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2.道路管理の効率化に向けた防草工の比較検討について[PDF:710KB]
道路管理の効率化に向けた防草工の比較検討について 宇都宮国道事務所 1 小山出張所 稲葉敬昭 背景 歩道部に雑草が生えると、歩行阻害 (写 真1)、倒伏により車道を侵し車 両通行の幅員阻害、視距阻害(写真2)、 廃棄 物投棄( 写真3)、雑草の民地へ の進入、枯れ草による火災(写真4) 写真 1 写真 2 写真 3 写真 4 等の弊害が発生している。 歩道の雑草対策は、抜根・除草で対 応しているが、近年の維持管理費のコ スト縮減に伴い、除草が年1回程度し か出来ないこととなっている。このこ とから除草前・除草後1、2ヶ月後に 雑草が繁茂する状況となり、除草に関する苦情や要望が多数寄せられている。 2 目的 維持管理コストを縮減しつつ、歩車道を常時良好な状態に維持するために、恒久的な雑 草対策(防草工)を行う必要がある。 防草工については、いくつかの工法が考えられるが、最適な工法を選定するために、そ れらの防草効果・費用対効果について比較検討する。 歩道の除草箇所として、目地部、舗装部、植栽帯、法面部、民地よりの雑草等が挙げら れるが、本検討では、目地部、舗装部を対象とし、最適な工法を選定することとする。 3 雑草が生えるメカニズム 防草工を考える前に歩道部の雑草がどの様に生えてくるのか整理する必要がある。 目地部と舗装部について、それぞれ下記のとおり整理し対策を考えた。 3.1 目地部 目地部に雑草が生えるメカニズムは以下の通りである。(図1) ① 雑草の種子が入り込む ② ③ 種子が発芽する 雑草が繁茂する 雨水 縁石 As 砕石 縁石 As 砕石 雨水 縁石 As 砕石 図 1 ①舗装と縁石、あるいは舗装と防草コンクリート等、舗装と他の構造物との間に隙間が 出来る。飛散してきた雑草の種子がその隙間に入り込む。 ②雨が降ることにより、隙間に雨水が供給され、種子が発芽する。 ③さらに雨水が供給されることにより、雑草が繁茂する。 目地部の雑草対策として、種子の入り込む隙間が原因となる。また、水の供給が雑草を 成長させる原因となる。本検討では、これらを防ぐことにより、雑草の繁茂を阻止出来る と考え、防草材料を目 目地注入 表面貼付 地部に充填する方法と、 テ ー プ 状 の 防 草 材 料 を 縁石 縁石 As 路盤 表面に貼り付ける方法 As 路盤 の2通りの方法を試験 図 2 する。(図2) 3.2 舗装部 舗装部に雑草が生えるメカニズムは以下の通りである。(図3) ③ ① ② 雑草の根が舗装と 根の進入により舗装に ひび割れが生じる 砕石に進入する。 縁石 As 砕石 縁石 As 砕石 縁石 ひび割れに雑草の 種子が入り発芽する。 As 砕石 図 3 ①目地部や法面部における雑草の根が、舗装と砕石の間に進入してくる。 ②雑草の根の進入により、舗装が盛り上がったり、ひび割れが生じる。 ③ひび割れの中に雑草の種子が飛散し入り込む。種子が発芽する。 舗装部の雑草対策として、舗装 草の根の撤去 下の雑草の根が原因となる。本検 As 討では、これらを防ぐことにより 路盤 雑草の繁茂を阻止出来ると考え、 雑草抑制剤 As 路盤 防草シート As 路盤 路盤の草の根を撤去する方法、路 図 4 盤と舗装の間に雑草抑制剤を散布する方法、路盤と舗装の間に防草シートを施工する方法 の3通りを組み合わせて試験する。(図4) 4 実施内容 目地部・舗装部について、それぞれ異なる防草対策を試験施工し、防草効果・費用対効 果の比較検証を行う。 4.1 目地部 施工場所:国道50号 栃木県足利市瑞穂野地先 44.73kp~46.65kp 上り線歩道 歩道舗装と縁石の境目、舗装と盛土法肩部分の防草コンクリートの境目。 施工時期:平成20年11月に実施 施工方法:施工箇所の雑草を抜根除草及び清掃後、表1の4ケースで施工した。 表 1 目地部施工方法 ケース 工法名 材質 施工タイプ 施工幅 施工単価 (表 2 参照) (mm) (1m当たり) 30 1,350 目地注入タイプ 30 2,360 100 1,380 表面貼付タイプ 75 1,160 ケース1 グラスロック セメント系材料 ケース2 ボーソーシールH 瀝青系材料 ケース3 ボーソーシールTC 瀝青系材料 ケース4 防草テープ 瀝青系材料 表 2 施工タイプによる施工法 施工タイプ 施工方法 施工箇所の舗装版などをコンクリートカッターで切断し 目地注入タイプ 目地(充填溝)を設置後、防草材料を充填溝に注入 表面貼付タイプ テープ状の防草材料を施工箇所に貼付 4.2 舗装部 施工場所:国道50号 栃木県小山市石ノ上地先 70.55kp 下り線歩道 舗装を突き破る雑草の繁茂が確認されている歩道。 施工時期:平成23年1月に実施 施工方法:施工箇所の既設舗装を撤去後、表3の4ケースで施工後、表層を施工した。 表 3 舗装部施工方法 施工状況は写真(5~7)の通 施工内容(○:施工、×:未施工) 施工単価 ケース 草の根撤去 雑草抑制剤 透水性防草シート (円/m2) り。なお表3の施工単価は既設 ケース5 × ○ × 30 舗装撤去と表層を除いた単価に ケース6 × × ○ 350 なる。 ケース7 ○ × ○ 380 ケース8 ○ × × 30 写真5 5 既設舗装 写真6 舗装撤去時 写真7 撤去した草の根 効果 5.1 目地部 平成24年6月現在(施工後3年7ヶ月)の状況は以下の通り。 ○ケース1 グラスロック 雑草が目地に沿って生い茂る状況を確認。(写真8) ○ケース2 写真 8 ボーソーシールH 雑草が生い茂る状況は確認出来なか った。(写真9)しかし部分的に防草 材料を突き破り草が生えている箇所が 確認出来た。(写真10) 写真 9 写真10 ○ケース3 防草シールTC 雑草が生い茂る状況は確認出来なか った。(写真11)しかし部分的に防草 材料を突き破り草が生えている箇所が 確認出来た。(写真12) ○ケース4 防草テープ 写真 11 写真 12 雑草が生い茂る状況は確認出来なか った。(写真13)しかし部分的に草が 生えテープが剥がれている箇所が確認 出来た。(写真14) 5.2 舗装部 写真 13 写真 14 15 写真 16 平成24年6月現在(施工後1年5ヶ月) の状況は、ケース8について、試験施工 ケース 5 ケース 6 範囲の端部に舗装を突き破った雑草を確 ケース 7 認した(写真16)。それ以外のケース5 ケース 8 ・6・7については、良好な状態を保持 している。(写真15) 6 写真 考察・今後の課題 目地部について、ケース1のグラスロックで雑草が生い茂っている状況を確認した、他 の工法は瀝青系だが、グラスロックのみ材質がセメント系である。本検討箇所では、セメ ント系よりも瀝青系の目地材を用いた方が効果があることが判った。 舗装部について、ケース8で雑草を確認した。雑草の根が、昨年度夏に試験施工範囲外 から進入したことが原因と思われる。同様に試験施工範囲外と隣接するケース5では雑草 が確認出来なかったため、現時点では雑草抑制剤が効いていることが判った。 目地部・舗装部ともに、防草効果に差が出てきたが、効果を保持している工法が多種類 あり費用対効果を含めた工法選定までには至っていない。 防草効果の確認を今後も継続することが必要である。 同じ工法でも、場所により防草効果に差が生じているものがあった。場所的な要因や施 工条件の差等の理由が考えられ、今後検証していく必要がある。 7 今後の方針 引き続き防草効果の検証を行い、効果の持続性について確認を行う。 また、新たな工法も開発されているため、比較工法の追加についても検討したい。 結果を基に、効率的・効果的な防草対策を構築することにより、維持管理コストを縮減 しつつ、道路利用者からの要望に応えていきたい。