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自治体におけるGIS活用人材の育成
特別企画 2 自治体におけるGIS活用人材の育成 −求められるGIS活用人材のキャリアパス− 三菱総合研究所 人間・生活研究本部 主任研究員 研究員 研究員 ■動き出した「GIS活用人材」 日常生活や地域活動等においてGoogle Maps 自治体チャンネル+ 平成 26 年 20 月合併号 9 ・ 10 桑原 真琴 横山 宗明 沼田 雅美 ■自治体における「GIS活用人材」 GISの導入は、各自治体でも進んでいる。ま などを用いた地図等を目にする機会が増え、 た、Google MapsやWEB GIS、地域SNS等の GIS(地理空間情報システム)の専門的な知識・ 地理空間情報を活用した住民サービスの提供も スキルを有しなくとも、日常的に地図利用が可 盛んになりつつある(特定の業務に特化した個 能な状況になりつつある。 別型GISの整備率は、都道府県で95.7%) 。 我が国においては、 「地理空間情報活用推進基 一方で、多業務間での連携が可能な統合型 本法」が2007年より施行された。地理空間情報 GISを導入している自治体は、都道府県でも の活用の推進に関する施策に関し、その基本理 36.2% 1 )にとどまり、十分整備が進んでいると 念を定め、国及び地方公共団体の責務等を明ら は言い難い。このことから自治体においては、 かにするとともに、地理空間情報の活用の推進 今後、これまで以上に庁内において統合的に に関する施策の基本となる事項を定めることを GISの活用を推進していく必要があり、人材育 目的とする。また、政府の測位・地理情報シス 成という観点からは、十分な専門知識をもって テム等推進会議により策定された「GISアクショ 分析等を実施する専門人材、庁内横断型の取組 ンプログラム2010」 (2007年 3 月)では、 「単に みを推進する人材等、さまざまな人材を確保す GISを扱える人材を育成するだけでなく、分野横 る必要性が高い。ただ、自治体においては、人 断的な情報の活用を行ったり、自らの専門分野 事ローテーションや、公務員としてのキャリア において空間的な思考を行いGISの活用を企画 形成という問題も相まって、現状ではなかなか できる人材を育成するため、国は、大学や地域 GISに特化した専門人材育成が難しいため、人 においてGISを担う人材の育成を推進する」との 材活用組織のあり方も含めた検討が必要である。 記述がある。このように、現在、地理空間情報 とりわけ、GIS活用人材のキャリアパスが不 を活用することのできる人材(=「GIS活用人材」 ) 明確な現状においては、 「GISアナリスト」や を育成することが求められており、専門的な人 「GISマネージャー」など組織内におけるGISの 材育成に加え、広く一般にも地理空間情報の活 導入促進を司る役職の人材育成や、組織内にお 用の裾野を広げることが重要になってきている。 いて潜在的なGISユーザーとして存在している 本稿では、 「平成19年度 地理空間情報の活 階層に対して、いかにGISの有効性や、利用目 用のための人材育成方策等についての調査」 (国 的、利用方法について理解促進を図り、具体的 土交通省国土計画局)における調査結果をもと な施策に活用していくかといった点を浸透させ に、自治体におけるGIS 活用人材育成のポイン るための人材育成が、 今後は特に重要である(図 トについて考察した。 表1) 。 図表1 GIS活用人材のキャリアパス 推進組織 ユーザー 組 織 ①GISディレクター ③部門マネージャー ②GISマネージャー ④GISコーディネーター ⑤GISプログラマー ⑥GISアナリスト ⑧GISテクニシャン ⑦部門GISアナリスト ⑧GISテクニシャン ⑨GISユーザー 自治体チャンネル+ IT専門家 ⑩潜在GISユーザー ⑪GISラーナー <GIS活用人材の種類と概要> 人材の種類 人材の概要 ③部門マネージャー ユーザー組織の組織長として、GISの活用成果を意思決定に利用するとともに、ユーザー組織におけるGISの活 用やGIS人材の育成・活用を推進する人材。計画、交通、建設、防災、保健等のユーザー組織の部課長クラスに 相当。 ④GISコーディネーター GISマネージャーの直下に位置し、推進組織内外との連携・調整を行う人材。ユーザー組織の業務フローの理解 にもとづき、これら組織でのGIS環境の整備・活用支援も行う。 ⑤GISプログラマー 推進組織において、GISのソフトウェアやデータベースの開発・管理、ソフトウェアの調達・検収、他のGIS人 材に対する技術支援を行う、高い水準の技術スキルを有した人材。ITの専門家が担う、アナリストが兼務する、 あるいは外部のベンダーに委託することもある。 ⑥GISアナリスト 推進組織において、ユーザー組織のGIS活用に関するニーズの収集・評価にもとづき、地図情報の設計を行う人 材。ユーザー組織における導入・活用支援や他のGIS人材に対する技術支援も行う。規模の大きくない組織にお いては、GISプログラマーの機能も兼ねる。 ⑦部門GISアナリスト ユーザー組織において、部門のビジョン、戦略の実現に向け、GISを活用した高度の分析や、GIS推進組織と連 携したGIS環境整備を促進する人材。 ⑧GISテクニシャン GISアナリストの補佐や地図情報の入力、管理等、GISを活用した定型業務を行う人材。外部の派遣企業や学生 のアルバイトとして雇用することも多い。 ⑨GISユーザー GISを活用し、業務の高度化や生活の質の向上を図る人材。GISアナリストほど高度な分析は行わない。GIS活 用人材の裾野ともいうべき人材で、ユーザー組織では担当クラスから部課長クラスといった幅広い階層に、一般 では高校生以下の生徒・児童、GISに直接関連しない業務を行う職業人、主婦等に相当。 ⑩潜在GISユーザー 業務の高度化や生活の質の向上を図るため、GISの活用が期待される人材。ユーザー組織に所属する人材と、そ うではない一般の人材からなる。 ⑪GISラーナー GISを専攻する学生、あるいはGIS以外の専攻であるがGISを活用した学習を行う学生。専門学校、短大、大学 学部から大学院の学生に相当。 資料:三菱総合研究所 1) 「統合型GISポータル」 (http://gisportal.soumu.go.jp/case/lo_case/h19.html)より 20 9 ・ 10 月合併号 ②GISマネージャー 推進組織において、GISディレクターの参謀役としてGIS活用戦略・計画・政策の立案を行うとともに、プロジェ クトマネージャーとしてGIS活用事業を推進し、調達の意思決定を行う人材。他の組織、部門との調整も行う。 GIS推進室長クラスに相当。 27 年 GIS推進組織の長として、戦略決定、人事、予算確保、環境整備を行うとともに、人材育成・活用の牽引役とな る人材。担当役員であるGIO(Geographic Information Officer)やIT部門長に相当。 平成 ①GISディレクター 特別企画 2 図表2 モデル育成カリキュラムの項目例 分類 科目名 GIS活用による業務革新 概要及びキーワード GISを活用して業務革新を図るための戦略作成ノウハウ、業務分析と改善方策について学ぶ。先進的な事例やビジネスモデル、戦略等を例 示しながら、従来業務においてどのようにGISを活用できるかについて演習を行う。 キーワード:業務分析、業務改善、GISのビジネスへの活用 プロジェクトマネジメントやリソースマネジメントの基本理論を学び、GIS活用プロジェクト及びGIS導入プロジェクトにおいて適切なプ プロジェクトマネジメント ロジェクトマネジメントをできるようにする。 キーワード:プロジェクトマネジメント、PMBoK ビジネス マネジメント ビジュアル& コミュニケー ション 自治体チャンネル+ 地理空間情報関連政策・制度 GIS・地図関連の政策・制度、標準化動向、GIS関連組織及び海外の事例や制度について学ぶ。GIS・地図に関連する法制度として、測量法、 国土調査法(地籍調査) 、不動産登記法を取り上げるほか、法定図書として地図の整備を求めている道路法、下水道法、都市計画法での地図 の位置付けについても触れる。 キーワード:地理空間情報活用推進基本法、基本計画、国土空間データ基盤、測量法、ISO/TC211、GML、OpenGIS、地理情報標準 地理空間情報と法制度、倫理 空間情報データや地図、GIS利用時に関係する法律及びGIS活用人材に求められる倫理を学ぶ。GISの活用において関連する法令として、知 的財産権、所有権、情報公開、個人情報保護法を取り上げる。また、事例や判例をもとに、著作権・個人情報保護の観点から空間情報デー タの利用可能範囲について学ぶ。 キーワード:地理空間情報活用推進基本法、著作権、所有権、個人情報保護法、知的財産権、所有権、倫理 GIS活用組織と人材育成 GISを活用する組織と人材のタイプ、各人材のスキル要件と役割分担、育成の方法について学ぶ。GIS活用人材の育成に成功している自治体、 企業の事例や海外におけるGIS人材育成の状況、育成のためのカリキュラムやカリキュラムにもとづく研修、関連資格について紹介する。 キーワード:GIS活用人材、GIS活用推進組織、GIS資格認定協会、GIS活用人材育成カリキュラム ナレッジシェア GISに関連するナレッジシェアやGISで情報を取り扱うための手法を身につける。GIS活用人材に求められる技術関連文書・予算関連文書の 書き方、GISを活用する際の情報共有の方法、外部への情報発信時の留意点についてサンプルや事例をもとに学ぶ。 キーワード:ナレッジシェア、情報公開、仕様書、情報共有 プレゼンテーション 地図のビジュアル化の基本原理を学び、地図を使った効果的なプレゼンテーションの手法を身につける。地図を利用した分析結果の視覚伝 達・デザイン、地図を中心とするGIS分析事例における解釈、地図の読み方・解釈・分析・評価の仕方を講義及び演習により身につける。 また、空間情報を効果的に取り扱うためのツール(ウェブ、ストリーミング、写真など)についても学び、それを応用できるようにする。演 習内容は、1)地図の塗り分け(閾値、カラーテーブル設定のノウハウ、2)実際の地図からの情報読み取り、3)地図情報を補足するための グラフ等の援用、4)業種別のテーマによるプレゼンテーション演習である。 キーワード:地図の基礎知識、地図のデザイン、地図の解釈、地図の分析・評価、プレゼンテーション GISの調達と運用 GIS及び地図データベースの調達に関する知識を講義で学ぶ。GISの調達について、利用目的の明確化と要求定義、利用するデータ及びGIS エンジンの選択、仕様書作成及び入札、施工管理、保守・運用計画作成、データ更新・調達後のモニタリングについて、近年の動向(オープ ンソースソフトウェアやLASDECライブラリ)や標準化動向(ISO、地理情報標準等)、注意事項を踏まえて手法を学ぶ。また、既成地図デー タベース及び地図を活用した情報利用に関する基本的事項(著作権処理、個人情報等)について学ぶ。 キーワード:コスト分析、標準化、要求仕様書、調達、施工管理、保守・運用 地図の調達と利用 特に自治体における地図調達の手法・注意事項と調達した地図の活用手法を学ぶ。庁内の地図調達効率化事例、測量業者との契約、著作権・ 使用範囲、予算費目・積算、使用できる業務の制限、品質管理と検査の方法等について、事例や標準の調達仕様をもとにノウハウを学ぶ。 キーワード:測量法、公共測量、著作権、地理空間情報活用推進基本法 GISのためのIT基礎 GISを利用する際に必要となるIT関連スキルを身につける。ウェブGIS、スタンドアロン型GIS、サーバ型GISの仕組みと特徴、データ処理 時に利用できるツールや留意点、データベースやネットワークの基礎知識とセキュリティ上の留意点などを学ぶ。 キーワード:データマイニング、SQL、ネットワーク、セキュリティ、バッチ処理、ウェブGIS、サーバクライアント型システム ウェブGIS・GIS構築 GIS(ウェブGISを含む)を利用したシステム構築及び地図を利用したウェブアプリケーション開発に必要な知識とスキルを学ぶ。ウェブGIS 及び関連技術に関する講義、地理空間情報を扱うために利用する地図やウェブ技術・ツールに関する講義と事例紹介、最新動向の紹介とウェ ブアプリケーション作成の演習を行う。 キーワード:ウェブGIS、地図データ利用、ウェブアプリケーション、Web Map Service、オープンソースソフトウェア、情報配信、ウェ ブデザイン、セマンティックウェブ、gコンテンツ 空間のモデル化と形式化 実空間を情報として取り扱うため必要な事項を学ぶ。空間思考(空間に関する基本的な知識)、実空間のモデル化(モデリングとモデリング言 語)、 モ デ ル の 形 式 化(空 間 デ ー タ の 表 現 方 法)に つ い て、 そ れ ぞ れ の 種 類 や 特 徴 を 学 ぶ。 形 式 化 に つ い て は、 空 間 デ ー タ の 書 式 (shape,DXF,XML等)、空間スキーマ(ベクトルデータ、幾何スキーマ、位相スキーマ等)と応用スキーマの例、地球を表現するための座標 系(地球楕円体、座標参照系、投影法等)、時間スキーマ、被覆などを取り上げる。 キーワード:モデリング、オントロジ、モデルとスキーマ、ラスターモデル、ベクターモデル、スキーマ、座標参照系、解像度と精度 地理空間情報の作成技術 地理空間情報の作成に関係する基礎的な技術と地図学の基礎を学ぶ。測量の基礎、写真測量、リモートセンシングの種類と特徴、地図の種 類と特徴、デジタルマッピングやマップデジタイズの方法、ラスター・ベクターの変換について講義する。また、画像処理のフォーマット と画像処理手法(圧縮、エッジ検索、フィルタリング、モザイク処理)、ソースや解像度が異なるリモートセンシングデータの利用、地理情 報の品質などについても触れる。 キーワード:測量、航測、写真測量、地図学、センシング技術、リモートセンシング、デジタルマッピング、地理情報の品質・誤差 位置特定の技術と応用 位置情報を取得するための要素技術の種類と特徴、それらの技術を利用したサービス事例について学ぶ。GPSの原理と利用例、携帯電話・ 無線LAN・RFIDなどの種類と特徴や利用例、緊急通報位置通知サービス、地図サービス等を取り上げる。 キーワード:測位、GPS、カーナビゲーション、携帯電話、無線LAN、RFID、E911、ITS 平成 28 年 20 月合併号 9 ・ 10 GIS技術 GISで利用するデータ及び利用方法と管理方法を講義により学ぶ。主題属性の収集、フィールドデータの収集と利用、既存データの利用、 空間情報データベースの Webや調達による各種データの入手と使用可能なデータ形式への変換(測地系、座標系、ファイル形式など)、空間データベース、データ統 合、データベース管理などのスキルを身につける。 利用と管理 キーワード:ジオコーディング、アドレスマッチング、国土空間データ基盤、公開データの入手、空間データフォーマット、メタデータ GIS入門 GISソフトウェア操作 GISソフトウェアを使うための基本的な知識に関する講義と、コンピュータを使った実習により、GISソフトウェアの利用方法を学ぶ。講 義では実務に役立てるため、良く使われる地図、地図DBに関する入手先・価格・使用制限などを紹介し、実習では、実例をもとに一通りの 操作を行う実践演習を取り入れる。 キーワード:GISソフトウェアの種類と機能、データの種類と構造、空間データの利用方法、テーブルの利用、空間参照の設定 GIS分析手法(基礎編) 空間分析手法及び統計解析手法の初歩を学び、空間的思考にもとづく問題設定から解決案作成までの一連のスキルを身につける。主として、 問題設定・要件整理、仮説構築、作業項目・利用データ等への落とし込み、関連空間分析手法・統計解析手法、分析結果の評価・解決案作 成について座学と机上演習で学ぶ。演習では、都市計画分野、施設・設備管理分野、エリアマーケティング分野、環境・安全分野など受講 生の専門に応じて具体的な事例を取り扱う。 キーワード:属性にもとづく分類,再分類,統合、近傍演算(バッファ,ボロノイなど)、幾何学的論理演算(オーバレイなど)、空間検索, 選択,抽出、最短経路、空間的思考 GIS分析手法(応用編) より高度な分析手法の理論と適用方法を演習を通して学ぶ。また、高度で先進的な分析事例やシミュレーションへの適用事例を紹介する。 キーワード:アクセシビリティ分析、空間的自己相関、記述統計分析、多変量解析、シミュレーション GIS活用人材 GIS活用人材の役割と担当業務について具体的に学ぶ。GIS活用人材ついて、人材像ごとにインタビューや業務事例紹介を交えて学び、業 務内容やGIS活用人材について具体的なイメージを持ってもらうことをねらいとする。 キーワード:GIS活用人材、GIS推進組織、キャリアパス GIS体験 身近な機器を利用してGISを体験する演習を行う。GPS携帯電話で取得した位置情報をウェブ上で無償公開されている地図にマッピングす る演習を通じて、位置情報の取得からマッピングまでの仕組みと手順、関連知識についての基本的な事項を身につける。 キーワード:GPS携帯電話、位置情報サービス、ウェブアプリケーション GIS基礎 GISの基礎的な概念と利用事例について講義形式で学ぶ。内容は以下の通りである。1)GISの概要(GISとは) 、2)GISの活用シーン、3)地 図・デジタル地図の概要と特徴、4)基礎的な分析方法、5)地理空間データの収集と管理、6)関連する諸制度や推進状況、7)GISと未来社会 キーワード:地図の基礎、デジタル地図、GISの概念、空間情報社会、ユビキタス情報社会 資料:三菱総合研究所 図表3 モデル育成カリキュラムと人材像のマトリクス 人材像 分類 科目名 GISディレクター GISマネージャー 部門マネージャー GISコーディネーター GISプログラマー GISアナリスト 部門GISアナリスト GISテクニシャン GISユーザー 潜在GISユーザー GISラーナー GIS活用による業務革新 ● ● ● ● △ ● ● △ ● プロジェクトマネジメント ● ● ● ● ● ● △ ビジネス 地理空間情報関連政策・制度 マネジメント ● ● ● ● △ △ △ △ △ △ 地理空間情報と法制度、倫理 ● ● ● ● △ △ △ △ △ △ GIS活用組織と人材育成 ● ● ● ● △ △ △ ナレッジシェア △ △ △ △ △ ● ● ● プレゼンテーション △ △ △ △ △ ● ● ● △ △ ● △ ビジュアル &コミュニ ケーション GIS技術 GISの調達と運用 △ △ △ ● ● ● △ 地図の調達と利用 △ △ △ ● ● ● △ ● GISのためのIT基礎 △ ● ● ● ウェブGIS・GIS構築 △ ● ● ● 空間のモデル化と形式化 △ △ △ △ △ △ ● 地理空間情報の作成技術 △ △ △ △ △ △ ● 位置特定の技術と応用 △ △ △ △ △ △ ● 空間情報データベースの利用と管理 △ △ △ △ △ △ ● GISソフトウェア操作 △ ● ● ● ● ● △ GIS分析手法(基礎編) △ ● ● ● ● ● ● GIS入門 △ △ △ ● ● GIS活用人材 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● GIS体験 △ △ △ ● ● ● ● ● ● ● ● GIS基礎 △ △ ● ● ● ● ● ● ● ● ● 注)●は当該人材が業務を十分に遂行するために、特に学んでおくことが望ましい科目、△はできれば学んでおくことが望ましい科目を示す。 自治体チャンネル+ GIS分析手法(応用編) △ △ 平成 29 資料:三菱総合研究所 年 20 ■GIS活用人材の育成に向けて に育成していくのかが問題となる。 これらを踏まえた上で、GIS及び関連技術分 野の科目については、別途検討がなされている 国内のGIS教育は、大学、NPO法人、業界団 「地理情報科学カリキュラム」及び国内大学の 体等で広く行われている。既存のカリキュラム 既存カリキュラムの内容をもとに、図表 2 のよ は大学生・入門者向けが多いこともあり、GIS うに整理した。また、モデル育成カリキュラム の入門と操作、GIS関連技術分野が中心である の各科目と、その内容を身につけることが望ま ことが多く、自治体職員向けのカリキュラムは、 れる人材像とのマトリクスを、図表 3 に示した。 国内には少ない。このため、海外のカリキュラ 今後、自治体でのGIS活用人材の育成、定着 ムを参考に、既存カリキュラムとの比較を行う 化には、このようなカリキュラム案にもとづい と、次の3点が違いとして浮かび上がってくる。 たさまざまな主体(大学、NPO法人、民間企業 (1)海外ではGIS科目群として盛り込まれている 等)によるコンテンツの提供、及び新規開発が が、これまで国内では体系立って教えられて 必要になる。しかし、それ以上に重要なのは、 こなかった、GISを実務に役立てるためのビ このような人材像の必要性を認識し、地域にお ジネスマネジメント系科目群が不足している ける戦略的な活用を促すキャリアパスの構築や、 (2)地理情報科学カリキュラムにおいて検討段 前提となる首長等によるGISの意義の理解であ 階にある、GISを活用する際の情報伝達系 る。国でも2008年度以降、順次試行的に人材育 (ビジュアル&コミュニケーション、プレ 成に着手するとしている。自治体レベルでも効 ゼンテーション)科目群が不足している (3)実務において必要なスキル (例:ICT関連等) 果的なGIS活用人材育成に向けたキャリアパス や、展開戦略についての議論喚起に期待したい。 9 ・ 10 月合併号 では、このようなGIS活用人材を、どのよう との連携が、あまり考慮されていない