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横浜市のPFI及び公募案件等の適切な 事業推進

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横浜市のPFI及び公募案件等の適切な 事業推進
横浜市長
中
田
宏
様
横浜市のPFI及び公募案件等の適切な
事業推進に関する提言
平成17年8月
建設産業活性化プログラム策定委員会
(社)横浜建設業協会
横浜建設業青年会
(社)神奈川県建設業協会横浜支部
(社)神奈川県中小建設業協会横浜支部
(社)神奈川道路建設協会
(社)横浜市電設協会
(社)神奈川県空調衛生工業会
(社)神奈川県電業協会
はじめに
厳しい経営環境の続く横浜市内建設業界では、その活性化に向けた様々な取組が行われてい
る。横浜市としても、建設業は市民の雇用や地域経済を下支えする重要な役割を担っており、
「災害における協力協定」による市民の安全確保など、市民生活全般に渡ってその存在意義は
大きく、市内建設業界の活性化は重要な課題として捉えていただいている。
こうした中で、平成16年度において建設関連産業に関係するPFIとしては「十日市場小
学校整備事業」が、また公募案件として「権太坂三丁目用地活用事業」、「鶴見中央一丁目土地
有効活用事業」が実施された。横浜市ではPFI等の公民協働型事業が今後も拡大していくと
想定され、地元企業でも連携してこうした事業に取り組む動きが出ている。しかしながら、こ
うした事業の一部では横浜市の設定する事業スキーム及び条件設定で片務的で非合理な点が
あり、あるいは地元企業が応募できないような一方的な民間のリスク負担条項等が散見された。
また地元企業においてもこうした事業への対応が不慣れで、事業理解度や情報収集力、資金調
達力、事業提案力の不足等種々課題を抱え、双方の認識にもある種の齟齬や誤謬が存在する可
能性もある。横浜市では、今後公民協働型事業を推進していく上でも、地元業者がこうした事
業に取り組む上での問題点の整理、解決をしていくことが事業の成否の鍵を握ると認識してい
る。
こうした状況を受けて、横浜市の働きかけで、市内建設業団体等により本部会が設立され、
地元企業がPFI等に取り組むにあたっての事業スキーム、ファイナンス面の課題、条件等を
含め、幅広く問題点の検討を行ってきた。本部会は横浜建設業界8団体及び市内金融機関等(横
浜銀行、浜銀総合研究所、神奈川銀行、横浜信用金庫)で構成され、横浜市の関連部課の方に
もオブザーバーとして参画いただき、意見交換が行われた。
議論の中では、発注者である横浜市、応募者である地元建設関連事業者、資金調達で参画す
る市内金融機関それぞれに対して要望、改善点等を出し合い、検討する中で問題意識を共有化
することに努めた。本提言書はこれらの議論の中から出された要望等をとりまとめたものであ
る。横浜市としても、本提言内容をご理解いただき、全庁横断的な共通認識として捉えていた
だくと共に、それを反映した具体的な案件を検討、実施して頂きたく希望するものである。
適切な事業推進により、公共施設を建設することだけを目的とした P F I 事業からの脱却を
図り、P F I 本来の目的である合理的で公平な質の高い充実した公共サービスを提供すること
で、資産ベース事業から公共サービス事業への転換が可能となり、結果として行財政改革に繋
げることができると思われる。
建設産業活性化プログラム策定委員会
金融専門部会長
1
渡邉
一郎
Ⅰ
円滑な資金調達に向けた基本的取組姿勢
本部会では、主として事業スキームの適切性とプロジェクトファイナンス等の資金調達に関
する課題の整理と対策等について、専門家を招聘し研究を進めてきた。その結果、PFIやP
PPにおける円滑な資金調達を実現するため、今後、具体的なプロジェクトが提起された場合
には、地元建設業界と市内金融機関等が一体となって、
「シンジケート団融資」等の検討や、可
能である場合は「日本政策投資銀行との協調、制度融資の活用」及び「東日本建設業保証㈱の
保証制度の活用」等についても検討し、新たな資金調達手法に積極的に取組むこととしたい。
地元の建設業界は市内金融機関等と共に、PFI等の新しい事業方式研究を行い、自ら適正
なリスク負担を前提に能動的に取組み、プロジェクトファイナンス等の資金調達手法やその他
新しい分野へ積極的に挑戦していこうとするものである。横浜市としても市内建設産業の活性
化、更には地域経済のより一層の振興という観点からも、ご支援を頂きたい。
Ⅱ
横浜市への提言
1 PFI及び公募等の事業手法は、事業規模、内容等を十分検討した上で
PFI及び公募案件への応募は、その応募者にとって経済的にも、労力的にも負担は非常に
大きい。たとえばWTO対象案件以上あるいは特定の事業内容及び一定水準以上の大規模案件
で、特に技術や運営ノウハウを活かして十分なVFMやその事業手法によるメリットが期待で
きる場合に限って実施していくようにするべきである。通常の工事であれば、従来地元事業者
が落札すべき案件がこのような事業手法を採ったことによって大手東京資本の事業者が落札し
てしまうことは、横浜市としても地域経済活性化の上からも望ましいものではない。地元中小
の事業者の多くにとっては、PFIや公募案件に自助努力で参画しろといわれても、やはり人
的にも、経済的に困難がつきまとう。NPO 法人日本 P F I 協会は地域経済活性化に役立つ方式
として「地域完結型 P F I」を提唱している。その場合重要なことは地方自治体及び議会、地
元企業、地域金融機関が協力し、地元企業も主体的に参加できる環境を作ることである。事業
選定にあたっては十分な検討と配慮をするべきである。
2 民間発意へのインセンティブ
民間事業者の発意によって事業企画を市に提案したとしても、それ以降公共発意の通常の手
続きがとられ、他の事業者とまったく同一の条件で競合するとすれば、民間発意によって多く
の費用を負担して事業化への企画・調査を実施するインセンティブは無くなってしまう。従って
こうした民間発意の事業を促進するためには、発意者に対し事業者選定で一定のアドバンテー
ジを与えるか、さもなくば発意に伴う費用の一部補填等を検討すべきである。
3
横浜市独自の事業方式の模索
PFI等の案件では、従来分割して発注されていた設計、施工、管理運営が一括して委託に
出される。今後の公募型の案件についてはこうした一括発注を前提とせず、例えば設計は設計
委託として、施工・管理運営は一体にする等、それぞれ別途の提案型の公募案件とすることを
含め、各々柔軟に事業方式を検討して頂きたい。それぞれの事業ステップについて適正な競争
が促されれば、PFI等と同様の効果が期待できるはずである。地元事業者グループとして、
2
各事業ステップ全てにおいて大手グループに対して競争力を持つことは容易ではなく、可能な
範囲における一体的な事業として応募ができることが望ましい。弾力的に横浜市独自の事業方
式を検討して頂きたい。
4 応募負担の軽減
(1)負荷軽減に配慮した多段階選抜
事業者選抜を二段階あるいはその他多段階にすることによって、途中段階で選にもれた応募
者の負荷軽減することができるとの考え方があるが、実際問題として二段階選抜は応募負担軽
減につながっていないとの意見が多いと思われる。
それは一次選定が資格確認だけで、数多くのグループが二次選定に進み、過当競争の中で、
全応募者が多大な提案書類作成の負荷を負っていることもその一因であると考えられる。第一
段階の選定においては資格確認及び事業の内容に関しては、事業のコンセプト、概要等簡単な
応募書類に限定して頂き、一次選定の通過数はたとえば 3 グループ程度としてできるだけ事業
者数を絞り込み、不要な過当競争を回避し見込みのない事業者にまで応募の負荷をかけるべき
ではない。
ただ、この問題については本部会の議論の中でも、いくつかの異論があることも事実である。
結局二段階にしても、応募の負荷は各段階毎に掛かり、負荷はその分増加する恐れがあるとい
うものである。
本市におけるPFI等の事例では、形式上多段階選抜の形式をとっていても、上記のような
応募者負荷の軽減を念頭においたものとはなっていない。とはいえ、発注者側からも限られた
資料のみから、事業者を絞り込む判断基準を想定することは、かなりの困難を要するものと考
えられる。従って現段階においては断定的に特定の選抜方法を提案することはできないが、で
き得れば、発注者の各案件に対する基礎調査(導入可能性)の段階から、マーケットサウンデ
ィング等の機会を利用して、応募予定者にとってどのような選定方式が望ましいかを含めて、
検討を進めていただきたいと考える。改善のための努力、検討をお願いしたい。
(2)提案書類の簡素化
応募に当たっての提案書類については、事前の資格審査も含め、必要なもののみとし、極力
簡素化していただきたい。なお、二次選定に残った事業者に対しても、応募書類の内容及び点
数(枚数)等をよくご検討いただき、必要最小限の書類にするべきである。
(3)応募負担コストの補助
中小企業にとって、応募コストの負担は少なくない。この問題に関しては、例えば上記多段
階選抜において二次選定に残った応募者に対しては、一定の支援をしていただくことが考えら
れる。これは、設計等における公募プロポーザル方式において上位優秀提案について、賞金を
与えるのと同様であり、詳細な提案書作成に当たって、そのコストの一部を補填するものであ
る。ちなみに最低、直接経費相当額程度の報酬は支給を検討しても良いのではないかと考えら
れる。
(4)十分な応募期間の確保
公募要項公表から提案書提出までの期間を十分に確保いただきたい。通常 3∼6 ヶ月は必要
とされているが、この期間中に 1 回または 2 回の公募要項等への質疑応答があり、その最後の
3
回答が応募締め切り直前ということも過去の事例ではあったので、余裕をもったスケジュール
とすべきである(特に修正条項が、資金調達に影響を与えるものである場合、応募直前の条件
変更への対応は、金融機関との調整等を含めて極めて難しいものとなる可能性がある)。また、
年度末までに事業者選定を行うために、複数の事業がほぼ似たようなスケジュールとなり、提
案書提出時が超繁忙となることがある。市庁内で横断的に適宜スケジュールを調整していただ
きたい。
5 公共と民間の適切なリスク分担
(1)不可抗力等の取扱い
PFI等の事業においては、不可抗力及び法令変更等は公共側のリスク負担が原則である。
仮に不可抗力の場合に、民間がリスクを負う場合でも追加費用の1%あるいは相当額を限度と
するのが通例と思われる。これはあくまでも当該施設等の不可抗力による損害を最小限にすべ
く、管理・運営する民間事業者が可及的速やかに善後策を実施するインセンティブであると想定
されるものである。公募案件においても、公共側が責任を持つべき前提となる事業スキームに
ついては、その不可抗力等の定義をはっきりさせるとともに、上記のような取扱いに準じ、そ
れを明確にするべきである。
(2)契約解除規定、違約金規定の公平性確保
一部の公募案件では、公共側が契約解除できる規定のみしか設定されておらず、片務的な条
項がみられた。PFI案件はもとより他の公募案件についても、公共と民間事業者の公平な契
約行為により事業を遂行しようとするのであれば、当然公共帰責の事業中止についての民間事
業者の契約解除権規定及び違約金規定を設け、民間側の損害を補償する必要があり、建設途中
の場合を含めて当該施設についての買取請求、金融に係わる変更コスト(追加金融費用)補填
のほか、民間帰責の場合と同等の違約金規定を設定すべきだと考えられる。
(3)過大な違約金等の排除
公募案件の中には、民間事業者帰責に対し、累積的あるいは過大とおもわれる違約金条項が
みられた。民間事業者としては、そのような場合、特にプロジェクトファイナンスを活用しよ
うとすると資本金その他でキャッシュリザーブが必要となる。過大な違約金条項は、相当額の
資金を留保しておく必要が生じ事業費を増大させ、事業を非効率なものとする恐れがあり、場
合によっては公共が負担するサービス購入料に跳ね返り割高なものになる可能性もある。これ
らのことを鑑み、違約金については十分検討して頂き、必要最小限にすべきであると考える。
なお、損害賠償と違約金の位置づけを明確にする必要があるが、上記のような理由により、違
約金を以って損害賠償の一部を構成するものと明示すべきである。また、公共帰責の場合も民
間においてと同様の違約金条項、損害賠償条項を設定すべきである。
(4)大規模修繕の取扱い
PFI案件のBTOなどにおいては、施設完成後即公共に引渡し、所有権が公共にあるため、
大規模修繕は公共の責任と負担において実施するのが通常である。その際、公共負担の大規模
修繕と民間の業務範囲である小規模修繕との定義、範囲をできうる限り明確にしていただきた
い。定義が曖昧で小規模修繕の範囲が特定できないと、たとえば公共側の意思で如何様にでも
民間事業者の管理負担が増減してしまう可能性がある。この問題はPFI等数多くの案件でも
4
課題として取り挙げられているものであるが、できうる限り合理的で、明確な定義を設定して
いただくよう希望するものである。それが不可能な場合でも、要項等への質疑応答(Q&A)
の対話の中で、公共の基本的な考え方や基準、事例等を明らかにすることなどによって、共通
認識をつくるよう努めて頂きたい。
また、20年にわたるような長期の事業において、その大規模修繕も事業範囲に含め、当該
修繕費をサービス対価として平準化を図るような事例も他都市ではみられた。予測困難な長期
の大規模修繕のリスクを一方的に民間事業者に負わすべきではなく、サービス対価とは別契約
として、一定期間後の見直し等を取り入れるべきである。
(5)ペナルティ条項の減額範囲
PFI案件等にみられる要求水準の業務不履行に対し、ペナルティ条項によって公共側から
のサービス料等の減額や支払い留保が規定される。その趣旨は理解した上で、既に引渡しが完
了している施設の割賦料金部分にまで、その減額や支払い留保が及ぶとすると、資金調達自体
に支障をきたすことになる。特に運営部分のウエイトの大きな「プラントもの」等と異なり「箱
もの」案件の場合には、引渡した施設の瑕疵がなければ、当該部分の要求水準は満たしている
と考えられ、事業期間中の業務不履行のペナルティについては、事業の運営に係わる利益分の
枠のなかから減額するように考えるべきである。
(6)SPCへの追加出資
「十日市場小学校整備事業」においては、基本協定書の中でSPCの債務超過、資金繰り等
の困難時にコンソーシアム構成員に事業費の10%相当額の(Q&Aにより「3%を超えない
もの」に修正)追加出資又は劣後融資を行うことを規定していた。事業全体のリスクを公共と
民間が適切に分担し、より効率的に管理できる主体が負担し合うのがPFIの主旨であり、そ
れにも拘わらずこの規定は、帰責性を問わず、事業全体のリスクが掛かる事業実施主体である
SPCのリスクを一方的に構成員に負担させるものである。事業を担うSPCの独立性並びに
事業部門の区分経理の上からも問題である。SPCの信用力、資金確保等の業務遂行能力を高
め、事業継続性を担保する目的であるとしても、こうした規定は事業自体の成否に影響するも
のである。慎重な上にも慎重に熟慮されるべきである。
(7)適切な事業期間
施設の耐用年数、大規模修繕の必要性、民間企業の事業継続性、あるいはそもそも各種公共
サービスに対する社会的ニーズの変化を考慮すれば事業期間20年を超えるような事業は、現
実的に民間企業では不可能であると思われる。また、ある公募案件においては、定期借地権期
間50年に対し、市の設定した必須施設の借り上げ期間や賃料補助期間が20年で、その後の
用途変更が認められないなど、民間が事業を組み立てる上で過大なリスクを負担しなけれなら
ないような事例があった。もし、そのような超長期の事業であるとするならば、公共の相当程
度のリスク負担や一定期間経過後の対象物件の転貸・売却等の処分(転貸あるいは譲渡等が認め
られなければ、金融機関が担保設定をしても事実上処分性がない)、あるいは少なくともその時
点における一定の範囲内での変更の余地の明確化、並びに公共と事業者間の事業更新、建替え、
用途変更等の協議を可能とすべきである。
なお、PFI等では既に改善がみられていることではあるが、資金調達において20年にも
及ぶ資金を固定金利で調達することは、民間企業にとっては実質不可能であり、5年あるいは
5
10年などの期間をもって適宜金利見直しの条項を設定していただく必要がある。公募案件に
おいても類似スキームが必要になる場合には、上記の点について留意願いたい。
(8)合理的なリスク分担
PFIにおけるリスク分担は、そのリスクを最も上手にコントロールできる(つまり、安価
にリスク管理ができる)主体が分担することによって、より効率的な事業が可能になるという
のが基本的な考え方である。しかしながら、PFI案件、その他公募案件においては、
(応募手
続きの過程で修正されたものを含み)片務的な条項が多数みられた。民間事業者がコントロー
ルできないリスクを負わされた場合、その対応のために結局当該事業が非効率になり、場合に
よっては公共側の負担するサービス購入料が割高になることにもつながる。合理的で、かつ公
平なリスク分担に努めるべきである。
6 プロジェクトファイナンスを含む資金調達を可能に
(1)複数の事業リスク、リスクの明確化
事業の性格のまったく異なるものを一つの事業としてプロジェクトファイナンスをつけるこ
とは困難である。事業者がリスクを把握しやすい事業計画としていただきたい。
また、プロジェクトファイナンスは民間に移転されたリスクをコンソーシアム内の企業で、
長期安定的に、合理的に配分、管理することによって担保される。そのため想定される全ての
リスクを明確化し、その負担の仕方を契約書に曖昧さを残さず書き込む必要があり、十分な検
討をお願いしたい。
(2)適切な事業スキーム、事業契約書(案)の作成
公募案件のなかには、事業全体のスキームが曖昧で、事業契約書(案)の熟度が低いと思われ
るものがみられた。既存の諸規定との関係を明確にするとともに、整理・検討を十分に行う必要
がある。また、もし事業者選定事後に協議によって細部の決定するにしても、それに必要な条
件規定を明確にする必要がある。その際、事業者側のニーズや事業意欲、事業リスクの分担、
資金調達の可能性等を十分に調査、ご配慮いただき、民間事業者との対話的なプロセスを心掛
けて頂きたい。
(3)適切なキャッシュフローの前提条件の設定
公募案件においては応募時においてもキャッシュフローを決定する地代、賃料、その他サー
ビス購入料金、金利等、公共と事業者間の当該事業のキャッシュフローを規定する諸前提条件
に曖昧さ、あるいは公共側に一方的に有利な決定方法になっている事例が散見される。プロジ
ェクトファイナンスを検討する場合、返済原資はこの事業が生み出すキャッシュフローに依存
し、これらの設定及び見直し方法が公平で合理的でないと資金調達は困難である。こうした諸
前提の設定方法については、公表される継続性、客観性の高い指標を選定し、その指標を基礎
として合理的な計算方法により設定すべきである。当初金額の決定や見直し等基準日について
も民間の資金調達の時期等を十分に考慮し、合理的な設定方法とすべきである。特に問題とな
る金利決定基準日は、契約日等ではなく、物件引渡日等、当該事業の実際の資金需要が発生す
る直前に設定しておくことが必要である。
上記のような諸前提の決定方法は公募要項公表時等のできるだけ早い時期に公表し、また、
事業期間中にその指標や計算方法がなんらかの理由で使用できない場合は、公共と民間が対等
6
に協議し新たな指標等の対応策を検討するべきである。
(4)公共側のキャッシュフローの保証
PFI案件においては、当然公共側の将来のサービス購入料等の支払いの担保として、債務
負担行為の議会承認が前提となる。公募案件についても、プロジェクトファイナンスで資金調
達するためには、同様の手続きによって、将来のキャッシュフローを保証していただく必要が
ある。なお、市当局としても、議会はコントロールできるものではないにしても、民間事業者
として関与できるのは応募までのリスク、コストの負担までであり、それ以上の議会のリスク
は市の負担と責任において事業を実施すべきものと思われる。
(5)プロジェクトファイナンスのDA(直接契約)による治癒方法の協議
プロジェクトファイナンスを活用する場合、契約解除事由が発生した際、一定の治癒期間を
設け再建を図る機会が必要となると思われる。同資金調達の手法の場合、横浜市と金融機関が
別途、DA、またはそれに類する契約を締結し、その中で担保設定、治癒協議、治癒期間、担保
権の行使等のルールの取り決めを行うこととなる。これらのことは、公共側としても当該事業
の再建に繋がる可能性を高めるものとして、基本的な方向性としては了承いただけるものと考
えられる。公募案件の場合にも、そうした資金調達手法の可能性がある場合には、事業スキー
ムも予めそれらを想定してご検討いただきたい。
7
審査方法の改善と地元経済活性化への配慮
(1)審査基準の公平性、透明性の確保と評価方法の詳細を公表
PFI案件でない場合の公募案件においても、審査基準、配点、審査員構成、審査結果、講
評の公表をするべきである。また、PFI案件においても個々の提案における秘匿すべきノウ
ハウを除いて、できるだけ詳細の講評を明らかにしていただきたい。その際、事業者からの質
問についても受け付けるべきである。なお、事業者の要望の中には市民参加、市民投票を審査
プロセスに入れるべきとの意見もみられた。
(2)予定価格の公表と価格以外の要素の重視
他都市を含め過去のPFI案件の審査基準において、予定価格が公表されずまた価格評価が
重視され過ぎた事例が多くあった。結果として、応募者も建設費及び維持管理・運営費の削減ば
かりに注力してきたきらいがある。そうした状況では、本来のPFI事業におけるメリットで
あるはずの民間のノウハウやアイデア生かす工夫や費用は制約されてしまう。多大な労力と費
用をかけて作成した提案書類が、価格オーバーを理由に失格になるとすれば一度も評価の対象
にさえなることなく無駄になってしまう。しかも、利益の確保もおぼつかない価格競争に終始
するとすれば、応募者の意欲は続かず、やがてPFIという事業手法そのものが成立しえなく
なる可能性もある。
発注者である公共側としても、単に安いことが望ましい訳ではないはずである。価格とサー
ビスの質がバランスが良く、住民が求める質の公共サービスの安定した提供が目的であり、た
とえば予定価格の公表とあわせて、加点方式による価格以外の要素の評価ウエイトを 5 割以上
に増やすなど、適切な価格と質のバランス求めた事業を志向していただきたい。
7
(3)地元企業への加点
可能な事業案件(WTO対象でない事業)については、地元企業への加点等の配慮を願いた
い。他都市においては、既にそのような事例があるようである。地元経済の活性化という視点
をないがしろにすべきではないと考える。「横浜市PFI等基本方針・ガイドライン」(平成1
5年3月)によれば、WTO対象以外のPFI事業において事業目的を達成するために必要で
あれば地域活性化に配慮した評価をしていくとしており、また、計画、建設、維持管理等事業
の各段階において市内企業を協力企業として活用するよう落札者に働きかけるとも明記されて
いる。市庁内において、上記のような認識を再度確認し、徹底して頂きたい。
提案審査
WTO政府調達協定の適用対象以外のPFI事業において、事業目的を達成するために必要と
考えられる場合は、地域の活性化や地域からの材料調達等に配慮した評価項目を採用していき
ます。
市内企業活用についての落札者(優先交渉権者)への働きかけ
PFIにおいては、計画、建設、維持管理、運営などの段階で多様な業種の協力企業の参画が
行われることから、市内経済活性化のため、これら各段階で技術力等を考慮した上でできるだ
け市内企業が協力企業として活用されるよう、事業者選定後に落札者(優先交渉権者)へ働き
かけるものとします。
「横浜市PFI等基本方針・ガイドライン」(平成15年3月)より抜粋
8
むすびにかえて
地元の中小建設関連事業者にとって、厳しい状況が続いている。しかしながら建設市場の急
激な縮小や入札制度改革、それのPFI及び公募案件等の新しい事業方式の増加等、近年にお
ける建設市場の大変革は既に後戻りできない時代の大きな流れの中にいるように思われる。
そうした中で、我々地元建設関連事業者は、正に生き残りをかけた舵取りを迫られていると
いえる。本提言書は、横浜市及び市内金融機関の支援を受けながら、本部会における議論をと
りまとめたものであり、一義的には発注者である横浜市に対しての提言となっている。しかし
ながらこうした提言の前提として、我々地元建設事業者が何をすべきかが問われているといえ
よう。すなわち、自らの力で何をすべきかである。
一つのヒントとなり得る戦略としては各社が連携し、個々の強みや経営資源を使い一つの案
件に挑戦することであろう。PFI等の新しい事業方式について徹底的に勉強することを前提
として、具体的な事業に関する情報収集、他業種とのコンソーシアムの結成、各社の得意分野
を持ち寄っての提案、コンサルタントの活用、資金調達の研究等、自ら危機感を持って具体的
な行動が求められているといえる。
9
建設産業活性化プログラム策定委員会金融専門部会名簿
【 委
員 (8団体) 】
団体名
役
会
職
氏
名
会社名
長
白
井
享
一
㈱
会長代理
工
藤
次
郎
工
嶋
秀
白
井
組
(社)横浜建設業協会
前 会 長
横浜建設業青年会
(社)神奈川県建設業協会
横 浜 支 部
会
菊
長
村
副 会 長
工
藤
副支部長
小
俣
企画研究委
員長
渡
奈 穂 樹
一
克
建築委員長
筒
見
(社)神奈川道路建設協会
企画委員長
佐
藤
(社)横浜市電設協会
理事渉外委
藤
員長
澤
(社)神奈川県空調衛生工業会
会
川
本
(社)神奈川県電業協会
常任理事渉
松
外委員長
田
10
圭
邉
(社)全国中小建設業協会
横 浜 支 部
長
生
(株)
藤
キ
建
設
ク
シ
㈱
マ
二
葉
建
設
㈱
亮
昭
和
建
設
㈱
務
㈱
小
俣
組
㈱
渡
辺
組
郎
彦
㈱ 筒 見 工 務 店
弘
日
機
道
路
㈱
光
男
藤
沢
電
気
㈱
守
彦
川
本
工
業
㈱
茂
㈱
江
電
社
【 委
員 (金 融機 関 ) 】
会社名
横
浜
銀
部署名
行
役
市場営業部
営業推進本
部
(株)浜銀総合研究所
戦略研究部
(株)神 奈 川 銀 行
営業統括部
横 浜 信 用 金
庫
業
融
務
資
職
氏
名
グループ長
大
塚
清
グループ長
加
藤
隆
調
役
前
田
直
孝
主任研究員
朝
野
尚
行
副主任研究
員
宮
島
耕
史
主任調査役
大
川
哲
二
公務室長
池
谷
研
一
副調査役
三
浦
副調査役
野
田
査
部
部
洋
淳
嗣
【 オ ブザ ーバ ー (公 民協働 事業 応募 企業 ) 】
団体名
氏
名
前
田
義
仁
遠
藤
知
明
野
沢
光
司
藤
喜
一
(社)横浜建設業協
斉
会
岡
上
田
田
会社名
保
哲
也
備
考
工藤建設
「権太坂三丁目用地活用事
(株)
業」応募企業
工 藤 建 設
(株)
馬 淵 建 設
(株)
「十日市場小学校整備事業」
馬 淵 建 設
応募企業
(株)
(株)白井組
「十日市場小学校整備事業」
(株)松尾工
「鶴見中央 一丁目土 地有効
務店
活用事業」応募企業
11
【 オブザーバー (横浜市関係局) 】
局
部署名
役
職
氏
名
横浜市総務局
公共事業調査課
担当課長
飯
島
悦
郎
横浜市財政局
総務課財源担当
課長
大
木
節
裕
市債係長
伊
藤
敏
孝
経営金融課
課長
石
原
孝
経営金融課
金融係長
中
島
守
部長
紙
井
部次長
齋
藤
部次長
成
井
敏
昭
高
井
雄
也
横浜市経済局
横 浜 市 ま ち づ く 公共建築部
り調整局
企画管理課
建設業活性化対策担当
企画管理課
文
雄
泉
(平成17年7月現在)
12
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