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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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ギャンブル市場のメカニズム(経済物理学II-社会・経済へ
の物理学的アプローチ-,京都大学基礎物理学研究所
2005年度後期研究会)
一宮, 尚志
物性研究 (2006), 86(4): 510-511
2006-07-20
http://hdl.handle.net/2433/110551
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
ギャンブル市場のメカニズム
一宮尚志
北海道大学電子科学研究所情報数理分野
1
金融市場や為替市場のダイナミクスは経済物理学の主要な研究対象となっているが、実際には
それら以外にも多くの市場がある。例えば、競馬というものを考えると、これは一つの市場と看
倣すことが出来る。一頭一頭の馬はそれぞれ異なる能力があり、参加者はその能力と配当の倍率
を元に、賭ける馬を決定する。そして参加者が賭けることによってさらに倍率が変動する。もし、
賭けの参加者が十分合理的なら、参加者はもっとも配当の期待値が大きい馬、すなわち配当倍率
X勝率が最大の馬に賭けるだろう。その結果、最終的には、全ての馬に対して配当倍率 X勝率が一
定となるに違いない。このようなことが実際に起こっているだろうか。それ以前に、そもそも参
加者は馬の勝率を正しく予測できているだろうか。このような疑問から、日本中央競馬会 (
JRA)
主催の競馬データを解析した。解析したものは最終オヅズの度数分布、および最終的に勝利した
馬の最終オッズの度数分布である。データとして、 2
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5年 2月から 9月にかけて、 JRAが主催し
た全てのレース(レース数 2326参加頭数のベ 32133頭)を用いた。
下に、最終オッズの度数分布、および勝馬の最終オヅズの度数分布を示す。最終オッズの分布
九(
x
)は、倍率 1
0倍から 1
0
0倍の範囲において、ほぽ l/xに比例していることがわかる。一方、
最終的に勝利した馬のオヅズの分布 P
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(
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)を見てみると、こちらはほぼ
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とが判る。ここで、勝率がオッズの関数であると仮定してみる。すると、オッズ Z の馬の勝率は
P
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/
九(
x
)に比例するから、オヅズ z倍の馬の勝率は l/xに比例していることになる。したがっ
て、オッズ zの馬から得られる配当の期待値は zによらず一定となる。これは、賭けの参加者が
合理的であるという仮定と矛盾しない。
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図1:左:最終オッズの度数分布。右:勝馬の最終オッズの度数分布
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「経済物理学 E 一社会・経済への物理学的アプローチ しかしながら、矛盾しないということだけで賭けの参加者が合理的であると言うことはできな
またオッズの巾則も参加者の合理性のみからは導出できない。
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そこでこのようなオッズの巾則を説明するために以下のようなモデルを考えた。
1.各レースに参加する馬は、夫々「強さ Jsというパラメータを持つ。
Sの分布は
Oと 1の聞の
乱数によって定められている。
2
. レースに賭ける人聞は、馬の正しい f強さ Jを推測する。ただし賭ける人は馬の真の f強さ J
を正確に知ることは出来ない。彼が推測する各馬の強さ
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=s+rで与えられる
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こと
、分散 U の G
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s乱数である。
で T は平均 0
3
.強さを推測した人間は、自分が最も強いと思う馬に賭ける。
4
. レースの結果、ある馬が勝つ確率はその馬の強さに比例する o
このモデルで一番問題になると忠われるのが 3
.の仮定である。賭けの参加者が合理的であるなら、
この仮定よりも以下のようなモデルの方が相応しいように思われる。
3¥賭けに参加する人は、最も配当の期待値が大きい馬にかける。
この場合は s
'とオッズの積が最大の馬に賭けることになる。前者のモデルを「モデル l
J、後者
J と呼ぶごとにしよう。各々のモデルのシミュレーションの結果を下に示す。明らか
を「モデル 2
に、非合理的モデルの方が実際のオヅズ分布と良い一致を示している。合理的モデルでは、オッ
/
x
2、勝馬のオ、yズの分布が 1/X3に比例しており、実際のデータと合わない。
ズの分布が 1
以上のように、モデル 1によって競馬のオッズの分布は良く説明できることが判った。今後の
問題としては、他のギャンプルでも同様な結果が得られるのかという点がある。韓国の競馬では
1
]、さらなる研究が必要である。
度数分布の巾が異なるという結果もあり [
参考文献
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: シミュレーションとモデルの比較:(左)全体のオッズの度数分布(右)勝馬のオッズの度数
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