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急増する訪日外国人のホテル需要と消費支出

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急増する訪日外国人のホテル需要と消費支出
急増する訪日外国人のホテル需要と消費支出
2014 年の訪日外国人旅行者数は前年比+29%増、外国人延べ宿泊者数は同+34%増、
消費額は同+43%増で 2 兆円を突破
※本稿は 2015 年 5 月 21 日「基礎研レポート」
金融研究部 不動産調査室長
[email protected]
竹内 一雅
を加筆・修正したものである。
1――はじめに
訪日外国人旅行者数の急増に伴い、ホテルや消費における外国人の存在感が高まっている。
2014 年の訪日外国人旅行者数は前年比+29.4%の増加で、国内ホテルの外国人旅行者の延べ宿泊
者数は前年比+33.8%、
訪日外国人の消費額は前年比+43.1%の増加で 2 兆 278 億円に達した。最近、
ホテルの稼働率が極めて高い率で推移しているのは、延べ宿泊者数では全体の 1 割に満たない外国
人の増加が、日本人宿泊者数の減少を補ってきたためである。
今後、2020 年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、訪日外国人旅行者数はさらな
る増加が見込まれている。本稿では、観光庁の「宿泊旅行統計」「訪日外国人消費動向調査」など
を用いて、最近の外国人の国内宿泊動向および消費動向の把握を試みる 12。
2――急増する訪日外国人旅行者数
1|訪日外国人旅行者数の急増
2014 年の訪日外国人旅行者数は 1,341 万人に達した(図表-1)
。2012 年以降の前年比増加率は
+34.4%(2012 年)、+24.0%(2013 年)
、+29.4%(2014 年)と大幅な増加が続いている。2015 年
に入っても増加の勢いは止まらず、1~3 月の訪日外国人旅行者数は 413 万人で前年比+43.7%の増
加だった(図表-1 右図)。
2015 年 3 月現在、過去 12 ヶ月間の累計は 1,467 万人(前年度比+33.6%)に達しているため、2015
年中の 1,500 万人の達成は確実である。なお、政府は 2020 年に 2,000 万人、2030 年に 3,000 万人
1
2
過去の状況については、竹内一雅「日本のホテル市場-統計的把握と需要の将来予測」不動産投資レポート 2010 年 4 月 27 日、ニッ
セイ基礎研究所、竹内一雅「中国人宿泊者数の動向-ビザ発行要件緩和で高まる宿泊需要」不動産投資レポート 2010 年 7 月 1 日、
ニッセイ基礎研究所、竹内一雅「外国人の国内宿泊動向-2013 年の年間外国人延べ宿泊者数 3 千万人超へ」基礎研レポート 2014 年
1 月 20 日、ニッセイ基礎研究所などを参照のこと。本稿は 2014 年 1 月のレポート「外国人の国内宿泊動向」の 2015 年版という位
置づけで執筆している。
本稿の宿泊需要ではホテルだけでなく旅館も対象とする。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|169
の訪日外国人旅行者数の達成を目標としている 3。
図表-1:訪日外国人旅行者数
(年次)
(月次)
1,600千人
(万人)
1,600
1,341
1,400
400
200
1,000千人
800千人
413
600
836
622
861
679
835
835
733
673
614
521
524
477
476
444
411
422
384
335
347
341
358
353
324
284
236
215
206
233
211
197
179
158
132
800
1,200千人
1,036
1,200
1,000
1,400千人
600千人
400千人
200千人
1月
0
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
2015.3
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
2007年
2008年
2009年
2010年
2012年
2013年
2014年
2015年
2011年
(注)2015 年 1 月の数値は暫定値、2-3 月の数値は日本政府観光局(JNTO)の推計値、左図の 2015 年は 3 月までの数値。
(出所)日本政府観光局(JNTO)
訪日外国人旅行者数の急増は、アジア諸国の経済成長に伴う海外旅行需要の増加、円安の進展(図
表-2)
、LCC の就航増加など国際線発着枠の拡大、クルーズ船の寄港増加、アジア諸国などへのビ
ザの緩和(図表-3)
、訪日プロモーション、消費税免税制度の拡充、外国人旅行客受け入れ態勢の
進展、海外からの日本の安全性への評価などさまざまな要因によってもたらされている。
図表-3:ビザ(査証)の緩和
図表-2:為替と訪日外国人旅行者数
1,600千人
130円/ドル
訪日外国人旅行者数
1,400千人
ドル円為替レート(右目盛)
120円/ドル
1,200千人
110円/ドル
1,000千人
100円/ドル
800千人
90円/ドル
600千人
80円/ドル
400千人
70円/ドル
200千人
2015年3月
2015年1月
2014年11月
2014年9月
2014年7月
2014年5月
2014年3月
2014年1月
2013年11月
2013年9月
2013年7月
2013年5月
2013年3月
2013年1月
2012年11月
2012年9月
2012年7月
2012年5月
2012年3月
2012年1月
2011年11月
2011年9月
2011年7月
2011年5月
2011年3月
2011年1月
2010年11月
2010年9月
2010年7月
2010年5月
2010年3月
2010年1月
(注)為替は東京市場ドル・円レートで 17 時時点の月中平均
(出所)日本政府観光局(JNTO)、日本銀行
(出所)外務省資料よりニッセイ基礎研究所が作成
2|国籍別の訪日外国人旅行者数
2014 年の訪日外国人旅行者数 1,341 万人のうち、国籍・地域別に最も多かったのが台湾の 283
万人(前年比+28.0%増)で、韓国(276 万人、同+12.2%増)、中国(241 万人、+83.3%増)が続
き、この 3 カ国で全体の 6 割を占めている(図表-4、5)
。なお、香港(93 万人+24.2%増)、アメ
3
「「日本再興戦略」改訂 2014-未来への挑戦-」(2014.6.24)などを参照のこと。
170|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
リカ(89 万人、+11.6%増)、タイ(66 万人、+45.0%増)を含めると、上位 6 カ国で訪日外国人旅
行者数全体の 78%を占める。
2014 年は中国からの旅行者数の伸びが 2013 年の減少の反動もあり+83.3%増と顕著だったが、他
にもタイ(前年比+45.0%増)
、マレーシア(同+41.3%増)
、フィリピン(同+70.0%増)
、ベトナム
(同+47.1%増)など、アジア諸国を中心に訪日客数は大幅な増加が続いている。
図表-4:国籍別の訪日外国人旅行者数・
構成比・前年比伸び率(2014 年)
シンガポール, 23
万人, 2%, +20.5%
イギリス, 22万人,
2%, +14.7%
(万人)
283
300
フィリピン, 18万人,
1%, +15.3%
マレーシア, 25万
人, 2%, +41.4%
図表-5:国籍別の訪日外国人旅行者数
260
その他, 177万人,
13%, +23.7%
豪州,30万人, 2%,
+23.7%
212
台湾, 283万人,
21%, +28.0%
200
244
221
159
150
アメリカ, 89万人,
7%, +11.6%
香港, 93万人,
7%, +24.2%
韓国, 276万人,
20%, +12.2%
中国, 241万人,
18%, +83.3%
131
127
139
139
94
100
108
50
62
82
81
35
30
82
43
30
0
10
2004
12
2005
台湾
13
2006
韓国
17
2007
77
55
19
2008
中国
131
166
104
102
101
82
147
141
100
76
65
241
204
175
159
タイ, 66万人, 5%,
+45.0%
276
246
238
250
93
127
73
70
45
51
18
21
2009
143
99
72
57
36
2010
香港
14
2011
48
89
80
75
66
45
26
2012
2013
アメリカ
2014
タイ
(出所)日本政府観光局(JNTO)の資料に基づきニッセイ基礎研究所が作成
3――外国人宿泊者数の急増が日本人宿泊者数の減少分を補填
1|ホテル稼働率の上昇と外国人宿泊者数の増加
訪日外国人旅行者数の増加に伴い、国内のホテル稼働率は近年で最も高い水準で推移している
(図表-6)。
宿泊旅行統計によると、
2014 年の延べ宿泊者数は 4 億 7,232 万人泊で前年比+1.4%の増加だった 4。
このうち日本人は 4 億 2,750 万人泊(構成比 90.5%、前年比▲1.1%減)
、外国人は 4,482 万人泊(構
成比 9.5%、前年比+33.8%増)だった。ホテルでの高稼働率の維持は、日本人の延べ宿泊者数の減
少(▲489 万人泊の減少)を、延べ宿泊者数では 1 割に満たない外国人の増加(+1,133 万人泊増)
が補ったためである(図表-7)。2014 年は消費税率の 8%への引き上げも、日本人の国内旅行およ
び延べ宿泊者数を減少させたと考えられる 5。
また、日本人の延べ宿泊者数は夏期(7~9 月)が突出して多く、特に年前半(1 月から 5 月)の
宿泊者数が少ない。
今年 2 月から 3 月に中国の旧正月休暇による訪日客数が大幅に増加したように、
外国人宿泊者数の増加は、日本人の宿泊における季節変動の大きさを補い閑散期における稼働率の
向上に貢献しはじめている。
外国人宿泊客の増加により、延べ宿泊者数に占める外国人比率は上昇を続けている(図表-8)。
2011 年の 4.4%から 2014 年には 9.5%まで上昇しており、四半期別にみると 2014 年は第 2 四半期
4
5
2014 年の数値は速報値であり今後、確報では数値がより大きくなると考えられる。以下、2014 年の数値については全て速報値。
2015 年は景気の回復や雇用・所得の増加、消費税増税による反動減の収束、円安による海外旅行のコスト高などから日本人の国内旅
行も前年比で増加に転じるのではないか期待される。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|171
と第 4 四半期で 10%を上回った。
図表-6:全国・東京のホテル稼働率
<全国>
<東京>
全国平均客室稼働率
90%
東京平均客室稼働率
100%
85%
90%
80%
80%
75%
70%
70%
65%
60%
60%
50%
55%
40%
50%
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2007年
2010年
2013年
7月
8月
9月
2008年
2011年
2014年
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2007年
2010年
2013年
2009年
2012年
2015年
7月
8月
9月
2008年
2011年
2014年
10月
11月
12月
2009年
2012年
2015年
(出所)オータパブ リケイ ショ ンズ「週刊ホテルレストラン」を基にニッセイ基礎研究所が作成
(出所)オータパブ リケイ ショ ンズ「週刊ホテルレストラン」を基にニッセイ基礎研究所が作成
図表-7:日本人および外国人の国内延べ宿泊者数(四半期)
(実数)
(前年比増加数)
160百万人泊
20.0百万人泊
140百万人泊
17.5百万人泊
120百万人泊
15.0百万人泊
100百万人泊
12.5百万人泊
11.5
9.2
8.8
8.9
5.0百万人泊
500万人泊
0万人泊
-500万人泊
2.5百万人泊
2.5
6.7%
6.4%
5.8% 5.5%6.0%
5.2%
6.1%6.4%5.9%
6.0%
8.5%
7.5%
6.8%
3.9%
4.0%
2.8%
2.0%
0.0%
2014Q4
2014Q3
2014Q2
2014Q1
2013Q4
2013Q3
2013Q2
2013Q1
2012Q4
2012Q3
2012Q2
2012Q1
2011Q4
2011Q3
2011Q2
2011Q1
2010Q4
2010Q3
2010Q2
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
172|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
2014Q4
8.6%
8.2%
8.0% 7.2%
2014Q3
10.6% 10.3%
10.0%
2014Q2
12.0%
2014Q1
延べ宿泊者数
(注)2014 年は速報値(以下同じ)。今後公表される確定値では外国人を中心に延べ宿泊者数の増加が見込まれる。
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
図表-8:宿泊施設の延べ宿泊者数に占める
外国人比率の推移
2013Q4
2013Q3
2013Q2
外国人
2013Q1
2012Q4
2012Q3
日本人
うち外国人 (右目盛)
2012Q2
2012Q1
2011Q4
2014Q4
2014Q3
2014Q2
2014Q1
2013Q4
うち日本人
2013Q3
2013Q2
2013Q1
2012Q4
2012Q3
2012Q2
2012Q1
2011Q4
2011Q3
2011Q2
2011Q1
2010Q4
2010Q3
2010Q2
延べ宿泊者数
-1,000万人泊
2011Q3
0.0百万人泊
2011Q2
0百万人泊
1,000万人泊
10.0百万人泊
7.5百万人泊
6.7
6.7
6.9
7.0
5.7
4.9
5.4
20百万人泊
5.6
6.7
7.6
7.2
40百万人泊
9.2
60百万人泊
12.4
11.7
80百万人泊
1,500万人泊
2|外国人宿泊者の宿泊施設タイプ
日本人と外国人では宿泊する施設タイプに相違がある。外国人はシティホテルへの宿泊比率が全
体の 41%(日本人は 13%)と高く、旅館への宿泊比率が 10%(日本人は 23%)と低い(図表-9
左図)。外国人のシティホテル嗜好の高さから、シティホテルでは全体の延べ宿泊者数の 25%が外
国人で占められている(図表-9 右図)。
図表-9:宿泊施設タイプ別および日本人・外国人別の延べ宿泊者比率 (2014 年)
<日本人・外国人別にみた
<宿泊施設別にみた
宿泊施設別構成比>
日本人・外国人別構成比>
0%
会社・団体の宿泊
所, 2%
不詳, 5%
シティホテル, 16%
2%
13%
30%
40%
4%
23%
10%
13%
32%
70%
80%
90%
100%
4.2%
91.4%
8.6%
ビジネスホテル
92.6%
7.4%
1.2%
98.8%
9.5%
90.5%
総数
ビジネスホテル,
41%
25.2%
74.8%
会社・団体の宿泊所
42%
60%
リゾートホテル
シティホテル
リゾートホテル,
14%
14%
50%
95.8%
旅館
外:総数
中:日本人
内:外国人
41%
20%
旅館, 22%
5%
0%
10%
日本人
外国人
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
3|国籍別の宿泊者数の推移
訪日外国人旅行者数と同様、延べ宿泊者数はほとんどの国・地域から大幅に増加している(図表
10)。2014 年の前年比増加率は、台湾で+26.6%、中国+84.3%増、韓国+11.8%、アメリカ+7.9%、
香港+22.0%、タイ+38.4%だった 6。
2014 年に延べ宿泊者数が多かったのは、台湾の 783 万人泊(構成比 19%)、中国の 764 万人泊(同
19%)、韓国 422 万人泊(同 10%)で、この 3 カ国で全体の 48%を占めている。
図表-10:国籍別の外国人延べ宿泊者数の推移(四半期)
250万人
中国, 217
200万人
2013
台湾, 199
150万人
韓国, 118
100万人
香港, 88
アメリカ, 78
タイ, 65
50万人
シンガポール, 43
0万人
2014Q4
マレーシア
2014Q3
2014Q2
オーストラリア
2014Q1
2013Q4
シンガポール
2013Q3
2013Q2
タイ
2013Q1
アメリカ
2012Q4
2012Q3
香港
2012Q2
韓国
2012Q1
2011Q4
台湾
2011Q3
2011Q2
2011Q1
中国
総数
台湾
中国
韓国
アメリカ
香港
タイ
オーストラリア
シンガポール
マレーシア
イギリス
2014
31,242,220 40,875,330
6,181,570 7,826,270
4,147,130 7,644,440
3,779,440 4,223,690
2,894,210 3,122,020
2,550,980 3,112,400
1,430,420 1,979,390
888,680 1,171,240
876,950 1,078,430
508,860
723,310
583,640
722,670
増加率
増加数
(13-14) (13-14)
9,633,110
30.8%
1,644,700
26.6%
3,497,310
84.3%
444,250
11.8%
227,810
7.9%
561,420
22.0%
548,970
38.4%
282,560
31.8%
201,480
23.0%
214,450
42.1%
139,030
23.8%
イギリス
(注)従業者数 10 人以上の宿泊施設が対象
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
6
なお、図表-10 で示されているように中国からは 2012 年第4四半期に前期比▲65.7%(前年比▲50.0%)の大幅な減少があった。
これは 2012 年 9 月に日本政府が尖閣諸島を購入したことに対する反日運動激化の影響があったようだ。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|173
4|都道府県別の外国人宿泊者数
外国人の宿泊地は特定の都道府県に集中している(図表-11、12)
。2014 年の外国人延べ宿泊者
数の地域別構成比は、東京エリア 7(東京都・千葉県・神奈川県)が全体の 39.1%、関西エリア(大
阪府・京都府・兵庫県)は 22.1%、中京・中部エリア(愛知県・山梨県・静岡県・岐阜県・長野県)
は 10.1%、北海道は 9.0%、北部九州(福岡県・長崎県・熊本県・大分県)は 6.0%、沖縄は 5.2%
で、その他は 8.5%だった。
2012 年から 2014 年にかけて外国人の延べ宿泊者数が最も増加したのは東京都の+516 万人で、次
いで大阪府の+278 万人、北海道の+202 万人、沖縄県の+153 万人、京都府の 110 万人だった。また
増加率が最も高かったのは香川県の+254%、次いで沖縄県の+196%、岐阜県の+155%、和歌山県の
+146%、山梨県の+143%だった 8。
図表-11:都道府県別外国人延べ宿泊者数(2012 年~2014 年)
1,600万人
300%
1,345
254%
1,400万人
250%
196%
1,200万人
155%
146%
143%
125%
1,000万人
150%
105%
101%
800万人
47%
43%
58%
53%
57%
37% 43%
12%
17%
4%
18%
13%
20%
0%
133
-21%
149
-50%
17
8
27
37
51
50
4
4
7
5
15
44
3
11
5
14
29
16
3
23
66
80
65
34
13
13
9
11
4
9
4
5
7
13
7
16
66
94
132
200万人
50%
13%
10% 4%
39%
32%
231
-1%
275
400万人
58%
55%
38%
48%
43%
5%
341
403
42%
57%
61%
55%
100%
75%
70%
62%
584
60%
93%
91% 85%
80%
63%
600万人
200%
0万人
-100%
沖縄県
鹿児島県
宮崎県
大分県
熊本県
長崎県
佐賀県
福岡県
高知県
愛媛県
香川県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取県
和歌山県
奈良県
兵庫県
大阪府
京都府
滋賀県
三重県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
山梨県
福井県
石川県
富山県
新潟県
神奈川県
東京都
千葉県
埼玉県
群馬県
栃木県
茨城県
福島県
山形県
秋田県
宮城県
岩手県
青森県
北海道
2012
2013
2014
2012-14増加率
(注)2014 年は速報値
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
都道府県ごとにみても外国人宿泊者の存在感は高まっている。延べ宿泊者数に占める外国人の構
成比はほぼ全ての都道府県で増加しており、例えば東京都では延べ宿泊者に占める外国人比率は
2012 年の 17%から 25%に急上昇した(図表-13)。他の道府県についても、大阪府(13%→22%)
、
7
8
ここでのエリア区分は外国人延べ宿泊者数の集中度合いを示すために、外国人のべ宿泊者数の多い都道府県を暫定的に区分したもの
であり公的な地域区分とは合致しない。
香川県の外国人延べ宿泊者数は 2012 年の 43,090 人泊から 2014 年には 152,330 人泊(+254%増)へと急増している。これにより香
川県の外国人延べ宿泊者数は 2012 年の全国 38 位から 26 位へと上昇した。香川県は 2012 年から 2014 年の増加数でも全体の 19 位
(+10 万 9 千人泊)だった。香川県交流推進部観光振興課国際観光推進室によると、外国人観光客の増加要因として、台北や上海、
ソウルなどとの直行便の就航が最も重要であり、さらに就航にあわせての訪日プロモーションなどが貢献したという。2013 年の瀬戸
内国際芸術祭の開催やそれに伴う知名度の向上も欧米や韓国からの観光客増加への効果があった模様だ。高松と上海の LCC 直行便の
(2012.3.21)
就航については香川県知事のトップセールスなどがあったようだ(高木俊裕「香川県における外国人旅行者誘致の状況」
百十四経済研究所調査研究より)
。隣県の徳島県では 2012 年から 2014 年の外国人延べ宿泊者数は 45,090 人泊から 35,630 人泊へと
全国最大の減少率(▲21%減)であり対照的な推移となった。なお、2012 年から 2014 年に香川県における日本人の延べ宿泊者数は
▲24 万 3 千人の減少だったため、外国人の延べ宿泊数の増加が日本人延べ宿泊者数の減少による影響を半減近くに緩和させたことに
なる。
174|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
京都府(14%→18%)
、千葉県(9%→13%)、山梨県(6%→12%)
、北海道(7%→12%)、沖縄県
(5%→12%)
、岐阜県(4%→11%)などでも大きく上昇している 9。
図表-13:都道府県別の外国人延べ宿泊者比率
(外国人/総数)(2012 年、2014 年)
図表-12:都道府県別の外国人
延べ宿泊者数構成比(2014 年)
25%
25%
22%
18%
20%
17%
その他, 889万人,
20%
13%
14%
6%
4%
5%
5%
5%
5%
2%
1%
1%
2%
2%
1%
1%
1%
1%
2%
1%
1%
2%
1%
2%
1%
1%
1%
2%
1%
1%
2%
2%
3%
3%
2%
3%
4%
4%
4%
5%
6%
5%
3%
4%
3%
5%
2%
2%
1%
1%
2%
1%
2%
2%
0%
0%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
1%
2%
1%
5%
4%
2%
5%
4%
6%
5%
7%
5%
7%
6%
3%
7%
6%
7%
8%
5%
北海道, 403万人,
9%
8%
9%
6%
千葉県, 275万人,
6%
京都府, 341万人,
8%
7%
大阪府, 584万人,
13%
10%
11%
12%
12%
13%
10%
9%
沖縄県, 231万人,
5%
15%
12%
東京都, 1,345万人,
30%
福岡県, 132万人,
3%
神奈川県, 133万人,
3%
愛知県, 149万人,
3%
0%
沖縄県
鹿児島県
宮崎県
大分県
熊本県
長崎県
佐賀県
福岡県
高知県
愛媛県
香川県
徳島県
山口県
広島県
岡山県
島根県
鳥取県
和歌山県
奈良県
兵庫県
大阪府
京都府
滋賀県
三重県
愛知県
静岡県
岐阜県
長野県
山梨県
福井県
石川県
富山県
新潟県
神奈川県
東京都
千葉県
埼玉県
群馬県
栃木県
茨城県
福島県
山形県
秋田県
宮城県
岩手県
青森県
北海道
総数
2012
2014
(注)2014 年は速報値、図表-13 の外国人比率は外国人の延べ宿泊者数/延べ宿泊者総数(日本人を含む)で算出
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
5|都道府県別の宿泊施設タイプ別外国人宿泊者数・構成比
都道府県別に 2014 年の宿泊施設タイプ別の外国人比率(外国人延べ宿泊者数/延べ宿泊者総数)
を見ると、外国人の宿泊比率が最も高いのは千葉県のシティホテルで延べ宿泊者の 48%とほぼ半数
を外国人が占めている(図表-14)
。次いで高いのが東京都の旅館の 38%で、大阪府のシティホテ
ル(37%)、東京都のシティホテル(36%)、東京都のリゾートホテル(33%)、山梨県のリゾート
ホテル(28%)
、京都府のシティホテル(28%)
、岐阜県のシティホテル(28%)と続いている。
全般的にシティホテルでの外国人比率が高いが、山梨県や九州のいくつかの県などではリゾート
ホテルの方がシティホテルよりも外国人比率が高い。旅館全体の外国人比率は 4%にすぎないが、
東京都の旅館では外国人比率が急上昇しており、2014 年にはシティホテルの比率をも上回る状況
(旅館 38%、シティホテル 36%)となった
10
。東京に加え北海道や山梨県の旅館でも外国人比率
がそれぞれ 15%、12%と高まっており、外国人の受け入れ態勢の整備により旅館でも外国人の宿泊
需要を取り込みつつある。
2012 年から 2014 年の 2 年間で延べ宿泊者総数に占める外国人比率が低下したのは、埼玉県(2.4%→2.2%)と徳島県(2.5%→1.4%)
の二県のみだった。
10 東京都の旅館での延べ宿泊者数に占める外国人比率は 2013 年から 2014 年にかけて 25%から 38%へと上昇した。
9
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|175
図表-14:都道府県別・宿泊施設タイプ別の外国人延べ宿泊者比率(2014 年)
総数
総数
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
リゾート
ホテル
旅館
9%
12%
2%
1%
1%
1%
1%
0%
2%
2%
1%
2%
13%
25%
8%
1%
4%
5%
1%
12%
4%
11%
4%
10%
4%
15%
2%
0%
0%
1%
1%
0%
0%
1%
1%
0%
0%
38%
7%
1%
2%
3%
1%
12%
4%
7%
2%
1%
ビジネス
ホテル
9%
17%
2%
4%
3%
2%
1%
1%
0%
2%
4%
3%
4%
33%
5%
2%
12%
2%
1%
28%
5%
13%
5%
3%
7%
6%
1%
1%
1%
1%
1%
0%
2%
3%
1%
2%
10%
18%
7%
1%
2%
4%
1%
4%
2%
5%
3%
7%
シティ
ホテル
総数
25%
17%
2%
1%
3%
2%
2%
1%
7%
3%
3%
5%
48%
36%
18%
5%
16%
16%
2%
6%
6%
28%
20%
25%
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
リゾート
ホテル
旅館
2%
5%
18%
22%
5%
6%
7%
2%
1%
2%
5%
1%
1%
4%
2%
1%
8%
3%
7%
7%
6%
5%
4%
12%
1%
2%
8%
5%
2%
3%
7%
1%
1%
1%
6%
2%
2%
3%
2%
2%
1%
4%
4%
3%
6%
1%
3%
2%
ビジネス
ホテル
4%
6%
16%
10%
2%
9%
7%
4%
1%
2%
5%
1%
0%
8%
5%
3%
22%
1%
9%
24%
16%
18%
7%
14%
2%
5%
13%
16%
3%
6%
7%
2%
1%
1%
4%
1%
1%
3%
1%
1%
7%
3%
6%
5%
2%
1%
2%
8%
シティ
ホテル
4%
13%
28%
37%
18%
11%
7%
3%
1%
6%
11%
2%
3%
5%
4%
2%
16%
6%
9%
9%
3%
6%
8%
15%
(注)都道府県別・宿泊施設タイプ別の外国人延べ宿泊者数/延べ宿泊者総数(日本人を含む)より算出。
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
6|主要国籍別・道府県別にみた外国人宿泊者数
外国人の宿泊地は国籍によって多少の相違が見られる。主な国・地域のすべてで東京都での宿泊
が最も多いが、大阪府が第二位となっているのが、アジア地域の韓国・中国・香港・マレーシア・
インドネシア・ベトナム・フィリピンなどであり、北海道が二位となっているのが台湾、ロシア、
シンガポール、タイで、京都府が二位となっているのが、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、
フランス、オーストラリアなどの欧米系の国であった(図表-15)
。
都道府県別にどの国・地域からの宿泊が多いのかをみると、台湾からの延べ宿泊者数が一位とな
っている道府県は 25 に達し、中国が一位なのは 10 都県、韓国が一位なのは 8 県、香港とアメリカ
が一位なのはそれぞれ 2 県であった。台湾が国籍別の宿泊者数の一位の道府県は、北海道や京都府
のほかに、東北や北陸、四国などの県であり、相対的に外国人宿泊者が多くない地域でも一位とな
っている 11。一方、中国からの宿泊者は外国人の主要な宿泊地である東京都や大阪府、千葉県、愛
知県などで一位を占めており、韓国からは九州のほぼ全ての県で一位となるなど地域的な特徴が見
られる(図表-16)。
11
台湾が国籍別の延べ宿泊者数で一位となっているのは、北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、群馬県、新潟
県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、島根県、岡山県、香川県、愛媛県、高知県、鹿
児島県、沖縄県の 25 道府県だった。中国国籍が一位となっているのは、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡
県、愛知県、大阪府、奈良県の 10 都府県だった。韓国国籍が一位となっているのは、鳥取県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊
本県、大分県、宮崎県の 8 県だった。
176|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
図表-15:国籍別にみた外国人宿泊地ランキング(延べ宿泊者数、2014 年)
外国人延べ
宿泊者数
(2014)
総数
総数
40,875千人
東アジア 韓国
4,224千人
中国
7,644千人
香港
3,112千人
台湾
7,826千人
欧米・
アメリカ
3,122千人
ロシア
カナダ
407千人
イギリス
723千人
ドイツ
535千人
フランス
672千人
ロシア
240千人
アジア・
シンガポール
1,078千人
オセアニア タイ
1,979千人
マレーシア
723千人
インド
243千人
オーストラリア
1,171千人
インドネシア
520千人
ベトナム
222千人
フィリピン
368千人
地域
国名
1位
2位
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
東京都
29%
21%
25%
22%
19%
42%
44%
48%
42%
47%
50%
38%
32%
30%
44%
41%
41%
41%
42%
3位
大阪府
大阪府
大阪府
大阪府
北海道
京都府
京都府
京都府
京都府
京都府
北海道
北海道
北海道
大阪府
神奈川県
京都府
大阪府
大阪府
大阪府
13%
17%
17%
20%
16%
11%
13%
16%
12%
19%
10%
20%
15%
19%
11%
17%
17%
20%
23%
4位
北海道
福岡県
千葉県
北海道
大阪府
千葉県
大阪府
神奈川県
大阪府
大阪府
京都府
大阪府
大阪府
北海道
大阪府
大阪府
愛知県
愛知県
愛知県
9%
10%
11%
14%
13%
7%
11%
7%
9%
8%
8%
12%
11%
16%
10%
10%
6%
13%
6%
5位
京都府
7% 千葉県
沖縄
6% 北海道
北海道
9% 愛知県
沖縄県
12% 福岡
沖縄県
8% 京都府
大阪府
7% 神奈川県
千葉県
7% 神奈川県
大阪府
6% 千葉県
神奈川県 8% 千葉県
神奈川県 5% 広島県
千葉県
5% 大阪府
千葉県
6% 京都府
千葉県
8% 山梨県
千葉県
7% 京都府
京都府
7% 愛知県
北海道
7% 千葉県
山梨県
6% 千葉県
山梨県
9% 千葉県
京都府
6% 千葉県
7%
9%
7%
4%
7%
7%
4%
5%
5%
3%
5%
5%
7%
6%
5%
6%
6%
6%
5%
(注)従業者数 10 人以上の宿泊施設が対象
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
図表-16:主要都道府県別にみた外国人の国籍別宿泊者数ランキング(延べ宿泊者数、2014 年)
都道府県名
総数
北海道
千葉県
東京都
神奈川県
山梨県
静岡県
愛知県
京都府
大阪府
兵庫県
福岡県
沖縄県
外国人延べ
宿泊者数
(2013Q1-3)
40,875千人
3,736千人
2,725千人
11,949千人
1,260千人
855千人
756千人
1,443千人
2,990千人
5,518千人
601千人
1,266千人
2,261千人
1位
台湾
台湾
中国
中国
中国
中国
中国
中国
台湾
中国
台湾
韓国
台湾
2位
19%
33%
30%
16%
21%
44%
45%
35%
18%
23%
29%
34%
27%
中国
中国
台湾
台湾
アメリカ
台湾
台湾
台湾
中国
台湾
中国
台湾
韓国
3位
19%
18%
17%
12%
16%
17%
18%
13%
12%
19%
17%
21%
17%
韓国
香港
アメリカ
アメリカ
台湾
タイ
タイ
アメリカ
アメリカ
韓国
香港
香港
香港
4位
10%
12%
8%
11%
10%
16%
7%
8%
12%
13%
12%
10%
17%
アメリカ
韓国
タイ
韓国
韓国
香港
韓国
タイ
オーストラリア
香港
韓国
中国
中国
5位
8%
10%
3%
8%
6%
5%
5%
7%
7%
11%
11%
9%
14%
香港
タイ
香港
香港
イギリス
インドネシア
アメリカ
韓国
フランス
タイ
アメリカ
タイ
アメリカ
8%
8%
3%
6%
4%
3%
4%
5%
4%
4%
5%
5%
7%
(注)従業者数 10 人以上の宿泊施設が対象
(出所)観光庁「宿泊旅行統計」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
4――訪日外国人の旅行消費額の急拡大
1|国籍別旅行消費額の推移
訪日外国人旅行客数の急増および円安の進展、アジア地域の所得の増大、免税品目の拡大・免税
制度の簡素化などに対応して外国人旅行客の国内での消費額は拡大している。2014 年の訪日外国人
による旅行消費額 12は 2 兆 278 億円と 2 兆円を突破し、前年比+43.1%の大幅な増加だった(図表
-17) 13。
ホテルや旅館だけでなく、国内小売業者も特に大都市中心部においてその購買力を無視できなく
なっており、東京や大阪などを中心に外国人旅行者をターゲットとした店舗開発が活発に進められ
12
13
ここでは訪日外国人の国内消費額に関する用語は「訪日外国人消費動向調査」に準じており、一人当たりの支出を「一人当たり旅行
支出」とし、これに訪日外国人旅行者数を乗じた総額を「旅行消費額」とする。詳しい定義については訪日外国人消費動向調査を参
照のこと。
訪日外国人による旅行消費額は 2011 年の 8,135 億円から急増している。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|177
ている。
国籍・地域別に訪日外国人の消費総額の構成比を見ると、中国が全体の 28%を占め、次いで台湾
(同 18%)、韓国(同 10%)
、アメリカ(同 7%)
、香港(同 7%)となっている(図表-18)
。2014
年の消費額の前年比増加率は、中国が+102%増と高く、次いでタイ(+67%増)、台湾(+43%増)、
マレーシア(+42%増)
、インド(+36%増)と続いている(図表-19)
。
2014 年の訪日外国人一人当たりの旅行支出額は、15 万 1 千円で前年比+10.6%の増加だった(図
表-20)
。国籍別に見ると、最も多いのがベトナムの 23.8 万円で、次いで中国(23.2 万円、前年比
+10.4%)
、オーストラリア(22.8 万円、+6.9%)
、ロシア(20.2 万円、▲4.1%)
、フランス(19.5
万円、▲4.5%)と続いている。なお、2015 年第 1 四半期に、一人当たり支出額は 2014 年の 15 万
1 千円から 17 万 1 千円へと急増した。特に、中国の訪日外国人旅行者一人当たり支出額は 23 万 2
千円から 30 万円に増加している。
図表-18:訪日外国人の国籍別旅行消費額
構成比(2014 年)
図表-17:訪日外国人の旅行消費総額の推移
7,066
8,000億円
7,000億円
20万円
19万円
5,605
5,505
4,298
3,698
2,894
3,675
2,463
3,007
2,565
2,825
2,220
2,205
2,327
2,675
2,785
3,000億円
3,364
4,000億円
3,899
5,000億円
4,870
6,000億円
中国, 5,583億円,
28%
17万円
16万円
タイ, 960億円, 5%
15万円
香港, 1,475億円,
7%
14万円
1,000億円
13万円
0億円
12万円
台湾, 3,544億円,
18%
アメリカ, 1,475億
円, 7%
韓国, 2,090億円,
10%
2015Q1
2014Q4
2014Q3
2014Q2
2014Q1
2013Q4
2013Q3
2013Q2
2013Q1
2012Q4
2012Q3
2012Q2
2012Q1
2011Q4
2011Q3
2011Q2
2011Q1
2010Q4
2010Q3
2010Q2
旅行消費額
その他, 4,461億
円, 22%
18万円
1,382
2,000億円
オーストラリア,
690億円, 3%
一人当たり国内支出額(パッケージツアー国内収入分含む、右目盛り)
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
図表-19:訪日外国人の国籍別旅行消費額
(2014 年)
6.9%
20%
-9.6%
-2.9%
-4.1%
-4.5%
-4.8%
9.1%
15.8%
0%
24.8
22.8
23.8
-20%
19.6
15.0
16.9
16.5
14.9
11.7
13.9
14.5
17.1
19.5
20.2
20.3
19.5
20.1
18.7
16.8
16.4
0億円
10.1
10.5
-60%
13.4
12.0
690
10万円
13.5
14.5
312
129
0.5%
412 209 348
15万円
14.2
15.6
147
-40%
14.6
355 363 190 194 295
-20%
40%
-40%
-60%
-80%
7.7
7.6
1,611
1,475
960
1,000億円
20万円
0%
2,090
1,370
25万円
20%
13.8
12.5
14%
6%
40%
17.9
8% 8%
2%
17.2
14.8
10% 10%
-5.1%
32%
25%
3,54430%
15.1%
60%
17.1
15.1
4,000億円
36%
30.0
23.2
5,000億円
42%
30万円
10.4%
5,583
43%
35万円
4.7%
80%
40万円
11.9%
67%
6,000億円
2,000億円
100%
-5.8%
7,000億円
3,000億円
120%
102%
10.6%
8,000億円
図表-20:訪日外国人の一人当たり旅行支出額
(2014 年、2015 年 Q1 期)
-100%
0万円
-120%
-80%
オーストラリア
その他
アメリカ
カナダ
178|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
フランス
(注)支出額・消費額には、パッケージツアー費における国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)を含む
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
ロシア
同2015年Q1期
ドイツ
イギリス
ベトナム
インド
フィリピン
インドネシア
シンガポール
一人当たり国内支出額2014年
マレーシア
タイ
中国
香港
台湾
韓国
全体
オーストラリア
前年比増加率(右目盛り)
その他
アメリカ
カナダ
フランス
ロシア
ドイツ
イギリス
ベトナム
訪日外国人旅行消費額(億円)
インド
フィリピン
インドネシア
シンガポール
マレーシア
タイ
中国
香港
台湾
韓国
5万円
2014年前年比増加率(右目盛り)
2|消費項目別の旅行消費額
訪日外国人による 2014 年の国内での旅行消費額では、買い物代が 7,146 億円で全体の 35%を占
め最多であり、次いで宿泊料金(6,099 億円、30%)、飲食費(4,311 億円、21%)、交通費(2,181
億円、11%)と続いている(図表-21)
。
国籍別にみると、中国の買い物代が 3,070 億円で突出しており、日本国内における訪日外国人の
旅行総消費総額の 15.1%を占めている(図表-22)。一人当たり支出額のうち、買い物代では中国
が 12 万 7 千円で最も高く、次いでタイの 5 万 6 千円だった(図表-23)
。宿泊費ではオーストラリ
ア(9 万 3 千円)やイギリス(8 万 1 千円)、アメリカ(7 万 2 千円)などで高く、韓国(2 万 5 千
円)や台湾(3 万 7 千円)などで低い。国別に支出構成比も大きく異なっており、中国では買い物
の閉める比率が 55%に達するが、イギリスやアメリカでは 14%に過ぎない。一方、米国では宿泊
料金が占める比率が 43%と高い。
なお、2015 年第 1 四半期に訪日外国人の一人当たり旅行支出額は、17 万 1 千円で 2014 年通年と
比較すると総額で+13.1%、買い物代+35.0%増、娯楽・サービス費+52.7%増と大きく増加した。
このうち中国の一人当たり旅行支出額は 30 万円で同+29.6%増(うち買い物代は+38.9%増の 17.7
万円、娯楽・サービス費+84.4%増の 5.1 万円、宿泊料金+18.4%増の 5.3 万円)だった(図表-23)
。
図表-21: 訪日外国人の項目別旅行
消費額構成比(2014 年)
図表-22:訪日外国人の国籍別・
項目別旅行消費額(2014 年)
6,000億円
5,583
その他
その他,
76億円, 1%
買い物代,
7,146億円, 35%
5,000億円
買い物代
娯楽・サービス費
宿泊料金,
6,099億円, 30%
4,000億円
3,070
交通費
3,544
飲食費
宿泊料金
3,000億円
1,316
旅行支出総額
2,090
2,000億円
交通費,
2,181億円, 11%
飲食費,
4,311億円, 21%
951
204
378
960
369
690
118
158
283
412
60
102
178
363
355
119
70
117
104
89
120
シンガポール
アメリカ
台湾
中国
425
186
268
マレーシア
韓国
294
タイ
640
478
香港
684
0億円
1,370
イギリス
528
1,048
1,475
オーストラリ
ア
1,000億円
1,076
娯楽・サービス費,
465億円, 2%
555
715
(注)パッケージツアー費における国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)を含む
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|179
図表-23:訪日外国人の国籍別・項目別の一人当たり旅行支出額(2014 年、2015 年 Q1 期(中国の
み)
)
(支出額)
(構成比)
350千円
100%
300
14%
90%
300千円
27%
37%
80%
250千円
232
200千円
150千円
100千円
39
165
127
23
125
16
29
52
28
93
28
81
47
41
16
飲食費
39
宿泊料金
40%
30%
7%
17%
25%
2%
7%
10%
18%
25%
2%
10%
13%
19%
その他
25%
買い物代
娯楽・サービス費
交通費
飲食費
30%
33%
31%
28%
アメリカ
シンガポール
マレーシア
イギリス
オーストラリア
タイ
香港
韓国
アメリカ
台湾
中国(2014)
0%
19%
23%
19%
43%
20%
10%
21%
20%
14%
旅行支出総額
53
10%
3%
4%
29%
41%
43%
32%
34%
シンガポール
25
46
18
15
交通費
1%
33%
マレーシア
72
46
45
26%
10%
50%
娯楽・サービス費
2%
15%
オーストラリア
32
52
買い物代
2%
14%
イギリス
15
56
48
156
3%
15%
12%
タイ
37
20
9
19
42
145
3%
中国(2015Q1)
53
76
27
3%
59%
香港
13
25
中国(2015Q1)
0千円
44
34
55%
60%
中国(2014)
45
47
146
15%
38%
韓国
39
20
24
148
70%
その他
187
17%
35%
台湾
50千円
228
177
2%
宿泊料金
(注)支出額には、パッケージツアー費における国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)を含む
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
3|来日目的別の旅行中消費額
訪日外国人消費動向調査によると、2014 年に訪日した外国人旅行者の来日目的は、観光・レジャ
ーが 821 万人で全体の 61%を占めている。次いで業務が 336 万人(うちMICE 14関連が 195 万人)、
親族・知人訪問が 98 万人となっている(図表-24、25)
。
訪日外国人の一人当たり旅行中支出額 15は、ハネムーン・学校関連等の来日の場合 13 万 7 千円
で最も多く、次いで業務の 13 万 6 千円で、観光・レジャーは 11 万円であった(図表-24)
。国籍別
にみると、ほとんどの目的で中国からの支出が最も多く、特に治験・検診では 41 万円にのぼって
いる(図表-26)
。全体の訪日客の 61%を占める観光・レジャー目的の来日では、中国が 17 万円、
アメリカが 15 万円、香港が 11 万円、台湾が 8 万円、韓国が 5 万円の支出だった。
訪日外国人の旅行中消費額は、観光・レジャーが 9,078 億円で最も多く、次いで業務が 4,571 億
円(うち MICE が 2,500 億円)であった。このうち、中国の支出は観光・レジャーで 2,297 億円、
業務では 1,463 億円と、それぞれの項目で 25%、32%を占め大きな存在感を示している(図表-27)
。
14
15
MICE とは、Meeting(企業等のミーティング)、Incentive(企業報奨・研修旅行)、Convention(国際会議・学会等)、Exhibition/Event
(文化・スポーツイベント、展示会・見本市)の略称である。
旅行中の支出額でありパッケージツアー費に含まれる国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)は除かれている
180|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
図表-24:来日目的別にみた訪日外国人
旅行客数・一人当たり旅行中支出額(2014 年)
160,000
0%
9,000千人
8,215
135,983
140,000
120,000
図表-25:主要国籍別にみた来日目的別訪日
外国人旅行者数構成比(2014 年)
128,330
136,775
8,000千人
116,437 115,450
109,897
10%
20%
30%
40%
全地域
61%
韓国
62%
50%
60%
70%
2%
7%
80%
100%
1%
25%
4%
0%
26%
3%
7,000千人
104,914 102,236
6,000千人
100,000
7%
1%
5,000千人
80,000
4,000千人
3,362
60,000
2,000千人
984
69
32
490
3%
81%
台湾
12%
1%
37
2%
0%
89%
香港
2%
7%
1%
1%
1,000千人
0千人
0
ハネムーン・
学校関連の
旅行など
うちMICE
業務
インセンティブ
ツアー
イベント
治験・検診
親族・知人訪問
観光・レジャー
一人当たり旅行中支出額(円)
1%
3,000千人
1,948
40,000
20,000
90%
56%
中国
32%
米国
観光・レジャー
訪日客数(千人、右目盛)
9%
15%
親族・知人訪問
留学
3% 1%
2% 1%
29%
3%
40%
治験・検診、イベント、
インセンティブツアー
業務
9%
ハネムーン・学校関連の旅行等
(注)支出額には、パッケージツアー費における国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)を含まない
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
図表-26:来日目的別・国籍別にみた訪日外国人
一人当たり旅行中支出額(2014 年)
3,500億円
45万円
韓国
台湾
香港
中国
10,000億円
8,000億円
3,000億円
米国
2,500億円
2,000億円
17
ハネムーン・学校
関連の旅行など
米国
うちMICE
業務
中国
-8,000億円
-10,000億円
インセンティブ
ツアー
香港
イベント
台湾
治験・検診
韓国
留学
親族・知人訪問
ハネムーン・
学校関連の
旅行など
うちMICE
業務
インセンティ
ブ
ツアー
イベント
治験・検診
親族・知人訪
問
観光・レ
ジャー
観光・レジャー
0万円
12
2
3
1
0億円
2
152
14
95
82
500億円
-4,000億円
-6,000億円
53
217
192
7
0億円
835
7
65
27
7
3
2
3
1,000億円
75
7
11 12
18
0
5
3
4
9
2,000億円
-2,000億円
7
45
12
670
41
369
512
7
15
1011
72
1,500億円
114
115
8
1111
10
37
317
16
99
124
5
15
1413
1212 11
20
1,155
477
11
17
15
15
15万円
21
19
1,110
906
931
20万円
22
4,000億円
2,500
1,463
25万円
1,823
30万円
6,000億円
4,571
2,297
35万円
5万円
9,028
41
40万円
10万円
図表-27:来日目的別にみた訪日外国人の
主要国籍別旅行中消費額(2014 年)
全地域(右目盛り)
(注)支出額、消費額には、パッケージツアー費における国内収入分(宿泊料金や飲食費、交通費等)を含まない
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
4|訪日外国人の百貨店売上高増加率
日本百貨店協会によると百貨店における訪日外国人売上高(免税手続きベース売上高)も大幅な
増加が続いている。
特に 2014 年 4 月の消費税率 8%への引き上げ後、前年同月比での総売上高が 10 ヶ月連続でマイ
ナスが続いていた一方、訪日外国人への販売額は、2014 年 10 月より免税制度の拡充が図られた 16こ
ともあり、前年比で 3 倍増へと拡大をしている(図表-28)
。2013 年 4 月の訪日外国人売上高 17は
単月として過去最高の 38 億 6 千万円(総売上高の 0.8%)だったが、2014 年 4 月には 60 億 9 千万
円(同 1.5%)に、2015 年 4 月には 197 億 5 千万円(同 4.2%)に達している 18。特に大都市の百
16
17
18
新たに消耗品(化粧品、食料品等)が免税対象となるなど全品目が免税の対象となるとともに、免税手続きの簡素化などがなされた。
免税手続きベースの売上高。調査店舗数は月によって異なる。
全国百貨店協会によると、同時期の全国百貨店売上高総額は、2013 年 4 月は 4,767 億円、2014 年 4 月は 4,172 億円、2015 年 4 月
は 4,722 億円だった。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|181
貨店において、訪日外国人への売上高増加が顕著であるようだ。
図表-28:百貨店売上高変化率
(前年同月比、総額・訪日外国人免税手続きベース)
304.1%
350.0%
300.0%
200.0%
150.0%
-0.4%
12.1%
0.0%
-1.1%
-41.5%
免税制度
の拡充
尖閣問題
消費増税
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
-100.0%
72.1%
89.1%
100.0%
-50.0%
13.7%
206.6%
-19.7%
218.6%
1.1%
235.8%
-2.8%
180.8%
-1.7%
175.1%
-1.0%
156.4%
-2.2%
118.3%
-0.7%
57.2%
-0.3%
41.3%
-2.5%
39.8%
-4.6%
39.4%
-4.2%
29.5%
-12.0%
54.3%
25.4%
69.8%
3.0%
80.3%
2.9%
117.1%
1.7%
118.2%
2.4%
122.7%
-0.6%
150.9%
2.8%
113.7%
2.7%
87.2%
-2.5%
94.5%
7.2%
105.9%
2.6%
122.7%
-0.5%
53.3%
3.9%
72.6%
0.3%
115.2%
0.2%
-2.8%
-1.3%
11.3%
2.2%
9.1%
-2.4%
-4.4%
-0.2%
0.6%
-1.0%
41.7%
-3.3%
29.0%
-1.2%
28.7%
-1.0%
1.3%
14.1%
訪日外国人
東日本大震
災による減
少の反動増
250.0%
50.0%
総額
(注)売上高の前年同月比は店舗数調整後の数値、
(注)訪日外国人売上高は免税手続きベース。免税制度の拡充(品目の拡大・手続き簡素化)による影響が含まれる。
(出所)日本百貨店協会「百貨店売上高」に基づきニッセイ基礎研究所が作成
5――ホテル投資・ホテル数の推移および当面のホテル計画
1|ホテル投資件数の増加とホテルストックの横ばい
最近の訪日外国人旅行者数の急増とホテル稼働率の上昇などから、国内ホテルへの投資が活発と
なっている。ジョーンズラングラサール(JLL)によると、2014 年の国内ホテルの売買取引数はリ
ーマンショック前のピークを超えて過去最高の 101 ホテルに達した
19
(図表-29)。一方、Real
Capital Analytics(RCA)によると 2014 年のホテルの国内総取引額は 30 億ドルで、前年比▲10.6%
の減少であった(図表-30)
。市場に出てくる大規模な投資適格物件の少なさや、円安の影響など
が取引数に比べ金額(ドルベース)での伸びが低かった理由のひとつと思われる。なお、海外資金
の比率も 25%とリーマンショック前の過半数に比べると低いままだった。
衛生行政報告によると 2014 年 3 月末時点のホテル数と旅館数の合計は 53,172 軒、客室数は 156
万 2 千室だった(図表-31 左図)
。近年、旅館の軒数および客室数が大きく減少しており、2009 年
にはじめてホテルの客室数が旅館の客室数を上回った。旅館軒数の大幅な減少により、ホテルと旅
館の合計軒数も 1986 年以来減少を続けている。ただし、ホテルの一軒当たり客室数の多さから、
ホテルと旅館の総客室数は 1996 年以降、155~159 万室の範囲で横ばいが続いている(図表-31 右
図)。
19
グループ間取引を除く。取引金額では 2007 年や 2013 年を下回ったと推定。JLL ニュースリリース(2015.2.5)より
182|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
図表-29:国内のホテル取引数
図表-30:国内のホテル投資額
8bil.$
70.0%
7bil.$
60.0%
6bil.$
50.0%
5bil.$
40.0%
4bil.$
30.0%
3bil.$
20.0%
2bil.$
10.0%
1bil.$
0.0%
0bil.$
2007
2008
2009
国内取引
(出所)JLL ニュースリリース「2014 年日本のホテル取引数、リー
マンショック前のピークを超え最高に」
(2015.2.5)
2010
国際取引
2011
2012
2013
2014
国際取引比率(右目盛)
(出所)RCA データを基にニッセイ基礎研究所が作成
図表-31:国内のホテル・旅館軒数・客室数
<ホテル・旅館軒数>
ホテル数・旅館数
90,000
<ホテル・旅館客室増加数>
ホテル・旅館客室数
120万室
80,000
100万室
4,000件
80,000室
3,000件
60,000室
2,000件
40,000室
1,000件
20,000室
70,000
60,000
80万室
50,000
60万室
0室
0件
40,000
30,000
40万室
-1,000件
-20,000室
-2,000件
-40,000室
-3,000件
-60,000室
20,000
20万室
10,000
0万室
13
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
00
99
98
97
96
95
94
93
92
91
90
89
88
87
86
85
84
83
82
81
80
79
78
77
76
75
74
73
72
71
70
ホテル数
旅館数
ホテル客室数
旅館客室数
(年)
13
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
00
99
98
97
96
95
94
93
92
91
90
89
88
87
86
85
84
83
82
81
80
79
78
77
76
75
74
73
72
71
70
0
ホテル・旅館件数増加数
ホテル・旅館客室増加数(右目盛)
(出所)衛生行政報告例を基にニッセイ基礎研究所が作成
2|ホテル着工件数、国内ホテル計画
リーマンショックおよび東日本大震災などの影響により、ホテルの着工件数は落ち込み、現在は
まだ回復途上にある。2014 年の宿泊業用建築着工件数は 867 件(前年比▲0.7 減)
、着工床面積は
74 万㎡(+8.9%増)だった(図表-32)
。
2020 年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた外国人旅行客の増加を期待して、現
在、多くのホテル建設計画が動き始めている。週刊ホテルレストランの調査から、竣工年と客室数
が明らかになっているホテルチェーンのプロジェクトを集計すると、2015 年の開業予定は全国で
54 軒、1万 2 千室で、2016 年も 24 軒、5 千室の計画があった。2015 年から 2018 年までの開業予
定を合計すると 2 万室を上回る(図表-33)
。
また、日本政策投資銀行によると、東京におけるホテルの延べ宿泊需要は 2012 年の4千 8 百万
人泊から 2020 年には 5 千 7 百万人泊へと+18.9%の増加が見込まれており、特に外国人は 8 百万人
泊から 1 千 9 百万人泊に+138.9%の増加が予測されている(図表-36)
。なお 2014 年の外国人の東
京都での延べ宿泊者数は 1 千 345 万人泊だった。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
|June 2016|Page169-185
|183
図表-32:ホテル着工件数・面積の推移
宿泊業用着工件数
着工床面積(千㎡)
4,500
図表-33:国内ホテル計画
60件
4,500
棟数
4,000
床面積(右)
4,000
3,500
3,500
3,000
3,000
2,500
2,500
2,000
2,000
1,500
1,500
1,000
1,000
500
500
0
0
14,000室
54
客室数(右目盛)
50件
12,000室
ホテル計画件数
10,000室
40件
8,000室
30件
12,117
24
6,000室
20件
4,000室
4,882
10件
5
1,207
0件
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
2015
2016
2017
2
2,000室
1,200
0室
2018
(注)ホテル企業・チェーン別ホテル計画として開業年と客室数が
明示されているもののみを集計。
(出所)週刊ホテルレストラン 2014 年 12/5 号を基にニッセイ基
礎研究所が作成
(注)宿泊業用建築物を集計
(出所)建築着工統計調査
図表-34:東京のホテル延べ宿泊需要予測
7,000万人泊
6,299
6,000万人泊
5,000万人泊
5,686
4,784
1,916
2,875
802
4,000万人泊
外国人
観光
1,307
3,000万人泊
ビジネス
1,266
1,158
合計
2,000万人泊
2,675
2,504
2012
2020
1,000万人泊
2,266
0万人泊
2030
(注)2020 年の訪日外国人旅行者数 2,000 万人など政府目標並み
の増加を想定した場合の予測値
(出所)日本政策投資銀行「東京オリンピック期間中と期間後の全
国のホテル需給環境を考える」(2014.6)
6――おわりに
中国の旧正月休暇などで、2015 年 2 月から 3 月にかけて訪日外国人の宿泊が急増し、東京のビジ
ネスホテルでは客室数の逼迫から客室料金を通常の 3 倍の 3 万円へと値上げしたところも出たとい
われている 20。訪日外国人旅行客数の増加は、ホテル稼働率の上昇に加え、客室料金の上昇をもた
らし、ホテル事業の収益改善に大きく貢献している。さらに、訪日外国人旅行者の国内消費額が前
年比+43%増で 2 兆円を越えるなど、
商業販売においても外国人旅行客の存在は大きくなってきた。
訪日外国人の増加と消費の増加により、2014 年度の旅行収支は 1959 年度以来、55 年ぶりの黒字に
なるなど日本経済全体への影響も強まっている。
2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、訪日外国人旅行者数はさらなる増加が見
込まれる。そうした中で、今後のホテル市場において懸念される問題のひとつが、ホテル従業員の
人手不足と給与問題と思われる。賃金構造基本統計調査によると、宿泊業の所定内給与額は主要産
業の中で最も低い業種のひとつである(図表-35)。現在、宿泊業を含む業種(宿泊業と持ち帰り・
週刊ダイヤモンド 2015.4.18 号「国内外からレジャー客急増で“ビジネスホテル難民”が続出」、FujiSankei Business i.
2015.4.3「花見客大挙、中国人「爆宿」で客室不足 強気のホテル業界」
、ITmedia ビジネスオンライン 2015.5.12「“外国人びい
き”反省し始めた大阪のホテルも-ビジネス客のしっぺ返しが怖い」などを参照のこと。
20
184|ニッセイ基礎研所報 Vol.60 |June 2016|Page169-185
配達飲食サービス業の合計)の求人増加率は全体平均と同程度であるが(図表-36)、今後、訪日
外国人観光客の増加、日本経済のさらなるグローバル化や MICE 開催の増加等による外国人ビジネ
ス客の増加、所得の回復と円安による日本人の国内旅行の増加などに伴う国内ホテル宿泊需要の増
加に加え、新規ホテルの開業増加などから、ホテル従業員の需要はさらに高まり、その不足感が強
まることが確実である。特に、都心部の高級ホテルなどでは、質の高い従業員の確保と育成のため
には給与の上昇は欠かせないと思われる。また、過疎化が進む地方のリゾート地などでは、従業員
確保にいっそうの問題が発生することが懸念される。
2020 年に向けて訪日外国人旅行者数を 2 千万人へと増加させるために、インフラ整備などを含め
た対策が次々にとられているが 21、訪日した外国人に対して満足度の高い「おもてなし」を提供す
るための最低限の従業員の確保や質の維持も解決すべき最重要課題のひとつといえるだろう。
図表-35:ホテル従業員給与(月額)
図表-36:宿泊業、持ち帰り・配達飲食
サービス業一般新規求人数前年比増加率
450千円/月
60%
384
400千円/月
350千円/月
300千円/月
370
369
363
321
300
320
305
40%
291
274
268
250千円/月
258
242
232
200千円/月
20%
6.0%
4.7%
2.2%
0%
150千円/月
100千円/月
-20%
50千円/月
0千円/月
宿泊業、持ち帰り・配達飲食サービス業
製造業
2014年10月
2015年1月
2014年7月
2014年4月
2013年10月
2014年1月
2013年7月
2013年4月
2012年10月
2013年1月
2012年7月
2011年10月
2012年4月
2012年1月
2011年7月
2010年10月
2011年4月
2011年1月
2010年7月
2010年4月
2009年10月
2010年1月
21
2009年7月
(注)2014 年 6 月の一般労働者(短時間労働者を除いたもの)の
所定内給与、10 人以上の常用労働者を雇用する民営事業所を対象
(出所)賃金構造基本統計調査(2014 年)を基にニッセイ基礎研
究所が作成
全体
-60%
2009年4月
うち宿泊業
宿泊業,
飲食サービス業
生活関連サービス業,
娯楽業
運輸業,郵便業
医療,福祉
卸売業,小売業
製造業
建設業
不動産業、
物品賃貸業
金融業,保険業
情報通信業
学術研究,専門・
技術サービス業
教育,学習支援業
産業計
-40%
(注)パートを含む新規求人数の前年比増加率、産業中分類「宿
泊業、飲食サービス業」より「飲食店」を差し引いて「宿泊業」
と「持ち帰り・配達飲食サービス業」の合計値とした
(出所)一般職業紹介状況を基にニッセイ基礎研究所が作成
訪日外国人旅行者数拡大のための課題については、国土交通省や観光庁、日本政府観光局(JNTO)のビジット・ジャパン事業など
で検討と対策が進められている。観光庁の国際観光に関する政策のウェブサイトなどを参照のこと。
ニッセイ基礎研所報 Vol.60
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