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地域 保健 福祉
平成28年1月28日(木) 青山ダイヤモンドホール サファイヤルーム 地域母子保健の推進シンポジウム ~妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援にむけて~ 大阪府立母子保健総合医療センターの取り組み 看護師の立場から 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 母性外来 看護師長 和田聡子 1 産科診療の場の特徴として… 診療上の医学的なことだけではなく、 パートナーとの関係や上の子のことなど 妊婦の背景や生活状況などについても、 広く相談を受けることがある 2 妊婦の相談から見えてきたもの サポートのない妊婦が増えている 家族形態が多様化している (ステップファミリーなど) パートナーとの関係が不安定なカップル (DV認識は低い) 経済的問題を抱えた妊婦の増加 (あきらかな貧困家庭がある) うつ症状、パニック症状があるなど、 診断は受けていないが、メンタルに問題が あると訴える妊婦が増えている (精神科医師との連携はシステム化されていない) 3 情報を関係者で共有し、時期を逃さずに対応 する必要がある 妊婦健診から分娩期、産褥入院期へと継続し た関わりの必要性がある 出産後の育児を見据えて、早い時期から 地域保健、福祉行政との連携を医療機関から 発信する必要がある 社会的ハイリスク妊婦を支援するための 連携システムを医療機関からつくる必要がある 4 サポート不足や経済困窮、精神疾患合併 など援助が必要なケースは保健、福祉の 窓口につなげていた、しかし育児支援の 視点での地域介入開始は児の出生後から がほとんどだった 妊婦と支援者の人間関係の構築や、 医療・保健・福祉間の情報共有に は時間がかかる (児の親への支援、ではなく妊婦本人への支援) 適切な支援を適切な時期に提供す るためには妊娠初期からの連携が 必要である 5 まず 初診時の問診で大まかな社会的リスクを把握 (情報を得る) 望んだ妊娠かどうか パートナーとの関係 精神的な問題を抱えていないか 親や家族へ話しをしているか 養育する経済力があるか ①助産師・看護師 ② 問診票 ③ カルテ による個別面談 の工夫 記録の工夫 ★社会的ハイリスク妊婦に気付く 6 ① 0 ¥ 助産師・看護師による個別面談 全員 ①初診時 ②20週 ③28週 ④36週 ⑤1か月健診 ※必要時いつでも追加できる 個室 医師の診察室とは離れた専用個室(相談室と呼ん でいる)で面談する。外来プライマリーナースが いる患者は、担当者が一貫して対応することで関 係を構築する 無料 時間制限なし。マイナートラブルやバースプラン の相談、養育環境の確認、DVスクリーニングを おこなう 当院が開設した当初から継続 7 ② 初診問診票の工夫 既往について尋ねる項目で、精神的な症状を記載例に挙げる 「今までにかかった病気または手術をしたことがありますか?」 「今までにこころの不調が理由で医療機関を受診をしたことがありますか?」 年齢または 年/月 例 病名 処方 幼少期 小児ぜんそく 吸入薬 15歳 虫垂炎(盲腸) 手術 20歳 パニック・うつ・過換気 内服中 生活の様子を時系列で尋ねる 例: 7 9 12 18 19 22 起 床 仕 事 昼 食 帰 宅 夕 食 就 寝 8 ③ カルテ記録の工夫 電子カルテ上、看護記録のテンプレートを作成 標準化 一定の能力があれば誰もができるように 体系化 必要な情報を漏れなく 一目でわかる化 長文を読まずとも 記号やアイコンで一目瞭然 記号化 若年…★Y 精神…★P 社会的…★S Y P S アイコン化 社 会 的 ハイリスク妊婦 CAP対象… … 妊支 育支 9 ★ 妊婦全員にDVスクリーニング 1回目 2回目 初診時 3回目 妊娠中期(28w頃) 産褥1日目 「女性に対する暴力スクリーニング尺度 (Violence Against Women Screen:VAWS)」1) VAWS陽性 19.6% 当センターでのVAWSの割合 VAWS陰性 VAWS陽性者(9点以上):19.6% VAWS陰性者:80.4% 80.4% 1) 日本助産師会 聖路加看護大学 女性を中心にしたケア研究班, EBMの手法による周産期ドメスティック・バイオレンスの支援ガイドライン,金原出版株式会社,2004. 10 リスクごとに事例を分類し カルテにマークをつける S 生活保護受給 P 心療内科・精神科の 受診歴または内服歴 助産制度利用 精神 社会的 経済不安 未受診,シングル 本人からの精神疾患 既往の申告 なんとなく気になる 若年 Y 本人が18歳(高校生)以下 リストアップ 11 社会的ハイリスク妊婦の支援の流れ 社会的リスクに気付く アセスメントを深める 電話予約 初診時問診 少人数カンファレンス ワーキンググループよる 診察介助 アセスメント 個別面談 外来プライマリーナースを適用 院内保健師面談依頼 地域とカンファレンス 個別面談 ¥0 支援する 複数人で アセスメント 全員 多職種 個室 定期開催 無料 情報共有 地域と カンファレンス 地域 保健 福祉 医療者 市町村の保健師 母子保健担当者 福祉担当者 児童相談所 学校の教員 産科医師 小児科医師 保健師 ケースワーカー 看護師 助産師 12 医療機関で社会的ハイリスク妊婦を 支援するためのポイント 情報を得るリスクの有無を把握する →担当者を決め信頼関係を築く 院内関連職種との連携(医師、保健師、MSW、小児科看護師) 情報伝達のための工夫をする 院内関係職種複数で検討(ワーキング立ち上げ) 複数が同じ視点でアセスメントを深める 地域関係機関(福祉、保健機関)と連携 出産前(早期)から情報共有と介入を依頼する 13 支援がズレないためのポイント これから生まれてくる 子どもの養育に問題が生じないこと を目標に据えて妊娠中にできることを考える 退院後を見据えて妊娠初期から 地域保健・福祉行政と連絡を取り合う 14 何が整えば支援体制が作れるのか… 助産師・看護師職員数が多ければ支援体制が 整うのか? 大きい医療機関でないと支援は難しいのか? 経験豊富な助産師がいないと無理なのか? 確かに、人手と環境が整えば、 時間と手間をかけられる でも、それだけではない 15 母子保健総合医療センターの場合 分娩数 1620分娩/年間 多胎分娩数 胎児疾患あり 早産 120分娩/年間 197分娩/年間 284分娩/年間 産科外来診察枠 平均 12枠/日 外来患者数 平均 150名/日 外来勤務者数 平均 13名/日 8時間勤務 5名 短時間(4時間)勤務 5名 他病棟より応援勤務 3名 初診問診を取る助産師は1日あたり3名 一人当たり10~20人の妊婦と話をしている 個室で妊婦と話をする時間は 平均18分/回 16 医療機関ができること さまざまなハイリスク要因が ありますが 彼女たちに共通する傾向は… • 頼れる人が少ない 産科でしか 話せないことがある ↓ 関係をつくるきっかけ • 他者と関係を築くのが苦手 自分が他人から 大切にされる経験 • 気分が変わったら関係を断つ • 支援者からのアプローチを拒む • 愛された経験が少ない • 正しい/間違った情報を理解 しづらい 妊婦健診は 定期的に 人と会う機会になる 妊婦健診に 来てもらうアプローチ 例)電話 手紙 ↓ 自分に会いたがっている 人がいると思ってもらう 妊娠出産で 自身の生育歴を ふりかえる ↓ 変わるきっかけ • 計画的に行動できにくい 地域保健・福祉への情報提供と より良い関係性を引き継ぐことができる 医療機関から声を挙げていく 17 妊娠・出産の時にこころから寄り添って もらった、大切にされたという経験は、 その女性自身のその後の生きていく力に なり得ると思っています。 妊婦健診の現場、分娩の現場での助産師、 看護師のかかわり、支援が、その人に影響 を与えることを意識して関わっていきたい と思っています。 18