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Microsoft Excelのグラフ描画機能を用いた初学者向け統計学習教材
Microsoft Excel のグラフ描画機能を用いた初学者向け統計学習教材開発の試み An Attempt to Develop Teaching Materials of Statistics with Drawing Graphs in Microsoft Excel 眞壁 豊 Yutaka MAKABE 東北文教大学 Tohoku Bunkyo College 【要旨】 本研究では、基本的な統計処理ができる表計算ソフトの1つである Microsoft Excel のグラフ 描画機能を駆使し、利用者によるサンプルデータ入力に基づくヒストグラムと、関連する代表値 や指標の動的な自動描画を行うための方法を提案し、統計の初学者の理解を助けるデジタル教材 開発の手法を提案する。 【キーワード】 表計算 グラフ描画 統計教育 統計学 1. はじめに 平成 20 年~21 年改定の学習指導要領 では、小学校から高等学校まで、統計に 関する内容を体系的に学習するようにな っている。たとえば平成 25 年度から完全 実施された高等学校学習指導要領の数学 *1 では「数学Ⅰ」において「(4)データの 分析」が盛り込まれるなど、教科全般に 渡って統計的な内容を扱うことになった。 これを受けて大学入試センターでは、 「数 学Ⅰ・数学 A」 「数学Ⅱ・数学 B」の試作 問題を公表している。 *2 本研究では、基本的な統計処理ができ る表計算ソフトの 1 つである Microsoft Excel のグラフ描画機能を用い、利用者 によるサンプルデータ入力に基づくヒス トグラムと、関連する代表値や指標の動 的な自動描画を行うための方法を提案し、 統計の初学者の理解を助けるデジタル教 材開発の手法を提案する。 この教材の意図するところは、統計学 に関する「標本データ→数式→モデル化 →母集団の推測」までの流れを、標本デ ータの入力のみでイメージ化して表示さ せることで、統計に関する学習を容易に させることにある。 2.実現の方法 以下に、Excel 2010 をもとに実装方法 を説明する。教材全体の構成としては、 スプレッドシートの縦方向約 20 行分に、 学習者が自由にサンプルデータを入力す ることで、それに応じた統計量と、ヒス トグラム上における位置づけを自動的に 表示させる。(図1) (1)20個程度のデータ入力 (2)指標とグラフの自動表示 (3)右スクロールで、入力したデータに基づいた統計用語・指標の説明 図1 教材の完成図 2-1.ヒストグラムに任意の指標を同時に 表示させる手法の基本的な考え方 動作の基本的な考えは「図2」のとお りである。ヒストグラムの描画は度数分 布表を元にした縦棒グラフ。ヒストグラ ム上に任意の指標をプロットする方法は、 第2軸対して「散布図(直線)」で描画し ている。 軸」に表示させるようにする。(図 5) 図5 加えた系列を第2軸に表示 図2 ヒストグラムと任意のプロットの混在 2-2.散布図(直線)を用いたプロット 以下に、単純化した例をもとにヒスト グラム上に任意の統計量をプロットする 手法を述べる。仮に「図 3」に示すデー タがあり、ヒストグラムについては E2:F4 セルを用いて縦棒グラフで既に作 成しているものとする。C5 セルには B5 セルで求めた平均と同じ値を出力してい る。B6 セルにはグラフ内の平均値データ ラベルの表示用文字列を設定している。 (4)第 2 軸を縦横軸ともに表示させ、軸の 表示範囲を調整する。 (5)追加した系列の「データの選択」を「図 6」のようにする。X の値は 2 つの平均値 (B5:C5)を選択。Y の値についてはこ の例では「={0,1.5}」としている。 図6 データ範囲 (6) 直 線 の 上 部 に デ ー タ ラ ベ ル を 追 加 す る。データラベルには任意のセルの内容 を表示できるので B6 セルを設定する。 ここまでの完成図を「図 7」に示す。 図3 用いるデータ (1)グラフが選ばれた状態で、「グラフツ ール~デザイン」リボンから「データの 選択」を押して、グラフの系列を加える。 (図 4) 図7 完成図 3.今後の課題 この論文で示した内容は、教材の実装 方法までであり、この教材を用いた学習 成果はまだ測定していない。学習者に対 して、この教材を用いる前後で統計テス ト問題を解答させ、教材の有効性を検証 したいと考えている。 参考 図4 グラフに系列を加える (2)加えた系列のみに対して、「グラフの 種類の変更」を用いて「散布図(直線)」 に変更する。 (3)「グラフツール~レイアウト」リボン から、加えた系列のグラフ描画を「第 2 *1 文部科学省(2009)「高等学校学習指導 要領 *2 数学編」 大学入試センター「平成 27 年度試験」 ( http://www.dnc.ac.jp/center/shik en_jouhou/)に、数学の試作問題が PDF で閲覧できる。 ( 2014.8.8 時点)