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ダイキン工業株式会社 http://www.daikin.co.jp システム認証事業本部
システム認証事業本部 環境貢献と事業拡大の両立を目指して、 ダイキン工業株式会社 環境パフォーマンスデータを第三者検証で確認。 (大阪府大阪市) ダイキン工業株式会社 CSR・地球環境センター http://www.daikin.co.jp 担当課長 新木一成様へのインタビュー 世界屈指の空調メーカーとして知られるダイキン工業は、2014 年、グローバル連結での環境パフォーマンスデ ータを対象とする第三者検証をビューローベリタスにより実施した。SCOPE1、2 と呼ばれる事業活動に伴うもの だけでなく、SCOPE3 の調達、輸送、出張、製品の使用における温室効果ガス排出量に至るまでのデータ検証 を受けた。その効果もあり同社の取り組みはカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)の評価を受け、気 候変動パフォーマンス先進企業として「クライメート・パフォーマンス・リーダーシップ・インデックス(CPLI)2014」に 選定された。その一連の取り組みについて、CSR・地球環境センター 担当課長 新木一成様にインタビューし た。 環境パフォーマンスデータの第三者検証を開始した理由、および目的は何ですか。 弊社では「環境貢献と事業拡大」の両立を目指していますが、それを両立する到達点 (削減目標や貢献量)を数値化し、その実績が本当に正しいかどうかを検証する必要が ありました。またもう 1 つ、現在、世界各国に生産拠点を拡大中ですが、特に M&A でグ ループの一員となった工場などは、独自の歴史や文化があるため数値化のレベルが合 わないことがよくあります。そこで第三者機関による検証を受けることで、いわゆる「数 値の棚卸し」をしたかったのです。この 2 つが第三者検証を受けようと決めた大きな理 由であり動機です。 CSR・地球環境センター 担当課長 新木一成様 第三者検証のメリットは何でしたか。 検証を通してルールが明らかになる、数値の裏付けができる、環境貢献の効果が数値化できるといった基本的 なメリットに加えて、現場にとっては、従来、単にデータを集めて提出するだけだったものが、第三者検証を経て 提出したデータが何に活用され、評価されているかが明確になり、モチベーションアップに大きく貢献しました。ま た第三者が何をどのように検証するのかという「検証の観点」が分かり、現場の感度が上がるという効果もありま した。 検証範囲をグローバル規模とし、国内 3 サイト、海外 5 サイトで合計 8 サイトの検証を受けたのはなぜですか。 海外サイトは圧倒的に数が多いことに加えて、先ほど申し上げたように数値化のレベルにおいて曖昧な部分が ありました。一方で国内サイトは、環境省の国内排出量取引制度のための監査を受けていたことから、数値の精 度は一定レベルで担保されていると考えられましたが、グローバルで数値のばらつきを検証するためにも今回、 グローバルでの検証としました。 海外サイトの第三者検証には、新木さんをはじめ、CSR・地球環境センターのメンバーが同行されたそうですが、 同行されていかがでしたか。 大半のサイトが第三者検証を前向きにとらえ、協力的に受け入れる姿 勢をもっていることに驚きました。実は「第三者検証までは必要ないの ではないか」という声も聞かれたのですが、そのような雰囲気はありま せんでした。さらに、殆どのサイトが予想以上にきちんとデータを把握 していることが確認できました。それまでは、特に海外サイトより提出 されるデータの精度の信ぴょう性の判断には難しい面がありましたが、 中野裕子様と鞍野克司様も海外 8 サイトの検証 に手分けして同行。 検証に同行し現場訪問を通じて、各工場のデータ収集の仕組みやレ ベルを確認できましたし、その結果、提出されるデータの大部分が信 用に足るものだと判明しました。これは大きな収穫でした。しかし実は、我々本部の人間にとって検証に同行して 何より良かったことは、現場の様子を自らの目と耳で確認したことにより、本部の課題が浮き彫りになってきた点 にあります。 どのような課題が見えてきたのですか。 データ収集に関するルールや手順を、本部がもっと正確且つ詳細に定め、サイトに周知徹底しないといけないと いうことです。例えばアジアのある工場では、収集されたデータが誰にもチェックされないまま本部に送られてい たり、秤の校正にばらつきがあったりというケースがありました。このようなケースを防止するためにも、本部がル ールや手順を明文化して各サイトに周知徹底し、改善に向けたシステムを構築する必要性を実感しました。つま り、各サイトだけでなく本部にとっても第三者検証は大きな学習機会となったのです。 1 年間で 8 サイト訪問するのは負担が多いように思いますが? 1 年間に 8 サイトが多いとはさほど感じていません。その理由は、データ管理の精度を高めるために、各サイトで 3~4 年間に 1 度の頻度で検証を受けるべきと考えるからです。また、検証を全サイトに早く展開したかったこと、 この頻度で各サイトの検証を実施しないとパフォーマンスデータの正確性や取り組みのレベルアップは担保され ないとの考えから、自然とこのペースになりました。 中には自組織の取り組みが適切かどうかを確認したい、またはステップアップしたいという考えから、第三者検 証と指摘を心待ちにしているサイトもありました。ですから 1 年間に 8 サイトの検証のペースは必須、さらに増や していきたいともと考えています。 SCOPE1・2 だけでなく、SCOPE3 の検証や製品使用に伴う CO2 排出抑制貢献量測定の仕組みのレビューも 受けていますが、その理由は何ですか。 理由としましては、開示データの客観性、妥当性並びに透明性を高め、社会から信頼されるためです。 今までは、工場の生産段階の CO2 削減取り組みをメインで行っていました。しかしながら CO2 は、工場だけでは なくサプライヤーを初めとする部品や原材料の調達、輸送、製品使用、廃棄などライフサイクル全体で排出され ています。CO2 をどの程度排出しているかを、できるだけ漏れなく、トータル且つ正確なデータ検証を受けておこ うという意識が高まり SCOPE3 の算定に着手しました。 一方貢献量のレビューについてですが、弊社は、インバータやヒートポンプなど環境訴求型商品を通じて CO2 排 出量の削減など環境への影響を削減する取り組みを強化しています。現在新興国では経済発展に伴い、エアコ ンのニーズが高まっております。一方で電力供給にも影響を与える可能性もあるので、省エネ性の高いインバー タ式のエアコンを普及し環境貢献していきたいと考えています。この貢献量測定の仕組みについては当社で試 算しましたが、その算定方法や貢献量のレビューを受けることにより、社会からの信頼を高めることができると考 えています。 各サイトでの検証結果や削減努力に関する情報共有はいかがですか。 社内の環境会議を通して全て開示しています。開示の目的は社内ベンチマークです。他のサイトの状況を知るこ とで、自分たちのサイトがどうあるべきかを考えてもらいたいとの思いから、積極的に開示しています。海外サイ トの従業員は、皆さん真面目で負けず嫌いですから(笑)、検証結果の開示による社内ベンチマークはモチベーシ ョンをアップさせる上でも効果的だろうと考えています。 CDP より、気候変動パフォーマンス先進企業として、「CPLI2014」に選定されました。第三者検証を受けた海 外サイトの反応はいかがでしたか。 パフォーマンスが A 評価、開示が 92 点となり選定されたのですが、国内および海外の担当者と現場が「自分た ちの取り組みが評価された」と、非常に喜んでくれました。そして、これから益々頑張って取り組もうという気運が 生まれています。やはり認められ、評価されるということは大きな励みになり、新たな活力を生みますね。 今後の取り組みについてのビジョンは? 最初に申し上げた「環境貢献と事業拡大の両立」を達成するための活動をさらに推進することです。そのために 具体的な数値目標を提示することが当面の取り組みです。例えば工場での生産時に出る CO2 を 2005 年度比 2015 年度までに 3 分の 1、さらに 2020 年までに 4 分の 1 に削減しよう、2015 年の環境貢献削減量を 3 千万ト ンにしようといった具体的な数値目標を提示し、次に、事業(売上)を拡大しながらそ の数値目標を達成するためには何をすべきかを考え実行することが、今後の本部の 重要な仕事だといえます。ちなみに弊社は 2024 年に創業 100 周年を迎えますので、 それまでの 5 年毎の具体的な数値目標はぜひ設定したいと考えています。また、本 部のガバナンス強化も重要な課題です。サイトの ISO14001 認証の取得だけでは充 分といえませんので、サイトでの活動の効果について本部で正確に認識することが ぴちょんくん (家庭用ルームエアコン 「うるるとさらら」のマスコット) 大切です。そのためにサイト間のベンチマークを行い、お互いに刺激し改善につなが るサイクルの構築にも取り組みます。 最後に、御社にとって環境パフォーマンスデータの第三者検証とはどんな意味を持つものですか。 ただ単にデータに関するお墨付きをもらって安心するためだけに実施するものではなく、事業拡大、サイト管理・ 運営、研究開発、CSR など、企業経営を支える戦略的ツールとしてとらえるべきものだと思います。第三者検証 やそれに付随する活動によって、各サイトの現状を知り、それぞれが抱える課題を横断的に確認し、包括的な対 策を通じて、全社のパフォーマンス改善に貢献できる点にも魅力を感じています。 (2015 年 2 月 23 日取材) ダイキン工業株式会社:CSR・環境への取り組み/CSR 報告書 2014/第三者検証報告書(PDF) ビューローベリタスのサービス:サステナビリティレポート検証