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報告書その3(PDF形式:66KB
Ⅲ.国際競争力の改善に向けた努力 1.競合企業が所在する国・地域の変遷 主力製品が外国製品と競合すると回答した企業は、製造業全体で 78.1%であった。業種別 では、加工型業種で 89.6%、素材型業種で 83.7%と高い割合になる一方、その他製造業では 57.8%と低くなっている(第 3-1-1 図)。 第3−1−1 外国製品との競合 製 造 業 78.1 (素材型業種) 21.9 83.7 (加工型業種) 16.3 89.6 (その他の製造業) 10.4 57.8 0% 20% 42.2 40% 競合あり 60% 80% 100% 競合なし 平成 13 年度調査との比較では、製造業全体では外国製品と競合すると回答した企業の割 合は増加しており、特に加工型業種で増加幅が大きくなっている。ただし、個別業種では 16 業種のうち 6 業種で前回調査よりも減少しており、外国製品との競合は全体的に高まっ てはいるが、業種ごとにばらつきが見られる(第 3-1-2 図)。 46 第3−1−2図 外国製品との競合 (%) 100 80 60 40 20 0 0 0 1 5 億円未満 億円未満 競合する市場を国内市場と海外市場に分けると、製造業全体では国内市場で競合すると の回答割合が 80.5%、海外市場での競合が 82.8%となった。業種別では、加工型業種のほと んどの企業が海外市場で競合していると回答する一方(94.8%)、国内市場での競合は製造業 の中で最も低くなっている(77.5%)。素材型業種とその他製造業では海外市場よりも国内市 場で競合するとした回答割合が高い(第 3-1-3 図)。 47 1 0 0億 円 以 上 5 0億 円 以 上 1 0億 円 以 上 1 0億 円 未 満 食 料 品 金属製品 そ の他 製 造 H15年度調査 パ ル プ ・紙 石 油 ・石 炭 医 薬 品 ガ ラ ス ・土 石 製 品 精密機器 H13年度調査 一般機械 鉄 鋼 化 学 電気機器 輸送用機器 非鉄金属 繊維製品 ゴ ム製 品 ︵そ の 他 の 製 造 業 ︶ ︵加 工 型 業 種 ︶ ︵素 材 型 業 種 ︶ 製造業 0 第3−1−3図 競合する市場 (%) 100 94.8 80.5 82.8 80 84.2 77.5 76.6 82.0 66.4 60 40 20 0 製 造 業 (素材型業種) (加工型業種) 国内 (その他の製造業) 海外 日本企業の主要製品が外国企業と最も競合している地域は、製造業全体では「中国(香港 除く)」(79.2%)となり、ついで「NIES」(75.7%)、 「北米」(74.4%)、 「欧州」(70.7%)などと なった。素材型業種では「中国(香港除く)」(86.8%)や「NIES」(74.4%)が高く、加工型業 種では「北米」(80.0%)や「NIES」(77.4%)、 「中国(香港除く)」(75.3%)で高くなっている。 加工型業種がその他の業種と比較して中国の比率が低くなっているのは、 「輸送用機器」の 割合(57.8%)が低くなっているためである(第 3-1-4 図)。 平成 13 年度調査と比較すると、平成 13 年度で最も競合する地域は「北米」(73.3%)であ ったが、今回の調査では「中国(香港除く)」が前回調査から 15 ポイント以上上昇し、「北 米」を上回って最も多くなった。また、今回の調査では「NIES」も「北米」を上回るなど、 相対的にアジア市場での競合が高まっている(第 3-1-5 図)。 48 第3−1−4図 競合する地域 (%) 100 86.8 79.2 80 77.4 79.0 75.7 75.3 74.4 72.8 80.0 67.767.8 74.4 69.8 66.1 61.7 79.1 70.4 70.7 66.7 57.0 60 43.8 36.6 30.6 40 26.8 24.7 21.3 20 19.8 11.6 加工型業種 そ の他 地 域 素材型業種 欧州 北米 そ の他 ア ジ ア 製造業 ASEAN NIE s ︵香 港 除 く ︶ 中国 0 その他製造業 第3−1−5図 競合する地域(平成13年度調査との比較) (製造業全体) (%) 100 79.2 80 72.6 75.7 73.3 74.4 67.7 63.5 62.3 67.0 70.7 60 35.8 36.6 40 22.8 21.3 20 そ の他 地 域 49 H15年度調査 欧州 H13年度調査 北米 そ の他 ア ジ ア ASEAN NIE s ︵香 港 除 く ︶ 中国 0 日本企業の主要製品がどの地域(または国)の製品と競合しているのかをみると、製造業 全体では「欧州」が最も多く(68.5%)、ついで「北米」(67.5%)、 「中国(香港除く)」(63.7%)、 「NIES」(60.7%)などが比較的高い割合となった。加工型業種では、「欧州」(73.9%)と「北 米」(69.0%)の割合が高く、素材型業種では「中国(香港除く)」(68.9%)、 「NIES」(65.5%)、 「北米」(64.7%)の順で高い。その他製造業でも「中国(香港除く)」(68.8%)が最も高く、 以下「北米」(67.5%)、 「欧州」(64.9%)、「NIES」(61.0%)と続いている。競合する地域と同 様、加工型業種においては中国や NIES などアジア地域の企業の製品との競合割合が他の業 種と比べて低くなっている(第 3-1-6 図)。 平成 13 年度調査と比較すると、全ての地域の製品との競合割合が上昇している。 「中国(香 港除く)」で 13.8 ポイント上昇し、 「北米」(12.0 ポイント上昇)、 「NIES」(11.8 ポイント 上昇)で 10 ポイント以上の上昇となっている(第 3-1-7 図)。 第3−1−6図 競合する製品 80 70 60 (%) 68.9 68.8 63.7 59.3 73.9 69.0 68.5 67.5 67.5 64.9 64.7 60.5 65.5 61.0 60.7 58.0 50 45.5 40.3 39.3 36.7 40 30 19.9 20 21.0 19.9 18.2 9.0 10 50 その他製造業 そ の他 地 域 加工型業種 欧州 素材型業種 北米 そ の他 ア ジ ア S 製造業 ASEAN NIE ︵香 港 除 く ︶ 中国 0 10.9 11.7 7.1 第3−1−7図 競合する製品(平成13年度調査との比較) 100 (製造業全体) (%) 80 60.7 55.5 60 49.9 68.5 67.5 63.7 59.2 48.9 39.3 40 31.4 19.9 20 11.2 5.6 51 そ の他 地 域 H15年度調査 欧州 H13年度調査 北米 そ の他 ア ジ ア ASEAN NIE S ︵香 港 除 く ︶ 中国 0 9.0 2.国際競争力の要因 3 年前と比較して国際競争力が強まったか、あるいは低下したかについて質問すると、製 造業全体で 45.0%の企業が国際競争力は不変としている。強化されたとする企業は 32.0%と なり、低下したとする企業(21.1%)を上回る結果となった(第 3-2-1 図)。 個別業種では、回答社数が 5 社以上あった 15 業種中 10 業種で国際競争力が強化された とする割合が低下したとする割合を上回った。また、強化されたとする回答割合が製造業 全体の平均よりも高い業種は、 「輸送用機器」、 「金属製品」、 「その他製造業」及び「電気機 器」に限られており、3 年前と比較した国際競争力の推移には業種ごとに格差が見られる。 資本金規模別では、資本金規模が大きい企業ほど国際競争力が強化されたとする回答割 合が高い。他方、資本金規模が小さくなるほど国際競争力が低下したとする割合が高く、 10 億円未満では回答企業の 46.4%が低下したとしており、企業規模によって国際競争力の 推移が分かれる結果となった(第 3-2-2 図)。 第3−2−1図 国際競争力の推移(製造業全体) 3年前と比較して競争 力は低下した 21.1% その他 1.9% 3年前と比較して競争 力は強まった 32.0% 3年前と比較して競争 力は同じ 45.0% 52 第3−2−2図 業種別・資本金別に見た国際競争力の推移 32.0 製造業 45.0 47.4 29.5 素材型業種 21.5 45.4 31.1 その他の製造業 21.2 43.3 34.0 加工型業種 21.1 1.9 1.9 1.2 3.4 20.2 2.1 35.4 47.9 輸送用機器 30.0 45.0 金属製品 繊維製品 30.6 鉄 鋼 30.0 化 学 30.0 非鉄金属 28.6 ゴム製品 28.6 一般機械 27.8 45.6 25.6 50.0 60.0 64.3 21.4 43.8 39.3 3.6 46.4 42.7 20% 21.4 47.6 40% 3年前と比較して競争力は強まった 3年前と比較して競争力は低下した 1.8 25.1 44.9 35.6 0% 1.1 25.0 50.0 32.7 100億円以上 7.1 33.3 30.4 50億円以上100億円未満 14.3 71.4 10.7 10億円以上50億円未満 16.3 50.0 6.3 10億円未満 1.1 10.0 15.0 53.8 14.3 精密機械 医 薬 品 36.1 45.0 15.0 ガラス・土石製品 7.4 23.1 33.3 16.7 パルプ・紙 21.1 46.2 30.8 食 料 品 7.4 42.1 35.8 電気機器 5.0 20.0 40.7 44.4 その他製造 14.6 60% 14.7 80% 1.0 2.2 100% 3年前と比較して競争力は同じ その他 (注)回答が5社に満たない業種を除く 国際競争力が向上した要因としては、製品開発力の優位を挙げた企業が業種を問わず最 も多くなっており、製造業全体では 60.5%となった。次いで、費用削減を要因として挙げた 企業が 22.2%、販売力を挙げた企業が 8.0%などとなっている。素材型業種では、費用の削 減を挙げた企業が比較的多く(33.3%)、その他製造業では製品開発力に次いで販売力が優っ ていたとする回答割合が高い(17.6%)。他方、為替レートの変動により競争力が高まったと する企業は全産業を通してわずかであった(第 3-2-3 図)。 53 第3−2−3図 国際競争力が強まった原因 2.5 60.5 製造業 22.2 6.8 8.0 2.2 51.1 素材型業種 33.3 8.9 4.4 2.4 66.3 加工型業種 19.3 6.0 6.0 2.9 58.8 その他の製造業 0% 14.7 20% 40% ライバル企業よりも製品開発力が優っていたため ライバル企業よりも販売力が優っていたため その他 17.6 60% 5.9 80% 100% ライバル企業よりも費用削減努力が優っていたため 為替レートの変動 国際競争力が低下した要因としては、「ライバル企業の費用削減努力が優っていたため」 の割合が最も高く(42.6%)、次いで「ライバル企業の製品開発力が優っていたため」(24.8%) となり、その他の要因はそれぞれ 1 割程度となった。業種別では、素材型業種と加工型業 種で費用削減を挙げた企業が 5 割弱を占め、その他製造業ではライバル企業の製品開発力 や販売力を原因として挙げた企業が比較的多い。為替レートの変動に関しては、最近 2 年 間の為替レートは円高傾向にあったものの、日本企業の国際競争力を低下させた影響はそ の他の要因と比較して大きくはなっていない(第 3-2-4 図)。 第3−2−4図 国際競争力低下の原因 42.6 製造業 24.8 46.7 素材型業種 10.9 16.7 10.9 16.7 10.0 10.9 10.0 2.0 49.0 加工型業種 22.7 その他の製造業 0% 26.5 31.8 20% 8.2 22.7 40% ライバル企業の費用削減努力が優っていたため ライバル企業の販売力が優っていたため その他 54 60% 14.3 18.2 80% ライバル企業の製品開発力が優っていたため 為替レートの変動 4.5 100% 3.国際競争力の源泉 外国企業との競争の中で、日本企業の製品がどの部分で強みを持っているのかについて みると、ライバル製品と比べて優れている点として「品質」と回答した企業が 77.1%と他の 選択肢に比べて突出して高い。劣っている点については、「価格」と回答した企業が 68.3% と最も多くなった (第 3-3-1 図)。 第3−3−1図 ライバル製品との比較 (%) 80 77.1 68.3 60 40 20 12.6 8.3 8.2 7.8 4.9 6.0 2.3 4.6 0 品質 サービス 価格 ライバル製品と比べて優れている デザイン その他 ライバル製品と比べて劣っている 今後の国際競争力の見通しは、製造業全体では「ライバル企業を凌ぐ見通しを持ってい る」と回答した企業の割合が 26.4%となり、「ライバル企業にはまだ及ばないとの見通しを 持っている」と回答した企業の割合(10.3%)を上回った。ただし、6 割程度の企業は「ライ バル企業と互角の競争力をもつとの見通しを持っている」と回答しており、大半の企業に とって今後も外国企業との厳しい競争が続いていくものと考えられる(第 3-3-2 図)。 ライバル企業を凌ぐと回答した企業の割合が、ライバル企業には及ばないと回答した企 業の割合よりも製造業全体の平均と比較して高い業種は、 「その他製造業」、 「輸送用機器」 、 「電気機器」、 「食料品」、 「鉄鋼」であった。 「繊維製品」や「一般機械」ではその割合が低 く、 「パルプ・紙」、 「医薬品」ではライバル企業に及ばないとした企業の方が多いという結 果となった。 55 資本金規模別では、資本金規模が大きくなるほどライバル企業を凌ぐ見通しを持ってい る企業が多くなっている。一方で、資本金 10 億円未満の企業ではライバル企業に及ばない 見通しを持つ企業の方が多く、規模の小さい企業にとって今後とも国際的な環境は厳しい ものとなっている (第 3-3-3 図)。 第3−3−2図 国際競争力の展望(製造業全体) その他 3.9% ライバル企業を凌ぐ 見通しを持っている 26.4% ライバル企業にはま だ及ばないとの見通 しを持っている 10.3% ライバル企業と互角 の競争力をもつとの 見通しを持っている 59.4% 56 第3−3−3図 業種別・資本金別に見た国際競争力の展望 26.4 製造業 57.9 23.7 素材型業種 加工型業種 27.1 その他の製造業 28.7 12.5 7.9 53.9 46.2 輸送用機器 31.1 金属製品 30.0 精密機器 28.6 非鉄金属 28.6 64.4 鉄鋼 23.8 食料品 23.1 医薬品 21.4 繊維製品 20.0 一般機械 19.8 57.1 14.3 7.1 14.3 2.6 13.2 10.5 57.9 47.4 15.8 57.1 14.3 4.8 65.4 35.7 3.8 7.7 7.1 35.7 60.0 8.6 11.4 65.1 1.2 14.0 85.7 14.3 ゴム製品 15.0 50.0 26.3 ガラス・土石製品 2.1 5.3 4.4 55.0 26.3 化学 3.8 7.7 61.1 31.6 2.1 5.2 12.2 42.3 電気機器 5.9 62.9 その他製造 3.9 10.3 59.4 66.7 パルプ・紙 33.3 3.8 65.4 11.5 10億円未満 56.5 24.4 10億円以上50億円未満 50億円以上100億円未満 28.1 100億円以上 29.0 0% 19.2 59.4 10.4 60.8 20% 40% 60% 6.9 80% ライバル企業を凌ぐ見通しを持っている ライバル企業と互角の競争力をもつとの見通しを持っている ライバル企業にはまだ及ばないとの見通しを持っている その他 (注)回答が5社に満たない業種を除く 57 6.0 13.1 2.1 3.2 100% まとめ 今回の調査では、経済の低迷が続いてきた中で企業が収益力を向上させるためにどのよ うな施策を講じてきたのか、そして今後収益力向上のためにどのように経営を進めていく のかについて調査した。また、そのような取り組みにより国際競争力がどのように変化し てきたのかについて調査した。 企業の先行きの見通しは、前回調査から見られている改善の動きが続いている。多くの 企業は、販売価格を引き上げられない状況が続くと考えているものの、実質経済成長率や 業界需要の実質成長率の見通しは改善してきており、設備投資も増加を続ける見込みとな っていることから、企業の将来展望には明るさが戻ってきている。 利益をあげるために企業は様々な施策を採用してきており、売上高を向上させる施策が 収益に貢献したとする企業は全体のおよそ 4 分の 1 に上っているものの、売上高を向上さ せる施策よりもコストカットの方が収益に貢献したとする企業が多いことが調査結果から も改めて明らかになった。その中でも人件費の抑制が最も効果があったと回答した企業が 多く、これを裏付けるように正社員数はこれまで減少を続け、代わってパートや派遣社員 数が増加してきた。しかしながら、収益が改善している企業を中心に正社員を増加させる 動きが見られ、雇用の削減は一段落しつつあると考えられる。 また人件費の抑制以外にも、大企業を中心に新規の調達先を海外に求める動きが浸透し てきたこと、分社化を進めて企業内の資源の有効活用を図ってきたということなど、政府 による構造改革政策が進む下で、企業は収益構造の改善に努めてきたことが分かった。 このような努力の結果、平成 14 年度では減収ながらも増益となった企業は全体の約 17% に上った。加えて、平成 14 年度には増収増益を達成した企業は約 4 割に達した。現在、す でにリストラができる余地が限られている企業、そもそもリストラを行う必要がない企業 を合わせた数が、より一層リストラを行う必要があるとする企業の数を超えている。 国際的な企業間の競争においては、平成 13 年度調査と比較すると中国のプレゼンスが高 まってきている。中国は市場として重要性を増しているとともに、日本企業と製品面で競 合するようにもなっている。国際競争力については、およそ半数の企業が国際競争力は 3 年前と変わらないとしており、また競争力が低下したとする企業よりも強まったとする企 業の方が多くなっている。今後の見通しにおいても、半数以上の企業が国際競争力は外国 企業と互角の競争力を持つと考えており、低下すると考えている企業よりも強まる見通し を持つ企業の方が多い。 以上のように、企業を取巻く価格面における環境は厳しいものの、構造改革下で企業が 示したダイナミックな対応の成果は明確な形で表れてきている。雇用の削減は一段落しつ つあり、外国企業との競争においても互角、もしくは凌ぐとする企業が 8 割を超えており、 企業の経済見通しは、ここ数年では最も明るいものとなっている。このように本調査結果 によれば企業行動を見る限り、我が国経済は自律的な経済成長に向けた動きにあると考え られる。 58