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P11-P20( PDFファイル ,62KB)
Ⅱ
政策医療の課題と今後の取組方向
本委員会では、まず、県側からのヒアリングと3病院の施設調査に基づき、
今後、県立3病院がどのような医療を提供していくべきか、いわゆる政策医療
の取組方向について検討を行った。
本章では、政策医療を考える上での前提となる県立病院の使命や役割・機能
について整理を行うとともに、各病院における政策医療の課題とそれに対する
対応方策を取りまとめた。
1
総論
(1) 県立病院の役割の明確化
○
栃木県の県立病院は、これまで精神科医療、がん医療、リハビリテー
ション医療の各分野において、高度医療や専門医療を提供するとともに、
医療従事者に対する教育や新たな医療技術の開発のための研究、あるい
は疾病の予防や健診等の公衆衛生活動等を通じて、地域医療の確保と地
域住民の健康増進に寄与してきた。
○
しかしながら、県立病院に求められる役割は、民間医療機関との機能
分担の中で決して不変ではなく、医療技術の進歩や疾病構造の変化、新
たな医療政策への対応等、県立病院を取り巻く環境の変化に応じ、常に
検証しながら適切に対応することが求められている。
○
また、県立病院は、民間医療機関では対応が困難な医療等、自らの役
割に基づいた医療サービスを提供することが求められていることから、
今後の政策医療のあり方を検討するに当たっては、まず県立病院の役割
を明確にすることが重要である。
(2) 県立病院の使命
○
栃木県の県立病院は、「県民の健康保持に必要な医療を提供」(栃木県
病院事業の設置等に関する条例第1条)することを目的としており、県
内における当該医療分野の中核的医療機関として、地域の医療機関では
対応困難な医療を提供することが求められている。
○
また、県立病院は、単に病院を訪れた患者のみならず、全ての県民を
サービスの対象とする公の施設であることから、他の医療機関への支援
等を通じて、多くの県民がその恩恵に浴することができるような事業展
開を図る必要がある。
○
以上のことから、県立病院は、県域の自治体病院として、
「県全体の医
療水準の向上」を最大の使命とすべきである。
11
(3) 県立病院の果たすべき役割
県立病院は、県内における医療水準の向上に資するため、次のような役
割を果たすことが求められている。
ア
各医療分野における拠点施設として、県民に対し安全、安心で良質な
医療を提供すること。
イ
民間医療機関では対応が困難な医療や公立病院の役割として実施すべ
き医療(いわゆる「政策医療」)に取り組むこと。
ウ
各医療分野において、地域医療機関との診療連携体制の構築や専門人
材の育成、県民に対する医療情報の提供等に取り組むこと。
(4) 県立病院に求められる機能
県立病院に求められる役割を十分に果たしていくため、各病院は次のよ
うな諸機能を備えるとともに、それらの機能の充実を図ることが重要であ
る。
①
診療機能
民間医療機関では対応が困難な医療や法令等に基づいて県立病院によ
る対応が求められる医療を実施する機能
②
地域支援機能
地域の医療機関に対する診療支援や共同診療の実施等、診療連携体制
の強化により、地域における医療水準の向上や地域医療の円滑な推進に
資する機能
③
教育・研修機能
当該医療分野に従事する医師や看護師、その他の医療技術者に対して、
研修の場を提供したり各種研修会等に講師を派遣するなど、専門人材を
育成する機能
④
情報発信・相談機能
患者やその家族をはじめ、広く県民に対して、疾病やその治療法等に
関する医療情報を提供したり、各種の相談に対応する機能
⑤
研究機能
新たな医療技術の開発等のため、臨床試験や治験を積極的に推進する
機能
⑥
政策支援機能
県等が取り組む医療政策の企画立案や事業の実施等を支援する機能
12
※ 「政策医療」の定義
「政策医療」については、一般的に、他の民間医療機関では対応すること
が困難な離島、山間、へき地等の地域医療や救急、がん、循環器病、未熟児、
リハビリテーション、難病等の高度・特殊・先駆的医療、さらには精神・結
核・感染症等の医療と定義されているが、本報告書においては、上記のよう
な特定の医療領域を示す概念としてではなく、前述の県立病院に求められる
役割や6つに代表される機能に基づいて、県立病院が提供する医療サービス
全般を「政策医療」と定義する。
2
3病院の政策医療の取組方向
県立病院が、自らの使命や役割に基づいて、県民が求める医療を安定的に提
供していくためには、各々の病院が主体的に担うべき政策医療の範囲を明確に
するとともに、それらの政策医療の充実を図ることが重要である。
これまでの委員会における議論に基づいて、3病院における政策医療の課
題と今後取り組むべき対応策を次のとおり整理した。
今後、県は、病院ごとに示した対応策について優先順位を設定し、順次、
取組を進めていくことが必要である。
(1)
岡本台病院
①
現行の政策医療の取組内容
岡本台病院において、現在、実施されている主な政策医療の取組につ
いて、県立病院に求められる6つの機能別に整理すると次のようになる。
区
分
診療機能
主 な 取 組
①栃木県精神科救急医療システムを支える基幹病院として精
神科救急医療及び精神科緊急医療の実施
②アルコール依存症患者や薬物依存症患者に対する治療の実
施
③心神喪失者等医療観察法に基づく鑑定入院医療機関及び指
定通院医療機関としての対象患者の受入れ
地域支援機能
①精神科救急情報センターにおける休日・夜間時の受診相談
や対応医療機関の振り分け
教育・研修機能 ①専門スタッフの講師派遣や各種実習生・研修生の受入れ
②協力型臨床研修病院として医師の初期研修及び後期研修の
13
実施
情報発信・相談 ①精神障害者の退院・社会復帰促進や疾病再発防止のための
機能
普及啓発事業の実施
②アルコールに関する患者会・家族会への支援
政策支援機能
①栃木県地方精神保健福祉審議会への参画
②栃木県精神科救急医療システム連絡調整委員会への参画
②
政策医療に係る課題
栃木県の精神科救急・緊急医療システムの基幹病院であり、既に診療
の分野においては本県の中核病院として機能しているため、今後は県の
精神保健福祉行政への積極的な参画が求められている。
ア
長期入院患者の社会復帰促進に向けた対応
イ
触法精神障害者に対する適切な入院医療の提供による再発防止や社
会復帰促進に向けた対応
ウ
③
うつや児童・思春期の精神障害など病態の多様化への対応
今後取り組むべき対応策
ア
精神科救急医療・緊急医療の中核病院として、引き続き他の救急対
応医療機関と連携しながら、急性増悪の患者の積極的な受入れを行う。
イ
アルコール依存症患者や薬物依存症患者に対する医療を充実すると
ともに、精神疾患の多様化に伴い、社会的なニーズの高い領域の専門
医療の提供について検討する。
ウ
心神喪失者等医療観察法に基づく指定入院医療機関としての体制整
備について検討する。
エ
精神疾患患者の退院・社会復帰促進の観点から、地域の医療機関や
社会復帰施設、市町村、関係団体等との連携によるパイロット事業の
実施を検討する。
オ
精神疾患に関する各種情報の提供や県民からの相談等の機能を担う
県精神保健福祉センターとの連携を強化し、精神疾患に係る関連情報
の共有や専門人材の交流等を積極的に行い、県としての情報発信・相
談機能の充実を図る。
カ
県内の精神疾患患者の現状等の分析を行い、県の精神保健福祉施策
の企画立案に参画するとともに、前述(②)の政策医療に係る課題等に
ついて政策提言を行う。
14
岡本台病院における政策医療の取組方向
今後の対応
現 行
①精神科救急医療・緊急医療の充実強化
精神科救急医療
○救急時(休日・夜間時等)の
急性期患者や措置入院患者
等の受入強化
全県下の休日・夜間時の救急患者
の対応 (1次救急・2次救急)
精神科緊急医療
連携強化
民間医療機関
②社会的なニーズの高い専門医療の充実強化
24時間、全県下の自傷他害の恐
れのある緊急患者への対応
(3次救急)
・アルコール依存症患者や薬物依存症患者などへの対応
③医療観察法に基づく指定入院機関としての対象患者の受入れ
アルコール医療
・病床規模、事業費、スケジュール等の検討
全県下のアルコール依存症患者に
対する専門医療
④長期入院患者の退院・社会復帰促進に向けた取組強化
司法精神医療
○精神障害者の地域移行に係
るパイロット事業の実施検討
重大な他害行為を行った患者への
医療観察法に基づく医療
・鑑定入院医療 ・指定通院医療
連携強化
民間医療機関
社会復帰施設
市町村 等
⑤精神保健福祉センターとの連携強化
・関連情報の共有化、人材の活用・交流(役割分担の明確化)
基本的診療機能
地域住民を対象とした通院及び入
院治療
⑥政策支援機能の充実強化
教育・研修機能
・県の精神保健福祉施策の企画立案への参画
医師や看護師等の研修受入れ
(2) がんセンター
① 現行の政策医療の取組内容
現在、がんセンターが取り組んでいる主な政策医療の取組について、
機能別に整理すると次のようになる。
区 分
診療機能
主 な 取 組
①難治性がん、進行がん、再発がん症例の受入れと治療の実
施
15
②多部門、多職種によるチーム医療(集学的診療体制)の推
進
③稀少がん症例(頭頚部腫瘍、骨軟部腫瘍、転移性骨腫瘍、
原発不明がん等)に対する治療の実施
④緩和ケア病棟の運営や緩和ケアチームによる緩和ケア医療
の提供
地域支援機能
①地域医療機関に対する診療支援の実施
②セカンドオピニオン外来の設置
教育・研修機能 ①医師や看護師等の研修受入れや各種研修会への講師等の派
遣
②地域の医師や看護師、技師等を対象とするがん診療勉強会
の実施
情報発信・相談 ①がん情報・相談支援センターによるがん関連情報の提供や
機能
各種相談への対応
②病院ホームページやがんセンターだより、市民公開講座、
年報等によるがん関連情報の発信
研究機能
①抗がん剤開発等のための治験、新たな治療法開発のための
医師主導臨床試験の推進
②地域がん登録の推進
政策支援機能
①都道府県がん診療連携拠点病院としてのがん診療連携協議
会及び下部組織である部会の運営
②県が実施する栃木県がん総合対策検討会等への参画
②
政策医療に係る課題
昨年4月にがん対策基本法が施行され、各都道府県ではがん対策推進
計画を策定するとともに、がん総合対策の推進を求められており、がん
医療の中核的施設としてのみならず、栃木県のがん総合対策の拠点施設
として、各種機能の充実が求められている。
ア
都道府県がん診療連携拠点病院としての診療機能の充実
イ
県内がん医療の均てん化を推進するための診療連携体制の強化やが
ん医療専門スタッフの育成
ウ
がん患者やその家族等に対するがん医療情報の提供と相談支援の充
実
エ
がん検診の質の向上
オ
県のがん対策充実のための地域がん登録の推進と精度向上
16
カ
③
がんに関する研究の促進
今後取り組むべき対応策
ア
難治性がんや進行がん、再発がん症例等を受け入れて積極的な治療
を行うため、各診療分野に必要な専門医や専門医療スタッフを確保す
るとともに、高度医療機器を計画的に整備・更新するなど、診療体制
の整備と診療機能の充実を図る。
イ
がんの早期発見を推進するため、モデル検診事業の充実を図るとと
もに、市町村や検診実施機関等が行うがん検診の精度向上に向けて支
援を強化する。
ウ
県内のがん診療体制の十分でない地域を中心に、地域の医療機関へ
の診療支援や共同診療等の取組を充実させ、がん医療に係る病病連携、
病診連携体制の強化を図る。
エ
末期のがん患者に対する在宅医療を推進し、施設ケアから地域ケア
への移行を促進させるため、在宅療養支援診療所や訪問看護ステーシ
ョン、薬局等との連携によるパイロット事業の実施を検討する。
オ
県内がん医療の均てん化を推進するため、教育・研修機能の充実を
図る。特に、再発がん患者が身近な医療機関で治療を継続できるよう、
化学療法や放射線療法、緩和ケアに係る専門医や専門医療スタッフの
育成に取り組む。
カ
がん情報・相談支援センターを中心に、がん患者やその家族等に対
する相談支援を強化するとともに、県民が求めるがん医療情報を積極
的に発信する。
キ
県のがん対策の充実に向けて、県内のがん患者の状況を把握するた
め、地域がん登録における中心的な役割を担うとともに、県内の医療
機関におけるがん登録を推進するため、技術的な支援を強化する。
ク
県が取り組む総合的ながん対策の企画立案や実際のがん対策事業に
参画するとともに、併せて当該事業について事後評価を行う。
17
がんセンターにおける政策医療の取組方向
県がん診療連携拠点病院として、現在有している各種機能の充実強化を図る
<がんセンター>
診療機能 ・難治性がん、進行がん、再発がん等に対する医療の充実
・がん検診の充実
国立がんセンター
・がん対策情報セン
ター
・中央・東病院
・研究所
連携
地域支援 ・地域医療機関とのがん診療連携体制の強化
機能
・末期がん患者の在宅医療推進に係るパイロット事業の実施検討
教育・研修 ・がん専門医療従事者育成のための研修事業の実施
機能
(化学療法、放射線療法、緩和ケア等)
他県がん診療連携
拠点病院
全がん協加盟病院 等
各種
相談
情報発信 ・がん情報・相談支援センターの機能強化
相談機能 ・地域がん診療連携拠点病院等との連携による相談事
例、医療情報等の共有化
研究機能
・治験、臨床試験の推進
・地域がん登録の実施
充実・強化
情報
提供
政策支援機能
・県が実施するがん対策の企
画立案への参画等
連
携
〔機能分担・連携強化〕
・研修 ・医療情報提供
・診療支援、症例相談
情報
提供
<地域がん診療連携拠点病院>
連携
県内5病院が指定
県
連携
・医師会
・地域中核病院
・市町村 等
検診実施機関等
診療所・一般病院
各種相談
情報提供
各種相談・情報提供
(3)
県がん診療連
携協議会
民
リハビリテーション病院
①
現行の政策医療の取組内容
現在、リハビリテーション病院が取り組んでいる主な政策医療につい
て、機能別に整理すると次のようになる。
区
分
診療機能
主 な 取 組
①脳血管障害や脊髄損傷、小児神経疾患、小児整形外科疾患
等を抱える重度障害児者等に対する高度かつ専門的なリハ
ビリテーション医療の提供
②脳性麻痺児に対する外科的手術及びリハビリテーション医
療の提供並びに療育支援
18
③発達障害や運動障害、痙攣性疾患等の小児神経疾患全般に
わたる診断、治療及び療育支援
④シーティング外来(座位保持・車いす)やブレイス外来(装
具)等、障害児者のライフスタイルに合わせた医療の提供
⑤障害児全般にわたる医療の提供
地域支援機能
①乳幼児の二次健康診査等を通じた地域療育等の支援
教育・研修機能 ①理学療法士や作業療法士の実習生の受入れ
②看護実習生の受入れ
情報発信・相談 ①地域住民や市町村担当者を対象とした地域リハビリテーシ
機能
ョンに係る啓発事業の実施
②総合相談所による医師の巡回相談の実施
政策支援機能
①栃木県社会福祉審議会への参画
②栃木県障害者施策推進協議会への参画
②
政策医療に係る課題
診療の中心である回復期リハビリテーション医療について、民間医療
機関でも対応が可能となる中で、県立病院としての役割や診療機能の整
理が求められている。
ア
県民ニーズに基づく障害児者医療の充実
イ
県としての回復期リハビリテーション医療への対応
③
今後取り組むべき対応策
ア
とちぎリハビリテーションセンター内の福祉部門との連携により、
小児神経疾患や小児整形外科疾患等、障害児を対象とした専門医療の
充実を図る。
イ
脳卒中対策が県の主要な政策課題とされる中で、県内のリハビリテ
ーション病床数が不足している状況にあることから、当面、回復期リ
ハビリテーション医療に取り組むこととし、併せて県の脳卒中対策に
おける役割や機能を整理する。
なお、今後は、県内のリハビリテーション医療の拠点病院として、
専門人材の育成や患者に対する相談支援など、県内リハビリテーショ
ン医療水準の向上に向けた取組を検討する。
ウ
医療から介護保険サービス等への円滑な移行を図り、患者の退院後
における機能回復や社会復帰を促進させるため、民間医療機関や介護
保険施設、在宅サービス事業者等との連携によるパイロット事業の実
19
施を検討する。
エ
高次脳機能障害者に対するリハビリテーションについて、医療機関
や福祉施設、教育・雇用関係機関との連携により、リハビリテーショ
ンプログラムの開発や相談支援、専門人材の育成等に取り組む。
オ
県が取り組むリハビリテーション医療政策の企画立案や実際の事業
に参画するとともに、併せて事業の事後評価を行う。
リハビリテーション病院における政策医療の取組方向
現 行
今後の対応
<リハビリテーション病院>
リハビリテーション病院
<施設(一般会計)>
障害者総合相談所
・身体障害者更生相談所
・知的障害者更生相談所
・難病相談支援センター
・発達障害者支援センター
「ふぉーゆう」
こども療育センター
(肢体不自由児施設)
こども発達支援センター
(肢体不自由児及び知的
障害児通園施設)
駒生園
<施 設>
・障害者総合相談所
・こども療育センター
・こども発達支援セン
ター
①隣接する福祉施設部門との連携
による、主に障害を持った子ども
に対する医療の充実
一体的
運営
②当面、回復期リハビリテーション
医療を継続するとともに、県の脳
卒中対策における役割や機能を
整理
一体的
運営
<施 設>
・障害者総合相談所
・駒生園
③入所医療から介護保険サービス
等への円滑な移行を図るための
パイロット事業の実施検討
連携
<施 設>
・民間医療機関
・介護保険施設
・在宅サービス事業
者等
④高次脳機能障害者に対するリハ
ビリテーション医療に係る人材
育成や相談支援等を実施
連携
<施 設>
・医療機関
・福祉施設
・教育・雇用関係機関
⑤県が対応するリハビリテーション医療政策の企画立案への参画
(肢体不自由者更生施設)
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