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日本進化学会ニュースvol.8 No.2

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日本進化学会ニュースvol.8 No.2
日本進化学会 入会申込書
Vol . 8 No . 2
<年月日(西暦)> 年 月 日 № ふりがな
Nov. 2007
名 前
ローマ字
所 属
所属先住所または連絡先住所
〒
TEL
FAX
e-mail
以下から選ぶかまたはご記入下さい(複数記入可)
専門分野
人類、脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類、原核生物、ウイルス、理論、
その他(
研究分野
)
分子生物、分子進化、発生、形態、系統・分類、遺伝、生態、生物物理、情報、
その他(
)
以下から選んで下さい
一般会員
・ 学生会員
注)研究生や研修生などの方々の場合、有給ならば一般会員、無給ならば学生会員を選んで下さい。
学生会員は必要に応じて身分の証明を求められる場合があります。
申込方法/上記の進化学会入会申込書をご記入の上、下記の申込先へ郵便・ FAX ・ e-mail でお送り下さい。
申 込 先/日本進化学会事務局 〒 102-0072 千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F(株)クバプロ内
● TEL : 03-3238-1689 ● FAX : 03-3238-1837 ● http://www.kuba.co.jp/shinka/ ● e-mail : [email protected]
<年会費の納入方法>
【年 会 費】
一般会員 3,000 円 / 学生会員 2,000 円
賛助会員 30,000 円(一口につき)
【納入方法】
① 銀行振込みをご利用の場合
(銀 行 名)三井住友銀行 (支 店 名)飯田橋支店
(口座種類)普通預金口座 (口座番号)773437
(口座名義)日本進化学会事務局 代表 株式会社 クバプロ
第 9 回大会報告
1
2007 年度学会賞 授賞理由 2
高校生ポスター発表会 第 2 回 報告記 4
公開講演会/進化学夏の学校/シンポジウム/ワークショップ
大会報告記 20
大会印象記 37
研究奨励賞受賞記 45
2007 年日本進化学会
教育啓蒙賞受賞記 54
② 郵便振込みをご利用の場合
(口座番号)00170-1-170959
(口座名義)日本進化学会事務局
56
62
12
2007 年度評議員会・総会 報告
会員異動―新入会、所属変更、退会―
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
1
日本進化学会第 9 回大会のご報告
大会実行委員長・佐藤 矩行(京都大学)
日本進化学会第 9 回大会(2007 年大会)は、京都大学大学院理学研究科および同百周年時計台記
念館(京都市左京区)において、2007 年 8 月 31 日(金)から9 月 2 日(日)にわたって開催されま
した。
昨年の第 8 回東京大会では「進化でどこまでわかるか?」というテーマのもとで多くの企画が準
備され、約 700 名の参加者による非常に活発な発表・議論が展開されましたが、今回は会員の研究
の相互理解をめざした比較的コンパクトな大会といたしました。それでもメインシンポジウムと公
開講演会がそれぞれ1 件、企画および公募シンポジウムが6 件、ワークショップが12 件あり、約 500
名の参加者の活発な発表・議論を行うことができました。
これまでの日本進化学会大会ではポスター発表が発表の中心となってきましたが、今回は109 件
のポスター発表に加えて、58 件の口頭発表を行いました。口頭発表では予想以上に質問も多く、そ
れなりに成功したのではないかと思っています。また昨年に引き続き高校生のポスター発表を企画
し、12 件の高校生による発表と1 件の中学生による発表が会員のポスター発表に混じって行われま
した。熱の入った議論が狭い会場をより一層熱くしました。
また、例年進化学の普及啓蒙を目的として開催している無料公開の「進化学・夏の学校」で2 つ
の講義があり、多くの聴講者を迎えることができました。公開記念シンポジウムや高校生ポスター
なども加えて、本大会の活動が我が国における進化教育・啓蒙活動に大きな役割を担っていくもの
と思っております。
今回の大会は準備を始めるのが遅れ、会員の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びい
たします。また、本大会は疋田努会員の並々ならぬ努力のおかげで何とか無事に終えることができ
感謝しております。最後に、大会実行委員会を代表して、参加者の皆様、シンポジウム・ワークシ
ョップ企画者の皆様、郷通子会長をはじめとする学会役員の皆様、そして本大会の開催を支えてく
ださったすべての皆様に感謝を申し上げます。
2007 年 9 月
日本進化学会第 9 回大会収支決算
収入
支出
学会からの大会援助金
大会参加費
懇親会費
予稿集代金、他
展示
前年度大会繰越金
500,000
2,057,000
885,000
3,000
13,000
502,353
合計(A)
3,960,353
大会会場費
会場設営費
ポスター(印刷)
予稿集(印刷)
懇親会費
人件費(当日)
人件費(編集・ HP 作製)
事務局諸経費
学会からの大会援助金返金
合計(B)
収支(A − B)
672,720
461,954
77,700
315,000
923,234
627,400
206,000
176,345
500,000
3,960,353
0
2
日本進化学会ニュース Nov. 2007
2007 年度学会賞 授賞理由
選考委員長(会長):郷 通子
村資生記念学術賞(木村賞)の選考委員会が開
― 選考委員会の開催と選考結果の報告 ―
催され、日本進化学会から推薦された倉谷滋博
士が木村賞受賞者に選ばれた。
【日時】2007 年 7 月 31 日(火)17 時∼ 20 時
【場所】飯田橋レインボービル
2 階 2S 会議室
【出席】郷 通子(会長:生物物理学)・三中信
宏 (事務幹事長:系統学)・岡田典弘
(分子進化学)・矢原徹一(進化生態学)
【欠席】五條堀孝(DNA 情報学)・長谷川眞理
子(副会長:動物行動学)※欠席の2 委
員からは選考に関する意見がメールで届
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
って将来にわたる模範となる資質を備えている。
30 %にすぎないこと、わずか数世代の飼育が、
その業績は日本進化学会賞に十分に値する。
人工的な進化を通じてニジマス自然集団に悪影
研究奨励賞
響を及ぼすことを示した。Science 誌などに報告
●吉田丈人 博士(東京大学)
されたこの成果は保全や漁業の応用上重要であ
「個体群動態に影響する迅速な進化についての
実証的研究」
野生生物の個体数が周期的に変動する機構は、
るとともに、魚の進化的変化がわずか数世代で
生じることを示した点で、高く評価されている。
荒木博士はまた、植物と植物病原体の共進化に
各受賞者のタイトルと授賞理由は下記の通りで
生態学において長い研究の歴史を持つテーマで
おいて、植物耐病性遺伝子と病原体の遺伝子の
ある。
ある。従来の研究では、個体数変動が観察され
双方に平衡淘汰が作用していることを実証した
日本進化学会賞受賞
る短い時間スケールでは、進化的変化は起こら
業績でも高く評価されており、集団遺伝学分野
公益信託進化学振興木村資生基金・木村資
ないものと考えられてきた。これに対し、吉田
での有望な若手研究者として、日本進化学会研
生記念学術賞
丈人博士は、餌生物(クロレラ)と捕食者(ワ
究奨励賞の受賞者にふさわしい。
●倉谷 滋 博士(理化学研究所)
ムシ)の実験個体群を用いて、餌生物集団に防
●大島一彦 博士(長浜バイオ大学)
「脊椎動物の分子進化発生学に関する研究」
3
衛能力の点で遺伝的変異がある場合には、捕食
「偽遺伝子の進化に関する研究」
発生生物学はきわめて長い歴史を有する生物
者密度の変化に由来する淘汰圧に応答した餌生
1995 年に東工大生命理工学研究科の博士課程
学の研究領域であり、生き物の個体発生のプロ
物の迅速な進化が生じ、この進化を通じて個体
を修了して理学博士を取得。その後、同大学の
セスが系統発生の過程でどのように形づくられ
群変動の周期が長くなることを実証した。この
助手、講師を経て現在長浜バイオ大の准教授で
てきたかという進化学的にとても興味深いテー
研究成果はNature 誌に発表され、個体群生態学
ある。東工大に在籍中からレトロポゾンの増幅
マを究明しようとする。しかも、発生生物学研
において進化的応答が重要であることを明快に
機構の研究に従事し、岡田典弘教授とともに行
究は、比較解剖学の長い伝統の上に、近年の分
示したものとして、高く評価されている。その
ったSINE ・LINE が共通の3’
末端を持つという
吉田丈人 博士(東京大学)
子発生学の知見を武器とする分子進化発生学と
後吉田博士は、クロレラにおける防御と増殖の
現象は、レトロポゾンの分野の重要な発見とし
荒木仁志 博士(オレゴン州立大学)
いう最先端の分野となり、国際的にも研究の進
トレードオフの実証、クロレラの対立遺伝子特
て良く引用されている。2002 年ごろから、独力
大島一彦 博士(長浜バイオ大学)
展が著しい。倉谷滋博士は、長年にわたり、脊
異的PCR による進化プロセスの実証などの成果
でバイオインフォマティクスの研究分野に挑戦
伊藤 剛 博士(農業生物資源研究所)
椎動物の頭部形態に関する詳細な進化発生学的
をあげるとともに、生態過程に影響する迅速な
し、理化学研究所の榊佳之教授らと共同でヒト
研究奨励賞に関しては、他に2 名の応募者が
研究を行い、ヤツメウナギの顎の形態形成とそ
進化に関して一般的な問題提起を行い、世界を
ゲノム中の偽遺伝子に関する研究をまとめた。
あったが、選考委員会での討議の結果、授賞を
れに関与する遺伝子の解明、そしてヌタウナギ
リードしている。その業績は、日本進化学会研
この研究は2003 年にGenome Biology 誌に発表
見送ることにした。今年の研究奨励賞応募者の
の個体発生の記載などの先駆的研究成果を Sci-
究奨励賞にふさわしい。
されたが、同時期に発表されたヒトゲノムの偽
専攻分野は、生態学(4 件)・分子進化学(1
ence、Nature 誌などトップ・ジャーナルに次々
研究奨励賞受賞者
遺伝子に関する2 つの研究とともに、世界的に
件)・バイオインフォマティクス(1 件)であっ
と発表し、それらの業績は日本だけでなく、世
●荒木仁志 博士(オレゴン州立大学)
よく引用される研究となっている。現在この路
た。
界的に見ても抜きん出ている。さらに、倉谷博
けられた。
選考の結果、下記の方々への授賞を決定した。
【結果】
○日本進化学会賞受賞者(木村賞候補者)
倉谷 滋 博士(理化学研究所)
○研究奨励賞受賞者
なお、教育啓蒙賞に関しては、選考委員会の
士は、発生生物学の長い歴史にも目配りをし、
「養殖放流下でのサケ科魚類の集団遺伝学的研究」
線の研究を発展させ、異なる2 つの遺伝子がス
荒木博士は、養殖場で飼育された魚では、淘
プライシングで連結した転写産物のレトロ遺伝
席上で候補者が挙げられたため、当日の選考委
その過程で多くの先駆者たちが格闘した個体発
汰を通じて一種の「家畜化」が生じ、自然界に
子を発見し、Kazazian 博士と共同で Genome
員会の後にメールで討議した結果、下記の方が
生と系統発生に関わる古典的問題を現代の分子
は適さない性質が進化していることを実証した。
Research 誌に発表している。この分野での成長
受賞されることになった。
発生学の観点から見直すという姿勢が顕著であ
具体的には、過去15 年間に遡上したニジマス約
が期待される俊英である。
○教育啓蒙賞受賞者
る。生物学史の深い教養に支えられた確固たる
1 万5,000 個体のDNA サンプルを用いてマイクロ
●伊藤 剛 博士(農業生物資源研究所)
研究のあり方、そのたぐいまれな研究上の生産
サテライトによる親子判定を行い、天然魚と放
性、そしてそのインパクトの大きさなどいずれ
流魚の繁殖成功度と有効集団サイズを推定した。
1994 年に東京大学教養学部基礎科学科第一を
をとっても、倉谷博士は他の進化生物学徒にと
その結果、放流魚の繁殖成功度は天然魚の6 ∼
卒業。奈良先端科学技術大学院大学に入学後、
仲田崇志氏
(東京大学大学院理学系研究科博士課程)
後日、公益信託進化学振興木村資生基金の木
「大規模比較解析に基づくゲノム構造進化の研究」
4
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
最優秀賞…… 2 件
HP01 井上 昂(大谷中学校)
「コンテリクラマゴケの青の不思議」
HP08 上田明尚(東京都立大学付属高校)、齋藤
有輝(早稲田大学高等学院)、堤 美葵(東京
都立日比谷高校)
、荒木信之(玉川学園高等部)
「終止コドン付近の TAA、TGA、TAG トリ
プレットの出現頻度の解析」
―ポスターの氏名・所属と演題の一覧―
HP01 井上昂、指導教諭:高橋邦明(大谷中学校)
大腸菌のゲノム配列決定とその配列解析に携わ
教育啓蒙賞
り、1999 年に博士号を取得。また、大学院在学
●仲田崇志 氏(東京大学大学院理学系研究科博士課程)
中より国立遺伝学研究所の五條堀教授の指導を
「ウェブサイト〈きまぐれ生物学〉の運営と進
仰ぎ、卒業後は五條堀研において博士研究員と
「コンテリクラマゴケの青の不思議」
化研究の紹介・啓蒙活動」
HP02 三浦真由子、光森智加(静岡県立清水東高校)
「ミドリゾウリムシと共生藻の共生関係の解
明」
して微生物を中心にゲノム進化解析を先駆け的
仲田氏は、個人としてインターネット・サイ
HP03 星野羊一、大垰勝寛、高林泰斗、岡 正
に行い、オペロン構造不安定性に関して国際的
ト〈きまぐれ生物学〉を開設・運営し、その中
太、防田真哉、平島徹也、新田理人、平野雅
にも評価の高い業績を上げた。2000 ∼2002 年に
で進化生物学の最先端の研究成果などをわかり
裕、横田 萌、中川裕紀子、桑原由花子、木
かけてはペンシルベニア州立大の根井教授のも
やすく紹 介 してきた。 その内 容 は、 Nature、
内美波(広島県立広島国泰寺高等学校)
と、分子進化学に関して研鑽を積み、細胞内共
Science 誌などに掲載された進化研究の解説を
生菌のゲノム進化に関する論文をPNAS 誌へ発
中心として、分子進化学・発生生物学・人類
表した。帰国後は産業技術総合研究所において
学・体系学など多岐にわたっている。藻類学の
HP04 新田理人、平野雅裕、横田 萌、草壁翔
ヒトゲノムのアノテーション、さらに2004 年か
新進研究者としての研究活動の傍らで、長期に
馬、中田圭哉、一久保 晶(広島県立広島国泰
ら農業生物資源研究所においてイネゲノムのア
わたる紹介・啓蒙活動を続けてきた仲田氏の功
寺高等学校)
ノテーションを行うため国際プロジェクトを組
績は、今後の進化学における研究成果の広報紹
織し、ゲノムアノテーションや大規模解析で多
介と教育啓蒙の範となるものであり、日本進化
数の国際的な業績を上げている。
学会の教育啓蒙賞にふさわしいと考えられる。
「オオサンショウウオの遺伝的地域解析と国
際交流」
「高校グラウンドに生息するニホンミツバチ
に関する研究」
HP05 塩見太志、斉藤麻綾、太尾田泰成、中川
愛梨、中島健太、萬屋裕子(広島県立広島国泰
寺高等学校)
「食虫植物「タヌキモ」に関する研究」
「みんなのジュニア進化学―高校生ポスター発表会 第 2 回」
報・告・記
企画・審査委員長 嶋田 正和(東大・総合文化・広域科学)
【期日】 2007 年 9 月 2 日(日)10:00 ∼ 12:00
統計解析)
、深津武馬(産総研、進化生物学・細胞
【会場】 京大・理学研究科 6 号館南 4F ロビー
内共生)
、長谷部光泰(基生研、植物分子系統学・
【発表件数】13 件
発生進化学)
、颯田葉子(総研大、分子集団遺伝学・
【審査委員会】嶋田正和(委員長、東大、進化生
分子進化)
、伊藤 剛(生物資源研、バイオインフ
態学・理論モデル)
、三中信宏(農環研、系統学・
ォマティクス・イネゲノム)
HP06 中川真菜(田園調布学園)、黒田真理恵(学
習院女子高等部)
、有明直人(日本大学第三高校)、
星野成宗(桐光学園)、小金彩夏(桐朋女子高等学
校)
「ヒトMicroRNA とそのターゲット遺伝子の
発現量解析」
大和高校)
、田村直大(明大付属中野高校)
「バクテリア統合解析ツール“BASIL”
(Bacteria Analysis Library)の開発とゲノムの解
析」
HP08 上田明尚(東京都立大学付属高校)、齋藤有
輝(早稲田大学高等学院)、堤 美葵(東京都立
日比谷高校)
、荒木信之(玉川学園高等部)
「終止コドン付近のTAA、TGA、TAG トリプ
レットの出現頻度の解析」
HP09 中丸惇平(つくば開成高等学校)、町田裕隆
(秀明高校)
、中尾和貴(逗子開成高等学校)、品
川 麗(森村学園)、佐藤淳美(桐蔭学園)
「レトロトランスポゾンと,テロメラーゼの
配列比較」
HP10 長谷部百合子(順天高校)、中島乃雅(慶
應大・環境情報)
、立川 碧(慶應大・環境情報)
「オーバーラッピングジーンの保存の優位性
がもたらす進化への影響についての考察」
HP11 山本 翔、渡辺明日香、粉川舞亜、谷川
洋平、三輪田圭祐、植村亮太、小林洋介、稲
岡麻衣亜、吉村多恵子、中山健太朗、吉岡美
咲、長谷川茉衣、松本 惇、西村柊斗、山内
脩、新海芽依(京都産業大学附属中学高等学校)
「京都市街地に於けるセミの羽化変動と生活
史を反映した周期性」
HP12 山本 翔、渡辺明日香、粉川舞亜、谷川
洋平、三輪田圭祐、植村亮太、小林洋介、稲
HP07 小池公美子(東京女学館高等学校)、君和
岡麻衣亜、吉村多恵子、中山健太朗、吉岡美
田未来(東京女子学園)、持田和範(神奈川県立
咲、長谷川茉衣、松本 惇、西村柊斗、山内
5
6
日本進化学会ニュース Nov. 2007
脩、新海芽依(京都産業大学附属中学高等学校)
「鴨川水系に於けるウズムシ相と水質」
HP13 手島章吾、堀田 崇、岩 裕美子(大阪
府立高津高等学校)
「生物夏季合宿(サイエンスキャンプ 2007)
報告―大阪城内濠のプランクトン調査」
7
審査委員は6 名で対応したが、2 時間があっと
れていたが、今年は4 階のエレベータホールに
き生きと取り組んだようで、本当に楽しかった、
いう間に過ぎてしまった。厳正なる審査の結果、
面したロビーだったため、ポスター発表してい
と口々に感想を述べていたのが印象的だった。
「最優秀賞」は上記の2 件が選ばれた。――ポス
る周囲にはほとんど余分な空間がなかった。今
ただ、高校の生物教育の中で生き物の実験で
ター番号HP01 の井上君はまだ中学3 年であった
年は芋を洗う状態になったが、来年いっそう応
何がしかの結論を出そうとすると、高校の乏し
が、コンテリクラマゴケの青い色は葉表面の色
募が増える可能性もあるので、会場面で配慮す
い予算、高価な分析機器は購入や修理・保守が
素によるものではなく、プリズムのような光の
べき改善点であろう。
不可能、技術支援職員は皆無など、多くの制限
屈折であることを顕微鏡観察で突き止めている。
全体の報告
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
また、全員に渡す賞状は「参加賞」よりも
の中で生物部を指導せざるを得ない現状がある。
モルフォチョウの翅の鱗粉との比較で、この着
「優秀賞」の名称の方が適切かもしれない。日
片や、大学による支援、多数の大学生による
「みんなのジュニア進化学―高校生ポスター
想を得たとのこと。また、コンテリクラマゴケ
本動物学会は高校生のポスター発表には参加賞
TA、パソコンとインターネットさえあれば低予
発表会 第 2 回」として、上記の期日と会場に
の光適応を、近縁種のクラマゴケとの観察で比
の意味合いで「優秀賞」を出しているが、母校
算で研修を運営できる分野の特性…。同じ土俵
て開催した。審査委員は上記のとおりである。
較し、いろんな光に対する前者の高い適応能力
の支援や旅費をもらって学会に参加している場
で「最優秀賞」を競わせるのは高校側に酷な面
当初は発表申込みが伸びずに心配されたが、申
をデータから裏付けている。実験のセンスが良
合、選に漏れて地元に戻ったときに「参加賞」
もあるので、近い将来、何らかの検討が必要と
込み締め切りを 1 週間延期して実践生物 ML や
く実験をデザインするときの論理も緻密であり、
だけでは辛いものがあると、ある顧問教師から
なるかもしれない。
理科教育 ML で宣伝した効果が功を奏してか、
将来が楽しみな資質である。
聞いた。専門家の集う一般学会に地方から参加
高校生によるポスター発表の
全プログラムと審査委員による講評
最終的には喜ばしいことに13 件もの登録があっ
また、ポスター番号 HP08 の上田君たちのグ
するだけでも勇気がいるし、どのポスターも高
た(昨年は3 件)
。前日(9 月 1 日)から一般講
ループは、後述の慶應義塾大学スーパーサイエ
校生の標準を大きく越えているので、来年は
演のポスター会場や公開講演会にはあちこちに
ンス・プログラムで学んだ班の一つである。こ
「優秀賞」に名称を変えて賞状を渡してあげた
高校生と思しき白いカッターシャツ姿やセーラ
のプログラムからは 5 件のポスターが発表され
ー服姿の少年・少女が目につき、去年とはだい
たが、その中でも、このH08 がテーマへの動機
ぶ違う新鮮な印象を覚えた。大会懇親会での郷
づけの説明や統計解析が一番しっかりしていた。
った。前述したように、慶應義塾大学の冨田 勝
通子会長のご挨拶でも、高校生の参加に特に言
終止コドンの前に見られる偽終止コドンについ
教授を代表として、高校生にバイオインフォマ
及があり、今年は一気に認知度が高まったよう
てサイトごとの出現頻度をイン・フレームとア
ティクスを実習するスーパーサイエンス・プロ
ンスが良い。また、コンテリクラマゴケとクラマゴ
だ。
ウト・フレームで比較し、イン・フレームの方
グラム(大手学習塾の早稲田塾が連携)からの
ケの光適応に関する実験もいろいろ工夫されてお
発表会当日は、10 時にポスター発表が開始さ
が有意に高い結果を考察していた。そのまま一
参加である。東京・神奈川・埼玉・茨城などの
り、たいへん良かった。将来が楽しみな資質である
れるとともに、会場の4 階ロビーは共同発表す
般会員の発表としても通用するくらい、レベル
都県の高校生を多数集めて4 月から夏休みまで
●
実験計画のセンスが良い
る高校生(その親御さんも)と一般参加者とで
が高く興味深い解析だった。
研修を重ね、
「高校生のポスター発表会」に5 件
●
生物学のセンスがありますネ。将来が楽しみで
い。
もう一つ、今回の発表会には大きな特色があ
■ HP01「コンテリクラマゴケの青の不思議」
●
森でコンテリクラマゴケの葉が青く光るのを見て、
その不思議なメカニズムを実験によって突き止めよ
う、とした動機がすばらしい。特に、モルフォチョ
ウの金属光沢に見える翅の表面(青い色素はなく光
の屈折で青く見える)との類似性に着目したのはセ
と、高く評価できる。
芋を洗うような混雑となった。各ポスターでは
「最優秀賞」の選に漏れた中にも、高校生の
応募してきた。慶應義塾大学環境情報学部で授
す。自分の好奇心、
「なぜ?」と思う心を大切にし
活発に質疑応答が繰り広げられ、熱気はますま
ポスターとしてはしっかりした内容の高度なも
業されるような内容を、易しくして高校生の研
てください。
す高まったと言えよう。
のがいくつか見られた。例えば、HP03 星野羊
修プログラムとして取り組ませているのかもし
■ HP02「ミドリゾウリムシと共生藻の共生関係の
一君、他(広島国泰寺高校)による「オオサン
れない。米国で行われている Advanced Place-
ショウウオの遺 伝 的 地 域 解 析 と国 際 交 流 」、
ment 制度(大学が地域の優秀な高校生[上位
らした状態での細胞分裂を観察し、共生関係が比較
HP11 山本翔君、他(京産大附属高校)
「京都市
3 %くらい]を集めて大学の入門コースの授業
的強固ではないことを示唆する結果を得た。あれは
街地に於けるセミの羽化変動と生活史を反映し
を行い、最終試験にパスしたらその大学の単位
面白かった。今年は共生藻が宿主の細胞膜に張り付
た周期性」などである。来年以降は、
「最優秀
がもらえる)とはまた違う、単位取得とは無関
賞」以外に入選の対象となる賞(佳作など)を
係の自由研修である。大手学習塾が連携してい
設けたほうがよいと思う。
ると聞いていたので、最初は心配した面もあっ
「どんどん減ってしまう」状態では、やはり「順調
昨年は広い一般発表のポスター会場の最後列
たが、どのポスターでも高校生たちはバイオイ
な減少」とはいえないように思う。共生藻が減少す
(入口の側)が高校生のポスター発表に与えら
ンフォマティクスのプログラミングや解析に生
るにしても、ある程度の低密度のところで減少が止
解明」
●
昨年のポスターはミドリゾウリムシの共生藻を減
いている可能性の知見を得たので、共生藻を減らし
て観察するために共生藻の細胞密度を減らすため農
薬パラコート処理をしたという。しかし、共生藻が
8
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
まり、一定密度で維持できる状態になって、そこか
●
タを用いて、81 組織におけるmiRNA が結合する遺
れている他のサービスも調べて比較し、参考にして
ら共生藻とゾウリムシの本格的な観察・実験がスタ
意欲がある。
伝子と、そうでない遺伝子の発現量を比較した。そ
はどうでしょうか。また、ここで作ったプログラム
ートできるように思う。どんどん減少している状態
■ HP04「高校グラウンドに生息するニホンミツバ
の目的のために、統合データベースも作成した。そ
を利用した解析を考えてみるのも良いのでは。
は過渡期なので、その状態で実験しても共生藻の共
チに関する研究」
の結果、81 組織中74 組織においてmiRNA が結合す
■HP08「終止コドン付近のTAA,TGA,TAG トリ
生状態の正確な理解には至らないだろう。
(顧問教
●
私はマルハナバチの訪花行動と花の対応をテーマ
る遺伝子の平均発現量が非結合遺伝子のそれを上回
プレットの出現頻度の解析」
員の篠田さんとのメールやり取りで講評を一部変更
とした授業を 15 年ほど行ってきたが、その経験か
ったという。発表の生徒さんたちは、この結果を
●
した)
日本だけでなく、海外調査も積極的に行っており
興味深い結果であった。終止コドンの前に偽終止
ら言えば、あらかじめ巣が分かっているミツバチと
「予想に反する結果」と受け止めているようだ。
コドンが見られるかどうかを、イン・フレームとア
●
いろいろ試行錯誤の実験をしてみて下さい。
言えども巣から出てどの植え込みを回るか調査する
――この結果の解釈の難しさは、miRNA が結合す
ウト・フレームとでその出現頻度をポジションごと
●
共生関係の成立について、もう一度、考察を深め
のは、行動圏が広ければかなり骨が折れる。ワーカ
る前の段階では、実際にどのくらいの発現量(転写
に比較した解析である。原核生物のゲノムでは、イ
ーに糸をつけて追跡するのはいささか無理で、むし
量)だったのかが推測の域を出ない点である。この
ン・フレームの方がアウト・フレームよりも有意に
ろあらかじめ標識(ペイント・マーカー)によって
解析ではmiRNA が結合した後の発現量のデータし
高い頻度だったのは、たいへん面白い。ただ、その
あと数年したらきっと大きな成果に成りますよ。が
個体識別をしておき、あちこちの植え込みにそれぞ
かないので、やはり実験によってそのようなデータ
解釈であるが、
「フレームシフト変異を避けるため
んばってください。
れ観察者が張り付く人海戦術の方が確かかも? そ
が蓄積される時期までお預け、ということになるの
に偽終止コドンを置くのが有利だ」というのは、い
■ HP03「オオサンショウウオの遺伝的地域解析と
れよりも、花の種類の違いと訪花行動の関係や、人
だろうか? 生徒さんがいろいろ工夫して解析して
ささか疑問である。分子進化の中立説によれば、フ
レームシフト変異が生じた細菌は子孫を作れないか
て欲しかった。
●
先輩から後輩へつないでいく研究はいいですネ。
為的な蜜足し実験によるハチの記憶と学習行動の分
いただけに、その点が残念だった。
析、一日の花の蜜の糖濃度の変化とハチの訪花時刻
●
研究者になって下さい。
ら、有害突然変異は早々に消滅する。つまり、フレ
残念だったのは、
(生徒さんの責任では全くないの
など、比較的簡単な操作でできる実験もあるので、
●
大変に意欲的な発表。データの扱いや解釈をじっ
ームシフト変異への対抗手段として偽終止コドンを
だが)ホルマリン固定標本だったことである。標本
いろいろ試してみたらよいと思う。これからに期待
くり考えれば、もっといろいろなことがはっきりす
配置するのが有利だという理屈で自然選択はかから
からDNA を抽出して分析するときに、ホルマリン
したい。
る内容だと思います。様々な意見を聞きながら改善
ないと思う。もちろん、そのような思考をいろいろ
標本は非常に厄介なものとなってしまう。100 %エ
●
課題をどのように解くか実験法を考えよう。
していってはどうでしょうか。特に、機会があれば
考えるのは大事であるが。直後に「分子進化の中立
タノールかアセトン漬けの標本がベストだが、昔の
●
ハチにさされながらの観察、雨の日の観察、観察
miRNA の実験の専門家と話ができれば得るところ
説」を勉強したいと言ってきた発表者の生徒さんが
研究者はそれが将来 DNA 分析に使われるなど夢に
は継続することが大切ですヨネ。はちの個体が識別
が多いでしょう。まだまだ一層良くなっていくと思
いたので、さっそく本の展示即売コーナーで、宮田
も思わなかっただろう。せめて、足の指 1 本でもア
できるgood idea 待ってます。
います。
隆氏の入門書を薦めておいた。情熱を持って科学を
セトン漬けしておけば、と残念である。――しか
■ HP05「食虫植物「タヌキモ」に関する研究」
■ HP07「 バクテリア統 合 解 析 ツール“ BASIL”
し、生徒さんは、それをよく理解しており、それで
●
も保管されているのはホルマリン固定標本しかなか
動きは見られなかった、というのは意外だった。ま
●
ったのでしょうがなかった、と言っていた。現に、
た、タヌキモの主たる栄養分は本当に動物なのか?
PCR にかけてもDNA が増えない標本が多かったの
はもったいなかった。
国際交流」
●
オオサンショウウオは大いに興味がある材料だが、
タヌキモはさほどに積極的に微小動物を捕獲する
(Bacteria Analysis Library)の開発とゲノムの解析」
学ぶのは大変良いことである。
●
お見事。
バクテリア統合解析ツールを開発しようとする生
●
面白い結果でした。今後の展開にも期待します。
徒さんの意気込みは大事である。ただ、最近はこう
●
結果が明瞭で、とても分かりやすい研究発表で
と、光合成の相対重要性を調べる実験は面白い。生
いうソフトやシステムは比較的容易に入手可能なの
す。原因がどこにあるのか(フレームシフトを避け
き物に対する実験のセンスの良さを伺わせる。ま
で、生徒さんがどこにオリジナリティを出そうとし
るためなのか)を証明するにはもう少し追求が必要
また、遺伝的構造を解析するときの生息地域の広
た、ウツボカズラとの比較で消化液のpH を計るよ
たのか、動機づけがやや不明である。また、バイオ
ですが、そこまで含めて色々と検討すれば、一つの
さの問題も重要である。生きた標本を手に入れて
うな実験は、よく思いついたものだと興味を覚え
インフォマティクスの背景にある分子生物学をきち
成果としてよくまとまると思います。結果を統計検
も、それが似たような地域からのものだったら(例
た。タヌキモのHP を見ると消化液はプロテアーゼ
んと理解することは、そこまでは高校生のレベルで
定までしているのは立派なことです。ただ、検定方
えば県内の2 つの河川が同じ水系だったりしたら)
、
が確認されているようで、本来ならpH はずっと低
は無理だとは思ったが、簡単な質問(例:GC skew
法もたくさんあるので、余力があれば色々と調べて
ミトコンドリアDNA の場合は変異がほとんどない
いものになってしかるべきだろう。結果はどれもpH
を求める意義は? etc)を出しても、きょとんとし
みてはどうでしょう。
か、ごくわずかになりがちである。おそらく、オオ
値が7.2 ∼7.5 くらいだったようで、今ひとつの結果
て答えられなかった面もある。もちろん、大学に入
●
サンショウウオ同一種の地域個体群の遺伝的構造を
になっていたのは、ウツボカズラに比べてタヌキモ
ってから学びなおせば、水素結合の数がAT は2 本、
経験した君たち、今度は予想を裏切った生物として
見るのであれば、ミトコンドリアのND6 やND8 な
は正確に測定するのが難しいからだろうか? 再チ
GC は3 本の違い、それによってGC 豊富な領域は配
の理由を突き止めてほしい。
どよりも、もっと変異性の高い、例えば核のITS 領
ャレンジに期待する。
列が堅牢になること、ラギング鎖とリーディング鎖
■ HP09「レトロトランスポゾンと,テロメラーゼ
域を使うのは一つの手だろう。あるいは、もっとず
●
たくさんの実験をしてみて下さい。
でGC の取り込みが違う傾向があることなど、背景
の配列比較」
っと変異性の高いマイクロサテライト領域を使え
●
消化液の比較実験は面白いと思います。これから
が分かっていくだろう。それまでは、まずは練習問
●
ば、系統解析とは違うタイプの解析(平均ヘテロ接
いろいろな視点で研究を進めていったら面白い結果
題を完成させる、というのでもかまわないとは思う。
持っていることから、両者は進化的に関係があるの
合体頻度や近親交配の統計解析)もできるだろう。
になると思います。
習うより慣れよ、とも言うのだから。
では?と、解析を始めた動機づけは立派なものだと
聞くところによると、5 年間の計画の後半にマイク
■ HP06「ヒトMicroRNA とそのターゲット遺伝子
●
研究者になって下さい。
思う。テロメアーゼを持つ生物全体の相同検索を行
ロサテライトに挑戦するようだから、これからに期
の発現量解析」
●
他の人が利用できるサービスを作成することは大
うのは良いとしても、そこから分子系統樹を作成し
待したい。
●
●
他の生物との比較を考えてみて下さい。
科学の醍醐味の一つ「予想が裏切られる」ことを
レトロポゾンとテロメアーゼは共に逆転写酵素を
miRNA の研究は主にがん細胞で研究が進められ
変に重要な仕事です。本発表はとても上手にまとめ
てみたのはやや安 直 な発 想 ではないだろうか?
ているので、今回はSysmatlas の組織別発現量デー
ていると思いました。今後は既に世界各地で提供さ
「テロメアーゼが分子分類学に使えないかと思って
9
10
日本進化学会ニュース Nov. 2007
11
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
クサの繁茂との相関、さらには、近隣の河川の生物
…」と、分子系統樹を作成した理由を述べていた
いろな人の意見を聞いてみるのも良いのではないで
●
が、いささか唐突である。普通は、分子系統解析や
しょうか。また、個別の遺伝子はそれぞれに全く違
直しを求める結果がおもしろい。
分子分類学に使われる遺伝子の適正な選択は、種・
う機能を担っています。全体的なゲノムの構成を概
●
属・科・目・綱・門と上がるに従って保存性のレベ
観するのも重要ですが、個別に深く見ていくと違っ
地元の河川の様々な環境中にいることを明らかにし
考えられるように思うので、今後に期待したい。
ルも上がるように選択しているのが一般である。よ
た面白さがあるかもしれません。
ました。これからもこういう丁寧な観察を続けてく
●
って、テロメアーゼがどのような保存レベルにある
●
ださい。
区別して書くと良い。
かをまず調べて、それから、どのレベルの分類群の
無駄なこともたくさんしているように見えます。生
■HP13「生物夏季合宿(サイエンスキャンプ2007)
●
分子系統解析に使えるかを、順を追って決めていく
物の無駄と節約はなぜ生まれたのでしょうか?
報告−大阪城内濠のプランクトン調査」
ら、もう少し体系的な研究計画を立てるようにした
作業が必要だ。しかし、最初の動機はしっかりして
■ HP11「京都市街地に於けるセミの羽化変動と生
●
いるので、いろいろ解析してみると面白い結果が出
活史を反映した周期性」
は根気の要る観察で、生き物が好きでないと続けら
●
てくるだろう。今後に期待したい。
●
各種セミの発生数を11 年に渡って調査した、情
れないだろう。すばらしいことである。これまでに
おられます。こういうデータは時間がものをいうと
生物は思いもかけない節約をしていたり、一方で
外来ウズムシ相調査を通じて、国の水質基準の見
層と大阪城内濠との比較、お濠の水界生物群集を構
「ウズムシ」とひとくくりにできないほどの種が
熱心に大阪城の濠の生物相を月に何回も調べるの
成する生物種間の相互作用など、テーマはいろいろ
本に書いてあることと、自分でした新しい発見を
せっかく 30 年に及ぶ継続調査をしているのだか
方がよい。
大阪城のお堀に生息する生物の観察を長年続けて
●
研究者になって下さい。
熱と根気の要る研究であるところがすばらしい。特
たくさんのデータが蓄積されていると思うので、そ
思います。これからも息の長い観察記録に挑戦して
●
BLAST など、方法を変えてデータを収集すれば、
にアブラゼミとクマゼミの羽化数に負の相関が見ら
のデータを基に一つのテーマに沿った分析・解析な
ください。
もっといろいろなことが分かりそうですね。分子系
れることから、両者の関係を中心に調べ、都会では
どを手がけてみたらよいと思う。例えば、アカウキ
統樹作成は意外に奥が深いので、一度専門家にじっ
クマゼミしか棲めない環境が広がっていることを明
くり教えてもらうのも良いでしょう。発表では論理
らかにしているのは重要な分析である。定点観測は
展開をしっかり追うことが大切なので、落ち着い
重要だが、できれば複数の地点で定点観測の結果を
て!
比較すれば、都会のセミの発生に関してずっと豊か
■ HP10「オーバーラッピングジーンの保存の優位
な理解に繋がるだろう。ぜひ検討してほしい。クマ
性がもたらす進化への影響についての考察」
ゼミの大発生にも言及しているが、NHK への質問
原核生物のオーバーラッピングジーンの進化にお
状は、あまりよく分かってない自然界の現象につい
ける意義や、発現機構の法則等は分かっていないと
ていささか強硬過ぎるような書き方に見えたが、科
言われているが、分からないから調べるというだけ
学の啓蒙と普及の面からはあまり好ましいものでは
では、生徒さんのこのテーマを選んだ動機づけが今
ない。マスコミといえども素人なのだから、むし
ひとつ不明瞭である。分からないなりにも、どこに
ろ、自分たちの研究をニュースで取り上げてもらえ
面白さを見い出すかで、対象やテーマを選ぶときの
るような持って行き方が得策ではないか。いずれに
研究者のセンスが問われる。uni-direction, end-on,
しても、すばらしい研究なので、これからも期待し
head-on の 3 パターンについて網羅的に解析するの
たい。
●
高校生のゲノム解析
慶應義塾大学環境情報学部・同大先端生命科学研究所
冨田 勝
今や小学生でもPC やインターネットを駆使する時代。
“ゲノム配列”は最も身近な生物
材料のひとつになりました。
このゲノム配列を材料として、
「生命進化の謎」をテーマに「スーパーバイオサイエン
スプログラム(SBP)
」を大手学習塾の協力を得て実施し、今年で2 回目になります。その
成果の一部を5 組の高校生が京都大会でポスター発表しました。
特殊な機材は一切使わず、すべてフリーのソフトウェアツールを利用し、計算も各自の
ラップトップ(Windows)だけで行いました。SBP 自体は月 2 回しか集まっておらず、手
取り足取り教えたのは最初の2 回だけで、あとは中間発表会や質疑応答にあてるなど基本
は、どういう理由でそこに面白さがあるかを説明で
●
きるともっと良くなっただろう。原核生物のゲノム
い。
は変異性が高く異種との遺伝子水平転移も頻繁に見
●
られる。オーバーラッピングジーンの生成機構も、
続けてほしい。とともに、データの精度は多少落と
例えば、オーバーラップ部位付近で塩基配列の欠失
しても、多地点での調査を指向してほしい。
または挿入による遺伝子領域の伸長が見られたりす
■ HP12「鴨川水系に於けるウズムシ相と水質」
るが、それと上記のオーバーラッピングジーンの3
●
パターンはどのように関係しているのだろうか?
て侵入していることを初めて見い出し、また在来種
そう言って夢中になって取り組んでいる彼らを見ていると、本来サイエンスとはこうある
ちなみに、ポスターの作り方について、イントロの
が生息する水質に比べて外来種の生息環境の水質は
べきだと強く感じました。
説明シートが細かい字でびっしり書かれているのは
異なることなどを明らかにした。地元の河川のウズ
あまり魅力的ではない。この次は要点を大きく簡潔
ムシ相の丁寧な観測から、日本の自然生態系の生物
に記して見やすくすっきりしたポスターになるよう、
多様性に影響する外来種の侵入という大きな問題の
期待している。
一端にスポットライトを当てた、しっかりした研究
●
お見事。
セミの樹種嗜好性を指摘している点がおもしろ
長期継続的なデータ収集はとても貴重。今後とも
鴨川でのウズムシ相を調べて、外来種が野生化し
である。ぜひ、これからも続けて観測してもらいた
●
発表者のプレゼンの熱意がexcellent。
い。
●
利用するデータの性質が自分の研究にあうかどう
●
新しい発見の意義づけ(たくさんのわからないこ
かを見極めるのは大切ですが、これは専門家にとっ
との中でどの問題が大事なのか)を判断すると良か
ても難しくあります。研究を進めてしまう前にいろ
ろう。
的に“放任主義”
。でも高校生だからとあなどってはいけません。高校生同士で何度も集
まり、英語(文献調査)の得意な人、プログラミングが得意な人、仕切るのが得意な人、
プレゼンのうまい人、などが協力分担をして、中には大学院生なみの成果を出したグルー
プもあります。
「ゲノム解析はテレビゲームより面白い。
」
学会で発表しプロの研究者の先生方からコメントをもらえたことは、高校生にとって大
きな励みとなり、みんな心から感謝しています。また「二人の先生から正反対のコメント
を言われたのでびっくりした」
「ゲノムは専門外なのでわかりやすく教えてください、と先
生に言われて驚いた」など、学校や塾では絶対にありえない貴重な体験をしたようです。
そんな「高校生部門」を企画運営してくださった方々に敬意を表します。私も微力なが
ら、
「正解のない問題に取り組む面白さ」を高校生に伝えていきたいと思っています。
12
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
13
のこれからの課題と展望について議論する予定で
公開講演会・進化学夏の学校・シンポジウム・ワークショップ
動物の進化と発生とゲノム
す。
佐藤矩行(京都大学大学院理学研究科動物学教室)
動物が進化した道筋をたどってみると、そこには
幾つかの節目のようなものがあり、多細胞性の起
シンポジウム
胞(リポソーム)に包まれ、原始的な細胞につなが
源、二胚葉動物と三胚葉動物の分岐、旧口動物と
日本進化学会京都大会・公開講演会
ったと推測されている。なぜ、単なる化学反応ネッ
新口動物の分岐、脊索動物の起源、脊椎動物の進
進化研究の最前線に貢献する生き物たち
トワークが遺伝情報を持つようになったのであろう
化などがそれにあたる。なかでも脊索動物群の進化
京都大学グローバル COE「生物の多様性と
か? なぜ、μm サイズの小さな区画に分かれて存
のなかでおこった脊椎動物の起源の問題は、我々ヒ
進化研究のための拠点形成」共催
在するように進化したのであろうか? このような
トの進化と関連しつつ古くから議論され研究されて
現代ロボット工学は目覚ましい発達を遂げまし
進化学の基本的な問題に対する示唆を得るために、
きた。脊索動物は、尾索類(尾部に脊索をもつ:ホ
た。しかし、ロボットが示す振る舞いは、動物のそ
試験管内に細胞を再構築することが試みられてい
ヤなど)
、頭索類(頭部まで脊索が伸びる:ナメク
れより、現実世界で生じる諸状況に対し柔軟性が高
種形成の現場:ビクトリア湖シクリッド
る。最近、我々の研究室では、リポソーム内部で自
ジウオ)
、脊椎動物(脊索が椎骨に置き換わる)の
いとはいえません。そこで、生物学と工学の連携を
岡田典弘(東京工業大学大学院生命理工学研究科)
己複製反応を引きおこすことに成功した。このリポ
3 群からなる。最近の化石記録は、脊索動物は3 群
目指す特定領域研究「移動知」が平成 17 年に発足
アフリカのビクトリア湖は、若い湖である。同じ
ソーム内自己複製反応系は、わずか約150 種類の既
とも5 億年以上昔に生まれていることを示している。
しました。ここでは、動物の「適応的」行動を身
アフリカ東部の大地溝帯に存在するタンガニイカ湖
知分子から構築された進化能をもつシステムであ
また、この3 群の体づくりの分子メカニズムが研究
体、脳、環境のあいだの相互作用として、生物学と
は約一千万年、マラウイ湖は約二百万年の歴史を持
る。これらの最新の知見を紹介しながら、遺伝情報
され比較されている。さらについ最近になってカタ
工学の融合した構成論的アプローチで理解すること
っていることに較べるとこの若さは際立っている。
の起源など基本的な問題を議論する。
ユウレイボヤとナメクジウオのゲノムが解読され、
を目指しています。いいかえれば、進化によって育
脊椎動物ゲノムとの比較解析が始まった。これらの
まれた生物の適応的行動の理解から工学の設計思想
しかも、この湖には500 種とも言われるシクリッド
S1
移動知―ロボット工学的手法による動物の適
応的行動の理解
企画:辻 和希(琉球大)、青沼仁志(北海道大)
が生息している。タンガニイカ湖やマラウイ湖のシ
1 + 1 = 1 :植物になる進化
知見を総合すると、脊索動物の中ではナメクジウオ
を展開できないか、工学的手法の導入で生物の適応
クリッドではなく、ビクトリア湖のシクリッドを研
井上 勲(筑波大学生命科学系)
が最も祖先的であり、脊椎動物はナメクジウオのも
的行動の理解が深まらないかとの両観点から研究が
究する理由は、種形成の時期が最近であるため、そ
植物ははじめから植物だったのではなく、あると
つ脊索動物としての特徴を発展させるかたちで(顎
進められています。このシンポジウムではその成果
れぞれの種のゲノム配列は種形成の原因となった遺
き植物になった。植物は進化的に異なる系統の生物
を作り、獲得免疫系を発達させ)
、また尾索類は濾
の一部を紹介します。
伝子を除いては基本的に同一であるという点であ
の集まりである。共通項はただ一点、酸素を発生す
過摂食者としての特徴を発展させるかたちで進化し
S1-1 昆虫脳にひそむ環境適応能―遺伝子・神
る。それではどのような遺伝子の変異が原因で種形
る光合成をすること。たとえばワカメとサクラは、
てきたという構図が浮かびあがってきた。
成が行われたのであろうか? このような問いに答
生き物としては赤の他人である。これは、それぞれ
えるためには、遺伝子を分析することももちろん重
の祖先が、ある時点で植物になったからである。植
要であるが、同時にビクトリア湖に実際に訪れて、
物になるためには、光合成装置である葉緑体が加わ
その種形成の現場を観察し、どのような生態的条件
ればよい。葉緑体を盗むことで、いろいろな生物
の下でシクリッドが生息しているのかを調べること
が、動物のように「食べて生きる生き方」から、植
も重要である。このような問題意識から、我々は日
物のように「光合成でエネルギーを得る生き方」を
本で初めてのビクトリア湖調査隊を組織して、ここ
するようになった。つまり、従属栄養生物+葉緑
エボデボから見えてきたもの・
○川端邦明・藤木智久、池本有助(東大・人工物工学)、
4 年間で数千個体に及ぶシクリッド標本と写真の蒐
体=新たな植物の誕生(1 +1 =1)なのである。で
進化発生学の現状と展望
青沼仁志(北大・電子研)、淺間 一(東大・人工物工学)
集を行ってきた。このような基礎情報のもとに、ビ
は、どこから葉緑体を都合したのか、そこに植物進
倉谷 滋(理研 CDB)
S1-4 受動的動歩行
クトリア湖のる環生息環境のもとで、オプシン遺伝
化の秘密がある。光合成はラン藻(シアノバクテリ
長谷部光泰(基礎生物学研究所)
子の一つである LWS(赤色オプシン)の変異によ
ア)で進化した。最初の植物はこれを細胞内に取り
深津武馬(産総研)
る環境への適応が種分化の大きな原因の一つとなっ
込んだ。この葉緑体が確立した現象を一次共生とい
ここ10 年ほど、進化発生学(Evo-Devo)の発展
ていることを突き止めた。
い、このときに生まれた植物の子孫が緑色と紅色の
は目を見張るものがあります。ホメオボックスの発
―モデル解析によるアプローチ
植物である。次に、緑色と紅色の植物と他の従属栄
見に始まる進化学と発生学の再会は、それまでに無
○荻原直道、中務真人(京都大・院・理)
人工細胞造りから迫る生命の起源
養生物との共生が起こった。この共生を二次共生と
かったどのような新しい概念を創出しえたのか?
四方哲也(大阪大学情報科学研究科)
いい、現在の植物の3 分の2 はこうして植物になっ
現在の課題は何か? ――まず倉谷滋氏(理研CDB)
たものである。二次共生は現在も進行しており、植
に動物を中心として考えたエボデボ観を講義しても
物の多様化をさらに進めている。
らい、その講義内容をふまえ、植物を中心としたエ
生命はどのように誕生したのであろうか? 生命
が誕生する前に、自己を複製する触媒活性をもった
経・脳・行動からロボットへ―
神崎亮平(東大・先端研)
総合討論
S1-2 コオロギの社会的経験による行動の発現と
切り替え―行動モデルの構築にむけて
○青沼仁志(北大・電子研)、太田 順(東大・院工)
進化学・夏の学校
S1-3 コオロギの適応的行動選択を実現する内部
モデル構築に向けて
―その現象の不思議と存在意義―
大須賀公一(神戸大)
S1-5 ヒトの直立二足歩行の起源を探る
S2
菌類と動植物との間で見られる相互作用と共
進化
企画:村上哲明(首都大学東京・牧野標本館)、佐藤博俊
RNA が現れ、様々な分子が相互作用しながら、複
ボデボ観を長谷部光泰氏(基生研)に講義してもら
雑な化学反応ネットワークが創られると考えられて
います。その後、深津武馬氏(産総研)の司会の
菌類は動植物とさまざまな形で相互作用をし、動
いる。そして、それらの反応集団が小さな脂質膜小
もと、お二人を含めて、会場のみなさまとエボデボ
植物と共進化してきたと考えられている。例えば、
(京大・院理・植物)
14
日本進化学会ニュース Nov. 2007
トレス応答
マツタケのような菌根菌は、アカマツ等の宿主植物
○吉村和也(中部大・応用生物)、田部記章、木村彩子、
どの冬虫夏草類は、昆虫やクモ、あるいは生きた樹
重岡 成(近畿大・院バイオ)
S5
木に寄生して、その生物を殺して栄養を得ている。
S3-3 ハゴロモ遺伝子のスプライシングパターン
企画:曽田貞滋(京都大・院・理)
は宿主因子によって制御されている?
和田 洋(筑波大・院環境生命)
適応的分化と生殖隔離
地理的集団間、集団内の適応的分化は、生殖隔
ら餌資源として利用されている。このように菌と動
岡田典弘(東工大・生命理工)
離につながる重要な形質進化をもたらすことがあ
植物との相互作用と共進化の関係は実に多種多様で
S3-4 ゼブラフィッシュ胚発生における
る。このワークショップでは、系統地理学や機能生
ある。本シンポジウムでは、菌根菌と植物の共生関
係、ならびに菌類と菌食性昆虫との共進化関係を特
が果たした役割
秋佐夫(理研 GSC、国立情報研)
と栄養分を交換して菌根共生している。セミタケな
逆に、サルノコシカケ類は、しばしば菌食性昆虫か
15
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
fibroblast growth factor 遺伝子の選択的
態学の観点を取り入れた適応的分化の実証研究を紹
スプライシング
介する。さらに適応分化が分化した集団間の生殖隔
S6-4 円口類の発生から見た顎口類への進化の道
筋
倉谷 滋(理研・ CDB)
ワークショップ
に重点的に取り上げ、菌類と動植物との多様な相互
弥益 恭(埼玉大学・院理工・生命)
離につながるかどうかについて分析・考察する。
WS01
作用と共進化関係について包括的に考える。
S3-5 スプライシング異常によるヒト疾患
S5-1 貝に住むシクリッドの生態的種分化
企画:奈良武司(順天堂大・院医・生体防御寄生虫)
S2-1 外生菌根菌オニイグチ属の宿主特異性の進
今泉和則(宮崎大学・医学部)
高橋鉄美(京都大・院理)
S3-6 真核生物の遺伝子構造とタンパク質立体構
S5-2 アイナメ属 3 種の生息地隔離と人為的生息
化について
地改変によるその崩壊
造・機能の関係
佐藤博俊(京都大・理・植物)、村上哲明(首都大学東京・
パラサイトの寄生適応と進化
自然界において「寄生」は極めて普遍的な生活様
式であり、ほぼ全ての生物分類群で独立にパラサイ
ト(寄生体)が出現している。しかし、寄生の生物
牧野標本館)
○由良 敬 (原子力機構)、塩生真史 (長浜バイオ大)、
○木村幹子(北大・環境科学)、宗原弘幸(北大・ FSC)
学的バックグラウンドは生物種によって異なり、宿
S2-2 分布パターンから探る菌根共生菌の多様性
郷 通子(お茶の水女子大学)
S5-3 マイマイカブリの採餌形態の適応的分化
主環境もまた極めて多様である。パラサイトの多様
○小沼順二、千葉 聡(東北大・院生命)
性とそれを支える分子機構を理解することは、生物
S5-4 オオオサムシ亜属のサイズ分化と機械的生
進化そのものを理解することに他ならない。本ワー
創生メカニズム
広瀬 大(筑波大・管平センター)
S4
S2-3 アーバスキュラー菌根菌が植食者と宿主植
企画:佐藤矩行(京大・院理)
物に与える影響について
動物進化のゲノム基盤
殖隔離
クショップでは真核性パラサイトの寄生適応戦略と
○長太伸章(京都大・院理)、久保田耕平(東大・院農)、
その進化的背景について、集団遺伝学、分子生物
西田貴明(京都大・生態研)、大串隆之(京都大・生態研)
の進化を論じるためには、ゲノム塩基配列の決定と
八尋克郎(琵琶博)、曽田貞滋(京都大・院理)
学、比較生化学のアプローチから得られた最新の知
S2-4 きのこの防御と菌食性トビムシの食性分化
それを元にした生物情報の理解が必須である。動物
S5-5 キスゲとハマカンゾウの送粉適応と生殖隔
見を取り上げ、パラサイト学と進化学の融合を図り
中森泰三(放射線医学総合研究所)、鈴木 彰(千葉大・
では 1998 年の線虫 C.エレガンスを初めとして、こ
教育)
れまでに進化を理解するための鍵を握るさまざまな
○新田 梢、安元暁子、矢原徹一(九州大・院理)
WS01-1
S2-5 菌食性昆虫の群集生態について
動物のゲノムが解読され、その流れは加速してい
S5-6 クロテンフユシャクの同所性異時的集団の
早川敏之(阪大・微研)
山下 聡(総合地球環境学研究所)
る。本シンポジウムでは、これまでに得られたゲノ
ゲノムは生物の遺伝情報の全てを包含する。生物
ム科学的知識をもとに、動物進化のゲノム基盤を議
S3
イントロンが可能にする生命現象の多様性
企画:郷 通子(お茶の水女子大学)、由良 敬(原子力
離
成立過程
化
機構)
WS01-2
マラリア原虫と宿主の共進化史
マラリア原虫 SERA 遺伝子ファミリー
の系統進化
○山本哲史、曽田貞滋(京都大・院理)
論する。
S4-1 立襟鞭毛虫・ゲノムと多細胞動物体制の進
たい。
有末伸子(阪大・微研)
S6
発生と進化:最近の話題から
WS01-3
人体寄生性原虫 Toxoplasma
内カルシウムの濃度調節機構
遺伝子のイントロン・エクソン構造は、真核生物
○岩部直之(京大・院理)、隈 啓一(情報研)、加藤和
多様な形態の進化の背景には、形態形成システム
ゲノムにコードされている遺伝子に特徴的な構造で
貴(九大・デジタルメディシン)、菅 裕(バーゼル大)、廣
の変更があり、その形態形成システムはゲノムに書
○永宗喜三郎(Washington
ある。イントロンが発見されて以来その存在が細胞
瀬 希(京大・院理)、藤 博幸(九大・生防研)、岡田雅
かれた遺伝情報によって精密に制御されている。し
免疫不全)、Eduardo
や個体の機能に対して、どのような役割を果たして
人(阪大・微研)、笠原雅弘・森下真一(東大・院新領
たがって、形態の進化を理解しようとするとき、形
L.David
いるのかが研究されてきた。さらにイントロンの存
、小原雄治(遺伝研)、藤山秋佐夫(情報研)、宮田
域)
態と形態形成システム、ゲノム情報の結びつきを調
WS01-4
在が真核生物の進化にどのような影響をもたらした
隆(生命誌研究館)
べていくことが不可欠である。形態形成システムの
かを知ることも、重要な課題である。本シンポジウ
S4-2 ホヤとナメクジウオ・ゲノムと脊索動物の
変更が、どのような遺伝子進化のダイナミズムの中
坂元君年(東大・院医)
で生み出され、形態の進化をもたらしたか、最新の
WS01-5
進化
ムでは、イントロンの存在が生命の多様な状態とど
のようにかかわっているのかを、タンパク質の機能
佐藤矩行(京大・院理)
知見を紹介し、議論する。
にもたらす影響、多様な環境への対応、進化、およ
S4-3 メダカゲノム解析から見えてきた条鰭類祖
S6-1 プラナリアの脳形成を制御している遺伝子
先染色体の構成とゲノム進化
び疾患などの観点から概観する。
S3-1 植物 SR タンパク質に見られる選択的スプ
ライシング
○飯田 慶(University of California Riverside)、郷 通子
(お茶の水女子大学、長浜バイオ大)
S3-2 選択的スプライシングによる植物の環境ス
Univ., St.louis、阪大・微研・
N.Chini(Mayo
Clinic, Rochester)、
Sibley(Washington Univ., St.louis)
回虫ミトコンドリア複合体 II 遺伝子の
重複と低酸素適応
トリパノソーマにおける遺伝子水平転
移と寄生適応
奈良武司(順天堂大・院医・生体防御寄生虫)
プログラム
○成瀬 清(基生研・バイオリソース)、武田洋幸(東大・
○梅園良彦、阿形清和(京大・院・理)
WS02
院理)
S6-2 昆虫の発生メカニズムの進化
企画:小倉 淳、五條堀孝(国立遺伝学研)
S4-4 テロメア領域からみた、ヒトと類人猿のゲ
三戸太郎、大内淑代、○野地澄晴(徳島大・院ソシオ
ノム比較
黒木陽子・豊田 敦、辰本将司(理研 GSC)、○藤山
gondii
における植物ホルモンを用いた細胞質
企画:和田 洋(筑波大・院環境生命)
眼の起源と進化
眼の進化は単に一器官の発達にとどまらず、生物
テクノサイエンス)
の生存戦略の変化を促し、生物の進化そのものに大
S6-3 脊椎動物の進化にドメインシャッフリング
きな影響を与えてきた。近年 Pax6 の発見を端に、
16
日本進化学会ニュース Nov. 2007
る
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
17
タが統合され、高精度の配列情報も利用可能となり
には正の相関があることが示唆される。つまり、よ
スが入れられ、眼に関わる様々な遺伝子の進化学的
松本俊吉(東海大・総合教育センター)
つつある。このワークショップでは、カイコゲノム
り甘い制御を受けてより大きく揺らいでいる生命シ
知見が蓄積している。本ワークショップでは、生物
WS03-4 『選択のレベル』をどう捉えるか
から見えてきた進化生物学的な新しい知見、とくに
ステムの集団はより大きな遺伝的多様性から由来す
における眼の起源に着目し、眼の進化に関わる最前
田中泉吏(京大・院文)
他生物のゲノムとの比較や、環境や寄主植物への適
る表現型多様性を許容することを意味する。このワ
線の研究事例を紹介し、今後の眼の進化研究にはど
WS03-5
応に関連した遺伝子群についての話題を提供し、ゲ
ークショップでは、この関係をサポートする理論、
ノムの進化と昆虫の適応進化との関係を議論した
およびワディントンの遺伝的同化、ボールドウィン
い。
効果、安定性進化などとの関係も含めて金子邦彦氏
生物、遺伝子発現、ゲノムなどあらゆる観点からメ
のような戦略が必要になるか討論したい。
WS02-1
人間行動の進化:行動と心理
中尾 央(京大・院文)
遺伝子発現から見たカメラ眼の起源と
進化
WS04
DNA 塩基配列に基づく分類とその問題点
WS05-1
カイコ高精度統合地図作成
に平易に説明をしてもらい、議論する。四方がそれ
小倉 淳(遺伝研)
企画:伊藤元己、神保宇嗣(東大)、藤井 恒(日本
○三田和英、山本公子、門野敬子、野畑順子、生
に関連する実験を紹介し、展望を議論する。
WS02-2
チョウ類保全協会/京都学園大)
川潤子、笹沼基恵、笹沼俊一、末次克行(農業生物
WS06-1
ホヤの光受容システムから探る脊椎動
物の頭部感覚器官の起源
DNA 塩基配列情報とそれに基づく系統推定の導
WS05-2
生命システムが示す表現型揺らぎと集
団が許容できる遺伝的多様性との関係
、南 博、下村道彦(三菱スペースソフト)
資源研)
カイコゲノムから見える遺伝子の水平
金子邦彦(東京大学・総合文化、ERATO ・ JST)
移動
WS06-2 遺伝子発現揺らぎの進化適応への影響
日下部岳広、津田基之(兵庫県立大・院生命理)
入は、分類学的研究の発展に少なからぬ影響を与え
WS02-3
オプシンから見た光受容システムの進
てきた。また、同定作業にも塩基配列情報が積極的
化
に導入され始めており、特定の短い塩基配列を同定
○嶋田 透、大門高明、孟 艶、吉永武史、勝間
小柳光正(大阪市立大)
に利用する手法「DNA バーコーディング」に注目
進(東大・院農)、三田和英(農業生物資源研)
WS02-4
眼の機能にかかわる色素細胞の機能進
が集まっている。しかし、分類や同定に分子情報を
WS05-3
化
利用することが一般的になったのは最近のことであ
四方哲也(阪学・情報・バイオ情報工)
カイコゲノムの解読と動物ゲノムの進
WS07
化解析
企画:池上高志(東大院・総合文化)
意識の進化
矢野由希子、田沼 亮、築地長治(東北大・院生命科
り、実際にはまだ多くの問題点が残されている。本
笠原雅弘、中谷洋一郎、○森下真一(東大・院新領域)
、菅野江里子、富田浩史、玉井 信(東北大・先
学)
ワークショップでは、塩基配列情報に基づいて生物
WS05-4
、小倉 淳(遺伝研・生命情報 DDBJ)、峯田克
進医工学)
彦(北大・院情報)、池尾一穂、五條堀孝(遺伝研・生命
、石黒誠一(弘前大・農生)、○山本博章(東
情報DDBJ)
とで、分類学的情報の提供者と利用者双方の理解を
○尾崎克久(JT 生命誌研究館)、宇戸口愛(JT 生命誌研究
よるmachine consciousness、言語進化に絡めてみ
北大・院生命科学)
深める場としたい。
、中 秀司、吉川 寛(JT 生命誌研究館)
館、阪大・院理)
る意識進化、カオス的遍歴としての意識、クオリ
WS02-5
WS04-1
チョウ類における DNA 配列相違度と
WS05-5
ア、contingency、そうした話題をとりあげて、意
種・亜種分類
○諏訪牧子(産総研・生命情報工学 RC)、東原和成(東
識の進化問題を議論する。
大・院新領域創成)
WS07-1
プラナリアからみた眼の進化
いを考えつつ、意識/自意識の問題に、脳科学から
を分類・同定する際の問題点について、その概念的
protein(CSP)遺伝子のクラスター構
見た意識研究の周辺研究に注目して議論をしたいと
背景から実際の研究まで幅広く取り上げ議論するこ
造と2 種間 synteny
思います。フレーム問題としての意識、ロボットに
阿形清和(京大・院理)
八木孝司(大阪府大・院理・先端)
WS03
哲 学 はなぜ進 化 学 の問 題 になるのか
WS04-2
(パート2):
生物学の哲学のさらなる展開
企画:三中信宏(農環研/東大・院農生)
生命であること、意識を持っていること、この違
カイコとナミアゲハの Chemosensory
DNA に基づく分類の有効性と問題点
―特にチョウ類を例として―
矢後勝也(東大・院理・生物)
WS04-3
DNA バーコーディング:分子情報に基
づく同定支援技術とその利用法
昨年の大会での生物学哲学のシンポジウムに引き
昆虫の7 本膜貫通へリックス型受容体
自己意識にとって記憶とは何か
岡ノ谷一夫(理研 BSI)
WS06
単一遺伝子型の示す表現型の揺らぎと遺
WS07-2
伝的多様性による揺らぎに相関はあるか?
藤井直敬(理研 BSI)
企画:四方哲也(大阪大学・情報科学・バイオ情報工学)
単一の遺伝型であっても生命システムは揺らいで
WS07-3
脳機能理解のための多面的戦略
生命=意識化という不断の反転
郡司 ペギオ
幸夫(神戸大・理)
続き、今年のワークショップでは進化プロセスに関
吉武 啓(東大・院新領域)
いることは知られている。たとえば、ある遺伝子の
WS07-4
わる概念的問題を生物学哲学の側面から論議する。
WS04-4
DNA barcoding で【種】は延命でき
発現量は単一環境下で同じプロモータ支配下であっ
柳川 透 (東工大・院総合理工)、茂木健一郎 (Sony
る?
ても10 倍程度ばらつく。この揺らぎを単一遺伝子
CSL)
WS07-5
具体的には、自然淘汰と中立進化をめぐる「淘汰単
位」をめぐる論争、「遺伝的浮動」の批判的検討、
三中信宏(農環研/東大・院農生)
型が単一環境で示す表現型の分散(Vp)と定義し
そしてヒトの行動や心理に関わる「適応」を中心テ
WS04-5
ロボット構成論からの意識の問題への
分子情報に基づいて認識された植物の
て、その進化学的な意味を議論する。これまでに伊
ーマとする。進化生物学の重要な論点を哲学の視点
隠蔽種を分類に反映させる上での問題
藤らの進化実験の結果、表現型の平均値の変異と選
谷 淳(理研 BSI)
から見ることの意義がワークショップ全体の共通軸
点
択による一世代あたりの変化(進化速度)は表現型
WS07-6 意識と身体性
のゆらぎVp は比例することが知られている。これ
池上高志(東大・院薬)
は、より大きく揺らいでいる生命システムは変異に
議論
をなしている。
WS03-1
村上哲明(首都大・牧野標本館)
生物学哲学と進化生物学はともに変遷
してきた:自然淘汰と適応をめぐる論
争のルーツと系譜
WS05
カイコゲノムの解析から見える昆虫の
よってより早く進化することを示している。一方
適応進化
アプローチ
で、同じ定義の進化速度は集団内の遺伝的多様性に
WS08
三中信宏(農環研/東大・院農生)
企画:三田和英、川崎建次郎(農業生物資源研)、嶋田
由来する表現型多様性 Vg に比例することが知られ
企画:鈴木善幸(国立遺伝学研)
WS03-2
透(東大・院農)
ている(フィッシャーの定理)
。Vg は集団内に存在
近年の多様な生物種におけるゲノム情報の蓄積
カイコゲノムの解読では、日本と中国で別々に実
する異なる遺伝型の示す表現型の平均値の分散であ
と、自然選択検出に関する方法の乱立とソフトウエ
施されたホールゲノムショットガンによる配列デー
る。この二つの定理がともに正しければ、Vp とVg
アの普及によって、ゲノムレベルでの自然選択圧の
遺伝的浮動はフィクションか?
森元良太(慶応大・文)
WS03-3
遺伝子選択主義をめぐる論争を評価す
ゲノム情報を用いた自然選択圧の検出
18
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
19
検出が可能となり、特にゲノム配列決定の論文には
ム決定を嚆矢とし、2005 年にはイネの全ゲノム配列
Chomsky, Fitch(2002)による言語進化研究の枠組
WS11-2
必ずと言っていいほど、自然選択圧を受けている蛋
決定計画が完了した。加えて、これらの種では完全
みを示した論文が多大な貢献をしていることは確か
松井正文(京大・院人環)
白質コード遺伝子の網羅的な解析がなされている。
長cDNA の配列が日本のグループを中心に大量決定
である。しかしこの論文の指摘により、言語起源研
WS11-3
また、非コード領域の重要性が認識されるに伴い、
されていることから、正確なゲノムアノテーション
究の多くが、再帰性の検討に傾けられてしまった感
ウルトラ保存領域なども検出されるようになってき
に基づく種間比較解析の進展が期待される。シロイ
がある。我々は、進化学会におけるワークショップ
○細谷忠嗣(京大・院理・動物)、荒谷邦雄(九大・院比
た。しかしながら、これらの結果がどれほど信頼で
ヌナズナとイネはそれぞれ双子葉と単子葉の代表的
としてこれまで3 回にわたり再帰性を重要なテーマ
文)
きるのか、あるいは有用なのかについては、方法に
モデル植物とされ、その全長ゲノムを解析すること
として議論してきた。今回は、再帰性をテーマとす
WS11-4
ついてのコンピューター・シミュレーションによる
によって、高等植物の進化だけでなく育種などの農
ること自体の是非を検討し、再帰性の議論を超えた
評価や、得られた結果についての実験的な評価など
学的な面での寄与も期待される。本ワークショップ
視点を持つことが、今後の言語起源研究をどう推進
○亀田勇一 (京都大・院人環)、細 将貴 (京都大・院
が不十分なため、まだよく分かっていない部分が多
ではまず、植物ゲノムにおけるアノテーションのよ
してゆくかを議論する。
、加藤 真(京都大・院人環)
理)
い。一方、生物学的な仮説に基づいた個々の遺伝子
うな基盤整備や情報の有用化に関して議論したい。
WS10-1
WS11-5
比較認知科学から見た言語進化研究の
さらに、これらの種のゲノム進化解析に携わる若手
り、実験との組み合わせにより、面白い発見がなさ
研究者を講演者に迎え、植物ゲノム大規模配列解析
川合伸幸(名大・院情報)
れてきている。本ワークショップにおいては、最近
の最前線を紹介する。
WS10-2
のこの分野における進歩を概観し、展望について議
WS09-1
WS08-1
種分化と生殖隔離
琉球列島における維管束植物の地理的
分化パタン
中村 剛(琉球大・ 21 世紀 COE)
性変動の離散性
岡ノ谷一夫(理研 BSI)
発話とFoxP2 遺伝子
WS12 “哺乳類脳”の進化
企画:岡田典弘(東工大・生命理工)
Natural selection on the influenza
○山崎千里(産総研・生物情報解析研、バイオ産業情報化コ
WS10-3
virus and hepatitis virus genomes
、田中 剛(農業生物資源研)、佐藤慶治、
ンソーシアム)
北野 誉(茨城大・工・生体分子)
っている。大脳皮質の6 層構造はその典型的な特徴
最知直美(産総研・生物情報解析研、バイオ産業情報化コン
WS10-4
言語知識の自己組織化と進化
であるが、そのような哺乳類に特徴的な構造がどの
―言語知識はシャボンの膜か
ようにして出来てきたかということはあまり解って
鈴木善幸(遺伝研・生命情報 DDBJ)
WS08-2
琉球列島産ニッポンマイマイ属陸貝の
動物コミュニケーションに見られる特
イネゲノムの包括的アノテーションと
ゲノム配列解析
論したい。
琉球列島におけるクワガタムシ科の生
物地理
これまでとこれから
についての自然選択圧の解析も依然として重要であ
琉球列島における両生類の系統地理学
哺乳類の脳は爬虫類とは異なる特徴的な構造を持
種内変異と種間変異の対比から見る
、今西 規(産総研・生物情報解析研)、佐々
ソーシアム)
ヒトタンパク質の進化
木卓治(農業生物資源研)、五條堀孝(産総研・生物情報
山内 肇(北陸先端大)
いない。事情を複雑にしているのは、脳そのものの
解析研、遺伝研)
WS10-5
意味変化の一方向性・超越性と、汎
構造がどのようにして出来てきたということ自身が
化・メタファー・メトニミーについて
完全には解明されていない為に、哺乳動物特有の構
○五條堀淳(東大・院理)、Hua Tang(Univ.of
、Joshua
Dept. of Ecol. &Evol)
Dept. of Genome Sci.)、
Chicago,
Akey(Univ. of Washington,
Chung-IWu( Univ.
WS09-2
非線形回帰関数を用いた有用形質原因
遺伝子の物理マッピング
of Chicago,
○橋本 敬(北陸先端大・知識)、中塚雅也(NEC)
造の原因を問うこと自身に元々困難があるという点
である。一方、ゲノム科学の最近の進展により、哺
Dept. of Ecol. &Evol)
○天野直己、小柳香奈子、渡邉日出海 (北大・院情
WS10-6
WS08-3
ハプロタイプを用いた正の自然選択の
報)
井原泰雄(東大・院理)
乳動物に特異的に存在する保存配列が知られるよう
検出
WS09-3
イネのゲノム進化におけるトランスポ
WS10-7
になった。その一部はレトロポゾン由来であるとい
ゾンの役割
福井直樹(上智大・国際言語情報研)
う報告が岡田グループからなされて以来、ゲノム科
総合討論
学の立場から哺乳類脳の成り立ちを問うことが可能
間野修平(名市大・システム自然科学)
WS08-4
ゲノムワイドな淘汰圧の検出と遺伝子
坂井寛章(農業生物資源研)
発現パターンについて
WS09-4
WS08-5
になりつつある。このような立場から、このワーク
WS11
有胎盤哺乳類の非震え熱産生機構に関
○中村洋路、秋山靖人(静岡がんセンター研)、William
与する脱共役タンパク質(UCP1)遺
Martin(デュッセルドルフ大学)
伝子に働いた正の自然選択
WS09-5
○齋藤 茂、齋藤くれあ、新貝鉚蔵(岩手大・工、岩
ヒト言語の特性について
高等植物における遺伝子分裂と遺伝子
融合の頻度
長田直樹(医薬基盤研・生物資源)
文化伝達と言語の起源
琉球列島の生物地理学:最新の知見
企画:疋田 努(京大・院・理・動物学教室)
琉球列島は、西インド諸島に匹敵する種分化のス
ショップでは、現在のこの分野のトップの研究者を
お招きして、現状を討論して頂く予定である。
WS12-1
パターン形成におけるFGF8 の役割
植物ゲノムで直列重複している遺伝子
ポットで、この地域の生物地理学と様々な分類群の
下郡智美(理研・脳科学総合研究センター)
の機能的役割
種分化は、多くの研究者の興味をひいてきた。この
WS12-2
哺乳類型の脳をつくる分子メカニズム
手大・ 21 世紀 COE)
○花田耕介(理研・植物科学研、Department of Plant Biolo-
ワークショップでは、化石種を含む、いろいろな生
野村 真・大隅典子(東北大・医学研究科)
WS08-6
全ゲノム解析を通してみた遺伝子への
gy, Michigan State University)、 Shin-Han
物群について、最新の研究成果を紹介する。
WS12-3
自然淘汰圧
ment of Plant Biology, Michigan State University)
WS11-1
更新世脊椎動物化石から見た琉球列島
相澤慎一(理研・発生生物学センター)
の生物地理
WS12-4
○今西 規、川原善浩(産総研・生物情報解析研、バイオ
Shiu( Depart-
総括
産業情報化コンソーシアム・生物情報解析研)
WS10
WS09
植物ゲノムの大規模配列情報解析
企画:田中 剛、伊藤 剛(農業生物資源研究所基盤研
究領域)
言語の起源と進化Ⅳ:再帰性を超えて
企画:岡ノ谷一夫(理研BSI)、橋本 敬(北陸先端大・
知識)
言語学とその関連領域が現代生物学的視点を持つ
真核生物のゲノム計画は動物や真菌で先行してい
ようになり、言語の起源と進化の科学的な議論が可
たが、植物においても2000 年のシロイヌナズナゲノ
能になってきた。そのきっかけとして、Hauser,
脳形成の比較分子発生
SINE の挿入によって哺乳類脳は作られ
○太田英利(琉球大・熱生研)、大塚裕之(鹿大・名誉教
た?
授)、高橋亮雄、池田忠広、中村泰之 (琉球大・熱生
岡田典弘(東工大・生命理工)
研)
20
日本進化学会ニュース Nov. 2007
大 会 報 告 記
スター発表は109 件となった。シンポジウムは6 件,
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
た。
21
とによって初めて進化についてわかることがあるは
反省など:運営委員会のスタートが遅れ、ギリギ
ずだという一貫した哲学のもとに、すべての構成成
ークショップは第1 日目の午後、第3 日目に開催し、
リの日程で準備を行ったため、差し迫った仕事を片
分を同定済みの、自己複製できる人工細胞の構築に
ワークショップは12 件であった。シンポジウム・ワ
5 会場で並行して開催した。部屋の収容人数が300
付けていくという形で、準備を進めざるを得なかっ
とりくんでいる。井上勳氏は、細胞が他の細胞を内
大会全体についての報告
名、160 名が各 1 室、80 名が 3 室だったので、参加
た。なんとか無事に当日を乗り切ることができたの
部に取り込むことにより光合成などの高度な機能を
疋田 努(京都大学)
者が狭い部屋に集中することが懸念されたが、幸い
は、有能なバイトの院生たちに負うところが大きか
獲得するといういわゆる内部共生進化の、誰も想像
大会実行委員として、今大会運営の具体的な点に
に混んだ状態でも立ち見が出る程度ですんだ。
ついて簡単に報告する。
った。第2 日目に大会の看板を本部正門前に出そう
しなかったような中間段階を具現しているHatena と
口頭発表:従来はポスター発表だけだったが、大
としたところ、テレビドラマのロケが行われていた。
いう単細胞生物を発見し、真核細胞の進化過程に関
実行委員会:佐藤矩行委員長をはじめとする京都
会第 1 日目の午後に3 室にわけて合計 58 件の口頭発
この情報はまったくなかったので対応できなかった。
する議論に一石を投じた。佐藤矩行氏は、われわれ
大学理学研究科の教員5 名で実行委員会を組織した。
表を行った。口頭発表を希望する参加者がかなりい
大学の看板は京都大学から帝都大学に替えられてい
ヒトを含む脊椎動物とは一線を画し、まったく異な
委員の海外出張、耐震工事のための引っ越しなどが
ることがわかった。
た。正門から来られた方は驚かれたかもしれない。
る形態や生活様式をもちながら、系統的には近縁で
ポスター発表:ポスター発表は第2 日目に10:00 ∼
看板を正門から離れたところに置くように頼まれ
あるホヤ類について、緻密な発生生物学からさらに
13:00 に百周年時計台記念館の国際交流ホール1 +2
た。冬のドラマだそうで、夏服の人は撮影している
は全ゲノム解析も主導し、独自のモデル生物系の開
大会の場所:大会会場には京都大学吉田キャンパ
で行われた。ポスターパネルの列間を約 4m あける
場所を通らないで下さいなどといわれたらしい。
発を牽引してきた。
ス北部構内の理学研究科の6 号館と本部構内の百周
ことができたので、会場の広さは適当なサイズだっ
これらの高度な研究におけるアプローチや姿勢か
年時計台記念館の施設を選んだ。大学の施設使用料
たと思う。会場の都合でパネルの搬入が当日 9 時か
公開講演会
ら、進化学徒として学ぶべきことは多い。私自身、
が値上げされたため、会場費の負担が大きく、ホテ
らしかできなかったため、残念ながらポスター発表
の時間をこれ以上とることができなかった。
進化研究の最前線に貢献する
生き物たち
司会をしながらもいろいろなことを考えさせられた。
ルなど外部の会場とそれほど変わらない。しかし、
深津武馬(産業技術総合研究所)
機構や過程を知りたいのは、ビクトリア湖のシクリ
ッドが、なぜ数万年という短期間のうちに、ほとん
重なったため、動物学教室の大学院の学生諸君に準
備段階から手助けしてもらった。
用具などの利用については料金がかからない点、学
高校生ポスター発表:高校生ポスターについて
特に驚きであり、まだ信じられない気もして、その
内の施設は準備が楽な点など、学内施設を利用にも
は、メールサーバーのトラブルで申し込みのメール
大会2 日目の午後、美しい京都大学の時計台百周
まだ利点がある。施設利用については建物管理事務
が届かなかったため、参加者と関係者に迷惑をおか
年記念ホールを会場に、本大会最大のシンポジウム
ど同所的な環境の中であれほどまでの多様化をなし
職員が親切だったので、たいへん助かった。大会会
けしたが、なんとか復旧して、大会までに連絡を取
である公開講演会「進化研究の最前線に貢献する生
とげえたのかということである。生物というのは、
場費は約 77 万円だったが、公開講演会をグローバ
ることができた。参加ポスター発表は 13 件であっ
き物たち」が開催された。
ちょっと構造化された環境があれば、意外と短期間
ルCOE プログラム「生物の多様性と進化研究のた
た。
進化とは、生物の変化、多様化をともなう過程で
のうちにあっさりと種分化してしまったりするので
ある。それゆえに進化学研究者は、すでに確立され
あろうか? 実験的に同所的種分化にアプローチで
めの拠点形成―ゲノムから生態系まで」との共催と
大会参加者数:大会参加者は508 名で、事前に登
して、会場費の一部10 万円を負担してもらった。施
録、会費を納入したものが298 名、非会員の招待講
たモデル生物(大腸菌、酵母、ショウジョウバエ、
きないかと四方氏にボールを投げてみたところ、微
設の収容人数などのため、会場を離れた2 カ所にせ
演者27 名、高校生とその付添が49 名、事前登録し、
線虫、シロイヌナズナ、マウス……)を駆使するこ
妙にかわされたのか、それともすでに構想している
ざるをえなかったため、1 日目、3 日目を北部構内
当日会費を納入したものが45 名、当日参加者が89
とにより得られてきた知見や恩恵を享受するのみな
のか、あるいはもう着手しているのか、わからない
理学研究科 6 号館、2 日目を本部構内百周年時計台
名だった。予想したよりも当日参加者が少なかっ
らず、自らの関心をその他の多様な、既存のモデル
応答であったが、創発的な種分化をおこさせてその
記念館とした。2 日目に場所を間違えた人が少数い
た。当日参加者は学生会員が30 名、一般会員が25
生物には存在しないような興味深い現象を内包する
過程を観察し、解析するという実験進化学的なアプ
たようである。案内などをもっと徹底すべきであっ
名、非会員が34 名だった。学生会員が多いのは学
“非モデル生物”に広げていくことを志向する。し
ローチは、とても野心的に思えるけれど、実は有望
た。また、室内での案内については十分だったと思
生の場合、入会して学会費と参加費を払う方が、非
かし単に広く浅く食い散らかすだけでは物事の本質
なのではないかという気もちょっとしてきたのであ
うが、会場までの案内が少なく、場所がわかりにく
会員としての参加費よりも安くなるので、会員にな
的な理解はなかなか望めない。興味深い非モデル生
る。
いとの指摘があった。
ることを勧めたためである。
物を自家薬籠中のものとし、新たな独自のモデル系
学会中の夜、一緒に司会をした長谷部光泰氏と飲
懇親会:懇親会の会場はポスター会場と同じ国際
として育て上げることが、1 つの理想的な形となろ
みながら、
「きっと僕の研究が面白いんじゃなくて、
なく、外注の予算も無かったので、実用本位のデザ
交流ホール1 + 2 である。参加者は201 名であった。
う。その域まで到達することはなかなか容易ではな
実は僕が研究している生き物たちがすごく面白いだ
インとした。英語版を作製する余裕はなかった。大
事前に登録して懇親会費を支払ったものが156 名、
かろうが、少なくともそのような意識や姿勢を絶え
けなんだよね…」と独白している自分がいた。これ
会参加受付は、前年度のシステムを手直ししたもの
登録のみで当日に会費を支払ったものが24 名、当
ず頭の隅においておくことは重要なのではないか。
は自嘲ではなく、多様かつ魅力的な生き物への憧憬
日参加が21 名であった。懇親会参加者を約200 名と
本講演会の演者たちは、まさに独自のモデル生物
の念の発露であった(はずである)
。これからも進
予想し、さらに20 名ぐらいは受け入れることができ
系を開拓して、生物進化へ斬新なアプローチや観点
化学会という場で、多くの方々がわくわくするよう
るようにと料理等を注文していたので、食べ物が不
を提出してきた方々といってよいだろう。岡田典弘
な多様な生物現象と出合い、取り組んでいくことに
なるだろう。そのような背を押せる契機として、本
大会ホームページ: HP 作製準備の時間があまり
をそのまま利用した。
(http://zoo.zool.kyoto-u.ac.jp/zsys/sesj09/index.
html)
大会プログラム:今回は例年の大会と異なり、当
足したり、余りすぎると言うこともなかった。持ち
氏は、自然界における急速な種分化の実験場ともい
初は一般講演を口頭発表のみで企画したのだが、ポ
込みで旨い酒を数本提供したが、好評だったようで
うべきアフリカはビクトリア湖のシクリッド類につ
学会の公開講演会やシンポジウムが機能してくれれ
スター発表の要望があり、最終的には両方を募集し
ある。
いて、分子レベルのアプローチから種分化に関わる
ば、企画した執行部としては望外の喜びなのであ
る。
た。口頭発表希望は58 件だったので、どちらでも
展示:今回は出版社2 社(共立出版、京都大学出
機構を追求してきた。四方哲也氏は、生命を分析す
よいとした発表者をすべてポスター発表とした。ポ
版会)のみの展示で、企業等の展示は行わなかっ
るばかりが能ではない、一から生命を創り上げるこ
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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進化学夏の学校
状況に対し柔軟性が高いとはいえない。そこでこの
修飾物質が重要な働きをしているとの研究結果を示
態や構造の差異が二足歩行運動に与える影響をヒト
エボデボから見えてきたもの
―進化発生学の現状と展望記
特定領域では、生物の適応的行動の理解から工学の
し次の講演につなげた。川端氏らの講演では、代表
のそれと対比的に検証することを通して、ヒトの二
設計思想を展開できないか、工学的手法の導入で生
的な神経修飾物質であるNO はcGMP の生成に影響
足歩行の起源の本質に迫ろうとしている。
長谷部光泰(基礎生物学研究所)
物の適応的行動の理解が深まらないかとの両観点か
を与える(NO/cGMP カスケード)
、オクトパミン
総合質疑で、本シンポで紹介された工学系の数理
今年度の進化学・夏の学校は大会初日の朝という
ら研究が進められている。
濃度に対しても影響を与えるなど生理学的な知見を
モデルは、進化生態学や集団遺伝学のそれに比べ、
ことで、佐藤矩行大会委員長の開会の挨拶の後、午
シンポではまず、
「昆虫脳にひそむ環境適応能―
紹介したあとで、NO/cGMP カスケードによる行動
実際の研究対象に合わせた厳しい制約条件を科した
前 9 時半より開講した。「エボデボから見えてきた
遺伝子・神経・脳・行動からロボットへ―」と題し
選択モデル(個体の内部状態を記述する数理モデ
ものである点が特徴であること、計算と実際の生物
もの―進化発生学の現状と展望」というタイトル
た、神崎亮平氏(東大・先端研)の講演から始ま
ル)を構築する構成論的アプローチによる解析を行
の照合で終わらず、実ロボットを作り数理モデルを
で、教科書的な講義ではなく、発生進化学の面白さ
った。この研究はいわゆる神経行動学に分類される
っている。2 つの講演で、個体内部の力学(生理学)
検証する試みが新鮮であることなどが議論された。
を異分野あるいは初学者にも、講演者の熱意から体
ものだが、内容は「移動知」の研究の典型で過激で
と個体と社会を繋ぐ力学(社会生理学)の両方が展
ただ、初日の早朝ということで、聴衆が少なかった
感していただき、興味を持って、自ら研究を切り開
ある。生物がいかにして、さまざまに変化する環境
望された。
のが残念であり、来年度以降の大会でも関連企画を
いていただくことを目的に行った。
提案していきたい。
下で適応的な行動を発現できるのか。講演者はその
4 番目と5 番目の講演は、ヒトの身体の運動に関
倉谷滋氏(理化学研究所発生・再生科学総合研
際の、脳の仕組みとして理解するために、カイコガ
連する研究発表であった。人がなぜどのように直立
究センター)はまず、相同性の概念と発生進化学に
のフェロモンによるメス探索行動をモデルに研究し
二足歩行するようになったのかは、科学の古典的テ
おける重要性と問題点を、その歴史やさまざまな例
てきた。行動を分析し、さらにその行動を解発する
ーマである。まず、大須賀公一氏(神戸大)が、
を駆使して指摘した。そして、基本形態であるボデ
脳を構成する個々のニューロンの構造と機能の網羅
「受動的動歩行―その現象の不思議と存在意義―」
ィープランからどのように派生することによって新
的分析とデータベース化を進め、そしてその情報を
と題した生物学者には耳慣れない非常にユニークな
規形態が進化してきたのかを、カメの甲羅ができる
もとにした神経回路をモデル化する。ここまでは神
話題を提供された。アクチュエータ(モーターなど
本シンポジウムでは、菌根菌と植物との共生関
メカニズム解明を通して議論した。次に私が倉谷氏
経行動学の従来的なアプローチである。この研究が
の動力機)を持たず緩やかな坂道を歩き下る受動的
係、および菌類と菌食性昆虫との共進化関係の研究
【S2】
菌類と動植物の間で見られる
相互作用と共進化
佐藤博俊(京都大学)
の話を受けて、動物と植物の発生進化の違い、とり
すごいのは、神経回路のモデルを実際のロボットに
動歩行という現象は古くから知られていて、人の二
から、菌類がいかに強く、また多様な形で動植物と
わけゲノム解析から明らかになった動物と植物にお
組み込み、このロボット雄カイコ(センサーである
足歩行の本質的な原理が隠されているのではないか
相互作用しているかを示すことを主目的とした。
ける発生遺伝子系の違いについて議論した。さら
触角は本物のカイコのものなので正確にはサイボー
と注目されているそうである。にもかかわらず現象
まず、企画者の佐藤が、
「外生菌根菌オニイグチ
に、会場からの質問に加え、個々の発表に対して、
グ雄カイコ)が実際の雄カイコのように振る舞い雌
が有している安定性についての詳細な理論解析は十
属の宿主特異性の進化について」という演題で発表
深津武馬氏(産業技術総合研究所)がポイントとな
に定位できるのかなど、様々な状況下で検証や評価
分になされておらず、
「なぜ安定なのか?」という
し、菌類と植物との共生の一形態である菌根共生に
る点、問題点を指摘し、質疑を通しながら、聴衆の
をおこなった点である。このアプローチの利点は、
疑問には完全には答えられていないという。講演者
ついての話題を提供した。この発表で、菌類は形態
理解を深めることに成功したように思う。
昆虫自身の運動出力により得られる感覚情報とは異
はその部分的な解として運動を安定化させるフィー
が極めて単純であることから、隠蔽種、すなわち形
なる感覚情報を昆虫にフィードバックすることで、
ドバックループが2 重に脚という構造に内在してい
態的には区別がつかないが生殖的に隔離されている
者の集まりであるが、シンポジウム、ワークショッ
昆虫の脳がいかに適切な運動制御を行えるかを計測
るという事実を示唆し、それらを「Implicit Feed-
種が多数存在すること、隠蔽種を識別することで菌
プは専門化しており、異分野研究者の話を聞く機会
できるところにある。
back Structure」と呼んだ。さらに二脚だけでなく
根菌では従来考えられていたよりも宿主植物に対す
る特異性が高い可能性を示した。
進化学会は、進化に関わるさまざまな分野の研究
はあっても、深く議論する機会はほとんど無いよう
次に、2 つの関連テーマの講演:青沼仁志氏(北
四脚ロボットの受動的動歩行も実ロボットやシミュ
に思われる。そんな点で、今回の「夏の学校」での
大)と太田順氏(東大)による「コオロギの社会的
レーションで解析している。これらの安定性の要因
広瀬大氏(筑波大・菅平センター)は、
「分布パ
質疑は、進化学会大会の今後の運営を考える一つの
経験による行動の発現と切り替え―行動モデルの構
を解析することで、ほ乳類が歩行を獲得した理由が
ターンから探る菌根共生菌の多様性創生メカニズ
ヒントを与えてくれているように思った。
築にむけて」と川端邦明氏(理化学研)らによる
解明されるのではないかと展望を述べている。これ
ム」と題して、外生菌根菌ベニハナイグチとエリコ
「コオロギの適応的行動選択を実現する内部モデル
に対し、5 番目の講演は実際の生物を用いた歩行の
イド菌根菌Oidiodendron 属菌の分布パターンと遺伝
構築に向けて」が行われた。ここでは生物が同種他
研究である。荻原 直道氏と中務 真人氏(京大)は、
的多様性についての話題を提供した。宿主特異性の
【S1】
移動知―ロボット工学的手法による
動物の適応的行動の理解
個体からなる『社会環境』の変動にいかに柔軟に対
「ヒトの直立二足歩行の起源を探る―モデル解析に
高いベニハナイグチは、最終氷期に宿主であるゴヨ
応しているのかという仕組みの解明がテーマである。
よるアプローチ 」いう講演を行った。現代のとく
ウマツ類と同様の分布変遷をたどったということを
辻 和希(琉球大学)
オスのコオロギは、他のオスと出合うと相手の体表
に工学的手法を援用した計測・分析技術の進歩は、
分子生物地理の観点から示した。一方、宿主特異性
このシンポは、H17 年にスタートした生物学と工
物質が鍵刺激となり喧嘩行動を発現する。喧嘩が終
歩行運動の研究に新たな展開をもたらしている。講
が相対的に低いOidiodendron 属菌は、宿主のツツジ
学の連携により動物の適応的行動の理解を目指す特
決すると負けた個体はその後喧嘩を回避するように
演者らは化石資料を補完する研究として、猿まわし
科植物各種の分布変遷とはそれほど対応しない分布
定領域研究「身体・脳・環境の相互作用による適
なる。一方、各個体の行動とその集合である集団全
の芸ザルとして調教を受けたニホンザルが後天的に
変遷をたどったことを示した。
応的運動機能の発現―移動知の構成論的理解―」
体の性質は飼育密度で大きく異なる。最初の講演で
獲得する二足歩行に注目することで、ヒトの直立二
西田貴明氏(京都大・生態研)は、
「アーバスキ
(略称、移動知)の進化学者への紹介と研究者間交
は個体の行動切り替え規則から密度に伴う集団全体
足歩行機能とそれに適応した筋骨格構造の進化を理
ュラー菌根菌が食植者と宿主植物に与える影響につ
流を意図し企画された。現代ロボット工学の発達は
の変化を説明するシミュレーションモデルを紹介し
解することを目指して研究を進めている。具体的に
いて」という演題で、アーバスキュラー菌根菌、宿
目覚ましい。しかし、ロボットが示す振る舞いは、
た。また、この喧嘩と回避という個体の行動切り替
は、計算機内に構築したニホンザルの筋骨格系の数
主植物であるミヤコグサおよびミヤコグサの食植者
進化が生んだ動物のそれより、現実世界で生じる諸
えには、脳内の一酸化窒素や生体アミンなどの神経
理モデルを用いてその運動を分析し、筋骨格系の形
のナミハダニの三者系についての話題を提供した。
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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選択的スプライシングのメカニズムの複雑化が体表
日本がリードしつつある研究に注目し、次の4 つの
成することによって、ミヤコグサは誘導抵抗性を迅
の多様性とシクリッドの多様性を生み出しているら
講演を行い議論した。
速に発現させることを示した。さらに、アーバスキ
しい。弥益恭氏はゼブラフィッシュ胚発生における
1.岩部直之他11 名「立襟鞭毛虫・ゲノムと多細胞
イントロンが可能にする
生命現象の多様性
繊維芽細胞成長因子遺伝子の選択的スプライシング
動物体制の進化」
を綿密に解析された。選択的スプライシングによっ
2.佐藤矩行「ホヤとナメクジウオ・ゲノムと脊索
動物の進化」
衛の効果が大きく異なるという興味深い結果も提示
郷 通子(お茶の水女子大学)、
由良 敬(日本原子力研究開発機構)
てできる二つのアイソフォームは、胚における局在
部位がまったく異なるとともに、異なる受容体を介
3.成瀬清・武田洋幸「メダカゲノム解析から見え
した。
タンパク質をコードする遺伝子のイントロン・エ
したシグナル伝達に関与していることが明らかにさ
てきた条鰭類祖先染色体の構成とゲノム進化」
西田氏は、ミヤコグサがアーバスキュラー菌根を形
ュラー菌根を形成すれば、ナミハダニによる食害を
軽減できているというわけでは必ずしもなく、実際
にはアーバスキュラー菌根菌の種類によって被食防
いただけるよい機会になったのではないかと思った。
【S3】
中森泰三氏(放医研)は、
「きのこの防衛と菌食
クソン構造は、真核生物ゲノムにコードされている
れた。今泉和則氏は、ヒトにおけるスプライシング
4.黒木陽子・豊田敦・辰本将司・藤山秋佐夫「テ
性トビムシの食性分化」という演題で、キノコ類が
遺伝子に特徴的な構造である。イントロンが発見さ
異常がもたらす疾患の詳細を紹介された。プレセリ
ロメア領域からみた、ヒトと類人猿のゲノム比較」
菌食性昆虫に対して行っている被食防衛の様式につ
れて以来、その存在が細胞や個体の機能に対して、
ン2 のmRNA におけるイントロンの切り出し異常に
まず、 岩 部 らは、 現 在 進 行 中 の立 襟 鞭 毛 虫
いて紹介した。キノコ類は菌食性昆虫に対して被食
どのような役割を果たしているのかが研究されてき
よる選択的スプライシングが孤発性アルツハイマー
(Monosiga ovata)ゲノム解析の最新のデータをもと
防衛をしているのか、もししているとすれば、それ
た。さらに、イントロンの存在が真核生物の進化に
病に関与すること、また筋強直性ジストロフィーも
に、動物の多細胞化に伴うあるいはもたらしたゲノ
はどのような様式なのかということはこれまでよく
どのような影響をもたらしたかを知ることも、重要
SERCA1mRNA のスプライシング異常が原因のひと
ムワイドな遺伝子解析を議論した。そこでは、この
わかっていなかった。中森氏は、シスチジアという
な課題である。本シンポジウムでは、イントロンの
つであることを明らかにされ、異常スプライシング
単細胞生物と多細胞動物間ではシグナル伝達系の遺
特定の菌群の子実体に高密度に形成される構造がト
存在によって可能になっている選択的スプライシン
(一種の選択的スプライシング)がどのようにして
伝子の共通性が認められるのに対し、多細胞動物で
ビムシ類に対して強い殺傷性を示すことを実験的に
グが生命の多様な状態とどのように関わっているの
疾患に関わるのかをきれいに説明された。由良敬氏
明確な細胞接着、転写制御、アポトーシスに関わる
明らかにし、キノコ類が菌食性昆虫に対して積極的
かを、タンパク質の機能にもたらす影響、多様な環
は、ヒトの選択的スプライシングによってできるタ
遺伝子群は Monosiga では進化の度合いが低いこと
に被食防衛を行っているという証拠を示した。一
境への対応、進化、および疾患などの観点から概観
ンパク質アミノ酸配列のうち、物理化学的に安定な
が示された。佐藤は、ホヤとナメクジウオのゲノム
方、一部のトビムシ類には、トビムシにとって有害
することを目的とした。選択的スプライシングを
立体構造を形成すると考えられる場合がせいぜい
解析の現状とくにナメクジウオゲノムについて議論
なシスチジア部分の歩行時間を短くするという適応
様々な視点で研究されている方6 名を招待し、講演
30 %程度で、それらはタンパク質モジュールの取り
した。最近の分子系統学的解析はナメクジウオが脊
的行動が見られるという事例についても報告した。
していただいた。対象とする生物種や解析の手法な
替えに対応し、残り70 %もの選択的スプライシン
索動物の中で最初に分岐したことを示しているが、
山下聡氏(総合地球環境学研)は、
「菌食性昆虫
どがそれぞれ異なっているために、普段は同一の会
グ産物は、タンパク質として機能するための立体構
ゲノム解析ではナメクジウオと脊椎動物の間でシン
の群集生態について」と題して、菌食性昆虫の胞子
場に集まることがない講演者らが、生物進化の切り
造を形成しそうもないことを紹介した。このこと
テニーが高く保存されていることがわかり、ナメク
散布の可能性というテーマを取り上げた。菌食性昆
口で一堂に会し選択的スプライシングを俯瞰できた
は、選択的スプライシング産物に対する従来の見方
ジウオ的祖先からの脊椎動物の起源が議論された。
虫の胞子散布への貢献は多くの菌類で示唆されては
ことは、大変有意義だったと思う。
を大きく変える必要があることを意味する。
次に成瀬はメダカゲノムの解析について述べた。メ
いたものの、実際に詳細に調べた研究例はほとんど
飯田慶氏は、スプライシングをつかさどる分子の
本シンポジウムでは選択的スプライシングを多角
ダカゲノム解析は遺伝的地図やSNP 地図を利用し
ない。山下氏は、ハラタケ類(ヒダのある柔らかい
一部であるセリン−アルギニンリッチ(SR)タンパ
的に見ることで、イントロンの存在によって可能に
てかなりレベルの高いものとなっている。これをも
キノコをつくる菌)について菌食性昆虫の餌資源の
ク質自身の選択的スプライシングの研究を紹介され
なっている生命現象の多様性を見ることができ、大
とに祖先的魚類の染色体構成がどのようなものであ
利用様式や菌子実体の空間分布様式を調べた調査結
た。植物がもつSR タンパク質では、エクソンとイ
変興味深かった。最後に、本シンポジウムでの講演
ったのか、また、それからメダカやフグなどの進化
果から、菌食性昆虫の特定のキノコ類への選好性や
ントロンの詳細な構造がよく保存されており、SR
を快諾下さった講演者の方々と、熱心に討論に参加
に伴ってどのような染色体リアレンジメントが起こ
適当はある程度見られるものの、ハラタケ目では菌
タンパク質の選択的スプライシングが、様々な植物
していただいた聴衆のみなさんに感謝する。
ったかが議論された。最後に藤山は、テロメア領域
食性昆虫による胞子散布の貢献度は低いのではない
遺伝子のスプライシングに影響を及ぼしていること
かという結論に達した。
が考えられる。吉村和也氏は、植物が受ける環境ス
におけるゲノム比較からヒトと類人猿の進化を議論
【S4】
したが、特にヒトの進化に伴ってこの領域で染色体
トレスに応答する選択的スプライシング制御機構に
動物進化のゲノム基盤
衛に役立っているか否かという議論などでもりあが
ついて講演された。スプライシングを制御する SR
佐藤矩行(京都大学)
った。また、
「菌類は他の生物群と比較しても研究
タンパク質の転写量が様々なストレスで変化し、さ
ゲノムは生物の遺伝情報の全てを包含する。生物
深く、動物の進化を理解するためのゲノム解析が急
対象として興味深い生物であるにもかかわらず、な
らに光ストレスによって SR タンパク質をコードす
の進化を論じるためには、ゲノム塩基配列の決定と
激に進みつつあることが印象づけられた。また、参
ぜ菌学は研究分野として日陰者なのか?」という菌
るmRNA の選択的スプライシング効率が変化するこ
それを元にした生物情報の理解が必須である。動物
加者から多くの質問や意見が出され盛り上がった。
類学の研究者にとっては手痛い指摘も受けた。シン
とを明らかにされた。選択的スプライシングが植物
では1998 年の線虫C.エレガンスをはじめとして、こ
今後ゲノム科学が進化を理解するための大きな力と
ポジウムの演者を担ったわれわれ若手研究者にとっ
の植物応答機構にも重要であることが示された。岡
れまでに進化を理解するための鍵を握るさまざまな
なることが十分予測された。
ては、分野を盛り立てていかねばならないという、
田典弘氏は、アフリカの湖にいるシクリッドの体表
動物のゲノムが解読され、その流れは加速してい
よい意味でのプレッシャーを受けたのではないかと
模様の多様性と選択的スプライシングの関係を講演
る。本シンポジウムでは、動物の進化の中でも大き
思う。今回のシンポジウムでは、聴衆の方々に非常
された。体表のストライプパターンを決めるハゴロ
なチェックポイントである (1)動物の多細胞化、
に熱心に発表を聞いていただき、菌類の進化生物学
モ遺伝子由来のmRNA には、イントロンをエクソン
(2)脊索動物の起源、
(3)脊椎動物の起源と進化、
曽田貞滋(京都大学)
の研究対象としての面白さを多様な研究者に知って
化している選択的スプライシングパターンも存在し、
(4)ヒトの進化についての最近のゲノム科学、特に
進化生態学的な視点から、種分化につながる適応
総合討論では、いわゆる毒キノコ類の毒は被食防
に複雑な再編成が起きていることが示された。
今回のシンポジウムの4 つの講演内容はみな興味
【S5】
適応的分化と生殖隔離
26
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
27
的分化を野外生物集団で明らかにする研究を集めた
かったこともあるが、満席で立ち見がでた)
。今後
変更は形態の進化の中で重要な戦略であるにもかか
多様である。パラサイトの多様性とそれを支える分
シンポジウムを企画した。発表は次の6 件で、いず
も野外研究と遺伝子レベルの研究の橋渡しとなるよ
わらず、これまでの発生進化学ではあまり顧みられ
子機構を理解することは、生物進化そのものを理解
れも大学院生ないし若手の研究者が主体的に進めて
うなシンポジウム・ワークショップが継続的に開か
てこなかった。今回野地氏はコオロギの体サイズの
することに他ならない。本ワークショップでは、真
きたものである。
れることを期待したい。
制御に、平面内細胞極性に関わるfat 遺伝子などが
核生物パラサイトの寄生適応戦略とその進化的背景
関与していることを紹介した。これらの遺伝子が、
について、分子生物学、集団遺伝学、比較生化学
組織や体サイズの進化や相対成長の変更にどのよう
のアプローチから得られた最新の知見を紹介した。
1.高橋鉄美「貝に住むシクリッドの生態的種分化」
2.木村幹子・宗原弘幸「アイナメ属 3 種の生息地
【S6】
隔離と人為的生息地改変によるその崩壊」
発生と進化:最近の話題から
3.小沼順二・千葉聡「マイマイカブリの採餌形態
和田 洋(筑波大学)
に関わってきたか、今後の展開が期待される。
実は、寄生虫の進化に焦点を当てたワークショップ
企画者の和田は、脊椎動物の形態進化のなかでド
は日本進化学会で初めての試みであり、企画者とし
20 世紀の終わり、動物学の中で進化発生学エボ
メインシャッフリングによる新規の遺伝子の創出が
て本ワークショップの成否に一抹の不安を抱いてい
4.長太伸章・久保田耕平・八尋克郎・曽田貞滋
デボ(Evo-devo: Evolution and Development)と呼
どのように関わってきたかについて紹介した。これ
たが、幸いにも約 50 名の参集の下に終始活発な議
「オオオサムシ亜属のサイズ分化と機械的生殖隔離」
ばれる分野ができた。もちろん、それ以前にも形態
まで、転写因子やシグナル伝達分子の機能解析を中
論が行われたことは大きな喜びであった。
5.新田梢・安元暁子・矢原徹一「キスゲとハマカ
学の分野で発生学が果たしてきた役割は小さくなか
心に発展してきたエボデボでは、あまり顧みられな
早川(大阪大学・微生物病研究所)は、
「マラリ
ンゾウの送粉適応と生殖隔離」
った。しかし、このエボデボという学問は、形態形
かった細胞外基質分子や接着分子は、ドメインシャ
ア原虫と宿主の共進化史」という内容で講演を行っ
6.山本哲史・曽田貞滋「クロテンフユシャクの同
成に関わる遺伝子の情報を取り入れたという点で、
ッフリングを通じて様々な新規遺伝子が創出されて
た。マラリア原虫は、ハマダラカ(蚊)によって媒
所性異時的集団の成立過程」
の適応的分化」
それまでの形態学と発生学のつながりと決定的に異
いることが明らかとなり、それが引き金となって脊
介される熱病「マラリア」の病原体である。宿主域
高橋氏の発表は、タンガニイカ湖において利用で
なっていた。アカデミー論争の中でキュビエが主張
椎動物の軟骨など新規形質の進化が可能になったと
は広く陸生動物全般(ほ乳類・鳥類・爬虫類)に
きる隠れ場所のサイズがシクリッドの成熟サイズに
したように、多細胞動物の体制には、埋めがたい溝
いう事例を紹介した。
及ぶ一方で、宿主特異性が非常に高いことが特徴で
選択をもたらし、その結果種分化をもたらす(しか
がある。たとえば、棘皮動物と脊椎動物の体制をど
最後に倉谷滋氏(理研 CDB)は、原始的な脊椎
ある。早川らは霊長類を宿主とするマラリア原虫を
も並行的に)ことを示唆したもので、シクリッドで
のように比較してよいかという問題は未だに解決し
動物の体制を残すヤツメウナギやヌタウナギの形態
対象に、宿主・パラサイト双方の分岐パターンを解
の生態的種分化の具体例を初めて示したものと言え
ていない。したがって、多細胞動物の高次分類は、
形成システムを通して考察した、脊椎動物の祖先が
析し、ヒトマラリア原虫のなかには宿主分岐に沿っ
る。木村氏の発表では、産卵基質を異にしながら側
原口の運命など発生初期に現れるごく限られた形質
顎を獲得していくシナリオを紹介した。原始的な咽
て共進化を遂げた種と、サルからヒトへ宿主転換を
所的に分布するアイナメ属が、人工物(消波ブロッ
に基づかざるを得なかった。ところが、エボデボ
頭弓を持つヤツメウナギにもHox コードによる前後
起こした種が存在することを報告した。これは、
ク)の設置によって交雑するようになったことが報
は、多細胞動物の形態が、共通の遺伝子セットを使
軸のパターニングは行われているが、咽頭弓を背腹
「固有の宿主からの逸脱」がパラサイトの多様性を
告され、自然界での生殖隔離がいかにデリケートな
うことによって作り出されているという明確なメッ
軸に沿って分化させる形成システムは備わっていな
生む重要な原動力となっている可能性を示してい
セージを発信した。多細胞動物の形態に横たわる溝
いという。有顎脊椎動物の顎の進化には、神経堤細
る。
景にあるトレードオフを、陸貝食のマイマイカブリ
を、形態形成に関わる遺伝子を橋渡しとすることで
胞と咽頭外胚葉の間で起こる組織間相互作用の位置
有末(大阪大学・微生物病研究所)は、
「マラリ
の頭・胸部形態に関して実証した。長太氏は、自然
理解できるのではないかと期待されている。
的シフトと同時に、咽頭弓が背腹に沿った形成シス
ア原虫SERA 遺伝子ファミリーの系統進化」という
テムを獲得するというプロセスが不可欠であったの
内容で講演を行った。ヒトに感染すると致死的とな
かもしれない。
る熱帯熱マラリア原虫では、既存のマラリア治療薬
状況のものかが示された。小沼氏は適応的分化の背
選択・性選択を通して種間で多様化する体サイズ・
このような背景のもと、本シンポジウムでは4 人
交尾器サイズが、生殖隔離に効果的に働くことを、
の話を聞いた。まず、梅園良彦氏(京都大)には、
ミトコンドリアの種間浸透率を使って示した。新田
多細胞動物で原始的な体制を残しているプラナリア
各演者には、今後発生進化学の解いていかなくて
に対する耐性の出現が問題となっており、ワクチン
氏は、夜咲き・蛾媒のキスゲと昼咲き・蝶媒のハマ
について、その脳形成のメカニズムについて紹介し
はならない命題は何か、発生進化学は何を目指すべ
開発が強く望まれている。ワクチン候補タンパク質
カンゾウの交配実験を用い、数年の期間をかけて地
ていただいた。単純な体制をもつプラナリアでも頭
きかについて一言触れて頂くことをお願いした。時
のひとつPfSERA5 は、赤血球期マラリア原虫の増殖
道に行われている開花時間・花形質の多様化に関す
部には明瞭な脳構造が存在し、光に対する逃避行動
間の関係上、最後に総合討論の時間をとることがで
に必須で、その遺伝子はSERA 遺伝子ファミリーに
る研究の経過を報告した。山本氏は,羽化時期を違
などの機能を持っているという紹介のあと、その脳
きなかったのが残念だったが、一人一人思い入れを
属している。有末らは、霊長類、齧歯類、鳥類を
える同所的な2 集団が生殖的に隔離されており、他
形成に関わるnou-darake の遺伝子の機能について話
語って頂いた。会場からも、しっかり形を見ていく
それぞれ宿主とするマラリア原虫 8 種のSERA 遺伝
所で分化し、同じ場所に定着した集団が厳冬期によ
された。nou-darake はFGF シグナルを制御すること
ことの重要さを教えて頂いたなどというコメントも
子ファミリーの構造解析および系統解析を行ない、
る分断選択によって時間的に隔離されていることを
で、脳の形成を頭部に限定する機能を有しているら
あり、現象に根ざした解析の重要さが印象に残っ
種間で保存された4 遺伝子が染色体上にタンデムに
報告し、「異時的種分化」の研究に一石を投じた。
しい。FGF は脊椎動物の神経系の前後軸に沿ったパ
た。
並び、そのうちの1 遺伝子に種特異的な重複が起き
このようにいずれの研究も、大なり小なりに新しい
ターニングにも関わっており、FGF などの分泌因子
発見を紹介した興味深いものであった。
の活性勾配を作るシステムの進化における役割が、
進化学会では、遺伝子レベルから進化現象を明ら
ていることを報告した。興味深いことに、トリマラ
【WS01】
リア原虫は哺乳類マラリア原虫に保存される4 遺伝
今後の発生進化学の研究の中でもっと注目されても
パラサイトの寄生適応と進化
子のうち2 遺伝子を欠いており、宿主転換の過程で
よいとの提言もあった。
奈良武司(順天堂大学)
SERA 遺伝子群が重要な生理的役割を担っていた可
次に野地澄晴氏(徳島大)は、昆虫の発生にお
自然界において「寄生」は極めて普遍的な生活様
能性を示す点で、今後の研究の進展が興味深い。
応・種分化を野外での自然選択・性選択の結果とし
いて、組織や体のサイズが制御されているメカニズ
式であり、ほぼ全ての生物分類群で独立にパラサイ
永宗(大阪大学・微生物病研究所)は、
「人体寄
て説明し、またその遺伝的基盤に迫ろうという研究
ムについて話題提供して頂いた。動物にとって、形
ト(寄生体)が出現しているが、生物学的バックグ
生性原虫Toxoplasma gondii におけるカルシウム制御
にもかなりの聴衆が集まる(今回は、会場がやや狭
を変えることと同時に、サイズの変更、相対成長の
ラウンドはそれぞれ異なり、宿主環境もまた極めて
因子としての植物ホルモンの進化的保存について」
かにしようとする内容の発表が目立つが、このシン
ポジウムのように、生態学分野に基盤をおいて、適
28
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
29
という内容で講演を行った。トキソプラズマToxo-
の移行に際し「前適応」の概念を提示するものであ
容システムの進化」という演題の講演を行った。無
レベル』をどう捉えるか」
、森元良太「遺伝的浮動
plasma gondii はマラリア原虫とともにアピコンプレ
った。
脊椎動物の眼の感桿型視細胞で機能するオプシン
はフィクションか?」
、中尾央氏(京都大学)
「人間
ックス門に属するパラサイトで、母子感染による先
多様性に富んだ真核性パラサイトは、進化を理解
が、脊椎動物の視細胞で機能するオプシンではな
行動の進化:行動と心理」
。
天性トキソプラズマ症やエイズ合併症であるトキソ
するための格好の生物である。本ワークショップを
く、網膜光感受性神経節細胞で概日リズムの光セン
三中氏は、進化生物学を歴史記述的科学の一部
プラズマ脳炎などを引き起こす。トキソプラズマや
機に多くの進化研究者がパラサイトに興味を持ち、
サーとして機能するメラノプシンに物性が酷似して
として位置づけ、進化生物学における共通原因の過
マラリア原虫は、色素体に由来するアピコプラスト
新たな研究ネットワークが形成されることを切に期
いることを見いだした。また、オプシンを用いた光
去復元という二つの役割を強調した。また、進化学
と呼ばれるオルガネラを持ち、その植物型の代謝経
待している。
受容システムの起源に関しても考察を行い、少なく
の歴史を系譜的に概観し、1960 年代から生物学の
ともヒドロ虫綱からはオプシンが単離されることを
哲学が進化学のさまざまな場面で登場するようにな
示した。
ったことを紹介した。そこでは、生物学と生物学の
路は薬剤標的として脚光を浴びているが、永宗らは
トキソプラズマが植物タイプのcyclic ADP-ribose 依
【WS02】
存的 Ca2 +チャンネルを持つこと、さらにトキソプ
眼の起源と進化
ラズマの細胞質 Ca2 +濃度は植物ではホルモンとし
山本(東北大学)らは、
「眼の機能にかかわる色
哲学との関係が強調された。三中氏はこの関係につ
小倉 淳(国立遺伝学研究所)
素細胞の機能進化」に関する講演を行った。哺乳動
いて、生物学の哲学者は科学者の挙動や科学の動態
て機能するアブシジン酸によって調節されていると
動物はさまざまな形態や機能をもつ複雑な眼を持
物の眼には、系譜を異にする2 種類のメラニン色素
に関するデータを集めることを仕事とするのに対し、
いう新たな知見を報告した。アピコンプレックスに
っており、こうした複雑な眼がどのように獲得され
細胞がある。一方は発生中の脳胞から分化する網膜
生物学者は科学を遂行するための武器として哲学的
おいてどのような進化機構によって遺伝子の取捨選
てきたかが、ダーウィン以来進化学の重要な問題の
色素上皮細胞、他方は眼の外側の脈絡膜に位置す
議論を用いるべきであると説明した。生物学の哲学
択が行われたのか、今後の研究の進展が待たれると
一つとなっている。眼の進化の研究には、いくつか
る神経冠由来のメラノサイトである。このうち、メ
者にとって科学は「実験動物」であり、生物学者に
ころである。
の潮流がある。まず、いわゆる眼のマスターコント
ラノサイトはネット状に走る脈絡膜血管を取り巻い
とって科学哲学は「道具」である、というまとめ方
坂元(東京大学)は、
「回虫ミトコンドリア複合
ロール遺伝子としてのPax6 発見とそれに伴う発生
ており、眼への栄養供給だけでなく、眼の冷却にも
は印象的であった。これに補足をしておくと、哲学
体II 遺伝子の重複と低酸素適応」という内容で講演
制御系に関する研究。次に、視細胞とオプシンの進
重要と考えられている。このメラノサイトが、脈絡
者は確かに、科学を特徴づけるために科学者を「実
を行った。パラサイトは、宿主を乗り換える過程で
化過程に関する研究。また、異なる遺伝子を用いて
膜構造に深くかかわり、眼の機能にも影響を及ぼす
験動物」として観察するが、それだけではなく、
異なる外部環境にさらされる。それが顕著なのは回
レンズタンパク質を構築してきたGene Recruitment
可能性を紹介した。
虫で、成虫は酸素分圧の低い小腸に寄生する一方、
に関する研究。眼だけでなく他の感覚器官にも重要
阿形(京都大学)は、
「プラナリアからみた眼の
受精卵から幼虫に発育する過程では大気中の豊富な
な色素細胞から見た眼の進化に関する研究。本ワー
進化」という演題で、プラナリアの眼の構造と機能
松本氏は、自然選択が何に対して働くのか、どの
酸素を必要とする。坂元らはブタ回虫のミトコンド
クショップではこうした観点から5 題の発表を行っ
について紹介するとともに、眼の再生と機能に関与
レベルで働くのか、という「選択の単位」と呼ばれ
リア複合体II の生理機能に着目し、好気的な幼虫で
た。
する遺伝子についても紹介した。視細胞の専業化と
る問題を取り上げた。そのなかでも特に、G. C. ウ
多様化による情報処理能力の向上が眼の進化に重要
ィリアムズやR. ドーキンスによって提起された遺伝
であったという視点を示した。
子選択主義の議論を検討した。遺伝子選択主義の
はヒトと同様にユビキノンを電子受容体とするコハ
小倉(国立遺伝学研究所)は、
「遺伝子発現から
ク酸酸化酵素として機能するが、嫌気的な成虫では
見たカメラ眼の起源と進化」という演題で、カメラ
ロドキノンを用いて逆反応(フマル酸還元)を触媒
眼の進化にmiRNA が制御する遺伝子発現機構の獲
すること、複合体 II を構成する4 つのサブユニット
のうち成虫では2 つのサブユニットが嫌気型に置換
「自然現象の解明」という目標のために科学者との
共同研究がおこなわれている。
当日は悪天候の早朝にもかかわらず、満員御礼で
主張には帳簿的な意味と因果的・実在論的な意味が
得が脊椎動物の初期段階で重要であったと考えた。
あり、活発な議論がなされた。眼の進化の研究に関
含まれるが、今回は後者をめぐる論争について検討
これを検証するためにヒトの眼に発現している遺伝
する期待を感じるとともに、今後は一層の研究成果
した。遺伝子選択主義に対しては、E. ソーバーら
されていることを報告した。さらに、嫌気型サブユ
子のうち、miRNA により発現制御が行われている
が期待される。
選択階層論者による超優性の事例を用いた反論があ
ニットは好気型酵素遺伝子の重複と機能分化によっ
遺伝子を推定し、29 種類の脊椎動物と5 種類の外群
て新たに出現した酵素であることが系統解析から明
を用いて検証を行った。その結果、脊椎動物におい
らかになり、嫌気適応と寄生適応の密接な関係が示
て、miRNA が発現制御する遺伝子の数が増加する
された。
ことを見いだした。
る。ソーバーらの批判は、ヘテロ接合体超優性の対
【WS03】
哲学はなぜ進化学の問題になるのか
(パート 2):
生物学の哲学のさらなる展開
立遺伝子を単位とする記述では、適応度が頻度依存
的になってしまうため、因果的一様性を欠いている
というものである。松本氏は、
(1)ソーバーの要請
する「因果的一様性の原理」の妥当性、
(2)
「頻度
奈良は、
「トリパノソーマにおける遺伝子水平転
日下部(兵庫県立大学)らは「ホヤの光受容シ
移と寄生適応」という内容で講演を行った。トリパ
ステムから探る脊椎動物の頭部感覚器官の起源」と
ノソーマは呼吸鎖に依存しないATP 合成を行なう点
いう演題の講演を行った。ホヤ幼生の光受容器とし
で嫌気環境によく適応したパラサイトである。奈良
ては脳に眼点と器官が存在し、また、哺乳類以外の
のワークショップを開催した。今年は進化過程に関
らは、真核生物では好気的条件下で作動するピリミ
多くの脊椎動物の光受容器は、脳の一部である松果
わる概念的問題について哲学の側から論議をおこな
田中氏は、松本氏と同じ問題を別の角度から考察
ジン生合成経路に焦点を当て、トリパノソーマは嫌
体がその機能を担う。ホヤ幼生の眼点は脊椎動物の
った。最初に、司会の森元良太(慶應義塾大学)が
した。田中氏は、
「選択のレベル」論争におけるい
気条件で機能する酵素を持ち、それは遺伝子水平転
松果体と比べて、脳の一部である、神経板の左右両
企画説明をしたあと、以下の5 名が発表をおこなっ
くつかの立場の比較をおこない、それらの背景にあ
移(LGT)に由来することを報告した。系統解析か
側に原基がある、個体発生において最初に機能する
た。三中信宏氏(農業環境技術研究所/東京大学)
る考え方の違いについて検討した。この論争の主要
ら、LGT はトリパノソーマと自由生活性ボド類との
光受容器である、その光受容が幼生にもたらす行動
「生物学哲学と進化生物学はともに変遷してきた:
な対立軸は、実在論の複数レベル選択説と反実在論
共通祖先に起きたことが推定された。これは、LGT
が似ている、という共通点があり、ホヤの眼点は松
自然淘汰と適応をめぐる論争のルーツと系譜」
、松
のモデル多元論の間にある。田中氏は、ゲシュタル
を介した低酸素適応が「寄生のライセンス」として
果体の相同器官であると示した。
本俊吉氏(東海大学)
「遺伝子選択主義をめぐる論
トスイッチの事例を用いて、両者の対立が単なる哲
争を評価する」
、田中泉吏氏(京都大学)
「
『選択の
学上の立場の違いだけではなく、経験的事実に関す
機能した可能性を示しており、自由生活と寄生生活
小柳(大阪市立大学)は「オプシンから見た光受
森元良太(慶應義塾大学)
依存型適応度」と因果性の主張の関係、の観点か
昨年の大会に引き続き、今年も「生物学の哲学」
ら遺伝子選択主義者と選択階層論者との論争を分析
し、両者の主張を評価した。
30
日本進化学会ニュース Nov. 2007
る見解の差異をも反映していることを示した。ま
【WS04】
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
31
づき分類体系の検証を行ったところ、用いたサンプ
り、ハマダラカ、ミツバチ、コクヌストモドキで解
ル数によって異なる系統関係が得られた。このこと
読が行われてきている。鱗翅目昆虫で高精度解読が
から、不十分なサンプルによる系統推定結果を反映
行われ、データが公表されるのはカイコが初めてで
も起因していることを論じた。そして、存在論的主
DNA 塩基配列に基づく分類と
その問題点
張を控えることが生物の階層構造化の進化を理解す
神保宇嗣(東京大学)
した分類体系を構築すると、かえって分類学的混乱
ある。カイコゲノムの解読では、日本と中国で別々
るための早道であり、そのための候補の一つとして
これまで、分類学的研究は形態に基づいて行われ
を助長する可能性があることを指摘した。
に実施されたホールゲノムショットガンによる配列
た、この対立が説明上の動機や目的における差異に
てきたが、現在ではDNA 塩基配列をはじめとした
吉武啓(東大)は、前述したDNA 塩基配列によ
データが統合され、高精度の配列情報が利用可能と
森元は、遺伝的浮動をめぐる哲学的問題を扱っ
分子情報が多く取り入れられている。生物の同定作
る同定支援技術「DNA バーコーディング」を紹介
なりつつある。このワークショップでは、カイコゲ
た。A. ローゼンバーグは、完全な知識があれば遺
業にも塩基配列が導入されており、最近では規定さ
した。これまでに、動物ではミトコンドリア DNA
ノムから見えてきた進化生物学的な新しい知見、特
伝的浮動は物理理論に消去可能であり、遺伝的浮動
れた短い塩基配列(バーコード)を種の表徴として
のCOI 領域の一部がバーコードとして標準化されて
に他生物のゲノムとの比較や、環境や寄主植物への
として説明される現象はフィクションに過ぎない、
同定に利用する「DNA バーコーディング」に注目
おり、現在世界中のあらゆる生物のCOI バーコード
適応に関連した遺伝子群についての興味深い結果が
と主張した。森元はこの主張を批判的に検討し、遺
が集まっている。一方で、分子情報の不適切な利用
を決定するプロジェクトBarcode of Life が進行中で
発表された。
伝的浮動の必要性を論じた。そこでは、遺伝可能性
が分類学的問題を引き起こしている事例も散見され
ある。また、塩基配列を決定した標本は証拠として
三田和英(農業生物資源研)は、カイコの高精
や中立遺伝子などの事例を用いて、遺伝的浮動モデ
る。そこで、塩基配列を利用した分類学的研究およ
保管されるため、後から同定の再検討が可能なこと
度ゲノム解析の概要を説明した。解読は7.5 倍のホ
ルには物理理論に消去できない進化生物学特有の性
び同定作業の実際と問題点を示し、分類学における
も特徴であるという。この手法で大部分の属と多く
ールゲノムショットガン解析データを利用して行わ
質が存在することを示し、物理理論と遺伝的浮動モ
塩基配列情報の意味を議論する場を提供することを
の種の同定が可能だが、バーコードだけに基づく同
れ、
「統合地図作成」の発表は日中の共同論文とし
デルの相違点を明らかにした。そして、それらのこ
目的として本ワークショップを企画した。
定には限界があり、形態や他の塩基配列などを利用
て行われる予定で準備が進んでいること、ゲノム解
した同定法を適宜組み合わせる必要があることを示
読率は90 %を超え、1,700 個以上あるSNP マーカー
した。
を利用して染色体の360 Mb 以上(ゲノムの約76 %)
ゲシュタルトスイッチ式モデル多元論を挙げた。
とをもとに、完全な知識があるとしても遺伝的浮動
ワークショップは、順序を一部変更して開催され
モデルは消去できないことを示した。また、遺伝的
た。まず、三中信宏(農環研)は、DNA バーコー
浮動モデルには実在の一部を捉えている一方で、認
ディングと種概念をめぐる問題との関係について論
村上哲明(首都大)は、シダを材料とした研究を
をカバーする高精度の地図を得たことなどを紹介し
識的制約が含まれていることも示した。
じた。種の概念や定義は、生物学・認知心理学・哲
中心に、DNA 塩基配列の情報を分類研究に活用す
た。この発表に対して、W 染色体の解析状況や、分
中尾氏は、1980 年代半ばから1990 年代初頭にか
学など様々な立場から広く議論されてきたが、氏
る方法とその問題点を紹介した。葉緑体 DNA 上の
散動原体付着部位のゲノム配列等について質疑が行
けておこなわれた、進化心理学と人間行動生態学の
は、種はヒトが生物群を認知するための手段であ
rbcL 遺伝子の塩基配列多型をキーにして形態的に
われた。
論争を振り返りながら、特に人間行動生態学の方法
り、生物学的な意味では定義できない「幻想」であ
酷似する隠蔽種の候補を見いだし、候補間の生殖的
嶋田透(東大・院農)は、カイコゲノムから見え
論やその意義について検討した。人間社会生物学と
ると主張した。そして、DNA バーコーディングの
隔離や生態的分化を調べることで、隠蔽種の存在を
る遺伝子の水平移動について紹介した。カイコはエ
呼ばれる分野が1970 年代後半に誕生したが、この
同定ツールとしての利便性を認めた上で、プロジェ
効率よく明らかにできるという。オオタニワタリの
ンド型のキチナーゼに加えて動物では従来知られて
分野では進化生物学や進化生態学における最適化モ
クトを先導する研究者たちは、バーコードによって
同所的に分布する隠蔽種は、rbcL 塩基配列や木の
いないエクソ型のキチナーゼを持ち、この遺伝子が
デルを人間の文化に適用しようという試みがなされ
区別された群と種概念との関係という本質的な議論
幹へ着生する高さに違いがあり、実験的に生殖的隔
セラチアの遺伝子と相同性が高いことや、カイコ消
ていた。P. キッチャーはこの分野に対して徹底的な
を回避していると批判した。
離も確認されたが、形態では区別できない。そこ
化管には一般的に見られるα-グルコシダーゼの他
批判をおこなった。主な論点は、人間行動が複雑な
八木孝司(大阪府大)は、蝶類のいくつかの分類
で、この隠蔽種は塩基配列の相違に基づき新種とし
にβ-フルクトフラノシダーゼが存在し、この酵素の
心理メカニズムの産物であり、その心理メカニズム
群を例に、DNA 塩基配列に基づく系統推定の結果
て記載されたが、標本整理の際に問題が生じると反
遺伝子配列が細菌の酵素と相同性が高いこと等か
を無視して人間行動の進化など論じる事はできな
と既存の種分類の間にはしばしば矛盾がある一方
発が起きたため、種以下のランクとして記載する妥
ら、カイコには細菌由来と思われる遺伝子が存在し
い、というものである。その後、1990 年には人間社
で、塩基配列の相違度のみに基づく分類群の分割は
協案を受け入れたいという。
て機能していると結論した。この発表に対して、水
会学と進化心理学との間で論争が生じ、進化心理学
難しいことを示し、生態情報や交配実験などを組み
会場は満員で立見もでるほどの盛況で、質問やコ
平移動の事実をより確かなものにするために、時間
が人間行動の進化的研究の主流となった。中尾氏
合わせて議論する必要があると主張した。さらに、
メントも多く、最後の総合討論の時間があまり取れ
軸を入れた系統樹解析の必要性や、水平移動はドラ
は、このような現状に対する人間行動生態学の存在
研究者間の種や亜種の解釈の相違が分類学的混乱を
なかったのは残念であった。しかし、短い時間でも
フト配列で解析すると間違いが起こる場合があるこ
意義について、ある民族の採取行動の最適化を例に
助長していると指摘した。蝶類では、斑紋のみに基
分類学的情報の提供者と利用者とが議論できたこと
と等について質疑が行われた。
用いて検討した。そして中尾氏は、他種との比較を
づく不十分な新種記載や、分子系統の誤った解釈に
は有意義だったと思う。DNA 情報の分類学的研究
森下真一(東大・院新領域)は、カイコゲノムの
通じて人間行動を生み出している制約要因を発見す
基づく分類学的研究が行われた結果、分類が混乱し
における活用の実際、DNA 情報に基づく同定法と
アセンブルについて高い精度のゲノム解析結果が得
るという点では、最適化モデルの使用が正当化でき
ているグループが見受けられ問題となっている。
今後の展望、その背景にある種概念問題までも含め
られたことを三田と違う角度から紹介した。また、
て、広く再認識する場になったと考えている。
シンテニー解析によるゲノム進化解析によって、昆
るかもしれない、と論じた。ただし、キッチャーの
矢後勝也(東大)は、分子系統推定の結果を解
批判は未だ大きな影を落としており、この批判を念
釈する上での問題点を概観した上で、シジミチョウ
頭に置きながら人間行動生態学の成果を解釈してい
科のシルビアシジミ属を例として、系統学的な研究
かねばならないことに注意を促した。
結果を分類体系に反映させる際の問題点を指摘し
虫間ではカイコはコクヌストモドキとは対応関係が
【WS05】
見いだされたが、ショウジョウバエ・ミツバチとは
た。この属は、翅の斑紋パターンと交尾器の変異と
カイコゲノムの解析から見える
昆虫の適応進化
と、脊椎動物に範囲を広げると、ニワトリとカイコ
が一致しないため、研究者間で種の解釈が異なり分
川崎建次郎(農業生物資源研究所)
では対応関係がある染色体が見られること等を紹介
類が混乱している。そのため、DNA 塩基配列に基
昆虫の全ゲノム解析はショウジョウバエから始ま
した。また、近年のゲノム解析技術の進歩により、
対応関係が少ないこと、線虫とは対応関係がないこ
32
日本進化学会ニュース Nov. 2007
さらに多くの種のゲノムが解読されることによって、
過去に起きた全ゲノムの重複や種間のゲノムの関係
が今後より明確になる可能性があることを述べた。
この講演に対し、ニワトリとカイコの類似性や、ゲ
ノム重複等について質疑が行われた。
尾崎克久(JT 生命誌研究館)は、ナミアゲハの
産卵刺激物質の化学受容に関わるタンパク質遺伝子
の染色体上でのクラスター構造について、カイコを
含めて解析した結果を紹介した。また、この2 種の
昆虫では化学受容においては膜タンパク(GPCR)
の数は少ないが、感覚細胞中で物質運搬の機能を持
つ Chemosensory Protein(CSP)遺伝子がアゲハ
では 19、カイコでは 18 と多様化しており、その多
くがクラスターを形成していることや、カイコとア
ゲハではCSP 遺伝子配列に高い相同性があることも
紹介した。この発表に対して、多様なCSP の意義な
どについて質疑が行われた。
諏訪牧子(産総研・生命情報工学 RC)は、昆虫
の7 本膜貫通へリックス型受容体(7MTR)につい
て遺伝子予測プログラムで解析した結果について紹
介した。7MTR はほ乳類では1,500 ∼2,500 知られて
おり、そのうち嗅覚に関わるものが60 ∼ 70 %を占
めるが、昆虫は300 くらいであり、カイコ、ミツバ
チ、ショウジョウバエ、ハマダラカで比較するとミ
ツバチは他の種よりも匂い受容体が多かった。カイ
コはショウジョウバエやハマダラカと比較して味覚
受容体は少なく、これについてカイコはクワのみを
エサとすることや、成虫はエサをとらないという種
の特性と関係があるという考察がされた。この発表
に対して、遺伝子の重複や遺伝子クラスター、配列
の相同性などについて質疑が行われた。
カイコゲノム解析結果はまもなく日中共同論文と
して投稿され、論文の刊行に合わせてゲノムデータ
が公開される。カイコの高精度のゲノム解析結果
は、害虫として重要性の高い鱗翅目昆虫の遺伝子機
能解析結果を利用した昆虫制御剤開発や、組換え
体カイコ利用によるタンパク質生産といった応用面
だけでなく、カイコの家畜化過程の解析や、生物種
間の比較研究などの基礎研究においても有用な情報
【WS06】
単一遺伝子型の示す表現型の揺らぎと
遺伝的多様性による揺らぎに
相関はあるか?
四方哲也(大阪大学)
このワークショップでは、表現型の揺らぎと遺伝
的多様性という一見関係ない2 つの量の関係性を議
論した。ここでいう表現型の揺らぎを単一遺伝子型
が単一環境で示す表現型の分散(Vp)と定義する。
四方がこの量の測定について紹介した。具体的に
は、特定の遺伝子の発現量をGFP 発現で置き換え
てみるように大腸菌を遺伝的に改変した。その大腸
菌 1 細胞を単一の環境で 100 万細胞まで増殖させ、
それぞれの細胞内のGFP 濃度を測定し、細胞集団
のGFP 濃度に関する分布をえる。そこから、Vp を
計算する。同じ環境でも大きなVp(たとえば、1 オ
ーダー程度の濃度幅で揺らいでいる)が観察され
た。
進化している細胞集団では、遺伝的多様性に基づ
く効果と上記のVp による効果の和として、集団の
表現型分散が観察される。遺伝的多様性に基づく効
果は集団内に存在する異なる遺伝型が示す表現型の
平均値の分散 Vg と定義される。
変異率が高く、大きいVg が保たれている集団で
は、環境変化によって強い選択がかかれば、表現型
の変化速度(進化速度)は大きい。一方で、伊藤−
四方らの実験結果は上記のVp が大きい遺伝型をも
つ細胞集団の進化速度は大きいことを示した。その
ことにヒントを得て、金子がVg† Vp であることを
理論的にしめした。選択は個体にかかるので、表現
型揺らぎによって、たまたま有利な表現型をもった
個体が生き残る可能性がある。すると、その遺伝型
が集団内で広がるので、結果としてVg に影響を及
ぼす。そのことから、上記の不等式は、変異率を上
げてVg を大きくしてもVp を超えることはなく、不
等式が破れるような集団は定常状態を保てないとい
う予測が提出された。これらの内容について、参加
者と活発な議論がなされた。
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
33
ギオ幸夫(神戸大)
、柳川透(東工大/茂木研究室
のデータを用いて自然選択圧を検出する方法につい
D)
、谷淳(理研BSI)の5 人に、それぞれの研究の
て解説がなされた。さらに、ヒトのさまざまな組織
視点から話してもらった。
において特異的に発現している遺伝子について、
岡ノ谷:心の理論を自分に適応した時にたちあらわ
SNP データの解析により、機能的制約の緩い遺伝子
れる自意識の問題を、記憶の問題とも絡めつつ議
は集団から排除される変異も多いことが示された。
論。
③間野修平(名市大):生物の集団内における多型
藤井: 2 ひきのサルの脳活動のパターンを用いて、
データを用いて自然選択圧を検出する方法について
他のサルとの位置関係が作り出すownership のパタ
の総括的な解説がなされた。さらに、最近蓄積され
ーンについて報告。
てきているハプロタイプのデータを用い、さらに検
郡司:オートマトンによる粘菌の数理モデルを使っ
定統計量を用いずに、ハプロタイプの頻度分布から
て、進化的な淘汰とは関係ないところで見られる最
直接的に自然選択圧を検出する新しい方法の開発に
適化の構造などを報告。
ついての紹介がなされた。
柳川:意識/言語の問題が、脳の神経ネットのトポ
④五條堀淳(東大):ヒトのSNP データを、同義
ロジーの問題に焼き直せるのか、どうかを鳥の脳な
置換と1 塩基置換でコードするアミノ酸が変わりう
どと比較しながら議論。
る75 種類の非同義置換に分類し、同義置換に対す
谷:ロボット実験にみられる認知的ふるまいを、特
る非同義置換の「多型になりやすさ」
、
「固定しやす
に現象学的な志向性の問題とからめて議論。
さ」
、を比較したところ、75 種類の非同義置換の間
私自身は、意識を自律性問題のひとつととらえ、最
では、多型になりにくいものほど固定しやすいとい
近自分が提唱する「身体化されたカオス的遍歴」を
う結果が得られ、そのような非同義置換がradical な
ロボット実験やハエの自律歩行実験をもとに議論し
置換であると提唱された。
た。
⑤齋藤茂(岩手大):有胎盤哺乳類において特異
これらの多彩な観点をひとつにまとめあげるのは
的に非震え熱産生に関与している蛋白質 UCP1 が、
不可能だが、意識の問題がどういう形でサイエンス
ほとんどの脊椎動物に存在していることが明らかに
になりうるか、のコンセンサスは出来上がって来て
された。さらに、有袋類と有胎盤哺乳類が分岐した
いる。しかもそれは脳の問題としてばかりではなく、
後に、有胎盤哺乳類の共通祖先においてこの遺伝子
より広いコンテキストで創られつつある点が評価で
に正の自然選択圧が働いたことが明らかにされ、
きるだろう。
UCP1 が共通祖先において効果的な非震え熱産生機
能を獲得したことが示唆された。
【WS08】
⑥今西規・川原善浩(産総研):多生物種にわた
ゲノム情報を用いた自然選択圧の検出
る全遺伝子のオーソログセットとその分子進化学的
鈴木善幸(国立遺伝学研究所)
解析結果のデータベースであるEVOLA が紹介され、
本ワークショップでは、ゲノム配列情報を用いた
さらに、大規模な多ゲノム配列比較にもとづくウル
自然選択圧検出法の開発と、実際の配列解析によ
トラ保存領域の同定結果が報告された。また、酵母
って検出された自然選択圧について、6 組の講演者
の全蛋白質に働く自然選択圧の解析により、10 %
にご講演いただき、質疑討論した。以下に、それぞ
を超える遺伝子において自然選択圧が進化の過程で
れの講演者の話を講演順に要約する。
変化したことが示された。
①鈴木善幸(遺伝研):本ワークショップの導入と
いずれの演者の話もゲノム配列情報を新しい手法
して、同義置換速度と非同義置換速度の比較にもと
を用いて大規模に解析するというものであり大変興
づいた新しい自然選択圧検出法の開発状況や、ゲノ
味深かった。会場には多くの聴講者にご来場いただ
として利用されることが期待される。今後昆虫分野
意識の進化
ム配列決定論文などにみられる自然選択圧検出研究
き、質疑討論も充実したものとなった。
だけでなく、広くカイコゲノム情報が利用され、研
池上高志(東京大学)
の最近の傾向について解説がなされた。また、イン
最後に世話人より、プログラムに印刷されていた
究のネットワークが広がることを希望する。
カイコゲノム情報は次のURL を参照:
http://sgp.dna.affrc.go.jp/index.html
【WS07】
意識が進化的に淘汰されたものかどうか、意識を
フルエンザウイルスゲノムや肝炎ウイルスゲノム全
講演順番が予定と異なっていたために講演者ならび
科学的研究(特に進化学会の)としてどの程度グラ
体に働いている自然選択圧の全貌とその特徴につい
に聴講者にご迷惑をお掛けしてしまったこと、また
ウンドできるのか、そうしたことをワークショップ
て議論された。
世話人の不手際により予定終了時刻を15 分程超過
のテーマとし、今回で3 回目である。今年は、岡ノ
②長田直樹(医薬基盤研):生物の集団間におけ
してしまい、次に予定されていたワークショップに
谷一夫(理研 BSI)
、藤井直敬(理研 BSI)
、郡司ペ
る配列のdivergence のデータや集団内における多型
ご迷惑をお掛けしてしまったことを、この場を借り
34
日本進化学会ニュース Nov. 2007
てお詫び申し上げます。
【WS9】
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
35
る可能性があることを発見した。また、栽培イネで
能になってきた。そのきっかけとして、Hauser、
の社会学習では行動選択の基準となる「価値」が伝
ある日本晴のゲノム中のトランスポゾンの頻度と分
Chomsky、Fitch(2002)による言語進化研究の枠
達されるようになったのではないかという立場から、
布を詳細に調べ、イネの遺伝子進化においてトラン
組みを示した論文が多大な貢献をしていることは確
モデルに基づく研究を紹介した。
植物ゲノムの大規模配列情報解析
スポゾンが遺伝子の破壊を多数行ってきている半
かである。しかしこの論文の指摘により、言語起源
最後に、生成文法理論の立場から福井直樹氏の
田中 剛(農業生物資源研究所)
面、新規遺伝子形成にも役割を果たしたことを見い
研究の多くが、再帰性の検討に傾けられてしまった
提言を聞く予定であったが、福井氏が参加できなく
微生物や動物に続いて植物のゲノム配列が複数の
だした。
感がある。我々は、進化学会におけるワークショッ
なったため、急遽、ワークショップに参加していた
種で決定されてきている。2000 年のシロイヌナズ
中村(静岡がんセンター研究所)は、遺伝子の進
プとしてこれまで3 回にわたり再帰性を重要なテー
京都大学の藤田耕司氏に福井氏のレジュメの解説を
ナ、2004 年のイネの全ゲノム配列解読をはじめとし
化過程における融合と分裂をイネ及びシロイヌナズ
マとして議論してきた。今回は、再帰性をテーマと
依頼した。藤田氏は、レジュメにもとづき、再帰的
て、紅藻やソルガム、ポプラなどのゲノム情報が利
ナの完全ゲノム配列中で網羅的に探索し、その速度
すること自体の是非を検討し、再帰性の議論を超え
(自己)埋め込み演算、コピー演算(変換)等につ
用可能になったことから、植物におけるゲノム配列
を推定した研究を行った。その結果、両種間におい
た視点を持つことが、今後の言語起源研究をどう推
いて、具体的事例を挙げながら解説し、さらに藤田
を用いた大規模な分子進化解析が世界中で開始され
て60 の遺伝子で遺伝子分裂もしくは融合を検出し、
進してゆくかを議論した。
氏自身の言語進化観を紹介した。特に、子供の二語
− 11
ワークショップは大きく3 つのパートに区分され、
文において、同じレベルにある2 語が併置されるこ
ようとしている。そこで、田中と伊藤(農業生物資
年あたり遺伝子あたり 1 − 2 × 10
源研究所)は、このような状況を念頭に本ワークシ
ていると見積もられた。この推定値は一般的に知ら
まず生物学的視点からの話題が提供された。最初に
とはまれで、レベルが異なりマージ可能な語が二語
ョップを立案し、植物のゲノム配列情報を用いて
れている塩基置換速度などと比べて桁違いに遅く、
川合伸幸氏により「比較認知科学から見た言語進化
文として表出されるという指摘は、新鮮であった。
様々な視点から進化解析を行っている若手研究者の
こういった現象は非常に起こりにくいと推定され
研究のこれまでとこれから」と題して動物を使った
今回のシンポジウムでは「再帰性を超えて」とい
方々に最新の研究成果発表をお願いした。
る。しかし一方で、融合や分裂はその遺伝子がコー
研究のレビューが行われた。動物を対象としてきた
うサブタイトルをつけたが、再帰性を超えるかどう
の速度で生じ
まず、伊藤が近年の植物ゲノム配列解読状況を概
ドするタンパク質の機能に及ぼす影響が極めて大き
従来の研究を、メカニズムの連続性を探ろうとして
かが問題なのではなく、再帰性を含んだ言語の諸特
観するとともに本ワークショップの立案理由に関す
いと考えられ、低頻度であっても進化に対する影響
きた心理学的研究と、機能の連続性を探究してきた
性をより深く理解しながら、今後の言語進化研究を
る説明を行った後、山崎(バイオ産業情報化コンソ
は大きいかもしれない。また、このような速度の遅
動物行動学的研究に大別し、それぞれの代表的な研
考えることが必要であるという認識を、参加者の多
ーシアム、産業技術総合研究所)よりイネゲノムの
い現象は、数億年から数十億年といった古い系統関
究が紹介された。次に岡ノ谷により「動物コミュニ
くが持つことができたであろうと考える。
包括的アノテーションの概要ならびにデータ公開状
係を分子レベルで解明するために有用な手法を提供
ケーションに見られる特性変動の離散性」と題し、
況に関して報告があった。イネのゲノム配列決定と
すると期待される。
再帰性以外のヒト言語の重要な特性である Para-
アノテーションのために国際コンソーシアムが結成
最後に花田(ミシガン州立大学、理化学研究所)
【WS11】
metric variation について、特に鳥の歌学習研究で発
琉球列島の生物地理学:最新の知見
されており、完全長cDNA を利用した遺伝子座の決
により、特にシロイヌナズナの系統に着目しなが
見された事例が報告された。これらの事例から、鳥
疋田 努(京都大学)
定と、手作業による機能情報記載の精査を実行する
ら、ヒメツリガネゴケ、イネ、ポプラと分岐した後
の歌学習に関しては学習の経済性をガイドする特性
今回のシンポジウム、ワークショップではあまり
ことで、より信頼性の高いアノテーションが利用可
に直列重複を引き起こした遺伝子の機能的な偏りを
変動の離散性が生得的であり、ヒト言語に特徴的な
応募の無かったマクロ系の進化学研究のワークショ
能になっている。さらに、田中がこのアノテーショ
調べた研究に関する報告があった。ストレス応答に
性質を共有することが指摘された。次に、北野誉氏
ップとして「琉球列島の生物地理学:最新の知見」
ン情報を利用したイネ及びシロイヌナズナの転写開
関係する遺伝子群において直列重複が起こりやす
により「発話とFoxP2 遺伝子」としてFoxP2 の発見
を企画した。琉球列島は様々な分類群における種分
始点領域(TSR)のゲノム配列比較解析に関する報
く、他の遺伝子群と比べ早期に消失する傾向を持つ
と系統関係を一義的に決定することの困難さについ
化のホットスポットとなっており、この地域におけ
告を行った。2 種共に遺伝子座当たり平均しておよ
ことを明らかにした。
て、実際にこの遺伝子の系統解析に携わった経験か
る様々な分類群についての生物地理学の最新の知見
そ2 つのTSR を有し、最上流のTSR が下流に比べて
全体を通して、多くの質疑応答が大変活発に行わ
ら説明された。当初文法遺伝子とされたものが、実
を紹介しようというのがこのワークショップの意図
TATA ボックスなどのプロモーター様シグナルが強
れたことが印象的であった。植物の研究者人口は相
際には構音の運動制御に関わるものであり、文法に
するところである。5 名の発表者は爬虫類、両生類、
くなることが明らかになった。
対的には小さいと思われるが、ゲノム配列などの情
特異的とは言えないことが改めて確認された。
昆虫類、陸貝類、維管束植物の専門家である。
次に、構成論的な立場からの話題が3 つ続いた。
天野(北海道大学)は、遺伝地図と物理地図の
報が次々と公開され、また、これまで微生物や動物
情報を対応付ける新たな方法の開発について報告し
で行われてきた進化解析の研究手法が植物に応用で
山内肇氏は「言語知識の自己組織化と進化−言語
動物化石の発掘調査の結果、琉球列島には、現在
た。イネなどでは物理地図上の位置が確定していな
きることから、研究者の注目度も高いのかもしれな
知識はシャボンの膜か」と題して、言語知識の由来
は見られない多くの動物群が生息していたことを紹
い有用情報が過去に数多く蓄積されてきている。し
い。特に、ゲノム重複や遺伝子重複が多いという植
と、発生、生物進化、そして文化進化の関連、ま
介した。なかでも宮古諸島から多くの化石種が発見
かしながら遺伝地図は必ずしもゲノム配列上に線形
物ゲノムの特徴に着目しながら、今後の植物分子進
た、それらのインタラクションが言語知識形成にど
されており、また現生種でも固有のものが多いこと
対応するわけではないため、非線形回帰関数を用い
化研究を推進していくことが期待される。
太田英利氏(琉球大学熱生研)は、最近の脊椎
う影響を及ぼすのかについてモデルを踏まえて考察
から、宮古諸島は沖縄・奄美諸島と同様に、鮮新世
て、分子マーカーとゲノム上の位置のより最適な対
した。続いて橋本と中塚雅也氏により、
「意味変化
以降は孤立したかなり大きな陸域からなる島嶼であ
応付けを行った。さらに、遺伝子発現情報を利用す
の一方向性・超越性と,汎化・メタファー・メトニ
り、東側から沈んでいって、現在のような小さな島
【WS10】
言語の起源と進化 IV :
再帰性を超えて
ミー」と題し、言語の「超越性」が文法化の過程で
だけが残されたという考えを提示した。松井正文氏
生じてくるという仮説について議論が提示された。
(京都大学・院人・環)は琉球列島のカエル類の種
岡ノ谷一夫(理研 BSI)、橋本 敬(JAIST)
さらに井原泰雄氏は、
「文化伝達と言語の起源」と
分化について発表した。琉球列島の固有種のなかで
イネのゲノム比較を行い、ゲノムサイズに見られる
言語学とその関連領域が現代生物学的視点を持つ
題して、言語の起源は社会学習の起源の延長線上に
もイシカワガエルのような非常に古い遺存種である
大きな違いがレトロトランスポゾンの活性に起因す
ようになり、言語の起源と進化の科学的な議論が可
見いだされるかもしれないという立場と、言語以後
こと、広域分布種と考えられてきたものが諸島ごと
ることで候補遺伝子の絞込みも行い、耐冷性に関す
る遺伝子候補の例が示された。
坂井(農業生物資源研究所)は栽培イネと野生
36
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
37
に分化が進んでいることを紹介した。細谷忠嗣氏
特異的な現象である、ということも知らなかった。
いFgf8 のエンハンサーが生じ、それがバレルを重複
析の研究としてこれ以上に詳細に完璧になされた例
(京都大学・院理)は、クワガタムシ類の3 つの属
このことは、この発見に興奮した私が、勢いづいて
させたとすると、まるで遺伝子重複により遺伝子が
は無いであろうということを納得した。そのエンハ
で、その種分化の様相が異なっていることを紹介し
親しくお話をしたことも無かったにも拘らずこの分
2 倍になり一方が新しい機能を進化の過程で獲得す
ンサーの中でも FM2 エンハンサーはげっ歯類特異
た。ノコギリクワガタ属とマルバネクワガタ属では、
野の専門家である大隅典子(東北大教授)さんにお
るのと全く同様に、脳が2 倍になり、新しい脳機能
的というお話があったので、私はげっ歯類特異的で
諸島ごとに種分化しているが、ヒラタクワガタでは
電話し(4 月 10 日)
、翌日に新宿でお会いして説明
を獲得するという可能性がある、ということであ
あるならば、そのエンハンサーはげっ歯類特異的に
分岐は非常に浅いことを示した。つまり、クワガタ
して頂いて初めて知ったのである。このことに味を
る。1 コピイのSINE の挿入が脳機能を倍加させると
出現し SINE(ID 配列、B1、B2 などがある)であ
においては、海を越える分散能力によって、それぞ
しめて、哺乳類の脳の勉強のためにこの分野の一流
いうのは、実にエキサイティングな想像ではないだ
る可能性があるということを指摘させて頂いた。最
れの島嶼での固有化の程度は異なるということにな
の研究者の話を一度聞いてみたいと思い、このワー
ろうか?
後に私が我々のグループの発見に付いて説明した。
る。亀田勇一氏(京都大学・院人・環)は、カタ
クショップを企画したのである。演者は理研脳セン
野村真さんには細胞生物学的な手法を用いて、鳥
ツムリの種分化について紹介した。特に注目すべき
ターの下郡智美さん、大隅研究室の野村真さん(大
類の外套(大脳皮質相同領域)にreelin(哺乳類の
ハンサーはSINE 由来であるというものである。こ
は、これらが沖縄島内で、遺伝的な分化を起こして
隅さんは出張のため都合が付かなかった)、理研
大脳皮質層形成の重要分子)を発現させると果たし
れ以外に、違う座位のSINE が大脳皮質に発現する
いることで、交尾器の形態やニッチェの違いについ
CDB の相澤慎一さん、と私である。
端的に言えば、前脳の背側に発現するFgf8 のエン
て鳥類の脳は哺乳類化するのか?という大変重要な
Satb2 のエンハンサーであることを証明し、一般的
脳のことは全くの無知であったので、4 月から猛
面白い実験に付いて説明して頂いた。結論は一部は
に哺乳類脳の成立にその共通祖先で挿入されたSINE
中村剛氏(琉球大学・ 21 世紀 COE)は、琉球列島
勉強を始めた。多分脳関係のオリジナル論文を100
哺乳類脳に極めて類似の構造が出来るが、全部が変
がエンハンサーとして新しく機能を獲得してきた可
における維管束植物について植物相の比較と遺伝的
報位は目を通したであろう、その中で面白い論文が
わるわけではないというものであるが、実験の手法
能性を提示した。
分化から地理的分布パターンを明らかにし、それを
気にかかっていた。下郡智美さんの 2001 年の Sci-
の精密さには舌を巻いた。大隅典子さんのグループ
以上がワークショップの提案に至る過程とその成果
地理的分断と温度勾配(最低気温)から説明した。
ence 誌に出版された論文である。これは終脳のante-
は“哺乳類脳”とは何か?という問題に正面から取
である。私は脳に関しては全くの素人であるにも拘ら
琉球列島の生物地理学的研究では、遺伝的なデ
rior(ANR)に発現する Fgf8 が大脳皮質のpattern-
り組んでいる世界でも数少ないプロダクティブなグ
ず、声をかけさせて頂いたところ全ての演者の方が快
ータによるいろいろな生物群で系統地理学的が集積
ing に関与することを証明した論文である。我々の
ループであることを納得した。相澤慎一さんは理研
くお引き受けいただいたことに感謝している。一流の
されてきただけでなく、化石調査による古生物学的
発見は、より間脳側に発現する Fgf8 のエンハンサ
CDB のリーダーであるが、ここ10 年位のOtx2 の頭
方の話を聞くことができ、大変勉強になったし、ま
なアプローチも開始されており、さらに陸貝のよう
ーが SINE 由来であるということを示したもので、
部形成にかかるすべてのエンハンサー同定のお話を
たそのような意味で私は幸せ者だと痛感したワークシ
に島嶼内での種分化も明らかにされつつある。引き
何か関係があるに違いないと思い、下郡さんにお電
して頂いた。実に迫力一杯で、データの量は目を見
ョップであった。機会を与えて頂いた進化学会郷会
続き、この地域の生物地理学研究が進み、さらに新
話したところ、お会いすることになり、それからは
張るばかりである。一つの遺伝子のエンハンサー解
長にもお礼を申し述べておきたいと思います。
たな観点から再検討がされることが期待される。
トントン拍子に話が進み、共同研究が成立した。彼
大 会 印 象 記
加し、受賞講演もされた倉谷さん、公開講演会の進
ても調査し、これらの生殖隔離についても示した。
女は我々が見つけた場所でのFgf8 の発現は、最終
【WS12】
的に視床の(大脳皮質ではなく)patterning に関与
“哺乳類脳”の進化
していることを、先のScience の論文で用いたのと
岡田典弘(東京工業大学)
同じ手法を用いて証明していたのである。
我々の研究室ではSINE の研究をもうかれこれ25
ワークショップでは下郡さんには脳関係のイント
年以上続けている。私が36 歳のときに多くのSINE
ロをして頂き、Fgf8 が脳の patterning に関与してい
の起源はtRNA であることを発見した。この発見以
る事を証明するための手法に付いて説明して頂い
行でもご活躍された長谷部さんと深津さんのスーパ
ートリオのやり取りを面白く聞くことができました。
倉谷さんの最初のスライドで引き込まれ、長谷部さ
■ 新田 梢(九大・理・生物)
んの「
(様々な生物でゲノム解析ができる時代にな
来この問題にかかずらわっているのである。その過
た。この話の過程で出てきた脳の「バレル(樽)構
大会印象記を書くにあたって、進化学会と私につ
程で、SINE が系統分析に応用できることを示した
造」というものも私にとっては大変面白いものであ
いて少し振り返ってみます。初めて参加したのが第
デル生物を確立してほしい」という言葉が衝撃でし
し、SINE の増幅機構(2002 年、Cell)も明らかに
った。ネズミの髭は5 本のラインになっていて、そ
5 回福岡大会で、私には難しいことだらけでしたが、
た。午後は口頭発表が行われ、私が参加したB 会場
することができた。しかし、SINE はジャンクDNA
の触覚感覚はまるで人の手のように物の形状につい
活気に溢れた雰囲気に何だかわくわくしたことを覚
には興味深い話題がたくさんあり、質疑応答も活発
であるとズーッと思われてきたし、今でも殆どの人
ての情報を脳に伝える。5 つの並んだ髭で感知され
えています。身近な生物で進化の研究ができること
でした。口頭発表は時間が限られますが、集中して
にはそう思われている。勿論基本的にはそうなので
た情報のトポロジーはそのトポロジーを保ちながら、
を知り、私も進化生物学の研究がしたいと感じたき
聞くことができ、他の方による質疑で自分も学ぶこ
あるが、稀に機能を獲得することがあり、最近の
視床へと更には大脳皮質へと伝えられる。そのトポ
っかけになりました。第 7 回仙台大会では、初めて
とができるので、同時に3 会場以下なら今後も行わ
ロジーを特殊な染色により、 視床ででも大脳皮質
ポスター発表をして、多くの方々と知り合いになる
れると良いなと思いました。
なものであった。
「哺乳動物の脳がSINE の挿入によ
ででも検出することが出来るのである。下郡さんの
ことができました。進化学会は、色々な分野の研究
ポスター発表は、やはり時間内に多くを見て回る
って作られた」という可能性が出てきたのである。
話から引き出されるもう一つの面白い点は、Fgf8 が
者が集まり、若手も自由に議論できる雰囲気がある
のは大変で、発表者になると他の発表を聞くことが
具体的にこの可能性を強く示すデータが出たのは今
大脳皮質や視床で、もし新しい発現場所を獲得した
学会だと思っています。
難しかったようです。偶数と奇数番号による発表時
我々のグループの発見は、まさにエキサイティング
ったので)学生は就職するまでに、一人ひとつのモ
年の4 月になってからである。私はこれまで脳のこ
とすると、バレルが重複する可能性があることを示
さて、今回の大会では、初日の開始直前に受付が
とは全く勉強したことがなく、哺乳類の大脳皮質が
した点である。この新しい発現場所の獲得はSINE
混雑していたので、この点は今後改善されると良い
合が多く、隣との窮屈さは今回も感じられました
哺乳類特異的な6 層構造を持っていて、その成立に
の挿入による新しいエンハンサーの出現による可能
と思います。最初は進化学・夏の学校「エボデボか
(会場の広さは良かったと思います)
。色々な制約が
至るニューロンの動き等も哺乳類にしか見られない
性がある。言い換えると、SINE の挿入により新し
ら見えてきたもの・進化発生学の現状と展望」に参
あると思われますが、進化学会の参加者は議論好き
間の交代がアナウンスされても発表を続けている場
38
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
39
が多く、ポスターを楽しみにしている方が多いと思
果たして我々は高校生が参加することを想定して発
まだ論文にしていないデータやアイデアが発表され
のはやや残念であった。A 会場などでは横に広く、
いますので、今後も会場と時間の工夫をお願いした
表の準備をしただろうか? 専門家が集う学会では、
ることもある。そのようなものまで撮影しても良い
2 ヵ所にスクリーンが配置してあった。人数が入っ
いと思います。公開講演会では、講演者から若手へ
当然専門的な話が中心になるとは思うし、12分しか
のだろうか? 撮影されたものが無断でどこかに転
ても多くの人がスクリーンを見ることができるのは
のメッセージが述べられ、共通して「自分の興味の
講演時間のない一般講演の口頭発表では難しいかも
載されることは絶対にないのだろうか? また、人
良かったが、一方のスクリーンには必然的に講演者
あること、好きなことにこだわってほしい」という
知れないが、シンポジウムやポスター発表では、少
物が撮影される場合は肖像権の問題もあるだろう。
の存在が感じられないのでかなりさみしく、結局講
内容で、それが面白い研究を生み出す原動力になる
なくともイントロダクションくらいは、高校生にも
学会は参加者すべてがルールを守ることを前提に運
演者のいる側に聴衆が集中していた。やはり人数の
のだなと研究者としての心意気も学びました。余談
わかるように配慮することが必要だと思う。
営されるシステムである。今後ともそういう体制が
集まる講演会場のためには、できうることならば階
ですが、2 日目の会場であった時計台記念館周辺の
学生時代、指導教官から「他分野の学会に行って
続いて欲しいと思う。しかしそのようなシステムは
段式の座席に大きなスクリーンの会場があったら、
美しさには驚きました。更に、その周辺で某ドラマ
他流試合をしてこい」とよく指導された。他分野の
悪意を持った者の侵入に対して脆弱である。そのよ
と思わずにはいられなかった。
の撮影が行われており、会場の出入りの度に待たさ
人と議論することで、自分の研究が狭い分野でしか
うな者は、低い確率ではあるが、出現する可能性が
もう一つ驚いたのが高校生によるポスター発表で
れましたが、初めての訪問だった京大には、強く印
通用しないのか、もしそうならば研究のグレードを
ある。そのような問題への対策は事前に準備してお
あった。全く何の予断もなく、ふらりと訪れてポス
象付けられました。
上げるためには何が必要なのかを知ることができる。
くべきだと思う。
ターを見たのだが、これが衝撃的と言っても良いほ
また、昨年に引き続き高校生のポスター発表が企
また、自分では全く気づかなかった点を指摘され、
最後に、大会実行委員長の佐藤先生を始め、運
どおもしろかったのだ。個別に取り上げて感想を言
画され、高校生たちの熱心な姿を見かけたことも今
研究が大きく展開することもある。進化学会は多く
営委員の皆様の御苦労をお察し申し上げるとともに
うことはしないが、実にフレキシブルな着想で行わ
回の特徴でした。高校生たちが、ポスター発表をし
の分野の人が一堂に会する学会であり、他流試合が
最上級の敬意を表させていただきたいと思います。
れた研究が多く見られ、しかもその疑問点、作業仮
ている大学院生に素直な質問を投げかけて、院生が
たくさん出来る場所である。このような、お互いに
どこから説明して良いかわからず困ってしまう場面
刺激を与えあう機会を大切にして欲しいと思う。
説が実にストレートに伝わってくるのが楽しかった。
■ 隅山健太(国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門)
世界に通用する良い研究には、実はこういうストレ
もあったようです。私も高校生の研究指導をしてい
しかし他分野の人と議論をすることは必ずしも容
今回の進化学会大会は個人的にとても楽しみにし
ートさが絶対に必要なのではないかと考えさせられ
ますが、生徒の質問は、意外な部分を率直について
易ではない。バックグラウンドとなる知識基盤を共
ていた。というのは、大会の開催場所は京都大学
てしまった。ちょっとした敗北感である。うらやま
くるので、勉強になります。他の学会でも、高校生
有していなければ、お互いに話が通じなくて苦労す
で、大会委員長が佐藤矩行先生である。となれば私
しいのでそのおこぼれに少しでもあずかろうかと、
の発表時間帯が通常の発表枠と重なっている場合
る場合が多々ある。シンポジウムでも同様である。
が最も興味ある分野であるevo-devo が大々的に取り
質問でもしようと待ちかまえていたのだが、高校生
は、学会員が高校生の発表を聞きにくい傾向がある
講演者の方々が他分野の人が聞いていることを前提
上げられるに違いない、と感じていたからだ。実際
のあまりの若さに気圧されて(会場にいた人ならわ
と思っていました。将来、高校生の参加数が増えれ
に丁寧に発表の準備をしてくださっているにもかか
その期待は裏切られることなく、ゲノムとの関わり
かることでしょう!)一つ二つの質問を投げかけた
ば、高校生による発表を参加者の多くが聞きやすい
わらず、使われている用語になじみがなかったりし
を含めた様々な講演があり、熱心な議論が行われて
だけで情けなくも退却を余儀なくされてしまったの
時間帯に設定し、高校生が進化学の基礎を習得でき
て、内容をフォローしきれなくなることがある。そ
いた。私は大会の全てを見たわけではなくごく一部
が心残りであった。一般ポスター会場では逆に高校
る企画を用意するのはどうでしょうか。
ういうときに、誰か通訳してくれないかな、と思う
についてだけの感想にはなってしまうが、その印象
生たちが高度な質問をしている場面を見かけること
ことがある。これに関して、9 月 2 日の午前中に行
を記したい。
もあり、いい感じでの交流が行われていたのではな
最後に、私が発表したシンポジウム「適応的分化
と生殖隔離」は、立見になるほどたくさんの方に聞
われた、四方哲也先生が企画されたワークショップ
最初に驚いたのは、今回の大会会場の潔いばかり
いかなと思う。こういうことは確実に将来につなが
いていただき、有意義なものになりました。そし
「単一遺伝子型の示す表現型の揺らぎと遺伝的多様
のシンプルさであった。昨年の会場が大規模であっ
っていくのだと思う。進化学がコンピューターやデ
て、私のキスゲの発表についても、コメントをいた
性による揺らぎに相関はあるか?」は大変印象に残
たため余計そう感じるのかも知れないが、これはこ
ータベースなどを使って行われるようになり、若い
だき、研究を進めていく上での課題も見えてきまし
った。金子邦彦先生の御講演の最中に四方先生が質
れで実質を重んじた、別の意味での学会らしさがあ
人でも同じ条件で容易に研究に参入でき、アイデア
た。この場を借りて関係者の方々と聴衆の皆様に感
問やコメントを挟まれるのだが、それが物理学と生
って良いのではないかと好印象を持った。講演者と
次第では古参の研究者を圧倒してしまう可能性のあ
謝いたします。さて、来年は第 10 回大会というこ
物学の間の、双方向のわかりやすい翻訳の役割を果
の距離感が近く、質問やディスカッションがしやす
る時代が来ていることをひしひしと感じた場でもあ
とで、進化学会ならではという包括的な企画を楽し
たしていた。四方先生のように分野間の通訳ができ
くなる環境ができたのではないだろうか。同じ建物
った。
みにしていますし、私自身も研究を飛躍させて臨み
る方は、複数の分野の人が集まる学会に於いて大変
に会場が設定され、上下の移動ですぐに会場間の移
冒頭で書いたevo-devo への期待に加え、一方的な
たいと思います。
重要だと思う。最初は通訳ができる方の助力をお借
動ができる点も良かった。特に今回は興味の重なる
発表ではなく双方向でのディスカッションを実現し
りしながらになるだろうが、お互いの理解を深め、
シンポジウムやワークショップが同時進行となるこ
ていたのが、大会初日の朝に行われた「夏の学校:
最終的に通訳なしで議論ができるようになるとすば
とがあり、頻繁に移動をしたことが会場間の距離が
エボデボから見えてきたもの―進化発生学の現状と
らしいと思う。また私自身もそのようになれるよう
近いことがありがたかった理由の一つである。5 会
展望」であった。講演者による発表がとても興味深
更に精進しなければならないだろう。
場同時進行というプログラムの構成がもう少し緩や
いのは当然であったが、個人的な期待はその後のデ
かなものであったら(せめて 3 会場同時進行か?)
ィスカッションの時間にもあった。講演者はとても
■ 吉田勝彦(国立環境研究所生物圏環境研究領域)
京都の夏は暑い、とよく言われるが、今回の大会
期間中は比較的涼しく、会場に着くまでに精も根も
尽き果てる、ということがなかったのは助かった。
今大会で気になったことであるが、口頭発表やポ
スター発表のデジタルカメラやビデオカメラによる
実は移動を気にすることなく、もっと心ゆくまで大
有名な方々なので、そのお話を聞く機会あるいは著
会場も大盛況であったし、将来世代への投資という
撮影についての是非を議論すべきだと思う。学会は
会が楽しめたのかも知れないと考えるとやや複雑な
書や論文を読む機会は比較的豊富にあるために聞く
意味でも大変有意義な企画であると思うので、可能
研究成果を“公表”する場所であるのでビデオや写
思いもある。講演会場はいわゆる大学の講義に使う
方には予備知識があり、高度でどっしり安定した横
であれば今後も続けて欲しい。ところで、シンポジ
真に撮られてもよいと思うべきである、という考え
ような平面の教室であって、後ろの方に座ってしま
綱相撲をついつい期待しているのである。それに対
ウムや一般講演に参加する高校生の姿も見られたが、
もあるだろう。しかし、議論することを目的として
うとスクリーンの下の方は見えづらい場合があった
して、聴衆からの質問は何が飛び出すかわからず、
今回の大会でも高校生のポスター発表が行われた。
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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特に今回多いと思われる学生からの質問がどれだけ
ところ」が口頭発表の最大の利点であるように感じ
は格別だった.知らない人とも話せるところが懇親
に当日のシンポジウム会場には立ち見が出るほど人
はじけたものになるか、さらにそれに答えなければ
た。他にはシミュレーションモデルの発表も何講演
会の醍醐味であり、今後も飲み過ぎに注意をしつつ
がいて、発表直前まで非常に緊張していました。し
ならない先生方の質問への回答も予測できないもの
か聞いたが、12 分でそのモデルのパラメーター設定
知り合いを増やしていけると良いなと思った。
かし、いざ自分の発表がはじまると緊張は解けて思
であろうから、無責任な見物人としてはいやが上に
を理解し、正しいモデルであるのかどうかを判断す
も期待が高まっていたのだ。見事な司会のもと活発
ることは困難であった。こちらはポスター発表の方
11 年間にも渡るセミの発生調査やバクテリア統合解
段から研究室のセミナー発表のとき直前まで緊張し
なディスカッションが行われ、確かに良かったと思
がいいのではないかと感じた。
析ツールを作ったという発表など、そのまま論文に
ていたにもかかわらず、発表の途中で緊張が解けて
3 日目は中学・高校生のポスター発表があった。
っていた以上にすんなりと発表できました。私は普
うのだが、本音では期待が高かっただけに、ごく若
2 日目は100 人以上の方々がポスター発表をされ
出来るのではないかと思われる位のレベルの高さだ
しまうという良くない癖があります。なぜ良くない
い人からの進化学への率直な質問や将来展望に対す
た。昨年の大会の感想で「発表時間が短すぎる」と
った。
「私たちの発表のレベルが高すぎて誰も見に
かというと、緊張が解けることで余計なことを口走
る疑問がもっと激しい形で出てきて欲しかったと思
いう意見が多かったためか今年は少し長くなった。
来ないのよ」と冗談で言っていた高校生がいたが、
ってしまうためです。しかし、この癖が今回の学会
う。ちょっと大げさなことを言えば、今回のような
私は昆虫の共生細菌に興味があるため、
「マルカメ
その爆弾発言もあながち誤りではないように思う。
発表では良い方向に作用したようです。適度な緊張
テーマで思い切り自分の考えを偉い先生にぶつけて
ムシ必須共生細菌の全ゲノム配列の決定」という発
おそらく指導をなさっている先生が良いのだろうと
の中で、余計なことを口走ることも無く発表を終え
みることが、自分を知ることになり(限界も可能性
表に感動を覚えた。この共生細菌はマルカメムシの
少し羨ましく思った。彼らにはこのまま大学に入っ
ることができました。発表自体に時間をかけてしま
も)
、それが結局進化学の将来を充実させていく源
ダイズ利用に関与していることが示されており、近
て研究を続けて、日本の科学界を引っ張る人物にな
いその場ではあまり多くの質問を受けることができ
になるのではないだろうか。進化学は特に「夢」が
縁であるタイワンマルカメムシも同様に共生細菌を
って欲しいと思う。
ませんでしたが、シンポジウム後に数人からお声を
占めるウェイトが大きな学問だと思うので、自分の
持つのだがこちらはダイズを利用できない。今後タ
夢を鍛えるには実力者とのディスカッションがもの
イワンマルカメムシのゲノムも決定されると、どの
凄くよく効くと思うのだけれど、学生さんにとって
遺伝子がダイズ利用に関わっているのかということ
のせっかくの機会がちょっともったいなかったかも、
が分かるだろう。それによって害虫防除への応用も
と思ってしまう。
考えられるという画期的な研究なのだが、個人的に
私は研究テーマの関係上、生殖隔離の進化、種分
ー会場は適度に広く運営側の配慮を感じました。ま
最後になるが、今回の大会会場となった京大のス
掛けていただき、内容は伝わったんだなと安心しま
タッフや大会役員の方々には大変感謝申し上げる。
した。
■ 山本哲史(京都大学大学院理学研究科)
さがマッチしていないこともありましたが、ポスタ
シンポジウムやワークショップの人気と会場の広
シンポジウムやワークショップでは、進化学だけ
は共生細菌の種類を減少させるような害虫防除には
化、生活史の進化、系統地理というキーワードに関
た懇親会でも食べ物が豊富に用意されており大変良
に非常に多岐にわたるおもしろい講演やポスターが
利用しないで頂きたいなと思う。1 つは今後農業体
連する研究に興味があります。当然、進化学会には
かったと思います。持ち帰り用のパックが用意され
数多くあり、楽しい時間を過ごすことができた。現
系の変遷に伴って、野外の共生細菌の種類がどのよ
気になる発表が多く、それらを聞いてまわるだけで
ていたことには感動すら覚えました。私はお酒を飲
在ゲノム情報を使ってこれから何をしていくのか考
うに変わっていくのかを見てみたいということ、も
も学会を十分に堪能できましたが、それにとどまら
みませんが、おいしいお酒が用意されていたようで、
えなければならない時期にあるが、そのヒントがあ
う1 つは単純に機能を持った共生細菌が好きという
ず、事前に気になっていた発表以外にも興味深い発
最後の一滴まで飲み干そうと残り少なくなった一升
ればとの期待をもって聴いていた。研究者ごとに実
理由からだ。そんな妄想を抱きながら話を聞いてい
表がたくさんあって学会で多くの刺激を受けること
瓶をらっぱ飲みする光景も見ることができました。
に様々なアプローチがあり、今回新たなヒントをい
るうちに自分の発表時間に遅れてしまった。発表で
ができました。私は普段から興味のある分野や分類
今大会は最初から最後まで刺激的で楽しかったと思
くつか拾うことができたように思う。大会をスムー
は色々な方々に質問に来て頂き、
「質問をたくさん
群の論文を選んで読んでしまいます。これは例える
います。
ズに運営して頂いた実行委員の方々に感謝をしたい
受けられる」というポスター発表の利点を享受する
と、インターネットで本を購入するような感じで目
と思う。いつまでも、雑多でエキサイティングで、
ことができた。ただ質問中に発表時間が終わってし
的の物しか目に入りようがない状況です。これでは
でも本当に高度な学問である進化学を盛り上げる大
まったのが残念だった。これ以上進化学会に時間延
興味の幅が狭まってしまうかもしれません。一方、
会が続いて欲しいと願いつつ大会印象記を終わりに
長の注文をつけるのも横暴という気がするので、各
書店で本を探す時には目的のもの以外に様々なもの
った学会」だったと思います。
「飛び回った」のは
したい。
自でできる対策を考えてみた。
「1.ポスターに顔写
が目 につきます。 そして生 物 学 の本 の隣 にある
私自身なのですが、今回は本当によく会場から会場
真を載せる」
。これにより会場にいる誰が発表者か
UMA(未確認生物)の本を手に取り、思わず読み
へハシゴをしました。
を同定しやすくなる。
「2.ポスターにコメント欄を
ふけってしまったりします。学会の大会はまさに書
京都大学理学系研究科6 号館の2 階、3 階、4 階に
設ける」
。これにより発表者は疑問点を知ることが
店で本を物色するのと同じで、今まで注目していな
5 会場が組まれていたわけですが、上がったり下り
しみにしていた京都大会へと参加した。今回印象に
でき、メールなどで返答することもできるだろう。
かった分野や分類群に興味を持つことができまし
たり、隣の部屋から次の部屋へ、非常によく移動し
残ったことをここに記させて頂く。辛口な部分もあ
決まった時間をどう利用するかは自分の腕の見せ所
た。同時に、自分の脳にも、いろいろな分野に興味
ました。自分の錯覚や思い込みもふくめて理由は
るとは思うが、学会や会員に対する愛情ということ
である。
を持つことができるような柔らかい部分がまだ残っ
色々あると思いますが、一つ確かに言えることは
■ 安達鉄矢(広島大学大学院生物圏科学研究科)
酷暑もようやく終わりにさしかかった8 月末、楽
■ 太田博樹(東京大学・院・新領域)
今回の大会の印象を一言で形容するなら「飛び回
夜の懇親会であるが、今年は一段と思い出に残る
ていることを実感しました。受けた刺激の全てが私
「今年から一般口頭発表が採用された」ことが理由
1 日目は午後から今年から導入された口頭発表が
こととなった。今回の学会では幸運にも日本酒は大
の研究に反映できるとは思いませんが、刺激的な研
としてあげられると思います。例年の進化学会では
あった。その中でも興味深かったのは畑啓生さんの
吟醸が、焼酎は鹿児島の珍酒が振る舞われており何
究を目指すモチベーションになったことは確かです。
一般口頭発表はありませんでした。私の記憶が正し
「魚による栽培共生」の話であり、これはNHK で放
杯も頂いた。そのまま勢いにのり、全く面識のない
そして私自身もシンポジウム「適応的分化と生殖
ければですが、少なくともここ2 年くらいはなかっ
送されたためか聴衆が多かった。ビデオの接続に苦
京大のH 研の方々に話しかけた(からんだ?)
。ス
隔離」において発表させて頂きました。前日に発表
たはずです。一般発表はポスターのみ。自分がオー
戦されつつ、笑いも取りながら放映され、一目で栽
タッフとして働かれてお疲れであるのに、皆さん優
用スライドの最終チェックをしている時から「内容
ラル・プレゼンテーションしたければ、自分でシン
培共生とはどのようなものであるのかということを
しく接してくださり、そのままそちらの研究室に行
が伝わらないんじゃないか」
「興味をもってもらえ
ポジウムやワークショップを立ち上げるか、それら
理解することができた。このように「動画を使える
って飲むこととなった。久しぶりに大勢で飲むお酒
ないんじゃないか」と不安になっていました。さら
に応募する必要がありました。しかし、今年は一般
でお許し頂きたい。
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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口頭発表が登場したわけです(8 月31 日・金曜日・
然選択圧の検出』は、私自身の研究と関係が深いこ
スターを展示できた時間は9 時 45 分から14 時 30 分
い点だと思う)
。なんにせよ、今後、進化学会がど
午後)
。この時間割や場所に「飛び回り」の原因が
ともあって、
「飛び回る」ことなく一つの会場に席
だった。展示の準備にかかる時間や公開講演会が13
のような学会になっていくのか興味深い。
あったと分析しています。すなわち、プログラムの
を陣取ってじっくり拝聴させてもらいましたが、分
時 30 分から始まったことなどを考慮すると、実質
マクロ分野の研究発表が減ったという印象につい
スケジュールにおいて、発表内容が時間や場所であ
子進化学の王道ともいえる議論が展開され、とても
的にはポスター発表ができたのは10 時から13 時 30
て述べたついでに、今回あらためてマクロ分野の学
まりまとまりが無かった。あくまでシンポジウムや
充実したものだったと思います。
分の3 時間半ほどだった。展示時間がこれだけでは、
会と進化学会の違いを感じた点があったので、それ
最後にポスター発表について。一般口頭発表の登
聞く側としては聞きたい発表を十分にまわることは
について記しておこう。それは懇親会での雰囲気で
極めてクルードな状態だったと思います。そのため、
場にもかかわらず、ポスター発表会場も大変な活気
出来ないし、発表をする側としては、自分の発表を
ある。一言でいえば進化学会の懇親会は、マクロ分
聴きたい発表の行われている場所へ「飛び回る」こ
に満ちていたと思います。会場の場所の設置(ポス
するだけに終わってしまって、他の人のポスター発
野のそれに比べて落ち着いた雰囲気がある。マクロ
とになった、というのが私の分析であります。しか
ター同士の間隔など)もちょうどよかった。ポスタ
表を聞くことはできない。会場をとれなかったなど
分野のうち最も落ち着きがない(より率直にいえば
し、プログラム委員をして下さった先生方をここで
ーの脇に置いてあった机で、田村浩一郎さんがパソ
のやむを得ない事情があったのだと思われるが(そ
意地汚い)と思われる動物行動学会の懇親会では、
批判しようとしているわけでは毛頭ありません。む
コンを使ってMEGA new version のデモをしておら
もそもポスター発表は当初の計画に入っていなかっ
乾杯の前に一部の人間がこっそり飲み始めているこ
しろ逆で、プログラムにおける時間や場所の割当が
れましたが、あれを見てポスターとパソコンを組み
たので主催者の方々は準備など大変だったと思われ
とは珍しくはない。食料を確保しやすいようにと位
クルードでよかった、
「飛び回れて」よかったと言
合わせた新たな発表スタイルの可能性を想起しまし
るが)
、ポスター発表は活発な議論の場でもあるの
置取りが繰り広げられることもあるし、乾杯後も食
おうとしています。1 つの会場、1 つの時間枠で、1
た。たとえば、紙のポスターの代わりに液晶ディス
で、もう少し長い時間を確保して欲しかったという
べるのに集中するため歓談が始まるまでにはしばら
つのテーマを掲げてやるのであればシンポジウムや
プレイをパネルに貼付けて、そこへ直接パソコンを
のが正直な感想である。
く時間がかかる(マクロ分野の研究者の名誉のため
ワークショップと違いは無いわけですから、一般口
つないでポスター発表するという形式は、近い将来
頭発表の場で発表したり、聴いたりする意義を高め
る(差別化)には、クルードであってよかったと思
ったわけです。結果、普段の学会では聴くことが無
ワークショップと比較して、ですが、私の印象では
改善を望む点は以上である。では本筋の学会の印
に書いておくが、皆がそうというわけではない。そ
実現してもおかしくないのではないかと。予算や電
象について書こう。研究の発表内容について書きた
ういう人がいるということである。また植物系の学
源の問題はあるかもしれませんが、進化学会での多
いこともいろいろとあるのだが、私は今回の大会に
会は動物系の学会より上品だという反論も聞いたこ
くの発表は、数ある学会の中でもこうしたスタイル
参加して、進化学会の方向性が学会発足当時と比べ
とがある)
。それに比べて、進化学会の懇親会には
かった発表を聴く機会を得ました。私は上述のよう
に適しているでしょう。それと、昨年から始まった
て変わってきたという印象を受けたので、それにつ
万事落ち着きがある。それゆえ動物行動学会ではそ
に聴きたい発表の行われている会場へ「飛び回っ
『高校生によるポスター発表』で参加していた高校
いて述べようと思う。それは、全体的にマクロ寄り
れなりの行動をとる私も、進化学会の懇親会では落
て」いたわけですが、それでも自分の聴きたい発表
生たちが、ポスター発表会場でひときわ目立った活
の研究発表が減ったということだ。マクロ寄りの研
ち着いて食べることができる。動物行動学会の懇親
の前に、予定していなかった発表を見る機会を得ま
気をあたえていたことは、特筆に値します。昨年の
究といっても意味が曖昧なのだが、大雑把に言えば
会と進化学会の懇親会の違いを、今大会の懇親会に
す。そうすると、タイトルのみからでは気づかなか
代々木での大会では、高校生ポスターは4 件(うち
生態学分野の研究である。マクロ寄りの研究発表が
おける長谷川眞理子さんのあいさつにも見ることが
ったけれど、非常に興味深い発表に偶然出くわすこ
1 件はキャンセル)というものでしたが、今年は 8
減ったという意見は、学会後の飲み会でも多かった
できた。今回、進化学会の懇親会において、長谷川
ともありました。逆に、私自身も一般口頭発表で発
件のポスターが堂々の発表をしていました。このた
(ここにはマクロ、ミクロ両分野の研究者がいた)
。
さんは、話に入る前に「ちょっとよろしいでしょう
表させていただきましたが、思いがけない人にも聴
め参加した高校生も増え、レギュラーの(高校生で
過去の大会プログラムを見返してみても、過去の学
か」と聴衆へ呼び掛けていらっしゃった。これが私
いてもらえたと思います。そこから思いがけないデ
はない)ポスター会場でも目立った存在であったの
会には「生態」を前面に押し出したセッションや会
には少々おもしろかった。というのも、長谷川さん
ィスカッションも生まれました。やや体力は消耗し
だと言えます。しかも、今年の高校生ポスターのレ
場が確かにあった。誤解しないで頂きたいのだが、
は、以前、動物行動学会の懇親会では「みなさん手
ましたが、こうした「善き偶然性」はプログラムの
ベルは異常に高かった。驚くべきものがありました。
私はマクロ分野の研究発表が減った現状を改善すべ
を止めずにどうぞ食べていて下さい。これが行動学
クルードさの賜物でした。もしかしたら、プログラ
特にバイオ・インフォマティクスの発表が増え、そ
きだと思っているわけではない。マクロ分野の研究
会のカラーですから」と前置きをして話を始められ
ム作成をして下さった先生方は、明確にそれを意図
れらは質も高く、知的好奇心に年齢は関係ないとい
の話が聞きたければそれに適した学会に参加すれば
たことがあったからだ(正確な文言はうろ覚えで
して今回の一般口頭発表をこうした形に企画された
うことをあらためて思い知らされた次第です。進化
良いだけの話であり、進化学会に求めているものは
す)
。動物行動学会では懇親会での勢いが学会全体
のかもしれませんが。
学の裾野を広げる意味でも意義深いと思うので、来
別のものだからだ。むしろマクロ分野の研究発表が
としての勢いにつながっているところもあり(本当
年も是非「高校生ポスター」は継続していただいた
減ったのは、進化学会の方向性が定まってきたから
かな?)
、学会全体としても良くも悪くもそれを許
ら良いと思います。
だと考えるべきかもしれない。ただし、これが進化
容する雰囲気がある。意地汚いとマクロ系になるの
一方、シンポジウムやワークショップが一般口頭
発表に対して劣勢だったわけではありません。今回
の大会では、夏の学校が『エボデボから見えてきた
ともかく、暑いだろうな、と覚悟して向かった京
学会が発足当時に目指してきた方向だったのか、そ
か、意地汚くなければマクロ系では生きていけない
もの―進化発生学の現状と展望』であったことに象
都でしたが、幸い大会期間中、気温が下がり、過ご
して進化学会全体としてこれから望むべき方向であ
のかわからないが、案外そのあたりに進化学会から
徴されるように、また倉谷滋さんが木村賞を受賞さ
しやすい中での進化学会でした。
るのか、いまいちど確認しておくことに意味はある
マクロ研究者が減った要因があるのかもしれない。
と思う。なお、マクロ分野の研究発表が減った傾向
…などと考えると面白いかもしれないが、まあ何の
が事実なのかどうかはもう少し慎重であるべきかも
根拠もない。
れたことも含めて「エボデボ花盛り」の感がありま
した。これもまた「大会印象記」で特筆すべきこと
■ 三上 修(九州大・院・理)
の一つと思われます。進化学研究において、エボデ
さて、今大会の印象記ということだが、それを書
しれない。というのは、進化学会は開催者側の意向
何はともあれ、私は今回の大会を非常に楽しむこ
ボの流れは以前から脈々とあったわけですが、近年
く前に今大会に関して改善を望む点が一つあったの
が強く反映される学会であるため、たまたまミクロ
とができた。マクロ系の学会ではあまり聞く機会の
より確実に重要な流れとなりつつあることを今回の
で、今後の参考に書いておこうと思う。それはポス
分野寄りの大会が続いたためかもしれないからだ
ない興味深い発表をたくさん聞くことができたし、
大会では大いに感じました。また、鈴木善幸さんが
ターの展示時間の短さである。この点については、
(余談だが、開催者側の意向が大会の雰囲気に強く
もちろん、学会後の飲み会も楽しんだ。将来に対し
企画されたワークショップ『ゲノム情報を用いた自
多くの方々が同じ感想を持ったと思う。今大会、ポ
影響するというのは、進化学会の小回りの効く面白
て暗欝としがちなポスドクとしては、若い人たちの
44
日本進化学会ニュース Nov. 2007
「研究が楽しくてしかたない」という姿勢がうらや
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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体群動態の研究を続けました。今回、研究奨励賞の
上の二つのやり方は、もちろんある生物の研究に
研究奨励賞受賞記
受賞対象になったのは、この実験室内での研究成果
ましくもあり、恐れを感じさせられた部分でもあり、
おいて両立する方法論ですが、実は片方がなくても
それらが自分を見直す機会にもなった。また先輩の
成り立つようにできています。遺伝子の機能は、そ
方々からは励ましのお言葉を頂いたりもした。そう
の進化史的背景を知らなくても研究できますし、適
応進化の研究は、
「至近要因」をブラックボックス
進化と生態のフィードバック:
迅速な進化と個体群動態
態の詳細な観察があったからこそ実現できたのかも
いう意味で大会を満喫することができた。最後に、
暑い中、準備など大変だったと思われるが、快適な
に入れても成立します。分子生物学や発生学と、進
吉田丈人(東京大学総合文化研究科)
の生物の振る舞いに立ち戻ることが、新しい実験ア
学会を開催してくださった方たちにこの場を借りて
化学との接点を見いだそうという試みは、上の二つ
お礼を述べ締めることにする。
のやり方がどちらも必要であるということを主張で
従来の進化生物学では、種分化や適応放散といっ
きてはじめて、その必要性が理解できると考えま
た時間スケールの長い進化イベントの理解が中心で
■ 土畑重人(東京大学大学院 総合文化研究科)
本冊子の表紙を見ると、日本進化学会の英語名は
“Society of Evolutionary Studies, Japan”であるこ
だと思いますが、これらの成果は野外での個体群動
しれないと思います。実際、私にとっては、野外で
イデアを生み出す源泉にもなっています。
す。そして私は、新たに検証可能な仮説をより多く
したが、もっと時間スケールの短い進化イベント
生産できるかどうかという観点が重要になってくる
(迅速な小進化)が自然界で広く見られるという事
実は、近年になって注目されるようになりました。
と思っています。
時間スケールの長い進化は、例えば生物間の相互作
とがわかります。カルチュラル・スタディーズとい
一般に、関係性を知るためにはまずは物質的基盤
う分野もありますが、スタディーズという名前をつ
を明らかにすることが必要であるようにも思います
2007 年日本進化学会研究奨励賞を受賞し、大変
用や生物の数の変化といった、短い時間スケールで
ける動機は、その分野がさまざまな研究対象・専門
が、適応進化学は、関係性の解明が先行する形で進
光栄に思うと同時に、選んでくださった先生方をは
起こる生態的現象に影響を与えるとは考えにくいも
領域を含んでいるということにあるようです。よく
んできました。関係性がわかることで、新たに検証
じめとする学会員の皆様に感謝します。ありがとう
のです。Evelyn Hutchinson が“the ecological the-
言えば今後の発展が期待される、悪く言えば烏合の
可能な仮説が立てられるようになることが多いので、
ございました。この場を借りて、自己紹介と簡単な
ater and the evolutionary play”と比喩したように、
衆ということになるでしょうか。
先に関係性がわかっていて、後になって物質的基盤
研究紹介をさせていただきます。
時間スケールの長い進化の原動力として生態的な影
確かに進化学会大会での発表は、毎回じつに多様
がわかり始めた進化生態学などの分野(私の専門で
私は、福井県三方町(現若狭町)出身で高校卒
響(例えばニッチ重複など)が重要であることは古
な内容を含んでいます。このような学会においてま
す)においては、分子生物学その他との融合は、既
業までそこで育ちました。大学は北海道大学水産学
くから認識されていましたが、逆に進化的過程によ
ず大変なのは、運営を行う大会実行委員会の方々で
にある仮説を検証するためには有効だとしても、新
部に進学し、その当時、将来はウナギの養殖技術の
って生態的現象が改変されるという関係は重要では
しょう。それこそポスター発表の順番を考えるだけ
規の仮説の生産にはそれほど威力を発揮しないので
開発に取り組みたいと考えていました。しかし、水
ないと考えられていました。しかし、短い時間スケ
でも、単純な作業ではないと思われます。印象記を
はないかという気がしています。むしろ逆に、分子
産学を学ぶにつれて興味が移り、湖沼にすむプラン
ールで起こる進化の発見は、従来考えられてきた進
書くにあたって、まずは運営に携わられた方々のご
生物学において研究されてきたとある遺伝子の機能
クトンの生態学に惹かれるようになりました。その
化と生態の関係に再考を迫るものです。同じ時間ス
尽力に感謝したいと思います。
について、その適応的意義を検証するという研究の
後の北大水産での修士課程と、京都大学生態学研
ケールで起こる進化的現象と生態的現象は相互に密
ほうが、検証可能な仮説の生産性を上げることにつ
究センターでの博士課程では、北海道渡島大沼・小
接に関連しているかもしれない、という可能性がで
ながるでしょう。
沼や琵琶湖にすむ動物プランクトンの個体数変化、
てきたのです。今回の受賞対象になった私と共同研
進化学会において次に問題となるのは、参加者が
多彩な発表内容から何を学ぶべきか、ということに
なるでしょうか。本年度の大会では例年にも増し
他にはどのような道があるのか。分子生物学や発
動物プランクトンとその餌となる藻類・原生動物の
究者による一連の研究は、まさにその進化と生態の
て、分子生物学・発生学と進化学との接点を見いだ
生学から得られた物質的基盤に関する知見から、そ
関係を、時間と手間のかかる野外観測と操作実験で
密接な関係を現実の生物群集で実証したというもの
そうという研究が多かったように思います。以下、
れらの中にある関係性の解明を目指し、そこで理解
調べました。これらの研究は一見地味なものです
です。
大会参加の印象として、この分野の研究について私
された関係性を、進化的な文脈とあわせて実際の生
が、1 年をとおして絶えず変化する美しい湖と、そ
実証研究の対象とした生物は、湖沼などの淡水環
なりに考えたことを書きたいと思います。
物にフィードバックする、というのがありうる一つ
こにすむプランクトン群集の実際を見ることができ
境にすむプランクトンです。捕食者であるワムシ
科学という方法論は二つの側面を持っていると考
の形だと思っています。ここでいう関係性は、必ず
たのは、大変幸せでした。
えています。一つは物質的基盤の記載、もう一つは
しも進化そのもののことではありません。進化を可
京都大学で博士学位を取得したのち、ポスドクや
ロレラ(Chlorella vulgaris)からなる捕食者−被食者
関係性の解明です。大雑把に分けると、分子生物学
能に(あるいは不可能に)するしくみ、言い換える
リサーチアソシエイトとして米国コーネル大学生態
系を、実験室内で連続培養装置(ケモスタット)に
や発生学は前者に、自然淘汰説や分子進化の中立説
と、進化にさらされる階層の下にある階層でのダイ
学進化生物学部に所属し、その後の約5 年間を過ご
より培養することで、人工的な小さな生態系を作成
は後者に位置づけられるでしょう。遺伝子の担体と
ナミクスのことです。
しました。野外での動物プランクトンの個体数変化
しました(図 1)
。この捕食者−被食者系は、ロトカ
は、その大まかな季節的変化はメカニスティックに
ーボルテラの捕食モデルが示すような、個体数の振
してのDNA、および各階層におけるその機能につ
上記のことは、大会中、進化発生学(エボデボ)
(Brachionus calyciflorus)とその餌である緑藻のク
いての研究は、多様な生物界を理解する共通の土台
についてのいくつかの集会、および、
「移動知」の
説明できるものの、短期間に見られる変化は説明す
動を見せます。餌藻類の密度が上昇すると追うよう
として、不動の地位を築いています。また、自然選
シンポジウムに触発されて、考えたことでした。具
ることが大変難しいものです。そこで、野外の湖沼
にして捕食者の密度が増加し、餌藻類は摂食される
択説や中立説は、生物界の多様さの中に共通の動力
体的にどのような研究が可能なのか、来年の進化学
生態系から切り出した、とても単純な生態系を実験
ためにその数が減少します。すると、捕食者は餌不
学的な説明原理を与えることができた、という意味
会に参加するまでの課題です。
(そういえば来年度
で非常に成功してきました。
は主催者側だったな…)
室内に再現し、その中でプランクトンの個体数変化
足に陥りその数が減り、摂食圧が下がるために再び
(個体群動態)を研究する方法があります。実験室
餌藻類が増加するという振動(サイクル)を繰り返
内で個体群動態の「原理」を調べることは、野外で
すのです。私たちの研究で、餌藻類が進化すること
の個体群動態の理解に貢献すると期待されます。コ
によりこの振動のパターン(サイクルの周期と、捕
ーネル大では、実験室内の人工生態系を用いて、個
食者と餌サイクルのフェーズの時間的ずれ)が大き
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
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く変わる、ということがわかりました。すなわち、
食者が少なく餌藻類が多いときには、非防衛タイプ
らも重要な1 テーマになり続けることには変わりな
れは自分にとっても切実で、にもかかわらず日ごろ
餌の進化がこの小さな生物群集の生態的な現象(個
が有利になるのです。実際、遺伝マーカーを利用し
いと信じています。
は敬遠しがちなテーマです。今回、研究奨励賞受賞
体群動態)を、がらりと変えてしまうことがわかっ
てクローンの頻度を観察してみると、捕食者と藻類
以上が、主にコーネル大学で研究した内容になり
たのです。
密度の変化に応じて、予測したとおりの自然選択が
ます。その後、昨年秋に東京大学総合文化研究科広
起こることもわかりました。
域システム科学系に講師として着任しました。理想
私の場合、そもそも生物に興味を持ったのは子供
餌藻類の適応進化が起こるためには、遺伝形質が
を機に自己紹介を兼ねてこれまでの経験を振り返り
つつ、この問題について考察したいと思います。
遺伝子型間で異なっており、その形質と適応度との
餌藻類の個体群が形質の異なる複数のクローンで
を言えば、すぐ近くに湖があり、そこに棲む生物群
のころ、近所の湖で虫採りや魚釣りをした体験を通
間に相関関係があることが必要になります。餌藻類
構成されているときは、このような藻類の迅速な進
集を実験室の内外で研究することができれば良いの
してでした。毎日毎日、朝から晩まで生き物の後を
のクロレラは無性生殖のみで増殖するため、個体群
化がおこることで、捕食者と餌の間に見られる相互
ですが、大都会の中にある駒場では望むべくもあり
追いかけ回しているうちに、漠然と生物の多様性に
はクローンの集合と見ることができます。人為選択
作用の強さに変動が生じ、個体数の振動は周期が長
ません。駒場でも、得意とするケモスタット培養系
関心を持つようになり、気がつけば「生物学者にな
実験とコモンガーデン実験の結果、実験に用いたク
く奇妙なフェーズ関係を見せます。しかし、餌藻類
を駆使して、これまでに知り合った多くの共同研究
る!」と宣言、九州大学生物学科に入学していまし
ロレラ個体群には、ワムシ捕食者に対する防衛能力
がただ一つのクローンで構成されており、遺伝的多
者と共に新しい研究をすすめようとしています。こ
た。とはいえそのころは具体的にどのような研究を
の異なるクローンが複数存在することがわかりまし
様性がなく迅速な進化が起こらないときには、個体
の拙文を読んで興味を持ってくださった方々がいれ
したいのか、また研究者になるというのはどういう
た。一方、防衛能力の高いクローンは、栄養塩が不
数の振動は周期が短く、ロトカーボルテラの捕食モ
ば、ぜひ研究室を一度訪ねてきていただきたいです
ことなのか、全く分かっていなかったように思いま
足する条件での増殖能力が低く、栄養塩を巡る競争
デルが予測するような古典的なフェーズ関係を見せ
し、特に、一緒に研究する学生やポスドクの方々の
す。その後、大学の講義を通して集団生物学、特に
には弱いということもわかりました。すなわち、こ
ることがわかりました。私たちの研究により、進化
参加をお待ちしていることを、この場を借りて宣伝
集団遺伝学を学ぶにつれ、
「生物進化という非常に
れらの遺伝子型間(クローン間)で、防衛能力と競
的現象が生態的現象に影響し、さらにそれはフィー
したく思います。
ウェットな問題を、数式というドライな道具を使っ
争能力の間にトレードオフがあることがわかったの
ドバックされて生態的現象が進化的現象に影響する
です。また、これらの形質が遺伝する形質であるこ
という関係が明らかとなりました。
ともわかりました。
私たちの研究は、人工的で小さな実験系での現象
最後になりましたが、これまで私を指導してくだ
て理解する」というアイデアに魅了されるようにな
さった先生方や、充実した時間を共有してくださっ
りました。結果、数学が得意でもない私が集団遺伝
た共同研究者の方々に感謝したいと思います。あり
学専攻の(前)山崎常行教授の研究室に在籍する
がとうございました。
ことになり、当時助教授だった舘田英典教授の下、
これで餌藻類が適応進化する条件が整ったわけで
を発見しましたが、この発見は野外の生物群集を理
すが、では、どんな選択圧が働いて自然選択が起こ
解するための重要な要素を提供しています。野外生
るのでしょうか。ここで、個体数の振動が重要にな
物の個体数変化を網羅的に調べた研究によると、自
連絡先
故・木村資生先生の「分子進化の中立説」発表以
ってくるのです。捕食者個体数の振動は、餌藻類に
然界ではおよそ3 割の個体群で、個体数が周期的に
〒 153-8902 東京都目黒区駒場 3-8-1
来、日本人研究者が世界をリードしてきた分野でも
かかる捕食圧を変化させますし、餌藻類密度の振動
振動しているようです。そのような個体数の振動が
東京大学総合文化研究科広域システム科学系
あり、未だにこの研究室で両教授や研究室の方々に
は、栄養塩濃度の変化を引き起こし競争の強弱を生
あると、その個体群と相互作用している他の個体群
吉田丈人
ご指導いただいたことが私の学者半生において、も
み出します。その結果、捕食者が多く餌藻類が少な
(例えば、餌や競争者)には、振動する選択圧がか
Tel: 03-5454-6645
っとも幸運な出来事の一つだったと思っています。
いときには、防衛タイプの藻類が適応的になり、捕
かることになります。また、ガラパゴスのフィンチ
Email: [email protected]
当時、この研究室では生物集団内で起こる遺伝的な
Website: http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/yoshidalab
変異・変化が進化に与える影響についての研究が実
の長期研究などで明らかにされた
理論集団遺伝学を学ぶ機会を得ました。この分野は
験・理論両面から進められていました。私自身も修
ように、自然での環境要因の変化
は簡単に振動選択をつくりだすの
かもしれません。このような振動
選択が広く見られるのであれば、
野外生物の個体群動態を理解する
にあたって、私たちが発見した迅
図 1 ワムシとクロレラを用いた人工生態系
栄養塩を含む培養液がケモスタット容器に流入し、容器内で増殖したプ
ランクトンと未使用の栄養塩が流出する。流入と流出は連続的で、長期
にわたってプランクトンを飼育することが可能な連続培養装置である。
研究奨励賞受賞記
考察:進化学者になるということ
― 5 合目リポート―
荒木仁志(オレゴン州立大学)
士・博士課程を経てその両方に携わり、実際にショ
ウジョウバエの選択実験などを通じて進化の過程を
目の当たりにしながらその現象を説明する理論的背
景も学べるという、願ってもない経験をさせていた
だきました。
速な進化の影響は無視できないも
博士号取得後は集団遺伝学の分野では世界をリー
のとなります。個体群振動の周期
ドするシカゴ大学に在籍し、Martin Kreitman、Joy
が変化することは、例えば感染症
Bergelson 両教授の下、植物とバクテリアの分子レ
のアウトブレーク頻度や水産生物
ベルでの共進化をテーマとした研究を行いました
の漁獲高変化など、私たち人間の
(文献 1)
。シカゴで過ごした3 年間は刺激的で充実
生活にも直結するような影響をも
したものとなりましたが、実際のところバクテリア
たらす可能性もあります。私の最
の病原性遺伝子(Avr-gene)同定がうまくいかず、
も興味のある現象は生物の数の変
進化の研究、と一口に言っても、その対象や方法
かなり悩んだ時期もありました。今になって見れ
化ですが、その個体群動態を理解
は千差万別です。このことは、進化学会の多彩な顔
ば、この「遺伝子を同定できなかった」ことがバク
するための研究を今後も継続して
ぶれや研究内容によく現れています。では、生物進
テリアの Avr-gene に欠失・挿入多型が存在し、そ
いきたいと思います。その中で、
化に興味を持った人はどうやって自分の研究テーマ
こに植物との共進化に伴う平衡選択がかかっている
私にとって迅速な進化が、これか
を見つけ、一人前の研究者になるのでしょう? こ
(文献2、3)
、という新しい発見につながるわけです
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
が、当時の私には知る由もありません。毎日毎日遺
載一遇の機会です。そこで、Blouin 研究室におい
伝子同定失敗を意味するまっさらなX 線フィルムを
て遺伝的多様度の高いマイクロサテライトを用いた
ながめては、肩を落として帰宅していました。
DNA 親子鑑定解析を担当することになりました。
てみました。半人前の私が「どうしたら一人前の研
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解する研究も推進しています。
さて、ここまで自分の研究遍歴をざっと振り返っ
そこで初めて、自分の研究の在り方、研究者とし
Blouin 教授にしてみれば魚の研究経験のない私に
究者になれるのか?」という問いに答えるすべはあ
ての今後について正面から考え始めたのです。そし
プロジェクトを任せるのは勇気のいる決断だったと
りませんが、これまでの経験を通して、自分なりに
て辿り着いた結論は、
「うまくいってもいかなくて
思いますが、彼の後日談によれば、
「魚類学者に集
大事だった、これからも大事であろうと思う点をま
も、自分の研究について考えること、話すことがそ
団遺伝学を勉強させるより、集団遺伝学者に魚類学
とめてみます。第一は、なんといっても「人との出
れだけで楽しいと思える研究をしよう」ということ
を勉強させるほうが早い」と考えたそうです。
会い」です。これまで、直接ご指導いただいた研究
でした。かなり短絡的な結論ですが、それまで他の
ところで、集団レベルで個々の親子関係が分かる
室の先生・諸先輩方はもちろん、海外で同じ時期を
仕事に人生の価値を見いだされて研究室を去られた
と、親一個体あたりの子孫数、つまり繁殖成功度や
過ごした仲間、学会やセミナーで知り合った友人た
多くの方々、あるいは素晴らしい研究を長年続けて
その個体間分散など、集団中で一世代ごとに起こる
ちなど、本当に多くの人たちに支えられてきました
おられる研究者の無限とも思える好奇心や研究に対
出来事を推測するための貴重な情報が多く得られま
(写真 2)
。特に現在では、進化研究・魚類研究への
する情熱を目の当たりにしつつ、研究を「続ける」
す。このプロジェクトで私はまず、簡単な数学を使
興味を共有する世界中の研究者と知り合う機会に多
ことの難しさ、情熱を維持することの大変さ・大事
ってこの川に遡上する天然魚と養殖放流魚の自然繁
く恵まれ、交流は深まる一方です。このような研究
さを実感した上での結論でした。そこから現在に至
殖成功度を比較するための不偏相対適応度推定法を
をしていなければ知り合えない人々と親しくなれる
る「My Research 探し」が始まるわけですが、その
準備し、これを用いて天然魚と一世代目、二世代目
ことは貴重な財産であり、これからの出会いも大事
上述のポイントは進化学者を目指す上で、あるいは
第一歩は単純に好きな魚の研究を始めることでし
の養殖放流魚の繁殖成功度比較を行いました。その
にしていかなければ、と思います。
社会で生きていく上でも通じるところがあるように
た。ただし、せっかく長年にわたって学んできた集
結果、これらの魚は元来同じ川の同一集団由来にも
第二は、研究視野の広さです。前述のように進化
団遺伝学の知識を活かさない手はありません。そこ
かかわらず、養殖場で世代を経るごとに「家畜化
の研究手法・研究対象は非常に多様で、ともすれば
偉そうなくくりになってしまいましたが、少しで
で、現在在籍しているオレゴン州立大学、Michael
(domestication)」が起こり、わずか数世代で川で
他分野の人とは話が合わない、と考えがちです。し
も研究者を目指す方、私と同じような立場にある方
Blouin 教授が当時計画中だった、サケ科魚類の繁
の自然繁殖の成功度が天然魚の半分以下になってい
かしながら研究計画を立てる際、他分野の知見が参
の参考になれば幸いです。また、この場を借りてこ
殖成功度に関する遺伝的解析プロジェクトに参加す
ることが分かりました(文献 4,5)
。さらに興味深
考になった例は数知れません。
(私の場合、研究テ
の栄誉ある賞を受賞させていただきましたこと、本
ることにしたのです。
いのは、二世代目の養殖放流魚同士で比較した場
ーマが様々だったため必ずしも望んで勉強したわけ
稿を執筆する機会をいただきましたこと、心よりお
このプロジェクトでは、オレゴン州フッド川を堰
合、親に一世代目の養殖放流魚をもつ個体は親が天
ではありませんが。
)研究分野が細分化されて久し
礼申し上げます。
き止めるダムを利用して、産卵のため海から戻って
然魚である個体より自然繁殖成功度が顕著に低かっ
く、最近では複数の分野にまたがる研究プロジェク
くる年間百から数千匹にも及ぶ降海型ニジマス(ス
た点です。彼らは同じ環境条件下で育てられるた
トも多数見受けられますが、まだまだ研究者個人の
引用文献
チールヘッド)全個体の個体情報、及び DNA 抽出
め、この差は彼らが親から受け継ぐ遺伝的な差異に
心の中に潜む「分野の壁」は高い、と感じるのは私
1)日本進化学会ニュース vol. 5, no. 2, 海外研究室だより
が可能なウロコの採集が行われていました(写真
よるものと考えられます。つまり、養殖場に最適化
だけでしょうか? これは自分自身にも言えること
1)
。これは15 年に渡る保全プロジェクトの一環で、
した遺伝子を受け継いだ魚は、たとえ彼ら自身が
で、今後改善すべき課題の一つです。
実際には個体情報採集後、魚をダム上流に逃がして
(養殖場で育てられることにより)生き延びること
最後のポイントは、一言で言うなら「運」でしょ
3)Araki, Tian, Goss, Jakob, Halldorsdottir, Kreitman and
産卵場所に到達させることが主たる目的でした。ウ
ができたとしても、自然界で生存競争に勝ち残る子
うか。
「タイミング」と言い換えてもいいかもしれ
Bergelson. Presence/absence polymorphism for alter-
ロコの採集は、元々年輪を数えて魚の年齢を推定す
孫を残すことができなくなってしまっているのです
ません。こう言うと身も蓋もありませんが、実際、
るためだったのです。しかし、これほどの規模と期
(文献 4,5)。こう話してしまえば当然、と思われ
人との出会いにせよ、様々な分野を勉強する機会に
間(約三世代、1 万 5000 匹分)
、一つの川で繁殖す
るかもしれませんが、実際のところわずか数世代で
せよ、先に道しるべがあったわけではなく、その
る魚の全個体の遺伝情報が手に入る、というのは千
このように大幅な適応的変化が起こるとは、私自身
時々にベストと思われる選択をしてきたわけです。
success of captive-bred steelhead trout in the wild: Eval-
を含む誰もが想像していませんでした。これは生物
それがたまたま現在のように心から面白いと思える
uation of three hatchery programs in the Hood River.
の適応的進化の速度を考える上で極めて興味深い結
研究につながったのですから、本当に運が良かった
写真 1 オレゴン州フッド川で捕獲された、降海型ニ
ジマス(スチールヘッド)の成魚。4、5 齢の大きい
ものでは1 メートル以上にもなる。
写真 2 オレゴン州立大動物学科、Blouin 研究室のメ
ンバー。2007 年、研究棟前にて。Michael Blouin 教授
(右端)の下、魚をはじめ、両生類、昆虫など様々な
生物の集団遺伝学研究が行われている。左端は筆者。
感じていますが、皆さんはどうお考えでしょうか? 2)荒木「シロイヌナズナ・病原菌相互作用にみる自然選
択」細胞工学別冊・植物細胞工学シリーズ23「植物の
進化」
、監修・清水、長谷部 秀潤社
native pathogenicity islands in Pseudomonas viridiflava,
a pathogen of Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci USA 103:
5887-5892, 2006.
4)Araki, Ardren, Olsen, Cooper and Blouin. Reproductive
Conserv Biol 21: 181-190, 2007.
5)Araki, Cooper and Blouin. Genetic effects of captive
果であると同時に、莫大な費用をかけ、国家的プロ
と思います。でも、同時に今後の運は自分で切り開
ジェクトとして「さけの戻る川づくり」や養魚場を
かねばならないとも思っています。いずれにせよ人
用いた保全・補完計画を進めている日本や欧米各国
生で二つの道を同時に歩むことはできず、自分の信
にとっても貴重な情報と言えます。このように、純
じた道を進むしかないのですから、その選択を後悔
連絡先
粋に進化の過程を理解する試みが、我々にとって身
しないよう、選んだ道でベストを尽くす、というの
Hitoshi Araki([email protected])
近で大事な問題と深く関わっている、というのがこ
が今の私の目標です。
Department of Zoology, Oregon State University
の研究の面白みでもあります。さらに、我々はこの
もちろん決められた「進化学者になる方法」など
研究に利用した遺伝情報や親子鑑定結果を応用して
あるはずもなく、私も含め、みな試行錯誤を繰り返
有効集団サイズ推定や生活史多型の進化的意義を理
しながら自分自身の道を探していくのでしょうが、
breeding cause a rapid, cumulative fitness decline in the
wild. Science 318: 100-103.
2008 年 1 月より Eawag, スイス連邦水圏科学技術研
究所グループリーダー就任予定
(http://www.fishecology.ch/team.htm)
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日本進化学会ニュース Nov. 2007
研究奨励賞受賞記
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
を発見し、生物の探索範囲を拡大しているところで
成されるのかという問題は、現在でも解決していな
あった。RI ラベル・ 40 cm ゲルでシークエンシング
い。
51
されていくのか興味深い。
偽遺伝子とゲノムインフォマティクス
偽遺伝子の進化に関する研究
三昧の生活を送った結果、イカやタコの SINE も
大島一彦(長浜バイオ大学)
tRNA 相同領域を含むことがわかった。当時私が興
私がこのようなSINE の基礎研究を進めていたこ
2001 年に出版されたヒトゲノム概要配列の解析論
味を持ったのが、SINE の構造(普遍性)
、起源(生
ろ、SINE の挿入パターンを基に、生物系統を決定
文は、質・量・著者の多さなど、様々な点で印象に
成機構)、機能(生物学的意義)の 3 点であった。
する手法の開発とその実践が進行していた。これは
残るものであり、生命科学の転機を感じさせた。研
他の研究結果と合わせて考えると、SINE の奇妙な
先輩の村田さんや木戸さんのアイデアが発展したも
究上の新たな展開を模索していた当時、ゲノム研究
構造は、かなり一般的であるということになった。
ので、専らサケ科魚類の系統解析に適用されてい
に必須となっていたバイオインフォマティクスの分
た。そんな中で、クジラの系統関係に強い関心をも
野に踏み入ってみようと考えた。岡田先生のご紹介
二つ目の興味に対する探求方法には往生したが、
った阿部君が進学してきた。翌年に加わった島村
で、理研 GSC の榊佳之先生、服部正平先生のもと
あるとき転機が訪れた。SINE の起源を探索すべく、
君、松林君らと共に、SINE 挿入解析を何とかクジ
に1 年間押しかけることになった。GSC は、ヒトゲ
ヘビクビガメのゲノムライブラリーからSINE をス
ラでも成功させようと努めたが、サンプル収集の困
ノムのフィニッシングやチンパンジーゲノム解読の
クリーニングしていたところ、一報の論文が出版さ
難さもあって、なかなかよいデータが出ず、研究は
最中であった。インターネットを通じて刻々ともた
れた。正月早々岡田先生が持って現れたその論文の
遅々として進まなかった。そのうちに、クジラが偶
らされるゲノム研究の世界情勢やGSC の雰囲気に、
(1)SINE とLINE
進化学との出会い
(2)SINE 挿入解析と生物系統
1988 年ゴールデンウィーク。当時の習慣で、暇を
片隅には、ニワトリのレトロトランスポゾン(LINE)
蹄類の内部系統から分岐したことを示す分子系統解
新時代の奔流に身を晒している気がして、精神の高
みつけて書店をぶらぶらしていると、一冊の小さな
とクサガメのSINE の配列が一部似ていると記され
析が報じられた。とても面白いテーマであり、まだ
揚を覚えた。それまでは研究でコンピュータを使用
本が目に留まった。木村資生の「生物進化を考え
ていた。当時の(岡田研究室の)常識からすれば、
証明されたわけではないので、是非 SINE を用いた
することはあまり無く、計算機科学は全くの素人で
る」であった。以前から進化には興味があったが、
LINE とSINE は全くの別物であったし、ニワトリと
データで実証すべきだと主張して、研究を続けても
あった。矢田哲士さん等の見よう見まねで、プログ
進化理論はすでに完成しているとか、進化は科学と
カメほど系統が隔たると、ニワトリゲノムにカメと
らった。結局、島村君がデータの取り纏めに執念を
ラミングを覚え、ある程度プログラムが書けるよう
して成立しないとか聞いていたので、本格的に勉強
同じSINE が存在することはまず考えられない。こ
見せ、SINE 挿入解析で鯨類の偶蹄類内部分岐を証
になると、自分の意図通りにプログラムが動作する
するのに二の足を踏んでいた。手にとってページを
のため、論文の記載は非常識極まりなく、何かの誤
明した。この結果は彼の卒業後、某有名ジャーナル
のがとても楽しくなった。プログラミングは詰め将
めくってみる。平易な文章で、進化理論について体
りとも考えられた。しかし、ヘビクビガメのSINE
に受理された。彼らと入れ違いで二階堂君が研究室
棋と似ているところがあるように思う。
系的・客観的に書かれているようだ。早速購入し
様配列が特殊な構造であることに頭を悩ませていた
配属になった。SINE の新規機能に関わる卒業研究
早速、プログラミング技術を用いて、それまで手
て、1 週間ほどのうちに通読した(遅読な私には珍
私には、ピンとくるものがあった。早速、スクリー
の後、鯨類系統のSINE 挿入解析をおこなうことに
の届かなかったプロセシング済み偽遺伝子(以下
しい)
。小冊子ながら稠密な内容で、行間からは膨
ニング中のカメクローンの上流配列を丹念に調べて
なった。その後、彼は鯨類とカバの単系統性を証明
PP)の大量解析をおこなった。当時ヒトゲノム解
大な数理体系が伺え、そして著者の思想が鮮明に伝
みると、果たして逆転写酵素配列の一部が現れた。
した。
析では、遺伝子の数や種類は注目の的であったが、
わってくる点が印象的であった。これが、私と進化
私がクローン化していたのは、カメのLINE だった
学の出会いであった。
のである。 このようにして、 カメのゲノムに、
(3)生物学的意義
SINE の基礎研究に話を戻すと、残された問題は、
偽遺伝子はほとんど注目されていなかった。偽遺伝
子とは、機能遺伝子のコピーで機能をもたない配列
2007 年盛夏、日本進化学会より研究奨励賞をい
SINE と共通の3’
末端配列をもつLINE が存在するこ
SINE の生物学的意義であると考えた。反復配列
や、機能を失った遺伝子の総称である。真核生物の
ただくことになった。大変光栄であると共に、後日
とが明らかになった。カメのSINE は、同じゲノム
(SINE やLINE などの転移因子を含む)は、生物学
偽遺伝子は、生成機構からDNA 重複型偽遺伝子と
過大評価の烙印を押されぬよう身の引き締まる思い
に存在するLINE の転移機構(コードされる逆転写
的機能の無いガラクタ配列であるという認識が、以
PP の 2 種類に区別されている。後者は、細胞質の
でいる。私の場合は、生粋の進化学研究を続けてき
酵素や3’
末端配列の認識特性)を転用して増幅(転
前から研究者の大勢を占めていた。しかし、SINE
mRNA が逆転写反応(哺乳類ではL1 の作用)によ
たとは言えないように思う。そこでこの小文では、
移 ) しているらしい。 ニワトリで報 告 のあった
やLINE のコピー配列の1 つが、生物進化で細胞機
り二本鎖のcDNA となり、ゲノムに挿入されて生じ
私の研究全般をご紹介していく中で、その進化学的
LINE と、カメで同定したLINE は極めて近縁な関係
能を獲得したと考えられる事例が数多くあるので、
たものである。起源遺伝子のイントロン領域だけが
側面についてご説明したい。
にあった(ただしニワトリゲノムにカメと類似した
全てがガラクタだと表現するのは、明らかに誤りで
欠失した構造になっている。
SINE は存在しない)
。このような3’
末端配列の共有
ある。問題は、個別事例が千差万別であるので、一
反復配列の研究
試行錯誤の末に、ヒトゲノム配列から3,664 個の
による SINE と LINE の共生関係は一般的現象なの
般化して議論することが困難に見えることである。
PP 候補配列を抽出し、生成年代を推定した。生成
生物は外界(環境や他の生物)の影響を受けて変
か。データベース検索や実験で、他の生物の事例を
どのくらいの割合のコピーがそのような機能を獲得
年代を横軸にヒストグラムを作成すると、その分布
化(進化)するが、その変化を規定する生物の内的
調査した。後輩の濱田君と寺井君の協力を得て、サ
しているのか。そもそも、普遍的な機能が未同定で
は一つの頂点を持つ山型を示した。この事実は、霊
な論理に興味があった。発生生物学がその鍵を握っ
ケ、ウナギ、タバコ、真菌という広範囲の真核生物
ある可能性は本当に無いのか。この問題にも徐々に
長類進化のある時期ヒトの祖先のゲノムで、PP が
ている気がしたが、生き物にあまり詳しくなかった
で、カメと同様の現象が存在する可能性を示唆する
進展が見られた。魚類の SINE / LINE を精力的に
爆発的に増幅した可能性を示唆しており、そのピー
ので、分子生物学的に生物の多様性を探っていらし
ことができた。カメとウナギのLINE の全長配列は
探っていた荻原君が残したデータは、一群のSINE
クは4000 ∼ 5000 万年前と推定された。さらに、ち
た岡田典弘先生の門を叩くことにした。初めの研究
後日、梶川君が決定し、in vivo 転移系の構築に発展
に極めて保存性の高い配列領域が含まれることを示
ょうどこの時期、Alu(ヒトゲノムの10 %を占める
テーマは、イカとタコの反復配列の構造決定であっ
させた。このようにして、第二の問題(生成機構)
していた。脊椎動物ゲノムの超保存領域や、反復配
SINE)も爆発的に増幅している。つまり、PP と
た。当時岡田先生のグループは、脊椎動物の反復配
に関する理解が一段と進むことになった。ただし、
列に由来するsmall RNA といった最近の知見と、反
Alu という全く別の転移因子が、霊長類進化の同時
列(SINE)にtRNA に類似した領域が含まれること
SINE 配列の系統特異的な複合構造がいかにして形
復配列についての従来の知識が今後どのように整理
期に爆発的に増幅したと思われる。L1 サブファミ
52
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
53
リーの詳細な分析結果に基づき、この大変動のメカ
源遺伝子と異なり精巣特異的発現を示した。Penn-
連絡先
得ないことでしょう。とはいえ進化研究者としての
ニズムを議論し、論文を投稿した。最終的に、論文
sylvania 大のCharles Abrams 准教授のグループの協
長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 立場をまったく放擲してしまったわけではありませ
は 2003 年 9 月末に受理され 10 月付けの出版となっ
力も得て、細胞内局在性やキナーゼ活性が親遺伝子
生命情報科学コース
ん。そもそも基礎データセットを地道に作り上げて
たが、同年の12 月に、米・欧の2 グループが独立に
とは大 きく変 化 していることもわかった。 また
大島一彦 [email protected]
ヒトゲノム偽遺伝子の大規模解析を出版した。Yale
Daria さんの奮起で、ユビキチン化タンパク質との
大のMark Gerstein 教授は、これは日・米・欧 3 グ
結合活性を突き止めた。この結果から、PIPSL は新
ループによる独立の成果だったと評している。彼の
進化ゲノム学研究室
提供する立場の人間がいるからこそ、そういうもの
に依存している解析者の研究が進むわけで、こうい
今日まで研究を支えてくださった多くの方々に感
った分野で貢献してきたことには十分意味があった
たなユビキチン結合タンパク質であると考えられる。
謝します。自由な研究環境を提供してくださる長浜
とも思います。研究の方向性に関して斯様に不安と
PIPSL の塩基置換様式には大きな特徴があった。
バイオ大学の池村淑道先生、三輪正直先生、下西
自負の交錯していた折、研究奨励賞をいただけたこ
PIPSL の誕生(ゲノムへの挿入)からヒト/チンパ
康嗣先生、物理学やバイオインフォマティクスのセ
とで、自分の仕事をきちんと評価して下さったのだ
ンジーの分岐までの期間に、PIPSL 後半のプロテア
ンスで刺激を与えてくれる生命情報科学コース教員
と安心するとともに、そもそも自分の立ち位置をど
ソーム由来領域に生じた非同義置換、同義置換は
の皆さん、活力みなぎる研究室の学生諸君、そして
こに置くべきかという問題を再考する機会をいただ
偽遺伝子が混在しており、また機能遺伝子が偽遺伝
各々19 ヵ所と0 ヵ所と推定された(プロテアソーム
今回の受賞を大変喜んでくれた両親に感謝します。
けました。深く感謝しております。
子と誤審される場合もある。このため現在では、偽
遺伝子自体は各々0 と4 ヵ所)
。サイト数の推定値は
遺伝子予測法やデータベースの開発が進んでいる。
795 : 309 であるので、中立変異を有意に逸脱してい
またこのような基盤情報の整備・発展を背景に、偽
る(P =0.0018)
。つまり、PIPSL は誕生後に強い正
遺伝子の生物学的機能や進化過程を探る研究も注目
淘汰により親遺伝子から急速に分岐したと推定され
されている。
る。
グループは、 現 在 も偽 遺 伝 子 研 究 に意 欲 的 で、
ENCODE 計画やその他で成果を挙げている。
遺伝子と偽遺伝子の判別は繊細な問題である。
往々にして、コンピュータで予測した遺伝子群には
個性的偽遺伝子の機能と進化
PIPSL は、①新機構(エキソンシャッフリングと
もともと微生物のゲノム配列決定にかかわったこ
研究奨励賞受賞記
とから大量の情報を処理する必要に迫られ(文献
5)
、従ってその配列解析に手を染めるのも自然なこ
大規模比較解析に基づくゲノム
構造進化の研究
とでした。ゲノムの全長を決めて初めて可能な研究
伊藤 剛(農業生物資源研究所)
関係、つまりゲノム構造進化の研究は真っ先に考え
の中でも特に、進化過程での全遺伝子の相対的位置
遺伝子重複の連動)で誕生した遺伝子であり、②正
付くものでしょう。ここで一工夫し、微生物のオペ
縁あって新設の長浜バイオ大学に赴任することに
淘汰を経たレトロ遺伝子の新たな事例であり、③ヒ
ロン構造に着目して検討したところまでは自賛して
なった。琵琶湖湖畔の風光明媚で、のどかな土地柄
ト科霊長類の祖先ゲノムに挿入した若い遺伝子であ
良いのではないかと感じているのですが(文献 6)
、
で、すぐ近くに長浜城(豊臣秀吉の出世城)を擁す
るので、その後の進化様式を精密に追跡することが
そこで完成したつもりになってしまうのが基礎のな
る市街地があり、京都や名古屋も車で1 時間ほどの
可能であり、④本研究により、進化解析と機能解析
い人間の悲しいところです。どこを考察すればよい
距離である。赴任当時は、郷通子先生が学部長をさ
の双方が実現している、など特徴が目白押しであ
のか、どういった視点からものを言えば人を惹きつ
れており、教育・研究をご一緒することになった。
る。今後、さらに理解を深めていきたいと考えてい
けられるのか、その背景となる過去の研究蓄積はど
進化生物学の講義を担当することになり、大学院の
る。
入試勉強以来で、最も勉強する羽目になったが、楽
しく有意義な経験であった。同僚の稲垣さん(現筑
波大)や白井剛さんが、統計的手法で配列データを
扱っていたのも参考になった。
分子進化研究に興味を引かれ、この分野で活動し
のようなものか、こういった研究をまとめる際に必
ていきたいと思ったのが既に博士課程の学生のこ
須となる様々な事柄を教えていただいたのが国立遺
ろ。それまでも多少は進化に関係した解析をしてい
伝学研究所の五條堀孝先生を始めとする皆さんでし
るつもりでしたが、国立遺伝学研究所で本物の進化
た。まったく同じデータを手にしていても、つまら
今年、進化学会より研究奨励賞をいただくまで、生
研究者と出会い、どうやら自分がやっていたのはデ
なくしてしまう人もいれば面白く語れる人もいると
いうのは、当時の私には新鮮な驚きでありました。
進化学との再会
木村先生の著書を通じて進化学と出会ってから、
Pennsylvania 大のHaig Kazazian 教授と共同研究
粋の進化学研究にはあまり縁が無かった。しかし講
ータ整理であって研究と呼べる域に達していない
する機会を得て、先述のヒトゲノムのPP 配列を詳
義で自分も勉強しながら改めて感じているのは、日
と、遅ればせながら悟ったのでした。それでも、無
科学者というのは無味簡素な観測事実を羅列するだ
しく調べた。彼はL1 研究者で、trans-splicing RNA
本の進化研究の裾野の広さと、日本人がこれまでに
知蒙昧なまま何か成し遂げたつもりでいるよりは、
けの存在ではなく、豊かな物語を紡ぐ語り部でなけ
のL1 による逆転写反応に興味を持っており、ヒト
蓄積した国際的成果の大きさ・重さである。学生時
後追いであれ正しい道を歩んだほうが良いに違いあ
ればならないようです。
ゲノムにその痕跡がないか知りたい、というのであ
代に一度だけ、晩年の木村先生と懇親会を共にする
りません。
る。結局、思惑通りのものは見つからなかったが、
機会があった。先生はビールと日本酒のカクテルを
このようにして自ら望んで進化の研究をするため
は数々あるでしょうが、特に自分に欠けている部分
エキソンシャッフリングと遺伝子重複の連動から生
試しながら、ご機嫌だったそうである。当時の私
のレールに乗ったはずが、ふと気がつくとすぐそば
を補完することは重要ではないかと思います。私の
じたとも言える興味深い遺伝子PIPSL を見いだすこ
は、雑談で変に構えてしまう悪癖があり(今もあま
に生物系の大量データ解析(いわゆるバイオインフ
場合は、分子進化の基礎をさらにしっかり固めなけ
とになった。この重複配列は、異なる2 種類の遺伝
り進歩は無いが)
、会話する機会を失してしまった。
ォマティクス)のレールが走っており、いつの間に
れば語り部どころか騙り部になってしまう恐れもあ
子(リン脂質キナーゼとプロテアソームサブユニッ
今思えば、惜しいことをしたものである。今回の受
かこの上を走っていたようです(文献1 ∼4)
。アノ
ると大いに不安を感じていました。そこで、何とか
ト)の read-through RNA がスプライシング過程で
賞は、進化学のフロンティアに接するよい機会なの
テーションや関連データベース作成のようなリソー
専門家の前で赤面せずに話せるレベルに到達すべ
連結し、L1 の転移機構により転座した構造を持つ。
で、前轍を踏まぬよう心掛けたい。またもし私と似
ス整備に時間の多くを割く人間は限られており、特
く、ペンシルバニア州立大学の根井正利先生にお願
両者は翻訳フレームを維持したまま融合し、誕生後
たタイプの若い方がいたら、分野を問わず遠慮なく
に現在所属しているような農学系の研究機関では圧
いしたところ、ポスドクとして在籍させていただく
およそ2000 万年後の現在もそのORF を保持してい
話しかけてきていただきたい。機嫌悪そうに見える
倒的に人材が不足しているのが現実です。解析をす
幸運を得ました。大学院の講義を手伝いつつ、教え
る。先方の院生のDaria さんを励ましながら、彼女
かもしれないが、実際はそうでもありませんから。
るよりも解析をするためのデータ作成を期待され、
る振りをしながらその実こっそり自らも学ぶという
またそのような要請に応えざるを得ないのも止むを
のは少なからず沽券に関わる気もしますが、聞かぬ
にPIPSL の機能解析を進めてもらった。PIPSL は起
海外へ出て研究活動をするために条件とすること
54
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
は一生の恥ということもあります。このときの経験
"Biased biological functions of horizontally transferred
て執筆していますので、いずれも他では読めない記
は今も大いに生きておりますし、根井先生と共著で
genes in prokaryotic genomes" Nat. Genet., 36: 760-766,
事になっています(挿絵や写真も全てオリジナルで
細胞内共生菌の進化速度に関して論文を発表するこ
とができたのは自信にもなりました(文献 7)
。
2004.
9)Koyanagi, K. O., Hagiwara, M., Itoh, T., Gojobori, T.,
Imanishi, T. "Comparative genomics of bidirectional
す)
。
「新刊紹介」では文字通り書籍を紹介していま
帰国してからは、水平遺伝子移行がゲノム進化に
gene pairs and its implications for the evolution of a
す。論文と異なり、全て読んでからとはいきません
与える影響(文献 8)やゲノム中の遺伝子の配置傾
transcriptional regulation system" Gene, 353: 169-176,
が、購入の参考程度にご利用ください。
向(文献 9)などの研究発表を行ってきました。振
2005.
「生物分類表では「きまぐれ生物学」オリジナル
り返ってみれば、その多くはゲノム全体の遺伝子動
向の研究とかゲノム構造進化といった言葉で括れそ
うで、あれこれ手を拡げていたつもりが実は原点付
近からさほど離れていないようです。これをもって
初心忘るべからずの手本と見るか、あるいは発想に
55
の分類体系を紹介しています。範囲は現生全生物の
教育啓蒙賞受賞記
「きまぐれ生物学」の紹介と
ウェブサイトの運営について
目(order)の階級のレベルまでを扱っていて、2 つ
の点で独特な体系になっています。一つは全てリン
ネ式の階級で一貫させたこと、もう一つは単系統群
のみ分類群として認める、という方針です。これら
を両立させるのは困難ですが、実際に何とか体裁は
したことが幾つかあります。まず、学術的なサイト
ことを考えておりますが、せっかく奨励していただ
整っているかと思います(化石分類群は取り入れる
を作る限り、たとえ個人サイトであっても科学者と
いたのですから、勘違いでも良いのでその気になっ
ことが不可能そうですが)
。なお、上記の原則を踏
しての立場で作る必要があると考えました。そのた
て、もう少しこういった問題を考えてみたいと考え
まえつつも可能な限り標準的な分類体系を踏襲して
め、①紹介した内容に責任をとること、②典拠を示
ています。
いますので、一般の参考にもなるかと思います。
すこと、などを特に意識しました。
乏しいのか。最近もイネゲノムを相手に似たような
仲田崇志(東京大学大学院理学系研究科)
引用文献
1)Imanishi, T., Itoh, T., Suzuki Y., O'Donovan, C.,
Fukuchi, S., Koyanagi, K. O., Barrero, R. A., Tamura, T.,
「きまぐれ生物学」というウェブサイトを通じて
「地質年代表」は国際層序委員会による最新の
まず①については、実名でサイトの運営を行うこ
年代表を参考に作成・更新していますので、インタ
とで責任の所在を示しています。匿名であってもメ
ーネット上に数ある地質年代表の中でも国際的には
ールアドレスなどで連絡がとれるようにすればかま
最も「標準的」なものとしてご利用いただけます。
わないとも思いますが、やはり実名で書かれた文章
21,037 human genes validated by full-length cDNA
論文紹介などを発信するようになって 2 年半ほど経
PDF 版も用意しておりますので、印刷して論文中の
の方が信用されやすく、また有益な批判も得やすい
clones" PLoS Biol., 6: 864-875, 2004.
ちますが、このたび思いもかけず日本進化学会の教
地質年代を確認するときにご活用ください。
と考えています。実名のような個人情報をウェブ上
Yamaguchi-Kabata, Y. et al. "Integrative annotation of
2)International Rice Genome Sequencing Project "The
育啓蒙賞をいただきました。併せて日本進化学会ニ
map-based sequence of the rice genome" Nature, 436:
「系統解析」もご好評をいただいているコンテン
ュースへの原稿のお誘いがありましたので、この場
ツで、初心者向けの ClustalX を用いた系統樹の書
私自身は実名の公開による問題は経験していませ
をお借りしてウェブサイトの紹介と作り方について
き方(
「はじめてのけいとうじゅ」
)や、近年登場し
ん。もちろん実名で執筆している以上、記事を書く
書かせていただきたいと思います。
たベイズ法 による系 統 解 析 の原 理 とプログラム
にあたって慎重になりますが、それは本来必要なこ
793-800, 2005.
3)Ohyanagi H., Tanaka T., Sakai H., Shigemoto Y., Yamaguchi K., Habara T., Fujii Y., Antonio B. A., Nagamura
Y., Imanishi T., Ikeo K., Itoh T., Gojobori T., Sasaki T.
"The Rice Annotation Project Database(RAP-DB): hub
for Oryza sativa ssp. japonica genome information"
Nuculeic Acids Res., 34: D741-744, 2006.
4)The Rice Annotation Project "Curated genome annotation of Oryza sativa ssp. japonica and comparative
「きまぐれ生物学」の紹介
「きまぐれ生物学」では「生物の起源」
、
「雑記」
、
「新刊紹介」
、
「生物分類表」
、
「地質年代表」
、
「系統
解析」
、
「リンク集」
、
「プロフィール」
、
「掲示板」と
genome analysis with Arabidopsis thaliana" Genome Res.,
いうコンテンツを用意していて、それぞれ更新を続
17: 175-183, 2007.
けています。
(MrBayes 3.1.2)の使用法の解説も行っています。
で公開することには慎重になる方も多いでしょうが、
とではないでしょうか。
特に MrBayes については論文での導入が進んでい
次に②ですが、他人の研究を紹介することがメイ
る一方で日本語での解説が非常に限られているた
ンである場合、文献引用をつけることは必要です。
め、ご好評を頂いています。これらのマニュアルも
インターネット上には引用文献はなく情報を紹介す
PDF 形式から印刷できるようになっています。
る大手や個人によるニュース記事が氾濫しています
この他には「リンク集」
、
「プロフィール」
、
「掲示
が、これらの情報は単独では無価値です。日本の書
板」のコンテンツもあり、
「リンク集」では私のよ
籍などでも引用が不十分なものがしばしばあります
5)Itoh, T., Aiba, H., Baba, T., Hayashi, K., Inada, T., Isono,
「生物の起源」は生命の起源についての知見を簡
が、より深く勉強したい場合や内容に疑問がある場
K., Kasai, H., Kimura, S., Kitakawa, M. et al. "A 460-kb
く参照するウェブサイトを紹介しています。
「プロ
潔に整理したレビュー記事になっています。大量の
フィール」は簡単な自己紹介です。
「掲示板」では
合に、正確な情報を辿ることができずに困るケース
引用文献を掲載していますので、情報の典拠を探す
「きまぐれ生物学」についてご意見をお寄せいただ
が少なくありません。特にインターネット上の情報
ときには参考になるかと思います。最新の研究につ
けるようになっています。何かお気づきの点があれ
は書籍などの出版物と比べて信用度が下がると見ら
ば、掲示板やメールなどを通じてご指摘下さい。
れがちですので、質の高いサイトを目指すのであれ
DNA sequence of the Escherichia coli K-12 genome corresponding to the 40.1-50.0 min region on the linkage
map" DNA Res., 3: 379-392, 1996.
6)Itoh, T., Takemoto, K., Mori, H., Gojobori, T. "Evolutionary instability of operon structures disclosed by
sequence comparisons of complete microbial genomes"
Mol. Biol. Evol., 16: 332-346, 1999.
いては「追加情報」としてフォローしています。
「雑記」は主として論文紹介からなっていて、
「きまぐれ生物学」のメインのコンテンツです。紹
ウェブサイトを作るにあたって
ば常に文献の引用を心がけるべきだと考えていま
す。
介する論文の分野は私自身が専門にしている「藻類
さて、この度いただいたのは「教育啓蒙賞」との
この他に「きまぐれ生物学」はサイトの利便性を
evolution caused by enhanced mutation rate in endocel-
学」を始めとして、
「進化・分類学」あるいは「人
ことですので、ウェブサイトを通じて教育啓蒙活動
意識して作成しました。図に示したのは意識的に取
lular symbionts" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 12944-
類学」
、
「古生物学」
(地質学の論文も紹介したこと
をするにあたって、私の経験から参考になりそうな
り入れた工夫ですが、いずれもちょっとしたことな
12948, 2002.
があります)などの分野に分けて掲載しています。
ことも書いてみたいと思います。
がらサイトの利便性を高めていると思います。大雑
7)Itoh, T., Martin, W., Nei, M. "Acceleration of genomic
8)Nakamura, Y., Itoh, T., Matsuda, H., Gojobori, T.
全て原著論文を読んだ上で、私自身の見解も踏まえ
「きまぐれ生物学」を公開するにあたって、意識
把に言えば、サイト内の移動を簡便にすることと必
56
日本進化学会ニュース Nov. 2007
要な情報を使いやすい形で提供することを目指して
ことも一つの方法かと思います。
インターネットを通じて情報を発信することは、
います。
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
57
票
催されることになり、進化学会からは長谷川副
次期副会長選挙結果報告:本評議員会において、
会長が委員として参加している。今後どのよう
そしてウェブサイト一般に言えることですが、一
他人へのサービスとしてだけではなく、自分自身に
評議員による次期副会長(2008 年∼2009 年)の
な作業が必要になるかは現段階では明確ではな
番重要なことは、継続して更新ができることだと思
とっても有益です。私の場合ですと、自分が学んだ
選挙をした結果、斎藤成也会員が次期副会長に
い。担当によってはたいへん厳しい作業が求め
います。月に一回程度であっても、定期的に更新さ
内容を「覚え書き」として残しておくことで、ネッ
選出された。
られることもあるので、学会としてではなく、あ
れているだけで、また来よう、という気にさせられ
ト環境さえ整っていればどこにいても情報が取り出
るものです。そのためには更新しやすい内容を用意
せるようになりました。また学んだ内容を文章にす
しておくことも重要です。
「きまぐれ生物学」の場
ることで、知識を「かみ砕いて理解する」ことがで
合は論文紹介ですが、もっと単純な情報でもいいか
きるようになりました。特に学生の方々には良い経
学会として対外的な広報活動を統括するコーデ
7-1)大会運営効率化:毎年の大会開催に伴う各実
と思います(ただし日記のような個人的な内容は学
験になると思いますので、読んだ論文の覚え書きや
ィネーターとして広報担当幹事を置くことが認
行委員会の負担をできるだけ軽減するため、学
術的なサイトにはそぐわないと思います)。また、
論文紹介のセミナー原稿などからウェブサイトの作
められた。具体的には今後詰める予定である。
会事務局で担当できる作業との分担を考えるこ
更新頻度の上限を決めて、息切れしないようにする
成をはじめてみてはいかがでしょうか。
日本進化学会事務局活動報告(2006 年 9 月∼ 2007 年 8 月)
2006 年
11 月 7 日
7 月 31 日
生物科学学会連合第 17 回連絡会議に参
加
11 月 22 日 学会ニュース Vol.7, No.2 発行
(飯田橋レインボービル)
8月6日
評議員会開催通知
8月8日
決算案・予算案ならびに会計監査
12 月 20 日 学会ニュース Vol.7, 臨時号(石川統元会
長追悼号)発行
学会賞選考委員会開催
(クバプロ)
8 月 30 日∼ 9 月 2 日 年次大会開催(京都大学)
その他
2007 年
1月1日
郷通子会長の就任。新執行部の活動開始
1月7日
日本分類学会連合第 6 回総会に参加
(国立科学博物館分館)
・ 学会ウェブサイトならびにメーリングリストの運
営。
新評議員メーリングリストの開設
同参画学協会連絡会、ならびに生物オリンピッ
4 月 27 日
内閣府主催・第 1 回みどりの式典に参加
ク日本委員会に代表者を派遣した。
5月2日
生物科学学会連合第 18 回連絡会議に出
席(東京大学山上会館)
5月7日
第7 回日本進化学会賞・研究奨励賞・教
育啓蒙賞の公告
5 月 31 日
進化学会ニュースVol.8, No.1 の発行
の意見も出された。
[承認|別掲]
3)広報担当幹事を設置する件について[承認]
4)2008 年度大会準備について[長谷川副会長から
・ 大会における公開講演会ならびに高校生ポスター
発表を企画した。
・ 日本進化学会 10 周年記念出版事業『進化のすべ
て(仮題)
』の編集体制を整えた。
・ 関連学協会から掲載依頼された文書を会員に配
信した。
日本進化学会 2007 年度評議員会報告
欠席 7 名[委任状 4 名]
)
【議題】
○報告事項
1)2006 年 9 月∼ 2007 年 8 月業務報告
とになった。とりあえずは、今年の京都大会の
総括メモを実行委員会に出してもらい、それを
来年度の創立 10 周年記念大会は、総合研究大学
叩き台として議論を進めることになった。
院大学が中心となって、東京大学・駒場キャン
7-2)学会員身分確定:これまでは、年度途中で学
パス(目黒区)で開催されることになった。現
会員の身分が変わったとき、そのつど会費の差
在、実行委員会を立ち上げて、活動をすでに開
額を徴収することにしていた。しかし、それで
は会計作業が煩雑になるため、会計年度の始め
始している。
5)2009 年度大会開催候補地について[長谷川副会
(1 月1 日)の身分をもってその年度は固定する提
案が出された。
長から説明]
再来年度の大会開催地については目下交渉中と
7-3)他学協会とのリンク:自然史学会連合への加
盟が提案された。また、アメリカの進化学会
の報告があった。
6)国際生物学オリンピックへの協力について[長
(The Society for the Study of Evolution)との相
谷川副会長から説明]
互リンクのため、日本進化学会の英語版ホーム
2009 年につくばで国際生物学オリンピックが開
ページの整備が提案され、意見が交わされた。
日本進化学会 2007 年度総会報告
【日時】2007 年 9 月 1 日(土)
,16:10 ∼ 17:10
○審議事項
【場所】京都大学時計台ホール
1)2007 年度ならびに2008 年度予算案[三中事務幹
○報告事項
1)評議員会開催報告[三中事務幹事長]
2)2006 年 9 月∼ 2007 年 8 月業務報告[三中事務幹
事長]
事務幹事長]
(承認)
4)次期副会長(2008 ∼2009 年度)の選挙結果報告
【場所】京都大学理学部1 号館113 号室(出席12 名、
7)その他の議題
説明]
3)2006 年度決算報告ならびに会計監査報告[三中
【日時】2007 年 8 月 30 日(木)
、17:00 ∼ 19:00
くまでも個人のボランティアにとどめるべきだと
・ 日本分類学会連合、生物科学学会連合、男女共
2 月 21 日
(憲政記念館)
2)2007 年度中間決算案ならびに 2008 年度予算案
の報告
7 月30 日に開催された選考委員会の報告がなされた。
4)男女共同参画学協会連絡会への加盟が承認され
た件
男女共同参画学協会連絡会への正式会員として
の入会申請が7 月 31 日に承認された。
2)2006 年度決算報告[承認|別掲]
○審議事項
3)進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育啓蒙賞
1)次期副会長(2008 ∼2009 年)の選挙ならびに開
[三中事務幹事長]
5)進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育啓蒙賞
の報告[郷会長]
6)男女共同参画学協会連絡会への正式参加[三中
事務幹事長]
7)学会創立十周年記念出版事業の進捗について[齋
藤編集長]
事長]
(承認)
2)広報担当幹事を設置する件について[三中事務
幹事長]
(承認)
3)2008 年度大会準備について[長谷川副会長]
4)2009年度大会開催候補地について[長谷川副会長]
北海道大学(札幌)で開催されることになった。
5)国際生物学オリンピックへの協力について[長
谷川副会長]
6)その他(大会運営効率化、学会員身分確定、他
学協会とのリンク)
[三中事務幹事長]
学会員の身分確定に関しては提案が承認された。
自然史学会連合への加盟が提案された。日本進
化学会の英語版ホームページの整備に関しては
基本方針を承認し、今後具体化していくことに
なった。
58
日本進化学会ニュース Nov. 2007
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
2007 年度日本進化学会賞「授賞式・受賞講演」報告
【日時】2007 年 9 月 1 日(土)
,17:30 ∼ 18:10
2.木村基金・木村運営委員長:「木村賞」の
【場所】京都大学時計台ホール
賞状授与、副賞目録授与
○研究奨励賞受賞者(賞状授与)
●授賞式
吉田丈人博士/大島一彦博士/伊藤剛博士/
1)日本進化学会・郷通子会長(学会賞選考委員長)
による受賞者と授賞理由の説明(3 賞すべて説
荒木仁志博士(荒木博士は都合により授賞式欠
席)
明)
2)公益信託進化学振興木村資生基金・木村克美運
○教育啓蒙賞受賞者(賞状授与)
仲田崇志氏
営委員長によるご挨拶(木村基金の経緯と今年
●受賞講演・倉谷滋博士
度の木村賞受賞者の報告)
●記念撮影 ※受賞講演終了後(同ホールにて)
3)授賞式 ○日本進化学会賞/木村賞受賞者 倉谷滋博士
1.日本進化学会・会長:「日本進化学会賞」
※選考過程、授賞理由等の詳細については前述の通
り
の賞状授与、木村メダルの授与
2006 年度収支報告書
収入
2006 予算
① 会費収入
4,244,100
(1)一般会費
2,346,300
(2)学生会費
577,800
(3)滞納分
1,320,000
(4)前受金
(5)口座引落手数料本人負担分
② 大会より返金
③ 大会参加費
④ 利息
当期収入合計
4,244,100
前年度繰越金
1,368,585
本年度収入合計
5,612,685
※1
※2
2006 決算
備考
2,833,807
1,806,000 ※ 1 郵便:334 名、銀行:67 名、大会:29 名、引落:173 名
391,000 ※ 2 郵便:146 名、銀行:22 名、大会:12 名、引落:16 名
499,000 郵便:138 名、銀行:23 名、大会:19 名、引落:4 名
107,000 郵便:23 名、銀行:8 名、大会:6 名
30,807 引落手数料 189 名× 163 円
300,000
10,000
54
3,143,861
1,368,585
4,512,446
一般会費について: 1,000 円入金、2,000 円入金の会員が1 名ずついたため、人数×会費との差額 3,000 円あり
学生会費について: 1,000 円入金の会員が1 名いたため、人数×会費との差額 1,000 円あり
支出
2006 予算
① ニュース作成・印刷料等
1,425,000
② ニュース送料
570,000
③ 業務委託費(前半期・後半期分) 928,400
2006 年度前期業務委託費
※
2006 年度後期業務委託費
④ 事務費・通信費
100,000
※
2006 年度発送通信費
※
日本進化学会 封筒代
※
学会賞用賞状・賞状入れ代
学会賞用賞状全文 筆耕料
木村賞受賞者名入れ
SMBC へ口座引落票送付
2006 決算
1,516,410
385,434
928,400
464,200
464,200
151,714
23,900
96,600
1,764
26,950
2,000
500
※
4,000 枚
19,800 円 7,150 円
選考委員会 瓦会館
選考委員会
選考委員会
2005 年度分、2006 年度分 各 10,000 円 合計 20,000 円
4 月 34,818 円 10 月 5,848 円
計 12 件
第 8 回 東京大会
自動引落後 退会のため(振込手数料含む)
退会のため(振込手数料含む)
注)※印のついた費目は2006 年度内に請求があったが、支払が2007 年 1 月 5 日になったため、残高に反映されていない
2006 年度 収入−支出
0
通帳残高
銀行(三井住友)
郵便局(振替口座)
郵便局(貯金口座)
臨時号 525,630 円
7-1 号 150,434 円 7-2 号 118,200 円 ※ 臨時号 116,800 円
角3
41,382
6,300
882
2,700
31,500
67,900
26,840
41,060
40,000
20,000
20,000
43,501
40,666
2,835
0
300,000
25,303
3,303
12,000
10,000
3,500,044
1,012,402
4,512,446
1,351,234
898,944
1,000
2,251,178
2006 年 12 月 31 日現在
2006 年 12 月 31 日現在
2006 年 12 月 31 日現在
2007 年度中間決算書
備考
7-1 号 317,730 円 7-2 号 673,050 円
⑤ 会議費
10,000
※
貸会議室料
※
選考委員会飲み物代
※
評議員会飲み物代
評議員会お弁当代
⑥ 旅費、交通費
150,000
佐藤矩行先生旅費
舘田英典先生旅費
⑦ 負担金
30,000
生物科学会連合分担金
20,000
日本分類学会連合分担金
10,000
⑧ 雑費
40,000
SMBC 手数料
振込手数料
⑨ 謝金
50,000
⑩ 大会援助金
300,000
⑪ その他
0
会費返金(二井林知子)
会費返金(末吉昌宏)
大会参加費 大会事務局へ送金
当期支出合計
3,603,400
次年度繰越金
2,009,285
本年度支出合計
5,612,685
59
収入
2007 予算
① 会費収入
4,244,100
(1)一般会費
2,346,300
(2)学生会費
577,800
(3)滞納分
1,320,000
(4)前受金
(5)口座引落手数料本人負担分
② 利息
当期収入合計
4,244,100
前年度繰越金
2,009,285
本年度収入合計
6,253,385
※
2007 中間決算
備考
1,862,573
1,327,907 ※ 2007 × 2 名、893 × 1 名
238,000
245,000
22,000
29,666 引落手数料 182 名× 163 円
557
1,863,130
1,012,402
2,875,532
会費請求の際に事務局が間違って2,007 円として請求したため、振込手数料の100 円を引いた残額 893 円の振込をお願いした
60
日本進化学会ニュース Nov. 2007
支出
2007 予算
① ニュース作成・印刷料等
1,050,000
② ニュース送料
380,000
③ 業務委託費(前半期・後半期分) 928,400
④ 事務費・通信費
700,000
(1)選挙関連費
375,000
(2)その他
325,000
郵便振替印字サービス
⑤ 会議費
20,000
⑥ 旅費、交通費
250,000
⑦ 負担金
30,000
(1)生物科学学会連合運営費
20,000
(2)日本分類学会連合分担金
10,000
⑧雑費
40,000
(1)SMBC ファイナンス手数料
40,000
(2)振込手数料
⑨ 謝金
50,000
⑩ 大会援助金
500,000
⑪ 創立十周年記念企画準備金
2,000,000
⑫ その他
0
当期支出合計
5,948,400
次年度繰越金
304,985
現在残高
本年度支出合計
6,253,385
2007 中間決算
445,137 8-1 号
159,732 8-1 号
487,410 前半期
2,100 (1)、(2)の合計
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
備考
2,100
2,100
クバプロにて立て替え中 21,000 円
クバプロにて立て替え中 9,240 円
20,000 (1)、(2)の合計
20,000
35,568
34,818 年 2 回(会員数に応じて変動する)
750 4 件
500,000
1,649,947
1,225,585 2007 年 7 月 31 日現在
2,875,532
支出
① ニュース作成・印刷料等
② ニュース送料
③ 業務委託費(前半期・後半期分)
④ 事務費・通信費
(1)選挙関連費
(2)その他
(a)発送通信費
(b)学会封筒代
(c)学会賞用賞状・筆耕費用
⑤ 会議費
⑥ 旅費、交通費
⑦ 負担金
(1)生物科学学会連合運営費
(2)日本分類学会連合分担金
⑧ 雑費
(1)SMBC 手数料
(2)振込手数料
⑨ 謝金
⑩ 大会援助金
⑪ 創立十周年記念企画準備金
⑫ その他
当期支出合計
次年度繰越金
本年度支出合計
※
2007 年度 収入−支出
0
収入
1,074,954 2007 年 7 月 31 日現在
149,751 2007 年 7 月 31 日現在
880 2007 年 7 月 31 日現在
1,225,585
※
2006 決算
2,833,807
1,806,000
391,000
499,000
107,000
30,807
300,000
10,000
54
3,143,861
1,368,585
4,512,446
会費収入は2006 年度の会員数および未収金を元に算出
2008 予算
備考
1,050,000 (525,000)×年 2 回(B5 判)
320,000 (160,000)×年 2 回
928,400
300,000 (1)、(2)の合計
0 評議員選挙費用
300,000 (a)、(b)、(c)の合計
150,000
100,000
50,000
50,000
150,000
30,000 (1)、(2)の合計
20,000
10,000
40,000
40,000 年 2 回(会員数に応じて変動する)
0
50,000
500,000
0
0
3,418,400
1,875,102
5,293,502
0
2008 年度予算書
① 会費収入
(1)一般会費
(2)学生会費
(3)滞納分
(4)前受金
(5)口座引落手数料本人負担分
② 大会より返金
③ 大会参加費
④ 利息
当期収入合計
前年度繰越金
本年度収入合計
2007 予算
1,050,000
380,000
928,400
700,000
375,000
325,000
150,000
100,000
75,000
20,000
250,000
30,000
20,000
10,000
40,000
40,000
0
50,000
500,000
2,000,000
0
5,948,400
304,985
6,253,385
2006 年度の日本分類学会連合分担金は2005 年度分、2006 年度分の各 10,000 円 合計 20,000 円
2008 年度 収入−支出
通帳残高
銀行(三井住友)
郵便局(振替口座)
郵便局(貯金口座)
2006 決算
1,516,410
385,434
928,400
151,714
0
151,714
24,400
96,600
30,714
41,382
67,900
40,000
20,000
※
20,000
43,501
40,666
2,835
0
300,000
0
25,303
3,500,044
1,012,402
4,512,446
2007 予算
4,244,100
2,346,300
577,800
1,320,000
4,244,100
2,009,285
6,253,385
2008 予算
備考
4,281,100
2,494,800 回収率 9 割の場合(2,772,000 × 0.9)
703,800 回収率 9 割の場合(782,000 × 0.9)
1,082,500 回収率 5 割の場合(2,165,000 × 0.5)
4,281,100
1,012,402 2006 年度に準ずる
5,293,502
61
0
62
日本進化学会ニュース Nov. 2007
新 入 会 員
平成 19 年 5 月 1 日以降平成 19 年 9 月 30 日までの登録による
氏 名
英字氏名
所 属
岸本 利彦
矢頭 卓児
木村 亮介
金子 邦彦
奈良 武司
庄野 孝範
山本友里恵
松永 英治
Kishimoto Toshihiko
Yato Takuji
Kimura Ryosuke
Kaneko Kunihiko
Nara Takeshi
Shono Takanori
Yamamoto Yurie
Matsunaga Eiji
高橋 智
Takahashi Satoshi
浅原 正和
三戸 太郎
Asahara Masakazu
Mito Taro
森 啓悟
Mori Keigo
三宅 大介
川尻 舞子
小鮒 幸洋
Miyake Daisuke
Kawajiri Maiko
Kobuna Yukihiro
辰巳 誠
鈴木 亮
依藤実樹子
水上 節郎
加野象次郎
天野 直己
Tatsumi Makoto
Suzuki Ryo
Yorifuji Makiko
Mizukami Setsuro
Kano Shojiro
Amano Naoki
東邦大学理学部生物分子科学科
原核、生物分子生物、分子進化、生物物理
兵庫県立神戸高等学校
脊椎動物、系統・分類
東海大学医学部法医学教室
人類、分子進化、形態、遺伝
東京大学総合文化広域科学専攻
理論、発生、生態、生物物理
順天堂大学大学院医学研究科生体防御寄生虫学 寄生性原生生物、分子生物、分子進化、系統・分類
東京慈恵会医科大学器官・組織発生学
脊椎動物、発生
琉球大学理工学研究科
脊椎動物、生態
理化学研究所脳科学総合研究センター
脊椎動物、分子生物、発生、形態
生物言語研究チーム
奈良女子大学大学院人間科学研究科
理論、生態
複合現象科学専攻
京都大学理学研究科生物科学専攻
脊椎動物、形態
徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 無脊椎動物、発生
ライフシステム部門
首都大学東京大学院理工学研究科
植物、系統・分類
生命科学専攻植物系統分類学研究室
愛媛大学大学院理工学研究科
原核生物、生態
新潟大学大学院
脊椎動物、発生、形態、遺伝
北陸先端科学技術大学院大学
知識科学研究科橋本研究室
東邦大学理学部
原核生物、分子生物、分子進化、生物物理
奈良女子大学共生科学研究センター
植物、生態
東京大学海洋研究所
無脊椎動物、分子生物、生態、進化生物
生物史、遺伝
専門分野/研究対象
工藤 洋
清水 裕
鈴木 大
Kudo Hiroshi
Shimizu Hiroshi
Suzuki Dai
小山 時隆
西川 穣
玉手 英利
栄前田直也
坂井 寛章
新倉 太郎
荻野 一豊
飯尾 尊優
中江 雅典
鈴木 健大
Oyama Tokitaka
Nishikawa Minori
Tamate Hidetoshi
Eimaeda Naoya
Sakai Hiroaki
Niikura Taro
Ogino Kazutoyo
Iio Takamasa
Nakae Masanori
Suzuki Kenta
早川 陽介
Hayakawa Yosuke
吉田 恒太
汪 洋
田中 裕美
白谷 嘉朗
山口 裕矢
定清 奨
宮本 教生
楠目 晴花
佐藤真菜美
Yoshida Kohta
Wang Yang
Tanaka Yumi
Shiroya Yoshiaki
Yamaguchi Yuya
Sadakiyo Shou
Miyamoto Norio
Kuzume Haruka
Sato Manami
富田 直秀
田中 泉吏
西野 寛志
本間 淳
魚住 太郎
Tomita Naohide
Tanaka Senji
Nishino Hiroshi
Honma Atsushi
Uozumi Taro
土畑 重人
小城 伸晃
Dobata Shigeto
Kojyo Nobuaki
北海道大学大学院情報科学研究科
植物、遺伝、情報
ゲノム情報科学研究室
神戸大学理学研究科生物学専攻
植物、系統・分類、遺伝、生態
国立遺伝学研究所発生
無脊椎動物、形態
京都大学大学院理学研究科動物学教室
脊椎動物、系統・分類
動物系統学研究室
名古屋大学大学院理学研究科生命理学
植物、原核動物、分子生物
東京理科大学
無脊椎動物、形態
山形大学理学部
脊椎動物、遺伝
脊椎動物、無脊椎動物、分子進化、系統・分類、情報
北海道大学大学院情報科学研究科
農業生物資源研究所
植物、分子進化
総合研究大学院大学葉山高等研究センター 人類、分子進化、遺伝、集団遺伝
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 無脊椎動物、分子生物、分子進化、系統・分類
同志社大学
人類、理論、分子生物、分子進化、情報
国立科学博物館標本資料センター
脊椎動物、系統・分類
東京大学大学院総合文化研究科
理論、生態
広域科学専攻広域システム科学系
生物情報解析研究センター
人類、分子生物、情報
統合データベース解析チーム
東京工業大学大学院生体システム専攻
脊椎動物、分子進化
浜松医科大学生物学教室
無脊椎動物、形態
兵庫県立大学中桐斉之研究室
脊椎動物、理論、生態、情報
三重大学大学院生物資源学部
菌類、分子進化
静岡大学大学院工学研究科システム工学専攻 植物、多種共存
大阪府立大学理学系研究科
無脊椎動物、生態
筑波大学大学院生命環境科学研究科
無脊椎動物、発生、系統・分類
信州大学理学部生物科学科
山形大学大学院理工学研究科生物学専攻 脊椎動物、分子進化
生物多様性講座玉手研究室
京都大学工学研究科
人類、脊椎動物、理論、情報
京都大学
理論、生物学の哲学
信州大学理学部生物科学科
京都大学農学研究科昆虫生態学研究室
無脊椎動物、理論、生態
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 無脊椎動物、分子進化、系統・分類
生命誌学研究室
東京大学大学院総合文化研究科広域科学 無脊椎動物、生態
山形大学大学院理工学研究科
脊椎動物、分子生物
地球共生圏科学専攻環境保全科学講座
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 8, No. 2
寺田 雅美
中尾 央
安増 茂樹
白瀧 紘子
平岡 乾
瀬戸 陽介
川北 篤
岸 茂樹
岩崎 渉
山内 肇
河野あづみ
佐藤 匡浩
山道 真人
岩田 浩明
谷口 陽介
稲垣 絢子
大原 一華
大下 和希
鈴木 郁夫
飯島 一隆
松永 藤彦
山口 幸
大森 亮介
竹下 和貴
田中 千咲
後藤龍太郎
岡本 朋子
永居 寿子
神保 宇嗣
本山明日香
山崎 千里
花田 耕介
八木 映樹
川井田 眸
濱口 京子
野間野史明
太寿堂 真
相川慎一郎
家口 泰道
板井 章浩
山口 正樹
郡司 幸夫
青沼 仁志
辻 かおる
植松 圭吾
毛利 智恵
川口 将史
澤田 紘太
Terada Masami
Nakao Hisashi
Yasumasu Shigeki
Shirataki Hiroko
63
筑波大学大学院生命環境科学研究科
発生、進化
京都大学文学研究科
人類、理論
上智大生命科学研究所
脊椎動物、分子生物、分子進化、発生
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命 無脊椎動物、分子生物
科学専攻遺伝システム革新学分野藤原研究室
Hiraoka Ken
東京工業大学院生命理工学研究科
脊椎動物、分子生物、分子進化
生体システム専攻
Seto Yosuke
東京大学大学院新領域創成科学研究科
脊椎動物、無脊椎動物、分子進化
先端生命科学専攻遺伝システム革新学分野
Kawakita Atsushi
京都大学生態学研究センター
無脊椎動物、植物、生態
Kishi Shigeki
京都大学大学院農学研究科応用生物科学 無脊椎動物、生態
専攻昆虫生態学分野
Iwasaki Wataru
東京大学大学院新領域創成科学研究科
理論、分子生物、分子進化、系統・分類、
情報生命科学専攻
遺伝、情報
北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 言語、言語進化
Yamauchi Hajime
Kouno Azumi
東海大学大学院医学研究科医科学専攻
人類、脊椎動物、分子生物、分子進化
Sato Masahiro
総合研究大学院大学先導科学研究科
脊椎動物、分子生物
生命共生体進化学専攻
Yamamichi Masato 総合研究大学院大学生命共生体進化学専攻 脊椎動物、遺伝、生態
Iwata Hiroaki
北海道大学大学院情報科学研究科
原核生物、分子進化
ゲノム情報科学研究室
Taniguchi Yosuke
北海道大学大学院情報科学研究科
分子進化
ゲノム情報科学研究室
Inagaki Ayako
奈良女子大学大学院人間文化研究科
理論、生態
情報科学専攻
Oohara Itsuka
奈良女子大学人間文化研究科情報科学専攻 人類、理論
Oshita Kazuki
慶應義塾大学環境情報学部冨田研究室
原核生物、分子進化
Suzuki Ikuo
国立遺伝学研究所遺伝情報分析研究室
脊椎動物、発生
Iijima Kazutaka
東京工業大学生命理工学研究科
脊椎動物、分子進化
生体システム専攻
Matsunaga Fujihiko 九州大学農学研究院遺伝子資源工学部門 原核生物、分子生物
蛋白質化学工学講座
Yamaguchi Sachi
奈良女子大学大学院人間文化研究科
無脊椎動物、理論、生態
Omori Ryosuke
九州大学大学院理学府生物科学専攻
ウィルス、系統・分類、遺伝、生物物理
Takeshita Kazutaka 北海道大学大学院情報科学研究科
脊椎動物、分子進化、系統・分類
ゲノム情報科学研究室
筑波大学生命環境科学研究科構造生物科学専攻 脊椎動物、未脊椎動物、分子進化、発生、系統・分類
Tanaka Chisaki
京都大学大学院人間・環境学研究科相関環境 植物、生態
Goto Ryutaro
学専攻自然環境動態論講座加藤真研究室
Okamoto Tomoko
京都大学大学院人間・環境学研究科
植物、生態
相関環境学専攻加藤真研究室
Nagai Hisako
九州大学理学府生物学科
植物、分子進化
Jinbo Utsugi
東京大学大学院総合科学研究科
無脊椎動物、系統・分類
広域科学専攻広域システム科学系
Motoyama Asuka
大阪大学人間科学研究科
人類、理論、生物学の哲学
Yamazaki Chisato
産業技術総合研究所生物情報解析
人類、分子生物、遺伝、情報
研究センター(JBIRC)
Hanada Kosuke
理化学研究所
Yagi Eiki
京都大学大学院農学研究科
応用生物科学専攻栽培植物起源学分野
Kawaida Hitomi
九州大学理学府生物科学専攻
無脊椎動物、分子進化
Hamaguch Keiko
森林総合研究所関西支所
無脊椎動物、生態、系統・分類
Nomano Fumiaki
北海道大学理学部生物科学科
脊椎動物、遺伝、生態
Taijyudo Makoto
佛教大学・放送大学
人類、生物物理、自然人類学
Aikawa Shinichiro
神戸大学大学院理学研究科
植物、分子生物、生態
Yaguchi Hiromichi 東京大学海洋研究所分子海洋科学分野
脊椎動物、分子生物、遺伝、生態
Itai Akihiro
鳥取大学農学部
植物、分子生物
Yamaguchi Masaki 神戸大学大学院理学研究科生物学専攻
植物、生態
Gunji Yukio
神戸大学理学部地球惑星科学科
理論、生物物理、情報
Aonuma Hitoshi
北海道大学電子科学研究所
無脊椎動物、神経行動学
Tsuji Kaoru
京都大学理学部動物生態
Uematsu Keigo
東京大学総合文化研究科広域科学
専攻広域システム科学嶋田研究室
広島大学理学部生物科学科宮島植物観察実験所
Mouri Tomoe
Kawaguchi Masafumi 大阪大学生命機能研究科時空生物学講座 脊椎動物、無脊椎動物、分子生物、発生、
八木研究室
形態、系統分類
Sawada Kouta
京都大学理学部生物科学系
64
入江 直樹
山
彰彦
吉川 夏彦
竹中祥太朗
長井裕季子
柿岡 諒
馬場 藤貴
宮脇 亮
宮崎 菜穂
吉田 信介
松橋彩衣子
宇野 裕美
藤田 宏之
伊藤 浩史
坂口 絵理
大音 徳
星野 滋
日本進化学会ニュース Nov. 2007
Irie Naoki
京都大学大学院
Yamazaki Akihiko
京都府立洛西高等学校生物科
Yoshikawa Natsuhiko 京都大学大学院人間・環境学研究科松井研究室 ハコネサンショウウオ、系統分類学
Takenaka Shotaro
京都大学農学部資源生物科栽培植物起源
Nagai Yukiko
いわき明星大学
神経生理学
Kakioka Ryo
京都大学理学研究科動物生態学研究室
Baba Fujitaka
慶應義塾大学SFC
Miyawaki Ryo
慶應義塾大学SFC
奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科
Miyazaki Nao
情報生命科学専攻比較ゲノム学講座
Yoshida Shinsuke
大阪大学歯学部
Matsuhashi Saeko
神戸大学理学部生物学科
Uno Hiromi
京都大学理学部
Fujita Hiroyuki
京都大学生態学研究センター
Ito Hiroshi
名古屋大学理学研究科生命理工学専攻
植物第一講座
Sakaguchi Eri
東京大学理学系研究科生物科学専攻
Ohto Chikara
トヨタ自動車株式会社FP 部バイオ・ラボ 植物、分子生物、分子進化、バイオテクノロジー
Hoshino Shigeru
広島県立総合技術研究所農業技術センター 無脊椎動物、生態
会 員 所 属 変 更
菊池 義智
小西 繭
栗岩 薫
岡本 暁子
長尾知生子
角 友之
宮竹 貴久
柳 真一
小林 彩
桜井 民人
林 宏明
隈 啓一
野村 尚史
岡本 卓
小原 栄
澤井 裕美
池村 淑道
鈴木 伸明
大角 信介
岡部 正隆
北野 誉
小倉 彰子
小橋 健司
安永 照雄
平成 19 年 5 月 1 日以降平成 19 年 9 月 30 日までの登録による
産業技術総合研究所生物機能工学
信州大学理学部生体生物学講座
国立科学博物館標本資料センター
早稲田大学政治経済学術院
医薬基盤研究所バイオインフォマティクス
プロジェクト
総合研究大学院大学葉山高等研究センター
岡山大学大学院環境学研究科進化生態学分野
岡山大学農学部動物集団生態学研究室
沖縄県南部農業改良普及センター
東北農業研究センター斑点米ST
岩手医科大学薬学部天然物化学教室
国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系
総合地球環境学研究所西表プロジェクト
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻動物学教室
(株)新日本科学
大阪大学微生物病研究所感染症国際研究センター
感染制御部門・マラリア学研究室
長浜バイオ大学バイオサイエンス学部
水産総合研究センター西海区水産研究所石垣支所
(株)ベックス
東京慈恵医科大学解剖学講座
茨城大学工学部生体分子機能工学科
産業技術総合研究所バイオ産業情報化
コンソーシアム人間環境科学専攻
市原市埋蔵文化財調査センター
大阪大学微生物病研究所
佐藤 周知
齋藤くれあ
松本 忠夫
藤井 康之
佐々木 顕
阿形 清和
菊地 友則
東 典子
清水健太郎
佐々木 剛
徳田 誠
山村 則男
川原 善浩
山田 成宏
石田 学
青木美菜子
市橋 泰範
齊藤 梓
庄野 裕介
岩手大学21 世紀COEプログラム
放送大学
岡山大学ナノバイオ標的医療
イノベーションセンター
総合研究大学院大学葉山高等研究センター
京都大学大学院理学研究科生物物理学教室
分子発生学講座
琉球大学農学部亜熱帯動物学講座
北海道大学大学院水産科学院海洋応用生命科学
専攻育種生物学講座
University of Zurici Institute Of Plant Biology
東京工業大学大学院生命理工学研究科
生体システム専攻岡田研究室
農業生物資源研究所昆虫科学研究領域
昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット
総合地球環境学研究所
産業技術総合研究所生物情報解析研究センター
バイオ産業コンソーシアム・生物情報解析センター
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻
東京薬科大学生命科学部細胞機能学研究所
富士フイルム株式会社R&D統括本部
ライフサイエンス研究所
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
京都大学大学院霊長類研究所
京都大学医学部
退 会
木村 克美、乾井 貴美子、角南 景介、潘 宇、松本 幸一、首藤 絵美、渡部 美紀、阿部 友紀、黒田 淑子
日本進化学会ニュース Vol. 8, No. 2
発 行: 2007 年 11 月 30 日
発行者:日本進化学会(会長 郷通子)
編 集:日本進化学会ニュース編集委員会(編集幹事 深津武馬)
印刷所:福々印刷株式会社
発行所:株式会社クバプロ 〒 102-0072 千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F
TEL : 03-3238 -1689 FAX : 03-3238 -1837
http://www.kuba.co.jp
e-mail : [email protected]
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