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【松江市史講座】 松江市近郊の民具 平成 25 年 12 月 7 日 浅 沼 政 誌 1.民具とは (1)民具の定義 「民具」という用語は、アチックミューゼアム(屋根裏の博物館)を設立した渋沢 敬三が、昭和8年(1933)頃に提唱した造語で、学術用語として使用。 「民具」を、 「我々同胞が日常生活の必要から技術的に作り出した身辺卑近の道具」 と定義。 ※渋沢敬三 日銀副総裁・総裁(戦前) 、大蔵大臣、国際電信電話株式会社社長・会長を歴任するなど、 政財界で活躍。その一方で、民俗学・民具学・漁業史などの研究者として先駆的な業績を残 した。 (2)民具の分類(文化庁『民俗資料調査収集の手引き』第一法規、1965 年より) 1)衣食住 ①衣(服物、結髪・化粧用具、裁縫・洗濯用具) ②食(食料、貯蔵用具、炊事用具、調理・調製具、保存・加工用具、醸造・製造用 具、嗜好品用具、食品、飲食器 ③住(屋敷構え、住居、付属建物、家具・調度、寝具、建築習俗用具、防護用具 2)生産・生業 ①農耕 ②山樵 ③漁撈 ④狩猟 ⑤養蚕 ⑥畜産(養鶏等を含む) ⑦染・織 ⑧手工(藁・竹・板細工) ⑨諸職(大工・左官・屋根屋・鍛冶屋・桶屋・木地師・たたら・陶工・漆工等) 3)交通・運輸・通信 ①交通・運搬施設 ②運搬具 ③車・舟・そり類 ④交通・旅行用具 ⑤通信施設・用具 4)交易 ①交易施設 ②商業用具 ⑤証書・手形・藩札類 ③計算・計量具 ④鑑札・看板・広告類 ⑥印章・絵符類 5)社会生活 ①共同施設 ②共有道具 ⑤家じるし・印判類 ③防災、避難用具 ④警防・刑罰用具 ⑥贈答・社交用具 6)信仰 ①聖地・祠堂 ②神体・偶像類 ⑤奉納・祈願品類 ⑥縁起物類 ③神事・法会用具 ④神札・護符類 ⑦信仰関係服装・用具 ⑧憑霊関係用具 7)民俗知識 ①教育施設・用具 ②医療・衛生施設 ④卜占・まじない用具 ③薬品、医療・保健具 ⑤暦・計時用具 ⑥規矩・準縄類 8)民俗芸能・娯楽・遊戯等 ①芸能・娯楽施設 ②衣裳・道具類 ⑥雑芸用具 ⑦競技用具 ③楽器類 ④仮面・仮装類 ⑤人形 ⑧娯楽・遊戯具、玩具 9)人の一生(通過儀礼) ①産育等施設 ②妊娠・出産 ⑤七五三・成人祝い用具 ③生児儀礼用具 ⑥婚礼用具 ⑨葬送用具 ⑩忌明け・年祭用具 ④育児用具 ⑦婚姻関係用具 ⑧厄年・年祝い用具 ⑪喪屋・霊屋・墓等 10)年中行事(※抜粋) ①正月行事 ②節分 ③ひな祭り ④五月節句 ⑤盆行事 等 (3)「民具」の特徴 イ)「自製民具」・・・素人の手づくり ロ)「流通民具」・・・専門職人によるもの 「在来民具」 「新民具」・・・機械による大量生産 2.島根町歴史民俗資料館の民具(約 2,000 点) 日本海を生業の場とする漁撈関係の民具を中心に収集・保管 漁撈関係民具 分 類 点数 280 点 1)釣り具 2)突・磯物捕採具 43 点 3)網具 48 点 4)陥穽具 かんせい 7点 5)舟関係 5点 6)加工用具 55 点 7)交易・運搬具 99 点 8)信仰用具 45 点 9)衣関係 31 点 10)製作用具 67 点 11)その他 17 点 合 計 島根町歴史民俗資料館 810 点 3.宍道町蒐古館の民具(1,527 点) 現在も続く宍道湖の漁撈と来待石加工に関係する民具を中心に収集・保管 (1)漁撈関係民具 分 類 1)貝類捕採具 点数 4点 2)網具 510 点 3)陥穽具 かんせい 36 点 4)舟関係 22 点 5)舟大工用具 1式 6)加工用具 1点 7)交易・運搬具 8点 8)その他 8点 合 計 590 点 宍道町蒐古館 (2)来待石加工関係民具 分 類 1)加工用具 2)計測・計量具 108 点 27 点 5点 3)運搬具 4)加工用具調整具 合 点数 計 11 点 151 点 4.八雲町郷土館の民具(8,639 点) ※年中行事などの写真資料類も含まれる 八雲町で営まれてきた衣食住をはじめとする生活全般にわたる民具を収集・保管 紙すきや山樵(木挽き・漆採取)など、山間部の特色を示す資料がある。 ・保管資料の例 ①紙すき関係 ミツマタ、楮、雁皮、紙たたき棒、甑、すのこ、紙切り包丁、けた ②山樵関係 漆鉋、篦、漆刷毛、大鋸、鉈、くさび、かすがい 八雲町郷土館 等 等 5.松江市街地の諸職調査で見られた民具 旧松江市において伝統産業であるとの認識が高い諸職を選び、現在の製造工程や以前か らの変化について聞き取り調査を実施。この中で見られた民具を紹介しておきたい。 ■ 調査を実施した諸職 ・和菓子製造 ・製茶販売 ・蒲鉾製造 ・醤油製造 ・酒造販売 ・塗師(八雲塗り) ・蕎麦屋 【参考】 島根町歴史民俗資料館 日本海 中海 宍道湖 宍道町蒐古館 八雲町郷土館 3施設の位置図