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平成15年度 包括外部監査の結果に関する報告書 包括外部

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平成15年度 包括外部監査の結果に関する報告書 包括外部
平成15
平成15年度
15年度
包括外部監査の結果に関する報告書
市営住宅の管理運営について
平成 16 年 3 月
旭川市包括外部監査人
公認会計士
坪沼一成
包括外部監査の結果に関する報告書
目
次
頁
第1 外部監査の概要........................................................ 1
1.外部監査の種類 ..................................................... 1
2.選定した特定の事件 ................................................. 1
3.事件を選定した理由 ................................................. 1
4.監査対象期間 ....................................................... 1
5.監査実施期間 ....................................................... 1
6.包括外部監査の補助者 ............................................... 2
7.利害関係 ........................................................... 2
8.市営住宅の概要 ..................................................... 2
第2 外部監査の結果........................................................ 5
1.募集方法 ........................................................... 5
2.入居者の選考方法 ................................................... 6
3.入居審査及び家賃決定並びに入居後の家賃の減免申請.................... 7
4.入居時の敷金及び家賃の納付並びに入居以後の家賃の納付方法.......... 11
5.敷金の管理状況 ................................................... 15
6.家賃収入補助金等の申請 ........................................... 16
7.住宅建設等請負契約及び補助金申請 ................................. 19
8.修繕費 ........................................................... 22
9.委託費 ........................................................... 25
10.滞納家賃の債権管理................................................ 26
11.高額所得者 ....................................................... 31
12.収入超過者 ....................................................... 33
13.不納欠損処分 ..................................................... 34
14.退去時の手続 ..................................................... 36
15.特定公共賃貸住宅.................................................. 37
包括外部監査の結果に関する報告書
に 添 え て 提 出 す る 意 見 書
目
次
.
頁
1.市営住宅に係る財政状況............................................ 39
2.建設費等の抑制.................................................... 43
3.長期滞留債権の解消策.............................................. 46
4.明渡し請求手続.................................................... 48
5.事故空家 ......................................................... 50
6.市中心部の開発.................................................... 50
7.損害保険 ......................................................... 51
8.広報活動 ......................................................... 51
<参考資料>市営住宅建物取得金額...................................... 53
報告書中の表の合計は、端数処理の関係で、総数と内訳の合計とが一致しない場
合があります。
包括外部監査の結果に関する報告書
第1 外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件
市営住宅の管理運営について
3.事件を選定した理由
公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足る
住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、また
は転貸することを規定している。旭川市においても平成 14 年度末現在で 35 団地、4,560
戸の市営住宅があり、実質的に空家がない状態が続いている。平成 14 年度の入居者募
集においては、募集倍率(募集戸数に対する応募数の倍率)が新設住宅 29.05 倍、既
設住宅 9.40 倍となっており、市民の市営住宅に対するニーズは極めて高いものがある。
一方で、市営住宅の維持管理等には毎年 200 百万円以上の費用がかかるほか、順次
建替えを推進していることから建設事業費として毎年 2,000 百万円前後の歳出がある。
建設事業費の半分は補助金で賄われ、残額は起債により資金調達しているので将来世
代の負担になりかねない。また、市営住宅の未収家賃は平成 14 年度末現在で 333 百万
円に達しており、この面からも市の財政を圧迫している。
このように、需要に対して市営住宅の供給が不足気味であることを踏まえつつ、そ
の管理運営には多大な費用を要するので、特定の事件として選定し、管理運営が効率
的に行われているか、建替えが計画的に行われているか、適格な者が入居しているか、
入居希望者の応募機会が確保されているかなどの点を調査することとした。
4.監査対象期間
原則として平成 14 年度。必要に応じて監査時点の状況及び平成 13 年度以前の年度
も監査対象とした。
5.監査実施期間
平成 15 年 7 月 7 日から平成 16 年 3 月 29 日まで。
1
6.包括外部監査の補助者
公認会計士
逸見 和宏
公認会計士
米本 憲司
税 理
西
士
康子
7.利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、私と旭川市との間には地方自治法第 252 条
の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
8.市営住宅の概要
道営住宅を含む旭川市内の公共賃貸住宅の団地別棟数および戸数は次頁のとおりで
ある。平成 12 年の国勢調査では、旭川市の総世帯数(住宅に住む一般世帯)は 144,522
世帯であるので、市営住宅は世帯比で 3.2%を占めている。なお、市は老朽化した簡易
耐火構造の市営住宅を対象に現在建替計画を推進中であり、最終的には 4,800 戸の供
給を目標としている。
2
事業 主体 番号
団地名
市営
1中
央
2緑
町
3第
1
豊
岡
4第
2
豊
岡
5第
3
豊
岡
6東
豊
7第
1
東
光
8第
3
東
光
9神
居
10 亀
吉
11 新
町
12 南
町
13 旭
正
14 江
丹
別
15 第
1
永
山
16 第
2
永
山
17 春
光
1
区
18 春
光
2
区
19 春
光
6
区
20 大
町
21 春
光
台
22 神
楽
岡
23 藤
岡
24 瑞
穂
25 高
台
26 千
代
ヶ
岡
27 東
鷹
栖
28 第 4 東 鷹 栖
29 神 楽 岡 ニ ュ ー タ ウ ン
30 愛
宕
31 朝
日
32 新
富
33 忠
和
34 神
楽
東
35 川
端
第
2
東
光
春
光
5
区
第 1 東 鷹 栖
合
計
道営
1豊 岡 第 1 団 地
2豊 岡 第 2 団 地
3豊 岡 第 3 団 地
4春 光 第 1 団 地
5春 光 第 2 団 地
6春 光 高 台 団 地
7神楽岡 ニュータ ウン
8啓
北
団
地
9第2神楽岡 団地
10 神
居
団
地
小 計
合 計
所 在地
8条通8丁目
緑町 24丁目
5・6条通24丁目
豊岡 5条1丁目
豊岡 6条1丁目
豊岡 4条3丁目
東光 10条3丁目
東光 12条4丁目
神居 4・5条 11・12丁 目
5条西8丁目
東旭 川北1・2条6丁 目
東旭 川南2条6丁目
東旭 川町旭正325番地
江丹 別町中央
永山 1条17丁目1番 1
永山 5・6条 15丁目
春光 5条1丁目
春光 4条4丁目
春光 6区2条2・3丁目
春光 町10番地
春光 台3・4・5条4・5丁目
神楽 岡12条2丁目
西神 楽南2条4丁目
西神 楽2線 10号
西神 楽南2条1丁目
西神 楽1線 24号
東鷹 栖4条 4丁目
東鷹 栖4線 15号
緑が 丘1・2・3・4条1・2丁目
豊岡 15条6丁目
11条 通23丁目.豊岡13条 1丁目
東3条7・8丁目
忠和 2・3条 6・7・8丁 目
緑が 丘東2条4丁目
川端 町5条 10丁目
東光 12条3丁目
春光 5区1条4丁目
東鷹 栖1条 3丁目
38 団地(実質は 35団地)
平 成15年3月31日現在 (単位:㎡)
棟数 管理戸数 敷地面積 土地 所有
備考
1
24
683 市有地
3
90
13,044 市有地
5
108
10,758 市有地
4
96
7,519 市有地
3
72
5,388 市有地
1
16
657 市有地
6
221
24,214 市有地
3
159
20,625 市有地
5
241
25,606 市有地
3
52
6,419 市有地
14
24
5,265 市有地
14
70
11,999 市有地
2
10
2,512 市有地
2
4
1,833 市有地
1
80
9,851 市有地
15
125
22,785 市有地
1
50
4,626 市有地
4
202
21,511 市有地
12
294
33,202 市有地
1
24
2,175 市有地
149
626 143,527 市有地
1
50
7,551 市有地
4
15
1,983 市有地
4
14
3,557 市有地
8
32
7,637 市有地
4
16
2,413 市有地
1
60
7,719 市有地
2
8
1,520 市有地
32
767
95,589 市有地
5
140
12,966 市有地
4
100
10,763 市有地
3
60
5,988 市有地
11
400
53,938 市有地
8
250
30,117 市有地
2
60
5,100 市有地
0
0
18,531 市有地 平 成 5年 用 途 廃 止
0
0
2,832 市有地 平 成 10年 用 途 廃 止
0
0
2,335 市有地 平 成 9年 用 途 廃 止
338
4,560 644,740
3
72
9,266 市有地
6
106
19,456 市有地
5
116
16,660 市有地
6
117
12,051 道有地
2
40
4,225 道有地
6
96
20,746 道有地
24
454
55,079 道有地
8
255
28,881 道有地
6
192
23,697 道有地
1
16
1,785 道有地
67
1,464 191,846
405
6,024 836,586
(注)春光5区、第1東鷹栖については、平成 15 年 4 月に普通財産として総務部管理課
へ引継ぎした。その後公売に付され、春光5区については売却済みである。
3
過去 5 年間の市営住宅入居状況は次のとおりである。建替えなどのために政策的に
空家にしているものを除くと、実質的な空家は極めて少ない状況にある。
A
年
度
B
管理戸数
C
入居戸数
空家戸数
D
E
(%)
政策空家を除く実
実質空家率
質空家戸数
(D/A×100)
平成 10 年度末
4,398
4,164
234
154
3.5
平成 11 年度末
4,463
4,302
161
94
2.1
平成 12 年度末
4,476
4,401
75
48
1.1
平成 13 年度末
4,548
4,471
77
27
0.6
平成 14 年度末
4,560
4,451
109
37
0.8
4
第2 外部監査の結果
1.募集方法
(1)概 要
市営住宅の入居者募集は、次の方法により行っている。
・ 市が発行する広報誌への掲載
・ 市役所及び各支所に募集要領を掲示
・ 報道機関への報道依頼
・ 市のホームページへの掲載(平成 15 年 12 月から)
応募状況は以下のとおりであり、年々募集倍率が増加している。募集戸数に対す
る応募数の倍率については、募集戸数が例年に比べて少ないという事情もあり、平
成 14 年度においては新設住宅で 29.05 倍、既設住宅で 9.40 倍と高い水準になって
いる。
区分
年度
新設住宅
募集戸数
既設住宅
応募数
倍率
募集戸数
応募数
倍率
平成 10 年度
64
436
6.81
586
1,117
1.91
平成 11 年度
106
689
6.50
379
675
1.78
平成 12 年度
52
459
8.83
249
764
3.07
平成 13 年度
84
768
9.14
201
797
3.97
平成 14 年度
19
552
29.05
163
1,533
9.40
募集から入居までの一連の流れは 13 頁の「入居までのフローチャート」を参照さ
れたい。
(2)監査要点及び手続
公営住宅法第 22 条、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第 27
条及び旭川市営住宅施行規則第 3 条に基づき、地域内の住民に周知できるような方
法で募集が行われているかどうかを検証するため、平成 14 年度の広報誌・新聞の記
事を確認した。
(3)監査結果
平成 14 年 7 月中旬から 8 月上旬にかけて、広報誌、北海道新聞、北海道建設新聞
において一斉募集をしていることを確認した。一斉募集後の補欠登録者の随時募集
は例年 9 月に広告しており、空室が生じた場合は補欠登録者より順次入居すること
になる。監査の時点ではこの随時募集の広告は年 1 回のみであった。このため、本
5
広告以降常時補欠登録を受け付けていることや、空室状況及び待機者(補欠登録者)
の状況が市民にはわかりにくくなっている。広告の内容及び回数を検討するなど募
集広報に検討が必要である。また、入居待機者がなく空室が出た場合は速やかに募
集広告を行うべきである。なお、平成 15 年 12 月から、市は空室が出た場合の募集
広告をホームページにおいて掲載している。なお、旭川市の広報誌はその掲載要領
において、毎月 15 日の発行のため、その月の 20 日以降に関する事項の掲載をする
こととなっているので、適時の空室情報を掲載できない。
調査の過程で平成 13 年度新設の特定公共賃貸住宅(第1永山団地)の一室が 1 年
以上も空室となっていたという事実が判明したが、これも毎年 1 回しか募集広告を
していなかったことが一因と考えられる。空室がある場合は適時募集広告を行い、
空室期間を減らすよう努めるべきである。これについては、国土交通省監修の「特
定優良賃貸住宅の管理(平成 14 年度版)
」においても、特定公共賃貸住宅に空家が
発生した場合の募集についても規則第 27 条の適用対象となり、掲示、新聞や地方公
共団体の広報への掲載等の方法により広告して行わなければならないとしている。
2.入居者の選考方法
(1)概 要
公営住宅法第 25 条第 1 項では、入居の申込みをした者の数が入居させるべき公営
住宅の戸数を超える場合には、住宅に困窮する事情を調査して、政令で定める選考
基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して入居者を決定しな
ければならないとしている。また旭川市営住宅条例第 6 条では、まず住宅に困窮す
る実情を調査し、困窮状況判定表(14 頁参照)により困窮度合いの高い者から入居
者を決定し、順位を定め難いときは、公開抽選会その他公正な方法で選考して入居
者を決定するとしている。平成 14 年度における一斉募集時の入居申込者の住宅困窮
度合いの判定では、特に困窮度合いが高いと判定された者(判定C 13 頁「入居まで
のフローチャート」参照)がいなかったため、公開抽選会が実施された。なお、抽選
会の実施要領は以下のとおりである。
①
入居申込者を一堂に集め(通常、旭川市民文化会館大会議室において)、公開抽
会を行う。抽選方法は手回し式の抽選機を使って行う。
②
申込受付時、申込者に交付した受付番号票(抽選番号)と同じ番号の玉を応募
数分だけ抽選機に入れて回し、出た番号順に当選または入居補欠登録順位の上
者とする。
③
出席者の中から立会人(希望者)を選ぶが、抽選機の操作は時間の関係上、市
住宅課職員が行う。
6
④
優遇対象となる世帯については抽選機に抽選玉を1個追加し2個入れる。
優遇対象世帯
ア.老人世帯(60 歳以上の世帯等)
イ. 母子(父子)世帯
ウ.障害者世帯(障害者手帳 1 級から 4 級等)
エ.多子世帯(18 歳未満の児童が 3 人以上)
オ.3 年連続申込世帯(途中辞退者は除く)
(2)監査要点及び手続
平成 14 年度における公開抽選会について、入居申込書、申込受付簿、優遇措置者
のリスト、公開抽選会の記録簿等を任意に抽出閲覧し、公開抽選及び優遇措置が適
正に行われているかどうかを検証した。
(3)監査結果
公開抽選会については、当選者または入居補欠登録者が決定する都度、市の職員
が公開抽選会会場の壁に張られた用紙に結果を記入しており、その様子を撮影した
写真も保存されていたことから、適正に執行されているものと確認できた。また、
優遇措置についても優遇世帯の基準に合致していることを入居申込書から確認でき
たので、適正に執行されていると認められた。
3.入居審査及び家賃決定並びに入居後の家賃の減免申請
(1)概 要
① 入居資格要件
ア.現に住宅に困窮していることが明らかであるもの
イ.一般世帯の場合は、現に同居し、または同居しようとする親族(内縁関係にあ
るもの及び婚約中のものを含む)があるもの
ウ.単身世帯の場合は、日常生活を介護なしで自ら生活できるもの、または自ら
生することが困難な場合は、常時介護を受けられるもの
エ.申込世帯の収入基準が、国で定める入居資格収入基準の範囲以内のもの
② 収入基準
ア.収入基準の計算
収入月額は次の算式により算定される。
世帯の所得合計金額−控除額(38 万円×同居親族及び同居しない扶養親族+特別控除)
12 カ月
7
(注 1)同居親族数に、申込者本人は含まれない。
(注 2)特別控除
区
分
金
額(円)
老人扶養(70 歳以上)
100,000
障害者
特別障害者(1 級または 2 級)
400,000
普通障害者(3 級以下)
270,000
老年者
500,000
寡婦、寡夫
270,000
特定扶養親族(扶養親族のうち満 16 歳以上 23 歳未満)
200,000
イ.入居収入基準
種
類
公営住宅
特定公共賃貸住宅
区
分
収入基準
一般階層
収入月額 200,000 円以下
裁量階層
収入月額 268,000 円以下
中核市長裁量階層
収入月額 200,000 円以上 601,000 円以下
例:給与所得者が 1 人で世帯人数合計が 3 人の場合(特別控除対象者がいない
場合)
公営住宅(一般階層) 給与収入 4,627,999 円/年以下であれば入居可能
公営住宅(裁量階層) 給与収入 5,647,999 円/年以下であれば入居可能
特定公共賃貸住宅
給与収入 4,628,000 円/年以上 10,181,053 円/年以
下であれば入居可能
① 家賃の決定
入居審査と家賃決定に当たり、入居予定者全員の住民票と所得証明書等を徴求し、
の算式により家賃を決定する。
家賃算定基礎額(公営住宅法施行令第 2 条)
×
市町村立地係数(旭川市は 0.7)
×
規模係数(床面積÷70)
×
経過年係数(新築時 1.0 から低減)
×
利便性係数(0.7∼1.0)
(団地の立地利便、浴室の形態、水洗化の有無を勘
案)
8
② 入居後の家賃の減免申請
入居者が次の各号の一に該当する場合は、旭川市営住宅条例第 10 条により家賃
の減免または徴収猶予を受けることができる。
ア.入居者または同居者の収入が著しく低額であるとき
イ.入居者または同居者が病気にかかったとき
ウ.入居者または同居者が災害により著しい損害を受けたとき
エ.その他前各号に準ずる特別の事情があるとき
なお、過去 5 年間の減免件数は以下のとおりであり、年々増加傾向にある。過去
5 年の減免理由はすべて上記ア.の低収入である。
年
度
件数
減免額(円)
平成 10 年度
195
9,692,500
平成 11 年度
263
17,287,780
平成 12 年度
307
22,628,870
平成 13 年度
320
29,131,910
平成 14 年度
323
30,506,380
(2)監査要点及び手続
平成 13 年度及び平成 14 年度の新規入居者が多い上位 3 団地について、入居申込
書、住民票、所得証明書、源泉徴収票等関係書類を閲覧、検討し、入居審査及び家
賃決定が公営住宅法施行令第 2 条に基づいて正しく決定、算出されているかどうか
を検証した。
入居後の減免申請については、平成 14 年度における新規入居者に関して減免申請
制度が適正に運用されているかどうかを検証した。
(3)監査結果
入居審査及び家賃決定については、入居時の必要書類が保存されており、書類の
内容を検証した結果、適正に実施されていた。また、平成 14 年度新規入居者のうち
減免申請のあった 2 名については、減免の基準に該当すると認められた。
しかしながら、そのほかの新規入居者 196 名のうち、減免申請をしていれば入居
後に家賃が減免されていた可能性のある者が 81 名にものぼることが入居時の申込書、
所得証明書、参考記録などの保存書類から推定された。
(ただし、実際の減免許可に
は入居時必要書類以外に示される収入状況も判定要素とされるため、必ずしも 81 名
9
全員が減免に至るわけではない。詳細後述。
)
家賃の減免申請については、入居説明会時に配布される「旭川市営住宅住まいの
しおり」(以下、「住まいのしおり」という。)に記載されており、その場で市の職員
が説明しているとのことだが、
「住まいのしおり」以外には減免申請について特に広
報をしていないため、平成 14 年度の新規入居者のうち、平成 15 年度になって新た
に減免申請を受けているものはわずか 2 名にすぎなかった(前述)
。家賃減免制度は
入居者の任意(入居者自身の判断)による申請に基づく制度であるとはいえ、入居
者の周知が前提であることは当然のことである。減免申請については最初の面接時
に渡す案内書等に記載したうえであらかじめ説明し、入居後も継続的な広報活動に
より、制度が周知されるような施策の実施を検討すべきである。
「住まいのしおり」 抜粋
**家賃が支払えなくなったとき**
次の理由で家賃を納入できない状態になったときは、減免又は徴収を猶予する制
度がありますので、直接住宅課にご相談ください。
なお、この制度はさかのぼって適用することはできませんので注意してください。
① 収入が著しく低額になったとき。
② 病気等で著しく生活が困難になったとき。
③ 災害により著しく損害をうけたとき。
(注)収入が著しく低額になったときの、著しく低額の基準(旭川市営住宅条例施行規則第 17 条)
収入月額(市長が別に定める必要経費を控除後)
基準額(市長が別に定める)
≦ 1.2
ここでいう収入月額には、給与や厚生年金などの所得以外にも、遺族年金、児童扶養手当、障
害者年金、傷病手当、仕送り、個人年金、雇用保険支給額なども含まれる。
10
4.入居時の敷金及び家賃の納付並びに入居以後の家賃の納付方法
(1)概 要
市営住宅入居申込者が、旭川市営住宅条例に適合し入居が決定した場合には、納
付すべき敷金(家賃の 2 カ月分)と入居月の日割家賃及び当該年度の月別家賃額が
印字された納付書を入居者に渡す。入居指定日に敷金と初回の家賃の領収印のある
納付書を提示してもらうことにより入金を確認し、市営住宅への入居を許可する。
(2)監査要点及び手続
入居時の敷金と初回家賃納付についてヒアリングを行った。また、平成 13 年度及
び平成 14 年度新規入居者の家賃の納付方法について調査した。
(3)監査結果
ヒアリングの結果、入居許可時に当初納付金の未納者はいないことを確認した。
新規入居者の平成 15 年 9 月現在の納付方法は次のようになっており、納付書で納付
している者の方が口座振替よりも多く、また納付書により納付している者の方が口
座振替利用者より滞納比率が高くなっている。口座振替については「住まいのしお
り」に記載されているのみで説明も入居説明会の時にしか行っていないため、初回
の納付書を入居者に渡す際に口座振替用紙を添付し、その後の家賃については口座
振替を推奨すべきである。
平成 13 年度新規入居者の納付方法別滞納状況
納付書納付
平成 15 年 9 月 30 日現在
口座振替
住宅課長委任払
合
計
(注 2)
件数
176
126
7
309
滞納者(注 1)
13
2
1
16
滞納割合(%)
7.4
1.6
14.3
5.2
平成 14 年度新規入居者の納付方法別滞納状況
納付書納付
平成 15 年 9 月 30 日現在
口座振替
住宅課長委任払
合
計
(注 2)
件数
115
79
4
198
滞納者(注 1)
4
0
0
4
滞納割合(%)
3.5
0.0
0.0
2.0
(注 1)滞納者とは 3 ヵ月以上の滞納者をいう。
(注 2)住宅課長委任払とは、あらかじめ提出された委任状等に基づき生活保護受給者
の受領額から家賃を差し引き、代理納付するものである。
11
「住まいのしおり」 抜粋
口座振替は、家賃を金融機関の口座から振替えること(毎月末日、ただし12月25
日)により納付できる制度です。口座振替は、一度手続きされると家賃を納めにわざわ
ざ金融機関に出かける時間のムダがなくなります。
申込み手続き
あなたの取引き先の金融機関へ、預金通帳・ご使用の印鑑・住宅使用料納入通知書を
持参のうえ、金融機関の窓口にある預貯金口座振替依頼書(3枚1組)を提出してくだ
さい。
振替開始日
振替の開始日は、通常申込みのあった月の翌月からとなります。
入居申込から入居許可までの一連の手続のフローチャート及び住宅困窮状況判定表は次
のとおりとなっている。
12
入居までのフローチャート
市営住宅入居申込書提出
住宅困窮状況判定
判定C
判定B
抽選
入居予定者
補欠登録者
補欠登録有効期限
毎年6月30日
空き家が出るまで待機
入居予定者
指定する日までに入居資格審査必要書類の提出
入居資格審査
入居資格あり
入居資格なし
入居決定通知書送付
入居不可
敷金納入
市営住宅入居請書提出
入居許可
(判定Cは市長の指定する住宅)
13
住
困窮項目
住宅状況
宅
困
窮
状
況
判
困 窮 状 況 審 査 内 容
1
居住用の建物でないところに 6 月以上住
定
表
審 査 基 準
判定
実態調査を行い確認する。
C
んでいる。
困窮度合い
(1)
令第1条第3号に
【工場,倉庫,事務所,寄宿舎,その他
規定する収入 82,000
(
円以下の者で,かつ,
2
)
】
判定Cの項目が 1 以
住宅が老朽化している。
【修理すれば耐用可能の住宅】
実態調査を行い確認する。
B
建設後3 0年以上のもので,
C
上ある者
20 点
【修理不能の住宅(建設後
年くらい経
過)に 6 月以上住んでいる。
】
屋根,壁,柱,土台の腐朽破
(2)
損が著しく,修理不能な住宅
3
判定Cの項目が 1
以上ある者又は判定
住宅の設備が悪い。
【台所,便所,玄関が共同使用の住宅に 6
月以上住んでいる。
】
共同使用については実態調
C
る者(
(1)に該当す
査を行い確認する。
【上水道以外の水を飲用,防災設備が悪い, 避難口の不備には,階段も含
避難口等の設備が不備で防災避難上危
B
4
住環境が悪い。
日当たりは,主要な居室にな
【日当たり,側溝(U字溝)の整備がなさ
れていない,騒音,振動,その他(
B
い場合に限る。
)
】 騒音等は工場,鉄道線路,商
店街,バス路線等に隣接して
いる場合に限る。
居住状況
5
就学前幼児は 0.5 人として
住宅が狭い。
【台所部分 3 畳を除く一人当たり畳数(
4 畳以上の部屋数(
)
B
計算する。
現在の居住人員により計算
)
】
する。
6
7
他の世帯と 6 月以上同居していて,著し
市営住宅入居申込書(以下
く生活上の不便を受けている。
「申込書」という。)の世帯
住宅がないため,6 月以上親族と同居する
状況記入欄により確認する。
ことができない。
(後に住民票等により確認
B
する。
)
8
現在婚約中であり,入居許可の日から 3
申込書の世帯状況記載欄に
月以内に同居できる者
より確認する。(後に婚約証
B
明書により確認する。
)
9
10
都市計画上,また借地借家法に基づく正
申込書の住宅困窮状況記載
当な事由により,立ち退きの要求を受け
欄により確認する。(後に立
ている。
退要求書により確認する。
)
通勤,通学等に時間がかかる。
【通勤・通学
通勤・通学費
11
片道
時間,
月額
円】
家賃が高い。
【月額
円】
B
45分以上を対象とする。
B
申込書の住宅困窮状況記載
B
欄(後に家賃証明書等により
確認する。
)
14
る者を除く。
)
10 点
む。
険】
住環境
Bの項目が 1 以上あ
5.敷金の管理状況
(1)概 要
公営住宅法第 18 条第 1 項によれば、事業主体は入居者から 3 ヵ月分の家賃に相当
する金額の範囲内において敷金を徴収することができることになっている。市では
これを受けて、旭川市営住宅条例第 12 条第 1 項で「市長は、入居者から入居時にお
ける 2 ヵ月分の家賃に相当する額の敷金を徴収するものとする」と定めている。ただ
し、同条第 4 項で例外を認め、入居者の収入が著しく低額である等の事情がある場
合には敷金の徴収を減免することができるとしている。
また、公営住宅法第 18 条第 3 項によれば、事業主体は敷金の運用益を共同施設の
整備に要する費用に充てる等公営住宅の入居者の共同の利便のために使用するよう
に努めなければならないとされている。市は旭川市営住宅条例第 12 条第 5 項におい
てこの規定を市単独住宅について準用することとしている。
市営住宅敷金は財務会計システムにより管理されており、平成 14 年度末現在の残
高は 149,514 千円である。
(2)監査要点及び手続
① 監査要点
敷金は減免の場合を除き、もれなく徴収されているか。
敷金の入居者別管理は適正になされているか。
預かった敷金は安全性の高い方法で管理、運用されているか。
運用益は適正に管理されているか。
② 監査手続
敷金の入金手続について説明を受け、関係書類を閲覧した。
入居者ごとの管理台帳である「市営住宅管理台帳」を閲覧した。
敷金の大半は定期預金で運用されているので、定期預金証書を閲覧した。
(3)監査結果
① 入金の網羅性
敷金を徴収する場合、まず都市建築部住宅課で納付書を作成し、入居説明会場で
入居予定者に渡すこととしている。入居予定者は金融機関で納付書により敷金を払
い込んで入居指定日に住宅課窓口に来庁する。住宅課では領収印のある納付書を提
示してもらい、そのうえで入居許可を出している。したがって、免除の場合を除い
て敷金はもれなく入金されることになる。また、返金は原則として銀行振込によっ
ている。
15
② 入居者別残高管理
敷金の総額は財務会計システムにより管理されている。一方、入居者別の金額は
旭川市総合オンラインシステムにより管理されている。同システムには集計機能が
ないため、入居者別金額の合計額を把握することができない。旭川市総合オンライ
ンシステムに集計機能を追加し、定期的に財務会計システム残高と照合するべきで
ある。
③ 敷金の運用益
公営住宅法第 18 条第 3 項によれば、事業主体は敷金の運用益を共同施設の整備
に要する費用に充てる等公営住宅の入居者の共同の利便のために使用するように
努めなければならないとされている。市は旭川市営住宅条例第 12 条第 5 項におい
てこの規定を市単独住宅について準用することとしている。
敷金の大半は定期預金で運用されており、現在のところ利息は一般会計の歳入と
しているため、入居者の共同の利便に使用したことが特定されていない。平成 14
年度の利息収入は 112,491 円であり、法及び条例の趣旨に沿って、敷金の運用益は
別途科目を設けて管理するなどして、入居者の共同の利便のために使用したことを
明らかにするべきである。
6.家賃収入補助金等の申請
(1)概 要
国は公営住宅の事業主体の負担の軽減を図るため、事業主体に家賃収入等の補助
を行っている。旭川市の過去 5 年間の補助金の受給状況は次のとおりである。
(単位:千円)
公営住宅家賃
収入補助金
公営住宅家賃対策補助金
旧
法
新
法
特定公共賃貸住宅
合
計
家賃対策補助金
平成 10 年度
68,479
15,104
32,419
−
116,002
平成 11 年度
71,598
11,480
67,494
250
150,822
平成 12 年度
70,638
9,442
90,167
364
170,611
平成 13 年度
68,690
7,258
124,609
1,148
201,705
平成 14 年度
70,579
6,629
140,599
993
218,800
それぞれの制度の概要は次のとおりである。
16
①公営住宅家賃収入補助金
昭和 44 年に公営住宅法の一部改正により、用地取得に対する国の補助を融資度
に切り替えたことに伴って生ずる家賃の上昇を避け、家賃を低廉に維持するために
設けられた制度である。
②公営住宅家賃対策補助金
昭和 55 年に創設され、家賃限度額が入居者の負担能力を超える部分または建替後
住宅の家賃限度額が建替前住宅の家賃を超える部分について事業主体が負担する場
合に要する経費の一部を補助することにより、家賃負担の適正化、建替えの促進を
図るものである。その後、平成 8 年の公営住宅法の一部改正により、新家賃制度(限
度額方式から応能応益方式)となったため、新法住宅に対する家賃補助が新たに創
設された。
③特定公共賃貸住宅家賃対策補助金
入居者の居住の安定を図るため、近傍同種の住宅の家賃から減額して入居者負担
額とする場合において、その減額に要する費用の一部を補助するものである。
(2)監査要点及び手続
① 監査要点
家賃収入補助金等の申請手続が適正に行われているか。
家賃収入補助金等はもれなく申請されているか。
② 監査手続
団地ごとに補助対象戸数及び補助対象外戸数を確認した。
補助金交付要領の内容を把握し、交付申請書及び交付決定通知書を閲覧した。
(3)監査結果
交付要領によれば、公営住宅家賃収入補助金は補助基本額に補助対象率を乗じて
算定することになっている。前者の補助基本額は土地取得費等に一定率を乗じて算
定する。また、後者の補助対象率は「1−収入超過者戸数/基準日戸数」と定められて
いる。ここで基準日とは毎年 10 月 1 日をいい、収入超過者戸数とは基準日現在にお
いて収入超過者が入居している戸数をいう。収入の算定は基準日の属する年の前年
の収入により行うものとされている。
補助金申請をもれなく行うためには基準日までに入居者全員の所得証明を徴求し、
収入超過者を把握する必要があるところ、現実には未申告となり把握ができない場
17
合がある。未申告者分を補助金対象とするわけにはいかないので、補助金申請に当
たっては収入超過者と同様に取り扱わざるを得ない。したがって、未申告者の中に
収入超過者でない者が含まれていると、本来申請可能な補助金が申請されないこと
になる。過去 3 年分について最終的な収入申告結果を勘案した補助金額と実際の補
助金申請額を比較すると次のとおりとなる。
(人数は未申告者、金額は補助金額で単位千円)
年度末最終未申告
補助金申請時未申告
人
人
数
金
額
数
金
額
差
人
引
数
金
額
平成 12 年度
73
74,850
212
70,638
△139
4,212
平成 13 年度
73
74,224
235
68,690
△162
5,534
平成 14 年度
28
76,502
235
70,579
△207
5,923
平成 14 年度の未申告者減少 207 人のうち、収入超過者に該当したのは 38 人にす
ぎない。このように基準日までに完全に収入申告がなされないために、毎年 5 百万
円程度の補助金が申請できない。基準日以降家賃改訂が行われる翌年 4 月 1 日まで
には未申告の相当部分は解消されるのであるから、収入申告は入居者の義務(旭川
市営住宅条例第 9 条)であるとはいえ、基準日までに完全に収入申告がなされるよ
う体制整備を図るべきである。
公営住宅家賃対策補助金も入居者の収入が計算要素に含まれるため補助金額に
影響する。しかし、平成 14 年度の未申告者数は旧法適用分 1 人、新法適用分 5 人
であり、公営住宅家賃収入補助金と比較すると未申告者は非常に少ない。
市の説明では、未申告者に対し戸別訪問を実施して回収に努めているとのことで
ある。また、平成 16 年度の家賃決定のために市が平成 15 年 10 月 1 日までに入居
者に対して収入申告を求めた文書の発送業務からは、未申告者に対する督促は適宜
行われていることは確認できた。
発送日付
提出期限
当初発送
平成 15 年 6 月 13 日
平成 15 年 7 月
再発送
平成 15 年 7 月 11 日
平成 15 年 7 月 25 日
再々発送
平成 15 年 8 月
平成 15 年 8 月 15 日
1日
18
4日
7.住宅建設等請負契約及び補助金申請
(1)概 要
市営住宅の建替及び改善は平成 5 年 3 月に策定された「旭川市公共賃貸住宅再生マ
スタープラン」(以下、「マスタープラン」という。)に従って行われている。過去 5
年間の市営住宅建設等事業費の状況は次のとおりである。
なお、現在は平成 15 年 9 月に策定された「旭川市公共賃貸住宅ストック総合活用
計画」により事業実施されている。
(単位:千円、決算ベース)
市営住宅建設
特定公共賃貸住宅建設
既設改善
合
計
平成 10 年度
2,274,478
13,037
209,892
2,497,408
平成 11 年度
2,414,873
111,883
61,313
2,588,070
平成 12 年度
1,957,157
116,529
333,358
2,407,045
平成 13 年度
1,214,787
20,843
706,795
1,942,425
平成 14 年度
743,962
−
393,035
1,136,997
平成 15 年度は予算ベースで 1,143,480 千円を予定している。平成 13 年度以降金
額が減少しているのは、マスタープランで平成 13 年度、平成 14 年度に予定されて
いた神居団地などの建替等を前倒しで実施したためである。
(2)監査要点及び監査手続
① 監査要点
入札は適正に実施されているか。
工事請負契約の締結は適正に行われているか。
工事の検収は適正に行われているか。
補助金の申請手続が適正に行われているか。
② 監査手続
忠和団地改修工事及び第2永山団地2号棟建替工事を監査対象とし、入札記録、
工事請負契約書、しゅん功検査調書等を閲覧した。
補助金交付要領の内容を把握し、交付申請書及び交付決定通知書を閲覧した。
(3)監査結果
① 忠和団地改修工事
忠和団地改修工事は、1 号棟から 11 号棟までの改修工事、衛生設備改修工事、電
気設備工事及び受水槽改修工事の 14 の契約から成っており、総額 600,253 千円(平
19
成 13 年度執行 218,012 千円、平成 14 年度執行 382,241 千円)である。
契約はすべて指名競争入札(注 1)により行われており、指名業者数は旭川市建
設業者指名基準(注 2)に従って決定されている。入札記録、指名通知書、入札書
等を閲覧した結果、入札行為は適正に執行されていた。
加えて、1 号棟から 11 号棟までの改修工事について特定業者に指名が偏っていな
いか調査したが、そのような事実は認められなかった。
予定価格に対する落札額、すなわち落札率は全体で 97.2%である。工事請負契約
及び工事しゅん功検査ともに適正に行われており、問題は認められなかった。
(注1)
指名競争入札とは、資力、信用その他について適当と認められる特定多数
の者を予め指名し、それらの者に入札させ、市にとって最も有利な価格を
提示した者を契約の相手方として契約を締結するものである。
(注2)
旭川市建設業者指名基準より建設工事のみ抜粋
指名競争入札に付そうとする工事の指名業者数は次の数以上とされてい
る。
業者数
設計金額
単
9,000 万円以上
体
共同企業体
10
5
5,000 万円以上 9,000 万円未満
8
4
1,500 万円以上 5,000 万円未満
7
4
500 万円以上
1,500 万円未満
6
−
300 万円以上
500 万円未満
5
−
200 万円以上
300 万円未満
4
−
3
−
200 万円未満
② 第2永山団地2号棟建替工事
第2永山団地2号棟建替工事は建築工事、衛生設備工事、機械設備工事、電気設
備工事、建具工事及び附属棟工事の 6 つの契約から成っており、総額 996,477 千円
(平成 14 年度執行 82,122 千円、平成 15 年度執行予定 914,355 千円)である。
建築工事は公募型指名競争入札(注 1)
、衛生設備工事、機械設備工事及び電気設
備工事は簡易公募型指名競争入札(注 2)
、建具工事及び附属棟工事は一般の指名競
争入札により行われている。指名業者数は旭川市建設業者指名基準に従って決定さ
れている。入札記録、指名通知書、入札書等を閲覧した結果、入札行為は適正に執
行されていた。
予定価格に対する落札額、すなわち落札率は全体で 98.3%である。工事請負契約
20
及び工事しゅん功検査ともに適正に行われており、問題は認められなかった。
(注1)
公募型指名競争入札とは、あらかじめ工事内容を公表し、入札の参加者を
募り、このなかから指名業者を決定する方法である。市では 150 百万円以
上 720 百万円未満で工事期間等施工の条件上適当と認められる工事につ
いて、適用している。
(注2)
簡易公募型指名競争入札とは、公募型指名競争入札と公告手続は同じであ
るが、参加要件を緩和し入札までの期間を短縮するなど簡素化した方法で
ある。市では 50 百万円以上 150 百万円未満の土木工事、80 百万円以上 150
百万円未満の建築工事並びに共同企業体で実施する 150 百万円未満の工
事について適用している。
なお、平成 15 年 5 月 1 日から 20 百万円以上 150 百万円未満の工事で
あって、工事期間等施工の条件上適当と認められる工事の中から実施さ
れている。
③ 補助金申請状況
忠和団地改修工事は、既設公営住宅改善事業費補助金交付要綱により国庫補助を
受けている。補助金の額は住戸改善、景観改善などの補助対象工事費の 2 分の 1 と
されている。
第2永山団地2号棟建替工事は、公営住宅整備事業等補助要領により国庫補助を
受けている。補助金の額は主体工事費、屋外附帯工事費などの補助対象工事費の 2
分の 1 とされている。
前者の忠和団地改修工事には補助対象工事費に 0.022 を乗じた附帯事務費、後者
の第2永山団地2号棟建替工事には補助対象工事費に 0.021 を乗じた附帯事務費が
認められており、附帯事務費の 2 分の 1 を補助金申請することができる。
監査対象とした工事について関係数値をまとめると次のようになる。
21
(単位:円)
平成 13 年度
忠和団地改修
工事請負額
忠和団地改修
第2永山団地2号棟建替
218,010,000
382,238,000
82,122,000
2,500
3,000
426
5,790,000
7,414,000
8,992,184
223,802,500
389,655,000
91,114,610
国庫補助
111,900,000
194,826,000
45,551,000
歳
起
債
111,900,000
194,800,000
45,500,000
入
その他
2,500
29,000
63,610
223,802,500
389,655,000
91,114,610
歳
工事補助基本額
平成 14 年度
工事補助基本外額
出
事務費
合
合
計
計
(注)忠和団地改修工事、第2永山団地2号棟建替工事とも年度を跨る工事であるため、
単年度でみると必ずしも工事補助基本額×0.022(または 0.021)が事務費とな
っていない。
補助金申請基礎資料、交付申請書及び交付決定通知書を閲覧し、工事費等との
対応関係を検討した結果、補助金申請は適正に行われていた。
8.修繕費
(1)概 要
公営住宅法第 21 条は、
「事業主体は、公営住宅の家屋の壁、基礎、土台、柱、は
り、屋根及び階段並びに給水施設、排水施設、電気施設その他の国土交通省令で定
める附帯施設について修繕する必要が生じたときは、遅滞なく修繕しなければなら
ない。ただし、入居者の責めに帰すべき事由によって修繕する必要が生じたときは、
この限りでない。」とし、事業主体に修繕の義務を課している。
また、旭川市営住宅修繕取扱要領(平成 9 年 4 月 1 日改正)では次の事項が規定
されており、市はこの要領に基づき修繕を実施している。
1.<省略>
2.市が行う修繕は、毎年度当初策定する計画修繕とそれにより難い随時修繕に
よって実施する。
3.計画修繕は住宅の破損状況等の調査を行い建築経過年数に伴う老朽度、住宅
管理人の意見等を勘案して、予算の範囲内で計画的に実施する。
4.随時修繕は、住宅管理人又は入居者からその都度申込みを受理したものにつ
いて調査の上、施工業者を選定して実施するものとする。
22
5.随時修繕のうち、所定の手続きによることが困難な緊急を要する修繕につい
ては、その状況に応じて速やかに業者に指示し、施工させて事後処理すること
ができる。
6.<省略>
旭川市営住宅の修繕費支出の過去 5 年間の実績は次のとおりである。
年
度
金額(千円)
平成 10 年度
156,539
平成 11 年度
109,999
平成 12 年度
114,553
平成 13 年度
109,999
平成 14 年度
96,259
なお退去時に退去者が行うべき修繕については、退去者が荷物を運び出した後、
住宅課担当者立会いのもとで修繕箇所を決定し、退去者本人が業者に修繕を依頼し
たうえ、その後修繕完了確認を実施する。平成 14 年度の退去者の記録を一部調査し
た結果、決定どおりの修繕が実施されていた。
(2)監査要点及び手続
修繕費のうち 1 件 50 万円以上のものは、平成 13 年度は 33 件 25,476 千円、平成
14 年度は 28 件 24,851 千円である。これらの支出内容について一部抽出し、関係書
類を閲覧してその妥当性を検討した。
(3)監査結果
① 発注の細分化と見積りの対象の設定
定期修繕における畳(対象を築 20 年以上かつ退去修繕後 3 年以上経過した住戸)
の取替費用は、平成 13 年度は 10 件 9,771 千円、平成 14 年度は 11 件 11,781 千円
となっている。畳 1 枚当たりの取替費用は、当該年度の登録業者 11 社のなかから
選定された 3 社の参考見積りの一番低い金額が採用されている(平成 13 年度、平
成 14 年度とも 1 枚 11 千円)。そして定期修繕における畳取替えは、畳 1 枚当たり
のこの見積価格をもとに随意契約により発注されている。発注先は 10 件及び 11 件
に細分されており、定期修繕のため発注及び実施はほぼ同時期に行われている。
市ではこの細分の理由を、「施工場所が現に入居中の住宅で、短期間に完了する
などの必要性があり、迅速な施工を可能とするとともに中小企業の受注機会を増や
すための、分割発注したものであり、」としている。
発注先 1 件当たりの価格帯は、平成 13 年度 831 千円∼1,108 千円、平成 14 年度
23
970 千円∼1,247 千円であり、地方自治法施行令 167 条の 2 を準用する旭川市契約
事務取扱規則第 16 条の 2(随意契約によることができる場合の額)の「
(1)工事
又は製造の請負 130 万円」の基準は満たしているものの、10 件及び 11 件の発注
内容は同じであり、10 件及び 11 件に細分化しすべてを随意契約とした合理的な理
由は見当たらない。また、定期修繕の価格見積りに畳 1 枚の取り替えを設定してい
るのは、発注内容と合致しない。実際の発注が 1 件当たり 80 枚から 100 枚程度の
数量であるので、延べ数量で見積りをとるか、一戸当たりの取替えが 10 枚∼15 枚
程度であるので、標準の一戸当たりの作業における 1 枚当たりの見積りをとるべき
である。
なお、発注単位の細分化による中小企業者の受注機会への配慮は、「官公需につ
いての中小企業者の受注確保に関する法律」
(昭和 41 年 6 月 30 日法律第 97 号)及
び「平成 14 年度中小企業者に関する国等の契約の方針」
(平成 14 年 7 月 9 日閣議
決定)に示され、旭川市においても、平成 15 年 4 月 1 日付け総務部長通知「建設
工事等の発注に係わる留意点について」に示されている。とはいえ、発注単位の細
分化による発注価格の増大がないよう求められる。
② 見積り合わせの実施
旭川市契約事務取扱規則第 17 条(見積書の徴収)では、
「・・随意契約によろう
とするときは、なるべく 2 人以上の者から見積書を徴収するものとする。
」として
いる。平成 14 年度の市営住宅の修繕費支出では入居者の生活ないし安全に関連す
るという理由で、「至急修繕可能な業者に特命発注する」として例外なく見積り合
わせを実施していない。しかし、その内容をみると、次のように必ずしも入居者の
生活ないし安全に直結するものではなく、至急を要す修繕とは考えられないものが
ある。このようなものは原則に立ち返り、複数の見積書を徴収すべきである。
支出年月
金額(千円)
支出内容
平成 14 年 7 月
796
U字側溝布設、素堀側溝整備他
7月
766
団地内排水整備
8月
1,127
グランド用土入替敷均し
9月
1,001
砂場砂入替、遊具塗替・移設、団地内通路整備
10 月
1,079
境界フェンス設置
10 月
670
遊歩道・砂場・縁石整備
10 月
600
砂利暗渠整備
24
① 修繕完了を証する書類の作成方法
修繕が完了した場合は、管理人または入居者が確認印を捺印した「市営住宅修繕
確認票」を作成している。この確認票には日付欄がないので、支出証憑として利用
するためには、日付欄を追加する必要がある。
9.委託費
(1)概 要
建物基本部分及び附帯施設の保守管理費用は、旭川市営住宅条例第 13 条(入居者
の費用負担)により入居者に負担させることができないため、事業主体の市の負担
となる。市営住宅の委託費は、主にこの保守管理費の支出であり次のようなものが
ある。
① 貯水槽清掃及び給水設備保守管理
② エレベーター保守管理及び設備機器遠隔監視業務
③ 草刈り、屋根の雪下ろし及び除雪
④ 浄化槽清掃及び保守管理
⑤ CATV施設の保守管理
旭川市営住宅の委託費支出の過去 5 年間の実績は、次のとおりである。
年
度
金額(千円)
平成 10 年度
71,926
平成 11 年度
86,972
平成 12 年度
87,542
平成 13 年度
89,399
平成 14 年度
88,531
(2)監査要点及び手続
委託費のうち 1 件 50 万円以上のものは、平成 13 年度は 29 件 86,112 千円、平成
14 年度は 29 件 84,963 千円である。これらの支出内容について一部抽出し、関係書
類を閲覧してその妥当性を検討した。
(3)監査結果
エレベーター保守管理及び設備機器遠隔監視業務については、全件が「エレベー
ターの保守管理は、その構造を熟知し、製造から施行管理までの責任体制に一貫性
があることが望ましい。
・・・・」という理由で、地方自治法施行令 167 条の 2 第 1
項第 2 号の「その性質又は目的が競争入札に適さないもの」に該当するものとして、
25
特定の者 1 者を見積り徴収先として選定している。
その結果、
平成 13 年度 9 件 26,139
千円、平成 14 年度 9 件 27,456 千円の当該保守管理業務は、随意契約となっている。
1 者契約を実施するには、入札ないし見積り合わせを実施しない合理的な理由が必要
であり、当該保守契約がこれに該当するかについて、他の発注方法を含め再度検討
することが必要である。
10.滞納家賃の債権管理
(1)概 要
① 市営住宅使用料収納状況の推移
(単位:円)
年
度
調定額
入金額
不納欠損額
過誤納金還付
未収入金残高
未済額
平成 10 年度
878,253,945
698,553,169
238,200
3,300
179,465,876
平成 11 年度
937,872,696
728,573,246
838,654
10,800
208,471,596
平成 12 年度
978,120,466
737,766,250
3,915,194
0
236,439,022
平成 13 年度
1,050,227,282
760,146,010
3,175,620
5,000
286,910,652
平成 14 年度
1,097,801,802
759,791,870
4,750,460
7,140
333,266,612
(注)「調定額」は当該年度に収納すべき金額であり、過年度分を含んでいる。「不納欠損
額」は回収不能が確定した額である。
調定額、不納欠損額及び未収入金残高が、年々増加傾向にある。過年度に発生し
た賃料の未収金は、次年度において新たに調定額に加わってしまう。これが、それ
ぞれ増加傾向となっている大きな要因である。そこで、現年度分と過年度分に分け
てその未収率をみると次のとおりである。
(単位:円)
入金額:A
年
未収入金残高:B
度
現年度
過年度
現年度
過年度
未入率:B/(A
+B)
(%)
現年度
過年度
平成 10 年度
685,557,636
12,995,533
36,195,544
143,270,332
5.0
91.7
平成 11 年度
715,868,220
12,705,026
42,546,400
165,925,196
5.6
92.9
平成 12 年度
724,696,890
13,069,360
44,951,980
191,487,042
5.8
93.6
平成 13 年度
747,725,350
12,420,660
66,062,910
220,847,742
8.1
94.7
平成 14 年度
742,931,710
16,860,160
67,966,580
265,300,032
8.4
94.0
26
平成 10 年度以降、住宅課の回収努力にもかかわらず、未収入金残高が累増してい
ることがわかる。また、現年度分については未収率が高まる傾向にあり注意が必要
である。一般的には、新規発生に適宜対応することが、未収入金残高を増加させな
い有効策と考えられ、長期の未収入金にも対応しなければならないことと合わせ、
それぞれ異なった対応が必要である。
① 平成 14 年度末の未収入金残高の状況
1 件当たり 50 万円以上の滞納者の残高構成は次のとおりである。
区
滞留年数
分
1 年以内
件数(件)
金額(円)
金額構成(%)
1 年∼3 年
3 年∼5 年
5 年∼10 年
64
79
69
3
1,789,040 46,270,868 81,402,244 132,981,900
0.7
17.1
30.0
10 年超
合
3
計
218
8,852,500 271,296,552
49.0
3.2
未収入金残高
100.0
333,266,612
未収入金の残高構成をみると、50 万円以上を延滞している入居者の多くは 3 年以
上の長期間にわたり家賃を滞納している。
滞納額の大きい個人別の上位 10 件は、次のとおりである。
(単位:円)
入居団地
合
滞納金額
滞留月数
摘
要
A
4,225,200
126
平成 4 年 12 月以降未入金
B
3,771,260
66
平成 13 年 3 月以降未入金
C
3,686,880
114
一時期入金も平成 10 年 10 月以降未入金
D
3,610,270
109
現在は当月分に 10,000 円を上乗せ回収中
E
3,449,400
87
平成 15 年 8 月から 15,000 円上乗せ
E
3,360,200
95
平成 9 年 10 月以降未入金で平成 14 年 11 月退去
F
3,291,600
106
一時期入金も平成 9 年 10 月以降未入金
G
3,270,160
94
一時期入金も平成 12 年 1 月以降未入金
H
3,262,900
132
平成 15 年 1 月以降遅れながらも入金あり
A
3,075,000
107
平成 15 年 4 月以降遅れながらも入金あり
計
35,002,870
(注)「滞留月数」は平成 15 年 3 月末で何ヵ月の賃料を滞納しているかを意味する。
上記のとおり、現在入金中の 4 件を除き、6 件は全く入金がない状況が継続して
いる。長期間にわたり賃料を滞納している入居者に対し、回収を促進し残高を増加
27
させないための手段として、次の方法が既に制度的に用意されている。
ア. 督促文書及び催告文書の送付
イ. 分割回収の促進
ウ. 長期滞納者に対する明渡請求
エ. 保証人に対する請求
(2)監査要点及び手続
未収入金の管理について、未収入残高が 200 万円以上の入居者の回収状況と回収
に向けた市の取組みを確認するとともに、回収促進のために現在整備されている制
度を中心に、関係書類の閲覧及び担当者への質問を実施した。
(3)監査結果
① 督促文書及び催告文書の送付
賃料は毎月末日までにその月分を納付しなければならない(旭川市営住宅条例第
11 条)と定められており、この納期に納付されない場合は、督促状を送付している
(旭川市公法上の収入徴収に関する条例第 4 条)
。この一般的な取扱いとは別に、
公営住宅法で、3 月以上家賃を滞納した場合に入居している住宅の明渡しを請求す
る(公営住宅法第 32 条)ことに対応した取扱いとして、催告状を年 3 回(6 月、10
月及び 2 月)発送している。
平成 14 年度の下期の督促状送付名簿には、毎月 500 件から 600 件が記載されて
いる。また、平成 14 年度に送付した催告状の発送状況は次のとおり。
(単位:件)
基準日
滞納数
控
除
実際発送:A
平成 14 年 6 月 28 日
676
182
494
平成 14 年 10 月 17 日
810
201
609
平成 15 年 2 月 3 日
746
187
559
管理戸数:B
A/B(%)
10.8
4,560
13.4
12.3
(注 1)「滞納数」は単純にその月分を滞納したものの件数である。
(注 2)「控除」は滞納月数が 3 ヵ月未満あるいはその後履行しているもの等のため不送
付としているものである。
(注 3)「管理戸数」は平成 14 年度末の旭川市における市営住宅分である。
上記から、平成 14 年度の管理戸数の 1 割を超える入居者が、形式的には、住宅
の明渡しを請求することができる滞納者となっている。
一方で、催告状も初めて受け取ったときと、何度も受け取っている場合とでは、受ける印
象が異なるものと考えられる。催告上の送付による回収も当然あるもの
28
の、長期滞納者に対しては、形式的に催告状の送付を繰り返すことで催告状によ
る回収促進の効果は逓減していくと考えられる。
現状では、催告状に記載する文言の強さを送付回数の多寡によって変えるといっ
た具体的な対応策は決まっていない。後述するように、より強い対応に順次移行で
きるよう、市としての明確な対応方針の整備が必要である。
① 分割回収について
市は未収入金の回収を図るため、賃料の支払が困難な入居者に対して便宜的な措
置として分割納入を認めている。これは、何らかの理由により滞納金額を一括納付
できない場合に、支払可能な金額を入居者と相談し、毎月一定額の納付により回収
を図るもので、通常は分割された金額に見合う納付書を交付し、その支払をしても
らうことになる。
平成 15 年度は、延べ 221 件の分割納入確約を取付け、その回収に当たっている。
滞納を改善する意思のある入居者に対する回収促進手段として評価できる。このよ
うな滞納者に対し利用促進を図る必要がある。ただし、この運用については、後述
34 頁「13.不納欠損処分(3)監査結果①退去済滞納者のうち死亡及び居所不明
者への不納欠損処分」の回収手続きの取り扱いの中で定める必要がある。
また、平成 15 年度から、この分割納付の約束を履行しない者に対して、約束不
履行認定通知を送付している。現状では、相手の誠意を計る目安程度であり、どの
段階で明渡し請求を実施するか等の具体的な方針は未定である。しかし、この約束
不履行認定通知の文言のなかに、「今後予定される明渡し請求等の判断資料とする」
旨が明示されていることは、滞納者に対する約束履行に向けた取組みとして評価で
きる。
② 長期滞納者に対する明渡し請求
公営住宅法では、正当な理由なく入居者が家賃を 3 月以上滞納したときは、入居
者に対し、公営住宅の明渡しを請求することができることになっている(公営住宅
法第 32 条)
。この規定を受けて、その請求を行い、指定した日までに明け渡さない
ときは、入居者に明渡しを促すための制度を設けている。具体的には、指定した日
の翌日から実際に明け渡した日まで近傍同種の住宅家賃の 2 倍に相当する額を入居
者が損害賠償しなければならないと定めている(公営住宅法第 32 条第 3 項、旭川
市営住宅条例施行規則第 34 条)
。
しかし、市は明渡し請求後の取扱い及び手続が定まっていないとして、入居者に
対しこの明渡し請求を実施したことがない。いわゆる高額滞納者は、長期間自らの
意思によって支払をしていない。このような入居者を市営住宅に居住させることで、
現在入居できず空室を待っている市民の入居機会を奪うこととなっている。また、
29
適正に定められた家賃を支払っている他の入居者との不公平な取扱いも明らかで
ある。さらに、いたずらに時間が経過することにより、未収入金額の増加の要因に
なっている。
このため、早急に明渡しを求める場合の運用基準等を整備し、必要がある場合は
毅然とした対応を行う必要がある。前述の「滞納額の大きい上位 10 件」の入居する
団地における、過去 3 年間の入居者募集状況とこれに対する応募状況は次のとおり
である。
(単位:件数)
団地
平成 12 年度
募集
応募
平成 13 年度
倍率
募集
応募
平成 14 年度
倍率
募集
応募
倍率
A
18
21
1.2
17
38
2.2
9
48
5.3
B
8
87
10.9
4
76
19.0
9
133
14.8
C
5
8
1.6
3
8
2.7
1
14
14.0
D
50
70
1.4
38
51
1.3
25
80
3.2
E
空きなし
31
6
42
7.0
8
84
10.5
F
8
8
1.0
G
16
19
1.2
16
21
1.3
13
28
2.2
H
1
43
43.0
1
36
36.0
2
61
30.5
募集なし
募集なし
(注 1)「空きなし」は事前に応募を受け付けるも空きが生ぜず、結果として募集されなかったも
のである。
(注 2)F団地は建替予定のため現在政策的に入居者を募集していない。
募集数と応募者数が一致していた平成 12 年度の「F団地」を除き、各団地とも募
集数を上回る応募者があったことがわかる。滞納者に対し、適宜明渡しを求めてい
れば、入居できなかった応募者に対し住居が提供できたのではないかと思料する。
③ 保証人に対する請求について
市では、市営住宅の入居に際し入居者から連帯保証人を求めている(旭川市営住宅条例施
行規則第 7 条)
。連帯保証人の資格は、市内に 1 年以上居住する者で、未成年者・成年被後
見人・被保佐人または破産者でない者かつ独立の生計を営む者で入居者と同等以上の収入
がある者としている(同施行規則第 9 条)。この連帯保証人の責任は、入居者が入居時に市
に提出する「市営住宅入居請書」に記載されており、入居者の入居期間中の市に対する損害
を連帯して賠償することになって
30
いる。このため、家賃滞納が一定水準に達した場合には、市は保証人に連絡をと
り、入居者とともに今後の対応を求め、なお改善されない場合は、保証人に対し保
証債務の履行を求めることになる。
市は、保証人に対して入居者の滞納に係わる保証人としての協力依頼文書「住宅
使用料滞納に対する協力依頼について」を、平成 9 年度までは保証人に通知してい
た。しかし、平成 15 年 5 月から一部の保証人に対し滞納の支払について入居者を
指導するよう依頼文書を送付するようになるまでは、当該通知を送付したこともな
く、保証人に義務の履行を求める請求を行っていない。かつて、保証人に協力依頼
文書を送付した際、保証人から強行な免責及び保証人契約の解消の申入れを受けた
経緯があったとのことである。保証人の義務の履行を求める場合の対応及び手続が
定まっていないこともあり、保証人に対する積極的な交渉は行っていない。
保証人は、入居者に対し心理的な債務履行を担保するための手段であるとともに、
債権保全手段でもある。場合によっては実際にその権利を行使することも必要であ
る。現在は、入居者に対し配布している「住まいのしおり」には、保証人に関する記
載はある。今後は、さらに入居者に周知徹底するとともに、市での対応方針を早急
に整備し、これに従った運用を図る必要がある。
また、入居時に保証契約書に相当する「入居請書」を 3 部複写で作成し、そこに
連帯保証人の署名、実印の押印及び印鑑証明書・住民票の謄本または抄本・収入を
証する書類の提出を求めている。このうち、1 部は市が保管し、残る 2 部を入居者
に交付し、そのうち 1 部を保証人に交付すべく入居者に依頼している。保証人にそ
の責任を認識させるために、市から直接保証人に交付することが必要である。
11.高額所得者
(1)概 要
高額所得者とは、市営住宅に引続き 5 年以上入居しており、最近の 2 年間、公営
住宅法施行令で定める基準額(収入月額 397,000 円)を超える収入のある入居者で
ある(公営住宅法第 29 条)。この収入月額 397,000 円は、親子 4 人の標準世帯で給
与所得者の場合、月額 657,778 円となる。
高額所得者に認定されると、入居者の毎月の家賃は近傍同種の住宅の家賃を納付すること
になる(旭川市営住宅条例第 19 条)
。そして市は、期限を定めて、当該公営住宅の明渡し
請求することができ(公営住宅法第 29 条、旭川市営住宅条例第 19 条の 2)
、なお住宅を明
渡さない場合には、その期限到来の日の翌日から、近傍同種の住宅の家賃の 2 倍に相当す
る損害賠償を徴収することができる(公営住宅法第 29
31
条、旭川市営住宅条例施行規則第 34 条)
。
平成 14 年度において、市が高額所得者と認定した者は 6 名であり、当該年度を含
む過去 4 年間の認定状況をまとめると次のとおりである。
認定状況:認定された場合に○
入居団地
平成 11 年度
平成 12 年度
平成 13 年度
平成 14 年度
H
○
○
○
○
B
―
―
―
○
F
○
―
―
○
D
○
○
○
○
D
―
○
○
○
I
○
○
○
○
(2)監査要点及び手続
高額所得者に対する住宅の明渡し請求の実施状況を確認するため、関係書類の閲
覧及び担当者への質問を実施した。
(3)監査結果
平成 14 年度の高額所得者 6 名のうち、2 名を除いてその前 2 年間は継続して高額
所得者に認定されており、うち 3 名は高額所得者の認定が 4 年間継続している。市
は、毎年該当者と明渡しに向けた交渉を行っているが、市としての明渡し請求後の
実務的な手続が整備されていないとして、期限を定めた明渡し請求を実施するに至
っていない。
高額所得者の認定が 4 年間継続している 3 団地についてみると、近時の新規募集
の状況は次のとおりである。
入居団地
平成 12 年度
募集
応募
平成 13 年度
倍率
募集
応募
平成 14 年度
倍率
募集
応募
倍率
H
5
10
2.0
3
9
3.0
2
16
8.0
D
50
70
1.4
38
51
1.3
25
80
3.2
I
6
9
1.5
7
8
1.1
2
27
13.5
入居希望者が存在するにもかかわらず、高額所得者の入居継続を認めることは、公営住宅
法の基本的趣旨に反するものであり、その取扱いに適正を欠いている。早急に、明渡し請
求後の実務的な手続を整備し、期限を定めて、明渡し請求を実施す
32
べきである。特別の事情がある高額所得者から申出があったときは、明渡しの期
限の延長を認めている(公営住宅法第 29 条第 7 項、旭川市営住宅条例第 18 条)こ
とから、明渡し請求は原則どおりに実施すべきである。
12.収入超過者
(1)概 要
収入超過者とは、市営住宅に引続き 3 年以上入居しており、公営住宅法施行令で
定める基準額(収入月額、一般階層 200,000 円、裁量階層 268,000 円)を超える収
入のある入居者(公営住宅法第 28 条)である。この収入月額 200,000 円は、親子 4
人の標準世帯で給与所得者の場合、月額 425,000 円となる。
収入超過者に認定されると、入居者の毎月の家賃はその収入に応じた額となり(旭
川市営住宅条例第 16 条)
、当該公営住宅を明渡すよう努めなければならなくなる(公
営住宅法第 28 条、旭川市営住宅条例第 19 条の 2)
。過去 5 年間における、収入超過
者の推移は次のとおりである。
区
分
収入超過者戸数
年度末管理戸数
比率(%)
基準日
平成 10 年度
306
4,398
7.0 平成
9 年 10 月 1 日
平成 11 年度
297
4,463
6.7
平成 10 年 10 月 1 日
平成 12 年度
296
4,476
6.6
平成 11 年 10 月 1 日
平成 13 年度
248
4,548
5.5
平成 12 年 10 月 1 日
平成 14 年度
248
4,560
5.4
平成 13 年 10 月 1 日
(2)監査要点及び手続
収入超過者に対する住宅の明渡しに向けた施策の実施状況を確認するため、関係
書類の閲覧及び担当者への質問を実施した。
(3)監査結果
平成 14 年度において、収入超過者に対する住宅の明渡しに向けた施策として、対
象者に対し 15 年 2 月に明渡しを勧誘する書面を送付している。市が管理する公営住
宅に占める収入超過者の割合は年々低下する傾向にはあるものの、市の「特定公共
賃貸住宅」(後述)の斡旋等を行うなど、公営住宅法の「低額所得者に対して低廉な
家賃で賃貸」するという趣旨に沿って、さらに積極的に当該公営住宅の明渡しを容易
にするよう努めることが必要である。
33
13.不納欠損処分
(1)概 要
一定の条件を満たし回収不能と判断される未収入金については、不納欠損処分を
行っている。不納欠損額の推移については、26 頁「10. 滞納家賃の債権管理(1)
概要①市営住宅使用料収納状況の推移」に記述している。
(2)監査要点及び手続
平成 14 年度において、不納欠損処分を行った 14 件の処分理由は次のとおりであ
り、その適用状況を確認するため、関係書類の閲覧及び担当者への質問を実施した。
事
由
件数
金額(円)
(ア)滞納者が死亡し退去手続済み
5
205,430
(イ)退去後居所不明
5
1,039,830
(ウ)滞納者が破産し免責決定
4
3,505,200
14
4,750,460
合計
(ア)及び(イ)については、当該事実が発生してから 5 年経過済み。
(3)監査結果
①
退去済滞納者のうち死亡及び居所不明者への不納欠損処分
旭川市会計規則第 41 条(不納欠損処分)では、
(1) 法令の規定に基づき債権が消滅したとき。
(2) 時効の完成により債権が消滅したとき。
(3) 債権を放棄したとき。
(4) 行政処分により債権が消滅したとき。
の場合において、不納欠損処分しなければならないとしている。
旭川市会計規則第 41 条が「時効の完成により債権が消滅した」ものであることを
要求しているため、
(2)の(ア)及び(イ)については、当該事実が発生してから 5 年経
過した時点において不納欠損処分を行っている。
地方自治法第 236 条では、金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、
時効に関し他の法律(民法も含む)に定めがあるものを除いて、5 年間権利を行使し
ないときは時効により消滅する、としている。さらに、この権利の時効による消滅
については、その援用を必要とせず、またその利益の放棄もできない、としている。
一方、市営住宅の家賃債権は民法上の債権と解され、時効の完成による債権の消
滅には債務者の時効の援用を要するので、ただ単に 5 年間の時の経過に基づいて不
納欠損処分をすることにはならない。
上記(ア)及び(イ)を、債務者の時効の援用がない状態で、旭川市会計規則第 41 条に
34
基づき不納欠損処分する場合は、市が債権を放棄した場合に限られることになる。
しかしながら、普通地方公共団体の債権の放棄は、議会承認が必要とされる(地方
自治法第 96 条第 1 項)
。つまり旭川市会計規則第 41 条では、(ア)及び(イ)の債権を市
が放棄をしていない以上、時効が援用により効力を生じるまで、旭川市会計規則に
おいては不納欠損処分はできない。
これでは、実務上、市として回収不能と判断する延滞債権の不納欠損処分を行え
ないことになるため、早急に次の改善が必要である。
まず、滞納債権の保全及び回収手続きの取り扱いを定めることが必要である。こ
れに沿って回収手続きが進められ、各種の回収手続きを実施した結果、その後は回
収不能と判断しこの回収手続きを終了する基準の明確化も同様に必要である。
そして、この回収手続きの終了に基づき不納欠損処分を行う処理基準を、現在の
旭川市会計規則とは別に設けなければならない。現在の便宜的な基準により滞納家
賃の不納欠損処分を続けることはできない。
②
免責決定による不納欠損処分
平成 14 年度に免責決定による不納欠損処分 4 件のうち 3 件について、不納欠損
処分額が債権額と相違している。その内容は次のとおりである。
入居者が破産し免責が確定したときは不納欠損処分を行うこととなる。入居者
が破産宣告を受け、債権調査を経ないまま免責手続が進められた場合、市は免責
決定を行った裁判所に債権金額の照会を行い、この照会に対する回答金額により
不納欠損処分を行っている。
債権調査が実施されない場合は、照会に対する回答金額は申立時の債務者の申
立金額となる。破産決定日現在の実際の債権額が、回答金額と相違する場合は、
実際の債権額を不納欠損処分としなければならない。
事例
申立金額及び照会に
不納欠損処分額
対する回答金額(円)
(円)
破産決定日現在
の債権額
(円)
J
388,300
388,300
393,170
K
500,000
500,000
907,800
L
2,296,200
2,296,200
2,296,200
M
320,700
320,700
581,730
事例Jでは、不納欠損処分が
4,870 円不足している。
事例Kでは、不納欠損処分が 407,800 円不足している。
事例Mでは、不納欠損処分が 261,030 円不足している。
14.退去時の手続
35
(1)概 要
退去する者は、退去日の 7 日前までに退去届けを提出し、検査を受けなければな
らない。また、検査後敷金の還付を受けることができる。退去月の家賃は、日割り
にて計算する。
(旭川市営住宅条例第 31 条、第 32 条、第 33 条、第 46 条)
(2)監査要点及び手続
① 監査要点
退去時の手続が適正に行われているか。
滞納者からの退去時の回収手続が実施されているか。
② 監査手続
平成 14 年 10 月から平成 15 年 3 月までの半年間の全退去者 72 件について、市
営住宅退去届、市営住宅退去に伴う修繕報告書、退去立会調査票及び敷金返還資
料等により手続の適正性を検証した。
(3)監査結果
① 家賃滞納者の退去
家賃滞納者の退去は 10 件あり、うち 3 件は納付済みとなっている。滞納継続中 7
件の平成 15 年 11 月 30 日現在の滞納額は次のとおりである。本来退去時点で回収
の対応をすべきものであり、保証人への請求を含む退去時の手続の整備が必要であ
る。
平成 15 年 11 月 30 日現在の滞納額
区
分
人数
破産申請
1
264,660
居所不明
2
1,456,270
その他
4
6,150,610
合
7
7,871,540
計
金額(円)
② 退去届の事前提出
退去届出日と退去日が同日となっている事例が 14 件あった。これは退去後に退去届を提出
したためである。退去日の 7 日前までに届出が必要であることは、入居時の「住まいのし
おり」や家賃の納付書に記載されているにもかかわらず徹底されていない。なお退去して
からの届出については、届出日を退去日として日割家賃を
36
計算している。入居待機者がいる現状を踏まえ、退去手続を円滑に行うためにも
事前の届出が必要なことを入居者に周知させる必要がある。
① 退去完了確認の不徹底
退去日から修繕完了確認までの期間は、次の 10 件を除く 62 件で平均 7.8 日、最
短即日、最長 17 日であった。修繕の手配、実施を考慮すると妥当な期間と思料す
る。ただし、除外した 10 件のうち退去者の無理解による手続不能ないし中断が 3
件あり、結果として長期化している。今後このようなことのないよう、入居者への
退去手続の周知徹底が必要である。
区
分
件数
修繕完了確認までの期間
無断退去後親族立会
1
27 日
退去後一時居所不明
1
35 日
退去後居所不明親族立会
1
修繕報告書未作成
完了確認日付記載漏れ
1
火事による退去
3
退去後政策空家
3
合
計
10
15.特定公共賃貸住宅
(1)概 要
旭川市には、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づき建設された住
宅、すなわち特定公共賃貸住宅が平成 15 年 3 月 31 日現在、平成 11 年度新築の神楽
岡団地に 5 戸、平成 13 年度新築の第1永山団地に 8 戸、計 13 戸ある。
過去 4 年間に新築された団地で 3LDK タイプの募集倍率は次のとおりとなっており、
異なる制度の比較とはいえ、特定公共賃貸住宅の募集倍率は公営住宅の募集倍率に
比べて著しく低くなっている。
37
新築年度
平成 11 年度
募集団地名及び募集戸数
新築
春光2区団地
15 戸
神居団地3号棟
神楽岡団地
5戸
平成 12 年度
新築
神居団地4号棟
平成 13 年度
新築
第1永山団地
神居団地5号棟
平成 14 年度
新築
第2永山団地
7戸
種類
公営住宅
10.0 倍
公営住宅
17.7 倍
特定公共賃貸住宅
8戸
8戸
募集倍率
公営住宅
2.0 倍
15.2 倍
特定公共賃貸住宅
1.0 倍
公営住宅
9.8 倍
1 戸(注) 公営住宅
192.0 倍
20 戸
(注)第2永山団地は住替えの入居者が多く、新規入居者の募集は1戸しかなかった。
(2)監査要点及び手続
特定公共賃貸住宅の 13 戸について、入居審査及び家賃決定が適正に行われている
かどうか、当該特定公共賃貸住宅が特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律第
18 条に基づき、適正に建設及び管理が行われているかどうかについて検証した。
(3)監査結果
特定公共賃貸住宅は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律第 1 条におい
て、中堅所得者等の居住の用に供する居住環境が良好な賃貸住宅の供給を促進する
ための措置を講ずることにより、優良な賃貸住宅の供給の拡大を図り、もって国民
生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とするとされている。
しかし、市の過去 4 年間において新築された特定公共賃貸住宅の募集倍率をみる
と、中堅所得者向けの市営住宅及び入居中の収入超過者の明渡しを誘導するための
住宅の需要が高いとは考えられず、特定公共賃貸住宅以外の市営住宅の募集倍率と
比べると、公営住宅の本来の対象者層である低額所得者向けの入居施設の充実が優
先すると考える。
したがって、現状では特定公共賃貸住宅を建設する必要はないと考えられる。ま
た現在のところ、市にも特定公共賃貸住宅を新規に建設する具体的計画はない。
38
平成15年度
包括外部監査の結果に関する報告書
に添えて提出する意見書
市営住宅の管理運営について
包括外部監査の結果に関する報告書
に 添 え て 提 出 す る 意 見 書
1.市営住宅に係る財政状況
(1)市営住宅の収支実績
市はこれまで市営住宅の収支を集計したことがない。そこで市営住宅の収支状況
を把握するため、次に関係数値をまとめてみる。
(単位:千円)
平成 13 年度
平成 14 年度
収
住宅使用料
760,146
759,791
入
家賃収入補助金
201,705
218,800
1,044
673
A
962,895
979,265
支
人件費
166,247
161,366
出
維持管理、整備、改善事務費
310,762
228,021
小
477,009
389,388
市債元金返済
593,140
643,000
市債利息支払
402,415
388,593
小
計
995,556
1,031,593
支出合計
B
1,472,565
1,420,981
その他
収入合計
収支差額
(参考
計
A-B
△
家賃減免額)
年度末市債残高
509,670
△
441,715
(29,131)
(30,506)
11,573 百万円
11,628 百万円
(注 1)住宅使用料は実収入額であり、過年度の滞納額の回収を含む。
(注 2)人件費は、都市建築部住宅課の 3 係の 20 名分の総人件費を直接経費とみなして
計上している(都市建築部住宅課の 3 係には係長から一般職員まで 20 名が在籍
している)
。
平成 13 年度で 509 百万円、平成 14 年度で 441 百万円の支出超過となっている。
これには、家賃減免による収入減も含まれている。
ところで、平成 14 年度の収入予算のうち使用料及び手数料の内訳は次のとおりに
なっており、市営住宅は最大の事業規模となっている。
平成 14 年度の使用料及び手数料の収入予算
39
項
目
金額(千円)
市営住宅使用料
800,388
空港使用料
452,123
こみ埋立処分手数料
377,400
道路占有使用料
235,626
し尿処理手数料
191,600
証明戸籍手数料
154,321
その他
618,310
合
計
2,829,768
公営住宅は住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸されるものであるため、
もとより収益獲得を目的とするものではない。しかし、事業規模や市の財政に及ぼ
す影響を考慮すると、収支計算書を作成し、どの程度の財政負担が生じているのか
を把握し、建替えの意思決定、費用削減の方策立案等に利用する必要があるものと
考える。収支状況の把握は団地ごとに行うことが望ましい。
収支計算書とともに損益計算書の作成も求められる。冒頭に掲げた収支計算書は、
現金の入出金をもとに会計処理を行う、いわゆる現金主義により作成している。現
在の官庁会計からはこれ以外のデータを収集できないからである。しかし、行政活
動の効率性、経済性を測定するためには、企業会計で採用されている発生主義によ
る会計処理を行った損益計算書を作成する必要がある。両者の主な相違点は次のよ
うなものである。
① 市債の償還による支出は収支計算書には計上されるが、企業会計では債務の消滅
にすぎず純財産に影響を与えないので、損益計算書には計上されない。
② 建物等の資産は取得後複数年にわたって事業の用に供されるため、損益計算書で
は使用可能期間にわたって減価償却を行い費用計上されるが、収支計算書では現
金支払時の支出として取り扱われる。
市は収支計算書及び損益計算書の作成方法を確立し、これらの計算書により市営
住宅の運営状況を説明することが望まれる。
さらには市営住宅に関する財産の状況、すなわちストック情報の提供も求められよう。近
時、多くの地方公共団体がストック情報として貸借対照表の作成を進めている。市全体の
貸借対照表の中から、市営住宅に関する財産の状況を示すことになる。財産の主なものは
土地と建物であり、土地については、公共財産としての土地
40
のうち、現に市営住宅として利用している土地と建物を用途廃止した未利用地の
分類が求められる。建物については、53 頁に示す「市営住宅建物取得金額」につき減
価償却実施後の残存価格の情報提供が求められる。
(2)平成 15 年度以降の平成 14 年度末市債残高の償還額、利息支払及び平成 15 年度以降
の建設に伴う市債の償還予想
(単位:千円)
年
度
平成 14 年度末 平成 14 年度末 平成 15 年度以
合
計
残高の元金償還
残高の利息支払
平成 15 年度
705,556
356,564
−
1,062,120
平成 16 年度
768,311
322,468
−
1,090,797
平成 17 年度
757,724
287,666
−
1,045,391
平成 18 年度
751,172
255,595
−
1,006,768
平成 19 年度
747,307
226,807
21,954
996,068
平成 20 年度
737,734
198,366
43,681
979,782
平成 21 年度
726,765
170,660
65,408
962,833
平成 22 年度
658,262
145,286
87,135
890,683
(注)今後の建設想定
降起債分の償還
平成 15 年度
第2永山団地2号棟 70 戸
平成 16 年度
第2永山団地3号棟 60 戸(予算)956 百万円
以後毎年 60 戸
966 百万円
956 百万円の建設を想定。半額が国庫補助につ
き、半額を起債し 3 年据置、4 年目より 22 年間償還するものと
した。平成 15 年度以降起債分の利息は無視している。
(3)平成 15 年度以降の収支予想
「旭川市公共賃貸住宅ストック総合活用計画」(以下、「総合活用計画」という。)
では、今後の市営住宅の建替えでは、春光台団地のうち昭和 40 年から 45 年に建設
された簡易耐火平屋建及び同 2 階建の 544 戸並びに南町団地及び新町団地 94 戸が当
面の課題とし、平成 23 年以降に 5 団地 81 戸の建替えを進めることになっている。
個別改善・維持保全整備を行う団地もあることから、市債に関する元金償還及び
利払は年 10 億円程度の水準で推移すると考えられる。一方収入は、
「建替後の家賃
の激変緩和措置」
(公営住宅法第 43 条、同施行規則第 11 条、旭川市営住宅条例第 20
条)があるため、即時に正規の家賃まで増額することはできない。既設住宅から新
設住宅に住み替えた場合、従来の家賃と正規の家賃との差額の 6 分の 1 ずつを前年
家賃に上乗せしていくことになるため、正規の家賃に達するまで 6 年を要する。公
営住宅家賃対策補助金はこの収入差額を交付対象としているものの、この収入差額
全額ではないので、6 年後まで建替えによる家賃収入増の全効果は現れない。
41
以上から、平成 15 年度以降の市営住宅の収支は、当面の間は、平成 13 年度及び
平成 14 年度と同様の年 4 億円から 5 億円程度の支出超過が続くと考えられる。
(4)
「総合活用計画」における計画策定
「総合活用計画」では、市営住宅ストック活用の基本目標として次の項目が掲げら
れている。
① 計画的な市営住宅の整備、活用
② 環境共生
③ 高齢化・身障者対応
④ 効率的・効果的な整備の推進
そしてこれらの基本目標を達成するための基本方針が列記されている。
(
)内は監査人の加筆
① 構造別市営住宅ストック活用に係る基本方針
簡易耐火構造建物の建替え、その他建替え、改善、維持保全対象の団地を明
確化している。
② 旭川市の環境に調和する住宅供給に係る基本方針
北海道による「北海道環境共生型公共賃貸住宅整備指針」に準拠する。
③ 駐車場整備に係る基本方針
今後の市営住宅の整備に際して、駐車場の有料化を検討する(現状は住民に
よる管理委員会が自動車保管場所に係わる除排雪等の実費相当を入居者より
徴収し管理運営をしている団地がある)
。
④ 高齢化対応、身障者対応等に係る基本方針
⑤ 適正な住戸への誘導に係る基本方針
1 階部分のバリアフリ−化、特定目的住宅(老人向け、身障者向け等)とす
ることの検討。世帯構成の変動に伴う住替え策を検討する。
⑥ 住宅使用料の適正な負担に係る基本方針
滞納者、収入超過者、高額所得者に対して適切に対応を行う。
⑦ 効果的、効率的な整備の推進に係る基本方針
まちなか住居の推進。民活型の公的支援住宅供給を検討する。道営住宅との
混在団地は、北海道と緊密に連携して活用していく。
以上の「総合活用計画」では、公共賃貸住宅の計画的な整備と居住水準の向上が
主題となっており、それを実現するための方策として老朽化した簡易耐火構造住宅
の建替えを推進することとされている。多数の入居待機者がいる現状では、市営住
42
宅の増設を検討すべきであるとの意見もある。しかしながら前述のとおり、市債残
高が 100 億円を突破し、今後の償還及び利払が年間 10 億円にも及ぶ厳しい財政状況
を踏まえると、増設と建替えの両者を求めることは不可能である。「総合活用計画」
に従って、当面建替えを推進することが現実的な選択肢であると考える。なお、単
純な現在の需給状況に基づいた新設では、将来に需給状況が逆転するリスクを負う
こととなることを付言しておく。
当面は入居希望者に対して十分に住宅が供給されない状況が継続することになる。
本来公営住宅は住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸されるべきところ、
長期滞納者や高額所得者といった明渡し対象となる者が継続して入居していること
は取扱いに公平を欠いている。限られた資産を有効に活用するため、市は退去を求
めるべき者に対して厳しい態度で臨む必要がある。
2.建設費等の抑制
19 頁「包括外部監査の結果に関する報告書 第2 7.住宅建設等請負契約及び補助金
申請」に記載したとおり、監査対象とした工事の落札率は忠和団地改修工事が 97.2%、
第2永山団地2号棟建替工事が 98.3%である。これをより詳細にみてみると、忠和団
地建物改修工事のうち契約金額が 50 百万円を超える 8 件の工事の落札率は 97.0%から
97.9%と高いうえにほとんどバラツキがない。また、第2永山団地2号棟建替工事の
うち最大規模の建築工事に至っては落札率 99.1%と極めて高い水準になっている。
そこで、市営住宅の建設費がどの程度の水準にあるのかを検証してみる。最近の市
営住宅の建設費の推移は次のとおりである。
年
度
団地名
戸数
A
B
C
D
平成 10 年度
神居
49
888,552
4,730
3,295
619
平成 10 年度
春光1区
50
828,346
4,187
3,076
652
平成 10 年度
東鷹栖
60
1,072,995
5,608
3,996
631
平成 10 年度
神楽岡
50
955,552
4,854
3,337
649
平成 11 年度
春光2区
60
1,074,780
5,716
4,071
620
平成 11 年度
神居
49
874,440
4,730
3,295
610
平成 12 年度
神居
49
869,295
4,730
3,295
606
平成 13 年度
第1永山
80
1,407,955
7,929
5,468
585
平成 13 年度
神居
45
776,265
4,361
3,075
587
平成 14 年度
第2永山
70
999,915
5,754
3,981
573
平成 15 年度
第2永山
70
966,105
5,754
3,981
554
(注) A.建築価格(外構及び周辺整備は除く)
B.総面積
単位:㎡
43
単位:千円
(注) A.建築価格(外構及び周辺整備は除く)
B.総面積
単位:千円
単位:㎡
C.住宅専用面積
単位:㎡
D.坪当たり建築価格
単位:千円(A÷B×3.3)
各年度平均の1戸当り建築価格の推移は次のとおりである。
年度
1戸当たり建築
価格
1戸当たり総面
(千円) 積
1戸当たり住宅
(㎡) 専用面積
(㎡)
平成 10 年度
17,920
92.7
65.5
平成 11 年度
17,882
95.8
67.5
平成 12 年度
17,740
96.5
67.2
平成 13 年度
17,473
98.3
68.3
平成 14 年度
14,284
82.2
56.8
平成 15 年度
13,801
82.2
56.8
市内の分譲マンション建築価格は、施工業者の状況及び販売価格から、坪当たり 40
万円から 45 万円程度で推移していると推定されるので、45 万円をモデル建設費とみて
1戸当たりモデル建設費を算出すると次のようになる。
(単位:千円)
年度
A
1戸当たり
実際の建築価格
B
1戸当たり
C
差
額
D=C/B×100
モデル建設費
(%)
平成 10 年度
17,920
12,640
5,280
41.7
平成 11 年度
17,882
13,063
4,819
36.9
平成 12 年度
17,740
13,159
4,581
34.8
平成 13 年度
17,473
13,404
4,069
30.4
平成 14 年度
14,284
11,209
3,075
27.4
平成 15 年度
13,801
11,209
2,529
22.6
モデル建設費との差額は縮小傾向にあるが、まだ 2 割程度高いことがわかる。市営
住宅は高齢者及び単身者の居住者の割合が高いため、狭い住戸タイプが多くなり、ま
た車椅子でも楽に通行できるよう廊下を広く取りってあるなどを考慮しても金額の差
は歴然としている。今後、一層建設費を抑制する努力が求められる。
39 頁「1.市営住宅に係る財政状況」で述べたとおり、市営住宅建設に伴う市債の償還
及び利払は今後数年間にわたり 10 億円規模で発生し、市の財政に大きな負担を強いる
ことになる。加えて、実際の建設費が標準建設費を超える場合には標準建設費を基
44
準とした補助金しか受給できないことにも注意を要する。第2永山団地2号棟建替
工事の場合、実際の建設費が標準建設費を 25 百万円上回っており、この部分は全額市
の負担になっている。
こうした状況を踏まえると、市は良質な住宅を確保しつつも、それに係る建設費を
抑えるよう努力する必要があると考える。以下に具体的な方策を列挙しておく。
①
市は平成 13 年 5 月から工事に係る 130 万円以上の入札案件のすべてについて設
計金額を事前公表しているが、調査した範囲では予定価格は例外なく設計金額と一
致していた。担当部局での予定価格の設定は、「公共工事の入札及び契約の適正化
を図るための措置に関する指針」
(平成 13 年 3 月 9 日閣議決定)に示されている「予
定価格の設定に当たっては、適正な積算の徹底に努めるとともに、設計書金額の一
部を正当な理由なく控除するいわゆる歩切りについては、公共工事の品質や工事の
安全の確保に支障を来すとともに、建設業の健全な発展を阻害するおそれがあるこ
とから、厳に慎むものとする。」に沿って行われている。入札に緊張感を持たせる
ため、予定価格の設定方法を見直す検討が必要と考える。
②
現在 720 百万円以上で、工事期間等施工の条件上適当と認められる工事について
のみ採用されている一般競争入札の範囲を拡大することを検討すべきである。他の
自治体で公共工事すべてに一般競争入札を採用した結果、落札率が 10%程度下がっ
た事例がある。 工事を細切れではなく一括して発注することにより、建設費を低
減させることを検討することが必要と考える。忠和団地改修工事では、屋上防水、
外壁補修など工事内容は同様であるにもかかわらず 11 棟が別々の工事契約となっ
ている。第2永山団地2号棟建替工事では、建築工事、衛生設備工事など工種別に
契約が締結されている。
発注に関しては、23 頁「包括外部監査の結果に関する報告書 第2 8.修繕費
(3)監査結果①発注の細分化と見積りの対象の設定」にある発注単位の細分化に
よる中小企業者への配慮がおこなわれている。とはいえ、この発注細分化により建
設コストの増額を容認したものではないことは明らかであり、建設コスト抑制の効
果が出ている近時の傾向の中で、発注細分化による建設コストの増額を如何に抑え
るか重要な課題となる。
③
民間業者が建設した方が建設コストを低く抑えられることから、他の自治体では
民間建築物件の買取りや民間賃貸住宅の借上げが採用されてきている。これらは公
営住宅整備事業等補助金及び家賃対策補助金の対象となる。企画及び設計から委託
するもの、建築だけを委託するものなどその形態は様々である。なお借上げ方式で
は、建設コストの軽減の他に土地を購入しないため、その分の財政負担が軽減され
る長所がある。
45
3.長期滞留債権の解消策
既に滞納期間が長期化している入居者に対する対応策として、今後検討すべき事項
として、次のような事項がある。
(1)債権保全手続
(2)法的取立手続
さらに、新たな長期滞納者を発生させないための予防的対策として、以下のような
施策が考えられる。
(3)納付しやすい制度の整備
(4)コールセンターの設置
(5)住宅使用料収納奨励嘱託員に対する数値目標の設定及び成果報酬
(1)債権保全手続
市営住宅の家賃に係る債権の消滅時効は、5 年(民法第 169 条)とされ、該当する
債権について債務者が時効の援用を行った場合は、確定的に消滅することになる。
26 頁「包括外部監査の結果に関する報告書 第2 10.滞納家賃の債権管理」に記
載したとおり、市の滞納者に対する債権は、長期間にわたり支払が全く行われてい
ないものが少なくない。このため、回収に向けて本格的に取り組む前に、債権保全
手続を進める必要がある。
また、同上報告書 27 頁「② 平成 14 年度末の未収入金残高の状況」の滞留年数 5
年以上の 72 件の滞納額のうち、5 年以上経過した金額は次のとおりである。
(単位:千円)
滞納金額
左のうち平成 10 年
退去日
備
考
3 月 31 日以前分
入居者 67 名
131,960
56,843
退去者N
3,360
1,093
平成 14 年 11 月 30 日
退去者O
1,397
774
平成 13 年 11 月 18 日
退去者P
2,364
2,174
平成 10 年 11 月 15 日
退去者Q
922
842
平成 11 年
4 月 22 日
平成 10 年 6 月死亡
退去者R
1,830
1,268
平成 12 年
3 月 31 日
平成 12 年 1 月死亡
141,834
62,996
合
計
平成 15 年 2 月より居所不明
長期間、家賃の納付のない入居者に対しては、まず小額であっても入金を促し、
支払の事実を確保するとともに、一定の基準を設け時効中断のための債務承認を取
り付けることが急務である。
46
(2)法的取立手続
市はこれまで、法的取立手続を実施したことがなく、今後の実施に向けて準備中
とのことである。支払の意思がないと判断される入居者に対しては、明渡しを求め
るとともに、適宜、法的取立手続を実施することが必要である。債権回収に向けた
市の毅然とした姿勢を示すことは、他の同様な入居者にとって、その債権の回収に
与える影響は大きいと考えられる。
(3)納付しやすい制度の整備
平成 13 年度及び平成 14 年度について、当月分家賃の納付方法の構成比を調べた
ところ、次のとおりとなっていた。
年
度
平成 13 年度
平成 14 年度
区
件
分
数
構成比(%)
件
数
構成比(%)
納付書納付
口座振替
住宅課長委任払
合
計
1,968
2,410
93
4,471
44.0
53.9
2.1
100.0
1,909
2,432
110
4,451
42.9
54.6
2.5
100.0
(注)「住宅課長委任払」とは、あらかじめ提出された委任状に基づき生活保護受給者
の受給額から家賃を差し引き、代理納付するものである。
上記からは、口座振替を利用している入居者の比率が、必ずしも高くないという
ことができる。この納付書納付者には、滞納者で分割納付している者は含まれてい
ない。
しかし、納付書納付では、入居者が支払う意思をもって窓口に足を運ばなければ
納付されないのに対し、口座振替は口座に残高があれば、入居者の積極的な行動を
待つまでもなく回収できる利点がある。新規入居者に対し配布している「旭川市営住
宅住まいのしおり」にも口座振替の利用を推奨する記載がある。なお一層、口座振替
の利用率向上に向け、新規入居者はもとより、今まで納付書納付を行っている入居
者に対しても積極的に口座振替の利用について勧誘する必要がある。
また市は、上下水道料金の支払について、平成 16 年 4 月からコンビニエンススト
アでも受け付けることを検討中とのことである(平成 15 年 9 月 9 日 北海道新聞 記
事より)。物理的に納付を受け付ける窓口が増えることと、夜間、休日の受付が可能
であることから、納付機会が広まり利用者にとっての利便性は高まるものと思われ
る。納付の利便性を高め、延滞の発生契機を少しでも回避するため、市営住宅の家
賃の納入についても検討が必要と考える。
47
(4)コールセンターの設置
延滞債権の増加を防止するには、新規延滞発生者に適切に対応することが必要で
ある。延滞額が累積してしまってからでは、対応策が限られてしまい、入居者にと
っても正常化させる意欲が減退してしまう。市では、滞納者に対して毎月督促状を
送付し、3 ヵ月以上の滞納者には滞納通知を送付して納付を促している。
初期対応策として、近時他の自治体が地方税の滞納に対処するため、コールセン
ターを設置して回収に実をあげている例がある。滞納者リストからパソコンで自動
的に電話をかけ、相手が出た場合にオペレーターに繋がる仕組みで、東京都足立区
が平成 15 年 4 月に、東京都稲城市が平成 14 年度に導入している。足立区の場合、
常時数名が平日の早朝から夕方まで納付を促した結果、文書より電話で直接話しか
けた方が効果的で、納付割合は 15%から 60%に高まったという(平成 15 年 8 月 24
日
日本経済新聞 記事より)
。
上記の方法は、市が管理する他の延滞金の徴収にも利用が可能であり、適切な初
期対応が延滞額の増加の歯止めとなるものと期待できる。今後、検討を要する対策
である。
(5)住宅使用料収納奨励嘱託員に対する数値目標の設定及び成果報酬
市は増加する未収入金の回収促進手段として、平成 15 年 5 月より住宅使用料収納
奨励嘱託員を 2 名採用し、滞納者を戸別訪問し、納付を督促している。この、住宅
使用料収納奨励嘱託員は、任期 1 年の任用期間で、勤務期間は 1 週 29 時間のフレッ
クスタイムとして、戸別訪問で入居者に接触しやすい時間を確保している(旭川市
住宅使用料収納奨励等嘱託員執務要領)
。
市が導入したこの独自の制度は、回収促進の手段として評価できる。この制度を
さらに効果的なものにするため、何らかの評価基準及びこれに従った目標を定め、
当該目標達成時に成果報酬を支給する制度の導入を検討すべきである。現在は奨励
嘱託員の報酬が定額となっていることから、成果報酬の導入により目標達成意欲向
上が期待できるのではないかと思料する。
4.明渡し請求手続
29 頁「包括外部監査の結果に関する報告書 第2 10.滞納家賃の債権管理(3)監
査結果③長期滞納者に対する明渡し請求」で述べたとおり、滞納者への明渡し請求は公
営住宅法、旭川市営住宅条例施行規則に規定されている。しかし、市では入居者に対す
る強制執行または訴訟に至った場合の対処については取扱いが定まっていない。
訴訟については、議会承認が必要とされる(地方自治法第 96 条第 1 項)。そのため、
機動的に明渡し請求をし、その後の訴訟にも備えておくためには、この案件に係る訴
48
訟の提起につき市長において専決できる「専決処分事項の指定」を議会議決で定め
ておくことが望まれる。もちろん議会議決をその都度要するとの意見も予想される。
どちらにせよ、これに対応して、実際の手続を定める要綱ないし要領の制定が必要で
ある。また、手続に要する諸費用の予算措置も必要となる。
平成 15 年 3 月 31 日現在の滞納者の状況
滞納額区分
現況
人数
(滞納額の単位:千円)
滞納額
A
400 万円以上
入居中
1
4,225
500 万円未満
退去済
−
−
300 万円以上
入居中
8
27,417
400 万円未満
退去済
1
3,660
200 万円以上
入居中
22
51,470
300 万円未満
退去済
2
4,533
100 万円以上
入居中
58
82,616
200 万円未満
退去済
13
16,622
50 万円以上
入居中
90
65,157
100 万円未満
退去済
23
15,892
50 万円未満
入居中
818
57,262
退去済
135
20,974
入居中
3,454
−
退去済
−
−
入居中
4,451
288,147
退去済
174
61,381
正常先
合
計
B
C
D
E
1
0
0
0
0
7
1
2
0
0
9
4
2
1
0
33
13
1
3
1
40
6
6
12
2
105
8
38
171
33
118
2
205
522
284
313
34
254
709
320
(注)A.平成 14 年 10 月 1 日までに収入申告しなかった人数
B.平成 15 年 3 月 31 日までに収入申告しなかった人数
C.収入超過者の人数
高額所得者は平成 14 年度末の滞納者にはいない。 ただし、平成 15 年度は
滞納額 200 万円以上 300 万円未満の滞納額区分に 1 人いる。
D.生活保護受給者の人数
E.家賃減免者の人数
この滞納者の状況よれば、A.では 17 頁「包括外部監査の結果に関する報告書
第2 6.家賃収入補助金等の申請(3)監査結果」で指摘した補助金申請の対象と
できなかった入居者の割合が高いことがわかる。また、B.によれば 3 月 31 日まで
に収入申告が行われなかった場合、翌月より近傍同種の高い家賃が請求されること
49
になる。申告をすれば翌月より正常な家賃に復帰することとなるが、きわめてル−
ズな規則を遵守しない入居者といえる。C.の収入超過者において滞納者がいるこ
とは驚きであり、制度の趣旨を逸脱している。D.の生活保護受給者の滞納につい
ては,今後一層福祉部局との連携が必要である。さらに E.の家賃減免者が高額滞
納者にほとんどいないことから、滞納それ自体に正当な理由はないと判断される。
5.事故空家
平成 15 年 12 月現在、次の事故空家が存在する。
担当部局は、新規入居の募集を停止し対応を苦慮している状況である。
事例
退去年月
空家理由
備
考
S
平成 14 年 1 月
自殺
募集停止中
T
平成 14 年 1 月
死亡、1 カ月後発見
募集停止中
民間賃貸住宅ならば、家賃を減額して入居者を募集する対策もあるが、市営住宅で
は認められていない。しかしながら前述のとおり、最近建替えが行われた市営住宅は
高コストで建設された貴重な市有財産であり、これを有効利用しなければならない。
制度上の問題であるとはいえ、今後何らかの事故により空家が生じる事態に対処する
検討が必要である。
6.市中心部の開発
他の自治体と同様に、市中心部は人口が減少し、商業集客力も郊外大型店に奪われ
るなど衰退が著しい。しかし目を転ずれば、JR 旭川駅に近く交通手段が豊富であるこ
と、近くに百貨店、スーパーマーケットがあり自家用車を使用せずに買い物ができる
ことなどから、高齢者、障害者にとっては居住するには便利な場所である。実際に市
営住宅待機者にも市中心部に居住を希望する人がいる。
そこで、市街地活性化のため、市中心部に市営住宅を作って人を呼び込むことを検
討してもよいと考える。市中心部に市営住宅を建設しようとする場合ネックになるの
が土地の手当であるが、民間賃貸住宅を借り上げる方式であれば支障がない。この他
にも、現在市中心部の中央団地(昭和 25 年建設、24 戸)については、隣接するブロッ
クでの地域再開発事業に参加し、複合型の建替えが検討されている。
どのような方法であれば市中心部に設置可能か検討し、市街地活性化に繋げていく
ことが望まれる。
50
7.損害保険
市は財産の取得時に損害保険を付すべきであると判断した場合、旭川市公有財産等
損害保険事務取扱基準(以下、「取扱基準」という。
)により、社団法人全国市有物件災
害共済会と共済契約を締結する。市営住宅は全物件共済に加入することとしているが、
取扱基準では、1 級構造(鉄筋コンクリ−ト造・ブロック造等の耐久構造)の市営住宅
の場合は実損割合 30%にて加入することになっている。関係書類の閲覧により、平成
11 年度から平成 14 年度までの新築物件の加入状況の適正性を確認した。また、平成
14 年度に発生した春光台団地の火災についての災害共済金請求手続の適正性を確認し
た。
上記に加えて市は、平成 6 年度より施設責任賠償保険に加入している。1 事故当たり
最高 1 億 5 千万円の賠償保険を付している。
「失火の責任に関する法律」では、軽過失による失火の場合は隣家・隣室に対する
損害賠償責任を負わないこととされる。一方、賃貸住宅の場合の家主(市営住宅の場
合は市)と借家人との関係については、借家人は原状に復して返還する義務があり、
賃貸住宅の損害賠償責任が生じることとされている。
そのため、借家人の賠償責任に備えるための保険として「借家人賠償責任保険・個
人賠償責任保険」等があり、近時の民間賃貸住宅ではこれらの保険の加入を入居条件
としているところがある。
公営住宅において、これらの保険の加入を入居条件とすることはできないものの、
後述する広報活動において入居者に、不測の事態への備えとしてこの種の保険の情報
提供を行うことは、入居者自身のみならず高価な市有財産の保全という点において有
益なものと考える。
8.広報活動
市が市営住宅の入居者に配布する諸手続(入居、例年の申告、退去等)を記載した
印刷物は、入居説明会で交付、解説される「住まいのしおり」だけであり、監査を通
じて広報活動の必要性を感じた。公営住宅制度本来の趣旨のもとで効率的に運営する
ためには、入居者の理解と協力が欠かせない。
「包括外部監査の結果に関する報告書」で指摘した以下の事項についても、広報活動
を通じて周知徹底を図り、また入居者の理解と協力を求めることが必要である。
① 家賃納付方法の口座振替への変更
② 家賃の減免申請制度の周知
③ 退去手続の手順
④ 収入申告の手続及び期日
⑤ 敷金の運用益とその使用
51
なお、平成 15 年 12 月から、旭川市の公式サイト上に住宅課のホームページを開設
し、次のような情報を提供している。
① 市営住宅の概要
② 市営住宅の入居資格
③ 市営住宅募集案内
④ 市営住宅建替えの概要
ただ、インターネットを利用する年齢等を考慮すると、今後も印刷物での広報活動
は欠かせないものと考える。
52
市営住宅建物取得金額
団地名
中 央
緑 町
第1豊岡
第2豊岡
第3豊岡
東 豊
第1東光
第2東光
第3東光
神 居
亀 吉
新 町
南 町
旭 正
江 丹 別
第1永山
第2永山
春光1区
春光2区
春光5区
春光6区
大 町
春 光 台
神 楽 岡
藤 岡
瑞 穂
高 台
千代ヶ岡
第4東鷹栖
東 鷹 栖
第4東鷹栖
神楽岡ニュータウン
愛 宕
朝 日
新 富
忠 和
神 楽 東
川 端
合 計
種別
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
市単独
公営
特公賃
公営
公営
公営
改良
公営
公営
改良
改良
公営
公営
特公賃
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
公営
平成15年3月31日現在(単位:千円)
所在地
管理戸数 建物取得金額
備考
8条通8丁目
24
13,812
緑町24丁目
90
721,032
5・6条通24丁目
108
704,477
豊岡5条1丁目
96
465,730
豊岡6条1丁目
72
403,373
豊岡4条3丁目
16
20,245
東光10条3丁目
221
2,429,982
平成5年用途廃止
東光12条3丁目
0
東光12条4丁目
159
2,030,682
神居4・5条11・12丁目
241
4,201,496
5条西8丁目
52
751,928
東旭川北1・2条6丁目
24
23,944
東旭川南2条66丁目
70
92,463
東旭川町旭正325番地
10
12,499
江丹別町中央
2
66,388
江丹別町中央
2
永山1条17丁目1番1
72
1,399,878
永山1条17丁目1番1
8
永山5・6条15丁目
125
1,026,975
春光5条11丁目
50
828,346
春光4条4丁目
190
3,309,013
春光4条4丁目
12
平成10年用途廃止
春光5区1条4丁目
0
春光6区2条2・3丁目
198
4,277,035
春光6区2条2・3丁目
96
春光町10番地
24
236,100
春光台3・4・5条4・5丁目
626
2,107,214
神楽岡12条2丁目
45
951,583
神楽岡12条2丁目
5
西神楽南2条4丁目
15
21,427
西神楽2線10号
14
19,898
西神楽南2条1丁目
32
52,026
西神楽1線24号
16
25,004
平成9年用途廃止
東鷹栖1条3丁目
0
東鷹栖4条4丁目
60
1,072,995
東鷹栖4線15号
8
6,648
緑 が丘1・2・3・4条1・2丁目
767
2,918,144
豊岡15条6丁目
140
815,421
11条通23丁目.豊岡13条1丁目
100
640,032
東3条7・8丁目
60
403,190
忠和2・3条6・7・8丁目
400
3,171,195
緑が丘東2条4丁目
250
2,048,821
川端町5条10丁目
60
519,175
38団地(実質は35団地) 4,560
53
37,788,171
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