腸がんの機能温存手術
直腸がんの手術では、骨盤臓器の機能温存、すなわち排便機能と泌尿生殖器機能の温存に努めてい
ます。直腸がんでは、がんの部位と進行度によっては人工肛門が避けられないことがありますが、可
能な限り肛門を温存する努力が求められます。
この写真は、肛門に近い下部直腸にできた進行がんで、がんから肛門までは1㎝ほどしかありませ
ん。
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◆栃木県立がんセンター
以前であればほとんどの外科医が直腸切断術を行なっていたケースですが、最近はこのようなケー
スにも肛門温存手術が可能になりました。大腸癌研究会という学術団体が行なっている「全国大腸が
ん登録」による集計によれば、直腸がんに対して肛門温存手術が行なわれた割合は、およそ30年前は
20%台でしたが、1990年代半ばには70%以上になっています。現在はさらに高率になっていると予想
されます。
8.大腸がんの治療成績
「全国大腸がん登録」による大腸癌の治療成績をお示しします。1978年から1994年までを4つの期
間に分けて、5年生存率という指標で示しますと、前期の55%から後期の69%まで14ポイントも改善
しています。
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第2回 市民公開講座講演集
生存率は母集団のステージの分布状態に左右されますから、ステージ別に評価しますと、どのステ
ージを比べても生存率は改善しています。
治療成績の向上には、画像診断精度の向上と手術治療の改善が大きく寄与していると思われます。
私たちの栃木県立がんセンターと全国登録の成績を比較してみます。背景因子が異なる集団ですから
単純な比較はできませんが、ステージ3では7.9%、ステージ2では5.1%、私たちの成績が上回って
います。
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◆栃木県立がんセンター
9.手術補助療法
術後の再発を予防するための療法を手術補助療法といいます。大腸がんではこの目的に化学療法
(抗がん剤)と放射線療法が使われます。これもガイドラインに書かれていますが、現在、標準的に
使われる化学療法はフルオロウラシルという薬です。最近は、新しく開発された薬を用いた化学療法
で良好な成績が報告されてきています。放射線治療は、欧米では直腸がんの標準治療として推奨され
ていますが、日本では手術の治療成績が大変良いことから、放射線治療の必要性を感じることが少な
いのが現況です。ただ、放射線治療も大変有効な補助療法ですので、今後どのように活用してゆくか
を検討する必要があります。
10.高度進行がんの治療
大腸がんの遠隔転移の部位で最も多いのは肝、次で腹膜、肺の順で、この3つで95%を占めます。
腹膜再発は手術治療の対象になりにくいのですが、肝転移と肺転移は切除ができれば積極的に切除し
ます。これも全国登録のデータですが、70年代から80年代初期には肝転移の切除率は8%程度でした
が、90年代中頃には20%にまで高まりました。私たちの施設では肝転移の切除率はおよそ40%です。
時代とともに切除率が高くなったのは、肝切除の技術が向上したことに加えて、CTやMRなどの画像
診断の発達により切除できる時期に、転移を見つけられるようになったためです。
治癒切除後におこる再発も、早く見つけて治療することが大切です。
私たちの施設での再発切除率は、肝が67%、肺が56%、局所再発が56%で、再発の半数以上に治癒
的切除が行なわれています。再発を切除した後の5年生存率も、肝は48%、肺は58%と良好です。
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第2回 市民公開講座講演集
それでも、治癒することができない大腸がんが一定の割合であります。このような大腸がんに対し
ては、いかにして生存期間を延長するか、いかにして生活の質(QOL)を良くするかということをゴ
ールに治療を行っています。そのために、化学療法、放射線療法、手術治療を適切に使い分けて、身
体的・精神的な苦痛に対する治療をトータルに行う緩和医療を行っています。
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◆栃木県立がんセンター
3)まとめ
「どう防ぐ、どう治す、大腸がん」と題してお話しさせていただきました。いま一度生活習慣を見
直してみましょう。そして、40歳になったら検診を受けましょう。気になる症状があればぜひ大腸検
査を受けてください。大腸がんは治りやすいがんですが、診断と治療には知識・経験・技量が必要で
す。
がんの治療はがんの専門家にお任せいただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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第2回 市民公開講座講演集
○ 質疑・応答
Q1)〔女性〕
がんの予防に運動が良いということですが、どんな運動がよいのでしょうか?1日どの程度の運
動をしたらいいでしょうか?
A1)
がん予防に運動がよいことは確かですが、そのメカニズムはよくわかっていません。大腸がんは、
便のなかに発がん物質が含まれていて、それが大腸と接触することでがん化が起こると考えられま
すから、そういう有害物質は腸に長くとどまっていない方がいい。つまり便秘をしない方がいいわ
けです。運動は、恐らく便秘を解消することも予防的に作用していると推察されています。運動の
種類は特定のものはありませんが、標準体重を維持することを目標とした有酸素運動がよいと思い
ます。
Q2)〔男性〕
内視鏡でがんをとるということがありました。切り取った後はどうするのですか?切った後はそ
のままで切り口は自然に治るのですか?
A2)
先ほどスライドでお示したように、7㎝の大きさでも内視鏡で切除しますが、自然に粘膜が再生
して治ります。ただ、少し深く切った場合などは、内視鏡を用いて縫い合わせる技術もあります。
Q3)〔女性〕
2年前に大腸がんの手術をしています。定期的検査を受けていますが、検査のたびにポリープが
できていて、1個か2個とっていただいています。悪性ではないのですが、いくつものポリープがで
きる体質なのでしょうか?
A3)
恐らく前回の内視鏡ではわからないような小さなポリープの芽があって、1年間の間に少し大き
くなってきているということでしょう。もう少しこれを続けられると、ポリープのない状態になる
と思います。これをクリーン・コロンとよびます。クリーン・コロンになると、手術からの年月も
たってくるでしょうから、3年に1回ほどの検査間隔でよいようになります。ポリープがあった場
合は、ポリープの種類にもよりますが、腺腫というポリープであれば、クリーン・コロンになるま
で毎年検査をお受けになられるのが安全だと思います。
Q4)〔男性〕
先ほど、環境要因として食事、運動を取り上げていただいたわけですが、危険因子としてほぼ確
実なものとして、赤身の肉とかアルコールのお話がありました。予防的なものとして食物繊維のほ
かに幾つかあったのですが、よくわからずに過ぎてしまいましたので教えていただければと思いま
す。
A4)
スライドに示した予防因子は、食物繊維、でんぷん、カルテノイドです。このデータは幾つもの
疫学的な研究を総括したものとして報告されているので、信頼性の高いものですが、今後の研究の
進歩とともに内容が変わってくる可能性があります。絶対的なものではなく参考とお考えください。
ただ、こういったことに気をつけることががんの予防に重要であるということは間違いないと思い
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◆栃木県立がんセンター
ます。
Q5)〔女性〕
私は10年ほど前にS字結腸の潰瘍を手術したのですが、その後に4、5回は良性のポリープを何
個かとりました。4∼5年前からがんセンターで注腸検査を受けています。去年はポリープがまった
くなかったので今年はやらないでいました。ところが、市の集団検診の便検査で陽性となりました。
去年のお話では2年に1回ぐらい注腸検査をやればいいのではないかということしたが、これからは
毎年受けた方がよろしいでしょうか?
A5)
ポリープの追跡検査についてのきちんとしたルールが確立されていないので、なかなか難しいご
質問です。40歳以上の人を大腸内視鏡検査で調べてみると、30%程度の人はポリープを持っている
という報告もあります。これらの大部分はがんにならないポリープです。ただ、先ほどの方のよう
に、大腸がんで手術をされた後にポリープがなくなるまで検査しましょうという方針はあります。
しかし、一度もがんになっていない方の小さなポリープを毎年レントゲンで撮ることが、どれだけ
がんの2次予防に役立つかは不明です。それぞれの方の年齢、ポリープの個数、大きさ、形などを
総合的に判断して検査間隔を決めているのが現状です。
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