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電子学術書利用実験の背景 と現状

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電子学術書利用実験の背景 と現状
電子学術書利用実験の背景
と現状
慶應義塾大学メディアセンター本部
電子情報環境課 入江伸
図書館基盤とその崩壊
デジタルへ移行した図書館の社会的な役割を考えてみよう
そのための特権を持つことができるのだろうか
図書館の役割を果たすための基盤
• 法的基盤
– 図書館法と著作権法31条
– 貸出・ILL・複製ができる(教育や図書館の特権)
– 紙の時代の知?の社会基盤
• 設備
– 書庫・閲覧空間
• 予算
– 資料の購入費
– 集中的に購入して省力化をする
• 人
– サービスを行うための人材
– 図書館教育をうけた専任職員が存在している
• 国会図書館の特権
• この基盤の中で社会的な使命を果たせたのでしょうしょうか
• 電子の時代に図書館の責任は果たしていけるでしょうか
インターネット時代の図書館基盤
• 著作権の制限は?
• インターネットでは図書館のサービス特権を持っていない。
• 書庫・空間は?
• 不要
• システムスキル、巨大ストレージは?
• 予算は?
• 図書館が予算をまとめて執行する必要があるの?
• 個人販売(通信会社が10万冊を1000円/月で貸出)したらどうか?
• 著作権制限ではなく、利用料を個人認証で小規模課金で払う必要は
• 人材・スキルは?
• 紙時代のスキルは通用しない
• システムスキルはあるの?
残こされる役割は?
• 2000年はじめSpringer の人の話
• 隕石がおちて、環境が変わった。だれが、どういう役割で残るか、生
き残りをかけた進化がはじまった。
• 図書館はどうなるか?これからの目的は?社会的機能は?
• 時代性で定義される。これからの目的は?
• 大学図書館の目的は?
• 研究・教育環境の支援、学生・研究者のニーズを満たすこととは?
• 大学図書館の役割はどうなるか
• 大学の中での役割の再編がどう進むか
• 社会的な役割を見直すために、図書館が今持っている購買力を
前提とするのではなく、教育・研究支援のための役割が何かを、
関係する人たちとの相互理解と連携を進めながら考える。
大学図書館の変化
米国の大学図書館はGOOGLE BOOKSから
HATHITRUST まで進んだ
 雑誌・レファレンス資料の電子化は ほぼ終了した
 図書の大量電子化とサービス提供の時代を迎えている
米国の23の主要大学によって立ち上げられた、協同デジタルリポジトリ
学術研究利用を主眼にデザイン
Google Book Searchのバックアップ的機能も担う
2011年11月現在、約970万冊のコンテンツを収録
(うちパブリックドメインは約260万冊)
 Currently Digitized




10,203,348 total volumes
5,419,745 book titles
268,910 serial titles
3,571,171,800 pages
457 terabytes
121 miles
8,290 tons
2,886,654 volumes (~28% of total) in the public domain
View visualizations of HathiTrust

著作権保護期間内の資料は、検索のみ可
 著作権管理システムもある。
慶應義塾大学で利用可能な言語別の電子媒体資料
和雑誌、和図書が電子で読めない
英
語
日本語
電子書籍(冊数)
電子ジャーナル(タイトル数)
100,000 冊
70,000 タイトル
700 冊
4,288 タイトル(商用 100)
中国語
9,000 タイトル(CNKI)
韓国語
1,800 タイトル(KISS+DBPia)
重要な資料がまとまっ
て提供されないと利用
が推進されない
2002-2010の図書費の変化
大規模国立・私大大学比較(8学部以上)
900,000
800,000
購入媒体の変換がおき
ている
700,000
その他
600,000
EJ
500,000
洋雑誌
400,000
和雑誌
300,000
洋書
200,000
和書
100,000
私立大学
800,000
0
2002年度
2005年度
2008年度
2009年度
2010年度
国立大学
700,000
600,000
その他
500,000
EJ
400,000
和書予算は維持されている
洋雑誌
和雑誌
300,000
洋書
200,000
和書
100,000
学術情報基盤実態調査(旧大学図書館実態調査)から集計
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/jouhoukiban/1266792.htm
0
2002年度
2005年度
2008年度
2009年度
2010年度
2010年度 地区別 和洋別貸出数
貸出の8割が和書
900,000
800,000
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
洋書
和書
大学図書館では古い資料も貸出されている
貸出される図書の出版年分布
科学・技術・医学・薬学・看護
1800
1600
1400
1200
1000
800
医学・薬学・看護系は、
直近10年の利用が顕著。
2000年以前は急激に利用点数
が減少している
理工学系の本は、
80~90年代の本
も
理工学
医学
薬学&看護
600
400
200
0
2010年度1回以上貸出のあった本の出版年別
大学図書館では古い資料も貸出されている
貸出される図書の出版年分布
人文・社会系・学際研究
8000
7000
6000
新刊書から2000年くらいまで
の本が良く利用されている。
5000
三田
日吉
4000
SFC
出版から30年以上経った本で
も、
3000
協生館
2000
1000
0
2010
2005
2000
1995
1990
1985
1980
1975
1970
1965
1960
電子資料は24時間利用される
時間帯別 リモートアクセス(認証経由でのアクセス)数
3,500
3,000
2,500
2011.09
2011.08
2011.07
2,000
2011.06
2011.05
2011.04
1,500
2011.03
2011.02
2011.01
1,000
2010.12
2010.11
2010.10
500
0
電子ジャーナル データベース Googleが変えた図書館
• レファレンス資料・洋雑誌は電子になって図書館から消えた
改装後:
静かエリア24席新設(上)
自習室20席増設(下)
電子学術書利用実験プロジェクトの背景
• 国内の学術書の電子化の遅れ
• iPad 電子書籍元年
• BtoC だけの電子書籍モデルだけでなく図書館モデルも必要
• 図書館向けモデルの実証
• 海外学術出版社の電子資料の進展
• 欧米出版社の電子ジャーナルの進展
• Google Library Project の進展
• 中国・韓国の電子化プロジェクトの進展
電子学術書利用実験から考える
学生の変化
第2期
自分で
購入した本
図書館で
借りた本
授業
70%
27%
3%
68%
定期試験
46%
43%
研究
30%
38%
32%
個人の勉強
65%
22%
5%
趣味・娯楽
38%
27%
3%
47%
33%
3%
3%
75%
定期試験
42%
42%
研究
11%
47%
個人の勉強
67%
28%
趣味・娯楽
36%
8%
レポート
友達から
借りた本
データベース
(大学提供)
ネットの情報
3%
5%
5%
24%
5%
8%
32%
第3期
授業
レポート
11%
6%
11%
14%
8%
5%
36%
6%
5%
6%
50%17
C-3B. C-3Aの中で、授業で指定された資料(教科書・参考
書等)にはいくら使いましたか?
金額
0
1~
4,999
5,000~ 10,000
9,999
~
19,999
20,000
~
29,999
30,000
~
39,999
40,000
以上
人数
9名
5名
5名
9名
4名
2名
2名
%
25%
14%
14%
25%
12%
5%
5%
•
•
•
•
総数 :36名
金額 :0円~40,000円
冊数 :0冊~20冊
(平均 : 約5冊、約11,000円)
18
利用実験プロジェクトについて学生からの意見・感想
• 図書館の形態を変え、利便性を向上させるために重要なプロジェクトだと思う。
電子ブックが普及し、いつでもどこでも勉強できる環境が整うことを期待して
います。
• 電子図書館の制度自体は本当に便利でぜひ実用化されてほしいので,より使い
やすく・便利でみんなに使ってもらえるように協力できたら嬉しいと思います。
• たいへん真摯に電子書籍のあり方を研究なされているようで、驚きました。
この程度のアンケート内容で良ければ、再びお尋ねください。
私も、電子書籍の今後がどうなるのか関心が湧いてきました。
• おもしろい。修論を書く時期になって、ようやく論文を書くために本を使うと
いう使い方が試せた。毎回アプリケーションが改善されていてうれしい。
• 毎回参加していますが、どんどん改良されており、技術進歩に感動しておりま
す。今回で最後とは思いますが、このままいけば慶応で広く普及するのではな
いでしょうか?応援しております。参加させていただきありがとうございまし
た。
• とても役に立っただけに,これからの不便さが思いやられます。私はiPad等は
持っていないので,PCで使える電子ブックを早く増やしてほしいです。
• 電子ブックを利用する機会を持ててよかった。今後も電子ブックを利用してい
きたいと思った。
• どんなに使いやすくてもコンテンツがなければ意味がありません。ぜひ,これ
から多数の本を電子化して利用できるようにしてください。多数の有用な電子
書籍が使いやすいUIで利用できるサービスならば,有料でも利用したいと思い
ます。
19
大学における教育改革と図書館
教育との接近
読んで理解する本は 紙
調べる資料は
検索できる電子
共有は
電子
電子になれば、Webコンテンツ化、分割、再編集があた
りまえ
• 章単位の流通 流通単位の変化
•
•
•
•
• 教科書の変化
– 教科書指定率の低下
– 教員作成のレジメ、副読本・参考書指定の増加
– 図書館蔵書として教科書・参考資料の関係は?
• 学生の貧困化
– 図書館蔵書による支援機能
20
大学図書館の役割と連携のために
新しい学術情報流通のためのコミュニティの形成へ
電子学術書利用実験でのプレーヤー
コンテンツ
・ 電子書籍化するタイトル選定
・ 電子化に伴う権利処理
・ 実験期間中の無償提供
オーサリング
・書籍のデジタル製版
・ データフォーマット
・ One Source Multi Use 実験
大学図書館
・よく使うタイトルの選定
・ 被験者、実験場の提供
・利用者の意見を集約
システム
・ビュアー マルチフォーマット
マルチデバイス
・書籍データの管理・配信
・ 合理的なDRMと利用ログの集積
実験モデルの説明
慶應義塾大学
実験評価グループ
蔵書検索
KOSMOS
共通認証システム
学術出版社
コンテンツグループ
京セラコミュニケーションシステム
システムグループ
電子学術書プラットホーム
大日本印刷
オーサリング
グループ
書籍の選定
著作権処理
電子化決定
紙
スキャン
中間
フォーマット
DTP
全文検索
貸出期限付き
暗号解読機能
貸出期間延長
返却
暗号化データ
Logファイル
校正
利用者(学生)
利用者の評価
電子学術書
スキャン
OCR
校正
オーサリング
14
いま、大学図書館は何をやらないといけないか
電子学術書利用実験プロジェクトの目的
• なんとか国内で和書の電子化を進めていきたい!
• 日本語の学術出版物の電子化推進
• 実際の利用環境をつくって、学生に使ってもらい、ビジネス化の
可能性を考える
• 国内学術出版社とのコラボレーション
• 出版社へ貸出ログを提示して図書館での利用を理解してもらう
• 大学図書館の現状、洋雑誌はほとんどが電子であるという状況
• 学生は、インターネットで全文が読めることが当たり前だと思って
いること
• 学術出版社と大学図書館とのビジネスモデルの検討
• 学生・教員のニーズ調査と教育改革からの要望調査
• 学術出版社における書籍企画(教科書) 教育素材ビジネスの可能性
• 大学図書館への電子書籍の提供が紙のビジネスへ影響
学術情報の電子化と分担
新刊市場
電子書籍
ここ領域のデジタイジング
図書館
での利用
出版後
数年
パブリックドメイン
国会図書館
青空文庫
Google BOOKs
50年以上
突破するには?
図書館ができること
• べき論・理想論ではなく、ヤル気のあるコミュニティの形成
と成長、既存の枠を超えた連携でなんとかはじめてみる
• やれるところから、やってみる
• 小さな単位でいいから成功事例をつくりたい
• 電子学術書共同実験の開始
• 慶應実験サイト http://project.lib.keio.ac.jp/ebookp/
• [ 電子学術書 ]で検索してください
• 福井大学も参加 名古屋 神戸 奈良先端
• 問題は著作権
• 権利者不明の場合の裁定制度の運用を柔軟にしてほしい
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