福音と 実りある 生活 - LDS.org - The Church of Jesus Christ of Latter
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福音と 実りある 生活 - LDS.org - The Church of Jesus Christ of Latter
福音と 実りある 生活 教師用手引き 宗教150コース 福音と実りある生活 教師用手引き 宗教150コース 教会教育システム 発行:末日聖徒イエス・キリスト教会 ユタ州ソルトレーク・シティー ご意見,ご感想,お気づきの点がありましたら,下記までお知らせください。 郵便:CES Curriculum, 50 E. North Temple Street, Floor 8, Salt Lake City, UT 84150-2722 USA 電子メール:[email protected] © 2004 Intellectual Reserve, Inc. 版権所有 印刷:日本 英語版承認:2003年 8 月 翻訳承認:2003年 8 月 原題:The Gospel and the Productive Life Teacher Manual Japanese iii 目 次 教師用手引き 序文 …………………………………………………………………… v 1 天の御父が子供たちのために備えられた救いの計画 ………………………… 1 み たま 2 御霊の導き ………………………………………………………………………… 7 3 目標設定と時間管理 ……………………………………………………………… 11 4 賢い財政管理 ……………………………………………………………………… 15 5 イエス・キリストへの信仰を持つことにより, 自分自身とほかの人々の必要を満たす力が得られる …………………… 21 6 自分自身,家族,ほかの人々の必要を満たす ………………………………… 25 7 才能や能力を見いだし,伸ばす ………………………………………………… 29 8 だれでも地上における神の王国の建設を助けることができる ……………… 34 9 主の道にかなって自立する ……………………………………………………… 39 10 研究と信仰によって学問を求める ……………………………………………… 42 はんりょ 11 永遠の伴侶を選び,永遠の伴侶となる ………………………………………… 48 12 健康の律法を守る ………………………………………………………………… 55 13 「これらのことはすべて,あなたに経験を与えるであろう」………………… 61 14 聖約を尊ぶ ………………………………………………………………………… 66 15 互いに仕え合う …………………………………………………………………… 71 v 『福音と実りある生活――教師用手引き』 序 文 本コースの目的は,生徒が霊感を通して与えられた勧告に従うことによって物質的に も霊的にも生活を改善するのを助けることである。生徒は,天の御父の救いの計画で教 えられている霊的な真理に関する知識が,現世のチャレンジに立ち向かう助けになるこ とを学ぶ。また,この世の生活において福音の原則を実践する中で,家族の必要を満た すためにふさわしい職業に就くための訓練や資格を身に付ける必要があることを理解す る。福音の原則に基づいて生活を改善することで,現世の目的を達成し,主と主の子供 たちに仕える能力を増し加える。 クラスを教える準備を行う際に,この手引きの内容を活用する。各章には次の項目が ある。 •「導入」――レッスンの目的とそのレッスンが生徒にとってなぜ重要かについての概要。 •「理解すべき原則」―― 教えるべき基本的な原則を列挙している。 •「教え方の提案」―― 各原則について教えるためのアイデア。 •「課題の提案」――生徒がクラス以外の場所で完了できる活動。これらは本コースを学 ぶことで期待される能力(本コースを受けたことにより生徒に身に付けてほしい能力) が表れている。 教え方の提案の中からクラスで使用する物を選ぶ。単独で使用できる提案には,この ようなしるしが冒頭についている( )。また,生徒用資料には含まれていない中央幹 部の言葉が引用されていることがある。これらの言葉は教師がレッスンの中で用いるた めの追加資料で,見分けやすいように網掛けになっている。教師の教え方と生徒の必要 に合わせ,教え方の提案を活用したり,変更を加えたりする。必要に応じて,テーマや 原則を裏づけるために他の教えるためのアイデアを組み込む。各レッスンの最中に生徒 あかし が教義や原則を確認し,説明し,それについて証する機会を設ける。 この教師用手引きとあわせて使用するための生徒用資料(36599 300)も発行されてい る。生徒用資料の各章には次の項目がある。 •「導入」 •「理解すべき原則」――その章で教えられている原則を列挙している。 •「参照聖句と参考資料」――レッスンで採り上げられるそれぞれの原則に関する聖句や 資料。末日の預言者や使徒,その他の教会指導者の教えも含まれている。 •「応用と事例」――架空の事例と関連する質問を提示している。 •「熟考すべきポイント」――生徒が原則を理解し,実践するのを助ける追加の質問。 •「メモと印象に残った事柄」――生徒が自分の洞察を記録し,質問に対する答えを書き 込むための余白。 福音と実りある生活 教師用手引き vi 福音と実りある生活 教師用手引き 序文 コースの修了 『福音と実りある生活』』」は 1 学期で修了するコースである。1 回100分のレッスンを 15回,あるいは50分のレッスンを30回行う。30回に分けて教える場合は各章をどこで区 切って 2 回に分けるかを決める。 インスティテュートの単位を取得するためには,75%以上の出席が条件である。 レッスンの準備 効果的に教えるには,何をどのように教えるか決める必要がある(『福音の教授法―― 教会教育システム教師および指導者の手引き』2001年,34829 300,19−24)。レッスン資 料を研究する際,御霊の促しによく注意しながらあなたが教える生徒にとって大切だと 思う原則や教義を見極める(「何を」教えるかの決定)。それから一つ一つの原則や教義 を教えるための教え方の提案や活動を選ぶ。『教会教育システムの教えるための現行の強 調点』に採り上げられている事項を盛り込む(「どのように」教えるかの決定)。各レッ スンを準備し教える際に,次の質問や提案について考慮する。 • 生徒がレッスンの時間に何をするか。生徒の参加を促す方法や活動を用いる。 • 生徒の関心を持続させるにはどうすればよいか。教え方に適度な変化を加えて,生徒 が興味を失わないように助ける。 • このレッスンを学んだことでどのような洞察,解決策,あるいは行動が生じる可能性 があるだろうか。生徒が福音の教義と原則を生活に当てはめるのを助ける。 • 御霊の霊感に従って話し,行動する。クラスで参加するときに御霊を招くことができ るように御霊を求め,ふさわしく生活しなければならないことを生徒が理解できるよ うに助ける。 • クラスの話し合いを促し,信仰をはぐくむような質問や話題を採り上げる(教義と聖 約38:23;43:8;88:77−80,122参照。『福音の教授法の手引き』37−39も参照)。 生徒の意見を促すために,教師が尋ねた質問に教師自身が答えることはしない。生徒 に考える時間を与え,物事を考える力を養う。生徒の話に耳を傾け,彼らの意見に対 して反応を示す。 • 教師自身の証を述べ,生徒にも自分の証を分かち合うように勧める。 み こと ば • 生徒が関心を持ち祝福を受けられるように,神と神の御言葉を信じる信仰を持つ( 2 ニーファイ32:3;アルマ31:5 参照)。あなたがよい教師となれるよう生徒や主が助 けてくださると信じる。 福音と実りある生活 教師用手引き 1 第 1 章 天の御父が子供たちのために備えられた救い の計画 導入 あなたが教える生徒は人生の目的に 関して,世の偽りの観念に直面するこ とがよくある。あなたが救いの計画を 「永遠の町」D・キース・ラーソン画 教えるとき,人生の進路とその意義を 示せるように現世の目的や天の御父の 計画の役割を明らかにするのを助け る。救いの計画を理解するにつれ,生 徒は苦難,喜び,労働,学習,そして 体力の維持が日々の経験の中で重要な 役目を果たすことを理解するだろう。 救い主の模範に従うなら,わたしたちはいっそう幸福になり,家族や自分が仕える人々 の生活をさらに豊かに祝福できるようになる。 理解すべき原則 • 天の御父は救いの計画を備えられた。この計画によって,わたしたちはどこから来た のか,何のためにここにいるのか,死後どこに行くのかが分かる。 • 自分が救いの計画のどの部分にいるかを理解することにより,不公平な事柄の多いこ の世で信仰をはぐくみ,喜びを見いだす助けが得られる。 • 救いの計画に関する知識は,わたしたちがこの世のチャレンジに立ち向かう助けとな る。 教え方の提案 天の御父は救いの計画を備えられた。この計画によって,わたしたちはどこから来たの か,何のためにここにいるのか,死後どこに行くのかが分かる 生徒の中にモーセ 1:39(マスター聖句)を暗唱できる人がいるか尋ねる。もしい れば,暗唱してもらい,それからクラス全員で 1,2 度声に出して読む。一人の生徒に, この聖句が自分にとってどのような意味を持っているかを説明してもらう。 黒板に「計画」と書く。その下に次の参照聖句を書く。ただし,かっこの中の語句 は書かない。 あわ • 2 ニーファイ 9:6(「大いなる創造主の憐れみに満ちた計画」) • 2 ニーファイ 9:13(「わたしたちの神の計画」) • アルマ24:14(「救いの計画」) あがな • アルマ34:16(「偉大な永遠の贖いの計画」) • アルマ42:16(「幸福の計画」) 福音と実りある生活 教師用手引き 2 天の御父が子供 た ち の た め に 備 え ら れ た 救 い の計 画 生徒にこれらの聖句を読んでもらい,天の御父が御自身の子供たちのために備えら れた計画を表す名称を幾つか見つけ,印を付けてもらう(あるいは線を引いてもらう)。 この計画に付けられた名称は,御父がわたしたちに備えられた目的を表していること を生徒が発見できるように助ける。 黒板に「前世」「現世」「来世」と書く(これらの言葉は,永遠の時の中で人が存在 する 3 つの時期を表している)。天の御父の計画におけるこれらの時期について知って いることを生徒に挙げてもらう。生徒が次の概念を理解するのを助けるために,必要 に応じて参照聖句や預言者の言葉を挙げる。 前世 • 天の御父は栄光を受けた骨肉の体を持つ至高の御方である(教義と聖約130:22 〔マスター聖句,教義と聖約130:22−23〕参照)。御父はわたしたちの霊の御父で ある(ローマ8:16−17;ヘブル12:9参照)。わたしたちは霊の子供として御父と ともに住んでいた(アブラハム3:22−23〔マスター聖句〕参照)。 「家族――世界への宣言」の中で,大管長会と十二使徒定員会はこのように述べ ている。 「すべての人は,男性も女性も,神の形に創造されています。人は皆,天の 両親から愛されている霊の息子,娘です。したがって,人は皆,神の属性と神 聖な行く末とを受け継いでいます。…… 前世で,霊の息子,娘たちは神を知っていて,永遠の御父として神を礼拝し, 神の計画を受け入れました。その計画によって,神の子供たちは肉体を得るこ とができ,また,完成に向かって進歩して,最終的に永遠の命を受け継ぐ者と しての神聖な行く末を実現するために,地上での経験を得られるようになった のです。 」 ( 『聖徒の道』1998年10月号,24) • 天の御父は救いの計画についてわたしたちに教えられた(教義と聖約138:56参照)。 御父の計画により,わたしたちは肉体を得て従順を学ぶために地上に来ることがで きるようになった(アブラハム 3:24−26参照)。 • 計画には救い主および贖い主が必要だった。イエス・キリストは天の御父によって わたしたちの救い主および贖い主として予任された(モーセ 4:2;アブラハム 3: 27参照) 。 • わたしたちは天の御父の計画を理解し始めて,歓喜した(ヨブ38:4−7 参照。末 日の預言者は,7 節はわたしたちが前世で救いの計画を受け入れたときに感じた歓 喜を表していると教えている。例:生徒用資料の 1 ページに掲載されているリチャ ード・G・スコット長老の言葉参照)。 • サタンは天の御父の計画に反対し,わたしたちの選択の自由を制限する,代わりの 計画を提案した。サタンと彼に従った者たちは追い出された(黙示12:7−11;教 義と聖約29:36;76:25−27;モーセ 4:1,3−4 参照)。 現世 • わたしたちは前世で忠実であることにより「第一の位」を守った。「第二の位」は 現世の生涯とともに始まった(アブラハム 3:26参照)。 • アダムとエバの堕落のために,わたしたちは堕落した状態で現世に生まれている。 堕落と人の死すべき状態は主の計画に必要な部分である( 2 ニーファイ 2:22−25 〔マスター聖句,2 ニーファイ 2:25〕;教義と聖約29:40;モーセ 5:10−11参照)。 福音と実りある生活 教師用手引き 天 の 御 父 が 子 供 た ち の た め に 備 え ら れ た 救 い の 計画 3 しょくざい • イエス・キリストはわたしたちを堕落から贖われた。主の贖罪がなければ,人は復 活することができず,霊としてサタンとともに永遠に惨めな状態で生きる( 2 ニー ファイ 2:26;9:6−10参照)。 • 現世でする経験により,人は選択の自由を使って選び,その結果を経験することが できる( 2 ニーファイ 2:11−13,27;アルマ34:32−34〔マスター聖句〕;教義 と聖約58:27−28〔マスター聖句,教義と聖約58:26−27〕参照)。 • 永遠の家族を築き,教えることは救いの計画の焦点の一つである(教義と聖約93: 40;131:1−4〔マスター聖句〕;138:47−48;モーセ 2:28参照)。 • 熱心な努力と従順によって現世で獲得したすべての知識や英知は,復活のときに人 とともによみがえる(教義と聖約130:18−19〔マスター聖句〕参照)。 来世 • 人が死ぬと,霊は霊界に行き,復活の時を待つ。人は霊界でも学び続ける(アルマ 40:11−14;教義と聖約138:10−22参照)。 • 主はわたしたちがどのように人生を過ごしたかによって,またわたしたちの心の望 みによって裁かれる(ヨハネ 5:22,30;アルマ41:3;教義と聖約137:9〔マス ター聖句137:7−10〕参照)。 • 天の御父の計画に従う人々は御父のもとへ戻って御父のように生きる(教義と聖約 76:92−96;93:16−20参照)。 生徒に次の質問について話し合ってもらう。 • 人が存在する 3 つの時期は,なぜ天の御父のようになるうえで大切なのでしょうか。 • 神の息子や娘であると知っていることは,あなたの天与の可能性を理解するうえで どのような助けになるでしょうか。 • わたしたちがさらに天の御父に似た者となるのを助けてくれる霊的な特質には,ど けんそん のようなものがあるでしょうか。(信仰,従順,謙遜など) • 天の御父の計画に従うと,どのような結果になるでしょうか。(御父のようになる, 満ちみちる喜びを経験するなど) 自分が救いの計画のどの部分にいるかを理解することにより,不公平な事柄の多いこの 世で信仰をはぐくみ,喜びを見いだす助けが得られる 生徒に次の聖句を読んでもらい,なぜ神の計画に従って生活すると幸福がもたらさ れるかについて説明してもらう。 • 2 ニーファイ2:25(マスター聖句) • モーサヤ 2:41 • アルマ19:6 大いなる救いの計画に従って生活していても,現世で過ごす一部の時間は非常に困 難なもので,厳しい試練を伴うことがあると説明する。それにもかかわらず,天の御 父はわたしたちが戒めを守ることによって喜びと平安を見いだすことを望んでおられ ることを覚えておくべきである。 福音と実りある生活 教師用手引き 4 天の御父が子供 た ち の た め に 備 え ら れ た 救 い の計 画 今まで鑑賞したり,読んだりした演劇の中で,2 幕以上から成るものを生徒に挙げ てもらう。次の質問をする。 • 3 幕から成る演劇の中で,第 1 幕で起きた出来事を知っておくことはなぜ大切です か。 • 前世の生活について無知でいると,自分が何者で,どのような永遠の可能性を秘め ているかについて,どのような誤解が生じるでしょうか。 十二使徒定員会会長代理を務めているボイド・K・パッカー会長による次の言葉を 生徒に読み聞かせる。パッカー会長は救いの計画を「3 幕物の壮大な演劇」にたとえ た。 「第1幕のタイトルは『前世』です。聖典はそれを第一の位と呼んでいます (ユダ 1:6;アブラハム 3:26,28参照)。第 2 幕は,誕生から復活の時までを扱 う『第二の位』です。そして第3幕は『死後の生活』あるいは『永遠の命』と呼 ばれています。 現世におけるわたしたちは,第2幕のカーテンが開くとともに,舞台に上がっ た役者のような存在です。第1幕のことは忘れています。この作品は,数多くの 筋が絡み合って,登場人物のだれとだれがどういう関係にあり,何と何がどう絡 み合い,だれがヒーローでだれが悪役であるか,ということを判断するのが決し て容易ではありません。また,わたしたち自身が単なる観客ではないために,な おいっそう複雑になっています。 この永遠の計画の中で,わたしたちの前世,すなわち第1幕の記憶は,幕で覆 われています。第 2 幕の開始とともに現世に来たわたしたちには,第 1 幕の記憶 がないのですから,今行われていることがなかなか理解できないとしても,少し も不思議ではありません。」(The Play and the Plan〔ヤングアダルトへの説教, 1995年 5 月 7 日〕,2) 次の質問をする。 • なぜ,「第 1 幕」(前世)の記憶を失うと,主を信じる信仰を働かせる必要が生じる のでしょうか。 • 地上に来て,死すべき状態で生活しているのは,神の計画の一部であるという知識 は,人生の苦しい時期にどのような助けになるでしょうか。 パッカー会長の次の言葉を読む。 「わたしたちは時々,このように不思議に思うことがあります。もしその計画 がほんとうに偉大な幸福の計画なら,なぜ死すべき世で幸福を見いだすために苦 闘しなければならないのか,と。 ざせつ もし第 2 幕で平安無事と無上の喜びだけを見いだそうとするなら,必ず挫折を 味わうことでしょう。また,今起きていることの意味も,世の中が今のような状 態にあることを許されている理由も,ほとんど理解できないでしょう。 このことを覚えておいてください。『それからは,みんな,いつまでも幸せに 暮らしました』という言葉が,第2幕に書かれることは決してありません。この 言葉は,すべてのなぞが解き明かされ,すべてのことが望ましい状態になる第 3 幕に来るものです。…… この壮大なドラマの全容を把握するようになるまでは,人々の中にある様々な 不公平な状況を理解することは,あまりできないでしょう。ほんとうに何もない 福音と実りある生活 教師用手引き 天 の 御 父 が 子 供 た ち の た め に 備 え ら れ た 救 い の 計画 5 ような状況で生まれてくる人がいる一方で,非常に多くのものに恵まれた状況で 生まれてくる人もいます。貧困や心身の障害,苦しみや悲しみの中に生まれてく る人たちがいます。あまりにも早い死を経験する人もいます。あどけない子供が 命を落とすことさえあります。また,情け容赦のない自然の猛威や人間同士の残 忍な行いもあります……。 神はこれらを勝手気ままに行っておられると考えてはなりません。神御自身の 目的において許しておられるのです。そのすべての計画と目的を知るときに,あ なたはこれらのことも愛に満ちた天の御父を明らかに示すものであることが分か るでしょう。 」(The Play and the Plan,2) 「この壮大なドラマの全容を把握するようになるまでは,人々の中にある様々な不 公平な状況を理解することは,あまりできないでしょう」というパッカー会長の言葉 をもう一度読む。次の言葉や疑問に対して,救いの計画に関する自分たちの知識をど のように役立てるかを生徒に尋ねる。 • 父は,わたしが物心つく前に亡くなりました。わたしは父にもう会えないのでしょ うか。 • いろんな悪いことをしているのに幸せそうに見える友人がいます。それなのに,な ぜ神の戒めを守る必要があるのですか。 • 婚約者とわたしは子供を産まないことにしました。子供はお金がかかるし,精神的 にも負担です。家族がいない方が幸せだと思います。 救いの計画に関する知識は,わたしたちがこの世のチャレンジに立ち向かう助けとなる 生徒に以下のことを理解させる。「わたしたちは,前世で才能や能力を身に付けた。 そして,前世に関する知識のおかげで,現世でも引き続き忠実であり,才能や能力を 伸ばす動機を得ることができる。」生徒がこの原則を理解できるように,中央幹部に よる次の言葉を読み,その後の質問について話し合う。 わたしたちは前世で才能や能力を身に付けた。 十二使徒定員会の会員であったブルース・R・マッコンキー長老はこのように述べ ている。 「わたしたちはこの世に来る前,つまり現世の前の世界,すなわち前世で, 様々な能力や才能を身に付けました。ある分野の能力を身に付けた人もいれば, 別の分野のものを身に付けた人もいます。すべての中で最も重要な分野は,霊性 でした。すなわち,真理を識別する力,才能,能力です。」(Making Our Calling and Election Sure, Brigham Young University Speeches of the Year,1969年 3 月 25日,5−6) 次の質問をする。 • なぜ霊性が「すべての中で最も重要な分野」であると思いますか。 • 霊性はこの世の知識を理解するわたしたちの能力にどのような影響を与えるでしょ うか。 福音と実りある生活 教師用手引き 6 天の御父が子供 た ち の た め に 備 え ら れ た 救 い の計 画 前世に関する知識のおかげで,現世でも引き続き忠実であり,才能や能力を伸ばす動 機を得ることができる。 現世でよく経験する,一時的なチャレンジを生徒に幾つか挙げてもらう(例えば, 仕事を見つける,基本的な必要を満たすために十分な経済力を持つ,健康を維持する, 試練を理解するなど)。 十二使徒定員会の会員であったニール・A・マックスウェル長老は次のように教え た。 「現世に来ることに同意することは,忘却という麻酔をかけることに同意する ようなものでした。麻酔について一度患者から同意を取り付けた医師は,続けて 麻酔が必要なときにもう一度同意を求めるようなことはしません。わたしたちは, 現世に来て,ある条件の下に,ある経験をすることに同意しました。」(『聖徒の 道』1986年 1 月号,18) 次の質問をする。 • あなたが前世にいるときに地上である条件の下にある経験をすることに同意してい たと知ることは,あなたがどのように試練を受け入れ,それに対処するかにどのよ うな影響を与えますか。 • わたしたちが前世で様々な才能や能力を身に付けたという知識は,どのような方法 でそれらの能力をこの世でも伸ばす動機づけになるでしょうか。 課題の提案 • 家庭の夕べで救いの計画について家族に説明するよう生徒に勧める。 • 生徒に,次の質問に対する自分の回答を生徒用資料に書いてもらう。 • 学業や職業における技術を磨くことは,現世の目的を達成するうえでどのような助け になるでしょうか。 • わたしたちがより高い訓練や教育を獲得することは,どのように家族やその他の人々 に霊的にも物質的にも祝福をもたらすでしょうか。 福音と実りある生活 教師用手引き 7 み た ま 第 2 章 御霊の導き 導入 わたしたちの周囲には声高に訴えかける偽りの教えが まんえん 蔓延しているため,神から与えられる個人的な啓示を認 識する必要がある。御霊を受けるために自分を正しく備 えることは,霊の交わりに欠くことのできない要素であ る。聖霊は俗世の事柄と霊の事柄のいずれにおいても人 の生活に慰めと平安,導きをお与えになる。生徒が聖霊 の役割を理解し,御霊の促しを認識する方法を理解でき るように助ける。御霊の導きを認識しその導きに従うこ とを学ぶと,時間を浪費する事柄やあまり重要でない事 柄を避けることができるようになる。 理解すべき原則 • 聖霊はわたしたちの生活に慰めや平安,導きを与えてくださる。 • すべてのふさわしい教会員は,聖霊の導きを受けることができる。 みたま • 祈りは,御霊の導きを受けるための方法である。 教え方の提案 聖霊はわたしたちの生活に慰めや平安,導きを与えてくださる 次の聖句を生徒に割り当てて読ませ,その聖句が聖霊についてどのようなことを教 えているかを発表してもらう。黒板に「聖霊の働き」と書き,その下に生徒の答えを 書き出す。 • ヨハネ14:26 • ヨハネ16:13 • ローマ 5:5 • 2 ニーファイ31:17 • 2 ニーファイ31:18 • 教義と聖約 6:15 聖霊の働きの一つを例証する個人的な経験を分かち合うよう生徒に勧める。 生徒とともに 2 ニーファイ 32:5 を読む。黒板に次の言葉を書く。 「聖霊は,あなた がたがなすべきことをすべてあなたがたに示されるであろう。」(2ニーファイ32:5) 生徒に 1 分与え,この聖句の言葉と参照箇所を暗記させる。それから聖句を消して,2, 3 人の生徒に語句と参照箇所を言ってもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 8 御霊の導き 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に人生で直面する最も重要な決断を 3,4 個生徒に書いてもらう。教義と聖約90:24を読み,列挙した一つ一つの決断をす る際に主の御霊の助けを受けるために何をすべきか要約してもらう。 十二使徒定員会の会員であるジョセフ・B・ワースリン長老の次の言葉を読む。 「聖霊は……啓示を授けてくださる御方であり,教師であり,肉体の感覚よりも はるかに確かな方法でわたしたちの霊に情報を伝えてくださいます。わたしたち が選択や決断に迫られたとき,いつも誤らずに正しい道へと導いてくださいます。 必要なときにわたしたちの霊に安らぎをもたらす慰め主でもあります。」(「深い 根」 『聖徒の道』1995年 1 月号,82) 質問――ワースリン長老は,聖霊が伝えてくださる情報の確かさについて何と言って いますか。 すべてのふさわしい教会員は,聖霊の導きを受けることができる 次の教えを読む。 「聖霊の力は,まだバプテスマを受けていない人にも及び,福音が真実である あかし はんりょ ことを証する。しかし,ふさわしい人に与えられる,聖霊を常に伴侶とする権利 は,権能を持つ人からイエス・キリストのまことの教会に入るためのバプテスマ あんしゅ たまもの を受けた後に,メルキゼデク神権者の按手によってのみ授けられる賜物である。」 ( 『聖句ガイド』 「聖霊」の項,153) かぎ 質問――聖霊を常に伴侶とするための鍵は何でしょうか。(ふさわしさ) 生徒用資料の 8 ページにあるヘンリー・B・アイリング長老の言葉を読むよう生徒に 勧める。 質問――聖霊の影響を受けるにふさわしくなるために何ができるでしょうか。 生徒用資料の 8−9 ページにあるジョセフ・B・ワースリン長老の言葉の最後の 2 段 落を一人の生徒に読んでもらう。その後,次の質問をする。 • ワースリン長老は,人の生活における聖霊の影響を妨げるものとしてどのようなも のを挙げていますか。 • あなたの経験から,御霊を招くためにどのようなことを定期的にしなければならな いと感じていますか。(以下のような答えが考えられる:義にかなった生活,聖文 研究,祈り,生ける預言者に従う,バプテスマの聖約を守る,慈愛,思いを制御す るなど。黒板に自分の答えを書き出すよう生徒に勧める。一つ一つの答えを挙げる ごとに,その大切さを説明してもらう。話し合った事柄を生徒用資料の「メモと印 象に残った事柄」の欄に記録するように勧める。) 福音と実りある生活 教師用手引き 御 霊 の 導き 9 みたま 祈りは,御霊 の導きを受けるための方法である 前述の教え方の提案にある最後の質問を用いた場合,生活に御霊を招く行いとして 生徒が挙げた事柄を参照してもよい。生徒用資料の 9 ページにあるジェームズ・E・フ ァウスト管長の言葉を生徒とともに読む。次の質問をする。 • ファウスト管長が 3 つ目と 4 つ目のポイントで強調しているのはどのような行いで すか。 • 御霊を招く行いの中に祈りを挙げましたか。なぜ挙げたのですか,あるいは挙げな かったのですか。 一人の生徒にヒーバー・J・グラント大管長の次の言葉を読んでもらう。 「神の御霊と導きを願い求めなくなる瞬間から,人は神と神の業から離れ始め ます。神の御霊を求めて祈らなくなると,自分の判断力に頼るようになり,次第 に神の御霊を失っていきます。それはちょうど,親しかった友達が何の音さたも ないままに赤の他人になってしまうのと同じです。わたしたちは皆,罪や誘惑に 負けないように助けてくれる,神の御霊を一瞬たりとも失うことがないよう神に 祈る必要があります。」(『歴代大管長の教え――ヒーバー・J・グラント』174) 質問――御霊の導きを受けたいと望む人にとって祈りが重要であるのはなぜでしょう か。 祈りと御霊の関係について述べた,エズラ・タフト・ベンソン大管長の次の言葉を 紹介する。この言葉を読み上げるとき,ベンソン大管長の一つ一つの問いかけに耳を 傾け,それに対する自分の答えを心の中で考えるよう生徒に勧める。 「皆さんが祈るとき,つまり天の御父と話すとき,皆さんは自分の問題につい て心から話しているでしょうか。皆さんの気持ちや疑問,不安,喜び,心の最も 奥底の願望を御父に伝えているでしょうか。それとも,祈りは単に同じ言葉や文 句を並べ立てた習慣的な表現にとどまっているでしょうか。皆さんは何を伝えた いかについて深く考えているでしょうか。御霊の促しに耳を傾ける時間を取って いるでしょうか。ほとんどの場合,祈りの答えは細い声によって与えられ,人の 心の奥深い感情によって識別されるものです。皆さんが祈り,耳を傾けるための みこころ 時間を取るなら,自分に関する神の御心 を知ることができると断言します。」 ( “To‘the Rising Generation,’”New Era,1986年 6 月号,8 ) (注:次の教え方の提案は,祈りに対する主の答えを認識するうえで御霊に耳を傾け ることが大切であることを強調するものである。時間がかかる内容であるため,レッ スン時間の大部分を要するかもしれない。リチャード・G・スコット長老の勧告は特 にヤングアダルトに直接関係するものである。なぜなら,ヤングアダルトは岐路に立 っており,自身の人生や将来の家族に永久的な影響を及ぼす数々の決断を迫られてい けんそん る。生徒が自信をもって祈りに対する主の答えを認識できるようになり,毎日謙遜な 気持ちで主に助言を求められるよう助ける)。 福音と実りある生活 教師用手引き 10 御霊の導き レッスンの前に,リチャード・G・スコット長老による総大会の説教に挿入されて いる,最初の 2,3 個の見出しの質問(生徒用資料,10−12ページ)を書いておいても よい。これらの質問について深く考えたことがあるか生徒に尋ねる。 スコット長老の総大会の説教を参考資料として用いながら,生徒用資料の同説教に 挿入されている10の質問に答えてもらう。クラスをグループに分け,各グループに 一つかそれ以上の質問に対する答えを探してもらってもよい。各グループで学んだこ とを発表するように勧める。それぞれの質問について話し合いながら,あらかじめ黒 板に書いておいたものに書き足していく。 課題の提案 • 生徒用資料の「応用と事例」を読み,そこに挙げられている質問に答えてもらう。 • どのようにして生活に御霊を招くことができるかをよく考えるよう生徒に勧める。考 えたことを生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に記録するように言う。 福音と実りある生活 教師用手引き 11 第 3 章 目標設定と時間管理 導入 多くの人は目標を立て,時間を有効に管理する ことが苦手である。目標を立てることや賢明に時 間を管理することにより生活がどのように改善さ れるかを生徒が理解し,より効果的に奉仕できる よう助ける。 理解すべき原則 • 価値ある目標を設定することにより,生活に指針が与えられる。 • 様々な分野において,目標を設定すべきである。 • 時間を管理することで,生活をコントロールできるようになり,さらに効果的に仕え ることができる。 教え方の提案 価値ある目標を設定することにより,生活に指針が与えられる ある農夫が日記につづった次の文章を分かち合う。 「干し草を刈ることにした。馬に馬具をつけ始めたら,馬具が壊れているのに気づ いた。修理するために穀物倉に行ったら,空になった袋が幾つか落ちていた。その袋 を見て,地下室のじゃがいもに出てきた芽を取らなければならないことを思い出した。 芽を取ろうと地下室に行ったら,部屋をほうきで掃いた方がよいことに気づいた。ほ うきを取りに家へ行くと,薪箱が空になっているのを見つけた。薪置き場に行くと, 病気の鶏が数羽いるのに気づいた。あまりにも辛そうだったので薬を取りに行った。 薬を切らしていたので,車に飛び乗って薬局に向かった。その道中でガソリンがなく なった。 」 次の質問をする。 • 農夫が干し草を刈るという目標を達成できなかった原因は何でしょうか。 • わたしたちも時々この農夫のように行動してしまうのはなぜでしょうか。 • 目標とは何ですか。 • 目標に焦点を合わせ続けることが大切なのはなぜでしょうか。 • 目標を立てることが大切なのはなぜでしょうか。 • どのようにすれば目標に到達することができるでしょうか。 有意義な目標を立てることを学ぶうえで役立つ,次の概念を紹介する。 • 目標とは,達成できると期待している事柄である。 • その目標の重要度が優先順位の決定に役立つ。 • 目標に優先順位をつけるとは,適切な順番に並べることである。 • カレンダーは達成する必要がある事柄をすべて計画に組み入れるうえで役立つ。 福音と実りある生活 教師用手引き 12 目標設定と時間 管 理 成功を収めるほとんどの人々は目標を立てる。目標の設定は計画を立てるのに役立 ち,生活に方向性を与えてくれる。 黒板に次のように書く。「長期的な目標」,「中期的な目標」,「短期的な目標」,「日 課」 。次の質問をする。 • あなたが考える長期的な目標にはどんなものがありますか。 • あなたが考える中期的な目標にはどんなものがありますか。 • あなたが考える短期的な目標にはどんなものがありますか。 • 日課にはどのようなものがありますか。 該当する見出しの下に答えを書き出す(次表の回答例参照)。 長期的な目標 職場で昇進するために自分の技術を磨く。 昇栄や天の御父に似た者となるのにふさわしい人物になる。 中期的な目標 学位または認定を受けるため,1 年分の講義を終了する。 神殿の儀式を受ける。 王国で奉仕する。 短期的な目標 学位または認定を受けるため,1 学期分の講義に登録し, 修了する。 じゅうぶん 什分の一と献金を定期的に納める。 毎月ホームティーチングや家庭訪問を忠実に果たす。 日課 次のレッスンのための課題を終わらせる。 毎朝30分間聖典を読む。 毎日朝晩祈る。 次の質問をする。 • 「日課」の一覧表が目標を達成するうえで役立つのはなぜでしょうか。 • より長期的な目標に関連して日課を見直すことが重要なのはなぜでしょうか。 • 短期的な目標は,学業や霊的な事柄に関する長期目標を達成するうえでどのように 役立つでしょうか。 • 列挙されている長期的な目標と中期的な目標,短期的な目標,日課にはどのような 相互関係があるでしょうか。 目標は書き出さない限り,単なる願い事で終わると言われている。目標を書き出す ことは,目標を思い出し目的に到達するうえで役立つことを生徒が理解できるように 助ける。 福音と実りある生活 教師用手引き 目標設定と時間管理 13 当時十二使徒定員会補助の職にあったフランクリン・D・リチャーズ長老の次の勧 告を読み聞かせる。 「目的や目標はやりがいがあるだけでなく,現実的なものでもあるべきです。 効果的に働きたいという動機を与えてくれるようなものであるべきです。そのた め,現実的な目的を設定してそれを達成することは,永遠の進歩という偉大な過 程の中で重要な役割を担います。」 (Conference Report,1969年10月,123) 質問――目標が現実的なものであるかどうかはどのように見極めることができるでし ょうか。 様々な分野において,目標を設定すべきである 二人の生徒に黒板の前に出て来てもらう。一人に「物質的」と書いてもらい,もう 一人には「霊的」と書いてもらう。さらに別の一人の生徒に生徒用資料に掲載されて いるG・ホーマー・ダラム長老が話した若きジョン・ウイッツォー(18ページ)の話 を声に出して読んでもらう。黒板の前にいる生徒に,ジョン・ウイッツォーの一つ一 つの目標を「物質的」あるいは「霊的」の下に列挙してもらう。 自分なら次の事柄をどちらの項目(物質的または霊的)に含めるか生徒に尋ねる。 教会での奉仕,市民としての奉仕,家族,教育,職業,伝道活動,財政,家族歴史, 運動,余暇。 前述の一覧表に掲げられている各項目に適切な,具体的な目標を生徒に挙げてもら う。(例えば,家族歴史の項――神殿の業のために一人の死者の名前を提出する。財政 の項―予算を立てる。) 時間を管理することで,生活をコントロールできるようになり,さらに効果的に仕える ことができる 次の質問について話し合う。 • 皆さんの中で,「 1 日の時間がもっと長ければいいな」と思う人はどれくらいいる でしょうか。 • 時間を管理できないのはなぜでしょうか。 次の文を黒板に書く。時間を管理できるようになれば生活をも管理できる。 かじ 質問――ただ物事を成り行きに任せるのではなく,積極的に自分の人生の舵を取るこ とが大切なのはなぜでしょうか。 教義と聖約60:13を生徒とともに読む。 • 時間を無駄に過ごさないことはなぜ大切なのでしょうか。 福音と実りある生活 教師用手引き 14 目標設定と時間 管 理 十二使徒定員会会員であるM・ラッセル・バラード長老の次の言葉を読む。「自分自 身を汚れなく,清く,雄々しく保つ」ために若い人々が実行できる簡単な事柄として バラード長老は次のことを挙げている。 「コンピューターゲームに費やす時間を制限する。コンピューターゲームで 1 分間にどれだけ多くの敵を殺せるようになっても,良い宣教師になる能力はま ったく高められません。」(『リアホナ』2002年11月号,48参照) 次の質問をする。 • バラード長老の言葉が教えている原則は何でしょうか。 • わたしたちはどのような事柄に無駄な時間を費やしているでしょうか。 • 時間の浪費につながるのはどのような態度でしょうか。 • 現代的な発明は時間をどのように浪費させるでしょうか。あるいは節約させるでし ょうか。 時間を管理するうえで最も効果的な道具になるのは計画を立てることです。このよ うな言葉があります。「なすべきことを計画し,それから計画に添って行いなさい。」 計画を立てることは,未来の出来事を現在に持って来て,今できることを終わらせて しまうのに役立ちます。 以下に挙げる,効果的な計画をするための簡単な法則を黒板に書く。(このモデル は週間計画,月間計画,年間計画など,中期的な目標や長期的な目標にも応用できる。) きょう 1.今日達成すべき事柄をすべて挙げて,一覧にする。 2.それぞれの項目に評価をつける。 (例:A=きわめて重要,B=重要,C=少し大切, D=時間の無駄) 3.まず,Aをつけた項目をすべて実行する。次に,B,Cと順に実行する。 生徒用資料の20ページの「応用と事例」を生徒に読んでもらう。 生徒用資料の19ページに掲載されているトーマス・S・モンソン管長とゴードン・ B・ヒンクレー大管長の言葉を読む。生徒に,この中から優先順位に関して勧められ ていることを見つけて要約してもらう。生徒の答えを黒板に列挙する。 課題の提案 • 次の1週間の間に時間を取って静かな場所に座り,自分の人生の目標を書き出す課題 を出す。決めた目標の中から一つを採り上げ,それを達成するために今後 5 年間でし なければならないこと,今後 1 年,半年,1 週間でしなければならないことをそれぞ れ紙に書き出す。人生の一つ一つの目標について,それが自分にとってどのような意 味を持っているかを 1 段落にまとめて説明してもらう。これらの事柄は生徒用資料の 「メモと印象に残った事柄」欄に書くことができる。 福音と実りある生活 教師用手引き 15 第 4 章 賢い財政管理 導入 多くの人は財政についての不安を抱えている。その多 くは,自分や家族を養うために必要な財源を確保するこ とについて心配するのである。またある人は,不正直に よって富を得ているように見える人々を目にするため, じゅうぶん 正直な金銭取引の大切さを理解しない。什分の一と献金 を納めることの大切さ,借金を避けて将来のために貯蓄 する方法,金銭取引を正直に行う必要性,そして家族で 予算計画立てに取り組む方法を生徒が理解できるように 助ける。主の戒めを忠実に守るなら,人はその地で栄え る( 1 ニーファイ 2:20参照)。この約束は物質的なもの だけでなく,個人や家族が享受する祝福にも当てはまる。 理解すべき原則 • • • • 什分の一とささげ物を納めることによって,祝福を受ける。 不必要な負債を避け,将来に備えて貯蓄するなら,財政的な束縛に陥ることがない。 金銭的な事柄において正直であることは,高潔さを表す。 家族でともに話し合うことは,資産の使い方を決めるのに役立つ。 教え方の提案 什分の一とささげ物を納めることによって,祝福を受ける 財政を管理する際,什分の一を納めることが最優先されるべきである。ジョセフ・ F・スミス大管長の次の話を分かち合う。 「わたしの母は夫に先立たれていたが,大勢の家族を養っていた。ある春のこ と,じゃがいもを貯蓄していたむろを開けると,母はわたしたち兄弟に最良のじ いっか ゃがいもを一荷ずつ取り出すように言った。そしてそれを,什分の一管理事務所 へ持って行った。この季節にはじゃがいもはほとんど出回っていなかった。当時 わたしはまだ小さかったが,その荷車を引いて行った。わたしたちが什分の一管 理事務所の階段のところで荷車からじゃがいもを降ろそうとしていると,一人の 事務員が出て来て母に言った。『スミス夫人,あなたが什分の一を納めなければ ならないなんて,あんまりだ。』……彼は,母が什分の一を納めようとしている ことをしかって,母のことを賢明でないし分別もないと言った。そのうえ,もっ と強くて働くことのできる人が什分の一管理事務所から援助を受けていると言っ た。すると母は彼に向かってきっぱりと言った。『ウィリアム,恥を知りなさい。 あなたはわたしから祝福を取り上げようとするつもりですか。什分の一を納めな ければ,主がわたしに祝福を下さることを期待できません。わたしが什分の一を 福音と実りある生活 教師用手引き 16 賢い財政管理 納めるのは,それが神の律法だからというだけではなく,そうすることによって 祝福を得られるからです。什分の一や他の律法を守るからこそ,繁栄して家族を 養っていけると信じています。』」 (「什分の一」 『聖徒の道』1994年 7 月号,37参照) 質問――什分の一を納める大切さについて,スミス大管長の母親からどのようなこと を学ぶことができますか。 生徒用資料の24ページにある,「誤解しないでほしいのですが」で始まるゴード ン・B・ヒンクレー大管長の言葉を生徒に読んでもらう。 質問――什分の一と献金を忠実に納めると,財産が増える以外に,主からどのような 方法で祝福を受けるでしょうか。 什分の一を納めるとき,主への信仰,愛,献身を示すことになると説明する。什分 の一基金は大管長会によって注意深く管理されており,地上に主の王国を築くために 用いられている(教義と聖約120章参照)。 住んでいる地域で最少の価値を持つ通貨を生徒に見せる。 質問――このような価値の低い通貨が主にとって価値あるものとされるのはどのよう な場合でしょうか。 主は地上で教導の業に携わっておられたとき,ささげ物をするやもめを目に留めら れた。一人の生徒にルカ21:1−4 を読んでもらう。レプタはイエスの時代に用いられ ていた通貨の中で最少価値のものだったことを説明する。 次の質問をする。 • 裕福な人々は「ありあまる中から」ささげたが,やもめは「持っている生活費全部 を入れた」とはどのような意味でしょうか。 • 神にとって,ささげ物の大きさよりもささげるときの態度が重要なのはなぜでしょ うか。 次の事例を伝える。 スティーブは大学生です。アルバイトをしていて,借金は一銭もありません。しか し,アルバイト代が入ったとき,家賃と什分の一を両方納めるには足りないことに気 づきました。 質問――あなたはスティーブにどのような助言を与えますか。 什分の一を納めるのは,お金があるからではなく,信仰があるからであることを生 徒が理解できるように助ける(生徒用資料24ページのジョセフ・B・ワースリン長老 の言葉参照) 。 生徒用資料の24ページのジェームズ・E・ファウスト管長の言葉を一人の生徒に読 んでもらう。 生徒とともにマラキ 3:8−12(マスター聖句,マラキ 3:8−10)を読む。次の質問 をする。 • 「天の窓を開〔く〕」とはどのような意味だと思いますか。(霊的な祝福とこの世的 な祝福,どちらに関する答えも考えられる。) • あなたにとって什分の一は神への贈り物でしょうか。それとも負債の返済でしょう か。 福音と実りある生活 教師用手引き 賢 い 財 政 管理 17 十二使徒定員会会員であるジェフリー・R・ホランド長老が述べた次の勧告を紹介 する。 「什分の一と献金は,神が当然お受けになるべきものであるため,正直かつ誠 実に納めましょう。…… 什分の一を納めるということは,どうにかこうにか心を広くして神に差し出す, ささやかな贈り物などではありません。什分の一を納めるとは,負債を返済する ことです。 」 ( 「潤った園のように」『リアホナ』2002年 1 月号,39) 次の質問をする。 • 什分の一を納めると,どのような霊的な祝福を受けるでしょうか。 • マラキ書 3:11で述べられている「食い滅ぼす者」とはだれ,あるいは何だと思い ますか。 「食い滅ぼす者」とは,財源を食いつぶしてしまう,生活における障害だと言うこ とができる。例えば,出費がかさむ事故,健康問題,消費態度などである。時折, 「食い滅ぼす者」はわたしたちの行いの結果として抑えられることがある。主はこれ らの問題を避け,それに打ち勝つための方法を教えてくださる。 質問――什分の一を納めることは、イエス・キリストの再臨に備えるうえでどのよ うに役立つでしょうか。(教義と聖約64:23〔マスター聖句〕を読み,答えを見つけ るよう生徒に言う。) 次の二つの言葉を分かち合い,次の二つのことについて考えてもらう。什分の一を 納める人々にはどんな祝福が与えられるだろうか。また,これらの祝福の多くが金銭 以上の価値を持つのはなぜだろうか。 あかし ヒーバー・J・グラント大管長は十二使徒定員会会員であったときにこのように証し ました。 「わたしは証します。この証が真実であることをわたしは知っています。神の みまえ 御前に完全に正直に歩み,什分の一を納めてきた男女は,……この律法の成就に よって自分に注がれた神の祝福について全世界に証するでしょう。そして,残り の10分の 9 を上手に利用する知恵を主から授かり,納めた残りは彼らにとってよ り大きな価値を持ちます。主の御前に正直でいないときよりも,10分の 9 でさら に多くのことを成し遂げています。」(「什分の一」『聖徒の道』1994年 7 月号,36 参照) 大管長会の顧問であったN・エルドン・タナー管長はこのように教えました。 「什分の一を納めることは戒めであって,一つの約束を伴っています。すなわ ち,この戒めを守るならば,『地に栄える』という約束です。この繁栄は物質的 な事柄だけにとどまりません。健康や精神の活力,家族の一致,霊性の高揚など も含んでいます。」(「家庭訪問メッセージ――賢明に生活し,什分の一とささげ物 とを納めることにより,備える」『リアホナ』2003年12月号,25参照) 什分の一を納めた経験と,この戒めによって救い主を信じる信仰がどのように強め られたかについて,一人か二人の生徒に述べてもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 18 賢い財政管理 不必要な負債を避け,将来に備えて貯蓄するなら、財政的な束縛に陥ることがない 次の文を黒板に書く。負債があると、どのように自由が制限されるでしょうか。 クラスを 4 つのグループに分け,生徒用資料の24−25ページの「不必要な負債を避 け……」の箇所に掲載されている,4 人の中央幹部による言葉をそれぞれ一つずつ割 り当てる。グループごとに、割り当てられた言葉の要点を見つけてもらう。 グループで引用文について話し合ったら,各グループから代表者を一人選び,クラ スの前に出てパネルディスカッションをしてもらう。パネラーの生徒に次の質問を尋 ね,可能なときには生徒用資料の言葉を参照してもらう。 • 財政に関して生活の中で身に付けるべき良い習慣にはどのようなものがあるでしょ うか。 • 「支出を抑える」とはどのような意味でしょうか。 • 負債を負うことは容易なのに,負債から抜け出すことは難しいのはなぜでしょうか。 • 負ってもよい負債にはどのようなものがあるでしょうか。 • 負債は人の自由をどのように制限するでしょうか。 教義と聖約104:78−80を生徒に読んでもらう。それから負債に関する原則と主の 勧告を黒板に列挙する。次の質問をする。 • これが負債を克服するうえで大切な勧告であるのはなぜだと思いますか。 • この聖句はあなたが負債を避けるうえでどのように役立つでしょうか。 ヒーバー・J・グラント大管長による次の言葉を紹介する。 「人の心と家族に平安と満足を与えるものを一つ挙げるとすれば,それは収入 の範囲内で生活することです。人を虐げ落胆させ,希望を失わせるものを一つ挙 げるとすれば,それは返済できない借金を負い,果たせない義務を負うことです。」 ( 『歴代大管長の教え――ヒーバー・J・グラント』122) 生徒用資料に含まれている負債追放カレンダー(25ページ)を開き,カレンダーの 前にあるマービン・J・アシュトン長老の説明を読むよう生徒に言う。カレンダーでは 負債 1 の支払いが 7 月に完済した後,その負債に充てられていた分のお金が負債 2 の支 払額に足されて,負債 2 の返済が早く終わる点に着目してもらう。生徒に表の残りの 部分にも続くこのパターンを説明してもらう。 金銭的な事柄において正直であることは,高潔さを示す 黒板に正直と書く。この言葉が自分にとってどのような意味があるか生徒に説明し てもらう。 はんりょ 質問――正直であることは,両親,伴侶,職場の同僚,友人などとの関係にどのよ うな影響を与えるでしょうか。 人に対して正直であることは,主に従う姿勢の表れであることを説明する。主はわ たしたちを聖約の民と呼ばれている。わたしたちが進んで主と聖約を交わし,それを 守っているからである。主は,主に対しても他の人々に対しても正直であるよう命じ ておられる。当時十二使徒定員会会員だったジェームズ・E・ファウスト長老の次の 経験を読む。 福音と実りある生活 教師用手引き 賢 い 財 政 管理 19 「わたしが南アメリカの地域代表役員として働いていたころ,ウルグアイのモ ンテビデオで忘れることのできない経験をしたことがあります。当時ブラジルに 住んでいたわたしはお金の両替をしなければなりませんでした。そこでカルロ ス・プラット兄弟がわたしをモンテビデオの繁華街にある両替所に案内しまし た。プラット兄弟はわたしを所員の一人に紹介しました。その所員は 1 千ドルほ ど両替してもよいと言ってくれました。わたしは現金で 1 千ドルも持っていませ んでしたが,ただソルトレーク・シティーのある銀行が発行した小切手を持って いました。わたしはまだ一度もこの両替所を利用したことがありません。この両 替所の人々もわたしを見たこともなければ,わたしと取引をしてみたいと思った ことも当然ありません。わたしがソルトレークの銀行に 1 千ドル預金していたと してもそれを確かめる方法もありませんでした。しかし,この両替所はわたしの ちゅうちょ 小切手を躊躇することなく引き取ってくれました。それは単に,わたしがモルモ ンであり,以前モルモンの人と取引をしたことがあったという理由だけでした。 わたしは率直に彼らの信頼に感謝し,喜びを伝えました。」(「これらの者をわが 統治者となさん」『聖徒の道』1981年 4 月号,68) 次の質問をする。 • 教会員として,正直であることは自分以外にもどのように影響を及ぼすでしょうか。 • 不正直が利己心の一つの表れだといえるのはなぜでしょうか。 金銭取引における正直さの例となる経験を分かち合うよう生徒に勧める。 N・エルドン・タナー管長の次の言葉を読む。 「正直という観念が決して流行遅れになることはありません。人が行うすべて の事柄に適用するものです。教会の指導者や会員として,わたしたちは正直の鏡 となるべきです。」(「不変の原則」『聖徒の道』1980年 3 月号,117参照) 質問――個人の正直さが神殿推薦状を得るための条件の一つであるのはなぜだと思 いますか。 家族でともに話し合うことは,資産の使い方を決めるのに役立つ しんせき 黒板に 3 つの欄を書き,それぞれの欄の上に父親,母親,親戚と書く。大管長会や 十二使徒定員会の次の言葉を研究しながら,主から期待されていることを生徒に見つ けさせ,正しい欄に列挙してもらう。 「神の計画により,父親は愛と義をもって自分の家族を管理しなければなりま せん。また,生活必需品を提供し,家族を守るという責任を負っています。また 母親には,子供を養い育てるという主要な責任があります。これらの神聖な責任 において,父親と母親は対等のパートナーとして互いに助け合うという義務を負 っています。心身の障害や死別,そのほか様々な状況で,個々に修正を加えなけ ればならないことがあるかもしれません。また,必要なときに,親族が援助しな ければなりません。」(「家族――世界への宣言」『聖徒の道』1998年10月号,24) 福音と実りある生活 教師用手引き 20 賢い財政管理 生活必需品を提供するうえで,どれくらいの収入があって,どれくらいの支出があ るかを示す計画があるととても便利であることを説明する。このような計画は予算と 呼ばれる。 質問――夫と妻の両方が予算に携わることが大切なのはなぜでしょうか。 十二使徒定員会会員であったマービン・J・アシュトン長老の次の勧告を読み聞かせ る。アシュトン長老の言葉の中からさらなる洞察を見いだし、黒板の一覧表に書き加 えるよう生徒に言う。 「家庭において,夫と妻の間の金銭管理は基本的に共同で行い,方針を定めた り,決断したりする際には二人で行います。…… 家庭の財政管理は,夫と妻が互いに心を開き,信頼するという姿勢をもって, 共同で行うべきものです。夫婦のどちらかが金銭管理の面で力と権威を持つよう になると,結婚生活において不平等が生じ,不適切なものとなります。逆に,一 方が家庭の財政管理から自分の意志で完全に離れてしまうと,それは必要な責任 を放棄したことになります。」(『お金の話――家庭における財政管理の指針』〔小 冊子〕 ,2−3参照) 課題の提案 • 生徒に生徒用資料の31ページの予算ワークシートを開いてもらう。収入の多少にかか わらず,予算計画を立てて財源を活用することを学ぶことが有益であると説明する。 予算計画は得た収入金額と支出金額の計画を立て,評価するのに役立つ。生徒用資料 の中のワークシートを用いて生徒に推定の予算作りを始めてもらう。黒板に予算計画 を書き,各欄に事例の数値を入れながら説明する。予算計画は内密に保つよう生徒に 念を押す。 「収入」の項目の「予定」の欄に 1 か月の予定収入を生徒に列挙してもらう。仕事, 預金,奨学金など,複数の収入源が含まれる。 「支出」の項目の「予定」の欄に予想される支出を見積もってもらう。教会への献 金,将来の必要や緊急時のための貯金も含めるよう促す。 1 か月間の実収入を記録し,「実際」の欄に記入するよう生徒に勧める。また,1 か 月間の実支出を記録し,どれくらいのお金を使っているかを調べるように言う。これ は毎日記録することを必要とするため,少々難しい課題になる。生徒用資料のワーク シートには書き切れないかもしれない。細かい数字は別紙に記録し,生徒用資料の予 算ワークシートには 1 か月の終わりに大まかな収支のみを書いてもよい。 1 か月の終わりに,生徒は支出を収入と比較する。実収入と実支出を合計すると, 1 か月間で実際に必要な収入と削減すべき出費を吟味できる。賢明な予算計画とは, 収入と支出のバランスを図り,支出を収入の範囲内に抑えることである。(地元で一 般的な収入と支出の金額を挙げて,黒板に予算例を書いてもよい。) 福音と実りある生活 教師用手引き 21 第 5 章 イエス・キリストへの信仰を持つことにより, 自分自身とほかの人々の必要を満たす力が得 られる 導入 イエス・キリストを信じる信仰は,人が自分の生活を 改善し,他の人々を助けるうえで指針となる力と実践の 原則である。キリストを信じる信仰を働かせて積極的に 生活状況を改善しようと努めるなら,主が物質的にも霊 的にも必要を満たすのを助けてくださることを生徒が理 解できるように助ける。 理解すべき原則 • 主イエス・キリストを信じる信仰により,霊的に成 長し,この世で求められる事柄に対処する力が得られる。 • 主は,必要なものを得られるように助けてくださると約束された。 • 主がすべてのことを命じられることはない。わたしたちは熱心に善いことに携わらな ければならない。 • 忠実に主に頼るとき,主はわたしたちが自らの生活を改善し,人々を助ける方法を理 解できるように助けてくださる。 教え方の提案 主イエス・キリストを信じる信仰により,霊的に成長し,この世で求められる事柄に対 処する力が得られる 箴言3:5−6(マスター聖句)を暗唱できる生徒がいるか尋ねる。もしいれば,そ の生徒に暗唱してもらう。その後,クラス全員で 1,2 度声に出して読む。 次の質問をする。 • 「心をつくして主に信頼せよ」とはどのような意味だと思いますか。 • 主を信頼すると,理解力を増し加える必要が減るでしょうか。それはなぜですか。 次の文を黒板に書く。「信仰は力の原則である。」この言葉はどのような意味だと思 うか生徒に尋ねる。 十二使徒定員会会員であったブルース・R・マッコンキー長老の次の言葉を読む。 「信仰の本来の意味は,人や天使の行動の原動力以上のものである。信仰は力 の原則でもある。信仰は力である。力が存在するところに信仰があり,力がない ところに信仰はない。そのため,ジョセフ・スミスはこのように続けて述べた。 『信仰は行動の原則であると同時に,天と地両方におけるすべての英知ある者に 福音と実りある生活 教師用手引き 22 イエス・キリストへの信仰を持つことにより,自分自身とほかの人々の必要を満たす力が得られる 内在する力の原則でもある。』信仰は人が存在するあらゆる時期に働く。神々, 天使,霊,人にかかわらず,すべての英知ある者は信仰の力によって動く。」(A New Witness for the Articles of Faith,1985年,164) 次の質問をする。 • 聖文の中で,信仰が力であることを表す例にはどのようなものがあるでしょうか。 (例:エテル12:7−22参照) • これらの例により,信仰に対するあなたの理解力はどのように深まりますか。 信仰が生活に祝福をもたらした経験を幾つか分かち合うよう生徒に勧める。 信仰に関する次の説明を読む。 「イエス・キリストを信じる信仰を持つということは,主の命じられたことに はどんなことでも従うだけの信頼を主に寄せるということである。従順のないと ころには信仰はない。同様に,まことの従順が存在するのは,信仰がある場合だ けである。イエス・キリストを信じる信仰を持ち,従順な弟子となるときに,天 ゆる の御父はわたしたちの罪を赦し,主のもとに戻る備えをさせてくださる。」(『福 音の原則』1997年,116) 次の質問をする。 • この言葉は,信仰を増し加える方法についてどのようなことを教えているでしょうか。 • より強い信仰はこの世での状況を改善する力をどのように与えてくれるでしょうか。 黒板の上の方に次の言葉を横に並べて書く。 「教育」,「仕事」,「家族」。 次の質問をする。イエス・キリストを信じる信仰を増し加えることは,これらの分 野で向上するのをどのように助けてくれるでしょうか。 みたま 生徒の答えを黒板に書き出す。(神の戒めを守るとき,生活の中で御霊をいっそう 豊かに受け,この世で従事する様々な事柄についての導きを受けることを生徒が理解 できるように助ける。主はわたしたちが学んだり,技術,才能,能力を伸ばしたりす る機会を与えることがおできになる。) 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に,霊的にもこの世的にも自分を改 善するうえで信仰と従順がどのように役立つかについて感じていることを短く書き留 めるよう生徒に言う。書いたことを数人の生徒に分かち合ってもらう。 全力を尽くして福音に従って生活しようと努めるなら,霊的な事柄とこの世的な事 あかし 柄の両面において主が祝福してくださることについて,教師自身の証を述べる。 主は,必要なものを得られるように助けてくださると約束された 黒板に次のように書く。「霊的な事柄とこの世的な事柄について助けを祈り求める」 この見出しの下に次の参照聖句を箇条書きする。 • アルマ34:20 • アルマ34:21 福音と実りある生活 教師用手引き イエス・キリストへの信仰を持つことにより,自分自身とほかの人々の必要を満たす力が得られる 23 • アルマ34:22 • アルマ34:23 • アルマ34:24 • アルマ34:25 • アルマ34:26 それぞれの聖句を読み,それを現代に当てはめたときの例を挙げてもらう。これか ら数週間,何について祈りたいか生徒用資料に書き出すように勧める。 地球や地球に住む動物数種の写真を見せる(可能であれば,『福音の視覚資料セッ ト』 〔34735 300〕100番「創造――生き物」と600番「世界」を使用する)。生徒ととも に教義と聖約104:14−18を読み,次の質問をする。 • これらの聖句は主と地球の関係について何を教えているでしょうか。 • 子供たちの必要を満たすための主の能力について何を教えているでしょうか。 • 主の助けを受けるにふさわしくなることに関して,わたしたちはどのような責任を 負っているでしょうか。 仕事や教育の機会などの生活の場面において,信仰に行いが伴ったときに祝福を受 けた経験を 2,3 人の生徒に述べてもらう。 主がすべてのことを命じられることはない。わたしたちは熱心に善いことに携わらなけ ればならない 頼まれなくても人のために親切なことをした最近の経験について,生徒に考えても らう。次に,このように質問する。 • なぜそうしましたか。 • それをした後,どのような気持ちを感じましたか。 教義と聖約58:26−27(マスター聖句)で教えられていることを自分の言葉で書く よう生徒に言う。2,3 人の生徒に書いたことを発表してもらう。 次の質問をする。 • 「熱心に……携わ〔る〕」とはどのような意味でしょうか。 • あなたの生活の中で,自分や家族,その他の人々に祝福をもたらす善いことにはど のようなものがありますか。 • この世に関するもので,あなたが現在取り組んでいる善いことにはどのようなもの がありますか。 生徒用資料の34ページのブルース・R・マッコンキー長老の言葉を参照する。 次の質問をする。信仰と行いのバランスを見極めるために講じる指針にはどのよう なものがありますか。 回復の初期の時代,主がオリバー・カウドリに金版を翻訳するのをお許しになった ことを生徒に思い出させる。教義と聖約 9:7−8 を生徒とともに読む。 次の質問をする。 • 第 8 節の前半で,オリバー・カウドリは単に主の助けを求めるだけでなく,ほかに 何をすべきだったと述べられているでしょうか。 福音と実りある生活 教師用手引き 24 イエス・キリストへの信仰を持つことにより,自分自身とほかの人々の必要を満たす力が得られる • オリバー・カウドリの経験から,主の助けを求めることに関してどのようなことを 学ぶことができるでしょうか。 忠実に主に頼るとき,主はわたしたちが自らの生活を改善し,人々を助ける方法を理解 できるように助けてくださる 十二使徒定員会会員であるジョセフ・B・ワースリン長老による次の言葉を読む。 ワースリン長老は人々に対する主の哀れみについて説明している。 「生まれつき歩くことのできない男性の変形した足,あるいは墓へと運ばれる ほお 一人息子の遺体の後をついて来る母親の頬を伝わる涙を想像するのは難しくあり ません。わたしの目には,飢えた人々のうつろな目,病んだ人々の震える手,非 難の対象となった人々の嘆願する様子,ほかの人々との接触を禁止された人々の 落胆したまなざしが見えます。このような人々がすべて,富も家も地位もない孤 独な一人の御方を目指して進もうとしている姿が見えます。 わたしにはこの御方,生ける神の御子が尽きることのない哀れみの心で一人一 み て 人を御覧になる姿が見えます。その神聖な御手がそっと触れると,打ちひしがれ いや た人々には慰めが,病んだ人々には癒しが,非難の対象となっている人々には解 み こ と ば 放がもたらされます。その御言葉が,亡くなった男性をひつぎから立ち上がらせ, 母親によみがえった息子を抱かせるのです。」(「霊感によって与えられた教会の 福祉」 『リアホナ』1999年 7 月号,90) こんにち 次の質問をする。教会の中で,主が今日わたしたちのこの世的な必要について関心 をお持ちであることを示す事柄にはどのようなものがありますか。 生徒用資料の36ページの「熟考すべきポイント」の質問を活用して,クラスで話し 合う。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長は永代教育基金が基づく原則を説明した。生徒用 資料の35ページのヒンクレー大管長の最初の言葉を読んで,永代教育基金によって自 分や他の人々の生活がどのように祝福されているかを見つけるよう生徒に言う。 課題の提案 • 生徒が住む地域で,さらに高い訓練を受けることによって教育や職業技術を高めた一 人または二人の人にインタビューをするよう生徒に勧める。インタビューの後,話を した各個人について 1 段落の文章を書き,その人が教育を終えてからどのように成長 したか,そして教会内外で人々を助ける力にどのような変化があったかを文章にまと める。 • 訓練を受けて有利な職業に就くことにより,家族を養う能力だけでなく,主の教会で 奉仕する力もどのように増すと思うか生徒と話し合う。 • 時間の使い方が熱心に善いことに携わる原則とどのような関係があるかについて話し 合う。 福音と実りある生活 教師用手引き 25 第 6 章 自分自身,家族,ほかの人々の必要を満たす 導入 この世に関する責任は,霊的な成長と関連し ている。例えば,主の戒めを守ることと家族の 経済的な必要を満たすこととの間には関係があ る。優先順位を見極めて価値ある目標を設定す ることを学べるように生徒を助ける。現世にお ける状態を改善するために計画を立てて遂行す るとき,愛する人々を養う責任を果たせるよう 主が助けてくださる。 理解すべき原則 • 物質的なものと霊的なものにはつながりがある。 • 優先順位は福音の原則に添ったものでなければならない。 • 父親は生活必需品を提供し,家族を守るという責任を負っている。母親には,子供を 養い育てるという主要な責任がある。 教え方の提案 物質的なものと霊的なものにはつながりがある 黒板に「この世的な」と書き,この言葉はどのような意味であると思うか生徒に尋 ねる。辞書の定義を述べてもよい。この言葉は時間や現世の生活に関連性があり,霊 的な事柄や神聖な事柄よりも俗世にかかわる事柄を表す言葉である。このことを生徒 が理解できるように助ける。 次の質問をする。 • この世的に思える戒めにはどのようなものがありますか。(黒板に生徒の答えを書 き出す。 ) • これらの戒めが霊的というよりはこの世にかかわるものに思えるのはなぜでしょう か。 • 日曜日に行う事柄は霊的でそれ以外の曜日に行うことはこの世にしか関係がない, という考えが正しくないのはなぜでしょうか。 生徒とともに教義と聖約29:34−35を読み,黒板に書き出した戒めが生活の霊的な 面とこの世的な面の両方にどのような影響を及ぼすかについて話し合う。 福音と実りある生活 教師用手引き 26 自分自身,家族 , ほ か の 人 々 の 必 要 を 満 た す 大管長会の顧問を務めたジョージ・Q・キャノン管長が述べた次の教えを紹介する。 「救いの計画は,地上で肉体を持つ人類に属するあらゆるものを取り巻いてい ます。神のお考えでは,霊に関する事柄とこの世に関する事柄の区別がありませ ん。神は人に与える啓示の中でこの表現を用いておられます。人の状態と物の見 方に合わせておられるからです。しかし,神においてはこの世に関する事柄と霊 に関する事柄には差異がありません。 霊的な救い……とこの世の救いは分け隔てがありません。神の目から見て,人 の肉体は人の霊と同じようにいとしいものです。……神は御自身の子供たちのこ の世における救い,すなわち子供たちの肉体の救いのために啓示をお与えになり ます。なぜなら,価値において霊に関する神の啓示と同じくらい大切だからです。」 (Gospel Truth: Discourses and Writings of President George Q. Cannon,ジェレ ルド・L・ニュークイスト選,全 2 巻,〔1957−1974年〕,第 2 巻,310) 次の質問をする。 • 霊的な強さはこの世に関する必要,あるいは物質的な必要をどのように助けるでし ょうか。 • 働いて生活の糧を得ることは人の霊的な成長とどのような関係があるでしょうか。 優先順位は福音の原則に添ったものでなければならない 次の事例を紹介する。 伝道から帰還したばかりのある兄弟がなかなか仕事を見つけられずにいた。ついに 2 件の求人を見つけた。報酬が多い方は日曜日も働くことが条件になっていた。彼は このような言い訳を考えた。「教会に行くことが大切なのは分かっている。でも,こ れはかなり待遇の良い仕事だ。日曜日に働かなければならないが,この仕事に就かな いと経済的な責任を果たせなくなりそうだ。」 質問――この人が考慮すべき重要な福音の原則にはどのようなものがあるでしょう か。 (黒板に生徒の答えを書き出す。) マタイ22:36−39節を生徒に読んでもらい,この聖句が優先順位についてどのよう なことを教えているか尋ねる。 生徒用資料の41ページにあるラッセル・M・ネルソン長老の言葉について考える。 次の質問をする。 • 適切な優先順位はどのように人の守りとなるでしょうか。 • 良い優先順位を取り入れるにはどうしたらよいでしょうか。 神は人の霊的な幸福だけでなく,この世にかかわる事柄における幸福も気にかけて おられるので,人が神を第一にするなら,生活の両面において助けてくださる。 福音と実りある生活 教師用手引き 自 分 自 身 , 家 族 , ほ か の 人 々 の 必 要 を 満 たす 27 エズラ・タフト・ベンソン大管長による次の勧告を読む。 「わたしたちは生活の中で,神を何よりも先に置かなければなりません。十戒 の第一番目で主が宣言されたように,主が最初に来なければならないのです。 『わたしのほかに,なにものをも神としてはならない。』(出エジプト20:3 ) 神を第一に考えれば,ほかのすべてのものは正しい位置に落ち着くか,または わたしたちの生活の中から消えていくかのどちらかです。主の愛は感情の欲求や 時間の要求,興味,物事の優先順位をコントロールします。 わたしたちは生活の中で,ほかのだれよりも神を第一にすべきです。…… もしだれかが神殿以外で皆さんと結婚したいと言ったら,皆さんは神と人のど ちらに喜んでもらおうとしますか。神殿結婚を選ぶなら,主は喜んでくださり, 相手の人も祝福されます。なぜでしょう。それは,相手の人が神殿に入る資格を 得ることになるか(これは祝福ですね),または離れていくかのどちらかだから です。離れていくことも祝福です。釣り合わないくびきを共にすることがないか らです( 2 コリント 6:14参照)。 神殿に参入する資格を身に付けてください。そうすれば,神殿以外ででも結婚 したいと思うほど良い相手などいないことが分かるでしょう。神殿以外で結婚で きるほど良い人であれば,自らを神殿結婚できる状態に備えることでしょう。 はらから わたしたちは,第一の戒めを第一に置くときに,同胞に最も大きな祝福を及ぼ すことができます。…… 神はわたしたちを愛し,悪魔はわたしたちを憎んでいます。神は御自身が感じ ておられる完全な喜びをわたしたちに味わってほしいと思っておられるのに対 し,悪魔は自分と同じように惨めな有り様になることを望んでいます。神は祝福 するために戒めを下さいましたが,悪魔はのろうために戒めを破らせようとする のです。 」 ( 「偉大な戒め――主を愛する」『聖徒の道』1988年 6 月号,4,6 参照) 神を第一にしたときに自分の生活から消えていく事柄の例を生徒に挙げてもらう。 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に,近い将来に決断を下すであろう 重要な事柄を 3 つ書くように生徒に言う。それぞれの決断を下す際,正しい優先順位 がどのような影響を及ぼすか生徒に説明してもらう。 父親は生活必需品を提供し,家族を守るという責任を負っている。母親には,子供を養 い育てるという主要な責任がある ある人が自分や家族の必要を満たして養う責任は自分にないと思っていると想定す るよう生徒に言う。その人は他の人が自分と家族に対して責任を負うべきだと信じて いる。 教義と聖約42:42と56:17を生徒とともに読む。質問――なぜ自立は福音の重要な 原則の一つであると思いますか。 黒板に「父親の責任」と「母親の責任」と書く。 クラスを 3 つのグループに分ける。最初のグループには生徒用資料の41ページにあ るゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧告を研究してもらう。第 2 のグループには「家 族――世界への宣言」にある大管長会と十二使徒定員会の言葉と生徒用資料の41ペー ジのスペンサー・W・キンボール大管長の教えを研究してもらう。第 3 のグループに は生徒用資料の42ページのブルース・R・マッコンキー長老の言葉を研究してもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 28 自分自身,家族 , ほ か の 人 々 の 必 要 を 満 た す 各グループの代表者に,割り当てられた資料で教えられている父親と母親の責任を 黒板に書き出してもらう。 次の質問をする。 • 一般的に,父親と母親の責任にはどのような違いがあるでしょうか。 • 黒板に書かれている責任の中で,父親と母親が共有しているものはどれでしょうか。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長の次の言葉を読む。 「何年か前にベンソン大管長が,教会の女性に向けてメッセージを出したこと があります。ベンソン大管長はその中で,教会の女性に,仕事を辞め,子供のた めに時間を使うようにとの勧告を与えました。わたしもベンソン大管長のその勧 告を支持するものです。 しかしながら,ベンソン大管長もそうでしたが,わたしも,家族の生活のため に働かなければならない女性がいることは認めています。実際そのような女性が 非常に増えています。そのような人々に申し上げます。どうか,皆さんの最善を 尽くしてください。フルタイムで働いている皆さんは,基本的な必要を満たすた めにそれをしているのであり,ただ単に,高価な家や自動車,ぜいたくのために 働くようなことのないように望んでいます。母親の最も大切な仕事は,義と真理 のうちに,子供を育て,教え,助け,励まし,養うことです。母親の代わりにな り得るものは,何もありません。 フルタイムの仕事と,専業主婦を両立させるのは,ほとんど不可能なことです。 このことでいろいろと思い悩んでいる女性がいると思います。もう一度申し上げ ます。皆さんの最善を尽くしてください。皆さんは自分の状況を御存じです。わ たしは皆さんが,御自分の子供の幸せを,心から願っていることを承知していま す。皆さんには,助言と助けを与えてくれるビショップがいます。分別をわきま えた女性と話す必要があると感じたときには,ためらわずに,扶助協会の会長に 連絡を取ってください。」(「教会の女性」『聖徒の道』1997年 1 月号,78) 課題の提案 • 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に次の質問の答えを書くように生徒に 言う。 • 良い扶養者になるとはどのような意味だと思いますか。 • 父親と母親では,扶養者の役割はどのように異なるでしょうか。それぞれ何を提供 するでしょうか。 • あなたが自分や家族の良い扶養者となれるように現在していることは何でしょう か。 福音と実りある生活 教師用手引き 29 第 7 章 才能や能力を見いだし,伸ばす 導入 人はそれぞれ異なった才能や能力を携えて地上に生ま れ,それらを現世の生活の中でさらに伸ばしていく。一 部の人は恐れや懐疑心を抱いているために自分が秘めて いる本来の才能や能力に気づかない。生徒が個々の才能 や能力を見極めて,献身,決心,地道な努力によってそ れらを伸ばす決意ができるよう助ける。教会員がそれぞ れの才能や能力を積極的に分かち合うとき,それらの才 能や能力は人々に豊かな祝福をもたらす源となる。 理解すべき原則 • 前世での進歩成長により,わたしたちはそれぞれ独自の才能や能力をあわせ持って地 球に来た。 みたま • 御霊に頼るとき,主はわたしたちが自分の才能や能力に気づき,伸ばせるように助け てくださる。 • 才能や能力を伸ばすために主に助けを求めるとき,主はわたしたちが疑いや恐れを克 服できるように助けてくださる。 • 才能や能力を伸ばすには,個人の努力が欠かせない。 教え方の提案 前世での進歩成長により,わたしたちはそれぞれ独自の才能や能力をあわせ持って地球 に来た 優れた才能や特技を持つ数人の名前を生徒に挙げてもらい,その名前を黒板に書く。 次の質問をする。 • これらの人々のような域まで能力を高めるにはどのくらいの時間がかかるでしょう か。 • 才能や能力は,人に利益をもたらすためにどのような方法で活用できるでしょうか。 • 生まれつき特定の才能や能力に恵まれているように見える人々がいるのはなぜでし ょうか。 十二使徒定員会会員であったブルース・R・マッコンキー長老の次の教えを読む。 「この世では一人一人に才能と可能性が授けられていますが,その才能と可能 性は,前世での生活から,受けるにふさわしいと判断されたものです。律法に従 順であったために前世である種の才能を得た人もいれば,別の才能を得た人もい ます。すべての人は前世で身に付けた才能や能力を現世に携えて来るのです(ア ブラハム 3:22−23)。」( Doctrinal New Testament Commentary,全 3 巻, 〔1966−1973年〕,第 1 巻,688) 福音と実りある生活 教師用手引き 30 才能や能力を見 い だ し , 伸 ば す 生徒に次の質問をする。 • 前世から携えて来た才能を伸ばすことが重要なのはなぜでしょうか。 • 才能は職種を決める際にどのように役立つでしょうか。 • これらの才能を仕事で生かすにはどうしたらよいでしょうか。 • 家族を養う際にこれらの才能を生かすにはどうしたらよいでしょうか。 • 母親が子供を養い育てるうえで特に役立ちそうな才能にはどのようなものがありま すか。 御霊に頼るとき,主はわたしたちが自分の才能や能力に気づき,伸ばせるように助けて くださる 次の質問をする。自分の才能や能力を見極めるにはどうしたらよいでしょうか。次 のような答えが考えられる。 • 自分が得意なことを見つける。 • 両親や友人など他の人に,自分の才能が何だと思うか尋ねる。 • 学校や職場などでよく行われる,関心評価テストあるいは技術評価テストを受ける。 • 書物を読んだり,人を観察したり,人と会話したりすることによって様々な技術や 才能について学ぶ。 • 幾つかの興味ある分野で技術を磨いてみる。その際,その分野にたけていて,助言 や提案ができる人の助けを得る。 • 主の導きを求めて祈る。 • 祝福師の祝福を祈りの気持ちで読み返す。 • 余暇を利用して役立つ技術を探求し,身に付ける。 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に自分が持っている幾つかの才能と それらを今後どのように伸ばせるか書き出すように生徒に言う。 次の分野において優れた技術や才能を持っている人を生徒に挙げてもらい,その人 が印象に残っている理由を説明してもらう。 • 職業技術または専門技術 • 音楽,芸術,その他の才能 • 手工芸または家庭技術 1 ニーファイ 17:7−11,16と18:1−2 を生徒に読んでもらう。 次の質問をする。 • ニーファイが主の用向きを成し遂げるために活用したのはどのような才能や能力で したか。 (あらがねを加工して自分の道具を作ることができた。) • 主はニーファイを助けるために何をされましたか。(あらがねが見つかる場所と船 の造り方を示された。) 主に頼ることにより,ニーファイは自分の才能を使い,伸ばすことができたことを 生徒が理解できるように助ける。 2 ニーファイ 5:15−17を生徒に読んでもらう。 質問――ニーファイが民にこれらすべてのことを行うように教えることができたの はなぜだと思いますか。(以前にこれらの技術について学び,それらを身に付けてい たから。 ) 福音と実りある生活 教師用手引き 才 能 や 能 力 を 見 い だ し , 伸 ばす 31 才能や能力を伸ばすために主に助けを求めるとき,主はわたしたちが疑いや恐れを克服 できるように助けてくださる モーセ 6:31を生徒に読んでもらう。黒板に次の目盛りを描く。 (不安)1−2−3−4−5−6−7−8−9−10(自信) エノクが自分の能力について感じていた気持ちはどの目盛りあたりか生徒に選んで もらう。(おそらく小さな数値を選ぶ。)自分にはやり遂げられない,あるいはうまく できないと感じる課題に直面したときの経験を生徒に分かち合ってもらい,そのチャ レンジにどのように対処したか説明してもらう。 一人の生徒に,モーセ7:13を読みエノクの功績を見つけてもらう。 そのときにエノクが感じていた自信はどの目盛りのあたりだったか生徒に選んでも らう。エノクの自信に変化を与えたのは何だったと思うか生徒に尋ねる。 一人の生徒にモーセ6:32−34を読んでもらう。次の質問をする。 • 主はエノクが恐れや疑いを克服できるよう,どのように助けられましたか。 • これらの聖句に含まれている原則のうち,わたしたちに自信を得させ,生活で実践 できるのはどのようなものでしょうか。 次の状況にいた場合,どのような助言を与えるか生徒に尋ねる。 1.ある若い男性または女性が実りある伝道を完了して自信を付けた。しかし,帰還 してからは有意義な仕事を見つけたり,教育を受けたりするために必要な自信を 持てない。 2.ある若い神権指導者は教会の召しと教育のバランスをどのように図ったらよいか 悩んでいる。 3.ある若い夫婦は家族を支えるための経済力が足りないことを心配している。 黒板に次の言葉を書く。 「あきらめてはならない」,「やめてはならない」 次の経験を紹介する。 十二使徒定員会会員のジェフリー・R・ホランド長老は,若いころに家族を連れて ユタ州セントジョージからマサチューセッツ州ボストンまで合衆国を横断して旅した ときのことをこのように語っている。長老はボストンで大学院に通うことになってい た。わずか34マイル(約55キロ)進んだところで車が故障した。ホランド長老は妻の パットと幼い二人の子供を車に残し,助けを呼ぼうと近くの町まで歩いた。助けを得 て車を修理し,セントジョージで検査してもらった後に再び出発した。ところが,車 は最初に故障した地点からわずか15フィート(約 4 . 6 メートル)のところで再び故障 してしまった。 それから30年たち,子供たちは大人になりもう結婚していた。ある日,ホランド長 老と妻は長老が助けを呼びに家族を残して行ったまさにその場所を車で通りかかっ た。あの日の出来事を振り返って,ホランド長老は落胆している若かりしころの自分 が心に思い浮かんだと言う。ホランド長老はこう述べている。「心なしか肩を落とし た彼の足取りには,若き父親の不安が重くのしかかっているようでした。……わたし はその想像の場面で,こう声をかけずにはいられませんでした。『あきらめるな。や めちゃいけない。歩くんだ。頑張って。助けも得られるし幸せにもなれる。30年そう だったし,これからもそうだ。顔を上げて。必ず良くなる。神を信頼して,祝福が来 ることを信じるんだ。』」(「『すでに現れた約束の大祭司』」『リアホナ』2000年 1 月号, 44) 福音と実りある生活 教師用手引き 32 才能や能力を見 い だ し , 伸 ば す 質問――あきらめないことは疑いや恐れを克服するうえでどのように役立つでしょう か。 生徒用資料の47ページにあるゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧告を一人の生徒 に読んでもらう。質問――ヒンクレー大管長の勧告の中であなたが感銘を受けたこと は何でしたか。 才能や能力を伸ばすには,個人の努力が欠かせない あなたが尊敬している人の写真を見せ,その人の才能が優れていると思う理由を説 明する。スポーツ選手,ピアニスト,指導者,その他の偉人の写真を見せてもよい。 地元の新聞紙は,例として用いる人の写真を入手するうえで役立つ。次の質問をする。 • このような人々はどのようにしてそれぞれの技能を身に付けたのでしょうか。(た いていの場合,多大な練習と努力による。) • 才能を伸ばすうえで努力と練習はどのような役割を果たすでしょうか。 • 一生懸命練習すれば,だれでもピアニストになれるのでしょうか。なぜでしょうか。 • 使わない才能,伸ばさない才能はどうなるでしょうか。 大管長会の顧問であったジェームズ・E・ファウスト管長の次の言葉を読む。 「グラント大管長には,好んで引用し,座右の銘にしていたラルフ・ウォル ド・エマソンの言葉があります。『継続して行う事柄は,容易に行えるようにな る。それは物事の性質が変わるからではなく,わたしたちの力が増すからであ る。 』 」 ( 「自制の力」『リアホナ』2000年 7 月号,55) グラント大管長の生涯における次の二つの話は,彼が元はあまり秀でていなかった 分野で技術を身に付けるまでの過程を描写している。 • ヒーバー・J・グラントは子供のころ,スポーツをほとんどしたことがなかった。 野球チームに入ったものの,年下の選手とプレーさせられた。グラント大管長はこ のように説明している。 「一つの理由は,塁から塁まで投球が届かなかったことでした。また,走ったり バットを振ったりするだけの体力がないことも原因でした。わたしがボールを取る と,仲間は大声でこう言ったものです。『ここまで投げてみろよ,弱虫!』このよ うにいつも仲間から笑い者にされていたわたしは,いつかはユタ準州の大会でチー ムのレギュラーとして優勝してみせると心に誓ったものでした。 当時,母は家に下宿人を置いていました。わたしは彼らの靴磨きをしてお金をた め,野球のボールを買いました。そして近所……の納屋の壁に向かって何時間もボ ールを投げました。……長い時間ボールを投げすぎて腕が痛くなり,夜眠れないこ ともしばしばありました。しかし,わたしはさらに練習に練習を重ねました。そし てついにチームの二軍に入ることに成功しました。続いてさらに上級のチームに入 り,最終的にあるチームのレギュラーとして準州で優勝しました。こうして,わた しは自分に誓った約束を果たし,野球から引退しました。」(“Work, and Keep Your Promises,” Improvement Era,1900年 1 月号,196−197) • 若い男性のころ,ヒーバー・J・グラント大管長は「いつかウェルズファーゴ銀行 の簿記係になると心に決めた」。当時,銀行のすべての記録と取引はペンで記され ていて,優秀な簿記係の必須条件の一つに字がきれいであることが入っていた。こ 福音と実りある生活 教師用手引き 才 能 や 能 力 を 見 い だ し , 伸 ばす 33 の仕事を獲得し,約束を果たすうえで最初にグラント大管長が目指したことは上手 に字を書くことだった。こうして彼は筆記者になる努力を始めた。 「彼は字を書くのがとても苦手で,あるとき友達の二人が彼の字を見るなり, 『ひよこの足跡みたいだ』と言い,『そうじゃないよ,インク瓶に雷が落ちたような 字だ』ともう一人がからかうほどでした。もちろん,このような言葉に若いヒーバ ー・グラントのプライドは傷つきました。彼は机をこぶしでたたき,このように言 いました。 『いつか君たちに字の書き方を教えられるようになってみせる。』…… 10代の若さでH.R.マン株式会社で保険証券書記として働いていたヒーバーは,3 倍の賃金を提示され,筆記者としてサンフランシスコに来るよう誘いを受けました。 彼は後にデゼレト大学(ユタ大学)で,習字と簿記を教えました。」(ブライアン・ S・ヒンクレー,Heber J. Grant: Highlights in the Life of a Great Leader〔1951年〕, 39−40) ヒーバーが19歳になったときには,ウェルズファーゴ銀行で働くという目標をか なえていた。 (ヒンクレー,Heber J. Grant,42参照) たまもの ほとんどの成功が地道な努力の賜物であるのはなぜでしょうか。 自分の才能や能力を伸ばすよう生徒を励ます。ゴードン・B・ヒンクレー大管長の 次の言葉を読む。 「わたしが皆さんのために願うとすれば,皆さんの人生が実り多いものとなり, 皆さんが献身的に惜しみなく奉仕をし,皆さんの貢献によってこの世が知識と幸 みまえ 福で満たされるようになること,そしてそのような奉仕や貢献を,主の御前にあ けんそん って謙遜に忠実に行ってほしいこと,それ以上にはありません。主は皆さんを愛 しておられます。わたしたちも皆さんを愛しています。わたしたちは皆さんに, 幸福になり,成功し,皆さんが生活する世の中に対して,またこの偉大で厳かな 主の業を推し進めるに当たって,重要な貢献をしていただきたいと思っていま す。 」 ( 「若人への預言者の勧告と祈り」『リアホナ』2001年 4 月号,40−41) 課題の提案 • 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」の欄に自分の才能や能力であると思うこと を書き出すか,あるいは読み直すように言う。それから生徒自身が尊敬している人に, その生徒にどのような才能や能力があると思うかを挙げてもらうように勧める。二つ の一覧表を比較してさらに集中して伸ばしたい二つの才能または能力を見つけるよう に言う。 • 生徒が自分の才能や能力を見つけた後,有意義な仕事につながると思うものを見極め るように生徒に言う。そして次の質問をする。もし見つけた才能や能力が職業技術に 直接結びつかない場合,職場で前向きな雰囲気を作り出す助けになるものはあるでし ょうか。それはどのように役立ちますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 34 第 8 章 だれでも地上における神の王国の建設を助け ることができる 導入 教会員はだれでも神の王国を築くためにでき ることがある。その最も良い場所が自分の家庭 であり,ワードであり,ステークである。主に 仕えるときに, どこで 仕えるかではなく, どの ように 仕えるかが大切であることを生徒が理解 するように助ける。どのようなレベルであって も,王国の業に熱心に携わることにより,わた したちの人生は祝福され,さまざまな状況にお いて成長することができる。 理解すべき原則 • わたしたちは義にかなった生活を送ることによって,神の王国建設を助けることがで きる。 • 個人と家族は教会の活動によって強められる。 • わたしたちはどこにいても喜んで奉仕するべきである。 • 祝福は神の王国で奉仕するときにもたらされる。 教え方の提案 わたしたちは義にかなった生活を送ることによって,神の王国建設を助けることができ る。 「神の王国」と黒板に書き,生徒に神の王国とはどのようなところであると考えて いるか言ってもらう。一人の生徒に生徒用資料の第 8 章の「導入」52ページを読んで もらう。 以下にあるゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧めを読む。 「この教会の会員はどこにいようとも,力強く自分の足で立ち,心に歌を忘れ ずに前進し,福音に生き,主を愛し,王国の建設に励むようにお勧めします。と もにこの道を歩み続け,信仰を保ち,全能者を力の源としていこうではありませ んか。 」 ( 『リアホナ』1996年 1 月号,78) 質問――教会の成長にとって,会員一人一人の働きが重要なのはなぜですか。 福音と実りある生活 教師用手引き だれでも地上における王国建設を助けることができる 35 教会を強める助けとなる教会員の態度と行いにどのようなものがあるか挙げてもら う。答えを黒板に書く。答えには次のようなものが考えられる。 • 幸せでいる。 • 前向きでいる。 • 毎日祈り,聖文を研究する。(ヨシュア 1:8〔マスター聖句〕参照) • 罪を悔い改める。( 教義と聖約58:42−43〔マスター聖句〕参照) • 神殿の推薦状を受けるふさわしさを保つ。 • 預言者の勧告に耳を傾ける。( 教義と聖約1:38〔マスター聖句,教義と聖約1: 37−38〕参照) • 教会の召しを忠実に果たす。 じゅうぶん • 正直に,また,完全に什分の一を納める。(マラキ3:8−10〔マスター聖句〕参照) • 教会の集会に出席する。 • 家庭の夕べを行う。 質問――黒板に挙げた態度や行いはそれぞれ,どのように教会を強めるでしょうか。 質問――神の王国の会員として,わたしたちはどのような方法で自分自身を強めるこ とができますか。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長は青少年と独身成人に向けた話の中で,わたした ちが直面する難しい課題に立ち向かううえで助けとなる 6 つの方法を挙げたことを説 明する(「若人への預言者の勧告と祈り」『リアホナ』2001年 4 月号,33)。その 6 つを 黒板に書き,預言者の勧告一つ一つについて,例や意見を生徒に発表してもらう。 1.感謝する人になりましょう。 2.知性を備えた人になりましょう。 3.清い人になりましょう。 4.誠実な人になりましょう。 けんそん 5.謙遜な人になりましょう。 6.よく祈る人になりましょう。 個人と家族は教会の活動によって強められる 一人の生徒に生徒用資料の53ページのトーマス・S・モンソン管長の話を読んでも らい,質問する。 • 「燃える炭」は教会の活動とどのように関連付けられますか。 • 活発な教会員となり,主と交わした聖約に忠実に生活するためには何ができますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 36 だれでも地上における王国建設を助けることができる エズラ・タフト・ベンソン大管長が示した以下の項目を紹介し,話し合う(オーバ ーヘッドプロジェクターを使っても,リストを書いたプリントを配ってもよい)。 「1.わたしたちは人々の前にイエス・キリストの福音の「光」となる必要があり ます。…… 2.福音のメッセージを人々に伝える機会を見つけなければなりません。…… 3.わたしたちはできることをすべて行い,自分の息子や孫息子が伝道に出る準 備ができるようにすべきです。…… 4.家庭を愛と一致のある『避け所』にしてください。…… 5.神殿の祝福と儀式を受けるように努めなければなりません。…… 6.わたしたちは,亡くなった親族のために神殿の儀式を行う義務があります。 …… 7.家族として自立できるように努めなければなりません。…… 8.神権者は,組織されたホームティーチングを通して,定員会会員とその家族 を見守り,心を配る必要があります。…… 9.教会のプログラムや活動に参加しなければなりません。安息日を聖日として 守り,集会に出席し,与えられた召しを受け入れ,全力を尽してその召しを 果たしてください。…… 10.成人会員は全員,什分の一を完全に納め,断食献金を惜しみなくささげるよ うにしてください。」(「『くい』を強めよ」『聖徒の道』1991年 8 月号, 3−6 ) ベンソン大管長が挙げたこれらの項目の中から 3 つ選び,2−3 週間それぞれの分野で 向上できるように努めることを提案する。向上するために何をするかを計画し,それ を生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に記入してもらう。翌週,生徒に自分た ちの経験を発表するよう促す。 わたしたちはどこにいても喜んで奉仕するべきである 一人の生徒に,モーサヤ 2:17(マスター聖句)を暗唱するか,読んでもらう。その 聖句が自分たちにとってどのような意味があるか生徒に説明してもらう。 教会の初期の時代,主は聖徒たちにオハイオ州カートランド,ミズーリ州ジャクソ ン郡,イリノイ州ノーブー,またユタ州など,教会の中心となる場所に集合すること を求められた。 質問――現在,教会の会員はどこに集合すべきでしょうか。 この質問の答えの助けとして,1999年12月 1 日に大管長会から出された手紙で発表 された声明を紹介する。これは教会員がそれぞれ自分の国で教会の建設に携わること の重要性に関して,神権指導者に対し長年与えられてきた勧告を再確認するものであ る。 「世界中の会員がそれぞれの自国にとどまって自国における教会の建設に努め るとき,個人に対し,また教会全体に対して大いなる祝福がもたらされます。世 界中のステークとワードが強められ,その結果,さらに多くの天の御父の子供た ちに福音の祝福を分かち合うことができるようになります。 福音と実りある生活 教師用手引き だれでも地上における王国建設を助けることができる 37 皆さんがこの勧告に聞き従い,自国の教会のユニットと地域社会を強めるため に働くとき,世界中の教会員が祝福されることをわたしたちは確信しています。」 ( “Counsel about Immigration,”Ensign,2000年 3 月号,79) 質問――自分の国に神の王国を築くことはなぜ大切なのでしょうか。 十二使徒定員会会員であったブルース・R・マッコンキー長老の声明を読む。 「シオンのステークも地の果てにまで組織されつつある。これに関連して,次 の真理を考えてみようではないか。シオンのステークはシオンの一部である。シ オンの一部を作らずに,シオンのステークを作ることはできない。シオンは「心 の清い者」である。わたしたちはバプテスマと従順によって清い心を得る。ステ ークは地理的な範囲を持つ。ステークの創立は聖都の建設に似ている。地上のス テークはどれもみな,その地域に住むイスラエルの失われた羊たちの集合場所で ある。 ペルー人の集合の地は,ペルーのシオンのステーク,もしくは将来ステークと なる場所である。チリ人の集合の地はチリ,ボリビア人の集合の地はボリビア, 韓国人の集合の地は韓国,東西南北,全世界を通じて集合の地はそのような場所 である。各国に散らされたイスラエルはキリストの羊の群れに,各国に建てられ るシオンのステークに呼び集められている。 そのため,教会の指導者たちはこう勧告する。シオンを築きなさい。神があな たを置かれたその国に,シオンを建てなさい。あなたをその市民とし,家族と友 を与えられた,その地にシオンを築きなさい。シオンは南米のこの地にある。こ の地のシオンに住む聖徒たちは,これらの諸国に良い影響を及ぼすのである。 みわざ 神は,御業の発展を促す政策を進める国を祝福されることを知りなさい。」 ( 「シオンの建設」『聖徒の道』1977年 9 月号,402−403) 次の質問をする。 • マッコンキー長老はシオンについて何を教えていますか。 • 「良い影響を及ぼす」とはどういう意味ですか。 • どのようにしたら教会がそれぞれの国で良い影響を及ぼすことができますか。 生徒に,支部やワード,ステーク,あるいは地域社会において良い影響を及ぼして いる教会員を知っていたらその人たちについて話してもらい,その人たちがどのよう に変化を生じさせ,人々に祝福を与えているかを話してもらう。 祝福は神の王国で奉仕するときにもたらされる 生徒用資料の54−55ページにあるデレク・A・カスバート長老の話を読んでもらう。 奉仕の祝福にはどのようなものがあるか尋ねる。生徒に自分の経験を話してもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 38 だれでも地上における王国建設を助けることができる 課題の提案 • もっと正しく生活するために,具体的に生活のどの部分を変えることができるか生徒 に尋ねる。 • 生徒に,自分の住んでいる場所で主の王国を築く方法を 3 つ挙げ,生徒用資料の「メ モと印象に残った事柄」欄に列挙してもらう。実際に達成することができるような具 体的な目標を立てるように促す。 福音と実りある生活 教師用手引き 39 第 9 章 主の道にかなって自立する 導入 「教会の初期の時代から,預言者が末日聖徒に教え てきたことは,自立と自給であり,そして,怠惰を避 けることであった。真の末日聖徒ならば,自活する責 任を自らの意思で他人に転嫁するようなことはしない。 能力があるかぎり,自分と家族のために生活必需品を 自給するはずである。」(『福音の原則』180) 主の方法によって自立する力をつける必要があることを生徒が理解できるように助け る。自立が身に付くにしたがって主への信仰は増し,日々主の助けを求めるようになる。 主の助けと,主から与えられた様々な資源と才能をバランスよく使うことによって,わ たしたちは自らの必要を賄えるようになり,また,ほかの人々を助けることができるよ うになる。 理解すべき原則 • 義にかなった自立には救い主への信仰と信頼が含まれる。 • 福音はわたしたちが物質的に自立し,霊的に成長して,ほかの人々も同様の祝福にあ ずかれるよう助けることについて教えている。 • わたしたちは自らを向上させる責任がある。 • 自立とは様々な分野で技術と能力を伸ばすことである。 教え方の提案 義にかなった自立には救い主への信仰と信頼が含まれる イエス・キリストの絵を見せる。生徒が自分ではできなかったことで,主が彼らの ためにしてくださった事柄の例を挙げてもらう。次の聖句の中から幾つかを生徒と読 み,わたしたちが主に依存していることに関してそれらの聖句が何を教えているか, 生徒に説明してもらう。 • 箴言 3:5−10(マスター聖句,箴言 3:5−6 ) • 2 ニーファイ 4:34 • 2 ニーファイ 9:42−43 上記「導入」の最初の段落を生徒とともに読む。「自立」と黒板に書く。生徒用資料 の59ページにあるブルース・R・マッコンキー長老の自立の定義を読む。マッコンキ ー長老が「自立」という言葉をどのように説明しているかを探すように言う。 何かを率先して行い,その努力に対して主の助けを得た経験を発表するように言う。 (例:問題をよく検討し,その結果に基づいて下した決定事項に対して主から確認を 福音と実りある生活 教師用手引き 40 主の道にかなっ て 自 立 す る 得た経験。可能な限り最高の職業訓練を受けた後,主の導きにより適切な職を得た経 験。家族を支えるために正直に働き,それで得た収入の賢い使い方に関して主の助け を受けた経験,など) 福音はわたしたちが物質的に自立し,霊的に成長して,ほかの人々も同様の祝福にあず かれるよう助けることについて教えている 黒板に「1847年 7 月24日」と書く。教会歴史におけるこの日付の持つ意味を生徒に尋 ねる。(ブリガム・ヤング大管長と彼の最後の開拓団がグレート・ソルトレーク盆地 に入った。)ソルトレーク盆地に到着した聖徒たちは懸命に働いて未開の土地を豊か な定住地に変えた。大管長会顧問(当時)であったゴ−ドン・B・ヒンクレー大管長 が開拓者の様子を記した文を読む。 「彼らはミズ−リ川から,今なら飛行機で 2 時間の距離を 3 か月かけて旅をし ました。必要なことをする力が自分たちにはあるはずだ,という信仰をもって仕 事に取り掛かりました。自立の考えを持っていたのです。援助をしてくれるはず の政府はありませんでした。確かに天然資源はありました。しかし,それを見つ け,加工するのは彼ら自身でした。……彼らには根気よく身に付けてきた技術が あり,石や木材を加工し,しっくいを作って壁に塗り,窓ガラスをはめました。」 ( “The Faith of the Pioneers” Ensign, 1984年 7 月号,3) 初期の開拓者が盆地に入植して100年近くたったころ,深刻な経済恐慌が世界を襲 い,非常に多くの失業者が出ていた。そこで,大管長会は教会の福祉プログラムを組 織した。 教会福祉の基本原則を紹介しているヒーバー・J・グラント大管長の声明を読む。 「わたしたちの第一の目的は,可能なかぎり,忌まわしい怠惰や施しのもたら す悪弊を除去し,独立心,勤勉,倹約,自尊心を再びわたしたちの間に確立する 体制を築くことです。教会の目的は,人々の自立を助けることにあります。労働 が再び教会員の生活を貫く原則にならなければなりません。」 (Conference Report, 1936年10月,3 ) 次の質問をする。 • 教会の福祉プログラムは自立について何を教えていますか。 • 貧困の世代を克服するために,自分自身でできることには何があるでしょうか。 • 良い収入を得られる仕事を探すことはなぜ正しいのでしょうか(自分自身と家族を 養うことができるから)。 生徒用資料の64ページの「応用と事例」の事例を生徒と読み,その後に書かれてい る質問に答えてもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 主の道にかなって自立する 41 生徒用資料の60ページにあるスペンサー・W・キンボ−ル大管長が述べた二つの話 を生徒と読む。 次の質問をする。 • 労働の祝福は何ですか。 • 「労働は教会員の生活を貫く原則にならなければなりません。」という言葉はあな たにとってどのような意味がありますか。 わたしたちは自らを向上させる責任がある 質問――わたしたちの生活の中で個人の責任が大切なのはなぜですか。 「わたしたちには自分自身を向上させる責任がある」と黒板に書く。 クラスを 4 つのグループに分ける。生徒用資料の62ページにある預言者ジョセフ・ スミス,ロバート・D・ヘイルズビショップ,ラッセル・M・ネルソン長老, ジョセ フ・B・ワースリン長老の話を一つずつグループに割り当てる。各グループに,黒板 に書かれたテーマで 2 分間の話を準備するように促す。その際,割り当てられた生徒 用資料にある話の内容を盛り込むように言う。グループの代表者に話を発表してもら う。 自立とは様々な分野で技術と能力を伸ばすことである 次の分野を黒板に書く。 1.教育 2.健康 3.職業 4.財政管理 5.社会的,情緒的,霊的な力 生徒に,教育によってさらに自立できるようになる方法を挙げてもらう。次に,生 徒用資料の62ページの「教育」の項を読んでもらう。 黒板に挙げた 5 つの分野について同様の事を行う。 課題の提案 はんりょ • 生徒に,自分に必要なものについて祈り,また,親,伴侶,信頼する友人,教師など と一緒に適切な目標について話し合うように勧める。教育,健康,職業,財政管理, そして社会的,情緒的,霊的な力,それぞれ 5 つの分野について一つ,あるいは複数 の目標を書くように促す。目標を書いたものを頻繁に見ることのできる所に置くよう に勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き 42 第10章 研究と信仰によって学問を求める 導入 主は,「研究によって,また信仰によって学問を求め」るべ きであると教えられた(教義と聖約88:118)。霊的なこと, 世俗的なこと,その両方について,わたしたちが知識を求め るとき主は祝福してくださる。教育は様々な機会を得るため かぎ の一つの鍵であり,生涯を通して得るべきものである。また, 家族を養い,教会や地域社会に貢献する準備となる。自分自 身を向上させ,さらなる教育を得るために,いろいろな機会 を利用すべきであることを生徒が理解できるように助ける。 学んだり,人々と分かち合うべきわくわくするような新たな 真理は常にあるものである。 理解すべき原則 • • • • • わたしたちは知識と知恵を求めるべきである。 霊的な知識はこの世的な知識よりも大切である。 かぎ 教育は機会の扉を開けるための鍵である。 主はよりよく人に仕えるために役立つ学問の分野へとわたしたちを導いてくださる。 学問は生涯を通じて追求すべきものである。 教え方の提案 わたしたちは知識と知恵を求めるべきである 生徒と以下の質問について話し合う。 • 知識と知恵の違いは何ですか。(知識とは事実や考えや原則を暗唱したり,理解す る能力に関わるものであり,一方,知恵とは人々の利益になるように知識を的確に 活用することである,という考えを反映した答えが出るであろう) • 教育は知識や知恵を得るのにどのように役立ちますか。 以下に挙げるゴードン・B・ヒンクレー大管長の言葉を分かち合う。 「人は教育を追求すべきであると,わたしは信じています。教育とは何でしょ うか。最も簡潔に定義するならば,教育とは心と体の訓練です。……教育は人を 改宗に導く大いなる変化の過程であって,抽象的な知識を実用的で生産的な行動 に変えるものです。そこに終わりはなく……どんな高齢になろうとも,わたした ちは知識を得,それを活用することができます。知恵を得,そこから恩恵を受け ることができるのです。」(Teachings of Gordon B. Hinckley〔1997年〕,170) 福音と実りある生活 教師用手引き 研 究 と 信 仰 に よ っ て 学 問 を 求 める 43 質問――神と人に仕えようとするとき,より高い教育を身に付けることでどのような 助けが得られますか。 生徒用資料の67−68ページにある,ヘンリー・B・アイリング長老が教育の機会を 逃した経験を読む。 質問――アイリング長老の勧告の要旨は何ですか。 生徒に教義と聖約88:77−80を読んでもらう。質問――79節には学問のどのような 分野について述べてありますか。(天文学,地理,歴史などの答えが出るであろう) 十二使徒定員会会員であったジョン・A・ウイッツオー長老の次の教えを読む。 「長老たちは,神学だけでなく,次のような分野にも関心を向けて研究しなけ ればならない。 天のこと――天文学 地のこと――耕作に関するすべての事柄 地の下のこと――鉱物学,地質学など かつてあったこと――歴史全般 すぐにも必ず起こること――預言 国内にあること,国外にあること――自国の政治,外国の政治 戦争と諸国民の混乱,地上にある裁き――時のしるし,これによって主の日が 近いことを知ることができる。 国々と王国に関する知識――自然地理学,政治地理学,言語など 主は,わたしたちがこれらの事柄についても学ぶ必要があると考えておられる しもべ (教義と聖約88:80)。神は,すべての僕が博士や教授になるように求めたり,あ るいは上記の各分野において深い学識を身に付けなければならないと言っておら れるわけではない。世の人々に対する神の使者としての召しを立派に果たすため に,必要な知識を身に付けておくようにと望んでおられるのである。」 (Priesthood and Church Government in The Church of Jesus Christ of Latter- day Saints〔1939年〕,55−56参照) 質問――幅広い分野を研究することにどのような価値がありますか(教義と聖約88: 80参照) 。 2 ニーファイ 9:28−29(マスター聖句)を読んで話し合う。それから次の質問をする。 • 学問はどのように役立ちますか。 • 学問はどのように害になりますか。 一人の生徒に,非常に空腹だったときや,のどが渇いたときの経験を話してもらう。 質問――空腹やのどの渇きを満たしたものは何ですか。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長の次の言葉を読み,わたしたちが何に対して飢え 渇いてほしいと大管長が願っているかに注目するように言う。 福音と実りある生活 教師用手引き 44 研究と信仰によ っ て 学 問 を 求 め る 「ただ生きているだけ,存在しているだけでは不十分です。この教会のすべて の会員には果たすべき義務があります。社会にあって何かしら価値あることを成 し遂げるための能力を身に付けるようにという主の御命令があるのです。地の中 のこと,地表のこと,地の上のこと,戦争と諸国民の混乱について,すべての時 の地のあらゆる事柄について,研究と信仰によって教育を受けるべきであると主 は 教義と聖約の中で非常に明確に述べておられます(教義と聖約88:79参照)。 どんよく 教会の若い方々に,貪欲に教育を身に付けるよう強く勧めたいと思います。将来 の仕事に備えて心と技術を磨き,自分の属する社会に貢献することで,皆さんは みこころ 主の御心を行う人になるのです。そのために犠牲を払ってください,努力してく ださい,貯金をしてください,計画してください。そして,御心を行ってくださ い。 」 (Teachings of Gordon B. Hinckley, 172) 質問――教育を受けたいという気持ちを満たすために何をすべきであるとヒンクレー 大管長は言っていますか。 十二使徒定員会のヘンリー・B・アイリング長老の言葉を読み,そこで使われてい る「飢え渇く」という言葉に注意する。 「その変化を受けると,教育に対して飢え渇く気持ちが生まれます。しかし, それはわたしたちの動機次第で祝福とも呪いともなるのです。神と神の子らにい っそうの奉仕をするために学問を求めるならば,それは大きな価値のある祝福と なります。これに対して,自分だけのために学問を求めるならば,それは利己心 や高慢につながり,永遠の命から遠ざかってしまいます。」(Education for Real Life〔ヤングアダルトへの説教,2001年 5 月 6 日〕,2 ) 質問――教育に対する渇きを正しく満たすために何をすべきでしょうか。 霊的な知識はこの世的な知識よりも大切である 次の例を読む。 ホアンは18歳で,エンジニアになることに興味を持っています。伝道に出ることに ついて真剣に考えましたが,いつにするかまでは分かりませんでした。彼が19歳にな るのは,エンジニアになるための基礎コースが始まる前です。勉学を遅らせて伝道に 出るべきなのか,必須コースを終了してから伝道に出るべきなのか迷っています。 次の質問をする。 • 伝道を延期することで,どのようなリスクが生じると考えられますか。 • あなたはホアンにどのような助言をしますか。またその理由は何ですか。 当時十二使徒定員会会員であったスペンサー・W・キンボール長老の言葉を読む。 「愛する若人の皆さん,なぜ霊的な訓練を最優先させなければならないのか, なら お分かりでしょうか。なぜ信仰をもって祈り,救い主に倣って生活を完全なもの にする必要があるのでしょうか。この世においても,永遠の世界にあっても,霊 的な知識をこの世の知識によってさらに確かなものにすることができるでしょ 福音と実りある生活 教師用手引き 研 究 と 信 仰 に よ っ て 学 問 を 求 める 45 う。しかし,霊的な知識の基礎を欠くこの世の知識は,水に浮かぶ泡やうつろい やすい影のようにはかないものであることがお分かりでしょうか。 欺かれてはなりません。これは二者択一の問題ではなく,優先順位の問題なの です。両者を並行して学ぶことができるからです。しかし,高校の授業科目より もセミナリーの勉強を優先して行う必要があることが,お分かりでしょうか。同 じように,大学の授業よりもインスティテュートを,人が書いた教科書の勉強よ りも聖典の勉強を,各種のクラブや社交団体よりも教会との接触を,授業料や学 じゅうぶん 費よりも什分の一の支払いを,優先させるべきであることがお分かりでしょうか。 神殿の儀式は,博士号やそのほかのどのような学位よりも大切であることが, お分かりでしょうか。」( “Beloved Youth, study and Learn,” Life’ s directions に 収録〔1962年〕,190) 次の質問をする。 • 学問の優先順位についてキンボール長老は何と教えていますか。 • 救い主に関する知識はどのようにしてこの世の知識をより確かなものにするでしょ うか。 当時十二使徒定員会会員であったゴードン・B・ヒンクレー長老の言葉を読む。 「イエスは言われました。『わたしに学びなさい。…… わたしのくびきは負いやすく,わたしの荷は軽いからである。』」(マタイ11: 29−30) 神の御子が与えられた命令に従うようお勧めしたいと思います。あなたは学問 を修めるだけでなく,その過程において全力で救い主について学んでください。 あなたが学習する中で,全力で主に関する知識を求めてください。その知識はこ の世の学問をすばらしい方法で補い,ほかではなし得ない方法であなたの生活と 人格を全きものにしてくれるでしょう。」 (Conference Report, 1964年10月,118) 生徒に教義と聖約88:118を読んでもらう。 霊的な勉強とこの世の勉強のバランスをうまく取っている人を知っていたら,その 人がどのような人か説明してもらう。 かぎ 教育は機会の扉を開けるための鍵 である 鍵を見せる(あるいは,鍵の絵を黒板に描く)。 質問――扉に鍵がかかっているのに,鍵がなかったらどうなりますか。 「教育は機会を得る鍵である」と黒板に書く。 質問――教育が鍵と似ているとはどういうことですか。 (教育があれば開かれる機会も, なければ開かれることはない) 福音と実りある生活 教師用手引き 46 研究と信仰によ っ て 学 問 を 求 め る ゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧告を読む。 「若い兄弟姉妹の皆さんが可能なかぎり教育を受けることは非常に大切なこと です。主は民が教育という過程を通じて,研究と信仰により,国々や王国,世界 に関する知識を得るべきであると,実に明快に述べておられます。教育は皆さん にとって,機会という扉を開ける鍵です。犠牲を払ってでも受けてしかるべきも の,取り組む価値のあるものです。皆さんが精神と技術の両方を鍛えるならば, 属する社会に大いなる貢献をすることができ,皆さんの模範は属するこの教会に も栄誉を与えることになるでしょう。愛する兄弟姉妹の皆さん,受けることので きる教育の機会をすべて活用してください。」(「霊感を伝える言葉」『リアホナ』 1999年 6 月号,4−5 ) 次の質問をする。 • 技術を鍛えるとはどういう意味だと思いますか。 • 教育や技術を通してどのような機会を得たいですか。 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に,生徒が身に付けたい教育や技術を書 くための時間を取る。 主はよりよく人に仕えるために役立つ学問の分野へとわたしたちを導いてくださる 次のヘンリー・B・アイリング長老の言葉をオーバーヘッドプロジェクターで見せ るか,あるいはプリントを配り,一人の生徒に読んでもらう。別の生徒にアイリング 長老が語っていることを自分の言葉で要約してもらう。 「皆さんの生活はわたしの場合と同じく,注意深く見守られています。主が皆 さんにしてもらう必要のある事柄,また,皆さんが知らなければならない事柄の 両方を主は御存じです。主は思いやりにあふれた御方であり,すべてを御存じの 御方です。ですから,奉仕に備えて学ぶための機会は,皆さんのためにすでに主 が用意しておられることは確かです。わたしもそうでしたが,その機会をはっき りと認識することはないでしょう。しかし,霊に関する事柄を第一にする生活を 送るならば,祝福されてある一定の学問に導かれているのを感じるようになり, もっと努力しようとする気持ちがかきたてられるようになります。後になって, 奉仕の能力が向上していたことを知り,感謝することでしょう。」(Education for Real Life,3−4 参照) 次の質問をする。 • 主が皆さんに将来与えようとしておられる機会に,自分自身を確実に備えるために は何ができるでしょうか。 • どんな決断を下す際にも霊感を受けることができるよう備えるうえで,毎日聖文を 読むことはどのような助けとなるでしょうか( 2 ニーファイ32:3−5〔マスター聖 句,2 ニーファイ32:3 〕参照)。 • 救い主の教えが具体的な決断を下す助けとなった最近の例は何ですか。 一人の生徒に生徒用資料の70ページにあるハワード・W・ハンター大管長の言葉を 読んでもらう。 福音と実りある生活 教師用手引き 研 究 と 信 仰 に よ っ て 学 問 を 求 める 47 学問は生涯を通じて追及すべきものである 質問――生涯,学問を得る努力をしなければならないのはなぜですか。 当時十二使徒定員会会員であったゴードン・B・ヒンクレー長老の勧告を読む。 「兄弟姉妹の皆さん,皆さんが30歳であろうと,70歳であろうと,知識を得る ことを怠らないでください。そのように努力していると,望む以上に年月は早く 過ぎていくでしょう。しかし,その歳月は純粋ですばらしい喜びにあふれ,その 結果人生はいっそう味わい深いものとなり,あなたの教えには力が加わります。 さらにそのうえに,『わたしたちがこの世において得る英知の一切は,復活の時 にわたしたちとともによみがえる』という約束も得るのです(教義と聖約130: 18) 。 」 (Four Imperatives for Religious Educators〔1978年 9 月15日に行われた宗 教教育者のための説教から〕,2 ) 正規の教育を受けた後も長く利用できる図書館,学校,また教育の機会などについ て話し合う時間を取る。地元にある様々な学校や,訓練センターなどの情報が出るか もしれない。 質問――どのように生涯学習を続けるかを決定するうえで,地域社会の中ではだれが 助けを与えてくれますか。 生徒に,一生を通じて学び続けた人について発表してもらう。 課題の提案 • このレッスン中に書き留めたメモの中から,会得したい技術,または教育に関する目 標を一つ選ぶよう生徒に促す。クラスが終わってから,その目標を達成するために重 要な決定をするうえで,支援してくれる人と自分の目標について話し合うよう勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き 48 はんりょ 第11章 永遠の伴侶を選び,永遠の伴侶となる 導入 結婚の新しくかつ永遠の聖約に入ることは,日の栄えの 王国における最高の階級を得るうえで欠かすことができな い(教義と聖約131:1−4参照)。わたしたちが下す最も大 スティーブ・バンダーソン 切な決定の一つが永遠の伴侶を選ぶことであり,ふさわし い伴侶を 見つける ことだけでなく,ふさわしい伴侶に なる ことが大切である。自分と同じような価値観,関心,希望, 目標を持つ人を引きつけるのは,その人の生活のあり方そ のものであることを生徒が理解できるように助ける。夫と © 1999 妻が互いに誓う忠誠は永遠に続くと定められているため, 神の導きを求めて得ることは非常に重要である。「家族―― 世界への宣言」には,永遠の伴侶を選び,また,自らが永遠の伴侶となることに関する 勧告が述べられている。 永遠の結婚について話し合う際,いまだ結婚の祝福を享受する機会を得ていない,義 にかなった人,特に姉妹たちが大勢いることを心に留めるべきである。また生徒の中に は,結婚に失敗して苦しんでいる人たち,現在結婚生活で苦労している人がいるかもし れない。結婚は日の栄えの王国の最高の階級に入る条件ではあるが,どうか生徒の感情 に配慮してほしい。 理解すべき原則 • • • • 結婚は夫婦が同じような価値観と関心を共有するときに強められる。 最善の伴侶となるためには自らを備える必要がある。 結婚相手を選ぶに当たっては,主の確認を求めるべきである。 家族に関する宣言は,自分と将来の伴侶がどのような家族観を持っているかを見極め るための指針となる。 • 夫婦は,互いに愛と関心を示し合うとともに,子供たちに対しても愛と関心を示すと いう厳粛な責任を負っている。 教え方の提案 結婚は夫婦が同じような価値観と関心を共有するときに強められる 生徒に,自分の知っている人たちで,幸せな結婚生活を送っている人のことを考え るように言う。次の質問をする。 • 夫と妻が共通して持っている興味や価値観は何ですか。 • このような類似点があることで,結婚生活はどのように強められていますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 永 遠 の 伴 侶 を 選 び , 永 遠 の 伴 侶 と なる 49 生徒用資料の75−76ページにあるスペンサー・W・キンボール大管長とN・エルド ン・タナー管長の言葉を読むように言う。また幸せな結婚を築く要素を挙げるように 言う。出た答えを黒板に書く。答えには次のようなものが考えられる。 • 経済,教育,宗教,社会的環境が似ている。 • 興味が似ている。 • 金銭,宗教,仕事,子供,余暇の使い方,教育についての価値観が似ている。 • コミュニケーションスキル • 神殿結婚するふさわしさを備えている。 次の質問をする。 • 類似点に結婚を強める傾向があるのはなぜですか。 • 価値観の違いはどのように結婚を弱めるでしょうか。 幸せな結婚を築く要素のリストを見て,その中で自分が最も重要であると思うもの はどれなのか考えるように生徒を促す。何人かの生徒に,選んだ要素について自分の 思いを発表してもらう。 スペンサー・W・キンボール大管長の次の言葉を分かち合う。 「宗教的相違は最もつらく,あらゆる相違の中でも最も解決が難しいものです。」 ( 「結婚によって一つとなる」『リアホナ』2002年10月号,41) 次の質問をする。 • なぜこの言葉が正しいと思いますか。 • この言葉は,高い標準を持った教会員とだけデートするようにという教会指導者の 勧告とどのように関連していますか。 • 福音はどのように結婚を一つにしますか。 最善の伴侶となるためには自らを備える必要がある 生徒に,将来の伴侶に関して大切であると思う 5∼6 つの資質を挙げるよう促す。次 の質問をする。 • そのような資質がある人をどのように見つけますか。 • あなた自身は,そのような資質をどの程度培ってきましたか。 黒板に次の エズラ・タフト・ベンソン大管長の言葉を書き,それがどのように結婚 に当てはまるか話し合う。「伴侶を選ぶときは完全を期待しないでください。」(「独身 の姉妹たちに」 『聖徒の道』1989年 2 月号,102) 質問――なぜこの言葉が良い助言となるのでしょうか。 将来の夫や妻に対して現実的でない高い期待を持つと,幸せな結婚生活を送ること ができると思える相手を見つけることが不可能になるかもしれないことを,生徒が理 解できるように助ける。スペンサー・W・キンボール大管長の次の言葉を分かち合う。 福音と実りある生活 教師用手引き 50 永遠の伴侶を選 び , 永 遠 の 伴 侶 と な る 「あらゆる努力を払い,よく祈って,最も麗しく一致した生活を営める相手を 見いだすように努めるとき,確かにすべての若い男女は,幸福を得,実り多い結 婚生活を営むことができるのです。しかしそのためには,二人が進んで代価を払 わなければなりません。」(『リアホナ』2002年10月号,38) 質問――幸せで実りある結婚を手に入れるために「代価を払う」とはどういう意味で しょうか。 生徒に,生徒用資料の77ページのリチャード・G・スコット長老の言葉から「常に 永遠の真理に基づいた選択をすることにより……」で始まる文を読んでもらい,スコ ット長老が結婚の準備として何をするよう提案しているか見つけるように言う。 結婚相手を選ぶに当たっては,主の確認を求めるべきである 次の質問をする。 • 結婚相手をどのように選びますか。 • なぜ,結婚相手を示してください,とただ祈って願うべきではないのですか。 • 伴侶を選ぶに当たり,相手を選ぶのは自分自身であることを理解することはなぜ大 切なのですか。 生徒に生徒用資料の77ページの「結婚の相手を選ぶに当たっては,主の確認を求め るべきである」の項を読むように言う。 幸せな結婚を築くことのできる相手を見つける責任は,自分にあることを生徒が理 解するように助ける。生徒は,正しく永遠の伴侶を選ぶためにできることをすべて行 い,断食と祈りをもって主からの確認を得なければならない。 家族に関する宣言は,自分と将来の伴侶がどのような家族観を持っているかを見極める ための指針となる 生徒に,生徒用資料の113ページにある「家族――世界への宣言」を開くよう促す。 この霊感を受けて書かれた宣言が,自分自身と将来の伴侶がどのような考えを持って いるかを知る指針となることを説明する。生徒と一緒に宣言の中から以下の声明を読 み,各声明に設けられた質問について話し合う。また,生徒の必要に特に合った声明 があれば,それを読んでもよい。結婚する当事者たちはこれらの重要な点に関して同 じ考えを持つべきであることを再認識させる。 「わたしたち,末日聖徒イエス・キリスト教会の大管長会と十二使徒評議会は, 男女の間の結婚は神によって定められたものであり,家族は神の子供たちの永遠 の行く末に対する創造主の計画の中心を成すものであることを,厳粛に宣言しま す。 」 • 結婚が神によって定められたものであると,信じるのはなぜですか。 • 天の御父が子供たちの永遠の行く末のために与えられた計画の中で,家族はどのよ うに大切なのでしょうか。 福音と実りある生活 教師用手引き 永 遠 の 伴 侶 を 選 び , 永 遠 の 伴 侶 と なる 51 「すべての人は,男性も女性も,神の形に創造されています。人は皆,天の両 親から愛されている霊の息子,娘です。……性別は,人の前世,現世および永遠 の状態と目的にとって必須の特性なのです。」 • わたしたちの第一の位に関する知識は,神の計画における性別の果たす重要な役割 をよりよく理解するうえで,どのように役立っているでしょうか。 「聖なる神殿において得られる神聖な儀式と聖約は,わたしたちが個人として 神のみもとに帰り,また家族として永遠に一つとなることを可能にするのです。」 • 永遠の価値を持つようになるものとして,今はどのような特質を個人と家族の内に 養うことができるでしょうか。 • 頻繁に神殿の儀式を受けることは,わたしたちの心の中にそれらの儀式と儀式の重 要性をいつも新鮮に保つうえで,どのように役立つでしょうか。 「増えよ,地に満ちよ,という神の子供たちに対する神の戒めは今なお有効で す。またわたしたちは宣言します。生殖の神聖な力は,法律に基づいて結婚した 夫婦である男女の間においてのみ用いるべきです。」 • 主が増えよ,地に満ちよと命じられたのはなぜだと思いますか。 「わたしたちは断言します。命は神聖であり,神の永遠の計画の中で重要なも のです。 」 • 命の神聖さに関するこの声明は,一般的に堕胎に対して何を教えていますか。 「家庭生活における幸福は,主イエス・キリストの教えに基づいた生活を送る ときに達成されるに違いありません。」 • 結婚相手を選ぶ指針として,この声明をどのように用いますか。 • 夫,あるいは妻として,「イエス・キリストの教えに基づいた」家庭生活を築いて 維持するために何をしますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 52 永遠の伴侶を選 び , 永 遠 の 伴 侶 と な る 家族を襲う破壊的な影響と戦うための手段を説明しているゴードン・B・ヒンクレ ー大管長の言葉を読む。 「将来に目を向けるとき,アメリカの家族を見ても,世界中の家族を見ても, それほど楽観的な気持ちにはなれません。麻薬やアルコールの犠牲者が恐ろしい までに増え続け,一向に減少する気配も見えません。互いに傷つけるような言葉 を投げ合ったり,他人の必要に関心を持とうとしない傾向も,みな,増大してい るように見えます。子供に対する虐待も,伴侶に対する虐待もあまりに多く,今 は,高齢者に対する虐待も増え始めています。こうしたことが起こり,事態が悪 化し続けているのは,基本となる認識が欠如しているからにほかならないのです。 み て そうです。家族というのは全能の神の御手の中にあるものだという,強い,燃え るような確信が欠如しているからです。家族制度は,神が創造されたものです。 また,同時に,社会の基本単位でもあります。 わたしは,わたしたちの民に向かって,警告の声を上げます。今申し上げた点 に関して,わたしたちは社会の主流に向かって歩み寄りすぎています。もちろん, 立派な家族はあります。世界中に立派な家族は存在します。しかし,問題を抱え ている家族があまりにも多いのです。しかし,これは治療可能な病気です。必要 な薬は,簡単で,実に効き目があります。それは愛です。単純で明快な,毎日示 す愛と敬意です。愛は,繊細な植物ですから,養いが必要です。しかし,この植 物は,あらゆる努力を傾けたとしても,十分にそれに見合うだけの価値のあるも のなのです。 さて,話を終えるに当たって,わたしは,この非常に不確実な世界にあって, すばらしい将来を予見しています。もしわたしたちが自分たちの価値観を捨てる ことなく,わたしたちが受け継いだものの上にさらに打ち立てるならば,また, 主の前に従順に歩み,ひたすら福音の教えに従って生活するならば,わたしたち は信じられないようなすばらしい方法で祝福を受けるでしょう。わたしたちは, かぎ 特別な幸福に至る鍵を見つけた特異な民として,世間の注目を浴びるでしょう。 ( 『聖徒の道』1998年 1 月号,79) 質問――家族に関する宣言に教えられている原則に従うことは,家庭が家族にとって 安全な場所となり,誘惑やこの世の罪に対するとりでとなる助けとなります。それは なぜでしょうか。 夫婦は,互いに愛と関心を示し合うとともに,子供たちに対しても愛と関心を示すとい う厳粛な責任を負っている 質問――夫と妻が互いに愛し,慈しみ合うことは,どのように父親,母親になるため の準備となりますか。 一人の生徒に,十二使徒定員会会員のボイド・K・パッカー長老の言葉を読んでも らう。 「わたしは結婚のすばらしさを信じています。結婚こそ,人間生活の理想の形 であると信じています。結婚は神の定めたもうたものです。そして結婚に伴う制 限はわたしたちの幸福を守るために計画されたものなのです。 世界のどの歴史を取ってみても,成年に達し,備えをし,互いに愛し合ってい 福音と実りある生活 教師用手引き 永 遠 の 伴 侶 を 選 び , 永 遠 の 伴 侶 と なる 53 る若い二人が結婚について考えるときほどすばらしい時をわたしは知りません。 それはあなたにしか与えられない特別な時間だからです。 今の時代が非常に問題の多い時代であることはよく分かります。わたしたちの 抱える問題は今,結婚に大変厳しい状況を与えています。 結婚に対する確信を失わないようにしてください。たとえあなたが不幸にして 離婚することになっても,また周囲に不幸な結末を招いた結婚が幾つもあろうと, 確信を失わないようにしてください。」(『聖徒の道』1981年 9 月号,19参照) 「家族――世界への宣言」を続けて読み(生徒用資料の113ページ),各声明の後に ある質問について話し合う。 「両親には,愛と義をもって子供たちを育て,物質的にも霊的にも必要なもの を与え,また互いに愛し合い仕え合い,神の戒めを守り,どこにいても法律を守 る市民となるように教えるという神聖な義務があります。」 • 子供たちに物質的,霊的に必要なものをどのように与えることができますか。 • あなたは今,親の責任を果たす準備をするために何をしていますか。 ゆる 「実りある結婚と家庭は,信仰と祈り,悔い改め,赦し,尊敬,愛,思いやり, 労働,健全な娯楽活動の原則にのっとって確立され,維持されます。」 • これらの原則を確実に,結婚と家族関係の不可欠な要素とするために何ができます か。 • 実りある結婚を築き上げるために,何を積極的に実行しますか。 「わたしたちは警告します。貞節の律法を犯す人々,伴侶や子供を虐待する 人々,家族の責任を果たさない人々は,いつの日か,神の御前に立って報告する ことになります。またわたしたちは警告します。家庭の崩壊は,個人や地域社会, 国家に,古今の預言者たちが預言した災いをもたらすことでしょう。」 • 現在,家族に対する最も深刻な脅威は何だと思いますか。 • 家族を強めることは,どのように地域社会と国家を強めることになりますか。 生徒が伴侶に求める特質について,祈りをもってよく考えるように勧める。常に 「家族――世界への宣言」の標準に添った生活をする伴侶となるために,意義ある目標 を立てるように励ます。 福音と実りある生活 教師用手引き 54 永遠の伴侶を選 び , 永 遠 の 伴 侶 と な る 課題の提案 • 生徒に,彼らがすばらしいと思っている家族を 2 家族挙げるように促す。次の質問を する。 • それらの家族が成功し,幸福なのは,どのような特質があるからなのでしょうか。 • その二つの家族の相違点,類似点は何ですか。 • それらの家族は困難な事態にどう対処していますか。 どちらか一つの家族の夫と妻に以下の質問をするように促す。 • 互いが相手に対して大変好ましいと思っている性質は何ですか。 • さらに良い伴侶となるために,日ごろから個人的に実行していることは何ですか。 • 夫婦として,どのように信仰を強めていますか。 生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に学んだことを書いてもらう。次に,結婚 の準備,あるいはより良い伴侶となる準備をするための計画も書くように勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き 55 第12章 健康の律法を守る 導入 使徒パウロは,わたしたちの肉体は神の宮であると教えた ( 1 コリント 3:16−17参照)。しかし,多くの人々の考え方と 行動はその教えに反している。健康に関する主の律法に従うこ とによって数え切れない祝福がもたらされる。様々な方法で健 康を維持し増進できることを生徒が理解できるように助ける。 体に害のある物質を知るだけでなく,健康に良いことも知るこ とで,肉体を敬意をもって取り扱う決心が強められる。 理解すべき原則 • • • • 健康の維持に役立つ良い習慣は福音に従った生活を送るうえで大切である。 知恵の言葉は,主の定められた健康の律法において重要な位置を占めている。 適切な食事,休憩,そして運動は,大きな健康の恵みをもたらしてくれる。 肉体と精神に有害な物質や習慣は避けなければならない。 教え方の提案 健康の維持に役立つ良い習慣は福音に従った生活を送るうえで大切である 神殿の写真を 2,3 枚見せ,神殿の建物や敷地が持つ特有の美しさについて話し合う。 生徒に,以下の質問の答えを生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に書かせても よい。 • これらの建物は何を,また,だれを,表していますか。 • これらの建物の手入れが行き届いているのはなぜですか。 みたま • このように手入れをすることは,参入者が御霊を感じるうえでどのような助けとな っていますか。 一人の生徒に 1 コリント 3:16を読んでもらう。 質問――どのような点でわたしたちの肉体を神殿と比べることができますか。 生徒用資料の83ページのトーマス・S・モンソン管長の言葉を生徒と読む。 質問――肉体的に必要なものと,霊的に必要なもののバランスを取ることが大切なの はなぜですか。 福音と実りある生活 教師用手引き 56 健康の律法を守 る 自分ではどうにもならない健康上の問題を挙げるように生徒に言う。かつて心臓外 科医であった十二使徒定員会のラッセル・M・ネルソン長老の勧告を分かち合う。 「わたしたちには分からない理由により,肉体に障害を持って生まれてくる人 がいます。体の一部に異常があるかもしれません。調節機能のバランスが崩れて いるかもしれません。そして,すべての肉体は,病気と死に直面します。しかし, たまもの 肉体はきわめて貴重な賜物なのです。それなしに,完全な喜びを得ることはでき ません(教義と聖約138:17参照)。 神聖な目的を達成するために,完全な肉体が必要なわけではありません。事実, 最もすばらしい霊が,弱い体に宿ることもあります。肉体に障害があって日々チ ャレンジに直面する人が,卓越した霊的な強さをはぐくむ場合がよくあります。 そのような人は,神が忠実で従順な人のために用意されたすべての祝福を受ける 資格があるのです(アブラハム 3:25−26参照)。 やがてその時が来ると,『霊と体は再び結合して完全な形になり,手足も関節 も……その本来の造りに回復され』ます(アルマ11:43,および以下も参照。ア ルマ40:23,伝道の書12:7,教義と聖約138:17)。こうしてわたしたちは,イ あがな エス・キリストの贖いのおかげで,主にあって完全になることができるのです。 これらの真理は,個人の行いにどのような影響を与えるでしょうか。…… わたしたちは肉体を自分自身の宮であると考えるでしょう( 1 コリント 3:16参 照)。そして,いかなる方法であれ,それを汚したり,傷つけたりしないでしょ う。また,適切な食事を取り,健康のために運動をするでしょう。(『リアホナ』 1999年 1 月号,95−96) 次の質問をする。 • 肉体上のチャレンジは,霊的な力を強めるうえでどのように役立ちますか。 • 肉体の健康への配慮が欠けると,わたしたちの可能性はどのような影響を受けます か。 • 日々の責任を果たすうえで,健康に良い習慣はどのような助けとなりましたか。 知恵の言葉は,主の定められた健康の律法において重要な位置を占めている 「知恵の言葉」と黒板に書き,その言葉が自分にとってどのような意味を持つのか 生徒に答えてもらう。 質問――主が知恵の言葉を与えられたのはなぜだと思いますか。(教義と聖約89:4 参 照) 黒板を縦に 3 つに分け,それぞれの上部に警告,奨励,約束と一つずつ書く。生徒 に 教義と聖約89:4−9 を読んでもらう。主が与えられた警告,わたしたちに行うよう 奨励しておられること,知恵の言葉が約束していることをそれぞれの欄に書き入れて もらう。 知恵の言葉を守ることで得られる肉体的な祝福を強調するために,大管長会顧問の ジェームズ・E・ファウスト管長の話の最初の部分を読む。 福音と実りある生活 教師用手引き 健 康 の 律 法 を 守る 57 「わたしがコットンウッドステーク会長であったころ,クリード・ヘイモンド 博士がステークの祝福師をしていました。……彼は若いころ,ペンシルベニア州 立大学陸上競技部のキャプテンをしていました。1919年,ヘイモンド兄弟と彼の チームは,毎年開かれている大学連盟主催の陸上競技会に招待されました。大会 前夜,……彼のコーチ……は,チームの選手たちに少量のシェリー酒を飲むよう に指示しました。その当時,コーチたちはワインには過激なトレーニングで硬く なった筋肉に対する強壮作用があると誤解していました。チームの選手たちは皆 シェリーを飲みましたが,両親から知恵の言葉を教わっていたヘイモンド兄弟は 断りました。コーチに逆らうことが嫌いだったヘイモンド兄弟は,非常に不安に なりました。自分には世界最速のランナーたちとのレースが待っています。明日 ぶざまなレースをしてしまったらどうしよう。コーチに何と言ったらいいだろ う。 」 質問――もしあなたがヘイモンド兄弟の友人だったら,彼になんと助言しますか。 ファウスト管長は続けてこう語っています。 「翌日の競技大会で,チームのほかの選手たちは皆非常に体調が悪くなり,不 本意な結果に終わりました。体調が悪すぎて走れない人もいました。しかしヘイ モンド兄弟は体調がよく,100ヤードと220ヤードで優勝しました。コーチは彼に 言いました。『君はたった今,220ヤードを人類史上だれよりも速く走ってきたん だ。』その夜,そして残りの生涯の間,クリード・ヘイモンドは知恵の言葉を守 ることに対する自分の純粋な信仰に感謝したのです。(『リアホナ』2001年 1 月号, 54−55) 次の質問をする。 • このとき彼の成績が振るわず,他のチームメートが良い成績を上げていたとしたら, 彼のシェリーを飲まないという決断に対するあなたの考えは違ったものになります か。はい,いいえ,それぞれの理由を言ってください。 • 正しい選択をすれば,いつでもすぐに良い結果が出ますか。 • 知恵の言葉のような戒めを守るとき,信仰はどのような役割を果たしますか。 生徒に,教義と聖約89:18−21を読んでもらい,知恵の言葉を守って生活し,戒め を守ることで得られる祝福を挙げるように促す。適切なら一つ一つの祝福について話 し合う。 福音と実りある生活 教師用手引き 58 健康の律法を守 る 適切な食事,休憩,そして運動は大きな健康の恵みをもたらしてくれる 十二使徒定員会会長を務めていたエズラ・タフト・ベンソン会長の言葉を読み,健 康を保つために何をするように言っているか生徒に特定させる。 「肉体の状態は霊にも影響を及ぼす。これこそ主が知恵の言葉を与えられた理 由である。わたしたちは早寝早起きを励行し(教義と聖約88:124参照),自分の 力以上に急がず(教義と聖約10:4参照),すべてに節度を保って行動すべきであ る。一般に自然の状態のままの食物を多く食べ,添加物を加えずに精製もできる だけしないようにすれば,その食物はわたしたちの健康にとってもっと良いもの となる。食物は心にも影響する。そして体を構成するある要素が欠けると,心が ふさいでくる。定期的に健康診断を受けることは予防に役立ち,病気を見つけ出 して治療するうえでも役立つ。休息と運動は健康には欠かせない。また新鮮な外 気の中での散歩は霊を活気づけるものである。健全なレクリエーションはわたし たちの宗教活動の一部である。つまり生活に変化をもたらすことが必要なのであ る。ただそのように考えるだけでも霊を鼓舞することができる。」(『聖徒の道』 1975年 2 月号,91) 次の質問をする。 • 十分な休養を取ると,主に仕える力が増すのはなぜですか。 • 健全なレクリエーションには霊的にどのような恩恵がありますか。 次のアンケートを用意し,各生徒に答えてもらう。 各質問について,1 から 5 までのうち自分に最も当てはまる番号を書いてください。 5 が最も強い肯定を表します。 1.果物,野菜,穀類を食べている。 2.定期的に運動している。 3.ほとんど毎晩きちんと睡眠を取っている。 4.一般的な病気と必要時に受けられる治療に関する情報を入手している。 5.心身に害となる習慣や物質を避けている。 6.自分自身や家族,また,家の中を清潔にし,整頓を保っている。 アンケート記入後,各項目についてもっとよく実行できれば,健康にどのような影 響が出るかを話し合わせる。健康の増進につながる達成可能な目標を立て,その目標 を生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に書くように励ます。 質問――体重をコントロールし,健康を維持するうえで,運動はどのように役立ちま すか。 運動が,カロリーを燃焼させ,体重をコントロールし,血圧を下げ,筋肉を強め, ストレスや緊張,疲労を和らげ,体力を増し,精神と情緒を安定させるものであるこ とを簡単に説明する。 福音と実りある生活 教師用手引き 健 康 の 律 法 を 守る 59 エズラ・タフト・ベンソン大管長の言葉を読む。 「わたしたちの肉体は運動を通して活気づけられなければなりません。きれい な空気を吸いながら散歩をするのも肉体を活気づけるのに役立ちます。適切な指 導の下に行うなら,ランニングも健康に良いものです。単なる腕立て伏せや簡単 なスポーツでもよいでしょう。」(『聖徒の道』1989年 1 月号,6 参照) 定期的に運動していない生徒に対し,これから 2,3 か月間継続してできる運動を選 ぶように励ます。無理のない目標を設定するように説明する。生徒は互いに目標を発 表し合い,あるいは,一緒に頑張りたいと言うかもしれない。進歩を記録する表を用 意することも役立つ。一緒に運動するパートナーを見つけるのも,やる気を保つ方法 である。 肉体と精神に有害な物質や習慣は避けなければならない 質問――あなたが親だとして,「これはわたしの体だから,自分のしたいようにする」 と子供に言われたら,あなたはどう答えますか。 次の式を黒板に書く。薬物 = 依存 = 悲惨 それから次の質問をする。 • 薬物依存で幸福にならないのはなぜですか。 • 不適切に薬物を使用すると,本来達成できるはずの事柄にも影響を及ぼします。そ れはなぜですか。 当時十二使徒定員会会員であったマービン・J・アシュトン長老の勧告を読む。 「今,心に浮かぶのは,夫であり父親である一人の若者のことです。彼は麻薬 を常用しており,家族,職業,自尊心,そしてまた自分の命まで失うという危機 にさらされています。『自分は麻薬常用者だ』というこの人の叫びは,人の心を 悩ませます。コカインやそのほかの麻薬はその人を完全に鎖で縛りつけます。麻 薬の販売人は他の人に鎖を提供しているばかりでなく,自分自身にも不義の重み で足かせをはめているのです。現在麻薬とは無縁の方々は,麻薬を避けるために 全力を尽してください。麻薬に関与している方々,あなたを引きずり下ろし,息 苦しくさせている鎖を取り除くために助けを求めてください。麻薬は『特効薬』 ではありません。それは悩みと自己破壊に向かう一方通行の通路の入り口にすぎ ません。 人間として最も惨めな姿は麻薬中毒になった人々の姿であるということを肝に 銘じてください。彼らは自分自身の体の中でとりこになっているのです。多くの 常用者は,自分ではどうすることもできず,ほかの人に依存し,自暴自棄の状態 に陥っています。しかし,望みがまったくないなどと思ってはいけません。鎖を 持ち上げて依存から脱し,自尊心,安らぎ,目的のために戦ってください。麻薬 は『楽しい』と言う人は偽り者です。」(『聖徒の道』1987年 1 月号,15参照) 次の質問をする。 • 「薬物依存で害を受けるのはその本人だけだから」と言う人に対してあなたは何と 言いますか。 • 薬物依存はどのように家族を破壊させますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 60 健康の律法を守 る • 依存から抜け出すためにどのようなステップを踏めばよいでしょうか。 クラスを二つに分け,一つのグループには,生徒用資料の86ページにあるゴード ン・B・ヒンクレー大管長の言葉を,もう一つのグループには86−87ページのボイ ド・K・パッカー長老の言葉を読んでもらう。それぞれのグループが学んだことを発 表し合う。 課題の提案 • 生徒に,1 週間の食事の習慣を観察してバランスの良い食事を取っているかどうかを 判定させる。 • 運動する習慣のない生徒に,運動を始めるように勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き 61 第13章 「これらのことはすべて,あなたに経験を与 えるであろう」 導入 チャレンジと試練は,死すべき試しの生涯に欠かせない要 素である。人生における困難に信仰をもって立ち向かうこと は,わたしたちの霊的成長の機会となり得る。試練の間も, 救い主の助けによって平安が得られることを生徒が理解する ように助ける(ヨハネ16:33参照)。十二使徒定員会会員で あったニール・A・マックスウェル長老は,逆境を堪え忍び, あらし そこから学ぶようにと述べている。「荒れ狂う嵐 の最前線が 人生を通過していきますが,いつまでも続くわけではありま せん。わたしたちは,すぐに過ぎ去る特定の地域を覆う雲と くらやみ 常に人を悩ます暗闇との間の重要な違いを知ることができま す。」(Lord Increase Our Faith〔1994年〕,43) 理解すべき原則 • 逆境は現世におけるわたしたちの経験の一部である。 • わたしたちは現世で受ける試練を通して成長できる。 • イエス・キリストに対する信仰を持ち続けることによって,わたしたちは問題を解決 し,逆境に打ち勝つことができる。 • わたしたちは最後まで堪え忍ばなければならない。 教え方の提案 逆境は現世におけるわたしたちの経験の一部である 次の文章の下線部に何を補充するか生徒に尋ねる。「わたしがついに 1 とき,人生はもっと楽になるだろう。」 だれもが明快で楽しい人生を送りたいと願うが,多くの人が困難な人生を送ってい ることを生徒に伝える。十二使徒定員会会長代理であるボイド・K・パッカー会長の 言葉を読む。 「教会,家族,個人は将来の試練を免れることはありません。家族,仕事,落 胆,悲しみ,健康,老齢化,死にかかわる試練を免れる人は一人もいません。」 ( 『リアホナ』2000年 7 月号,9 ) 試練は 3 つに分類できることを説明する。 1.自分自身の過ちによって起こるもの 2.他人によって起こるもの 3.現世での生活の一部として起こるもの 福音と実りある生活 教師用手引き 62 「これらのことはすべて,あなたに経験を与えるであろう」 生徒に,この 3 つの種類に当てはまる例を挙げてもらう。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長の助言を読み,試練に対してどのように対応すべ きか生徒に尋ねる。 「わたしは次のジェンキンス・ロイド・ジョーンズ氏の言葉が好きで,だいぶ 前に新聞から切り抜きをしておきました。彼はこう言っています。 『……無上の喜びが得られるのはごく普通のことだと思う人はだれでも,それ が奪われてしまったと叫び回って無駄な時を過ごす。 〔現実は〕……軟らかなステーキはあまりないし,子供だって大人になってみ ればほとんどがごく普通の人間だ。結婚生活で成功している人は,お互いに高い レベルの忍耐を示し合っている。仕事はほとんど,楽しいことよりつまらないこ とのほうが多い。…… 人生とは古き良き時代の列車の旅のようなものだ。遅れ,列車交換のための待 ち合わせ,煙,ほこり,すす,揺れ。美しい風景や胸のすくようなスピードを味 わうのはほんのまれでしかない。 肝心なのは,この人生という列車に乗れたことを主に感謝することだ。』(“Big Rock Candy Mountains,”Deseret News,1973年 6 月12日,A4)」(「独身成人と の語らい」 『聖徒の道』1997年11月号,20参照) 生徒とともに 教義と聖約122:7 と136:31を読む。二つの節の中で,神がその子供 たちの生活に試練が降りかかるのをお許しになる理由を述べている箇所に注目するよ うに言う。生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に,生徒がこれまで直面した試 練の幾つかを挙げてもらう。 質問――試練の結果として,あなたはどのようにより良い人となりましたか。 紙やすりと木片を見せる。木に紙やすりをかけながら尋ねる。 • このざらざらした紙はどのような価値を生み出せるでしょうか。 • 木を紙やすりでこすることは,人生の何と比べることができるでしょうか。 十二使徒定員会会員であったニール・A・マックスウェル長老の言葉を読む。 「人生では,環境という紙やすりがわたしたちの硬い表面を滑らかにすること が多く,ごつごつした角を根気よく磨き上げてくれます。とはいうものの,それ はまったく心地良いものではありません。しかも主は,わたしたちに何か特別な 教訓を教え,弱点を克服する助けを与えるために,かなり力を込めて磨いてくだ さいます。特に,ほかに方法がないときはそれが顕著です。」(Notwithstanding My Weakness〔1981年〕,67−68) 次の質問をする。 • 試練はどのようにわたしたちを滑らかにし,永遠の命に備えてくれますか。 • 現世のチャレンジに対応するとき,自らの気持ちの持ち方でどのような違いが生じ ますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 「これらのことはすべて,あなたに経験を与えるであろう」 63 わたしたちは現世で受ける試練を通して成長できる 一人の生徒に教室の前に出て来て,腕立て伏せを10回するように言う。その際,実 際にできる生徒に頼むこと。次に,別の生徒に,腕立て伏せをするときの腕と手の動 きを立ってやってもらう。 次の質問をする。 • 負荷をかけることは,筋肉を強めるためになぜ大切ですか。 • このことは,霊的な成長とどのように比べることができますか。 試練はしばしば人生に負荷をかけ,それによりわたしたちは末日聖徒として力を強 めることができることを生徒が理解できるように助ける。 黒板に次の言葉を書く。 • 飛躍を助けるものか,あるいは,つまずきとなるものか • 試練により磨かれる • 苦難は神の懲らしめとなり得る 生徒に,生徒用資料の91ページのジョン・B・ディクソン長老とリチャード・G・ス コット長老の説教を読んでもらう。二人の説教が黒板に書いた言葉とどのように関連 しているか説明してもらう。 次の質問をする。 • 若い人たちが遭遇する最も典型的なチャレンジは何ですか。 • そのようなチャレンジに対して最も役立った回答は何でしたか。 • 困難な経験は,あなたがより良い人となるためにどのように役立ちましたか。 イエス・キリストに対する信仰を持ち続けることによって,わたしたちは問題を解決し, 逆境に打ち勝つことができる 生徒に,押しつぶされてしまいそうな困難に遭い,どうしたらよいか分からなかっ たときのことを思い出してもらう。次に,重大な試練に遭ったときに最も成長の助け となった自分自身に対する問いを下から選んでもらい,その理由を説明してもらう。 • どうしてわたしがこんな目に遭わなければならないのか。 • この経験から何を学ぶことができるだろうか。 • わたしには何か変えなければならないことがあるだろうか。 • 今どうしてこの苦しみに遭わなければならないのだろうか。 • この状況を引き起こす原因となることを何かしただろうか。 • これまでの試練を通して,主はわたしをどのように祝福し,助けてくださっただろ うか。 生徒に列王記下 6:14−15を読んでもらい,エリシャの召し使いがどのような質問 をしたか尋ねる。16−17節を読ませ,次の質問をする。 • 逆境や試練に遭ったときについて,エリシャが召し使いに与えた偉大な教訓は何で したか。 (16節参照) • 召し使いが知らなかったことで,エリシャが知っていたことは何ですか。(17節参 照) 福音と実りある生活 教師用手引き 64 「これらのことはすべて,あなたに経験を与えるであろう」 • 火の馬と戦車を見ることができたとき,この若い召し使いはどのように感じたと思 いますか。 • 自分自身の生活にこの物語をどのように応用できますか。 十二使徒定員会会員のジェフリー・R・ホランド長老の言葉を読む。 「皆さんはイエス・キリストの福音においてこの世と幕のかなたの両側から助 けを受けています。そのことを決して忘れないようにしてください。落胆し意気 消沈したときには,――必ずそういう時がやって来ると思いますが――目を開い て見るならば,わたしたちを守るために火の馬と戦車が猛烈なスピードでやって 来るのを目にすることができることを忘れないでください。これらの天の軍勢は アブラハムの子孫を守るためにいつでも出動して来るでしょう。」(「苦難の時の ために」 『聖徒の道』1982年 1 月号,13) 質問――福音の原則に従っているかぎり「天の軍勢」が助けてくれるということを覚 えておくことはなぜ大切なのでしょうか。 わたしたちは最後まで堪え忍ばなければならない 生徒に,下記の 3 つの聖句を読むように割り当て,最後まで堪え忍ぶことについて それらの聖句が何を教えているか発表してもらう。2 ニーファイ31:20,教義と聖約 24:8,121:7−8 。 問題とそれに伴う苦痛がひどくなっても,決して努力することをやめてはいけない ことを説明する。問題を抱えて不安に思うことは現世での試練に欠かせない要素であ ることを知っていれば,主から力を引き寄せることができる。予期しないチャレンジ に遭ったときにも福音の原則に従った生活をすることによって,わたしたちは主への 忠誠と愛を示すのである。最後まで堪え忍ぶとは,困難な時期が通り過ぎるのをただ 待っていることではない。 ニール・A・マックスウェル長老の話を読む。 「キリストが苦しみを免除されることは一切なかったわけですから,わたした ちが免除を受けることなどあり得るでしょうか。ある種の苦しみは,人生におけ るわたしたちの成長を促してくれます。それなのに,わたしたちは逆境に対する 免疫をつけたいとほんとうに思うでしょうか。一時的にそう思うことはあるでし ょう。しかし,苦しい経験を奪い取ってしまうことは,それに伴う結果をも奪い 取ってしまうということです。それに伴う結果とは,この世に来る前の遠い昔, この世の人生でどのような経験をするのかという説明を受けたとき,わたしたち が歓喜して受けたいと願った結果なのです。 人生とは学校であり,自分の意思で,しかも喜んで入学した学校です。もし, 校長が生徒に幸福をもたらすことを目的に,ほかの惑星で幾度も有効性が実証さ れた教科課程を採用したのだとしたら。また,わたしたち自身もいったん入学し たら退学はできず,しかも,能力と洞察力を徹底的に試すテストを受けることに, 同意していたとしたら。それにもかかわらず後になって不平が出た場合,その経 験豊かな校長はどう対処するのでしょうか。特に,校長が不在と思える状況にあ って,多くの生徒が教科書を破り捨て,苦しいから試験をやめるように要求した としたら。……全課程を取ってこそ人は学ぶのです。」(All These Things Shall Give Thee Experience〔1979年〕,26−27) 福音と実りある生活 教師用手引き 「これらのことはすべて,あなたに経験を与えるであろう」 65 生徒とともに,『賛美歌』46番の「主のみ言葉は」の 5 番の歌詞を読むか歌う。この 歌詞が逆境に対して何を教えているか聞き取るように勧める。 つら あわ 辛き試しのある時 わが憐れみ,与えられん な 試し,汝れを損なわず ただ黄金とくずとを分け 選ぶための手だてなり 課題の提案 • 生徒に,多くの試練を堪え忍んできた知人を二人選び,できるなら,二人が試練を通 してどのように成長したか尋ねてみるように言う。さらに,彼らに感謝の気持ちを伝 え,話を聞いて感じたことと賞賛の気持ちも伝えるよう生徒を励ます。多くの困難を どのように堪え忍べばよいかについて理解したことを,次のクラスで発表する準備を しておくように促す。 福音と実りある生活 教師用手引き 66 第14章 聖約を尊ぶ 導入 聖約を交わし,それを守ることは救いの計画の本質で ある。神から与えられた可能性に到達しようと努力する とき,わたしたちは正しい神権の権能を持った人を通し て福音の儀式と聖約を受けなければならない。約束を守 ることが軽視されることの多い世の中にあって,主はわ たしたちが約束を守ることを期待しておられること,そ して,進んで主と聖約を交わし,それを守る人たちを祝 福してくださることを,生徒が理解できるように助ける。 主と聖約を交わしてそれを守り,最後まで堪え忍ぶとき, わたしたちは永遠の命の約束を受ける。 理解すべき原則 • • • • 聖約とは神と神の子供たちとの間で交わされる神聖な約束である。 聖約を尊ぶことによって,わたしたちは神から授かった可能性を十分に発揮できる。 神権の権能は救いにかかわる聖約と儀式を受けるために必要である。 聖約を尊ぶことによって,永遠の命を受けるための備えができる。 教え方の提案 聖約とは神と神の子供たちとの間で交わされる神聖な約束である 結婚証明書,結婚指輪,結婚式の写真などを見せる。それらが何を示しているか尋 ね,質問する。 • 結婚するとき二人は互いにどのような約束を交わしますか。 • 二人がそれらの約束を守ると,どのような祝福を受けますか。 • 聖約を守らなければ,二人は何を失いますか。 黒板に「聖約」と書く。生徒にその言葉の意味を尋ねる。一人の生徒に,生徒用資 料の98ページにある『聖句ガイド』の一節を読んでもらう。生徒用資料の「メモと印 象に残った事柄」に以下の質問の答えを書くように勧める。 • これまでどのような聖約を交わしましたか。 • 約束,契約,決意などの言葉は,聖約とどのような関係がありますか。 • 聖約が守られなかった場合,影響を受けるのはだれですか。 • 神と交わす聖約と,わたしたちが互いに交わす同意とでは,どのような違いがあり ますか。 • 福音の聖約を交わす前にどのような準備が必要ですか。 福音と実りある生活 教師用手引き 聖 約 を 尊ぶ 67 聖約には当事者が二人いることを説明する。生徒に,生徒用資料の98ページのジャ ック・H・ゴーズリンド・ジュニア長老の説明を読んでもらう。 黒板に以下の参照聖句を書く。生徒に聖句を読んでもらい,それぞれの聖句から学 んだことを話し合ってもらう。 • モーサヤ18:13 • 教義と聖約42:78 • 教義と聖約101:39 大管長会顧問のジェームズ・E・ファウスト管長の言葉を読む。 「聖約は単なる外形的な儀式ではありません。人が変わるための現実的で効果 みたま 的な手段なのです。『再び生まれることは儀式を通して神の御霊 から来る。』 (Teachings of the Prophet Joseph Smith,ジョセフ・フィールディング・スミス 選,162)わたしたちはいつも,主と交わす救いの聖約を尊び,神聖に保たなけ ればなりません。」(『聖徒の道』1998年 7 月号,19) 質問――聖約を守ることは,誘惑を拒むうえでどのような助けになりますか。 聖約を尊ぶことによって,わたしたちは神から授かった可能性を十分に発揮できる 「神の子です」(『賛美歌』189番)の 1 番を生徒に歌ってもらう。それから次の質問 をする。この歌から受ける大切な教えは何ですか。 アブラハム 3:22−26(マスター聖句,アブラハム 3:22−23)を読み,話し合う。 次の質問をする。 • アブラハムは自分の可能性について何を学びましたか。 • これは,わたしたちが自分自身について理解するうえで,どのような助けとなりま すか。 スペンサー・W・キンボール大管長の言葉を読む。 「この地上に来る前のことを考えてみてください。忠実な男性が神権に関する ある種の責任に予任されていたのと同じように,忠実な女性にも何らかの責任が 課せられていました。……皆様には,わたしたちが預言者や使徒として支持して いる人々と同じように,前世で与えられた務めを果たす責任があるのです。」 (「義なる女性の役割」『聖徒の道』1980年 3 月号,141) 「この死すべき世に来る前,わたしたちは天で誓いを立てました。厳粛な誓い を立てました。…… わたしたちは聖約しています。この地上での地位を受け入れる前にこれらの聖 約を交わしたのです。 そこで,『……いかなることであれ,主なる神の命じられることはすべて』行 うことを決意しました。天の御父に約束をしたのです。つまり,もし天の御父が わたしたちを地上に送り,肉体を与え,地上での人生に貴重な機会を与えて下さ るのなら,生活を清く保ち,聖なる神殿で結婚し,家族を育て,家族に正しいこ とを教えるという約束です。それは厳粛な誓い,厳粛な約束でした。」(“Be Ye Therefore Perfect”〔ソルトレークインスティテュートにおけるディボーショナ ルでの説教,1975年 1 月10日〕,2 ) 福音と実りある生活 教師用手引き 68 聖約を尊ぶ 次の質問をする。 • わたしたちが自ら前世で聖約したことを理解すると,この現世で決断を下すうえで どのように影響を受けますか。 • 聖約を交わすことは,自らの可能性にふさわしい生活を送るうえでどのような助け となりますか。 神権の権能は救いにかかわる聖約と儀式を受けるために必要である 大管長会顧問であったゴードン・B・ヒンクレー管長の言葉を読み,「神権を受ける ため」の条件が何であると言っているか聞き取るように促す。 「社会的な地位や,皮膚の色や,国の相違にかかわらず,主はそれを受けるに ふさわしいと思われる人に〔神権を〕お与えになりました。神権は,神の王国の あんしゅ 諸事を治める権威と権能です。神権は,それを施す権能を持つ人々により,按手 の儀式を通して与えられます。神権を受けるためには,神の戒めに従わなくては なりません。 神権と同じような力はこの地上にはありません。神権の権能はこの世だけでな く,死の幕を越えて,永遠にまで及びます。それは永遠の結果をもたらします。」 ( 『聖徒の道』1985年 1 月号,55) かぎ 質問――神権の鍵とは何ですか。 『聖句ガイド』にある神権の鍵に関する説明を読む。 「鍵とは,長の職に伴う権利,すなわち,地上において神権を管理し,統制し, 治めるために神から人に授けられる権威である。長の職に召された神権者は,自 分を管理する権能を持つ人から鍵を受ける。神権者は,鍵を持つ人が指示する範 囲内でのみ神権を行使する。教会の大管長は神権のすべての鍵を持つ。」(「神権 の鍵」の項,135−136) 生徒に 教義と聖約132:7−14を読んでもらい,質問する。ここにはどのような約束 と警告が書かれていますか。 生徒に教義と聖約138:58を読んでもらい,質問する。身代わりの儀式は死者にど のような効果をもたらすことができますか。 聖約を尊ぶことによって,永遠の命を受けるための備えができる 次の質問をする。 • 馬 1 頭分の支払いに対し,その群れにいる全部の馬が手に入ったとしたらどのよう に感じますか。 • これは,神が子供たちにお与えになる祝福とどのように似ていますか。 福音と実りある生活 教師用手引き 聖 約 を 尊ぶ 69 黒板を縦二つに分け,一方に儀式,もう一方に約束と書く。儀式の欄にバプテスマ, せいさん 聖餐 ,神権,神殿のエンダウメント,神殿結婚と書く。 生徒に,儀式ごとに挙げてある以下の参照聖句を読んでもらい,わたしたちが交わ す約束を見つけ出してもらう。「約束」の欄に約束を列挙する。儀式を受け,聖約を 交わすことが生活の大切な一部であることを理解できるように生徒を助ける。生徒が のちに見直せるように,生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」欄にこの演習を完 成させてもよい。 • バプテスマ。モーサヤ18:8−10と 教義と聖約20:37を読む。(わたしたちが約束 すること。「互いに重荷を負い合う」,「いつでも,どのようなことについても,ど のような所にいても,……神の証人になる」,「〔神に〕仕えて戒めを守る」,「悔い み な 改める」 , 「イエス・キリストの御名を引き受ける」,「最後まで主に仕える」) あがな • 聖餐。教義と聖約20:77,79を読む。(わたしたちはイエス・キリストの贖いを覚 えるために聖餐を取り,バプテスマのときに交わした約束を新たにする。その約束 には,イエス・キリストの御名を受ける,いつも御子を覚える,御子が与えてくだ さった戒めを守る,御子を覚えていることを証明する,などがある。) • 神権。教義と聖約84:33−42(マスター聖句,教義と聖約84:33−39)と,121: 34−36(マスター聖句)を読む。(神権を受ける人は,神権の召しを尊んで大いな み こ と ば るものとすること,戒めに従うこと,神のすべての御言葉に従って生活すること, を約束する。〔『聖徒の道』1986年 1 月号,45−47にあるカーロス・E・エイシー長 老の総大会における説教を参照。〕) • 神殿のエンダウメント,および,神権結婚。十二使徒定員会会員であったジェーム ズ・E・タルメージ長老の次の教えを読む。(神殿のエンダウメントで交わす約束 に関して,タルメージ長老が話したこと以上の詳細について話し合うときには注意 すること。 ) 「エンダウメントの儀式では,各人が以下のような義務を引き受けなければな らない。すなわち,徳と純潔の律法を厳密に守り,慈愛の心を持ち,寛容で情け 深く,清くあることを聖約し,約束する。さらに,真理を広めて人々を高めるた めに才能と財産とをささげること,真理のために身をささげること,地がその王 である主イエス・キリストをお迎えする備えができるように,あらゆる努力を払 うことを聖約し,約束する。これらの一つ一つについて聖約し,義務を引き受け ると,祝福の約束が宣言される。そして,この約束が成就されるには,その条件 を忠実に守らなければならない。」(The House of the Lord〔1968年〕,84) 儀式を受け,主と聖約を交わすことがすばらしい機会であり祝福であることについ あかし て,あなたの証を分かち合う。 福音と実りある生活 教師用手引き 70 聖約を尊ぶ 課題の提案 • 生徒に,人生でこれまで交わしてきた聖約についてよく考えるように勧める。祈ると き,また次回の聖餐会のあいだ,自らが主と交わした聖約を尊び,大いなるものとす るために,主は何をするように望んでおられるかを理解できるように主に尋ねること を勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き 71 第15章 互いに仕え合う 導入 奉仕は永遠の進歩の重要な要素である。わたしたちは奉 仕することによって,また奉仕を受けることによって成長 する。生涯を通して意義ある奉仕ができるような計画を立 てるように生徒を励ます。また,人からの助けを受けるこ とに罪の意識を持ったり,恥じたりすべきではないことを 理解できるように助ける。奉仕を受ける人は,いろいろな 方法で人に奉仕をしていくようになるものである。 理解すべき原則 • • • • しもべ 主の僕と聖文を通して,わたしたちは互いに仕え合うことを学ぶ。 だれにでも助けを必要とするときがある。 わたしたちは様々な方法で互いに仕え合うことができる。 互いに仕え合うという行為は,一生涯続けていくべきものである。 教え方の提案 主の僕と聖文を通して,わたしたちは互いに仕え合うことを学ぶ 次の物語を話す。アンドリューはスポーツ選手として学校の人気者で,これまでの 成績に幾分得意になっていた。ある日ビショップから,1 週間に 2 時間,近くの孤児院 で手伝いをするよう依頼を受けた。アンドリューはビショップの頼みに困惑してしま った。 聖典の中の『聖句ガイド』を使って,ビショップから奉仕の依頼を受けたアンドリ ューと分かち合うことのできる聖句を探すように生徒を促す。何人かの生徒に,見つ けた聖句と,それがどうしてアンドリューに当てはまると思うのかを発表してもらう。 生徒に,生徒用資料の105−106ページの「主の僕と聖文を通して,わたしたちは互 いに仕え合うことを学ぶ」の項にある中央幹部の言葉を読み,ビショップの依頼に関 連する原則や考えを探すように言う。 次の質問をする。 • この経験を通してアンドリューはどのように成長できるでしょうか。 • 彼の奉仕は,孤児院にいる人たちにとってどのような価値がありますか。 • 聖文や主の僕たちはなぜ,何度も奉仕について話すのでしょうか。 • 人々に仕えると,どのように救い主に近づくことができるのでしょうか。 福音と実りある生活 教師用手引き 72 互いに仕え合う だれにでも助けを必要とするときがある 次の話をする。シンシアはどんなときにも人の手助けをする女性だった。ワードの ほとんど全員が彼女の助けを受けた経験を持っている。シンシアは,何らかの助けを 必要としている人がいるとき,彼らがそれを口に出して言う前にそのことが分かるよ うだった。ある日,よその家の掃除を手伝っていた彼女は階段から落ちて骨折し,足 全体を覆うギブスを数か月間つけることになった。彼女の助けを受けたことのある人 たちが大勢訪ねて来て援助を申し出た。ところが意外なことに,彼女はそれを断った。 この状況について,また,シンシアと彼女のワードの人たちに対する助言について, 生徒に話し合ってもらう。 質問――わたしたちからの奉仕や力を必要としている人にはどのような人たちがいま すか。答えを黒板に書く。次のような答えが考えられる。 • 病気の人 • 寂しさを感じている人 • 悲しんでいる人 • 夫を亡くした人 • 飢えている人 • 貧しい人 • 召されたばかりの宣教師 • 小さい子供のいる両親 • 独りで子供を育てている人 • 父親,あるいは母親のいない子供 • 罪を犯して苦しんでいる人 いちばん困っている人が自身の家庭という囲いの中にいるにもかかわらず,よその 人に奉仕する機会を探すことがあることを説明する。 質問――自分の家族内の必要を見過ごすことがあるのはなぜですか。 生徒用資料の106ページにある「家族――世界への宣言」の抜粋を読み,次の質問を する。 • 家族に関する宣言は奉仕について何を教えていますか。 • 自分の家族への奉仕を怠る理由は何ですか。 自分の家族に奉仕したときの経験と,そのときの感想を生徒に話してもらう。 ゴードン・B・ヒンクレー大管長の勧告を読む。 「わたしたちは教会全体の会員数といったような大きな単位について話をしが ちですが,しかし忘れてならないのはわたしたちが皆それぞれの必要と問題を抱 え,夢と希望を抱き,信仰と確信を持つ個人であるということです。ある者は強 く,ある者は弱いかもしれません。しかし皆,努力しています。それぞれに対処 しなければならない問題があり,それらは深刻で難しいことです。わたしたちに は,互いに成長し強め合うために仲間が必要です。わたしたちは『弱い者を助け, 垂れている手を上げ,弱くなったひざを強め』ることを決して忘れてはなりませ ん( 教義と聖約81:5 )。」(『リアホナ』1999年 7 月号,5 ) 福音と実りある生活 教師用手引き 互 い に 仕 え 合う 73 次の質問をする。 • 必要な助けを受けたとき,どのように感じますか。 けんそん • 頻繁に奉仕するためだけでなく,必要なときに奉仕を受けるためにも謙遜であるこ とが大切なのはなぜですか。 わたしたちは様々な方法で互いに仕え合うことができる 奉仕にどのような行為があるのかは,イエスが行われた奇跡に示されている。次に 挙げる参照聖句を書く(かっこ内の言葉は書かない)。生徒の数に応じて聖句を分け る。生徒は割り当てられた聖句を黙読し,黒板に書かれた聖句の横に救い主がなされ た奉仕について短い説明を書く。(生徒の数によって,聖句の数を増やしたり,減ら したりするとよい。) いや • マタイ 8:1−3(重い皮膚病にかかった人を癒す) • マタイ 9:27−31(目の見えない人に視力を与える) • マタイ14:16−21(群衆に食べ物を与える) • マルコ 1:23−26(汚れた霊を追い出す) ゆる • マルコ 2:5(罪を赦す) • ルカ 7:11−17(夫を亡くした女性の息子を生き返らせる) • ヨハネ 2:1−10(婚礼の客のために水をぶどう酒に変える) • ヨハネ 4:46−54(役人の息子を癒す) 次の質問をする。 • わたしたちは,ほかの人のためにどのような奉仕ができるでしょうか。 • 神のためにどのような奉仕ができるでしょうか。(答えを聞いて,モーサヤ 2:17 〔マスター聖句〕が出ていなければ一人の生徒にその聖句を読んでもらう。) • 奉仕をするときの態度はどのように大切でしょうか。それはなぜですか。 末日聖徒イエス・キリスト教会は,人道的援助に対する取り組みにより世界的に知 られるようになった。当時十二使徒定員会会員であったゴードン・B・ヒンクレー長 老の次の言葉を読む。 「〔教会には〕社会のあらゆる階層から何十万人という高潔な人々が集まって み な たまもの いることであろう。彼らは,神の御名によって働く権能を持ち,その神聖な賜物 の本質ゆえに互いに強め合い,助け合うという義務を負っている人々なのである。 …… これが教会の神権定員会組織の偉大な目的の一つである。すなわち人々の必要 に気づき,お互いを強める機会とその手段をもたらすことである。(『聖徒の道』 1972年12月号,544−545参照) 福音と実りある生活 教師用手引き 74 互いに仕え合う 中央扶助協会会長であったスムート姉妹が教会の女性に向けた次の言葉を読む。 「皆さんの信仰,善意,そして主が望んでおられることを実行しようとする望 みに,わたしはいつも励まされています。皆さんの奉仕に……訪問する先々で, この教会の姉妹たちの生活の中に,扶助協会のもたらす実が結んでいるのを目に しています。…… み お互いに,そして神の子のすべてに,一致して仕えるとき,わたしたちは神の て 御手に使われる者になることができます。肉体的苦痛を和らげるだけでなく,も っと大切なこととして,霊的助けを必要としている人々を救うためにです。」 (「わたしたちは神の御手に使われる者です。」『リアホナ』2001年 1 月号,103, 105) 質問――困っている人を助けるためにあなたや家族がもっとできることは何でしょう か。 モーサヤ 4:16−27を読んで,この聖句について話し合う。以下の質問が助けにな るであろう。 • 「自分たちの持っているものを互いに分かち合う」(21節)とき,どのような態度 で行うべきでしょうか。 • 頼まれれば,だれにでもお金をあげるべきでしょうか。別の手段による奉仕の方が もっと役立つことがあるでしょうか。 • わたしたちが, 「富めるほどではないが,……足りるほどの物を持っている」 (24節) 状態であるとき,わたしたちの態度はどうあるべきでしょうか。 • 「これらのことはすべて,懸命に秩序正しく行うように」(27節)とはどのような 意味でしょうか。 管理ビショップリック顧問であったH・バーク・ピーターソンビショップの勧告を 読む。 「わたしたちは〔聖典の中で〕次のように教えられています。つまり,この現 世でどんなに偉大で重要なことを達成したとしても,また,ビショップ,書記, 会長,教師,あるいは親としてどんなにすばらしい奉仕を行ったとしても,慈愛 を示すことを学ばなければ,わたしたちは無であるということです( 1 コリント 13:1−3 参照)。慈愛が欠けていれば,どんな善い行いもわたしたちの益とはな りません。 慈愛がどれくらい深いかを知る方法は幾つかあります。慈愛の一つの究極の形 は,人が相手の行動やふるまいを裁くことを控えるときに表れるのかもしれませ ん。それは,人の心をのぞきこんでその意図することを知ることができる――そ して,そこに潜むほんとうの望みを知ることができるのは御一人しかいないこと を,その人が心に留めているからです。人の人生の旅路が成功だったかどうかを 判断する権利を持っているのは御一人しかいません。不必要に裁いたり,偏見に 基づいた感情があるために,多くの人が助けを必要としている人に対して,時に は自分自身の家族に対してさえ,真に慈愛ある態度を示すことや,喜んで助けた いという気持ちを示すことができません。」(Conference Report, 1981年4 月, 109;Ensign,1981年 5 月号,81) 福音と実りある生活 教師用手引き 互 い に 仕 え 合う 75 わたしたちは,困っている人を真に強める方法を見つけるべきであることを,生徒 が理解できるように助ける。生徒とともに「主の道にかなって自立する」(39ページ 参照)に書かれている原則を復習するとよい。 互いに仕え合うという行為は,一生涯続けていくべきものである 生徒に,個人的に知っている人で,たくさんの奉仕をしてきた人のことを考えてみ るように促す。「その人たちはどのように奉仕しましたか」と黒板に書く。その人が してきた奉仕を,その人の名前を挙げずに発表してもらう。答えを黒板に書く。 次の質問をする。 • その人の奉仕は,どのようにマタイ 6:3−4に教えられている原則に添っています か。 • 教義と聖約64:33の中で,小さな奉仕の行為に関して主は何を教えておられますか。 • あなたの知っている最高齢の人たちは人を助けるために何をしていますか。 • その人たちの模範は,生涯を通して奉仕することの大切さについて何を教えていま すか。 伝道に出るなど,大きな奉仕を要求される召しから解任された人の中には,かなり のことを成し終えたので奉仕を休む資格ができたと誤解する人がいる。それから次の 質問をする。このような考えが霊的に危険なのはなぜですか。 十二使徒定員会会員であるM・ラッセル・バラード長老の次の勧告を読む。 「すでに伝道が終わった皆さん,どうか覚えていてください。伝道からは解任 されましたが,教会から解任されたわけではありません。主イエス・キリストを 代表する者として 2 年間過ごした皆さんが,いつでも主の弟子の一人らしくある ように,またそう振る舞えるように期待しています。主の弟子らしい服装をし, 弟子らしく行動してください。この世の風潮や流行を追わないでください。…… 伝道後に幸福と成功を得る規則は,伝道中とまったく同じです。熱心に祈り,勤 勉に働き,従順になることです。」(『リアホナ』2002年11月号,49) 次の質問をする。 • バラード長老の勧告はすべての末日聖徒にどのように当てはまるでしょうか。 • わたしたちはなぜ,生涯を通して主とその子供たちに仕え続けなければならないの でしょうか。 課題の提案 • これから 1 週間,家族,地元の教会員,あるいは地域社会の中のだれかを助ける方法 を幾つか考えるように生徒に促す。できれば,これら 3 つの中から一人ずつ助けたい 人を選ばせる。生徒用資料の「メモと印象に残った事柄」に経験したことを書くよう に勧める。 福音と実りある生活 教師用手引き