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岡山県経済は 緩やかな回復が続く
岡山県経済 2015年 新年の展望 岡山県経済は 緩やかな回復が続く 日本銀行 岡山支店長 屋敷 利紀 であったことや、米国向けでも現地生産拡大 1.わが国経済・岡山県経済の動向と展望 (1)平成 26 年の動向 謹んで新年のお慶びを申し上げます。 2. 金融の動向 平成 26 年におけるわが国の経済を振り返 りますと、3月末にかけて駆け込み需要がみ 替円安が進行したにもかかわらず、全体とし て弱めの動きが続きました。この間、鉱工業 生産は、4~6月に大幅に減少した後も耐久 消費財や建設財を中心とした在庫調整の動き もあって、弱めの動きが続きました。 られた後、4月以降はその反動の影響が自動 岡山県経済も、全国と概ね同様の動きとな 車などの耐久消費財や住宅投資を中心に大き りました。個人消費は、自動車などの耐久消 3.日本銀行の金融政策運営 く現れたことや、輸出が低調に推移したこと 費財や住宅投資で駆け込み需要とその反動が から、年末にかけて生産面を中心にやや弱め はっきり現れたほか、夏場の天候不順が下押 の動きが続く展開となりました。もっとも、 しとして作用したものの、雇用・所得環境が 雇用・所得環境は着実に改善し、企業収益も 着実に改善する中で、基調的には底堅く推移 4.おわりに 高水準が維持されているなど、企業部門・家 しました。設備投資は、緩和的な金融環境の 計部門ともに、所得から支出への前向きの循 もと、好調な企業収益にも支えられ、持ち直 環メカニズムが作用し続けたことから、わが しの動きが続きました。この間、鉱工業生産 国経済は、全体として緩やかな回復基調をた は、ウエイトの高い自動車や鉄鋼などで高操 どりました。 業が続いた後、年後半には駆け込み需要の反 まず、個人消費は、雇用・所得環境の着実 な改善が基調的な底堅さを支える中で、3月 末にかけて耐久消費財を中心に駆け込み需要 が生じた後、反動減がはっきりと現われたも のの、その影響は、夏場以降、ばらつきを伴 動減の影響から、自動車など一部に弱含みの 動きもみられました。 (2)平成 27 年の見通し 平成 27 年のわが国経済も、緩和的な金融 いつつも全体として緩和されていきました。 環境のもとで、成長期待の高まりを受けた国 設備投資は、企業収益が好調を維持する中で、 内民間需要の堅調な増加と、海外経済の成長 振れを伴いつつも緩やかな増加基調をたどり による輸出の増加に支えられて、企業部門・ ました。公共投資は、25 年度補正予算の効 家計部門ともに、所得から支出への前向きの 果や 26 年度当初予算の早期執行の影響から 循環メカニズムが維持され、潜在成長率を上 高水準を維持し、景気の下支えに作用しまし 回る成長が続くものと思われます。 た。輸出は、ASEAN 向けや中国向けが低調 10 による下押しの影響が現われたことから、為 MONTHLY REPORT 2015.1 まず、個人消費は、雇用者所得の増加や高 い購買意欲を持つシニア層の増加など、個人 がごく緩やかに持ち直すとみられることか 消費の源泉となる様々な要因が良好さを維持 ら、全体では緩やかに増加していくものと思 するとみられることから、次第に持ち直しが われます。この間、鉱工業生産は、内外需要 明確となり、緩やかながら増加基調をたどる の回復や在庫調整の進捗もあって、緩やかな ものと思われます。個人消費を大きく左右す 増加基調に復していくものと思われます。 る賃金も、わが国経済が基調として潜在成長 岡山県経済についても、全国と同様、企業 率を上回る成長を続けるもとで、労働需給の 部門・家計部門ともに、所得から支出への前 引き締まり傾向が一段と強まるとみられるこ 向きな循環メカニズムが維持され、緩やかな とや、昨年に続いて物価動向などを反映した 回復が続くものと思われます。個人消費は、 ベースアップが期待できることから、所定内 全国的にみても労働需給の引き締まり感が強 給与を中心に上昇していくものと思われま いもとで、雇用・所得環境が着実に改善する す。設備投資は、強力な「量的・質的金融緩 とみられることから、緩やかな増加基調をた 和」によって極めて緩和的な金融環境が維持 どるものと思われます。設備投資は、極めて されるもとで、企業収益が改善傾向を続け、 緩和的な金融環境のもと、良好な企業マイン わが国経済の成長期待も次第に高まるとみら ド・企業収益が維持される中で、設備の老朽 れることから、緩やかな増加基調をたどるも 化や不足感が徐々に認識されていることもあ のと思われます。このほか設備投資を後押し って、回復基調をたどるものと思われます。 する要因として、①長期間にわたる投資抑制 鉱工業生産は、鉄鋼が高操業を維持するとみ によって設備の老朽化がかなり進んでおり、 られる中で、弱含んでいる自動車も、駆け込 維持・補修投資をこれ以上後ずれさせること み需要の影響が和らぐもと、在庫調整の進捗 の機会費用が高まってきていること、②グロ 1.わが国経済・岡山県経済の動向と展望 もあって、緩やかに持ち直すとみられること ーバルな収益機会の拡大や過度の円高が修正 から、全体として緩やかな増加基調に復して されたことにより、企業の成長期待が緩やか いくものと思われます。 に高まる中で、国内部門を研究開発や高付加 価値製品のマザー工場の拠点として再構築す るための戦略投資が必要となっていること、 ③非製造業を中心に人手不足感が強まる中 2.金融の動向 (1)わが国金融システムの現状 で、人件費が上昇している一方、借入金利が わが国の金融システムは、全体として安定 低下していることに伴い、省力化投資のコス 3.日本銀行の金融政策運営 性を維持しています。金融機関は、全体とし トが相対的に低くなっていることなどが挙げ て充実した資本基盤・資金流動性を有してい られます。公共投資は、昨年の水準を押し上 ます。金融機関の自己資本比率は、全体とし げる要因として寄与した 25 年度補正予算、 て規制水準を十分に上回っており、資金流動 26 年度本予算の早期執行効果が剥落するこ 4.おわりに 性も、全体として、円資金はもとより、市場 とから、次第に減少するものの、社会インフ 調達比率の高い外貨資金についても、調達期 ラの維持更新ニーズの高まりなどを背景に高 間の長期化などの取組みから、一定期間調達 水準を維持するものと思われます。輸出は、 が困難化した場合でも資金不足を補えるだけ 世界貿易量が世界成長率並みの伸びを続ける のボリュームを確保しています。 もとで、為替円安によりわが国の輸出シェア 日本銀行が実施したマクロ・ストレステス MONTHLY REPORT 2015.1 11 トでは、リーマン・ショック時なみの大幅な 資(ABL)や電子記録債権をはじめとする 景気後退や、金利の急激な上昇といった相応 新たな金融手法の提供、企業の海外進出支援、 に強いストレス環境のもとでも、金融機関の 民間資金の活用による公共施設の整備事業 自己資本は、全体として規制水準を上回ると (PFI)や公民連携事業(PPP)など、産業活 の試算結果が得られています。もっとも、ス 力の向上を支援するための取組みも、着実に トレスの背景、程度、伝播速度などによって 進めています。 は、金融システムの安定性を脅かす可能性が ある点には留意しておく必要があります。 本邦企業の海外展開を支援しつつ、高い成長 他方、金融仲介活動は、全体として円滑さ を続けるアジアを中心に現地企業の多様な金 を増しています。貸出動向をみると、金融機 融ニーズを取り込んでいくため、積極的なリ 関は、①内外経済の回復に伴い企業の財務状 スク・テイクに動いています。大手行では海 態や事業内容が総じて改善していること、② 外店の規模拡大や海外金融機関の買収・出資 円金利の低下に伴い円債残高の積み増しによ を進めることで、本邦企業の海外展開支援と る収益確保が難しいと考える先が増加してい 現地企業との取引深耕を図っています。他方、 ること、③地域金融機関を中心に、将来の収 地域金融機関では、海外金融機関との連携な 益・営業基盤を確保・強化する必要性が再認 どを強めることで、地元企業の海外展開支援 識されていることなどから、国内外で貸出姿 を図っています。 勢を一段と積極化しています。 有価証券投資をみると、金融機関は、資金 国内貸出において、金融機関は、①設備投 利益を確保する観点から、高水準の円債投資 資や成長分野を支援するための中長期低利貸 残高を維持しつつ、投資信託や外国証券を積 付ファンドを新設・拡充する、②営業店長の み増すなど、徐々にリスク・テイク姿勢を強 専決権限や1 先あたりの与信枠を拡大する、 めています。国内債券(国債、地方債、社債 ③融資推進対象を正常先の下位格付け先や要 など)の残高は、大手行では国債を中心に漸 注意先にまで拡大する、などの施策を打ち出 減傾向をたどる一方で、地域金融機関では国 すことで積極的なリスク・テイクに動いてお 債に比べて利回りの高い地方債や社債を積み り、日本銀行が提供する成長基盤強化支援資 増す動きもみられています。投資信託の残高 金供給や貸出増加支援資金供給を活用する動 は、貸出金や国内債券の利回りが低下する中 きも広がっています。この結果、国内貸出残 で、資金利益の積み上げを図るため、増加傾 高は、地域や業種の広がりをみせつつ、前年 向をたどっています。外国証券の残高も、同 比増加率を高めています。他方、企業部門の 様の理由で地域金融機関を中心に増加してい 資金需要は、全体として、潤沢な手元資金を ます。この間、保有株式残高は、金融機関が 抱えていることなどを背景に、金融機関の積 政策保有株式の削減を継続的に進めているこ 極的な貸出姿勢と比較すると緩やかな増加に とから、緩やかな減少が続いています。 止まっていることから、貸出金利の低下と貸 出利鞘の縮小が続いています。 この間、金融機関においては、大企業の事 12 他方、海外貸出においても、金融機関は、 (2)わが国金融システムの課題 上述のとおり、わが国の金融システムは、 業再構築や M&A、中小企業の事業再生や事 全体として安定性を維持しています。しかし 業承継、成長事業の育成、動産・債権担保融 ながら、金融機関の国内貸出利鞘が縮小を続 MONTHLY REPORT 2015.1 2015年 新年の展望 ▶岡 山県 経 済 ける中で、今後、収益力の低下傾向が長期化 す。この間、県内金融機関の信用コストは、 すれば、金融機関のリスク・テイク能力と損 企業再生支援への積極的な取組みや内外経済 失吸収力が徐々に失われていきます。他方、 の回復に伴う企業倒産の減少などを背景に、 わが国の金融システムが海外との結びつきを 減少が続いています。 強めるもとで、拡大を続ける金融機関の海外 業務と、現在進行中の国際的な金融規制改革 が、わが国金融システムの安定性、機能度に 影響を及ぼしていく可能性があります。 (4)県内金融機関の課題 県内金融機関を巡る収益環境は、全国同様、 厳しい状況が続く可能性があります。こうし こうした中で、わが国金融システムが今後 たもとで、県内金融機関が将来にわたって収 も安定性を維持していくためには、金融機関 益力と健全性を確保することで、リスク・テ 自身が、わが国経済の成長・発展に貢献する イク能力と損失吸収力を維持していくために ことなどを通じて、健全性や収益力を不断に は、以下の取組みが期待されます。 高めていくことが求められます。併せて、海 外展開を進める金融機関においては、海外業 ①資金需要への適切な対応 務の規模に応じた安定的な外貨資金調達基盤 県内産業・企業が成長・発展していく過程 の確保と与信管理などの充実が求められま においては、中長期的な生産性向上・成長に す。また、国際的に活動する大規模金融機関 必要なリスクマネーを含めた多様な資金需要 においては、国際金融規制改革やグローバル が発生します。県内金融機関には、こうした 金融システムの構造変化への適切な対応が求 資金需要に適切に対応することが期待されま められます。 す。同時に、県内金融機関には、企業・家計 (3)県内金融機関の現状 県内金融機関は、将来を見据えた安定的な 収益・営業基盤の確保・強化に向け、貸出姿 の金融資産を適切に管理・運用し、安定的な 資産形成を図ることで、預貯金に偏ったポー トフォリオの分散を促し、結果としてリスク マネーを供給する役割も期待されます。 勢を一段と積極化しています。このため、県 内の貸出残高は、業種の広がりをみせつつ、 ②地方創生への取組み 前年比増加率を高めています。もっとも、全 地域金融機関と地域経済は運命共同体とも 国と同様、県内企業部門の資金需要は、全体 いうべき存在です。地域の活力を高めていく として、潤沢な手元資金を抱えていることな には、県内産業・企業が、地域の特性と将来 どを背景に、県内金融機関の積極的な貸出姿 像に見合った需要を創出していくとともに、 勢と比較すると緩やかな増加に止まっている 海外を含めた域外の需要を掘り起こしていく ことから、貸出金利の低下と貸出利鞘の縮小 ことが必要です。県内金融機関には、こうし が続いています。 た県内産業・企業の取組みを金融面からサポ こうした状況を踏まえ、県内金融機関にお いては、収益力の強化を図るため、投資信託 ートすることで、自らの収益力と健全性を不 断に高めていくことが期待されます。 や外国証券の残高を積み増す動きや、NISA 口座の開設や保険商品販売に注力することで 手数料収入の増加を図る動きがみられていま ③適切な資産負債管理態勢の整備 県内金融機関においては、大幅な預金超過 MONTHLY REPORT 2015.1 13 1.わが国経済・岡山県経済の動向と展望 が続いており、円債を中心とした有価証券投 って日本経済を劣化させてきたデフレから脱 資が収益面で重要な役割を果たしています。 却するために、 「できることは何でもやる」、 2.金融の動向 こうしたもと、県内金融機関には、資産負債 ②日本銀行が「物価安定の目標を、責任をも 管理(ALM)の明確な方針を定め、適切な って実現する」と強く明確にコミットする、 リスク・テイクとリスク管理が期待されます。 ③こうしたコミットメントを裏打ちする量的 にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和 3.日本銀行の金融政策運営 を行う、というものです。 「量的・質的金融緩和」の導入以降、わが 昨年 10 月、日本銀行は、2%の「物価安 国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み 定の目標」の早期実現を確かなものにするた 需要とその反動の影響を受けつつも、基調的 4.「 おわりに めに、 量的・質的金融緩和」を拡大しました。 には緩やかな回復を続けています。また、物 具体的には、マネタリーベースの増加ペース 価面では、 「量的・質的金融緩和」を導入す を年間約 60 ~ 70 兆円から約 80 兆円に拡大 る直前の 25 年3月の時点で▲ 0.5%であった するとともに、国債の買入れペースについて、 消費者物価(生鮮食品を除く。以下同じ)の 日本銀行の保有残高の増加額を年間約 50 兆 上昇率は、昨年の前半には消費税率引き上げ 円から 30 兆円増やして約 80 兆円に拡大しま の直接的な影響を除いたベースでみて1%台 した。それとともに、長期国債買入れの平均 前半まで上昇しました。もっとも、消費税率 残存期間を7年程度から最大3年延長して7 引き上げ後の反動減が自動車などの耐久消費 ~ 10 年 程 度 に 長 期 化 し ま し た。 さ ら に、 財を中心にやや長引いたことや、昨年夏以降、 ETF、J‐REIT の買入れペースを3倍増とし、 原油価格が大幅に下落したことが物価の下押 それぞれ年間約3兆円、約 900 億円としまし し要因として作用したことから、消費者物価 た。 1.わが国経済・岡山県経済の動向と展望 の上昇率は、年後半には1%近傍まで低下し 日本銀行は、25 年4月、2%の「物価安 ました。こうした中で、日本銀行は、物価下 定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置い 押し圧力が残存すれば、 「量的・質的金融緩和」 て、できるだけ早期に実現するために、 「量的・ の実施以降、着実に進んできた「デフレマイ 質的金融緩和」を導入しました。15 年にわ 2.金融の動向 ンド」や「デフレ期待」の転換が遅延する可 たるデフレの過程で、国民の間には「物価が 能性があると判断し、 「量的・質的金融緩和」 上がらない」あるいは「物価が緩やかに低下 の拡大を決定しました。この決定によって、 する」という考え方、すなわち「デフレマイ 好転している物価上昇に関する期待形成のモ ンド」や「デフレ期待」が定着しました。 「デ 3.日本銀行の金融政策運営 メンタムが維持され、 「デフレマインド」や「デ フレマインド」や「デフレ期待」が定着する フレ期待」の転換が着実に進んでいくものと と、それを前提に行動するため、デフレと景 思われます。 気の低迷が自己実現的に長期化する、という 悪循環が発生します。国民の間に染みついた 4.おわりに 「デフレマインド」や「デフレ期待」を抜本 的に転換するため、日本銀行は、これまでと 14 上述のとおり、岡山県経済は、平成 27 年も、 は次元の異なる金融緩和を実施しました。そ 雇用・所得環境が着実に改善し、企業収益も の基本的な考え方は、①第1に、長年にわた 高水準が維持される中で、企業部門・家計部 MONTHLY REPORT 2015.1 2015年 新年の展望 ▶岡 山県 経 済 門ともに、所得から支出への前向きの循環メ えれば、現金や預金の価値が増えていくため、 カニズムが維持され、緩やかな回復が続くも 企業・家計にとっては消費や投資を先送りし、 のと思われます。 現預金を保有したまま「行動しない」ことが もっとも、相対的に恵まれた岡山県でも、 合理的な「行動」でした。しかし、デフレ経 中長期的にみれば、国内の他地域と同様、高 済から脱却すれば、現金や預金を保有したま 齢化や人口減少に伴う成長力の低下、厳しい ま「行動しない」コストが高まります。そう 財政事情など、多くの課題が山積しています。 した状況のもとでは、企業・家計においては、 こうした課題を克服し、岡山県経済が今後も 住宅投資や設備投資や教育など、現金や預金 成長を続けていくためには、県内でウエイト を積極的に活用していくことが求められま の高い製造業など相対的に強みをもつ分野で す。県内の企業・家計においても、デフレ脱 付加価値を一層高めていくとともに、このと 却後を見据えた積極的な実際の「行動」が期 ころ大都市圏の消費を底上げしている外国人 待されます。 旅行客の取り込みなど、成長の余地が大きい 日本銀行岡山支店は、大正 11 年、全国 15 分野を強化していくことが必要です。同時に、 番目の支店として開設されて以来、1世紀近 県民の生活の質を持続的に高めていくために くにわたって岡山県経済の発展に尽くしてま は、雇用・所得環境が着実な改善を続けてい いりました。本年も岡山県における「発券銀 くことが不可欠です。 行」 、 「政府の銀行」 、 「銀行の銀行」としての 製造業については、既に、電気自動車、航 機能を発揮することなどを通じて、岡山県経 空機、医療・福祉などの分野において、先端 済の健全な発展に貢献してまいりたいと考え 的な研究・開発が進められています。他方、 ています。 観光については、観光情報の発信強化、ホス 本年の干支となる「羊」の文字には、 「よい」、 ピタリティの向上、広域連携など、官民が一 「めでたい」という意味があるといいます。 体となった観光振興策が進められています。 本年が皆様にとって、そして岡山県経済にと この間、賃金については、昨年の賃金交渉に って、ますます「よい」 、 「めでたい」年にな おいて、物価上昇率の高まりなどを反映した るよう祈念して、年頭のご挨拶といたします。 ベースアップを久方ぶりに実施した先もみら れました。現在、日本銀行が強力に進めてい る「量的・質的金融緩和」によって「デフレ マインド」や「デフレ期待」が転換され、物 価上昇が安定的に持続する状態となれば、企 業は価格設定を検討する際や労使間の賃金交 渉を行う際に、物価上昇を前提とした意思決 定をするようになります。県内における本年 の賃金交渉の行方には、大きな期待とともに 強い関心を寄せています。 さて、物価が持続的に下落するデフレ経済 のもとでは、時間が経過するほど同じ金額で より多くの物やサービスが手に入る、言い換 屋 敷 利 紀 やしき としのり 1964 年生まれ。富山県出身。京都大学文学部卒業後、 日本銀行入行。考査局調査役、金融機構局企画役、 ロンドン事務所、金融庁出向、政策委員会室国会渉 外課長を経て、2013 年 6 月より岡山支店長。 MONTHLY REPORT 2015.1 15