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資料2
薬物乱用と依存
大阪市こころの健康センター
田中政宏
最近の芸能・スポーツ界の違法薬物事件
2008 ロシア力士が大麻(マリファナ)所持で逮捕/解雇
2009 酒井法子が覚せい剤所持・使用で逮捕
押尾学が友人女性とMDMAを服用中に女性が死亡。
麻向法違反などで逮捕
2010 田代まさし コカイン・大麻所持で逮捕(5回目)
2014 ASKAが覚せい剤取締法違反などで逮捕。
懲役3年執行猶予4年の判決確定
2015 小向美奈子覚醒剤使用で3度目逮捕 懲役1年6月実刑判決
高部あいコカイン使用の疑いで逮捕(起訴猶予)
2016 清原和博覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕 有罪判決
芸能人だけで最近これだけの事件がある
一般人の事件は無数にある
危険な薬物はそれだけ身近にある証拠
ここで、ちょっと考えてください。
なぜ違法薬物を使用してはいけないのか?
なぜ自己責任ではいけないのでしょうか?
なぜ、違法薬物の害が問題なのか?
一度はじめるとまず止めれない
脳に回復不能なダメージ
後遺症で一生苦しむ。
症状(幻覚)により、または薬物を買う金を得るた
めに、犯罪を犯すことが少なくない
友人がいなくなる
家庭が崩壊する
仕事につけなくなる
用語: 乱用・依存・中毒
 乱用:薬物を社会的に許されない目的と方法で使うこと
 依存
身体依存:乱用の繰り返しの結果,離脱症状の苦痛から逃れる
ため,再使用すること (アルコール、モルヒネ、バルビツール)。
精神依存:乱用の繰り返しの結果,脳機能の異常のために,薬
効が切れると再使用したいという欲求(渇望)が湧いてきて,その
渇望をコントロールできず,再使用してしまうこと (国内の乱用薬)
 中毒
急性中毒:薬物使用の結果,急性に身体に有害な事象が生じる
(アルコールの一気飲みによる昏睡、危険ドラッグ使用)
慢性中毒:薬物の反復使用により,身体に慢性的障害が生じる
(アルコールによる肝硬変,有機溶剤による脳萎縮,覚せい剤による精神病など)
6
精神依存の病態生理
 「報酬系」とよばれる脳内(中脳と大脳皮質)のシステムが関与
 欲求が満たされたときの気持ちよさのこと
報酬は“快感”
ドパミン(神経伝達物質のひとつ)が放出されると快感を感じる
 報酬系は「条件づけ」を支えている
条件付け:一定の操作により特定の行動や反応を起こす学習
快感(達成感,成功報酬といってもよい)を伴う
 薬物,依存性行動はドパミンを放出させ,条件づけを形成する
 精神依存はこの報酬系に異常が起こった状態(抑制が効かない)
 意志による使用の制御が極めて困難な状態
7
依存者の心理・行動
 依存対象の探求がすべてに優先するようになる
 結果として,
約束を破り,嘘をつく。
その場しのぎの言い訳をする
失敗をつくろうためにまた嘘をつく
 「否認」という心理
自分が依存症であることを認めない
「止めようと思えば、いつでも止められる」
「今だけ,これが最後」
8
エルトン・ジョン
最も成功したイギリスのアーティストの一人、ナイトの称号を持つ
70年代、重度のコカイン中毒に陥っていた。
 「本当に死ぬ寸前、ギリギリだった。床の上に倒れ、
ひきつけを起こして真っ青になり、周りの人にベッド
まで運んでもらって。でも、その40分後には、またコ
カインを鼻からすすり上げていた」
 「マリファナを吸い続け、スコッチを飲み続け、3日3
晩、起きっぱなしだったこともある」
 「でも、ヤク中だと思ってなかった。ヤク中っていうの
は、腕に注射針を刺すような野蛮な奴らだと思って
たから。自分が一番のヤク中だったのにね」
規制薬物取締に関する4法 (+薬機法)
1. 「麻薬及び向精神薬取締法」(麻向法)
モルヒネ、ヘロイン、コカイン、向精神薬、
MDMA、麻薬原料植物(マジックマッシュルームなど)
2. 「覚せい剤取締法」:アンフェタミン類
輸入、輸出、製造、流通、 所持、使用等を規制
3. 「大麻取締法」:大麻
栽培・流通・所持の規制
4. 「あへん法」
けし栽培とあへんの輸入、輸出、生産、流通、所持等を規制
比較的身近にある危ない薬
覚せい剤
危険ドラッグ
幻覚剤:MDMAなど
いわゆるハーブ
大麻(マリファナ)
シンナー(有機溶剤)
アルコール、タバコ
覚せい剤
シャブ,スピード,アイス
 アンフェタミン・メタアンフェタミン類の精神刺激薬
 疲れが取れるクスリ、やせ薬として売られる
押
収
さ
れ
た
覚
せ
い
剤
“アイス”
販売用の小袋
錠剤型
覚せい剤の使用法と効果
注射:水に溶かして静脈注射する
効き目が早く、強烈
吸い込む
アルミホイルにのせ下から焙って煙を吸う
錠剤:あぶない雰囲気がないので最初に使われやすい
使うと一時的に爽快に感じ、疲労感がとれ、集
中力が増加し、寝ずに食べずに活動できる。
しかし、他人から見ると、落ち着き無く、怒りやすい
 私が覚せい剤を初めて注射したのは、18歳の時で、先輩
に注射をしてもらいました。
 身体がフワッとしたよい感じでしたが、本当のことを言い
ますと「こんなものか」というのが実感でした。
 しかし最初の気持ちとは裏腹に身体がフワッとした気持
ちが忘れられず段々と回数が増えてきました。
 その結果、体がだるく仕事するのが面倒臭くなり、家庭を
顧みることもなくなり、これが原因で妻とは離婚となり、子
供とも離れ離れになりました。
 それからというものは一層病み付きとなり、お金の続く限
り毎日4~5回注射し続けました。
覚せい剤が危険なわけ
 耐性が強い(使用量はどんどん増える)
 精神依存が非常に強い (身体依存はない)
精神的離脱症状:うつ、脱力感、倦怠感、不安 → また使用
 強烈な被害妄想:覚せい剤精神病
「誰かに殺される」、「警察に追われる」→人を傷つける
逃げようとして、自分の身体を傷つける
病院にもよく護送されてくる
一旦使うと治療は死ぬまで必要
再犯率40%、フラッシュバック
MDMA
メチレン ディオキシ メタンフェタミン
別名:エクスタシー,玉,バツ,ペケとか
MDMA の身体への影響
飲んでから30分~1時間で,
すごくしあわせな気分
幻覚体験
他人との一体感(触覚快感)
クラブ、レイヴなどで好んで使われる
その一方で,
高体温(激しい汗)、不整脈
錯乱,記憶障害など精神的な症状
合成された麻薬:化学組成は覚せい剤類似
使用、所持、譲渡は違法
麻薬及び向精神薬取締法違反
裁判での被告の証言より
 「○○さんはまず、ベッドの上であぐらをかき、ブツ
ブツと独り言を言い始めました。私が『大丈夫か』と
声をかけると、返事をしてくれました。
 それが数分、長くても10分続いた後、OOさんは突
然歯を食いしばった表情になり、こぶしを握りしめて
上下に動かし、あおむけに倒れてしまいました。
 目は半目のような状態でした。息もしていないし、脈
も止まっていたので、人工呼吸や心臓マッサージを
繰り返しましたが、生き返りませんでした」
MDMAの危険さ
記憶障害・意識障害
使用中止後の全身倦怠感、不安・うつ、不眠
突然死:呼吸停止・心停止、錯乱して事故死
 特に大量の発汗を伴い水分補給が十分でない場合などにおこり易い
有害不純物の混在:密造過程で混じる
体が慣れるので使用量が増える→上記症状につながる
錠剤なので抵抗が少ない
危険ドラッグ(いわゆるハーブ)
危険ドラッグ
•精神作用化学物質等を含有するハーブ製品
•大麻・覚せい剤に近い成分、他の(非合法)化学物質を含む
•お香などとして販売
•日本では2010年ころから流通増加、種類が非常に多い
精神作用薬
ハーブ
有名な製品「スパイス」
危険ドラッグ(ハーブ)症状
症状
頻度
頻脈
40%
興奮、イライラ感
23%
嘔吐
15%
精神錯乱
12%
悪心
10%
幻覚、妄想
9%
高血圧
8%
めまい
7%
胸痛
5%
2010年アメリカでの中毒症状の例1,353名中の頻度
毒性に関するデータは不明
大麻と比較して中毒性が高く、深刻な毒性がある可能性
覚せい剤と類似の成分を含む報告も
危険ドラッグ: なぜ危険?
製造過程が不明。通常、単一成分の製剤でない
どのような成分が入っているか不明
嘔吐剤、キニーネ、殺虫剤、写真の現像液などが
混ぜられていることが少なくない
常用者の中には、効き目の弱い成分では満足できず、雑
成分が入っている方がショックもたらすとして好む者も
もともと危険な主成分のみならず、これら有毒な雑
成分の併用は死に至りうる
脱法ドラッグ: 薬事法の包括指定薬物に
2013年3月
厚生労働省は脱法ドラッグに使われる化学物質
を、成分構造が似ていれば一括して規制する
「包括指定」(薬事法)の対象とした。
「カンナビノイド(の一部)」および「カチノン類」の
約1200種類が薬事法の「指定薬物」となり、製
造、販売、輸入が罰則付きで禁止
薬事法は2014年11月に改正施行され、医薬品医療機器等法となった。
医薬品医療機器等法(薬機法) 改正
危険ドラッグ対策
2014年(H26)12月施行
「疑い物品」新設:指定薬物等(or 同等毒性)疑い
発売停止・検査命令
販売等停止命令:店舗単位から全国化
広告中止命令の創設
インターネット対策等:
販売サイトの削除をプロバイダ等に要請
薬事法は2014年11月に改正施行され、医薬品医療機器等法となった。
大麻
大麻(マリファナ,ハシシ,葉っぱ,草,緑)
浮遊感、知覚鋭敏、誇大感、錯覚、幻覚おこす
時に不快感、気分の落ち込み(bad trip)
乾燥大麻
野生の大麻
大麻樹脂
ほかのクスリはだめでも、大麻はOK?




「大麻は酒やタバコより安全」と聞いた
吸ったことのある人が無害と言ってた
古来、薬として使われていたらしい
オランダでは普通に買える(厳密には違法)
ちょっとなら吸ってもええんちゃう?
大麻の事実
他のクスリが危険すぎて、一見安全に見える
タバコより健康被害は少ないとはいえる:がん、心疾患等
しかし、タバコにはない重度の精神症状の可能性
精神依存:効果が切れてくると無力感を感じて、また使用
フラッシュバック:→止めても精神症状続く
後遺症:大麻精神病
無気力・無関心・情緒不安定・被害妄想
ほかのより危険な薬物への入り口 entry drug
大麻との関わりは犯罪として罰せられます
多くの国で吸うことも持つことも栽培することも違法
街で売ってたから、ではダメ。
東南アジアなどで日本人が逮捕されている。
オランダでも厳密には違法(少量なら起訴されないだけ)
日本の罰則は厳しい:大麻取締法違反
もらう、あげる、または持つだけで5年以下の懲役
栽培したら7年以下の懲役
大阪で薬物相談,治療をしているところ
大阪市こころの健康センター(都島区)
大阪府こころの健康総合センター(住吉区)
大阪府立精神医療センター(枚方市)
久米田病院(岸和田市)
長時間お疲れさまでした
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 シンナー(含トルエン等)の蒸発ガスを主に口から吸
 夢の中のようなフワフワした感じ(酔った感じ)→ 麻酔の手前
幻覚:自分が空想した情景が目にみえる
 薬物乱用の“入り口”:覚せい剤使用者に経験者多い
 毒物および劇物取締法で規制
シンナーの害
使用後さめたら全身倦怠・頭痛
身体へのダメージが大きい。
脳(ボケる)
肺(せき,たんが止まらない)
卵巣,精巣(不妊)
歯
人間としての“壊れ度”が高い。
性格変化が激しい(怒りっぽい,無気力)
幻覚,被害妄想(「誰かに殺される」:覚せい剤に似る)
最近の未成年薬物乱用の特徴
 有機溶剤乱用の激減
 「有機溶剤優位」から「大麻優位」,さらに「危険ドラッグ」へ
 ソフト志向(依存性の強い薬物から弱い薬物へ)
 「捕まる薬物」から「捕まらない薬物」へ
 若者のスタイルの変化
 集団でシンナー吸引はダサい
 ネット購入した脱法ドラッグをひとりで部屋で楽しむ
 覚せい剤乱用の頭打ち
 規制によるMDMAの激減
 警察の行き過ぎた取り締まりに批判も(クラブの0時閉店)
 向精神薬乱用の静かな拡大
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