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当日配布資料(1.3MB)
JST新技術説明会 2008.12.17 誘発脳波P50を用いた精神疾患の 新しい生物学的指標の開発 千葉大学大学院医学研究院 神経情報統合生理学 清水栄司、中澤健、松澤大輔、倉山太一、南部誠 精神科診断に至る情報収集 | | | | | ICD10, DSM-IVに基づいた診断 問診 問診 病歴聴取、既往歴、家族歴、薬歴 画像 EEG,MRI,SPECT,PET,ECG 血液検査 血算、生化学(内分泌、NH3、電解質…)、尿 神経心理検査 WAIS,WMS,MMSE,HDS-R,前頭葉機能検査,etc 心理検査 MMPI,SCT,ロールシャッハ,etc 発明の対象 | 不安障害圏精神疾患 ・全般性不安障害 ・パニック障害 ・強迫性障害 本発明根拠のデータ対象疾患 ・外傷後ストレス障害(PTSD) など。 診断技法: 基本的には問診のみ 発明の目的 診断の指標となる生物学的指標の開発 発明のポイント | 誘発脳波(聴性誘発電位)P50 感覚ゲート機構 | 条件付け反応(恐怖条件付け) 2つを組み合わせて、不安障害圏 精神疾患の診断および治療効果判定 に利用する。 感覚ゲート機構(知覚フィルター)とは 繰り返しの情報(刺激)を遮断する 脳内情報処理メカニズム もともと統合失調症の病態生理を説明するために 提唱された(Venables 1964)。 現在は脳内情報処理のメカニズムとしてコンセン サスが得られており、疾患との関わり以外にも、認 知機能との関連などについて研究が行われつつあ る(e.g. Wan et al., 2007)。 脳波での感覚ゲート機構 •音刺激に対する聴覚誘発電位のP50成分を利用 •連続音の2回目では、P50振幅が抑制される P50 約50ミリ秒 Stimulus 1 1回目刺激 500ミリ秒 Stimulus 2 2回目刺激 聴性誘発電位P50抑制 感覚ゲート機構を定量化する方法として、聴性誘発電位P50をダブ ルクリック音(S1,S2)で記録し、振幅の比(P50 S2/S1ratio)をとる (Freedman et al., 1983)。 ※健常者は、概ね50%以下 <S1> <S2> P50 P50 1st click nd 2 click 強迫性障害(OCD)におけるP50抑制の異常 (Hashimoto et al., 2007) OCD Subject S1 Conditioning 強迫性障害患者 Test S2 76% Control Subject S1 Conditioning 健常者 S2 Test 33% -5μV 20 msec 条件づけられた恐怖の獲得と消去 Garakani et al., 2006; modified | Unconditioned Stimulus (US) 電気刺激のような、それ自体、恐怖の反応を引き起こす刺激 | Conditioned Stimulus (CS) 光のような、ニュートラルな刺激。 | Conditioned Response (CR) 皮膚電気抵抗(skin の反応。 conductance responses: SCRs)のような、恐怖 | Acquisition(獲得) USとCSの連合学習により、CSがCRを誘発するようになる学習過程。 | Extinction(消去) CSがCRを誘発しなくなるようにする学習過程。 恐怖条件づけの3つの段階: コントロール期、獲得期、消去期 Control Phase1 Acquisition Phase2 Extinction Phase3 電気刺激 US ー + ー 光 CS + + + 皮膚電気抵抗 CR (SCRs) 対象と方法 対象:健常者 21名 男性11名、女性10名、年齢26.1±4.8 OCD患者 43名 男性15名、女性28名、年齢29.4±9.9 (発症年齢 22.1±10.2歳、罹病期間 7.3±6.0年) (Phase 1)条件づけの前(コントロール;光のみ) (Phase 2)恐怖の獲得(光と電気刺激で皮膚電気抵抗) (Phase 3)恐怖の消去(光のみで皮膚電気抵抗) 上記3つの過程において、ダブルクリック音を用いた、 聴性誘発電位P50を測定。 恐怖条件づけの異なる段階でP50 を測定 (コントロール期、獲得期、消去期) 恐怖条件づけと感覚ゲート機構の測定を 同時に行う実験パラダイム extinction acquisition electrical shock light measurement of SCR 0.1msec measurement of p50 and N100 測定システム データ解析 聴性誘発電位 クリック音 CR 皮膚電気抵抗 (SCRs) 電気刺激 CS 光 US A-D変換 データの一例(Phase 2:恐怖の獲得) US CS CR (SCRs DC) CR (SCRs AC) Auditory stimuli Cz Fz Pz EOG Time→ AcquisitionからExtinctionへの移行過程 (phase 2) (phase 3) CS US CR Auditory stimuli EEG Phase 2 Phase 3 USを中止して3発目のCS以降、 明らかなCRは、みられなくなった。 健常者群(n=21)および強迫性障害患者(n=43)における各段階での P50の S1,S2ratio(mean±S.E.M)の変化 結果のまとめ 健常者 P50 S2/S1 ratioが、 獲得期での上昇、 消去期でのコントロール期レベルへの回復 OCD患者 P50 S2/S1 ratioが、 獲得期での上昇、 消去期でもコントロール期レベルへ回復しない 発明の意義 P50 S2/S1 ratioは、恐怖の獲得期に、上昇するが、消去期に 正常に回復する健常群に対し、OCD群は回復しない。 感覚ゲート機構は外部からの感覚刺激を制御する脳内機構 であるが、恐怖の消去過程において、なお、外部刺激に対し て持続的な反応。 不安症状、恐怖症状の持続への感覚ゲート機構の関与 本発明の不安障害圏精神疾患診断への応用 *診断技法としては、同種の従来技術は存在しない 本発明の特徴と今後の発展の可能性 | 不安障害圏をはじめとした精神疾患に対する生物学的 指標を用いた新しい診断技法である。 | 薬物や行動療法など種々の治療技法による効果判定 への応用。 | 他の精神疾患や脳障害への診断、治療効果判定の応 用。 例)統合失調症、ADHD、意識障害、昏睡 実用化に向けた課題 | | | | 診断技法としてのみでなく、治療効果判定としてつかえるの かどうか。 state marker or trait maker? (臨床病態が関係しているのか、そもそも病気だから このような反応を示すのか?) 同様の機構が不安障害圏の他の疾患にあると考えられるが、 OCD以外はまだ未確認。 (現在、パニック障害で進行中) 解析の自動化 現在は手動解析。検者によるバラツキ。 P50が測定できない被検者が存在する(10%程度) ・被検者の問題(そもそも測定できない)? ・ノイズの混入 企業への期待 | 様々な研究および臨床現場への導入に際しては、 ・解析の自動化 ・一連の実験のパッケージ化 ・ノイズ混入の軽減 の3点が要求されるものと考える。 その克服に向けてご協力いただければ…。 | 薬剤効果判定に、生理学的指標を考えている企業には 本発明の導入が効果的と考える。 本技術に関する知的財産権 | 発明の名称:不安障害の判定法 | 出願番号 | 出願人 | 発明者 :特願2008-24781 :千葉大学 :清水栄司、中澤健、松澤大輔 倉山太一、南部誠 お問い合わせ先 千葉大学 産学連携・知的財産機構 特任教授 井上里志 TEL 043-290-3567 FAX 043-290-3519 e-mail [email protected]